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エトランゼの孤独。佳作だが、そんなにたくさん賞を獲るほどの映画かなあという気もする「ロスト・イン・トランスレーション」。
ロスト・イン・トランスレーション  dvd2.jpgロスト・イン・トランスレーション  dvd.jpg ロスト・イン・トランスレーション001.jpg  マリー アントワネット 2006 DVD .jpg
ロスト・イン・トランスレーション [DVD]」「ロスト・イン・トランスレーション [DVD]」/「マリー・アントワネット」チラシ
ロスト・イン・トランスレーション003.jpg サントリーウイスキーのテレビCMに200万ドルで出演するために来日した年配のハリウッド俳優ボブ・ハリス(ビル・マーレイ)は、異国で言葉も通じず孤独を感じていた。同じホテルに滞在していたロスト・イン・トランスレーション004.jpgシャーロット(スカーレット・ヨハンソン)は大学を卒業したてで結婚したばかりだが、セレブ写真家の夫ジョン(ジョバンニ・リビシ)は仕事に忙しく、彼女もボブと同じく孤独だった。シャーロットは夫が自分よりも、若く人気のある女優ケリー(アンナ・ファリス)のようなセレブなモデルに興味があるのではないかと不安を抱く。ボブの方は、長年の夫婦生活に疲れ、"中年の危機"にある。ある晩、長時間の撮影を終え、ホテルのバーでロスト・イン・トランスレーション009.jpg疲れを癒していたボブに、ジョンや友人達といたシャーロットが気づき、ウエイターに日本酒を渡してもらう。2人はホテル内で顔を合わせる内に親しくなる。シャーロットは日本の友人に会う時にボブを誘い、二人は共に日米の文化の違い、世代間のギャップを経験しながらロスト・イン・トランスレーション014.jpg東京の夜を冒険する。ボブが発つ前々夜、彼はホテルのバーのバンド歌手にアプローチされ、翌朝目を覚ますと彼女が部屋にいて、どうやら一夜を共にしたらしい。シャーロットがボブを朝食に誘いに部屋に行くとその女性がいたため、しゃぶしゃぶの昼食時の空気が悪くなる。その夜、ホテルの火災報知機が鳴るアクシデントがあり、ボブとシャーロットはお互いが寂しかったことを伝えて和解する。そして翌朝、ボブは米国へ帰ることになっていた―。

ロスト・イン・トランスレーション チラシ0.jpg 2003年公開の「ロスト・イン・トランスレーション」は、ソフィア・コッポラ監督の「ヴァージン・スーサイズ」('99年)に次ぐ第2作で、400万ドルの少予算と27日間で撮影されたこの作品は、本国で4400万ドルの興業収入という成功を収め、2004年のゴールデングローブ賞の脚本賞(ソフィア・コッポラ)、ミュージカル・コメディ部門の作品賞、同主演男優賞(ビル・マーレイ)の3部門で受賞、アカデミー賞では主要4部門(作品賞・監督賞・主演男優賞・オリジナル脚本賞)にノミネートされて脚本賞を受賞し、ソフィア・コッポラは新鋭若手監督として一躍注目される存在になりました。ビル・マーレイとスカーレット・ヨハンソンは、英国アカデミー賞の主演男優賞と主演女優賞もそれぞれ受賞しており、賞を獲りまくった作品と言えるかもしれません。

ロスト・イン・トランスレーション007.jpg 新宿のパークハイアットホテルのスィート・ルームやバーから始まって、渋谷のクラブやカラオケボックスなど主人公の2人が巡る先々において、外国人から見たTOKYOという都市の生態が上手く描かれているように思いました。また、それが、共にエトランゼである2人の孤独を映し出し、孤独な者同士であるゆえに2人が接近していくプロセスも自然であるし、ところどころにユーモアも織り込まれていたりして、その分、ラストの別れの切なさも際立っています。2人の関係がプラトニックなまま続き、そのままで終わるのもいいです。

ロスト・イン・トランスレーション002.jpg ビル・マーレイの演技も渋いし、スカーレット・ヨハンソンも悪くないです。ビル・マーレイは喜劇のイメージがあるので、演技の幅の広さを感じました。スカーレット・ヨハンソンは、今やすっかり肉体派アクション女優になってしまいましたが、幼い頃から演劇教室(リーストラスバーグ・シアターインスティテュート・フォー・ヤングピープル)に通い、8歳のときオフ・ブロードウェイにデビュー、10歳で映画デビューし、本作出演時は(シャーロットは大学を卒業したてという設定だが)まだ18歳でした。スカーレット・ヨハンソンは、女優人生のこの時でないと出来ない演技をしているように思います。

ロスト・イン・トランスレーション しゃぶ.jpg この映画に関しては、日本人を上から目線で戯画化していて、日本や日本人を馬鹿にしているといった批判も一部にあるようですが、その点はそれほど気になりませんでした。例えば、ボブがシャーロットとしゃぶしゃぶ料理店に行って、「自分で料理する店だなんて」と憤慨しているのも、歌手の女性と一夜を共にしてしまったことをシャーロットに知られた気まずさから、しゃぶしゃぶ料理店に八つ当たりしているという、いわばユーモアの構図なのでしょう(「ぐるなび」の渋谷「しゃぶ禅」のページに「ロストイントランスレーションで使われた席」という写真が今も出ている)。

Sofia Coppola & her Father Francis Ford Coppola.jpgソフィア・コッポラ.jpg 佳作ではありますが、そんなにたくさん賞を獲るほどの映画かなあという気もします。ソフィア・コッポラ監督の才能は、他の作品をもっと観てみないと分からないといった感じでしょうか。スカーレット・ヨハンソンを見るとソフィア・コッポラ監督の演出力を感じますが、ビル・マーレイを見ると、俳優が元々有している実力のような気もします。

