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この映画を観た外国人は、谷崎ってこんなに面白いのかと思ったのかもしれないけれど...。

Kagi (1959).jpg市川崑 鍵 .jpg市川崑 鍵 dvd 2015.jpg  鍵 谷崎 中公文庫.jpg
鍵 [DVD]」(2015)『鍵 (中公文庫 (た30-6))
Kagi (1959) 仲代達矢/京マチ子(35歳)

鍵 1959  0.jpg 古美術の鑑定家・剣持(中村鴈治郎)は、主治医・相馬(浜村純)の目を盗んで京都T大の内科に通い、娘・敏子(叶順子)の婚約者でインターンの木村(仲代達矢)に精力回復のホルモン剤注射を妻に内緒で打たせている。ある日その内科を剣持の妻・郁子(京マチ子)が訪ね、夫の通院を知るが夫には黙っている。彼女は夫を嫌っていたが、でも夜は...。木村が家に来て、皆でブランデーを飲んだ際、郁子は酔って風呂鍵 1959 1.jpg場で眠ってしまう。剣持は木村に手伝わせ、裸身の妻を寝室へ運ぶ。木村と郁子を煽り、嫉妬によって自らの気持を若返らせるという剣持の策略だ。その夜も剣持は盛んに妻に鍵 1959 47.jpg酒を勧め、郁子は酔って風呂場へ消える。翌日木村は呼ばれ、フィルムの現像を頼まれる。敏子はそうした現場を目撃してしまう。木村は敏子と既に関係を持っていた。敏子は家を出て間借りする。その彼女の下宿で、郁子は酔ってまた風呂場で倒れる。敏子が剣持に知らせに行く間、木村と郁子は二人きりだった。その夜、剣持が高血圧からの眩暈で倒れるという出来事があった。郁子が何処かへ出掛け、敏子が来て父娘は久しぶりに夕食を共鍵 1959 s.jpgにする。木村と郁子は度々会っている。彼女の貞操が不潔な方法で...言いかけた敏子に剣持は怒り、彼女を追い帰す。彼は妻には黙って木村と敏子を呼び寄せ、急に君たちの結婚の日取りを決めようと言う。敏子は、「母は父が具合が悪いのを前から知っていて、父を興奮させて殺すために貴方を利用していたのかも知れません」と木村に言う。郁子は婚約が整って晴々としている。剣持は映画に3人で行けと小遣いをくれるが、郁鍵 s.jpg子も木村も用事があると言い、敏子が一人残される。夜、郁子が帰って来て、木村と全て結着をつけてきた、木村との間には何も無かったと言う。深夜、郁子の顔の上へ剣持の頭がグラリと崩れ落ち、郁子はテキパキと処置する。木村も来て、郁子は彼に「今夜、十一時にね」と言って裏口の鍵を渡す。夜、女中部屋で2人は抱き合う。郁子は彼に敏子と結婚して、ここに一緒鍵 09.jpgに住み、開業すればと言い、木村はそれに従うつもりだ。ある晩、剣持は郁子に衣服を脱ぐことを命じ、その美しい肉体に歓喜しながら死ぬ。葬式が終わり、骨董品は古美術商が持って行き、家も抵当に入っているらしい。金の切れ目が縁の切れ目と、木村はこの一鍵 _R.jpg家から足を抜きたいと思い始める。敏子は台所の農薬を郁子の紅茶に入れるが、彼女は平然としている。婆やのはな(北林谷栄)が色盲で、ミガキ粉の罐と間違うといけないと中身を入れ替えていたのだ。そのはなが3人のサラダに農薬をふりかける。薬が効き、敏子が倒れ、郁子が眼を閉じ、木村も死ぬ。はなは自分が3人を殺害したと自白するが、警察はボケ老人だと思って相手にせず、妻が夫の後を追い、娘とその婚約者がそれに同情死したと解する―。

 市川崑(1915-2008)監督の1959年公開作品。1960年5月に開催された第13回カンヌ国際映画祭のコンペティションに出品され、審査員賞をミケランジェロ・アントニオーニ監督の「情事」('60年/伊)と同時受賞し、第17回ゴールデングローブ賞(英語版)では、外国語映画賞を受賞しています。

 原作は言わずと知れた谷崎潤一郎の「」で、この作品以降、国内では3回映画化されていますが、それぞれ、1974年版が神代辰巳監督のロマンポルノで(主演:荒砂ゆき、観世栄夫)、1983年版がピンク映画の木俣堯喬の監督作(主演:松尾嘉代、岡田眞澄)、1997年版は池田敏春監督作で(主演:川島なお美、柄本明)、これも川島なお美の裸が売りだったような。この外に1984年のイタリア映画「鍵」(ティント・ブラス監督)があり鍵 川島.jpgます。海外版は未見ですが、日本版で原作の芸術性を重視して撮られているのはこの市川昆監督作だけのような気もします。但し、原作がそもそも「ワイセツか文学か」という議論のネタになりそうな要素を孕んでいるだけに、この市川監督作さえ微妙と言えるかも(評論家か誰かが「ポルノ映画の秀作」と呼んでいた)。

「鍵」1997年版(監督:池田敏春/出演:川島なお美(1960-2015)

 日本版は4作とも原作を改変しており、この市川監督作も、まず、日記という形式を設定していないという大きな枠組み改変があります。従って、日記をしまう箱の「鍵」なども出て来ず、鍵が出てくるのは、郁子(京マチ子)が木村(仲代達矢)に逢引き用に渡す裏口の「鍵」のところです。その外に、夫(中村鴈治郎)の職業が大学教授から美術品鑑定家になっていたりするなど細かい改変があります。

鍵 195971.jpg ストーリー的には、前半はほぼ原作通りに進みますが、半身麻痺の夫が、自分の目の前で妻に裸になることを要求し、その肉体美に歓喜しながら死んでいくというのは映画のオリジナルであり、さらに最後、夫の死後、娘・敏子(叶順子)が母の毒殺を試みるが失敗し、続いて婆や(北林谷栄)が郁子・敏子・木村を毒殺するというのは、"大胆"と言うより"驚愕"の改変と言っていいのではないでしょうか。

鍵 1959 48.png 原作では、また違った意味でのドンデン返しのようなものがあるのですが、それは日記の表現に関わるものであり、映像化が難しい言わば"文学的"なドンデン返しです。一方、映画の方は、最初から日記という枠組みを外してしまっているので、和田夏十(本名:市川由美子、1920-1983)らの脚本は、こうしたオリジナルの結末を用意したのでしょう。この映画を観た外国人は、谷崎ってこんなに面白いのかと思ったのかもしれないけれど、少なくともラストは谷崎じゃないと言いたくもなるような気もします。

鍵 1959 冒頭.jpg でも確かに、仲代達矢演じる木村が冒頭で「人間は誰もが老衰から免れることは出来ません」「この映画は老衰と闘った悲愴で非常に興味のある物語です」とシニカルにコメントし、冷静な語り部的な立場なのかなと思ったら、最後は自身が毒殺の憂き目に遭い、なぜ自分が殺されなければならないのか分からないといったまま苦悶に眼を見張るのが、意外性という意味では効いていたように思います。

鍵 1959 京.jpg 京マチ子(1924- )は、「羅生門」('50年)、「源氏物語」('51年)、「地獄門('52年)、「千姫」('53年)といった時代物の印象が強いですが、こうした現代ものでもしっかり存在感と言うかリアリティを醸していて、やはり女優としては希有な存在と言えるのでしょう。当時35歳で、原作の妻・郁子は46歳ですから、原作の設定よりかなり若いということになりますが、映画にすると(観客のこともあって)大体こんな感じになるのかでしょうか。

鍵-11.jpg鍵 1959 中村鴈治郎.jpg 一方、歌舞伎役者で「映画スターの中村鴈治郎」と言われた2代目・中村鴈治郎(1902-1983)は、当時57歳。2年後に小津安二郎監督の「小早川家の秋」('61年/東宝)でも"好色老人"(愛人宅で亡くなるご隠居)を演じていますが、同じ好色ぶりでも、この「鍵」の方が淫靡な感じがして小早川家の秋 S.jpg(谷崎にマッチしていて?)いいです。大体、主人公の年齢(56歳)と同じ年齢で演じていることになりますが、妻役の京マチ子との間には実年齢で22歳もの開きがあります。

中村鴈治郎 in「小早川家の秋」('61年/東宝)

 因みに、京マチ子はこの作品の10年前に同じく谷崎潤一郎原作で木村恵吾監督の「痴人の愛」('49年/大映)で主人公のナオミを演じていましたが、剣持の娘・敏子を演じた叶順子(1936- )はこの痴人の愛 京マチ子.jpg痴人の愛 叶順子.jpg作品の翌年、同じ木村恵吾監督によってリメイクされた「痴人の愛」('60年/大映)で主人公のナオミを演じています(1963年の人気ピーク時に引退)。
「痴人の愛」('49年)京マチ子、宇野重吉主演/「痴人の愛」('60年)叶順子主演

鍵(1959)1.jpg鍵 1959 01.jpg「鍵」●制作鍵 1957es.jpg年:1959年●監督:市川昆●製作:永田雅一●脚本:長谷部慶治/和田夏十/市川崑●撮影:宮川一夫●音楽:芥川鍵 1957 市川ド.jpg也寸志●原作:谷崎潤一郎●時間:107分●出演:京マチ子/叶順子/仲代達矢/中村鴈治郎/北林谷栄/菅井一郎/倉田マユミ/潮万太郎/星ひかる/浜村純/山茶花究/伊東光一/花布辰男/大山健二/河原侃二/高村栄一/南部彰三/伊達三郎/中條静夫●公開:1959/06●配給:大映(評価:★★★☆)

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橋本忍脚本が巧みな「切腹」。壮絶且つ凄絶な復讐(仇討)劇。決闘シーンも味がある。

切腹 1962 ポスター.jpg切腹 1962 dvd.jpg 切腹 1962 決闘シーン.jpg  『東京裁判』 dvd.jpg
「切腹」 [DVD]」/護持院原決闘シーン(丹波哲郎・仲代達矢) 「東京裁判 [DVD]
「切腹」ポスター
切腹 1962 前庭 仲代.jpg 寛永7(1630)年10月、井伊家上屋敷に津雲半四郎(仲代達矢)という浪人が訪れ、「仕官先もままならず、生活も苦しくなったので屋敷の庭先を借りて切腹したい」と申し出る。申し出を受けた家老・斎藤勘解由(かげゆ)(三國連太郎)は、春先、同様の話で来た千々岩求女(石濱朗)の話をする。食い詰めた浪人たちが切腹すると称し、なにがしかの金品を得て帰る最近の流行を苦々しく思っていた勘解由が切腹の場をしつらえると、求女は「一両日待ってくれ」と狼狽したばかりか、刀が竹光であったために死に切れず、舌を噛み切って無惨な最期を遂げたと。この話を聞いた半四郎は、自分はその様な"たかり"ではないと言って切腹の場に向かうが、最後の望みとして介錯人に沢潟(おもだか)彦九郎(丹波哲郎)、矢崎隼人(中谷一郎)、川辺右馬介(青木義朗)の3人を順次指名する。しかし、指名された3人とも出仕しておらず、何れかの者が出仕するまでの間、半四郎は自身の話を聞いて欲しい「切腹」 (1962 松竹).jpgと言う。求女は実は半四郎の娘・美保(岩下志麻)の婿で、主君に殉死した親友の忘れ形見でもあった。孫も生れささやかながら幸せな日が続いていた矢先、美保が胸を病み孫が高熱を出した。赤貧の浪人生活で薬を買う金も無く、思い余った求女が先の行動をとったのだ。そんな求女に一両日待たねばならぬ理由ぐらいせめて聞いてやる労りはなかったのか、武士の面目などとは表面だけを飾るもの、と勘解由に厳しく詰め寄る半四郎が懐から出したものは―。

