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茂吉(佐分利信)は最後、泣かなかったのではないか(妙子(木暮実千代)が話を作っている?)。

お茶漬の味poster.jpgお茶漬けの味 dvd.jpg お茶漬けの味.jpg お茶漬の味00.jpg
お茶漬の味 [DVD]」「お茶漬の味 [DVD] COS-023」 佐分利信/木暮実千代

お茶漬の味36.jpg 会社勤務の佐竹茂吉(佐分利信)は長野出身で質素な生活を好む。妻の妙子(木暮実千代)とはお見合い結婚だが、上流階級出身の妙子にとって夫の質素さが野暮にしか見えず、学生時代の友人たちである雨宮アヤ(淡島千景)、黒田高子(上原葉子)、姪っ子の山内節子(津島恵子)らと遊び歩いて憂さをはらしている。茂吉はそんな妻の気持ちを知りながらも、あえて触れないようにしていた。ところが、節子がお見合いの席から逃げ出したことをきっかけに、茂吉と妙子が衝突する。妙子は口をきかなくなり、あげくのはてに黙って神戸の友人のもとへ出かけてしまう。一方の茂吉はウルグアイでの海外勤務が決まって羽田から出発するが、それを聞いても妙子は帰ってこない。茂吉が発った後、家に帰ってきた妙子にさすがの友人たちも厳しい態度をとる。平然を装う妙子だったが、茂吉の不在という現実に内心は激しく動揺していた。そこへ突如茂吉が夜中になって帰ってくる、飛行機のエンジントラブルだという。喜ぶ妙子に茂吉はお茶漬けを食べたいという。二人で台所に立って準備をし、お茶漬けを食べる二人。お互いに心のうちを吐露し、二人は和解する。夫婦とはお茶漬なのだと妙子を諭す茂吉。妙子は初めて夫のありがたさ、結婚生活のすばらしさに気づく。一方、お見合いを断った節子は若い岡田登(鶴田浩二)にひかれていくのだった―(「Wikipedia」より)。

お茶漬の味 vhs0.jpg 1952(昭和27)年公開の小津安二郎監督作で、野田高梧、 小津安二郎のオリジナル脚本ですが、小津が1939年に中国戦線から復員したあとの復帰第一作として撮るつもりだったのが「有閑マダム連がいて、亭主をほったからしにして遊びまわっている」という内容が内務省の検閲に引っ掛かってお蔵入りになっていたのを、戦後に再度引っ張り出して改稿したものであり、その際に、主人公夫婦がよりを戻す契機となったのが夫の戦争への応召であったのを、ウルグアイのモンテビデオ赴任に変えるなどしています。
          
お茶漬の味 saburi.jpg 木暮実千代の演技の評価が高い作品ですが、茂吉を演じた佐分利信もいい感じではないでしょうか。奥さんの言いなりになっているようで、実は全て分かった上での行動や態度という感じで、最後の和解のシーンも良かったです。その後、木暮実千代演じる妙子が雨宮アヤ(淡島千景)ら女友達に夫婦和解の様子を伝え、妙子自身大泣きした一方で、茂吉の方も「わかっている」と言って目に涙を溜めて泣いたと夫婦2人で泣いたような話をしますが、この辺りは妙子が話を作っているのではないかなあ(彼女の性格上、自分だけが泣いたことにはしたくなかったのでは)。

お茶漬の味 鶴田・津島.jpg 個人的には、この打ち明け話のシーンが無く、そのまま節子(津島恵子)と岡田(鶴田浩二)が連れだって歩くシーンで終わっても良かったようにも思いましたが、この"のろけ話"ともとれる話を節子が実質2度も聞かされるところが軽くコメディなのだろなあ。妙子から"旦那さんの選び方"の講釈を受けた上で(そうなったのは偶々なのだが)、ラストの岡田と連れだって歩くシーンに繋がっていきます。

津島恵子/鶴田浩二

お茶漬の味 野球観戦.jpgお茶漬の味 パチンコ.jpg 女性3人でのプロ野球観戦(後楽園球場でのパ・リーグ試合でバッターボックスには毎日オリオンズの別当薫が。後楽園球場は当時、毎日オリオンズなど5球団の本拠地だった)や、競輪観戦(後楽園競輪場。1972年に美濃部亮吉都知事の公営ギャンブル廃止策により休止)、パお茶漬の味 笠智衆.jpgチンコなど、昭和20年代後半当時の風俗をふんだんに盛り込んでいるのもこの作品の特徴で、パチンコ屋で偶然再会した茂吉の戦友・平山定郎役の笠智衆が、パチンコ屋の親爺でありながらパチンコが流行るのを「こんなもんが流行っている間は世の中はようならんです。つまらんです。いかんです」と言っているのもおかしいです(しかし、笠智衆は軍歌しか歌わないなあ)。

 歌舞伎座でお見合いというのも、当時としては、こういうセッティングの仕方はよくあったのではないでしょうか。節子(津島恵子)はその見合いをすっぽかして茂吉と岡田の競輪観戦に勝手に合流し、仕舞にはパチンコにまで後楽園球場 競輪場.jpgついてきてしまうわけですが...(お茶漬の味 鶴田・佐分利・津島.jpg競輪レースの模様を"執拗に"撮っているのが興味深い。「小早川家の秋」('61年/東宝)に出演した森繁久彌が、競輪シーンが台本にあるの見て「小津には競輪は撮れない」と言ったそうだが、ここで既にしっかり撮っている。この作品では、隣り合っていた後楽園球場と後楽園競輪場の両方でロケをやったことになる)。
後楽園球場・後楽園競輪場(1976年)

お茶漬の味 津島・鶴田.png秋日和 司葉子 佐田啓二.jpg その後、パチンコに夢中で帰りの遅くなった岡田(鶴田浩二)と節子(津島恵子)がラーメン屋のカウンターで並んでお茶漬の味 カロリー軒.jpgラーメンを食べる場面は、夫婦でお茶漬けを食べるメインストーリーの方のラストの伏線と言えなくもありません。男女が並んでラーメンを食べる場面は後の「秋日和」('60年)におけるアヤ子(司葉子)と後藤(佐田啓二)も同様であり、この2人はやがて結婚することから、岡田と節子もそうしたことが暗示されているのでしょうか。因みにラーメン屋の名前は「三来元」で両作品に共通しています(とんかつ屋「カロリー軒」も小津映画の定番の店名)。

お茶漬の味2.jpgお茶漬の味 佐分利・鶴田.png 木暮実千代の他、淡島千景、上原葉子(上原謙の妻)、津島恵子らの演技も楽しめるし、ちょい役ながら当時19歳の北原三枝(後の石原裕次郎夫人)もバーの女給役で出ていて、鶴田浩二や笠智衆らの演技も同様に楽しめます。でも、やはり、真ん中にいる佐分利信が安心して見ていられるというのが大きいかも。何のことはないストーリーですが、観終わった後の印象はそう悪くはない作品でした。
津島恵子/淡島千景   佐分利信/鶴田浩二

お茶漬の味.jpg

Ochazuke no aji (1952)
Ochazuke no aji (1952) .jpg「お茶漬の味」●制作年:1952年●監督:小津安二郎●製作:山本武●脚本:野田高梧/小津安二郎●撮影:厚田雄春●音楽:斎藤一郎●時間:115分●出演:佐分利信/木暮実千代/鶴田浩二/笠智衆/淡島千景/津島恵子/三宅邦子/柳永二郎お茶漬けの味 dvd_.jpg/十朱久雄/望月優子/設お茶漬の味 北原.jpg楽幸嗣/志賀直津子/石川欣一/上原葉子/北原三枝●公開:1952/10●配給:松竹●最初に観た場所:高田馬場・ACTミニシアター(90-08-19)(評価:★★★☆)併映:「東京の合唱(コーラス)」(小津安二郎)お茶漬の味 [DVD]」 鶴田浩二/北原三枝(バーの女給役)
 