Sofia Coppola (1971- )
Sofia Coppola & her Father Francis Ford Coppola

マリー アントワネット 2006_1.jpg そこで、ソフィア・コッポラ監督の次の作品「マリー・アントワネット」('06年)も観てみましたが、何でこんな駄作を撮ってしまったのかなあという感じでした。主演は「ヴァージン・スーサイズ」のキルスティン・ダンストで、撮影はフランスのヴェルサイユ宮殿で行われましたが(撮影料は1日1万6千ユーロで、3か月かかったという。製作費は4000万ドルで前作の10倍)、カンヌ国際映画祭に出品された際に、プレス試写ではブーイングが起き、フランスのマリー・アントワネット協会の会長も「この映画のせいで、アントワネットのイメージを改善しようとしてきた我々の努力が水の泡だ」とコメントしたとのことです。

マリー アントワネット 2006 8.jpg ものすごく時代がかった背景でしたが(アカデミー賞衣装デザイン賞を受賞)、14歳から33歳までのマリー・アントワネットを演じたキルスティン・ダンストは当時24歳で、一人その演技だけが現代の女子大生みたいで、周囲からすごく浮いていたように思います。Wikipediaによると、「根本的なテーマが誰も知る人のいない異国にわずか14歳で単身やってきた少女の孤独である点は、監督の前作の『ロスト・イン・トランスレーション』と類似している」とのことで、ナルホドね。どうやらソフィア・コッポラ監督はこうしたテーマを追い続けているようですが、この作品に関して言えば、オーストリアからフランスにやって来た少女というより、21世紀のアメリカから18世紀のフランスにタイムスリップした女子大生といった感じでしょうか。この作品を支持する人もいますが、個人的には、ソフィア・コッポラ監督の作品は、出来不出来のムラが大きいのかもしれないと思いました。

「ロスト・イン・トランスレーション」●原題:LOST IN TRANSLATION●制作年:2003年●制作国:アメリカ●監督・脚本:ソフィア・コッポラ●製作:ソフィア・コッポラ/ロス・カッツ(製作総指揮:フランシス・フォード・コッポラ/フレッド・ルース)●撮影:ランス・アコード●音楽:ブライアン・レイツェル/ケヴィン・シールズスカーレット・ヨハンソン『エスクワイア』.jpgスカーレット・ヨハンソン『ヴァニティ・フェア』.jpg●時間:102分●出演:ビル・マーレイ/スカーレット・ヨハンソン/ジョバロスト・イン・トランスレーション015.jpgンニ・リビシ/アンナ・ファリス/フランソワ・デュ・ボワ/キャサリン・ランバート/ティム・レフマン/藤井隆●日本公開:2004/04●配給:東北新社●最初に観た場所:北千住・シネマブルースタジオ(17-04-17)(評価★★★☆)
スカーレット・ヨハンソン in 『エスクワイア』/『ヴァニティ・フェア』/「ロスト・イン・トランスレーション」

マリー アントワネット 2006s.jpg「マリー・アントワネット」●原題:MARIE-ANTOINETTE●制作年:2006年●制作国:アメリカ●監督・脚本:ソフィア・コッポラ●製作:ソフィア・コッポラ/ロス・カッツ(製作総指揮:マリー・アントワネット dvd.jpgフランシス・フォード・コッポラ/フレッド・ルース/ポール・ラッサム)●撮影:ランス・アコード●原作: アントニア・フレイザー「マリー・アントワネット」●時間:122分●出演:キルスティン・ダンスト/ジェイソン・シュワルツマン/アーシア・アルジェント/マリアンヌ・フェイスフル/ジュディ・デイヴィス/ジェイミー・ドーナン/リップ・トーン/スティーヴ・クーガン/ローズ・バーン●日本公開:2007/01●配給:東宝東和=東北新社●最初に観た場所:北千住・シネマブルースタジオ(17-05-02)(評価★★)
マリー・アントワネット (通常版) [DVD]

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久しぶりに劇場で観直してみてもやはり解らず、それでも解らないままに圧倒される映画。

地獄の黙示録2017.jpg 地獄の黙示録 特別完全版2017.jpg   地獄の黙示録01ヘリ .jpg
地獄の黙示録 [DVD]」(2017)/「地獄の黙示録 特別完全版 [DVD]」(2017)

地獄の黙示録02 でゅばる.jpg 米国陸軍・ウィラード大尉(マーティン・シーン)に、カーツ大佐(マーロン・ブランド)暗殺の命令が下る。ウィラードと同行者は、哨戒艇でメコン河を上り、やがて、ジャングルの奥地にあるカーツ大佐の王国へとたどり着く―。

 1979年公開のフランシス・フォード・コッポラ監督作品(原題:Apocalypse Now)で(日本公開は1980年)、4年の歳月と3100万ドルの巨費地獄の黙示録03 pm.jpgをかけて作られた大作であり、カンヌ国際映画祭パルム・ドール受賞作でもあって、鳴り物入りで日本公開されましたが、当時テアトル東京に観に行って、解らないままに圧倒されたという印象でした。こうした映画って、観てから時間が経つうちに、ああ、あれってこういことだったんだなあとか解ってくることがありますが、この映画に関してそれが無く、ずっと解らないままでした(先日ちょうど37年ぶりに劇場で観たが、今観ても解らず、解らないままに圧倒される?)。そのうち、この映画が"ワースト1"映地獄の黙示録05 kingdom.jpg画に選ばれたりするような時期があり、例えば『大アンケートによる洋画ベスト150』('88年/文春文庫)の際のアンケートでは"ワースト10"のトップに選ばれています。この結果を受けて、『洋・邦名画ベスト150 〈中・上級篇〉』('92年/文春文庫)で故・田中小実昌2.jpg田中小実昌が映画評論家の北川れい子氏との対談で、「ぼくはそんなに気に入らないことはないですね」とし、ワーストに選ばれる作品はみんな大作なんですよ」と言っていて、ナルホドなあと思いました。

長谷川和彦s.jpg地獄の黙示録06 かーつ.jpg 映画の公開前に映画監督の長谷川和彦氏がコッポラ監督にインタビューしていて、この映画のテーマは何かと質問したら、コッポラは「撮っていて途中で分からなくなった」と答えたとのこと。完成作に寄せた序文でもコッポラは、「撮影の間に映画が徐々にそれ自体で一人歩きを始めた」としていて、映画製作のプロセスをウィラード大尉が奥深いジャングルの河を上って行く旅に重ね合わせています。