『東京裁判』 映画.jpg小林正樹.jpg 「人間の條件」6部作('59-'61年)の小林正樹(1916-1996/享年80)が1962(昭和37)年に撮った同監督初の時代劇作品であり、この監督には「東京裁判」('83年)という長編ドキュメンタリー傑作もあります。この「東京裁判」という映画を観ると、裁判の争点は端的に言えば、天皇を死刑にすべきかどうかという点であったともとれ(中心となる戦犯らは死刑が裁判前からすでに確定しているようなもので、魂『東京裁判』 映画2.jpgを抜かれたお飾りのように被告席にいるだけ)、そのことを(主役が法廷にいないことも含め)浮き彫りにした内容であるだけに4時間37分を飽きさせることなく、下手なドラマよりずっと緊迫感がありました(この編集の仕方こそがドキュメンタリーにおける監督の演出とも言える。ナレーターは佐藤慶)。争点が天皇にあったことは、この裁判が、昭和天皇の誕生日(現昭和の日)に11ヶ国の検察官から起訴されたことに象徴されており、天皇に処分は及ばなかったものの、皇太子(当時)の誕生日(現天皇誕生日)に被告人28名のうちの7名が絞首刑に処されたというのも偶然ではないように思われます。
「切腹」ポスター in 小津安二郎「秋刀魚の味」
切腹 poster.jpg切腹 小林正樹.jpg 「切腹」の原作は滝口康彦(1924-2004)の武家社会の虚飾と武士道の残酷性を描いた作品です。映画化作品にも、かつて日本人が尊んだサムライ精神へのアンチテーゼが込められているとされていますが、井伊家の千々岩求女への対応は、武士道の本筋を外れて集団サディズムになっているように感じました(同時に斎藤勘解由は、千々岩求女を自らの出世の材料にしようとしたわけだ)。ストーリーはシンプルですが骨太であり(脚本は橋本忍)、観る側に、何故半四郎が介錯人に指名した3人が何れもその日に出仕していないのかという疑問を抱かせたうえで、半四郎がまさに切腹せんとする庭先の場面に、半四郎の語る回想話をカットバックさせた橋本忍氏の脚本が巧みです。

切腹(196209 松竹).jpg 壮絶且つ凄絶な復讐(仇討)劇でしたが、改めて観ると、息子・千々岩求女の亡骸を半四郎が求女の妻・美保と一緒に引き取りに来た際に、求女に竹光で腹を切らせた首謀者である沢潟、矢崎、川辺の3人しか半四郎に会っておらず、それ以外の者には半四郎の面が割れていないとうのが一つの鍵としてあったんだなあと。

切腹 1962 岩下.jpg 半四郎役の仲代達矢(当時29歳)は、長台詞を緊迫感絶やすことなくこなしており、勘解由役の三國連太郎(当時39歳)、沢潟役の丹波哲郎(当時39歳)の "ヒール(悪役)"ぶりも効いています(19歳の美保を演じた岩下志麻は当時21歳だったが、やはり若い。11歳の少女時代(右)まで演じさせてしまっているのはやや強引だったが)。

切腹 1962 三國.jpg 撮影中に起きた仲代達矢と三國連太郎の演劇と映画の対比「論争」は海外のサイトなどにも紹介されていて(この作品は「カンヌ映画祭」で審査員特別賞を受賞している)、仲代達矢の台詞を喋る声が大きすぎて、三國連太郎が(仲代達矢が演劇出身で)映画と演劇の違いが解っていないとしたのに対し、仲代達矢は、集音マイクがあろうと、実際の人物間の距離に合わせた声量で台詞を言うべきだと反論したというものです(小林正樹監督が両者が納得し合うまで議論するよう仕向けたため撮影は3日間中断、後に仲代達矢はあの議論は有意義だったと述懐している)。

切腹 1962 丹波.jpg カットバック(回想)シーンの中にある仲代達矢と丹波哲郎の決闘場面はなかなかの圧巻で、仲代達矢はこの作品と同じ年の1月に公開された「椿三十郎」('62年/東宝)で先に三船敏郎と決闘シーンを演じているわけですが、丹波哲郎との決闘シーンは、それとはまた違った味わいがありました(「椿三十郎」と言わば真逆の役回りであることもあり、"仲代達矢目線"で観ればこちらの方がいい)。

 因みに、その仲代達矢の腰を低く落として脇に刀を構える構えは戦国時代のもので、丹波哲郎の直立姿勢での構えは江戸時代初期に始まりその後主流となったものであるとのことです。

護持院原の敵討―他二篇 森鴎外著.png 両者が決闘した護持院原(ごじいんがはら)は、森鷗外の中編「護持院原の敵討」でも知られていますが、現在の千代田区神田錦町辺りで、江戸時代は"敵討ちの名所"だったようです(江戸から「中追放」の罪となった者の放たれる境界線のすぐ外側。従って、放たれた途端に、私怨を晴らし切れない者などに決闘を申し込まれる)。沢潟の方から半四郎をわざわざ決闘の場として護持院原に誘ったことがずっと個人的には解せなかったのですが、この作品の時代設定は大阪の陣からまだ15年しか経っていないので(まだ"敵討ちの名所"になっていない?)、たまたま近場の原っぱが護持院原だったと考えれば、沢潟が半四郎を護持院原に誘ったこと自体は不自然ではないのかもしれないと改めて思いました。

Seppuku(1962)  第16回カンヌ国際映画祭「審査員特別賞」受賞作
Seppuku(1962).jpg

近江彦根藩井伊家屋敷跡(東京都千代田区)の石碑.jpg 因みに、滝口康彦(1924-2004)による原作「異聞浪人記」は、講談社文庫版『一命』に所収(三池崇史監督、市川海老蔵 主演の本作のリメイク作品('11年)のタイトルは「一命」となっている)。『滝口康彦傑作選』(立風書房)にある原作に関する「作品ノート」によれば、「『明良洪範』中にある二百二十字程度の記述にヒントを得た。彦根井伊家の江戸屋敷での話で、原典では井伊直澄の代だが、小説では、大名取潰しの一典型といえる福島正則の改易と結びつけるため、直澄の父直孝の代に変えている」とのことです。『明良洪範』の記述の史実か否かの評価については様々な異論があるようですが、ある程度歴史通の人たちの間では、この中にある、彦根藩(この藩は当時は弱小藩だったが後に安政の大獄で知られる大老・井伊直弼を輩出する)が士官に来た浪人を本当に切腹させてしまったことが、こうした「狂言切腹」の風習が廃れるきっかけとなったとされているようです。
近江彦根藩井伊家屋敷跡(東京都千代田区)の石碑

人間の条件2.jpg小林 正樹(こばやし まさき、1916年2月14日 - 1996年10月4日)は、北海道小樽市出身の映画監督である。1952年(昭和27年)、中編『息子の青春』を監督し、1953年(昭和28年)『まごころ』で正式に監督に昇進。1959年(昭和34年)から1961年(昭和36年)の3年間にかけて公開された『人間の條件』は、五味川純平原作の大長編反戦小説「人間の條件」の映画化で、長きに渡る撮影期間と莫大な製作費をつぎ込み、6部作、9時間31分の超大作となった。続く1962年(昭和37年)初の時代劇『切腹』でカンヌ国際映画祭審査員特別賞を受賞。続いて小泉八雲の原作をオムニバス方式で映画化した初のカラー作品『怪談』は3時間の大作で、この世のものとは思えぬ幻想的な世界を作り上げ、二度目のカンヌ国際映画祭審査員特別賞を受けた他、アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされ、日本映画史上屈東京裁判 小林正樹.jpg指の傑作と絶賛された。1965年(昭和40年)松竹を退社して東京映画と契約し、1967年(昭和42年)三船プロ第一作となる『上意討ち 拝領妻始末』を監督して、ヴェネツィア国際映画祭批評家連盟賞を受賞、キネマ旬報ベスト・ワンとなった。1968年(昭和43年)の『日本の青春』のあとフリーとなり、1969年(昭和44年)には黒澤明、木下恵介、市川崑とともに「四騎の会」を結成。1971年(昭和46年)にはカンヌ国際映画祭で25周年記念として世界10大監督の一人として功労賞を受賞。1982年(昭和57年)には極東国際軍事裁判の長編記録映画『東京裁判』を完成させた。1985年(昭和60年)円地文子原作の連合赤軍事件を題材にした『食卓のない家』を監督。これが最後の映画監督作品になる。(「音楽映画関連没年データベース」より)

切腹 1962 チラシ.jpg切腹 1962 仲代 立ち回り.jpg「切腹」●制作年:1962年●監督:小林正樹●脚本:橋本忍●撮影:宮島義勇●音楽:武満徹●原作:滝口康彦「異聞浪人記」●時間:133分●出演:仲代達矢/三國連太郎/丹波哲郎/石浜朗/岩下志麻/三島雅夫//中谷一郎/佐藤慶/稲葉義男/井川比佐志/武内亨/青木義朗/松村達雄/小林昭二/林孝一/五味勝雄/安住譲/富田仲次郎/田中謙三●公開:1962/09●配給:松竹(評価:★★★★)

『東京裁判』 映画1.jpg『東京裁判』 映画3.jpg「東京裁判」●制作年:1983年●監督:小林正樹●総プロデューサー:須藤博●脚本:小笠原清/小林正樹●原案:稲垣俊●音楽:武満徹●演奏:東京コンサーツ●ナレーター:佐藤慶●時間:277分●公開:1983/06●配給:東宝東和●最初に観た場所:池袋文芸坐(84-12-08)(評価:★★★★)

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優れたカメラ効果を生んでいるシーンが多くあり、特にロケシーンは貴重な映像の連続。

天国と地獄 vhs.jpg 2天国と地獄 dvd .jpg 天国と地獄 dvd.jpg
天国と地獄 [VHS]」「天国と地獄 [監督:黒澤明][三船敏郎] [レンタル落ち]」「天国と地獄<普及版> [DVD]

天国と地獄 ポスター.jpg天国と地獄 チラシ.jpgTengoku to jigoku(1963).jpg 製靴会社の専務・権藤(三船敏郎)の息子(江木俊夫)と間違えられて、運転手・青木(佐田豊)の息子が誘拐された。要求された身代金は三千万円。苦悩の末、権藤は運転手のために全財産を投げ出して三千万円を犯人に受け渡すことを決意し、無事子供を救出する。非凡な知能犯の真の目的は―。
Tengoku to jigoku(1963)
天国と地獄  01.jpg
ポスター(左)/チラシ(上)
(下)中村伸郎/伊藤雄之助/田崎潤/三船敏郎
天国と地獄 中村伸郎 .jpg 今観てもつくづく凄い映画だと思います。前半部分の権藤邸での息詰まる舞台演劇のような緊張感と(製靴会社買収攻防の持株数の話はエド・マクべインの原作に基づいている)、後半の犯人と警察及び権藤との攻防のダイナミックな展開の対比がいいです。主演の三船敏郎もいいけれど、戸倉警部役の日本版FBIのような仲代達矢もいい。この映画の仲代達矢は、前半部分では観客の視線を代弁しているような面もあり、演出構成の巧さというのもあるかと思いますが、「用心棒」('61年)での役柄よりも個人的には好みです。そして、犯人・竹内銀次郎を演じる当時は新人であった山崎努もいいです。