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初カラー作品。佐分利信の"昭和的頑固親父"ぶり全開。後期作品の多くの原型的スタイルを含む。

彼岸花 映画pos.jpg彼岸花 映画 dvd.jpg
彼岸花 [DVD]」 山本富士子/有馬稲子/久我美子
[下]「「彼岸花」 小津安二郎生誕110年・ニューデジタルリマスター [Blu-ray]
彼岸花 タイトル.jpg彼岸花 小津00_.jpg 会社常務の平山渉(佐分利信)は、妻・清子(田中絹代)と共に出席した旧友・河合(中村伸郎)の娘の結婚式に、同期仲間の三上(笠智衆)が現れないことを不審に思っていた。実は三上は自分の娘・文子(久我美子)が家を出て男と暮らしていることに悩んでおり、いたたまれずに欠席したのだった。三上の頼みで平山は銀座のバーで働彼岸花 映画 02.jpgいているという文子の様子を見に行くことになる。一方の平山にも、適齢期を迎えた娘・節子(有馬稲子)がいた。彼は節子の意思を無視して条件のいい縁談を進める傍ら、平山の馴染みの京都の旅館の女将・佐々木初(浪花千栄子)の娘・幸子(山本富士子)が見合いの話を次々に持ってくる母親の苦情を言うと「無理に結婚することはない」と物分かりのいい返事をする。一方、平山が勝手に縁談を進めていた自分の娘・節子には、実は親に黙って付き合っている谷口(佐田啓二)という相手がいた。そのことを知らされ、それが娘の口から知らされなかったのが平山には面白くなく、彼は娘の恋愛に反対する―。

 小津安二郎監督の1958(昭和33)年作品で、小津監督初のカラー作品でもあり、原作は里見弴。因みに、この作品と同じく、なかなか結婚しない娘のことを気遣う親をモチーフとしたその後の作品「秋日和」('60年)、「秋刀魚の味」('62年)共に里見弴の原作であり(里見彼岸花 佐分利信A.jpg彼岸花 映画1_s.jpg弴ってこんな話ばかり書いていた?)、本作品では、他人の娘には自由恋愛を勧めるのに、自分の娘には自分のお眼鏡に適(かな)った相手でなければ結婚を許さないという、佐分利信の"昭和的頑固親父"ぶりが全開です(浪花千栄子の関西のおばはんぶりも全開だったが)。
佐分利信/田中絹代

江川宇禮雄/笠智衆/北竜二          中村伸郎
彼岸花 映画 dousoukai .jpg中村伸郎 higanbana .jpg 佐分利信、中村伸郎、北竜二が演じる旧友3人組は「秋日和」でも形を変えて登場し、「秋刀魚の味」では笠智衆、中村伸郎、北竜二の3人組になっていました。この「彼岸花」では、佐分利信、笠智衆、中村伸郎、北竜二の"4人組"となっています(その他に江川宇禮雄ら同窓生多数)。加えて佐分利信の娘に有馬稲子(当時26歳)、笠智衆の娘に久我美子(当時27歳)、佐分利信の知人の娘で、この作品においてコメディ・リリーフ的な役割を果たす女性に山本富士子(当時26歳)(大映から借り受け)という顔ぶれですから、考えてみれば結構豪華メンバーでした。
                                       久我美子/渡辺文雄
彼岸花 映画 00.jpg彼岸花 映画5O.jpg 佐分利信演じる平山は、三上の娘・文子(久我美子)には理解を示す一方で(その恋人役は渡辺文雄)、自分の娘・節子(有馬稲子)の結婚には反対し、平山の妻・清子(田中絹代)や次女・久子(桑野みゆき)も間に入って上手く取りなそうとしますが、平山はHiganbana (1958) .jpgますます頑なになります。そこへ節子の友人でもある幸子が現れ、平山に自分の縁談について相談する。が、それは節子の結婚のための芝居だったわけで、結局、彼は出ないと言っていた結婚式にも出ることになり、最後は娘と谷口の結婚を認めて彼女らのいる広島に向かう―という結末です。
Higanbana (1958)
 別に結末まで書こうと書くまいと、そんなビックリするような話ではない点は、その後の小津作品と同じではないかと...。佐田啓二は、「秋日和」では司葉子彼岸花 映画 浪花.jpgが演じたヒロインの結婚相手でしたが、この「彼岸花」と「秋日和」「秋刀魚の味」の3作の中で(主要人物の)結婚式の場面があるのは「秋日和」だけです。結婚式の場面が無いのはその結婚が必ずしも幸せなものとはならなかったことを暗示しているとの説もあるようですが、この「彼岸花」の場合どうなのでしょう(渡辺文雄、何となく頼りなさそう)。「秋刀魚の味」で佐田啓二は、岡田茉莉子演じる妻の尻の下に敷かれて、ゴルフクラブもなかなか買えないでいましたが...(因みに、「秋刀魚の味」では佐田啓二が会社の屋上でゴルフの練習をしているが、この「彼岸花」では佐分利信がゴルフ場で独りラウンドしている。しがないサラリーマンと重役の違いか)。

浪花千栄子/山本富士子

彼岸花 映画01.jpg モチーフばかりでなくセリフや撮影面においても、その後の小津カラー作品の原型的なスタイルを多く含んでおり、この作品に見られる料亭での同期の男たちの会話やそれに絡む女将(高橋とよ)との遣り取り、家の1階に夫婦が暮らし2階に娘たちが暮らすが、階段は映さないという"ルール"(映さないことで親子の断絶を表しているという説がある)、会社のオフィスやバーのカウンターでの会話やその際のカメラワークなど、そして例えばオフィスであればくすんだ赤と緑を基調とした色使いなど、その後も何度も繰り返されるこうした後期の小津作品における"セオリー"的なものを再確認するうえでは再見の価値ありでした。

 この作品で、佐分利信演じる平山の部下で、佐田啓二演じる谷口の後輩でもある近藤役を演じてコメディ的な味を出している高橋貞二は、この作品彼岸花 映画s.jpg高橋貞二.jpgに出た翌年1959年に33歳で自らの飲酒運転で事故死しています(この年に結婚したばかりだった妻も3年後に自殺、青山霊園に夫と共に埋葬されている)。

佐分利信/高橋貞二(1959年に33歳で自らの飲酒運転で事故死)

 そして佐田啓二も、1964年に37歳でクルマにより事故死していますが、共に4人でクルマに乗っていて事故に遭い、亡くなったのはそれぞれ高橋貞二と佐田啓二の一人ずつのみでした。

佐田啓二(1964年に37歳で自動車運転事故死)/久我美子/有馬稲子
彼岸花 映画16.jpg彼岸花 映画9_s.jpg彼岸花 有馬稲子.jpg「彼岸花」●制作年:1958年●監督:小津安二郎●脚本:野田高梧/小津安二郎●撮影:厚田雄春●音楽:斎藤高順●原作:里見弴●時間:118分●出演:佐分利信/有馬稲子/山本富士子/久我美子/田中絹代/佐田彼岸花 sata%20.png啓二/高橋貞二/笠智衆/桑野みゆき/浪花千栄子/渡辺文雄/中村伸郎/北竜二/高橋とよ/桜むつ子/長岡輝子/十朱久雄/須賀不二男/菅原通済/江川宇禮雄/竹田法一/小林十九二/清川晶子/末永功●公開:1958/09●配給:松竹●最初に観た場所:三鷹オスカー(82-09-12)(評価:★★★★)●併映:「東京物語」(小津安二郎)/「秋刀魚の味」(小津安二郎)