地獄の黙示録s.jpg 簡単に言ってしまえば戦争の狂気を描いた映画ということになり、ゆえに「地獄の黙示録 ロ.jpg反戦映画」ということになるのかもしれませんが、多くの戦争映画がそうであるように、同時に戦争と人間の親和性を描いた映画でもあるように思います。特にこの映画は、ロバート・デュヴァル演じるサーフィンをするために敵方の前哨基地を襲撃するビル・キルゴア中佐などに、その部分がよく表象されているように思います。もちろんマーロン・ブランド演じるカーツ大佐にも狂気と戦争への親和性は見られ、むしろカーツ大佐は戦争に過剰に適地獄の黙示録07 s.jpg応してしまい、王国を築いて自分でも壊せなくなってしまったため、マーティン・シーン演じるウィラード大尉に「殺される」運命を選んだのかもしれません。立花 隆 2.jpg評論家の立花隆氏は、ギリシャ神話を隠喩的に織り込んでいると述べていますが、ウィラード大尉によるカーツ大佐殺害は、「父親殺し」の暗喩ととれなくもないでしょう。

村上春樹 09.jpg 村上春樹氏が評論『同時代としてのアメリカ』(単行本化されていない)の中でこの映画について、「いわば巨大なプライヴェート・フィルムであるというのが僕の評価である。大がかりで、おそろしくこみいった映画ではあるが、よく眺めてみればそのレンジは極めて狭く、ソリッドである。極言するなら、この70ミリ超大作映画は、学生が何人か集まってシナリオを練り、素人の役者を使って低予算で作りあげた16ミリ映画と根本的には何ひとつ変りないように思えるのだ」と述べていて、コッポラ監督の談話などから映画製作自体が何か自分探しみたいになっていることが窺えることからも、村上氏の指摘はいいところを突いているように思いました。

 この映画は脚本の段階から紆余曲折あり、原作はジョゼフ・コンラッド(1857‐1924)の『闇の奥』ですが、内容はベトナム戦争に置き換えられ、最初にストーリーを書き下ろしたのは、「ビッグ・ウェンズデイ」('78年)のジョン・ミリアス監督で、その第一稿をコッポラ監督が大幅に書き換えています。また、ウィラード大尉は当初ハーヴェイ・カイテルが演じる予定だったのが、契約のトラブルで降板し、ハリソン・フォードの起用地獄の黙示録 ハリソン・フォード.JPG地獄の黙示録 ハリソン・フォード2.jpgも検討されましたが、「スター・ウォーズ」('77年)の撮影があって無理となり、最終的にマーティン・シーンに落ち着いています。ハリソン・フォードは、撮影の見学に来たときに端役として出演しており、その時の役名は「ルーカス大佐」となっています。

Jigoku no mokushiroku (1979)
Jigoku no mokushiroku (1979).jpg
「地獄の黙示録」●原題:APOCALYPSE NOW●制作年:1979年●制作国:アメリカ●監督・製作:フランシス・フォード・コッポラ●脚本:ジョン・ミリアス/フランシス・フォード・コッポラ/マイケル・ハー(ナレーション)●撮影:ヴィットリオ・ストラーロ●音楽:カーマイン・コッポラ/フランシス・フォード・コッポラ●原作:ジョゼフ・コンラッド「地獄の黙示録 デニス・ホッパー_11.jpg闇の奥」●時間:153分(劇場公開版)/202分(特別完全版)●出演:マーロン・ブランド/ロバート・デュヴァル/マーティン・シーン/フレデリック・フォレスト/サム・ボトムズ/ローレンス・フィッシュバーン/アルバート・ホール/ハリソン・フォード/G・D・スプラドリン/デニス・ホッパー/クリスチャン・マルカン/オーロール・クレマン/ジェリー・ジーズマー/トム・メイソン/シンシア・ウッド/コリーン・キャンプ/ジェリー・ロス/ハーブ・ライス/ロン・マックイーン/スコット・グレン●日本公開:1980/02●配給:日本ヘラルド映画●最初に観た場所:銀座・テアトル東京(80-05-07)●2回目:高田馬場・早稲田松竹(17-05-07)(評価★★★★)●併映(2回目):「イージー・ライダー」(デニス・ホッパー)

テアトル東京 1955 七年目の浮気3.jpgテアトル東京2.jpg

テアトル東京内.jpg

テアトル東京
1955(昭和30)年11月1日オープン (杮落とし上映:「七年目の浮気」)
1981(昭和56)年10月31日閉館 (最終上映」マイケル・チミノ監督「天国の門」)

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ナタリー・ウッドッはこの作品が一番。村上春樹の涙腺を緩めるだけのことはある。

草原の輝きDVD1.jpg草原の輝き (映画)DVD.jpg 草原の輝き 01.jpg
草原の輝き [DVD]」ナタリー・ウッド/ウォーレン・ベイティ in「草原の輝き」
映画パンフレット 「草原の輝き」監督エリア・カザン 出演ナタリー・ウッド/ウォーレン・ビーティ

草原の輝き 02.jpg 1928年、カンサスの高校3年生バッド(ウォーレン・ベイティ)とディーン(ディーニー)(ナタリー・ウッド)は愛し合っているが、保守的な倫理観の持ち主であるディーンの母親(オードリー・クリスティ)の言い草もあって、ディーンはバッドを受け入れるに至らない。バッドの父で石油業者のエイス(パット・ヒングル)はフットボール選手である息子が自慢で、イェール大学に入れたがっているが、バッドには父親の期待が負担になっている。父は理解あるように振舞うが実態は暴君で、反発した姉ジェニー(バーバラ・ローデン)は家出して堕落してしまっていた。バッドは、ディーンが自分を受け入れてくれないイライラから、草原の輝き 03.jpg同級生でコケティッシュな娘ファニタ(ジャン・ノリス)の誘惑に負けてしまう。ディーンはこのことにショックを受け、ワーズワースの詩の授業中に教室を抜け出し、川に身を投げる。何とか死を免草原の輝き 14.jpgれたディーンは精神病院に入院する。父の希望通りイェール大学に入ったバッドは、勉強に身が入らず、酒ばかり飲み、結局アンジェリーナ(ゾーラ・ランパート)というイタ草原の輝き 04.jpgリア娘と結ばれてしまい、学校は退学寸前のところまでいっている。やがて世間は、1929年の世界大恐慌に見舞われ、エイスは大打撃を隠して息子に会い、ディーン似の女をバッドの寝室に送り込んだりするが、その夜窓から飛び降り自殺する。ディーンは病院で知り合ったジョニー(チャールズ・ロビンソン)という若い医師と婚約する。退院後、バッドが田舎へ引込んで牧場をやっていることを知り、訪ねて行くと、彼はアンジェリーナとつつましく暮らしていた。2人は静かな気持ちで再会する―。