天国と地獄12.jpg 更に脇役陣として、戸倉警部の上司に志村喬と藤田進、刑事に木村功や加藤武、名古屋章、土屋嘉男がいて、新聞記者には千秋実、三井浩次、北村和夫がいて、権藤の社内の敵に伊藤雄之助、田崎潤、中村伸郎、工場の靴職人に東野英次郎、ゴミ焼却炉の作業員に藤原釜足、麻薬街には菅井きんといった具合に、細かい処でベテランが出ていて、しかもその内のかなりを黒澤組の常連が固めていたことが窺えます。

天国と地獄  11.jpgこだま 151系電車.jpg 「特急こだま号」の車内での撮影は、実際と同じ12両編成の特急こだま号が借り切られ、他の列車の運行の妨げにならないよう特別ダイヤで運行させていますが、限られた時間内で(当時は東京―大阪間6時間ぐらい。新幹線だったらもっとキツかっただろなあ)、しかも車中だけでなく、酒匂川での身代金の受け渡しシーンなど殆ど撮り直しがきかない条件の中、よく撮ったものだなあと。役者や撮影スタッフの緊張感がそのまま画面に表れていて、それが、緊迫した臨場感を生んでいるように思います。

天国と地獄 煙突.jpg 煙突から赤い煙が上がるシーンなども衝撃的でした。モノクロ画面に合成着色するというこの手法は、「椿三十郎」('62年)で椿の花だけカラーで映すというアイデアが実行出来なかったのをこの作品で実現したものだそうで、「踊る大捜査線 THE MOVIE」('98年)でもオマージュとして引用されました。その他にも、カメラのアングルやカメラワークなどで優れた効果を生んでいるシーンが多くあり、この作品を改めて観ると、最近の邦画はもっと先人の知恵を活かして工夫した方がいいのではないかと思ったりもします。

天国と地獄  03.jpg 山崎努演じる犯人・竹内銀次郎が歩き回る横浜の街中や店の様子も、「生きる」(52年)で志村喬が伊藤雄之助に引っ張り回されて徘徊する歓楽街の様と同様にシズル感があり、雰囲気は出ていたように思います。一方で、昭和38年頃でまだこんなアヘン窟みたいな所があったの?と思わせなくもないですが、当時の週刊誌記事(下)によると、横浜に"ハマの麻薬地帯"と呼ばれる地域が実際にあったようです。

天国と地獄  01.jpg この映画、最初に観た時の個人的評価は5つ星が満点として星3つ半という、どういうわけかそう高くないものHigh and Low(Tengoku to Jigoku).jpgになっていて、おそらく、ラストの権藤と竹内の面会シーンが自分の中で解題出来なかったのが評価のマイナス要因だったのではないかと思いますが、今観ると、自分なりに分かる気がします。
 竹内は権藤の苦しんでいる様を確認したくて彼に面会を求めたけれど、権藤は持ち前の叩き上げ精神で既に新たな一歩を踏み出していたわけで、竹内もそこまでは権藤という人物を把握していなかったわけかと。権藤は、なぜ竹内が自分を憎むのかさえ理解できず、この面会は完全に竹内の空振りで終わっています(そのことが同時に竹内の精神的瓦解に繋がる)。
天国と地獄  04.jpg 黒澤明がこの作品を撮った動機の一つに、児童誘拐犯罪の刑罰の軽さに対する憤りもあったと言われていますが、黒澤監督はここでは竹内を(死刑に対する彼の怯えも含め)容赦なく無残極まりない「敗者」として描いており、ピカレスクロマンとは一線を画しているように思いました。

天国と地獄  13.jpg天国と地獄  14.jpg この映画は'63年3月1日の公開であり、今年('13年)オリンピックの東京での2度目の開催(2020年)が決まりましたが、前の東京オリンピック('64年)の前年の公開ということになります(新幹線は未だ開通していない)。そ~かあ、今年でこの作品が公開されてから丁度50年になるのかあと。今観ると、とりわけロケシーンは貴重な映像の連続のように思え、時間の経過と共に価値が増してくる作品かもしれません。半世紀と言う年月の経過に一つの節目というものを感じますが、公開50年目に当たるこの1年間、地上波ではどの局でも放映されなかったようです(現実に誘拐事件が発生していることとの関係(配慮)もあるのか)。

佐田豊.jpg 権藤邸の運転手・青木がここまで責任を感じて自ら犯人の犯行拠点を探ろうとするものかという印象も最初に観た時はありましたが、見直してみて、時代背景というよりは、権藤を裏切る会社幹部との対比での描かれ方だったように思いました。その運転手役の佐田豊は1911年生まれで、2010年時点で健在であることが確認されているとのことです。今(2013年12月)現在も存命中であれば102歳になっており、かつての東宝専属俳優の中でも最長老の人物ということになります。
     
「サンデー毎日」1962(昭和37)年
ハマの麻薬地帯.jpg

天国と地獄63.jpg天国と地獄107.jpg

天国と地獄  02.jpg天国と地獄  15.jpg「天国と地獄」●制作年:1963年●監督:黒澤明●制作:東宝/黒澤プロダクション●脚本:黒澤明/菊島隆三/久板栄二郎/小国英雄●撮影:斎藤孝雄/中井朝一●音楽:佐藤志村 喬 in 天国と地獄.jpg東野英治郎 in 天国と地獄.jpg勝●原作:エド・マクベイン「キングの身代金」●時間:143分●出演:三船敏郎/仲代達矢/山崎努/香川京子/佐田豊/三橋達也/木村功/志村喬/石山健二郎/伊藤雄之助/中村伸郎/田崎潤/名古屋章/藤田江木俊夫.jpg進/田口精一/千秋実/土屋嘉男/三井浩次/北村和夫/東野英次郎/藤原釜足/菅井きん/江木俊夫/島津池袋文芸地下 地図.jpg文芸坐.jpg雅彦/山茶花究/浜村純/西村晃/沢村いき雄●公開:1963/03●配給:東宝●最初に観た場所:池袋・文芸地下(80-07-03)●2回目:北千住・シネマブルースタジオ(11-01-22)(評価:★★★★★)●併映(1回目):「三十六人の乗客」(杉江敏男) 
池袋・文芸地下 1997(平成9)年3月6日閉館。

《読書MEMO》
小林久三(推理作家,1935-2006)の推す推理・サスペンス映画ベスト10『大アンケートによる日本映画ベスト150』('89年/文春文庫ビジュアル版)
①天国と地獄('63年、黒澤明)
②飢餓海峡('64年、内田吐夢)
③砂の器('74年、野村芳太郎)
④新幹線大爆破('75年、佐藤純彌)
⑤黒い画集・あるサラリーマンの証言('60年、堀川弘道)
⑥張込み('57年、野村芳太郎)
⑦犬神家の一族('76年、市川昆)
⑧天城超え('83年、三村晴彦)
⑨黒の試走車('62年、増村保造)
⑩赤いハンカチ('64年、舛田利雄)

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娯楽性を徹底的に追求した作品。「七人の侍」同様、劇場または大画面テレビで観たい。

用心棒 パンフ.jpg用心棒 ポスター1.jpg用心棒 dvd.jpg 用心棒03.jpg
用心棒<普及版> [DVD]」三船敏郎/加東大介/仲代達矢

「用心棒」パンフレット/ポスター        

用心棒  大.jpg 空風吹き荒ぶ上州・馬目の宿場町は、2つのやくざ勢力の対立によって墓場のように静まり返っていたが、そこへ流離の浪人(三船敏郎)が現れ、居酒屋の亭主の権爺(東野英治郎)から村を荒んだ状況にしている元凶である抗争話を聞きつけ、桑畑三十郎と名乗って両方の勢力に用心棒として売り込みつつ、巧みに相討ちを仕組んでいく。しかし、そこに伊達な雰囲気を漂わせた丑寅の弟、新田(しんでん)の卯之助(仲代達矢)が最新の短銃を手に帰郷して―。

 黒澤明(1910-1998)が映画の娯楽性を徹底的に追求した作品で、三船敏郎もいいし、宮川一夫のカメラもいいです。脚本が、ダシール・ハメットの『血の収穫』を参考にしていることはよく知られており、黒澤明本人が「『血の収穫』だけじゃなくて、本当はクレジットにきちんと名前を出さないといけないぐらいハメット(のアイデア)を使っている」と語っています。

 因みに『血の収穫』は、探偵社支局員の「私」(作中に名前が出てこない)が、ギャングの縄張り抗争で殺人の修羅場と化した町を、町の中の4つの対抗勢力を2対2に分断して抗争させ、更に残った2つを1対1に分断して争わせることで、たった一人で町を浄化してしまうというもので、この「用心棒」もコンセプトは同じで、今風に言えば、グループダイナミクスを利用してレバレッジ効果を得ることで、不可能を可能にしてしまう―といったところでしょうか。

用心棒01.jpg 馬目の名主(なぬし)絹問屋主人の多左衛門(藤原釜足)が肩入れしている女郎屋の清兵衛(河津清三郎)がこの町のやくざの親分で、清兵衛が倅の与一郎(太刀川寛)に縄張りを譲用心棒 志村喬.jpgろうとしたため、一の子分の新田の丑寅(山茶花究)が怒って袂を分かち、それを次の名主の座を狙う造酒屋の徳右兵衛(志村喬)が後押しするという構図になっていて、表向きは「多左衛門vs. 丑寅」のやくざ抗争ですが、それ用心棒 志村喬2.jpgぞれバックに絹問屋と造酒屋が付いているということになり、『赤い収穫』ほど設定は複雑ではないものの、一応枠組みを早めに理解しておいた方が楽しめます(東野英治郎演じる権爺が手短に話してはいるが)。

 両勢力が三十郎を自陣の用心棒にしたいがために、そのことを利用した三十郎の策に翻弄される中、卯之助は唯一人三十郎に疑いを抱き、その計画を見破って、三十郎を袋叩きにし、半殺しにするまでに追い詰めていきます。

 満身創痍の三十郎が権爺の助けで念仏堂に身を隠して怪我を癒す間にも、卯寅方は清兵衛一家に殴り込みをかけて皆殺しにしてしまうなど事態は進展し、三十郎の方は念仏堂で、一見所在なさげに、舞う枯葉に包丁を投げつけている―。

用心棒 ワイド.jpg でも、この包丁投げ、残る丑寅方を潰すには、卯之助さえ封じ込めれば後は何とかなり、但し、短銃を肌身離さず持っている彼を倒すには、こっちも飛び道具でいくしかないという三十郎の読みだったわけで(練習してたのかあ)、権爺が丑寅方に囚われたことを知った三十郎が単身で丑寅方へ乗り込み、「1対大勢」の決闘で三十郎が先ずやったことは―。
    