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笠智衆の小津作品初主演作。「孝行したい時に親はなし」。"ほろ苦い"後味を残す作品。

父ありき 小津D6.jpg父ありき vhs.jpg

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父ありき [DVD] COS-018」「父ありき [VHS]」「父ありき [DVD]

 金沢の中学教師である堀川周平(笠智衆)は、妻を失い、小学生の一人息子・良平(少父ありき 0.png年期:津田晴彦)をここまで男手ひとつで育ててきた。しかし勤め先の中学の修学旅行先、箱根・芦ノ湖でボート転覆事故があり、教え子が溺死したことに責任を感じた彼は学校を退職する。出身地の信父ありき 4.png州に帰り、豊かな自然の中で新生活を始めた周平だったが、良平が中学に上がる頃になると、「このままでは良平を上の学校に行かせる事が出来ない」と考え、上京して働く旨を良平に伝える。父と共に暮らしたい良平は涙を流すが、そんな良平に周平は「泣いちゃおかしいぞ、男の子が男の子は、泣かんもんだ」と諭す。周平は、中学生になった良平を寄宿舎に預け、東京の工場に勤める。それから月日は流れ、良平(佐野周二)は25歳父ありき 釣り1.png6.jpgになり、仙台の帝大を卒業し秋田の学校で教師となっている。周平と温泉宿で久々に再会し、教師を辞めて一緒に暮らしたいと告げる。しかし周平父ありき 7.pngは「今の仕事を投げ出してはいけない」と息子を諭す。周平は、金沢時代の同僚だった平田(坂本武)の娘ふみ(水戸光子)を貰ってはどうかと良平に聞く。良平は照れながらも任せると言うが、数日後、周平は脳溢血で倒れ、ふみに「良平を頼みます」と言い遺して息を引き取る。その何日か後、秋田へ向かう列車の中に、父の遺骨を抱いた良平とふみの姿があった―。

父ありき v 2.jpg父ありきki.jpg 1942(昭17)年4月公開の小津安二郎監督作で、先に取り上げた「一人息子」('36年)が夫を失った母親と一人息子の繋がりを描いているのに対し、こちらは妻を失った父親と一人息子の繋がりを描いています。「一人息子」での母親(飯田蝶子)と息子(日守新一)の関係が、息子の出世を期待していたのに結局しがない夜学の教師になっているのを見てがっかりする母親と、そのがっかりする母親を見て自らも後ろめたく思う息子という、ほろ苦いと言うかやるせないものであったのに対し、こちらは、両者の関係が、父親の息子に対する教育的信念と、息子の父親への尊敬の念によって安定的に保たれているという印象を受けました。但し、その父親の'信念'のせいもあって、中学以来離れて暮らしてきた父親といつか一緒に暮らしたいという息子の想いが叶えられることないうちに父親が亡くなってしまうという展開はまさに「孝行したい時に親はなし」であり、こちらもある意味"ほろ苦い"後味を残す作品になっているように思いました。

 笠智衆の小津映画での初主演作であり、自伝『大船日記』の中で生涯で一番思い出深い作品にこの「父ありき」を挙げていましたが、長い大部屋俳優時代を経て、小津作品に出演しながらノンクレジット扱いだった時期もあっただけに、感慨ひとしおだったのではないかと思います(因みに、笠智衆自身の初主演作は斎藤寅次郎監督花形選手(1937)20dvd.jpgの「仰げば尊し」('37年))。この「父ありき」の時の笠智衆(1904年生まれ)は37歳で、当時29歳の佐野周二(1912年生まれ)の父親を演じたわけですが、 清水宏監督の「花形選手」('37年)では何と、大学陸上部の花形選手の一人を佐野周二が演じ、もう一人を笠智衆が演じていました。但し、笠智衆は一人息子  笠智衆 - コピー.jpg既に先の「一人息子」('36年)で当時32歳ながら老け役(元教師のトンカツ屋)を演じており、更にこの作品での堀川周平の老け役で好評を得、以降、小津映画の定番俳優となります。戦後の小津作品には全作出演、「東京物語」('53年)では、実年齢の差が1歳しかない杉村春子の父親を演じています。
花形選手(DVD) SYK109S

父ありき 坂本.jpg父ありき 佐分利 日守.jpg 笠智衆演じる教師・周平の同僚教師・平田をかつての小津映画の定番俳優・坂本武(1899年生まれ)が演じ、後半、かつての2人の教え子たちが2人を招いて同窓謝恩会のような宴を催しますが(こうしたモチーフも後の「秋刀魚の味」('62年)などに見られるが)、その中心となる黒川と内田をそれぞれ佐分利信(1909年生まれ)と日守新一(1907年生まれ)が演じています。1904年生まれの笠智衆はこの2人とも、実年齢であまり違わないことになります。

父ありき 釣り1.png父ありき 釣り2.jpg 周平・良平親子が渓流釣りをする場面が、子供時代と温泉宿での再会の後とにあり、構図を重ねているのが巧み。親子が渓流釣りをする場面は、「浮草物語」('34年)にもあったのを思い出させます。

幾何 一人息子.jpg幾何 父ありき.jpg 周平が中学で幾何の問題を教えていますが、演じる笠智衆の解説ぶりはなかなか流暢。この時取り上げている問題は、「一人息子」(左)で日守新一演じる夜学の教師が教えていた問題と少し似ているような...。一方、佐野周二演じる息子の良平が秋田の学校で教えているのは化学で、舞台となっているのは秋田大学鉱山学部の前身・秋田鉱山専門学校(1910年設立)ではないかと思われます(秋田大学鉱山学部は1998年に工学資源学部に改組、2014年に理工学部に改称された)。
Chichi ariki (1942)
Chichi ariki (1942).jpg
父ありき 小津 dvd_1.jpg「父ありき」●制作年:1942年●監督:小津安二郎●脚本:池田忠雄/柳井隆雄/小津安二郎●撮影:厚田雄治●音楽:彩木暁一●時間:94分(現存83分)●出演:笠智衆(堀川周平) /佐野周二(堀川良平) /津田晴彦(良平の少年時代) /佐分利信(黒川保太郎) /坂本武(平田真琴) /水戸光子(平田ふみ) /大塚正義(平田清一) /日守新一(内田実) /西村青児(和尚さん) /谷麗光(漢文の先生) /河原侃二(中学の先生) /倉田勇助(中学の先生) /宮島健一(会社員)/文谷千代子(堀川の女中) /奈良真養(医師) /大山健二(卒業生) /三井秀男(卒業生) /如月輝夫(卒業生)/久保田勝巳(卒業生) /毛塚守彦(写真師) /大杉恒雄(北陸の中学生) /葉山正雄(北陸の中学生) /永井達郎(北陸の中学生) /藤井正太郎(北陸の中学生) /小藤田正一(東北の工業生) /緒方喬(東北の工業生) /横山準(東北の工業生) /沖田儀一(東北の工業生) ●公開:1942/01●配給:映画配給社(松竹大船)(評価:★★★☆)

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シンプルだが抒情溢れる作品。但し、エロチックな妄想を駆り立てるシーンもあったように...。