エリア・カザン.jpg 1961年のエリア・カザン(1909-2003/享年94)監督によるアメリカの青春映画。ウォーレン・ベイティ(1937年生まれ)のデビュ理由なき反抗・Rebel Without a Cause.jpgー作で、ウォーレン・ベイティはこの作品で、既にジェームズ・ディーンと「理由なき反抗」('55年)で共演するなどして青春スターだったナタリー・ウッド(1938年生まれ)の相手役に選ばれ、ここからスターダムへにのし上がり、「俺たちに明日はない」('67年)のようなアメリカン・ニューシネマの代表作にも出演します(この作品については当初は製作側だったのだが)。一方のナタリー・ウッドも、同じ年に「ウエスト・サイド物語」('61年)に出演するなど、絶頂期にありました。2人は当時24歳と23歳で高校3年生を演じていたことになりますが、共に持ち前の若々しさで演じきったという感じでしょうか。

East of Eden.jpg草原の輝き17.jpg 恋愛を軸とした青春物語に、親と子の葛藤を織り込むところが、「エデンの東」('55年)のエリア・カザン監督らしいですが、ストーリーがしっかりできているように思いました(アカデミー賞脚本賞受賞)。ナタリー・ウッドの演NATALIE WOOD  (1938 - 1981).jpg技も良かったです。彼女は43歳で撮影中に入江で水死し(他殺説、自殺説もある)、アカデミー賞に関しては無冠で終わりましたが、この作品が一番近かったのではないでしょうか(主演女優賞にノミネートされたが受賞は成らなかった)。一方のウォーウォーレン・ベイティ フェイ・ダナウェイ.jpgレン・ベイティは「天国から来たチャンピオン」('78年)のような作品もありましたが、最近では2017年第89回アカデミー賞作品賞プレゼンターをフェイ・ダナウェイと務めた際のトラブルが印象的だったでしょうか(手違いで主演女優賞の名前が刻印された封筒が手渡されていため、読み上げられた後で修正された)。

村上春樹 09.jpg 作家の村上春樹氏は川本三郎氏との共著『映画をめぐる冒険』('85年/講談社)の中で「この映画のことを想うとき、いつも哀しい気持ちになる」「あるいは僕の涙腺が弱すぎるせいかもしれないが、観るたびに胸打たれる映画というのがある。『草原の輝き』もそのひとつである」と書いていて、ナタリー・ウッドについては「青春というものの発する理不尽な力に打ちのめされていく傷つきやすい少女の心の動きを彼女は実に見事に表現している」としていますが、まさにその通りと言えるでしょう。

草原の輝き 13.jpg この映画に対する個人的な印象として、60年代っぽいイメージがロイドの人気者 yunyu.jpgあったのですが、考えてみれば1929年の世界大恐慌の話が出てくるから、それより30年くらい前の話なのだなあと改めて思いました。今観ても、何となく高校生らの着ているジャケットやパンツなどが垢抜けし過ぎている感じもしますが、フットボールの試合場面で選手たちの着ているユニフォームが、「ロイドの人気者(The Freshman)」('25年)と同じようなものであり、ここはしっかり時代考証したのでしょうか(「ロイドの人気者」の主人公ハロルドが新入生として入学したテート大学のモデルはイェール大学だったのではないか)。若い恋人たちの双方の親たちがそれぞれに保守的であるのも、1920年代の話であると考えれば、腑に落ちる気がします。
ロイドの人気者」('25年)

草原の輝き es.jpg草原の輝きges.jpg エリア・カザンはトルコ生まれのギリシャ系アメリカ人でイェール大学で演劇を学んでいます。巨匠が丹念に作った作品であり、ナタリー・ウッドッはやはりこの作品が一番。村上春樹の涙腺を緩めるだけのことはある―といった感じでしょうか。

草原の輝き2e.jpg草原の輝き19.jpg「草原の輝き」●原題:SPLENDOR IN THE GRASS●制作年:1961年●制作国:アメリカ●監督・製作:エリア・カザン●脚本:ウィリアム・インジ●撮影:ボリス・カウフマン●音楽:デヴィッド・アムラム●原作:ウィリアム・インジ●時間:124分●出演:ナタリー・ウ草原の輝き0s.jpgッド/ウォーレン・ベイティ/パット・ヒングル/ゾーラ・ランパート/サンディ・デニス/ショーン・ギャリソン/オードリー・クリスティー/フィリス・ディラー/バーバラ・ローデン/ゲイリー・ロックウッド●日本公開:1961/11●配給:ワーナー・ブラザース映画●最初に観た場所:三鷹東映(78-01-17)(評価★★★★)●併映:「ジョンとメリー」(ピーター・イェイツ)/「ひとりぼっちの青春」(シドニー・ポラック)

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カーニー監督の原点的作品。映画監督がその初期にしか作れない、原石の輝き。

ONCE ダブリンの街角(07年/アイルランド)  .jpgONCE ダブリンの街角でes.jpg Once/ダブリンの街角で Marketa_Irglova_and_Glen_Hansard.jpg
ONCE ダブリンの街角で [DVD]」グレン・ハンサード/マルケタ・イルグロヴァ Glen Hansard and Marketa Irglova accept the Oscar for best original song