羅生門綱五郎1.jpg 役者陣が豊富と言うか、丑寅の子分役でジェリー藤尾とか、清兵衛の子分役で天本英世とか、百姓の小倅役で夏木陽介とかも出ていたんだなあと。印象に残っている脇役は、丑寅の子分・閂(かんぬき)を演じた台湾出身の元力士新高山(1940年花籠部屋に入門)こと羅生門綱五郎かな。2メートルを超える大男で三十郎を軽く投げ飛ばしてしまいますが、セリフもちゃんとあって、しっかり演技もしています。

羅生門綱五郎2.png この映画を非公式に(東宝の許諾無しに)リメイクした作品では、クリント・イーストウッドの出世作「荒野の用心棒」('64年/伊)があり、東宝の許諾を得てリメイクしたものには、ブルース・ウィリス主演の「ラストマン・スタンディング」('96年/米)がありますが、「ラストマン・スタンディング」にも大男が出てたなあ。


Yôjinbô (1961)_.jpgYôjinbô(1961).jpg 黒澤明にはかつて助監督時代に山本周五郎の「日日平安」を脚本化しましたが、原作通りの脆弱な人物像の主人公として描いたために映画会社に採用されず、それが、この映画「用心棒」('61年4月公開)が大ヒットして映画会社から続編に近いものを要請されて、オクラ入りになっていた脚本を桑畑三十郎のイメージに合わせて剣豪時代劇風に脚色し直したものが「椿三十郎」('62年1月公開)です。
Yôjinbô(1961)

用心棒02.jpg どちらも傑作ですが、個人的には、最初にビデオで観てしまった「椿三十郎」よりも、名画座ながらも一応は劇場で観た「用心棒」の方がインパクトあったかなあ。「七人の侍」('54年)と同じく本来は劇場で観たい映画ですが、どちらもあまり劇場でのリヴァイバルにはかからない。ただ、最近は大画面テレビもが普及しているし、せっかく大画面テレビがウチにあるなら、こういう作品こそ観るべきではないかなと。作家・吉村昭は、完成度、面白さでこの作品をベストワンに挙げています(2位が「七人の侍」)。[『大アンケートによる日本映画ベスト150』('89年/文春文庫ビジュアル版)より]

東野英治郎(居酒屋の権爺)/三船敏郎(椿三十郎)/渡辺篤(棺桶屋)
用心棒-yojimbo4.png

三船敏郎v.jpg三船敏郎(1961年、「用心棒」で日本人初のベネチア国際映画祭男優賞に選ばれる)

用心棒 vhs.jpg「用心棒」●制作年:1961年●監督:黒澤明●製作:田中友幸/菊島隆三●脚本:黒澤明/菊島隆三●撮影:宮川一夫●音楽:佐藤勝●剣道指導:杉野嘉男●時間:110分●出演:三船敏郎(桑畑三十郎)/仲代達矢(新田の卯之助)/東野英治郎(居酒屋の権爺)/河津清三郎(馬目の清兵衛)/山田五十鈴(清兵衛の女房おりん)/太刀川寛(清兵衛の倅与一郎)/志村喬(造酒屋徳右衛門)/藤原釜足(名主左多衛門)/夏木陽介(百姓の小倅)/山茶花究(新田の丑寅)/加東大介(新田の亥之吉)黒澤 明 「用心棒」3.jpg/渡辺篤(桶屋)/土屋嘉男(百姓小平)/司葉子(小平の女房ぬい)/沢村いき雄(番屋の半助)/西村晃(無宿者・熊)/加藤武(無宿・瘤八)/藤田用心棒 有楽座.jpg進(用心棒・本間先生)/中谷一郎(斬られる凶状持)/堺左千夫(八州周りの足軽)/谷晃(丑寅の子分・亀)/羅生門綱五郎(丑寅の子分・閂(かんぬき)/ジェリー藤尾(丑寅の子分・賽の目の六)/清水元(清兵衛の子分・孫太郎)/佐田豊(清兵衛の子分・孫吉)/天本英世(清兵衛の子分・弥八)/大木正司(清兵衛の子分・助十)●劇場公開:1961/04●配給:東宝●最初に観た場所:高田馬場パール座(81-03-23)●2回目:北千住・シネマブルースタジオ(10-12-25)(評価★★★★★ 
「用心棒」公開時(1961年・有楽座)
 
高田馬場パール座入口(写真共有サイト「フォト蔵」)①②高田馬場東映/高田馬場東映パラス ③高田馬場パール座 ④早稲田松竹
高田馬場パール座2.jpg高田馬場パール座 地図.pngパール座.jpgパール座1.jpg高田馬場パール座(高田馬場駅西口、早稲田通り・スーパー西友地下) 1951(昭和26) 年封切館としてオープン。1963(昭和38)年の西友ストアー開店後、同店の地下へ。1989(平成元)年6月30日閉館。
 
  

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谷啓の「しばたき」と石原慎太郎の「しばたき」。

空想天国 dvd.jpg 空想天国2.jpg     スパルタ教育 石原慎太郎.jpg 
松森 健 監督・谷 啓 主演(酒井和歌子 共演)「空想天国 [DVD]」['68年]/石原慎太郎『スパルタ教育』['69年]

空想天国1.jpg 建設会社に勤める田丸(谷啓)は大変な空想家で、空想の中ではいつも大活躍するが、現実の仕事は失敗ばかりで、守衛に格下げされ、更には機密書類を盗まれさらには産業スパイの疑いを掛けられてしまう―。

 昨年('10年)9月に亡くなった谷啓(1932 - 2010/享年78、自宅階段から転落し、脳挫傷により急逝。認知症を患っていた模様)の主演映画で、12月の「銀座シネパトス」での追悼上映ラインナップにもあった作品ですが、ほぼ同時期に日本映画専門チャンネルでも放映されました。クレージー・キャッツ(故人はハナ肇、植木等、安田伸、石橋エータロー、そして谷啓。存命は2011年4月現在、犬塚弘、桜井センリの2人)らが総出演するシリーズ映画は、60年代を中心に撮られたものだけで25,6本ありますが、一方で、こうした谷啓主演の番外編的な映画も何本かあったのだなあと。

空想天国 酒井和歌子.jpg 監督は「これが青春だ!」('66年/東宝)の松森健で、共演は酒井和歌子。ガマラという着ぐるみっぽい怪獣が出てきて主人公の空想の手助けをしますが、その空想の中で出てくる理想の女性役が酒井和歌子で、それが現実世界では、産業スパイの一味に誘拐された守衛長の娘であり、最後は、主人公が彼女を救出し、2人は結ばれるというノホホンとしたコメディです(「ウルトラセブン」の"幻のアンヌ隊員役"と言われる豊浦美子が社長令嬢役で出ている)。

 この映画、公開時は、三船敏郎主演の「連合艦隊司令長官 山本五十六」('68年/東宝)との併映で、こちらも最近観なおしましたがが、ちょっと結びつかない組み合わせだったなあ(酒井和歌子は両方の作品に出ている)。当時のサラリーマンは、「山本五十六」で男の生き方を学び、谷啓のコメディで息抜きしたのか。

空想天国/山本五十六.jpg 「空想天国」のはラストシーンは明治記念館でのロケシーンで、庭池の飛び石を谷啓と酒井和歌子の2人がぴょんぴょん飛び跳ねるところで終わるのに対し、「連合艦隊司令長官 山本五十六」のラストは、三船敏郎演じる山本五十六が視察移動中の戦闘機の機中で敵の機銃を受けてもじっと動かない(実はすでに1発の銃弾が命中し、墜落前に絶命していることになっている)―実に対象的なエンディングだなあと思いました。

1968(昭和43)年8月1日 公開(「空想天国」「連合艦隊司令長官 山本五十六」2本立て(千代田劇場))「キネマ写真館」より
  
空想天国 1968.jpg空想天国d.jpg「空想天国」●制作年:1968年●監督:松森健●製作:渡辺晋●脚本:田波靖男●撮影:西垣六郎●音楽:萩原哲晶●時間:84分●出演:谷啓/京塚昌子/奈加英夫/酒井和歌子/宝田明/北あけみ/藤岡琢也/佐田豊/藤木悠/権藤幸彦/田中浩/木村博人/西岡慶子/中川さかゆ/矢野陽子/矢野間啓治/沢村いき雄/藤田まこと/頭師孝雄/中山豊/ハナ肇/桜井センリ/田崎潤/荒木保夫/ハンス・ホルネフ/小松政夫/豊浦美子/田辺和佳子●日本公開:1968/08●配給:東宝(評価:★★★)●併映:「連合艦隊司令長官 山本五十六」(丸山誠治) 

連合艦隊司令長官 山本五十六  1968 poster.jpg連合艦隊司令長官 山本五十六 80.jpg「連合艦隊司令長官 山本五十六」●制作年:1968年●監督:丸山誠治●特技監督:円谷英二●製作: 田中友幸●脚本:須崎勝彌/丸山誠治●撮影:山田一夫●音楽:佐藤勝●時間:128分●出演:山本五十六(連合艦隊司令長官):三船敏郎/辰巳柳太郎/荒木保夫/堤康久/佐田豊/若宮忠三郎/豊浦美子/中谷一郎/伊吹徹/黒部進/黒沢年男/八世松本幸四郎/平田連合艦隊司令長官 山本五十六  1968 dvd.jpg昭彦/土屋嘉男/藤木悠/佐原健二/田島義文/坂本晴哉/今福正雄/柳永二郎/北龍二/向井淳一郎/岡部正/稲葉義男/太田博之/佐藤允/安部徹/久保明/加山雄三/宮口精二/藤田進/伊藤久哉/桐野洋雄/草川直也/森雅之/小鹿敦/岡豊/堺左千夫/緒方燐作/西条康彦/阿知波信介/酒井和歌子/司葉子/清水元/田村亮/渋谷英男/村上冬樹/池田秀一/加東大介/石山健二郎/佐々木孝丸/清水将夫/宇留木康二/江原達怡/船戸順/(ナレーター)仲代達矢●日本公開:1968/08●配給:東宝(評価:★★★)●併映:「空想天国」(松森健) 
連合艦隊司令長官 山本五十六 [東宝DVD名作セレクション]

 谷啓には、高速まばたき(所謂「しばたき」)の癖がありましたが、同じ癖の持ち主に石原慎太郎氏がいます。

石原慎太郎 裕次郎.jpg ある心理学の先生が、石原慎太郎・裕次郎の兄弟を比較して、兄貴の慎太郎の「しばたき」の癖は、芸術家的繊細さの1つの現れであり(このことは、名トロンボーン奏者でもあった谷啓にも通じるかも)、兄の慎太郎よりは弟の裕次郎の方が精神的には図太いとしていましたが、「しばたき」が繊細さの現れであるとすれば、谷啓は、そのことによって他人を緊張させないように、自らをほんわかした、或いはトボケた雰囲気で包むようにしていて、一方、慎太郎氏は、それを周囲に悟られないように、努めて自分を豪胆に見せようとしている感じも受けます。

 その慎太郎氏は、'69年に『スパルタ教育―強い子どもに育てる本』(カッパ・ホームズ)を著していて、その中には「ヌード画を隠すな」「いじめっ子に育てよ」「子どもに酒を禁じるな」「子どもの不良性の芽をつむな」とかいろいろ激しいフレーズがありますけれど、これで「強い子ども」が育つのかなあ。実際に育った3人の息子達は、そんな図太い感じはしないけど、この偽悪的とも思えるポーズは、弟の裕次郎を意識したのではないかと(実際、裕次郎主演で映画化されている―と言っても、元が小説ではないので、脚本は書き下ろしだが)。