清水宏 按摩と女 1938 vhs.jpg清水宏 按摩と女 1938 dvd.jpg 清水宏 按摩と女 1938.jpg 清水宏 按摩と女 1938 按摩・女・子ども.jpg
按摩と女 [VHS]」高峰三枝子/佐分利信「按摩と女 [DVD]」 徳大寺伸/高峰三枝子

清水宏 按摩と女 1938 冒頭.jpg 名物按摩の徳市(徳大寺伸)と福市(日守新一)が山の温泉場へと向かい歩いていた。二人は盲目ながら優れたカンの持ち主で、そばを通る人たちの素性を言い当てる程だった。温泉場で徳市は東京から来た女(高峰三枝子)に呼ばれる。徳市は彼女が来る途中に自分を追い抜いていった女だとピンと来る。だが少し影のあるこの女に徳市は惚れてしまうのだった。その頃この温泉場では次々と盗難事件が発生する。徳市は彼女が犯人じゃないかと疑い始める―(「ムービーウォーカー」より)。

按摩と女 カバー作.jpg 清水宏の監督作品のベストテン投票などでしばしば第1位になる作品で、石井克人監督、草彅剛、マイコ主演で『山のあなた 徳市の恋』('08年/東宝)としてリメイクされました。

 冒頭の温泉宿へ向けて旅する徳市(とくさん)福市(いちさん)の二人がカンの鋭さを競い合うには絶妙でした。とりわけ徳市は、「めくら」である自分は「めあき」である人々に負けてはいないという強い自負から「めあき」の登山客を追い越しては、自分の健脚ぶりを客の前でも「何人抜いた」と自慢しているのが明るくていいです。

清水宏 按摩と女 1938 高峰.jpg そんな徳市が、道中、東京から来た女が馬車に乗っていたと言い当てた、まさにその女の肩を揉むことになったことから、彼は女に対して恋に落ちてしまう―そんな折に宿屋での盗難事件が持ち上がり、彼特有のカンで素性を明かさないその女から微妙な翳と怯えを感じ取っていた徳市は、こうして身を隠すように滞在している彼女こそが犯人だと察し彼女を助けようと骨を折るのだが―。

「按摩と女」('38年/松竹)高峰三枝子/「山のあなた 徳市の恋」('08年/東宝)マイコ

山のあなた 徳市の恋.jpg 元々謎解きミステリなどとは違った作品だったと思えば、犯人捜しの結末がぼかされていることに不満を言う筋合いではないのでしょう。徳市の勘違いは、恋愛でその"超能力的"カンがやや鈍ったともとれ、リメイク作品のサブタイトル(徳市の恋)がテーマそのものを言い当てているかと思います。厳密に言えばリメイクではなく、「カバー作品」として作っているとのことで、その辺りにもオリジナルへのリスペクトを感じます。

清水宏 按摩と女 1938  街中を按摩たちが歩く.jpg リメイク作品を観る前は、オリジナルの抒情をどこまで描き切れているのかがっかりさせられるのを避けたい気持ちが山のあなた 徳市の恋4.JPGあり、伊豆の温泉街を大勢の按摩たちが行き来する様をカラーで観ても実感が湧かないのではないかとか、70年ぶりのリメイクだからカバーと言ってもその通りにはならないのではないかとか思っていましたが、実際に観てみると、しっとりした自然の背景や温泉場の風情、旅館の室内に至るまで派手ではない色彩を生かした映像美に仕上げており、按摩と女 カバー作2.jpg思ったより良かったです。まさに「カバー」作品として作られていて、宿泊客の独身男を演じた堤真一などは、「カバー作品」であるという前提にオリジナルの佐分利信の演技を完全に模倣している感じでしょうか。

 オリジナルでは、その独身男(佐分利信)が連れ子をダシにして何となく延泊を繰り返していることで、男が女に関心を寄せていることを表しているのが面白かったですが、カンの鋭い徳市の方はそうした男の様子に気づいてストレートに対抗意識を持つようになっていて、これも、「めあき」に負けてたまるかという彼の自負が前フリであってのことだけに、上手い作りだと思いました(脚本は清水宏のオリジナル)。ただ、そうした徳市の鋭さは、徳大寺伸の方が草彅剛より出ていたようにも思います。

清水宏 按摩と女 1938 川辺で.jpg 山間の温泉宿という舞台背景もあって、シンプルだが抒情溢れる作品。ラストの更に馬車で逃げていこうとする女を、まるで「めあき」のように見遣る徳市の表情の切なさもさることながら、子供の前で徳市が川泳ぎをしてみせた後、女が駆け寄り黙って浴衣を着せてやる場面などは何となくエロチックなものが感じられて印象に残っています(その他にも、徳市が、風呂に行くと言う女に一緒に入らないかと誘われたと勘違いする場面など、エロチックな妄想を駆り立てるシーンがあった)。「小股の切れ上がった女」という表現がありますが、この映画で小走りに駆ける高峰三枝子は、まさにその言葉がぴったりのように思います。

按摩と女96.jpg清水宏 按摩と女 1938 0.jpg「按摩と女」●制作年:1938年●監督・脚本:清水宏●撮影:斎藤正夫●音楽:伊藤宣二●時間:66 分●出演:高峰三枝子/徳大寺伸/日守新一/爆弾小僧/佐分利信/坂本武/春日英子/京谷智恵子/油井宗信/二木蓮●公開:1938/07●配給:松竹(松竹大船)(評価:★★★★)

「按摩と女」('38年/松竹)高峰三枝子/「山のあなた 徳市の恋」('08年/東宝)マイコ
按摩と女/山のあなた 徳市の恋.jpg 
 
 
 
 
 

 
「按摩と女」高峰三枝子・徳大寺伸/「山のあなた 徳市の恋」マイコ・草彅剛
a0021956_20573297.jpg山のあなた 徳市の恋 プレミアム・エディション.jpg

山のあなた 徳市の恋3.jpg「山のあなた 徳市の恋」●制作年:2008年●監督:石井克人●脚本:清水宏●撮影:町田博●音楽:緑川徹/中川俊郎●時間:94分●出演:草彅剛/加瀬亮/マイコ/広田亮平/堤真一/宮永リサ/黒川芽以/津田寛治/三木俊一郎/田中要次/森下能幸/三浦友和/渡辺えり子/松金よね子/洞口依子/轟木一騎/阿部ジュン/大山健/白仁裕介/野村佑香/尾野真千子●公開:2008/05●配給:東宝(評価:★★★☆) 
  

清水宏映画ベスト<オールタイム編>(個人サイト)
1 按摩と女(戦前1位)
2 簪かんざし(戦前2位)
3 霧の音(戦後1位)
4 恋も忘れて(戦前5位)
5 家庭日記(戦前6位)
6 大仏さまと子供たち(戦後2位)
7 歌女おぼえ書(戦前7位)
8 母のおもかげ(戦後3位)
9 踊子(戦後5位)
10 母情(戦後4位)
次 有りがたうさん(戦前3位)花形選手(戦前4位)

戦前編清水宏ベスト
1 按摩と女
2 簪かんざし
3 有りがたうさん
4 花形選手
5 恋も忘れて
6 家庭日記
7 歌女おぼえ書
8 女醫の記錄
9 金色夜叉
10 七つの海 處女篇/貞操篇
次 暁の合唱

戦後編清水宏ベスト
1 霧の音
2 大仏さまと子供たち
3 母のおもかげ
4 母情
5 踊子
6 もぐら横丁
7 小原庄助さん
8 桃の花の咲く下で
9 その後の蜂の巣の子供達
10 母の旅路

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「晩秋」と"裏返しの相似形"か。同じ手を使いながらも、ラストに女性の強さが感じられる。