ONCE ダブリンの街角で01.jpg ダブリンの街中、ストリートミュージシャンの男(グレン・ハンサード)が誰もが知る曲を弾いている。夜になると自分の書いた曲を歌うが、足を止めるものはいない。そこへ、雑誌や花を売っている女(マルケタ・イルグロヴァ)が現れ、小銭をギターケースに入れる。男は皮肉交じりに礼を言うが、女の「お金のため?誰のための歌?恋人はいないONCE ダブリンの街角でs.jpgの?」という問いかけを疎ましく思いながらも相手するうちに、彼の昼の本業である掃除機修理を約束されてしまう。翌日、演奏する男の前に掃除機を引き摺った彼女が現れ、昼食を共にする。女はチェコからきた移民で、父ONCE ダブリンの街角で02.jpg親が音楽家だったという。2人は女がピアノを弾かせてもらっているという楽器店に立ち寄り、メンデルスゾーンを弾く彼女のピアノの腕を確信した男も一緒に演奏、2人のセッションは美しいハーモニーを生む。男はその演奏に自身の喜びを感じ、女に惹かれていく。翌日、男は街で花を売り歩く女を見つけ声をかけるが、前日彼女を短絡的に誘ったため女の態度はそっけない。男は謝り、自分の曲が入ったCDとプレイヤーを渡す。強引に彼女を家まで送ると、家へあがらないかと誘われる。家では母親と幼い娘を紹介され、厳しい移民の生活を目の当たりにする。男は、自分の曲に詞をつけてみないかと提案する。女はその夜、働くばかりの生活を忘れ、心に抱えていた想いを詞に込める―。

ONCE ダブリンの街角で92.jpg ジョン・カーニー監督・脚本による2007年公開のアイルランドの音楽映画。アイルランド映画局の出資を受けつつも製作費10万ドルという低予算で作られた作品で、撮影期間も17日間という短さだったそうです。2007年1月のサンダンス映画祭で観客賞を受賞し、同年3月からの全米一般公開での上映劇場数はたった2館だったのが口コミで話題になり、140館まで劇場数を増やしたとのことで、アカデミー賞の歌曲賞を受賞し(授賞式で主演の1人マルケタ・イルグロヴァが「低予算でも良いものを作れば必ず認めてもらえる」とスピーチを行い、会場から大喝采を受けた)、ミュージカル化されるまでに至っています。自身の監督第2作となるカーニー監督は「ザ・フレイムズ」の元ベース奏者であり、主演のグレン・ハンサードとマルケタ・イルグロヴァの2人も共にプロのミュージシONCE ダブリンの街角で2.jpgャンです。コスト削減のために自然光や友人達の家を使用したりし、パーティのシーンはハンサード自身のアパートが使われ、ハンサードの実際の友人がパーティ参加者および演奏者として出演したとのこと、パーティの席上で歌を披露た婦人はハンサードの母親だそうです。ダブリンの街角でのシーンは許可無しのゲリラ撮影で、望遠レンズを使うことで役者はカメラを意識することなく演技が出来たとのこと、勿論、通行人の多くも自分が映画に映り込んでいることを知らず映っていたわけで、全体として、ドキュメンタリー映画のような雰囲気があります(カメラがずっと細かく揺れていて、アドリブにカメラマンが笑って大きく揺れている場面もある)。

ONCE ダブリンの街角で03.jpg ストーリー的には所謂"ボーイ・ミーツ・ガール"の物語ですが、主人公の男女(最後まで名前で呼ばれることはなく、エンドロールでの役名が'guy''giri'となっているのが洒落ている)が互いに惹かれ合いながらも普通の恋愛映画みたに一緒にはならず、最後は(最後も行き違いのようになってしまうのだが)爽やかに別れるのが却っていいです(ロンドン行きを決めた自分に対する父親からの選別でチェコ製のピアノを買ったのかあ)。

「いいえ、私はあなたを愛している」(字幕なし)

 街でバンドのメンバーを集めるというモチーフや街角でのゲリラ演奏という撮影手法も、主人公の男女が普通の男女の関係にはならず音楽を通してそれ以上の関係になるという展開も、カーニー監督の日本公開第2作「はじまりのうた」('13年/米)に引き継がれています。「はじまりのうた」のキーラ・ナイトレイ演じる主人公の女性はイギリスからONCE ダブリンの街角で1.jpgニューヨークに来たという設定ですが、この作品のマルケタ・イルグロヴァ演じる女性は、チェコからダブリンに来た移民という設定で、共に'異邦人'であることで共通しています(イルグロヴァ自身がチェコのモラヴィア出身)。そうした意味では、カーニー監督の原点的な映画でしょうか。男女のロマンスの部分もカーニー監督の実体験がモチーフになっているとのことです(通りで演奏中にお金が盗まれるシーン、銀行でお金を借りるシーンなどは、グレン・ハンサードの下積み時代の実話だそうだ)。

スウェル・シーズン 来日公演.jpgスウェル・シーズン01.jpg 主演のハンサードとイルグロヴァは映画を通して実生活でも交際を始め、カーニー監督によれば、そのことが2006年1月のダブリンでの僅か17日での撮影を容易にしたとのことですが(1988年生まれのイルグロヴァは当時18歳だった)、2人はその年デュオ・アルバム「The Swell Season」を発表、その後私生活上は別れたものの、「スウェル・シーズン」というデュオは継続しており、2009年には初来日して公演をしています。

 ハンサードとイルグロヴァは私生活でも映画のストーリーのような関係になったわけですが、映画のストーリーで2人が結ばれなかったことにも満足していて、インタビューでハンサードは「アメリカの配給社が結末を変えて私達にキスをさせ、私は映画の宣伝活動に全くやる気をなくした」と語ったとのこと。ハンサードは、男が女に別居中の夫を今も愛しているのか尋ねる場面で、イルグロヴァがチェコ語のアドリブで「いいえ、私はあなたを愛している」(字幕なし)と言ったのに対し、ハンサードは撮影中は役の男同様に彼女が何と言ったのかわからなかったと語っており、映画と現実がいくつかの面でシンクロしているのが興味深いです(男が女にその言葉を英訳するよう求めるが、女の方は含みを持たせながらも自分の言葉の意味は教えなかったという、この一連のセリフや演技も全部アドリブなのか?)。