 この本、当時はベストセラーになりましたが、「本を、読んで良いものと悪いものに分けるな」とか、今主張している漫画規制の強化などとは言っていることが真逆のようにも思えるフレーズもあり(マンガは本ではないということか)、今読むと突っ込みどころ満載と言えるかも(昔は結構この人の小説も読んだのだが、今何故かあまり読み返す気がしない)。

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振り切ってきた過去へのノスタルジーに満ちた「祭りの準備」。大谷直子が鮮烈な「肉弾」。

祭りの準備.jpg 祭りの準備  タイトル.jpg  肉弾.jpg 肉弾 大谷直子3.jpg
祭りの準備 [DVD]」(監督:黒木和雄)          「肉弾 [DVD]」 (監督:岡本喜八)

黒木和雄.jpg中島丈博.jpg 「祭りの準備」('75年/ATG)は、昭和30年代の高知を舞台に、1人の青年がしがらみの多い土地の人間関係に圧迫されながらも巣立っていく姿を描いた青春映画で、主人公(江藤潤)が信用金庫に勤めながらシナリオライターになることを夢見ていることからも窺えるように、原作は中島丈博の自伝的小説であり、監督は'06年に亡くなった黒木和雄です。
祭りの準備 DVDカバー.jpg
黒木和雄(1930‐2006/享年75)/中島丈博

映画チラシ 黒木和雄「祭りの準備」.jpg 「青春映画」とは言え青春の真只中でこの作品を観ると、あまりにどろどろしていて結構キツいのではないかという気もしましたが、このどろどろ感が中島丈博の脚本の特色とも言えます。

 父親(ハナ肇)は女狂い、祖父(浜村純)はボケ老人、母親(馬渕晴子)は主人公の青年を溺愛し、彼は二十歳にしてそこから逃れられないでいて、心の恋人(竹下景子)も片思いの対象でしかなく、結局、男達の性欲の捌け口となっている狂った女(桂木梨江)と寝てしてしまうが、その女が妊娠したらしいことがわかる―。 映画チラシ 黒木和雄「祭りの準備」

祭りの準備00.jpg祭りの準備2.jpg 青年がシナリオを書くとセックス描写が頻出し、左翼かぶれの"心の恋人"に「労働者階級をもっときちんと描くべきで、どうしてセックスのことばかり書くの」となじられる始末。そのくせ、彼女はオルグの男性にフラれると、宿直中の青年に夜這いして来て、そこで小火(ボヤ)事件が起きてしまうという、青年同様に彼女自身、青春の混沌の中でちょっと取りとめが無い状態になっています。

祭りの準備図0.jpg こんな状況から脱したいという青年の気持ちがよく分かり、その旅立ち駅のホームで万歳して見送る、泥棒一家の次男で殺人の容疑をかけられ逃亡の身の男を演じているのが原田芳雄(1940-2011)で、冬物語2.gifいい味を出しています(この俳優を渋いなあと最初に思ったのは映画ではなくテレビで観た「冬物語」('72年~'73年/日本テレビ)というメロドラマだった。恋人役は浅丘ルリ子、ふられ役は大原麗子)。

「冬物語」('72年~'73年)浅丘ルリ子・原田芳雄

 創作の要素はあるとは言え、この「祭りの準備」という映画には、原作者(中島丈博)が過去に振り切ってきた諸々に対するノスタルジーが詰まっている感じがします(東京への"脱出"行を果たした江藤潤と、それが出来ないでいる原田芳雄という対比構造になっている)。

祭りの準備3.jpg 祭りの準備 竹下景子.jpg 祭りの準備 図1.jpg
竹下景子 (たけしたけいこ) 1953年9月15日生まれ.jpg 竹下景子(1953年生まれ、当時22歳)の映画デビュー2作目(主演級は初)で、この作品はそのヌードシーンで話題になることがありますが、主人公の青年に夜這いした際の下着姿と引き続く火事の炎の向こうにチラッと見える全裸(半裸?)姿程度で(この頃の彼女は結構コロコロ体型、よく言えばグラマラスだった)、この後清純派で売り出し、"お嫁さんにしたい女性No.1"などと言われたために以降全くスクリーン上では脱がなくなり、このシーンの付加価値が出た?

竹下景子 [上写真(in 「祭りの準備」(1975))・左写真(グラビア)]

映画「純」 横山博人 江藤潤 ポスター.jpg純 江藤潤DVD.jpg 主演の江藤潤(1951年生まれ)も、映画初主演の割には良い演技をしていたように思います。その後も、「帰らざる日々」('78年/日活)、「純」('80年/東映セントラルフィルム)などの作品に出演していますが、主演の「純」は東映出身の横山博人監督の第一回作品で、'78年4月に完成したものの、国内公開の目途の立たぬまま、翌年度のカンヌ映画祭に出品され、新人監督の登竜門「批評家週間」オープニング上映作品に選出され、以後、ロンドン、ロスアンゼルス映画祭に招待されるなど、高い評価を得ため、'80年に一般公開となったという作品。

 長崎の軍艦島から漫画家を志望して上京し、遊園地の修理工場で働いている主人公の二十歳の松岡純(江藤潤)は、恋人がいながらその手さえ握らず、通勤電車の中で痴漢行為に耽ける―漫画家を志望で軍艦島から東京に出てきたというところが、脚本家志望で高知・四万十から都会へ行こうとする「祭りの準備」の主人公と似ていますが、ラストまでのプロセスが観ていて気が滅入るくらい暗くて(痴漢行為に耽っているわけだから明るいはずはないが)、脇を固めている俳優陣は非常にリアリティのある演技をしていたものの、イマイチ自分の肌には合わなかったなあ(リアリティがあり過ぎて?)。江藤潤はやはり「祭りの準備」の彼が良かったように思います(「純」はどうして海外でウケたのだろう。外国人には痴漢が珍しいのかなあ。そんなことはないと思うが、クロード・ガニオン監督の「Keiko」('79年/ATG)でも冒頭に痴漢シーンがあった)。

大谷直子 in 「肉弾」(1968)[下写真]
『肉弾』(監督 岡本喜八)2.bmp 女優のデビュー時乃至デビュー間もない頃のスクリーン・ヌードという点では、「高校生ブルース」('70年/大映)の関根(高橋)惠子(1955年生まれ、当時15歳)、「旅の重さ」('72年/松竹)の高橋洋子(1953年生まれ、当時19歳)、「十六歳の戦争」('73年制作/'76年公開)の秋吉久美子(1954年生まれ、当時19歳)、「恋は緑の風の中」('74年/東宝)の原田美枝子(1958年生まれ、当時15歳)、「青春の門(筑豊篇)」('74年/東宝)の大竹しのぶ(1957年生まれ、当時16歳)、「はつ恋」('75年/東宝)の仁科明子(亜季子)(1953年生まれ、当時22歳)などがありますが(これらの中では、関根惠子と原田美枝子の15歳が一番若くて、仁科明子の22歳が竹下景子と並んで一番遅いということになる)、個人的には、'05年に亡くなった岡本喜八監督の「肉弾」('68年/ATG)の大谷直子(1950年生まれ、当時17歳)が鮮烈でした。

nikudann vhs.jpg肉弾3.jpg肉弾 寺田農.jpg この「肉弾」という作品は、特攻隊員(寺田農)を主人公に据え(「肉弾」とは「肉体によって銃弾の様に敵陣に飛び込む攻撃」のこと)、戦争の悲劇というテーマを扱っていながら、コミカルで悲壮感を(一応は)表に出していないという変わった映画で、映画肉弾 大谷直子4.jpg自体は、太平洋に漂流するドラム岳の中で魚雷を抱えている(ある意味、既に死んでいる)主人公の回想という形で進行し、主人公が1日だけの外出許可日に古本屋に行くつもりが思わず女郎屋に駆け込んでしまい、そこにいたセーラー服姿の肥溜めに咲いた一輪の白百合のような少女と防空壕の中で結ばれるという、その少女の役が映画初出演の大谷直子でした(その後、NHKの朝の連ドラ「信子とおばちゃん」('69年)でTVデビュー)。

 彼女が全裸で土砂降りの雨の中を走るシーンは衝撃的で、モノクロ映画ゆえに却ってその美しさは印象に残りましたが、かの特攻隊員は、そこで初めて自らが守るべきものを見出し、空襲で彼女が犠牲になったことで復讐心から戦闘意欲に燃え、魚雷と共に太平洋岡本喜八.jpgに出るという―これ、岡本喜八ならではのアイロニーなのですが、笑えるようでやっぱり笑えないなあ。岡本監督はその後も自らと同年代の戦中派の心境を独特のシニカルな視点で描き続けますが、「独立愚連隊」('59年)とこの「肉弾」は、そのルーツ的な作品でしょう。「日本のいちばん長い日」('67年)のようなオールスター大作を撮った後に、私費を投じてこのような自主製作映画のような作品を撮っているというのも凄いことだと思います。 
岡本喜八(1924- 2005/享年81) 下:「肉弾」大谷直子  寺田農/笠智衆

肉弾 大谷直子1.jpg肉弾 大谷直子2.jpg肉弾 笠智衆5.jpg
 
  
 
 
 
 
 
 

祭りの準備 4.bmp「祭りの準備」●制作年:1975年●監督:黒木和雄●製作:大塚和/三浦波夫●脚本:中島丈博●撮影:鈴木達夫●音楽:松村禎三●原作:中島丈博●時間:117分●出演:江藤潤/馬渕晴子/ハナ肇/浜村純/竹下景子/原田芳雄/杉本美樹/桂木梨江/石山ギンレイホール.jpg飯田橋ギンレイホール内.jpg雄大/三戸部スエ/絵沢萠子/原知佐子/真山知子/阿藤海/森本レオ/斉藤真/芹明香/犬塚弘●公開:1975/11●配給:ATG●最初に観た場所:飯田橋ギンレイホール(78-07-25)(評価:★★★☆)●併映:「サード」(東陽一)
飯田橋ギンレイホール 1974年1月3日オープン

「純」●制作年:1978年●監督・脚本:横山博人●製作:横山博人プロダクション●撮影:高田昭●音楽:一柳慧●時間:88分●出演:江藤潤/朝加真由美/中島ゆたか/榎本ちえ子/赤座美代子/山内恵美子/田島令子/橘麻紀/花柳幻舟/原良子/江波杏子/小松方正/深江章喜/大滝秀治/安倍徹/小坂一也/小鹿番/今井健二/森あき子/田中小実昌●公開:1980/12●配新宿昭和館2.jpg新宿昭和館3.jpg給:東映セントラルフィルム●最初に観た場所:新宿昭和館(83-05-05)(評価:★★☆)●併映:「聖獣学園」(鈴木則文/主演:多岐川裕美)
新宿昭和館 1951(昭和26)年7月13日新宿3丁目にオープン(前身は1932年開館の洋画上映館「新宿昭和館」)。1956年、昭和館地下劇場オープン。2002(平成14)年4月30日 建物老朽化により閉館。