映画 秋日和  dvd.jpg 映画 秋日和  ブルーレイ.png  映画 秋日和 女性3人.jpg
あの頃映画 秋刀魚の味 [DVD]」「「秋日和」 小津安二郎生誕110年・ニューデジタルリマスター [Blu-ray]

映画 秋日和  七回忌.jpg 亡き友・三輪の七回忌に集まった間宮(佐分利信)、田口(中村伸郎)、平山(北竜二)の3人は、未亡人の秋子(原節子)とその娘アヤ子(司葉子)と談笑するうち、年頃のアヤ子の結婚に話が至る。映画 秋日和  男3人.jpg3人は何とかアヤ子を結婚させようと動き始めるが、アヤ子は母親が一人になることが気がかりでなかなか結婚に踏み切れない。間宮の会社の後藤(佐田啓二)がアヤ子に似合いだと考えた3人は、アヤ子が嫁ぐ気になるためにはまず母親が再婚することが先決と考え、平山を再婚相手の候補として画策する。映画 秋日和  伊香保.jpgその動きを察したアヤ子は同僚の佐々木百合子(岡田茉莉子)に相談し、それを聞いて憤慨した百合子は間宮らを一堂に会させてやり込めるが、彼らの説明を聞いて百合子も納得し、母娘の結婚話が進むことになる。しかし秋子は娘と二人で出かけた伊香保温泉の宿で、自分は一人で生きていく決意だと伝え、娘の背中を押す―。

 小津安二郎監督の1960(昭和35)年製作作品で、「彼岸花」('58年)に続いての里見弴の原作であり、娘の結婚を巡る親子の感情のもつれと和解を淡々としたコメディタッチで描いています。

 なかなか結婚しない娘のことを気遣う親という、小津映画に繰り返し見られるモチーフを踏襲していますが、この作品では「親」が、「晩春」('49年)などで見られる「父親」ではなく「母親」になっていて、その母親を、「東京物語」('53年)で笠智衆の義理の娘を、「晩春」で笠智衆の実の娘を演じた原節子が演じているのが興味を引きます。

映画 秋日和 原2.jpg映画 秋日和 司.jpg 原節子は当時実年齢40歳にして45歳の未亡人秋子役で、娘役の司葉子は実年齢26歳で24歳のアヤ子を演じていますが、実年齢では14歳差ということになります。当時56歳の笠智衆が秋子の義兄(59歳)という設定であるため、「晩春」と比べると原節子が1世代上にスライドしたことになります。

 「晩春」においてもこの「秋日和」においても、親の再婚話を前にして娘が「不潔よ」「汚らしい」などという場面がありますが、「晩春」でそのセリフを言った原節子が、今度は娘・司葉子に言われる側に回っているわけです。その秋子が、再婚話に乗り気になったふりをして、アヤ子を嫁に行く気にさせるというのも、「晩春」で笠智衆が再婚話に乗ったふりをして原節子演じる娘・紀子を嫁に行かせるのと"同じ手"を使っている訳で、言わば"裏返しの相似形"になっている点が興味深いです。

映画 秋日和 原.jpg 但し、「晩春」のラストで笠智衆は、娘を嫁にやった後に家で独りになって林檎の皮を剥きながら深くうなだれますが、この作品の原節子演じる秋子は、娘の結婚式を終えてアパートに戻った後、独り静かに微笑を浮かべます。原節子が母親役を演じていることに注目が行きがちな作品ですが、「晩春」と比べるとこの点が大きく異なるように思います。

 秋子に再婚の意思が無いことは本人が最初から言っていることですが、この"笑み"によって、それは確信として最初からあり、途中で揺らぐことも無かったのだと、個人的には感じられました。平山(北竜二)が、妻に先立たれて不自由し、自分が秋子の再婚相手として話が進んでいると勘違いして有頂天になった挙句に、アヤ子の結婚式では一人しおれていたのとは対極的で、小津安二郎はこの作品で、男と女の強さの違いを描いたかのようにも思います。

秋日和 記念撮影.jpg秋日和 司葉子 佐田啓二.jpg また、「晩春」にも「秋刀魚の味」にも無い結婚式の場面がこの作品にあるのは(新郎新婦そろっての式当日の記念撮影シーンなど)、このアヤ子(司葉子)と後藤(佐田啓二)の結婚のみが、小津映画ではごく例外的に"幸せな結婚"として暗示されているためとの説もあるようです。個人的には、「お茶漬けの味」('52年)、「早春」('56年)などでもお馴染みのラーメン屋「三来元」で2人が並んでラーメンを食べる場面に、この先2人が上手くいくであろう予兆が示唆されているように思いました。

秋日和 司葉子.jpg映画 秋日和 岡田.jpg 名匠・小津の作品として気負って観たところで、話としては何てことない話のような気もしますが、司葉子を美しく撮っているほか、小津映画初出演の岡田茉莉子(当時27歳)の活き活きとした演技も印象的であり、特に百合子が秋子に会いに行く場面は、昭和前期型(原節子)と昭和後期型(岡田茉莉子)の異なる演出パターンが1つの場面に収まっているという点が興味深かったです。

秋日和 屋上から1.jpg秋日和 屋上から2.jpg 小津映画と言えば、鉄道の駅や走っている列車を映すところから始まるものが多いのですが(或いは作中に必ず駅や列秋日和9.jpg車が出てくる)、この作品は2年前に完成した東京タワーが冒頭に映し出されています。では列車は出てこないかというと、アヤ子や百合子が勤めるオフィスの屋上から東海道線が映し出されていました(その列車には、新婚旅行に向かう2人のかつての同僚が乗っている)。

 ローアングルは和室場面だけでなく、会社のオフィスでの場面もローアングルで撮っていたのだなあと改めて思わされましたが、そのオフィスの受付嬢役で出演していたのが、2年後に「秋刀魚の味」に主演することになる岩下志麻(当時19歳)でした。

映画 秋日和  チラシ.jpg IMDbの評価は「8.2」。海外でも高い評価を得ている作品と言えます。


「秋日和」●制作年:1960年●監督:小津安二郎●脚本:野田高梧/小津安二郎●撮影:厚田雄春●音楽:斎藤Akibiyori(1960).jpg高順●原作:里見弴●時間:128分●出演:原節子/司葉子/佐分利信/岡田茉莉子/佐田啓二/中村伸郎/北竜二/桑野みゆき/三宅邦子/沢村貞子/三上真一郎/渡辺文雄/高橋とよ/十朱久雄/南美江/須賀不二男/桜むつ子/笠智衆/田代百合子/設楽幸嗣/千之赫子/岩佐分利信 秋日和.jpg下志麻●公開:1960/11●配給:松竹(評価:★★★☆)

Akibiyori(1960)
A widow tries to marry off her daughter with the help of her late husband's three friends.