 「観始めて3分で泣ける」と評判の「はじまりのうた」は、ある意味映画として洗練されており、それに比べると本作は、荒削りの良さとでも言うか原石の輝きとで言うべきか、映画監督がその初期においてしか作れない作品であるように思いました。

Once Dublin no Machikado de (2007).jpgONCE ダブリンの街角で00.jpg「ONCE ダブリンの街角で」●原題:ONCE●制作年:2007年●制作国:アイルランド●監督・脚本:ジョン・カーニー●製作:マルティナ・ニーランド●撮影:ティム・フレミング●87分●出演:グレン・ハンサード/マルケタ・イルグロヴァ/ ヒュー・ウォルシュ/ゲリー・ヘンドリック/アラスター・フォーリー/ゲオフ・ミノゲ/ ビル・ホドネット/ダヌシュ・クトレストヴァ/ダレン・ヒーリー/ マル・ワイト/ マルチェラ・プランケット/ ニーアル・クリアリー●日本公開:2007/11●配給:ショウゲート●最初に観た場所:北千住・シネマブルースタジオ(16-07-02)(評価:★★★★)
Once Dublin no Machikado de (2007)

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関係性が"再生"される物語。原題タイトル「BEGIN AGAIN」の「AGAIN」に意味がある。

はじまりのうた01.jpgはじまりのうた02.jpg はじまりのうた98.jpg ジョン・カーニー監督.jpg
はじまりのうた BEGIN AGAIN [DVD]」 キーラ・ナイトレイ(Keira Knightley)/ジョン・カーニー(John Carney)監督
はじまりのうた15.jpg ミュージシャンの恋人デイヴ(アダム・レヴィーン)と共作した曲が映画の主題歌に採用されたのを機に、イギリスからニューヨークへやってきて彼とニューヨークで暮らすことにしたシンガーソングライターのグレタ(キーラ・ナイトレイ)だったが、デイヴがスターとなって二人の関係の歯車に狂いが生じ始め、デイヴの浮気により彼と別れて、旧友の売れないミュージシャンのスティーブ(ジェームズ・コーデン)の家に居候する。スティーブは失意のグレタを励まそうとライブ・バーに連れていき、彼女を無理やりステージに上げる。歌い終わると、音楽プロデューサーを名乗るダン(マーク・ラファロ)にアルバムを作ろうと持ち掛けられる―。

 2013年にトロント国際映画祭で上映、2014年に一般公開のアメリカの音楽映画ですが、監督および脚本のジョン・カーニーは「ONCE ダブリンの街角で」('07年/アイルランド)の監督でアイルランド出身、主演のキーラ・ナイトレイはジェーン・オースティン原作の「プライドと偏見」('05年/英)など時代物の出演作が多いイングランド出身の女優であり(アメリカや日本ではむしろ「パイレーツ・オブ・ キーラ・ナイトレイ パイレーツ・オブ・カリビアン.jpgカリビアン」シリーズの第1作('03年)から第3作('07年)に出ていたことで知られているが)、ダン役のマーク・ラファロは米国俳優、デイヴ役のアダム・レヴィーンは米国のシンガーソングライター、ギタリストでロックバンド「マルーン5」のボーカル、ということで、英国的雰囲気と米国的雰囲気が入り交じったような映画だったでしょうか(グレタのことを励ます旧友スティーブ役の ジェームズ・コーデンもイングランド出身の俳優・コメディアン)。ジョン・カーニー監督の前作「ONCE ダブリンの街角で」もそうですが、最初は公開館数が非常に少なかったのが、口コミでその良さが伝わり大ヒットを記録したようです。

キーラ・ナイトレイ in「パイレーツ・オブ・カリビアン」

はじまりのうた86.jpg 冒頭のライブ会場の場面で、スティーブがグレタを無理矢理ライブのステージに上げて歌わせ、それにダンが聞き入ってしまうところから始まって、そこからフラッシュバックしてグレタの失意に至る道のりを振り返り、今度はダンの失意への道のりを振り返るという映画の前半部分の構成が、「倒叙法」とでも言うか、「長い導入部」とでも言うか実に巧みであり、しかも、技巧が勝ちすぎることなく、前半部分だけでもしっかり感動させてくれます(誰かが「開始3分で泣ける」と言っていたが確かに。しかも同じ場面で3回泣ける(?)というのはスゴイ)。

はじまりのうた4.jpg ここまでしっかり作られてしまうと、後半はもう予定調和でメデタシメデタシしかないのではないかと思ってしまいましたが、物語がグレタの"再生"に止まらずダンの"再生"も描いていて、これがグレタの"再生"だけだと単なる敏腕プロデューサーの話になってしまうところを、途中からダンの"再生"も描くことでバランスが良くなっています。

はじまりのうた53.jpg しかも、グレタは、ダン〈個人〉を"再生"させると言うよりは、過去の出来事によりダンとそれまでうまくいっていなかった彼の妻や娘との〈関係性〉を再生させます(それによってダン自身も再生する)。これはスゴいなあと思って観ていたら、今度はグレタと別れた恋人デイヴの〈関係性〉が"再生"されるのです。相互に関係性が"再生"される物語なんだなあと(原題タイトル'BEGIN AGAIN'の'AGAIN'に意味がある)。
 
はじまりのうた89.jpg 従って、グレタとダンはあくまで仕事上のパートナーに止まり、再会を約して「爽やかに」別れることになるわけですが、観ていていいなあという感じでした。やや出来過ぎた話との印象もありますが、ダンがバックバンドのメンバーを集めるところなどはコミカルで面白かったし、路上でのゲリラ・ライブはシズル感満点だったし(タイムズ・スクエアやエンパイア・ステート・ビルなどマンハッタンの名所巡りも味わえる)、「プライドと偏見」でアカデミー主演女優賞にノミネートされたキーラ・ナイトレイの演技力は、この現代劇でも発揮されていたように思います。