肉弾 アートシアター.jpg肉弾 vhs2.jpg『肉弾』(監督 岡本喜八)1.bmp「肉弾」●制作年:1968年●監督・脚本:岡本喜八●撮影:村井博●音楽:佐日劇文化.jpg藤勝●時間:116分●出演:寺田農/大谷直子/天本英世/笠智衆/北林谷栄/三橋規子/今福正雄/春川ますみ/園田裕久/小沢昭一/菅井きん/三戸部スエ/頭師佳孝/雷門ケン坊/田中邦衛/中谷一郎/高橋悦史/伊藤雄之助/(ナレーター)仲代達矢●公開:1968/10●配給:ATG●最初に観た場所:有楽町・日劇文化(80-07-05)(評価:★★★★)●併映:「人間蒸発」(今村昌平)


冬物語.gif「冬物語」.jpg「冬物語」2.bmp「冬物語」●演出:石橋冠●制作:銭谷功/早川恒夫●脚本:清水邦夫/林秀彦●音楽:坂田晃一(主題歌「冬物語」、作詞:阿久悠/作曲・編曲:坂田晃一/唄:フォー・クローバース)●出演:浅丘ルリ子/原田芳雄/津川雅彦/扇千景/大原麗子/高松英郎/原田大二郎/宝生あや子/南美江/荒谷公之/鳥居恵子/渡辺篤史/下元勉/潮万太郎/上野山功一/柿沼真二/下川清子/野々あさみ/渥美マリ●放映:1972/11~1973/04(全20回)●放送局:日本テレビ

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シリーズ中では充実した内容。回答者のコメントが楽しい。中上級編の注目は「十三人の刺客」。

大アンケートによる日本映画ベスト150 0_.jpg 七人の侍 志村喬.jpg  洋・邦名画ベスト1501.JPG
大アンケートによる日本映画ベスト150 (文春文庫―ビジュアル版)』/「七人の侍」/『洋・邦名画ベスト150〈中・上級篇〉』 (表紙イラスト:共に安西水丸

 『大アンケートによる日本映画ベスト150』は、同じ「文春文庫ビジュアル版」の『大アンケートによる洋画ベスト150』('88年)の続編で、この映画シリーズはこの後、

大アンケートによるわが青春のアイドル女優ベスト150  .jpg ◆『大アンケートによるわが青春のアイドル女優ベスト150』 〔'90年〕
 ◆『洋画・邦画ラブシーンベスト150』 〔'90年〕
 ◆『大アンケートによるミステリー・サスペンス洋画ベスト150』 〔'91年〕
 ◆『ビデオが大好き!365夜―映画カレンダー』 〔'91年〕
 ◆『洋・邦名画ベスト150 中・上級篇』 〔'92年〕
 ◆『大アンケートによる男優ベスト150』 〔'93年〕
 ◆『戦後生まれが選ぶ洋画ベスト100』 〔'95年〕

映画イヤーブック1994.jpgと続いています。これらの内の何冊かは、'90年代に毎年刊行されていた現代教養文庫(版元の社会思想社は倒産)の『映画イヤーブック』と共に愛読・活用させてもらいました。角川文庫にも『日本映画ベスト200』('90年)などのアンケート・シリーズがありますが、「ビジュアル版」と謳っている文春文庫のシリーズの方が、掲載されているスチール、ポートレート、ポスターの量と質で、角川文庫のものを上回っています。

Shichinin no samurai(1954).jpg七人の侍 パンフ.jpg7samurai.jpg 本書『邦画ベスト150』には、赤瀬川順・長部日出雄・藤子不二雄A氏らの座談会や、映画通が選んだジャンル別のマイベスト、井上ひさしの「たったひとりでベスト100選出に挑戦する!」といった興味深い企画もありますが、メインの「ベスト150」は、1位が「七人の侍」で、以井上ひさしs.jpg下「東京物語」「生きる」「羅生門」「浮雲」と続く"まともな"ラインアップとなっています(因みに、井上ひさしの「たったひとりでベスト100選出に挑戦する!」も、第1位が「七人の侍」で、あと「天国と地獄」「生きる」と黒澤作品が続く)。
Shichinin no samurai(1954)  「七人の侍」('63年/東宝)

『七人の侍』(1954) .jpg 「七人の侍」の「1位」には、個人的にもほぼ異論を挟む余地が無いという気がします。先にジョン・スタージェス監督の「荒野の七人」('60年/米)を観てオリジナルであるこの作品も早く観たいと思っていたですが、観るのなら絶対に劇場でと思い、リヴァイバル上映を待ちに待って、結局'90年代にニュープリント、リニューアル・サウンドの完全オリジナル版が15年ぶりに公開されたのを機にやっと観ました。渋谷のロードショーシアターへ、休日の昼間ではおそらく行列に並ぶことになるだろうと思い、冬の日の朝一番なら多少すいているかもしれないと思って観にいったら、観客多数のため上映館が急遽変更されていて、渋谷の街中(まちなか)を走った思い出があります。

七人の侍 1954.jpg「七人の侍」.jpg 「荒野の七人」もいい映画ではあるものの、やはりオリジナルは遥かにそれを凌ぐレベルの作品だったことを実感しました。アクション映画としても傑作ですが、脚本面でも思想性という面でも優れた作品だと思います。

七人の侍 加東大介.jpg「七人の侍」●制作年:1963年●監督:黒澤明●製作:本木莊二郎 ●脚本:黒澤明/橋本忍/小国英雄●撮影:中井朝一●音楽:早坂文雄 ●時間:207分●出演: 志村喬/三船敏郎/木村七人の侍 仲代達矢.jpg功/稲葉義男/加東大介/千秋実/宮口精二/藤原釜足/津島恵子/土屋嘉男/小杉義男/左卜全/高堂国典/東野英治郎/島崎雪子/山形勲/渡辺篤/千石規子/堺左千夫/千葉一郎/本間文子/安芸津広/多々良Shibutoh_Cine_Tower.JPG純/小川虎之/熊谷二良/上田吉二郎/谷晃/中島春雄/(以下、エキストラ出演)仲代達矢(右写真)/宇津井健/加藤武●公開:1954/04●配給:東宝 ●最初に観た場所:渋谷東宝(渋東シネタワー4)(91-12-01)(評価:★★★★★

渋東シネタワービル(シネタワー1・2・3・4)

渋東シネタワー 1991(平成3)年7月6日、「渋谷東宝会館」を「渋東シネタワー」と改称し、4スTOHOCINEMAS_Shibuya.JPGクリーンに増設して再オープン。シネタワー1(606席)、シネタワー2(790席)、シネタワー3(342席)、シネタワー4(248席)。2011(平成23)年、上層TOHOシネマズ渋谷 .jpg階にあったシネタワー1と2を閉鎖・改装し、同年7月15日、TOHOシネマズ渋谷スクリーン1・2・3・4がオープン。次いで下層階のシネタワー3・4を改装し、同年11月30日にTOHOシネマズ渋谷スクリーン5・6がオープン。

 『洋画ベスト150』もそうですが、映画通と言われる特定の映画にこだわりを持った人々からアンケートをとっても、それらを全部を集計してしまうと、一般の映画ファンのアンケート結果とそう変わらないものになるということ、「人目にふれにくい傑作」にテーマを絞った『洋・邦名画ベスト150 中・上級篇』が企画されたのは「むべなるかな」という感じがします。

Jûsan-nin no shikaku (1963).jpg十三人の刺客.jpg 『中・上級篇』の方では、「日本映画ベスト44」の1位が工藤栄一(1929‐2000)監督の「十三人の刺客」、「外国映画ベスト109」の1位は「マダムと泥棒」となっていて、「七人の侍」が(前述の通り、個人的にも大傑作だと思うが)これほど賞賛されるならば「十三人の刺客」はもっと注目されるべきであるし、ヒッチコック(個人的は好きな監督だが)の作品に人気が集まるならば、「マダムと泥棒」も見て!という感じは確かにします。
「十三人の刺客」
Jûsan-nin no shikaku (1963)

 「十三人の刺客」は、将軍の弟である明石藩主というのが実は異常性格気味の暴君で、事情を知らない将軍が彼を老中に抜擢する話が持ち上がったために、筆頭老中が暴君排除を決意し、暗殺の密命を旗本島田新左衛門に下すというもの。

「十三人の刺客」 ('63年/東映)
十三人の刺客s.jpg十三人の刺客dvd.jpg 片岡千恵蔵演ずる島田新左衛門が集めた刺客は12人で、参勤交代の道中の藩主を襲うが、対する明石藩士は53名。この、2勢力の武士が、何か2匹の生き物のように画面狭しと動き回って、時代劇というよりまさにアクション映画。そうした点では「七人の侍」と見比べると、また違った味があります(脚本の「池上金男」は今年['07年]5月に亡くなった、後に『四十七人の刺客』で新田次郎文学賞を受賞する池宮彰一郎(1923-2007/享年83)。音楽は「ゴジラ」の伊福部昭!)。

十三人の刺客 工藤栄一.jpg 本書にもあるように、アクション映画は、シチュエーションを単純にしてディテールに凝ったほうが面白いと言うその典型で、ラストの30分にわたるリアルな決戦シーンとそこに至るまでの作戦の積み重ねは、「早すぎた傑作」と呼ばれるにふさわしく、公開当時はあまり評価されなかったとのこと。大体、時代物に疎く、かなり後になってビデオで観たのですが、劇場でみたら星5つだったかも(オールド・プリントで、ちょっと画面が暗い。DVDの方はどうなのだろうか)。

十三人の刺客 片岡.jpg十三人の刺客 嵐.jpg「十三人の刺客」●制作年:1963年●監督:工藤栄一●製作:東映京都撮影所●脚本:池上金男●撮影:鈴木重平●音楽:伊福部昭●時間:125分●出演:片岡千恵蔵/里見浩太朗/嵐寛寿郎/阿部九州男/加賀邦男/汐路章/春日俊二/片岡栄二郎/和崎俊哉/西村晃/内田良平/山城新伍/丹波哲郎/月形龍之介/菅貫太郎/水島道太郎/沢村精四郎丘さとみ/藤純子/河原崎長一郎/三島ゆり子/高松錦之助/神木真寿雄●公開:1963/12●配給:東映 (評価:★★★★)
片岡千恵蔵 in「十三人の刺客」

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「雨あがる」の主人公と似ている「日日平安」(「椿三十郎」の原作)の主人公。

雨あがる 山本周五郎短篇傑作選.jpg 日日平安.jpg    椿三十.bmp 「椿三十郎」1962.jpg
雨あがる―山本周五郎短篇傑作選』 〔'99年〕/『日日平安』 新潮文庫/「椿三十郎 [DVD]

 『雨あがる―山本周五郎短篇傑作選』('99年/角川書店)は、山本周五郎(1903‐1967)の時代小説のうち、「日日平安」「つゆのひぬま」「なんの花か薫る」「雨あがる」の4編を所収し、これらは何れも黒澤明(1910-1998)監督が映画化した、或いは映画化しようとして脚本化していたものにあたります。