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「華麗なる一族」1974年.jpg 古さを感じさせない。政財界にわたっての丹念な取材の跡が窺える。

山崎豊子 華麗なる一族.jpg  華麗なる一族 上巻.jpg 華麗なる一族 中巻.jpg 華麗なる一族 下巻.jpg 
華麗なる一族 (1980年) (新潮文庫)』 /新潮文庫(上・中・下)〔改訂版〕/映画「華麗なる一族」('74年/東宝)

華麗なる一族 dvd.jpg華麗なる一族.jpg 万俵財閥の当主で阪神銀行頭取の万俵大介の野望を軸に、それに翻弄される一族の姿を金融業界の内幕に絡めて描いた作品で、'73(昭和48)年の発表ですが、「金融再編」に伴う「銀行の合併問題」がモチーフになっているため、あまり古さを感じさせません。

 小説の冒頭は、志摩半島の英虞湾を望む一流ホテルでの主人公一族の豪奢な正月晩餐会から始まりますが、作者は舞台のモデルにした「志摩観光ホテル」のレストランから夕陽がどう見えるかまで取材しに行ったそうで、そうした丹念な取材は、銀行内部のみでなく、政治家や大蔵省など政財界に広く及んでいて、物語にリアルな厚みを増しています。 
華麗なる一族 [DVD]」/映画パンフレット                  

 大介の野望は、上位銀行の専務と結託してその銀行を併呑する、所謂「小が大を呑む」というもので(かつて神戸銀行が太陽銀行を吸収合併し、"名"前だけ「太陽神戸」として"実"の方をとった出来事がベースになっている)、大介の政財界への働きかけは、「政財癒着は良くない」という綺麗事のレベルを遥かに凌駕する凄まじさで、目的のためには親友も、長男さえも切り捨てる―。

 タイトルの「華麗なる一族」という言葉が、政界との癒着強化のための閨閥づくりを指すとともに、長男・鉄平の暗い過去の出生の秘密を表す反語にもなっています。

 同じ山崎豊子原作の映画化作品「白い巨塔」が大ヒットしたためか、この作品は豪華キャストで映画化されましたが('74年・山本薩夫((1910-1983))監華麗なる一族 仲代.jpg督)、オールキャストとは言え、その中で圧倒的に存在感を際立たせているのは佐分利信であり、その佐分利演じる万俵大介と鉄平(仲代達矢)の"暗い血"にまつわる確執に重きが華麗なる一族 田宮二郎.jpg置かれていたような感じもしました。また、鉄平の最期が、大介の女婿を演じた田宮二郎の実人生での自殺方法と同じだったことに思い当たりますが、鉄平役は実は田宮二郎がやりたかった役だったそうです。

華麗なる一族 目黒.jpg華麗なる一族 佐分利.jpg どうしても、こういう複雑なストーリーの話が映画化されると、情緒的な方向に重きがいってしまったりセンセーショナルな部分が強調されるのは仕方がありませんが(大介の「妻妾同衾」シーンなども当時話題になった)、それなりの力作でした。"いい人"がとにかく苛められる(相手方銀行の頭取の二谷英明とか)点で「白い巨塔」に共通するものを改めて感じたのと、農家の預金獲得のために、ワイシャツ姿で終日稲刈りまでする銀行員なども描いていて「銀行員って意外と泥臭いなあ」と思わされたりもしました。
                    映画「華麗なる一族 [VHS]」 ビデオ(上・下)
華麗なる一族2.gif華麗なる一族 ビデオ.jpg「華麗なる一族」●制作年:1974年●製作:芸苑社●監督:山本薩夫●製作:佐藤一郎/市川喜一/森岡道夫●脚本:山田信夫●音楽:佐藤勝●原作:山崎豊子●時間:210分●出演:佐分利信仲代達矢/月丘夢路/京マチ子/酒井和歌子/目黒祐樹/田宮二郎/二谷英明/香川京子/山本陽子/中山麻里/小沢栄太郎/滝沢修/河津清三郎/大空真弓/北大路欣也/志村喬中村伸郎加藤嘉/神山繁/平田昭彦/細川俊夫/大滝秀治/北林谷栄/西村晃/金田龍之介/小林昭二/花沢徳衛/鈴木瑞穂(ナレーション華麗なる一族 京マチ子 .pngも担当)/嵯峨善兵/荒木道子/小夜福子/中村哲/武内亨/梅野泰靖/浜田寅彦/花布辰男/下川辰平/伊東光一/田武謙三/若宮大祐/青木富夫/五藤雅博/生井健夫/白井鋭/夏木章/笠井一彦/守田比呂也/華麗なる一族 京マチ子.jpg鳥居功靖/堺美紀子/横田楊子/川口節子/森三平太/千田隼生/金親保雄/南治/麻里とも恵/木島一郎/坂巻祥子/隅田一男/久遠利三/鈴木昭生/記平佳枝/東静子/加納桂●劇場公開:1974/01●配給:東宝●最初に観た場所:渋谷・東急名画座(山本薩夫監督追悼特集) (84-01-08) (評価★★★☆) 京マチ子(万俵大介の愛人・高須相子)
華麗なる一族 saburi.jpg滝沢修 華麗なる一族.jpg 大滝秀治 華麗なる一族.jpg 中村 伸郎 華麗なる一族.jpg 華麗なる一族 志村.jpg
佐分利信(阪神銀行頭取・万俵大介)/滝沢修(長期開発銀行頭華麗なる一族 (1974東宝)katou .jpg取・宮本之三)/大滝秀治(社民党代議士・荒尾留七)/中村伸郎(日銀総裁・松平公之)/志村喬(大阪重工社長・安田太左衛門)/仲代達矢(阪神特殊鋼専務・万俵鉄平)/加藤嘉(阪神特殊鋼常務・銭高)
華麗なる一族3.jpg月丘夢路(万俵大介の妻・万俵寧子)/香川京子(長女・美馬一子)/京マチ子(家庭教師・高須相子)/山本陽子(長男鉄平の妻・万俵早苗)/中山麻理(次男銀平の妻)/酒井和歌子(次女・万俵二子)


 【1973年単行本・1979年改訂[新潮社(上・中・下)]/1980年文庫化・2003年改訂[新潮文庫(上・中・下)]】

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医学界の権力構造の図式を鮮やかに浮かびあがらせた傑作。もとは財前の勝利で終わる話だった。
白い巨塔 1965.jpg 白い巨塔 1.jpg 白い巨塔 2.jpg 白い巨塔 3.jpg kyotou2.jpg 白い巨塔 1シーン.jpg
白い巨塔 (1965年)』 『新潮文庫「白い巨塔 全5巻セット」』  映画「白い巨塔 [DVD]」['66年]
映画「白い巨塔」('66年/大映) 田宮二郎・田村高廣
映画「白い巨塔」('66年/大映).jpg この作品は何度かテレビドラマ化ざれ、佐藤慶('67年/テレビ朝日系/全26回)、田宮二郎('78年/フジテレビ系/全31回)、村上弘明(90年/テレビ朝日系/全2回)などが主役の財前五郎を演じています。更に最近では、'03年にフジテレビ系で唐沢寿明主演のもの(全21回)がありましたが、断トツの視聴率だったのは記憶に新しいところ(唐沢寿明版の最終回の視聴率32.1%で、'78年の田宮二郎版の最終回31.4%を上回る数字だった)。
                   
白い巨塔 66.jpg銀座シネパトス.jpg しかしながら個人的には、やっぱりテレビ版よりは、原作を読む前に観た山本薩夫(1910-1983)監督による映画化作品(田宮二郎主演)が鮮烈な印象として残っており、また観たいと思っていたら、'04年にニュープリント版が銀座シネパトス(東銀座・三原橋の地下にあるこの映画館は、しばしば昔の貴重な作品を上映する。2013年3月31日閉館)で公開されたため、約20年ぶりに劇場で観ることができました。これも全て今回の唐沢寿明版のヒットのお蔭でしょうか。

映画 「白い巨塔」('66年/モノクロ)