 エンディング・タイトルバックと共に映し出されるエピローグの、レーベル契約を結ばずにネットで曲を1ドルで曲を売るというアイデアも洒落ていて楽しかったです。

シング・ストリート 未来へのう3.jpgシング・ストリート 未来へのうた2.jpg 今月 ['16年7月]9日からは渋谷・シネクイントで、カーニー監督の最新作「シング・ストリート 未来へのうた」('15年/アイルランド・英・米)の上映が始まります。80年代半ばのダブリンが舞台のカーニー監督の自伝的要素も含んだ作品のようですが、シネクイントが「パルコ・パート3」の建て替えに伴う一時休業(?)で8月7日をもって最終上映となるため、シネクイントの実質ラストショーになるのではないだろうか。(実際その通りになった。ジョン・カーニーに着眼したシネクイントらしいラストショーか)

「シング・ストリート 未来へのうた」('15年/アイルランド・英・米)
    

はじまりのうた66.jpg「はじまりのうた」●原題:BEGIN AGAIN●制作年:2014年●制作国:アメリカ●監督・脚本:ジョン・カーニー●製作:アンソニー・ブレグマン/トビン・アームブラはじまりのうた88.jpgスト(英語版)/ジャド・アパトー●撮影:ヤーロン・オーバック●音楽:グレッグ・アレキサンダー●104分●出演:キーラ・ナイトレイ/マーク・ラファロ/ヘイリー・スタインフェルド/アダム・レヴィーン/ジェームズ・コーデン/ヤシーン・ベイ/シーロー・グリーン/キャサリン・キーナー●日本公開:2015/02●配給:ポニーキャニオン●最初に観た場所:渋谷・CINE QUINTO(シネパルコスペース Part3.jpg渋谷シネクイント劇場内.jpgCINE QUINTO tizu.jpgクイント)(15-02-28)●2回目:北千住・シネマブルースタジオ(16-06-27)(評価:★★★★)
CINE QUINTO(シネクイント) 1981(昭和56)年9月22日、演劇、映画、ライヴパフォーマンスなどの多目的スペースとして、「PARCO PART3」8階に「PARCO SPACE PART3」オープン。1999年7月~映画館「CINE QUINTO(シネクイント)」。 2016(平成28)年8月7日閉館。

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'読むだけでも楽しめるが、(巧みな語り口に乗せられて)まだ観ていない映画を観たくなる本。

私の映画の部屋_.jpg 私の映画の部屋.jpg  めぐり逢い dvd.jpg 魚が出てきた日 dvd.jpg
私の映画の部屋 (文春文庫)』「めぐり逢い [DVD]」「魚が出てきた日 [DVD]」 
私の映画の部屋―淀川長治Radio名画劇場 (1976年)

 この「私の映画の部屋」シリーズは、70年代にTBSラジオで月曜夜8時から1時間放送されていた「淀川長冶・私の映画の部屋」を活字化したもので、1976(昭和51年)刊行の本書はその第1弾です。著者の場合、1966(昭和41)年から始まったテレビ朝日系「日曜洋画劇場」(当初は「土曜洋画劇場」)の解説者として番組開始から死の前日までの32年間出演し続けたことでよく知られていますが、先行した当ラジオの方は、番組時間枠の内CM等を除く40分が著者の喋りであり、それを活字化した本書では、「日曜洋画劇場」でお馴染みの淀川長治調が、より長く、また、より作品中身に踏み込んだものとして楽しめます。

 本書の後、シリーズ的に、続、続々、新、新々と続きますが、この第1弾の単行本化時点で既に140回分が放送されており、その中から13回分を集めて本にしたとのことで、「チャップリンの世界」から始まって、かなりの選りすぐりという印象を受けます(但し、どの回を活字化するかは版元のTBSブリタニカが決めたとのこと)。

「めぐり逢い」1957G.jpg 個人的には、昔は淀川長冶ってそれほどスゴイとは思っていなかったのですが、今になってやはりスゴイ人だったんだなあと思ったりもします。作品解説もさることながら、作品を要約し、その見所となるポイントを抽出する技は絶妙という感じです。本書で言えば、例えば、レオ・マッケリー監督、ケーリー・グラント、デボラ・カー主演の「めぐり逢い」('57年、原題:An Affair to Remember)のラストシーンのエンパイアステートビルで出会えなかった2人が最後の最後に出会うシーンの解説などは、何だか今目の前に映画のスクリーンがあるような錯覚に陥りました。この映画、最初観た時はハーレクイン・ロマンスみたいと思ったけれど、今思えばよく出来ていたと(著者に指摘されて)思い直したりして...。これ自体が同じレオ・マッケリー監督作でシャルル・ボワイエ、アイリーン・ダン主演の「邂逅(めぐりあい)」('39年、原題:Love Affair)のリメイクで(ラストを見比べてみるとその忠実なリメイクぶりが窺える)、その後も別監督により何度かリメイクされています。トム・ハンクス、メグ・ライアン主演の「めぐり逢えたら」('98年)では、邂逅の場所をエンパイアステートビルがら貿易センタービルに変えていましたが、何とオリジナルにある行き違いはなく2人は出会えてしまいます。これでは著者の名解説ぶりが発揮しようがないのではないかと思ってしまいますが、でも、あの淀川さんならば、いざとなったらそれはそれで淀川調の解説をやるんでしょう。

Le bonheur 「幸福 [DVD]
幸福 DVD_.jpg 章ごとに見ていくと、「女の映画」の章のアニエス・ヴァルダ監督の「幸福(しあわせ)」('65年)、フランソワ・トリュフォー監督の「黒衣の花嫁」('68年)とトニー・リチャードソン監督「マドモアゼル」('66年)が、著者の解説によって大いに興味を惹かれました。「幸福」は、夫の幸福のために自殺する妻という究極愛を描いた作品。「黒衣の花嫁」は、結婚式の場で新郎を殺害された新婦の復讐譚。「マドモアゼル」は周囲からはいい人に見られているが、実は欲求不満の捌け口をとんでもない事に見出している女教師の話。「ルイ・マル」の章の「死刑台のエレベーター」('57年)、「黒衣の花嫁 DVD.jpgマドモアゼル DVD.jpg恋人たち」('58年)もいいけれど、「黒衣の花嫁」「マドモアゼル」共々ジャンヌ・モロー主演作で、ジャンヌ・モローっていい作品、スゴイ映画に出ている女優だと改めて思いました。
黒衣の花嫁 [DVD]」「マドモアゼル [DVD]