椿三十郎 三船 仲代.jpg椿三十郎パンフ.jpg 「日日平安」は、映画「椿三十郎」('62年/黒澤プロ=東宝)の原作で、城代家老を陥れようとする次席家老ら奸臣たちに対し、城代の危難を救うべく起ち上がった若い侍たちを素浪人が助太刀するというストーリーは映画と同じ。但し、原作の助太刀浪人・菅田平野は、映画の椿三十郎のような神がかり的剣豪ではなく(映画の中の三船敏郎と仲代達矢の"噴血"決闘シーンは有名だが、原作にこうした決闘場面は無い)、どちらかと言うと、切羽詰ると知恵を絞って苦境を乗り切るタイプで、未熟な若侍たちをリードしながらも、結構自分自身焦りまくっていたりします。

「椿三十郎」 (黒澤プロ=東宝)
『椿三十郎』(1962).jpg 城代のグループを手助けすることになったついでに、あわよくば仕官が叶えばと思っているくせに、城代の救出が成ると自ら姿を消すという美意識の持ち主で、それでも一方で、誰か追っかけて来て呼び止めてくれないかなあなんて考えている、こうした等身大の人物像がユーモラスに描かれていて、読後感もいいです。
Tsubaki Sanjûrô(1962)
椿三十郎ポスター.jpg 黒澤明は最初は原作に忠実に沿って、やや脆弱な人物像の主人公として脚本を書いたのですが、映画会社に採用されず、その後映画「用心棒」('61年)が大ヒットしたためその続編に近いものを要請されて、一度はオクラになっていた脚本を、「用心「椿三十郎」.jpg棒」で三船が演じた桑畑三十郎のイメージに合わせて「剣豪」時代劇風に脚色し直したそうで、ついでに主人公の名前まで菅田平野→椿三十郎と、前作に似せたものに変えたわけです(映画の中では、主人公が自分でテキトーに付けた呼び名とされている)。

 原作に大幅に手を加えて原作をダメにしてしまう監督や脚本家は多くいますが、黒澤明の場合は第一級のエンタテインメントに仕上げてみせるから立派としか言いようがなく(この作品は昭和47年のお正月映画だった)、「原作を捻じ曲げて云々...」といった類のケチをつける隙がありません。
  
三船三十郎と仲代.jpg「椿三十郎」●制作年:1962年●製作:東宝・黒澤プロダクション●監督:黒澤明●脚本:黒澤明/菊島隆三/小国英雄●撮影:小泉福造/斎藤孝雄●音楽:佐藤勝●原作:山本周五郎「日日平安」●時間:96分●出演:三船敏郎/仲代達矢/司葉子/加山雄三/小林桂樹/団令子/志村喬/藤原釜足/入江たか子/清水将夫/伊藤雄之助/久保明/太刀川寛/土屋嘉男/田中邦衛/江原達怡/平田昭彦/小川虎之助/堺左千夫/松井鍵三/樋口年子/波里達彦/佐田豊/清水元/大友伸/広瀬正一/大橋史典●劇場公開:1962/01●配給:東宝●最初に観た場所(再見):北千住・シネマブルースタジオ(11-01-10)(評価★★★★☆)

雨あがる.jpg 黒澤明の没後に小泉堯史監督により映画化された「雨あがる」('99年/東宝)の原作「雨あがる」の主人公・伊兵衛も浪人ですが、こちらは柔術などもこなす剣豪で、ただし、腕を生かして仕官したいのはやまやまだが、人を押しのけてまで仕官するぐらいなら妻と仲良く暮らせればそれでいいという人物。人助けの際に見せた自分の腕前が見込まれて士官が叶いそうになるが...。

雨あがる 特別版 [DVD]

雨あがる 00.jpg 映画化作品の方は、28年間にわたって黒澤の助手を務めたという経歴を持つ小泉堯史監督の監督デビュー作で、スタッフ・キャストを含め「黒澤組」が結集して作った作品でもあり、冒頭に「この映画を黒澤明監督に捧げる」とあります。

雨あがる01.jpg 元が中編でそれを引き延ばしているだけに、良く言えばじっくり撮っていると言えますが、ややスローな印象も。伊兵衛を演じた寺尾聡は悪くなかったけれど、脇役陣(エキストラ級の端役陣)のセリフが「学芸会」調だったりして、黒澤明監督ならこんな演技にはOKを出さないだろうと思われる場面がいくつかありました。
  
 日本アカデミー賞において最優秀作品賞、最優秀脚本賞(故・黒澤明)、最優秀主演男優賞(寺尾聡)、最優秀助演女優賞(原田美枝子)、最優秀音楽賞(佐藤勝)、最優秀撮影賞(上田正治)、最優秀照明賞(佐野武治)、最優秀美術賞(村木与四郎)の8部門の最優秀賞を獲得。但し、個人的には、セリフの一部が現代語っぽくなっている部分もあり、それが少し気になりました。これは黒澤作品でもみられますが(そもそも、この作品の脚本は黒澤自身)、黒澤監督作品の場合、骨太の演出でカバーして不自然さを感じさせないところが、この映画では、先の「学芸会」調も含め、そうした勢いが感じられませんでした。そのため、そうした不自然さが目立った印象を受けたのかも。

雨あがるes.jpg雨あがる-Press01.JPG「雨あがる」●制作年:2000年●製作:黒澤久雄/原正人●監督:小泉堯史●脚本:黒澤明/菊島隆三/小国英雄●撮影:上田正治●音楽:佐藤勝●原作:山本周五郎「雨あがる」●時間:96分●出演:寺尾聰/宮崎美子/三船史郎/吉岡秀隆/仲代達矢/原田美枝子/井川比佐志/檀ふみ/大寶智子/松村達雄/奥村公延/頭師孝雄/山口馬木也/森塚敏/犬山半太夫/鈴木美恵/児玉謙次/加藤隆之/森山祐子/下川辰平●劇場公開:2000/01●配給:東宝 (評価★★★)

 映画の「椿三十郎」と「雨あがる」の主人公は、剣豪という意味では同じであるものの人物造型はかなり違っている感じがしましたが、それぞれの原作においては、片や脆弱、片や剣豪、ただし、ついつい人助けをする人の良さや、自分の腕前や手柄に自分自身何となく気恥ずかしさのようなものを持っている点で、かなり通じる部分があるキャラクターだと言えるのではないでしょうか。また、こうした人物像に対する愛着が、山本周五郎と黒澤明の共通項としてあるような気がします。

 【「雨あがる」-1956年単行本〔同光社〕/「日日平安」-1958年単行本〔角川書店〕/1965年文庫化・1989年・2003年改版〔新潮文庫〕/2006年再文庫化[ハルキ文庫文庫]】

《読書MEMO》
●「日日平安」...1954(昭和29)年発表 ★★★★
●「つゆのひぬま」「なんの花か薫る」...1956(昭和31)年発表 ★★★
●「雨あがる」...1951(昭和26)年発表 ★★★★

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読後の感動はあった。モデルはモデル、小説は小説として読むべきか。

不毛地帯 1.jpg 不毛地帯 2.jpg 不毛地帯 3.jpg 不毛地帯 4.jpg  不毛地帯ー.png
『不毛地帯』 新潮文庫[旧版](全4巻)        映画「不毛地帯」('76年/東宝)

不毛地帯 映画.jpg 『白い巨塔』('65年/新潮社)、『華麗なる一族』(73年/新潮社)が、それぞれ映画も含め力作だったのに対し、この『不毛地帯』の仲代達矢主演の"映画"の方は、配役は豪華だけれど個人的には今ひとつでした(テレビで観たため、平幹二朗主演のテレビ版と記憶がごっちゃになっている)。そもそも、181分という長尺でありながらも、原作の4分の1程度しか扱っておらず、原作が連載中であった事もありますが次期戦闘機決定をめぐる攻防部分だけを映像化したと言ってもよく、結果として壱岐正という主人公の生き方に深みが出てこない...。

 ただし"原作"だけでみると、自分が最初に読んだ当時の読後の感動はこれが一番で、もともと映画に納まり切らない部分が多すぎたか? それと、こうした複雑な話が映画化された時によくありがちな傾向で、愛憎劇中心になってしまった感じもしました。

 この原作の方は、以前は商社マンを目指す人はみなこぞって読んで、そして感動したという話も聞きます。しかし今改めて読むと、作品に描かれる総合商社の体質は今も変わらないのかもしれませんが、産業構造の変化などで商社の仕事自体はずいぶん変わっているのではないかという気がします(その点、一番変わっていないのは『白い巨塔』で描かれた大学附属病院かもしれない)。

 国の二次防主力戦闘機の受注をめぐって、交渉相手の防衛庁の部長に戦時中の命の恩人である元陸軍中佐・壱岐正をぶつけるという商社の戦略が凄いと思いましたが、戦後60年以上を経た今現在、こうした"命の恩人"みたいな関係がどれだけあるのか、またそれがビジネスで成り立つかと考えると、かなり特異な状況を描いているようにも思えました。

 そうしたこともあり、良くも悪くも、モデルとされている瀬島龍三氏のイメージとどうしても切り離せません。
 小説の主人公はラストの身の引き方は美しいが、瀬島氏は商社マンとして一線を退いた後も中曽根内閣の臨調委員として政治"参謀"ぶりを発揮し(結局こういう「ひとかどの人物」は在野にいても声がかかる?)、90歳を超えてなお中曽根氏の個人的ブレーンの1人となっている...。

 著者は「これは架空の物語である。実在する人物、出来事と類似していても偶然に過ぎない」と言っています。
 『白い巨塔』と並ぶ著者の代表作であり傑作であることには違いなく、モデルはモデル、小説は小説として読むべきなのかも知れません(同一作者の後の作品『沈まぬ太陽』では、同一モデルであるはずのこの人物の描き方が、「国士」から単なる「策士」へと変化している)。

瀬島龍三(せじま・りゅうぞう)
瀬島龍三.jpg伊藤忠商事元会長。富山県松沢村(現小矢部市)出身。1938年12月陸軍大学校卒、大本営陸軍参謀として太平洋戦争を中枢部で指揮をとる。満州で終戦を迎えたが、旧ソ連軍の捕虜となり、11年間シベリアに抑留され、1956年に帰国。1958年、伊藤忠に入社し、主に航空機畑を歩いた。1968年専務に就き、いすゞ自動車と米ゼネラル・モーターズ(GM)との提携を仲介。戦前、戦中、戦後を通じて政、財界の参謀としての道を歩んだ。(2007年9月4日死去/享年95)

不毛地帯 映画.jpg不毛地帯 丹波哲郎.jpg「不毛地帯」●制作年:1976年●監督:山本薩夫●製作:佐藤一郎/市川喜一/宮古とく子●脚本:山田信夫●音楽:佐藤勝●原作:山崎豊子●時間:181分●出演:仲代達矢/丹波哲郎/山形勲/神山繁/滝田裕介/山口崇/日下武史/仲谷昇/山本圭/北大路欣也/小沢栄太郎/田宮二郎/久米明/大滝秀治不毛地帯 dvd.jpg不毛地帯相関図.jpg/高橋悦史/井川比佐志/中谷一郎/八千草薫/秋吉久美子/藤村志保/高城淳一/秋本羊介/岩崎信忠/石浜朗/内田朝雄/小松方正/加藤嘉/中津川衛/辻萬長/高杉哲平/杉田俊也/神田隆/永井智雄/嵯峨善兵/伊沢一郎/青木義朗/アンドリュー・ヒューズ/デヴィット・シャピロ/●劇場公開:1976/08●配給:東宝(評価★★★) 
不毛地帯 [DVD]