白い巨塔」(テレビ 1978.jpg田宮二郎自殺.jpg田宮二郎.jpg 田宮二郎(1935-1978/享年43)は、31歳の時にこの小説と巡り会って主人公・財前五郎に惚れ込み、作者の山崎豊子氏に懇願してその役を得たとのこと。その演技が原作者に認められ、それがテレビでも財前医師を演じることに繋がっていますが、テレビドラマの方も好評を博し、撮影終盤の頃、ドラマでの愛人役の太地喜和子(1943‐1992/享年48)との対談が週刊誌に掲載されていた記憶があります。それがまさか、ヘミングウェイと同じ方法でライフル自殺するとは思わなかった...。クイズ番組「タイム・ショック」の司会とかもやっていたのに(司会者は自殺しないなどという法則はないのだが)。

テレビドラマ版 「白い巨塔」('78~'79年/カラー)
 田宮二郎は30代前半の頃から躁うつ病を発症したらしく、テレビ版の撮影当初は躁状態で自らロケ地を探したりも田宮二郎 .jpgしていたそうです。それが終盤に入ってうつ状態になり、リハーサル中に泣き出すこともあったりしたのを、周囲が励ましながら撮影を進めたそうで、彼が自殺したのはテレビドラマの全収録が終わった日でした(実現が困難な事業に多額の投資をし、借金に追われて「俺はマフィアに命を狙われている」とか、あり得ない妄想を抱くようになっていた)。当時週刊誌で見た大地喜和子とのにこやかな対談は、実際に行われたものなのだろうか。

『続・白い巨塔』('69年/新潮社 )/『白い巨塔(全)』('94年/新潮社改版版)/映画「白い巨塔」('66年/大映)
白い巨塔 ラスト.jpg続白い巨塔.jpg白い巨塔1994.jpg
 もともとの『白い巨塔』('65年/新潮社)は、'63年から'65年にかけて「サンデー毎日」に連載されたもので、熾烈な教授選挙戦を征して教授になった財前五郎が、権力者の後ろ盾のもとに、彼の医療ミスを告発する里見医師らを駆逐するところで終わっています。映画('66年)も教授選をクライマックスに、主人公の財前が第一外科教授に昇進するまでを描いていて、原作・映画ともに、医学界の権威主義に対する強烈な風刺や批判となっていますが、権力志向の強い男のピカレスク・ロマンとしてもみることができます。しかしながら、こうした「悪が勝つ」終わり方に世間から批判があり、そのため『続・白い巨塔』('69年)が書かかれたということです('94年新装版では、正・続が2段組全1冊に収められている)。

白い巨塔 新潮文庫.jpg 文庫の方は、当初は正(上下2巻)・続に分かれていましたが、'93年の改定で「続」も含め『白い巨塔』として全3巻になり、更に'02年の改定で全5巻になっています(「続」という概念がある時期から消されているともとれる)。最近のテレビドラマもそれに準拠し、財前が亡くなるところまで撮り切っていますが、文庫で読むときは、もともとは今ある全5巻のうち、第3巻までで終わる話だったことを意識してみるのも良いのではないでしょうか。

 因みに、いくつかあるテレビ版で、原作の正編に相当する部分のみで終わっているのは、「続」が書かれる前にドラマ化された佐藤慶版('67年/テレビ朝日系/全26回)のみです。田宮二郎の主演のものも、テレビ版の方は唐沢寿明版と同じく、主人公が癌で亡くなるところまで撮っています。田宮二郎テレビ版では、田宮二郎自身が台本に自分で書いた遺書を挿入し、末期がんのがん患者になり切ったとのこと、ストレッチャーに乗る遺体役での演技をラッシュで確認して、本人は満足していたそうです(その場面が放送される前に自殺したわけだが)。

白い巨塔 .jpgkyotou1.jpg この小説は、続編も含め、単純な勧善懲悪物語にしていないところがこの著者の凄いところです。財前はむしろ、周囲に翻弄されるあやつり人形のような存在で(苦学生上がりで医師になったのに、才能を上司に認められないというのは辛いだろうなあ)、彼をとりまく人々の中に、医学界の権力構造の図式を鮮やかに浮かびあがらせている(読んでると、権力を持たなければ何も出来ないではないかという気にさえさせられる)一方、個々には、権力に憧れる気持ちと真実を追究し正義を全うしようという気持ちが入り混じっているような"普通の人"も多く出てきて、この辺りがこの小説の充実したリアリティに繋がっていると思います。
 
 山崎豊子(1924-2013
山崎豊子.png白い巨塔 東野.jpg白い巨塔 加藤嘉.jpg「白い巨塔」●制作年:1966年●製作:永田雅一(大映)●監督:山本薩夫●脚本:橋本忍●音楽:池野成●原作:山崎白い巨塔 船越 英二.jpg白い巨塔 滝沢修.jpg豊子●時間:150分●出演:田宮二郎/東野英治郎/小沢栄太郎/小川真由美/岸輝子/加藤嘉田村高廣船越英ニ滝沢修藤村志保/下条正巳/石山健二郎/加藤武/里見明凡太朗/鈴木瑞穂/清水将夫/下條正巳/須賀不二男/早白い巨塔 小川真由美.jpg白い巨塔 藤村志保  .jpg川雄三/高原駿雄/杉田康/夏木章/潮万太郎/北原義郎/長谷川待子/瀧花久子/平井岐代子/村田扶実子/竹村洋介/小山内淳/伊東光一/南方伸夫/河原侃二/山根圭一郎/浜世津子/白井玲子/天池仁美/岡崎夏子/赤沢未知子/福原真理子●劇場公開:1966/10●配給:大映●最初に観た場所:渋谷・東急名画座(山甦れ!東急名画座3.jpg甦れ!東急名画座1.jpg東急文化会館.jpg東急名画座 1.jpg本薩夫監督追悼特集) (83-12-05)●2回目:銀座シネパトス (04-05-02) (評価★★★★)
東急名画座 (東急文化会館6F、1986年〜渋谷東急2) 2003(平成15)年6月30日閉館

銀座シネパトス.jpg銀座東映.jpg銀座シネパトス.jpg銀座シネパトス 1952(昭和27)年、ニュース映画の専門館「テアトルニュース」開館、1954(昭和29)年「銀座東映」開館、1967(昭和42)年10月3日「テアトルニュース」跡地に「銀座地球座」開館、1968(昭和43)年9銀座シネパトスs.jpg月1日「銀座東映」跡地に「銀座名画座」開館、1988(昭和63)年7月1日「銀座地球座」→「銀座シネパトス1」、「銀座名画座」→「銀座シネパトス2」「銀座シネパトス3」に改装。2013(平成25)年3月31日閉館
     
              

白い巨塔」(テレビ 1978.jpgテレビドラマ 白い巨塔 田宮二郎  dvd.jpg白い巨塔 ドラマ 1.jpg「白い巨塔」(テレビ・田宮二郎版)●演出:小林俊一●制作:小林俊一●脚本:鈴木尚之●音楽:渡辺岳夫●原作:山崎豊子「白い巨塔」「続・白い巨塔」●出演:田宮二郎/生田悦子/太地白い巨塔 大滝秀治2.jpgTV版「白い巨塔」中村伸郎.jpg喜和子/島田陽子/上村香子/高橋長英/中村伸郎/小沢栄太郎/河原崎長一郎/山本學/金子信雄/清水章吾/大滝秀治佐分利信加藤嘉/渡辺文雄/戸浦六宏/関川慎二/東恵美子/中村玉緒/井上孝雄/小松方正/西村晃/曽我廼家明蝶/渡辺文雄/米倉斉加年/岡田英次/中北千枝子/児玉清/北村和夫/小林昭二●放映:1978/06~1979/01(全31回)●放送局:フジテレビ
白い巨塔 佐分利 信.jpg白い巨塔 (1978年のテレビドラマ) 大河内 加藤.jpg白い巨塔 戸浦六宏.jpg中村伸郎(浪速大学医学部第一外科教授→近畿労災病院院長・東貞蔵)/大滝秀治(大阪地方裁判所裁判長)/佐分利信(東都大学医学部第一外科教授教授・船尾悟)/加藤嘉(浪速大学医学部病理学教授・大河内清作)/戸浦六宏(浪速大学医学部産婦人科教授・葉山優夫)
『白い巨塔_1331.jpeg
    