 【1983年文庫化[新潮文庫(全4巻)]・2009年改訂[新潮文庫(全5巻)]】

不毛地帯〔'76年/東宝〕監督:山本薩夫/製作:佐藤一郎/脚本:山田信夫/出演:仲代達矢/丹波哲郎/山形勲
不毛地帯 映画.jpg

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「華麗なる一族」1974年.jpg 古さを感じさせない。政財界にわたっての丹念な取材の跡が窺える。

山崎豊子 華麗なる一族.jpg  華麗なる一族 上巻.jpg 華麗なる一族 中巻.jpg 華麗なる一族 下巻.jpg 
華麗なる一族 (1980年) (新潮文庫)』 /新潮文庫(上・中・下)〔改訂版〕/映画「華麗なる一族」('74年/東宝)

華麗なる一族 dvd.jpg華麗なる一族.jpg 万俵財閥の当主で阪神銀行頭取の万俵大介の野望を軸に、それに翻弄される一族の姿を金融業界の内幕に絡めて描いた作品で、'73(昭和48)年の発表ですが、「金融再編」に伴う「銀行の合併問題」がモチーフになっているため、あまり古さを感じさせません。

 小説の冒頭は、志摩半島の英虞湾を望む一流ホテルでの主人公一族の豪奢な正月晩餐会から始まりますが、作者は舞台のモデルにした「志摩観光ホテル」のレストランから夕陽がどう見えるかまで取材しに行ったそうで、そうした丹念な取材は、銀行内部のみでなく、政治家や大蔵省など政財界に広く及んでいて、物語にリアルな厚みを増しています。 
華麗なる一族 [DVD]」/映画パンフレット                  

 大介の野望は、上位銀行の専務と結託してその銀行を併呑する、所謂「小が大を呑む」というもので(かつて神戸銀行が太陽銀行を吸収合併し、"名"前だけ「太陽神戸」として"実"の方をとった出来事がベースになっている)、大介の政財界への働きかけは、「政財癒着は良くない」という綺麗事のレベルを遥かに凌駕する凄まじさで、目的のためには親友も、長男さえも切り捨てる―。

 タイトルの「華麗なる一族」という言葉が、政界との癒着強化のための閨閥づくりを指すとともに、長男・鉄平の暗い過去の出生の秘密を表す反語にもなっています。

 同じ山崎豊子原作の映画化作品「白い巨塔」が大ヒットしたためか、この作品は豪華キャストで映画化されましたが('74年・山本薩夫((1910-1983))監華麗なる一族 仲代.jpg督)、オールキャストとは言え、その中で圧倒的に存在感を際立たせているのは佐分利信であり、その佐分利演じる万俵大介と鉄平(仲代達矢)の"暗い血"にまつわる確執に重きが華麗なる一族 田宮二郎.jpg置かれていたような感じもしました。また、鉄平の最期が、大介の女婿を演じた田宮二郎の実人生での自殺方法と同じだったことに思い当たりますが、鉄平役は実は田宮二郎がやりたかった役だったそうです。

華麗なる一族 目黒.jpg華麗なる一族 佐分利.jpg どうしても、こういう複雑なストーリーの話が映画化されると、情緒的な方向に重きがいってしまったりセンセーショナルな部分が強調されるのは仕方がありませんが(大介の「妻妾同衾」シーンなども当時話題になった)、それなりの力作でした。"いい人"がとにかく苛められる(相手方銀行の頭取の二谷英明とか)点で「白い巨塔」に共通するものを改めて感じたのと、農家の預金獲得のために、ワイシャツ姿で終日稲刈りまでする銀行員なども描いていて「銀行員って意外と泥臭いなあ」と思わされたりもしました。
                    映画「華麗なる一族 [VHS]」 ビデオ(上・下)
華麗なる一族2.gif華麗なる一族 ビデオ.jpg「華麗なる一族」●制作年:1974年●製作:芸苑社●監督:山本薩夫●製作:佐藤一郎/市川喜一/森岡道夫●脚本:山田信夫●音楽:佐藤勝●原作:山崎豊子●時間:210分●出演:佐分利信/仲代達矢/月丘夢路/京マチ子/酒井和歌子/目黒祐樹/田宮二郎/二谷英明/香川京子/山本陽子/中山麻里/小沢栄太郎/滝沢修/河津清三郎/大空真弓/志村喬/中村伸郎/加藤嘉/神山繁/平田昭彦/細川俊夫/大滝秀治/金田龍之介/小林昭二/花沢徳衛/鈴木華麗なる一族 京マチ子 .png瑞穂(ナレーションも担当)●劇場公開:1974/01●配華麗なる一族 京マチ子.jpg華麗なる一族 志村.jpg給:東宝●最初に観た場所:渋谷・東急名画座(山本薩夫監督追悼特集) (84-01-08) (評価★★★☆)
志村喬(大阪重工社長・安田太左衛門)

京マチ子(万俵大介の愛人・高須相子)

 【1973年単行本・1979年改訂[新潮社(上・中・下)]/1980年文庫化・2003年改訂[新潮文庫(上・中・下)]】

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"無能"将軍・乃木希典をなかなか解任できない軍部に見る官僚主義。

坂の上の雲1.jpg 坂の上の雲2.jpg 坂の上の雲3.jpg 坂の上の雲4.jpg 坂の上の雲5.jpg 坂の上の雲6.jpg 二百三高地 dvd.jpg
新装改訂版(全6巻)['04年](カバー画:風間 完) 『坂の上の雲 <新装版> 1』『坂の上の雲 <新装版> 2』『坂の上の雲〈3〉』『坂の上の雲〈4〉』『坂の上の雲 <新装版> 五』『坂の上の雲 <新装版> 六』「二百三高地 [DVD]

 1968(昭和43)年から1972(昭和47)年にかけて「産経新聞」に連された長編大河小説で、経営者に最も読まれている小説といえば、かつては『徳川家康』(山岡荘八)、今はこの『坂の上の雲』ということですが、この『坂の上の雲』は、'69年の単行本刊行以来、文庫も含め1400万部ぐらい売れているとのこと、'04年には単行本の新装版が出ました(読みやすいが、6巻とも文庫本新版の第1巻の表紙絵を流用しているのはなぜ?)。 
 
 松山出身の歌人正岡子規と軍人の秋山好古・真之兄弟の三人を軸に描いた作品というよりも、正岡子規が病死して早いうちに小 説の舞台から去ってしまうことでもわかるように、維新から日露戦争に至るまでの明治日本の人物群像を描いたものと見るべきで、登場人物は1000人を超えるそうで、"情報将校"明石元二郎などはかなり詳しく取り上げられていて、関係する本を読んでみたくなりました。

「二百三高地」1.jpg 物語のクライマックスは、二〇三高地で有名な旅順大戦と、ロシアのバルチック艦隊に勝利した日本海海戦ですが、間に様々な人物挿話が入り(ロシア側の人物もよく描けている)、バルチック艦隊がアフリカ東岸マダガスカルあたりでいつまでもグダグダしている(スエズ運河を支配していた大英帝国が日英同盟の名の下にロシアにスエズ運河の通過許可を出さなかったためにアフリカ大陸を迂回するハメになった)、その間にも、著者のウンチクは繰り広げられます。
映画「二百三高地」(1980/東映)より 
「二百三高地」2.jpg これを面白いと見るか、冗長と見るか。著者の初期作品のような快活なテンポはないけれど、先述のスパイ活動をやった明石元二郎の秘話など随所に面白い話がありました。

 全体を振り返ると、やはり旅順攻防の凄惨さが印象的で、旅順陥落での開城の際に、日露の兵が抱き合い、共に酒場に繰り出した兵士もいたというのが、それを物語っています。 
 陥落直前にはすでに両軍の兵に士気は無く、皆自分が生き残れるかを考えるようになっていたわけです。 
 
203.jpg この作品での乃木希典将軍の無能ぶりの描き方は徹底していて、乃木は、日本戦史上、最も多くの部下をむざむざと死地へ追いやった大将ということになるのではないでしょうか。 
 その描き方の賛否はともかく、彼をなかなか解任できないでいる軍中枢部(その間にも多くの将兵がどんどん犬死していく)に、いったんエリートとして位置づけた人物に対し、他の者を犠牲にしてもその人物のキャリアを守ろうとする官僚主義の非合理を見た思いがします。

「二百三高地」3.jpg それにしても、バルチック艦隊の大航海とその疲弊による敗北は、近代戦において最も時間と費用を要するのがロジスティックであることを端的に象徴していると思いました(湾岸戦争もイラク戦争も「輸送」に一番カネがかかっている)。
 
 兵器の能力などを戦争における"戦術"部分だとすれば、ロジスティックは"戦略"部分に当たり、"ランチェスターの2次法則"ではないが、近代戦において強国は"戦略"にふんだんにカネを注ぐ―ただし、その"戦略"そのものが戦局の読み違いのうえに立脚していたのでは相手に勝てないということを、この小説は教えてくれます。

「二百三高地」5.jpg 二〇三高地の攻防戦をメインに描いた舛田利雄監督の映画「二百三高地」('80年/東映)は3時間の大作、時折旅順大戦の戦況図なども画面に出てきて、大戦の模様を正確に描こうとしている姿勢は買えますが、これだけ乃木希典(仲代達矢)が自軍の兵士たちに強いた犠牲の大きさを描きながらも、彼を悲劇の英雄視するような姿勢が窺えて解せませんでした。さだまさしの音楽もとってつけたような感じで、(自分が司馬遼太郎のこの小説に感化された部分もあるかも知れないが)乃木希典の戦術的無能を情緒的な問題にすりかえてしまっている印象を受けました。

7二百三高地 丹波哲郎 dvdジャケット1.jpg「二百三高地」●制作年:1980年●監督:舛田利雄●脚本:笠原和夫●撮影:飯村雅彦●音楽:山本直純●主題曲:さだまさし●時間:181分●出演:仲代達矢/あおい輝彦/新沼謙治/湯原昌幸/佐藤允/永島敏行/長谷川明男/稲葉義男/新克利/矢吹二朗/船戸順/浜田寅彦/近藤宏/伊沢一郎/玉川伊佐男/名和宏/横森久/武藤章生/浜田晃/三南道郎/二百三高地 丹波哲郎.jpg北村晃一/木村四郎/中田博久/南廣/河原崎次郎/市川好朗/山田光一/磯村健治/相馬剛三/高月忠/亀山達也/清水照夫/桐原信介/原田力/久地明/秋山敏/金子吉延/森繁久彌/天知茂/神山繁/平田昭彦/若林豪/野口元夫/土山登士幸/川合伸旺/久遠利三/須藤健/吉原正皓/愛川欽也/夏目雅子/野際陽子/桑山正一/赤木春恵/原田清人/北林早苗/土方弘/小畠絹子/河合絃司/須賀良/石橋雅史/村井国夫/早川純一/尾形伸之介/青木義朗/三船敏郎(明治天皇)/松尾嘉代/内藤武敏/丹波哲郎(児玉源太郎)●公開:1980/08●配給:東映●最初に観た場所:飯田橋・佳作座 (81-01-24)(評価:★★)●併映:「将軍 SHOGUN」(ジェリー・ロンドン)

 【1969年単行本・1972年改訂・2004年再改訂[文芸春秋(全6巻)]/1978年文庫化・1999年改訂[文春文庫(全8巻)]】

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