白い巨塔 ドラマ 2003.jpg「白い巨塔」ドラマ  .jpg「白い巨塔」(テレビ・唐沢寿明版)●演出:西谷弘/河野圭太/村上正典/岩田和行●制作:大多亮●脚本:井上由美子●音楽:加古隆●原作:山崎豊子「白い巨塔」「続・白い巨塔」●出演:唐沢寿明/江口洋介/西田敏行/佐々木蔵之介/上川隆也/伊藤英明/及川光博/石坂浩二/伊武雅刀/黒木瞳/矢田亜希子/水野真紀/高畑淳子/沢村一樹/片岡孝太郎/若村麻由美●放映:2003/10~2004/03(全21回)●放送局:フジテレビ


 【1965年単行本・1969年続編・1973年改訂・1994年新装版[新潮社]/1978年文庫化(上・下・続)・1993年改訂(全3巻)・2002年再改定(全5巻)[新潮文庫]】

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映画を見てドラマを見て再読して、"本格派" 推理小説だったと...。

砂の器 カッパ.jpg 砂の器 (カッパ・ノベルス 11-9).jpg 砂の器.jpg 砂の器 下.jpg  砂の器 dvd.jpg 砂の器 unnmei.jpg
砂の器 (カッパ・ノベルス 11-9)』『砂の器〈上〉 (新潮文庫)』 『砂の器〈下〉 (新潮文庫)』〔'06年改版版〕「砂の器 デジタルリマスター版 [DVD]

sunanoutuwa12.jpg この作品は、'60(昭和35)年5月から翌年4月にかけて「読売新聞」夕刊に掲載され、カッパ・ノベルスで'61(昭和36)年7月刊行、'74年に映画化されたほか、'04年には中居正広主演でTVドラマ化されているので、ストーリーを知る人は多いと思います。

 映画館で映画を観て、「宿命」という言葉(または"曲の演奏")が頭にこびりついてしまい、パセティックな作品とのイメージを持っていましたが、もう一度原作にあたってみると、刑事たちに視点を置いて犯人を地道に追う"本格派" 推理小説の色合いが強いという印象を受けました(中居正広主演のテレビ版は最初から犯人を明かす倒叙型だったので、ミステリとしての面白さは半減。脇役陣は手堅いが、主演の中居正広の演技下手が目立つのも痛い)。

 好みは人それぞれだと思いますが、小説における、推理を通して徐々に、間接的に"犯人像"を浮き彫りにして行く描き方の方が、主人公の"業"のようなものがじわ〜っと感じられる気もします(元々テレビ版の配役で「人間の業」のようなものの描出を期待する方が無理がある?)。

映画「砂の器」.jpg 野村芳太郎(1919‐2005)監督、橋本忍・山田洋次脚本による映画化作品('74年/松竹)は、他の野村監督作品と比較しても、また同じ時期に映画化された他の松本清張原作のものと比べても比較的良い出来だったと思います(個人的には同監督の「鬼畜」('78年/松竹)の方が若干上かなという気がするが、松本清張自身はこの映画化作品を気に入っていたらしい。世間的な評価も「砂の器」の方が上か)。

「砂の器」3.jpg 加藤剛が演じた〈和賀英良〉は、「飢餓海峡」('64年/東映)で三國連太郎が演じた〈犬飼多吉(樽見京一郎)〉や「白い巨塔」('66年/大映)で田宮二郎が演じた〈財前五郎〉と並んで、恵まれない境遇から「成り上がる男」を体現していたと思われ、また、刑事役の丹波哲郎の演技も光るものがありました(その部下役を森田健作が演じている)。

『砂の器』(1974).jpg ただし、幼児期の暗い記憶や、自分をいじめた社会に対しての見返してやるという登場人物のリベンジ・ファクターが清張作品ならではのものだと思うのですが、どこまで映像で表現されていただろうかという気もします。テレビ版では「ハンセン病」というファクターを抜いてしまっているので、なおさらに原作とのギャップを感じざるを得ませんでした。

砂の器 チラシ.bmp『砂の器』(1974)21.jpg  個人的には、この小説が今まで読んだ清張作品の中で一番だとは思わないし、「ハンセン病」に対する偏見を助長したという批判までありますが、作者の代表的な傑作作品であることに異存はなく、結末を知ったうえでも原作を読む価値はあると思います。

映画「砂の器」チラシ
Suna no utsuwa (1974)         
Suna no utsuwa (1974).jpg砂の器  1.jpg「砂の器」●制作年:1974年●製作:橋本プロ・松竹●監督:野村芳太郎●脚本:橋本忍/山田洋次●音楽:芥川也寸志●原作:松本清張●時間:143分●出演:丹波哲郎/森田健作/加藤剛/加藤嘉/緒形拳/山口果林/島田陽子/佐分利信渥美清笠智衆/夏純子/松山省二/内藤武敏/春川ますみ/花沢徳衛/浜村純/穂積隆信/山谷初男/菅井砂の器sunanoutuwa 1.jpg砂の器 丹波哲郎s.jpgきん/殿山泰司/加藤健一/春田和秀/稲葉義男/信欣三/松本克平/ふじたあさや/野村昭子/今井和子/猪俣光世/高瀬ゆり/後藤陽吉/森三平太/今橋恒/櫻片達雄/瀬良明/久保砂の器 (映画) 丹波 .jpg砂の器 丹波.jpg晶/中本維年/松田明/西島悌四郎/土田桂司/丹古母鬼馬二●劇場公開:1974/10●配給:松竹●最丹波哲郎 .jpg初に観た場所:池袋文芸地下(84-02-19) (評価★★★★)●併映:「球形の荒野」(貞永方久)
丹波哲郎 2006年9月24日没

加藤嘉(本浦千代吉(和賀英良(本名・本浦秀夫)の父))
砂の器 (映画) 加藤嘉 .jpg 砂の器 加藤嘉.jpg
緒形拳(亀嵩駐在所巡査・三木謙一)/佐分利信(前大蔵大臣・田所重喜)
緒方拳 砂の器.jpg 佐分利信 砂の器.jpg

渥美清(伊勢の映画館「ひかり座」支配人)/笠智衆(亀嵩算盤・桐原小十郎)
渥美清 砂の器.jpg 笠智衆 砂の器.jpg

殿山泰司(通天閣前の商店街の飲食店組合長)/丹波哲郎(警視庁捜査一課警部補・今西栄太郎)
砂の器 殿山泰司.jpg

池袋文芸地下 地図.jpg文芸坐.jpg

 
池袋・文芸地下 1997(平成9)年3月6日閉館。



「砂の器」 2004.jpeg砂の器 中居版.jpg「砂の器」(TVドラマ版)●演出:福澤克雄/金子文紀●脚本:龍居由佳里●音楽:千住明●出演:中居正広/松雪泰子/渡辺謙/武田真治/京野ことみ/永井大/夏八木勲/赤井英和/原田芳雄/市村正親/かとうかずこ/佐藤仁美/佐藤二朗/森口瑤子/松岡俊介●放映:2004/01~03(全11回)●放送局:TBS

 
  【1961年ノベルズ版[光文社]/1973年文庫化・2006年改版版[新潮文庫]】

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