昨日・今日・明日.jpg昨日・今日・明日P.jpgひまわり ポスター.bmp イタリア映画では、ビットリオ・デ・シーカの「昨日・今日・明日」('63年)、「ひまわり」('70年)に出ているソフィア・ローレンがやはり華のある女優であるように思います(どちらも相方はマルチェロ・マストロヤンニだが、片や喜劇で片や悲劇)。
「昨日・今日・明日」輸入版ポスター

魚が出てきた日7.jpg魚が出てきた日ps2.jpg あと個人的には、「ギリシア映画」の章のマイケル・カコヤニス製作・脚本・監督の「魚が出てきた日」('68年)が懐しいでしょうか。スペイン沖で核兵器を積載した米軍機が行方不明になったという実際に起きた事件を基にした、核兵器を巡ってのギリシアの平和な島で起きた放射能汚染騒動(但し、島の地元の人たちは何が起きているのか気魚が出てきた日3.jpgづいていない)を扱ったブラックコメディで、ちょっと世に出るのが早すぎたような作品でもあります。
1968年初版映画パンフレット 魚が出てきた日 ミカエル・カコヤニス監督 キャンディス・バーゲン トム・コートネー コリン・ブレークリー
THE DAY THE FISH COME OUT 1967  c.jpg トム・コートネイ、サム・ワナメイカー、キャンディス・バーゲンが出演。キャンディス・バーゲンって映画に出たての頃からインテリっぽい役を地でやっていて、しかも同時に、健康的なセクシーさがありました。

Candice Bergen in 'The Day The Fish Came Out', 1967.

 読むだけでも楽しめますが、(巧みな語り口に乗せられて)まだ観ていない映画を拾って観たくなる、そうした本でした。

「めぐり逢い」1957ps.jpg「めぐり逢い」1957EO.jpg「めぐり逢い」●原題:AN AFFAIR TO REMEMBER●制作年:1957年●制作国:アメリカ●監督:レオ・マッケリー●製作:ジェリー・ウォルド●脚本:レオ・マッケリー/デルマー・デイヴィス/ドナルド・オグデン・ステュワート●撮影:ミルトン・クラスナー●音楽:ヒューゴ・フリードホーファー●原案:レオ・マッケリー/ミルドレッド・クラム●時間:119分●出演:ケーリー・グラント/デボラ・カー/リチャード・デニング/ネヴァ・パターソン/キャスリーン・ネスビット/ロバート・Q・ルイス/チャールズ・ワッツ/フォーチュニオ・ボナノヴァ●日本公開:1957/10●配給:20世紀フォックス●最初に観た場所:高田馬場・ACTミニシアター(85-11-03)(評価:★★★☆)●併映:「ティファニーで朝食を」(ブレイク・エドワーズ)

SLEEPLESS IN SEATTLE.jpgめぐり逢えたら 映画 dvd.jpg「めぐり逢えたら」●原題:SLEEPLESS IN SEATTLE●制作年:1993年●制作国:アメリカ●監督:ノーラ・エフロン●製作:ゲイリー・フォスター●脚本:ノーラ・エフロン/デヴィッド・S・ウォード●撮影:スヴェン・ニクヴィスト●音楽:マーク・シャイマン●原案:ジェフ・アーチ●時間:105分●出演:トム・ハンクス/メグ・ライアン/ビル・プルマン/ロス・マリンジャー/ルクランシェ・デュラン/ルクランシェ・デュラン/ギャビー・ホフマン/ヴィクター・ガーバー/リタ・ウィルソン/ロブ・ライナー●日本公開:1993/12●配給:コロンビア映画(評価:★★☆)
めぐり逢えたら コレクターズ・エディション [DVD]

死刑台のエレベーター01.jpg死刑台のエレベーター.jpg「死刑台のエレベーター」●原題:ASCENSEUR POUR L'ECHAFAUD●制作年:1957年死刑台のエレベーター2.jpg●制作国:フランス●監督:ルイ・マル●製作:ジャン・スイリエール●脚本: ロジェ・ニミエ/ルイ・マル●撮影:アンリ・ドカエ●音楽:マイルス・デイヴィス●原作:ノエル・カレフ●時間:95分●出演:モーリス・ロネ/ジャンヌ・モロー/ジョルジュ・プージュリー/リノ・ヴァンチュラ/ヨリ・ヴェルタン/ジャン=クロード・ブリアリ/シャルル・デネ●日本公開:1958/09●配給:ユニオン●最初に観た場所:新宿アートビレッジ (79-02-10)●2回目:高田馬場・ACTミニシアター(82-10-03)●3回目:六本木・俳優座シネマテン(85-02-10)(評価:★★★★☆)●併映(1回目):「恐怖の報酬」(アンリ=ジョルジュ・クルーゾー)/(2回目):「大人は判ってくれない」(フランソワ・トリュフォー) 
死刑台のエレベーター [DVD]

LES AMANTS 1958 3.jpg恋人たち モロー dvd.jpg「恋人たち」●原題:LES AMANTSD●制作年:1958年●制作国:フランス●監督:ルイ・マル●製作:イレーネ・ルリッシュ●脚本:ルイ・マル/ルイ・ド・ヴィルモラン●撮影:アンリ・ドカエ●音楽:ヨハネス・ブラームス●原作:イヴァン・ドノン「明日はない」●時間:95分●出演:ジャンヌ・モロー/ジャン・マルク・ボリー/アラン・キュニー/ホセ・ルイ・ド・ビラロンガ/ジュディット・マーグル/ガストン・モド/ジュディット・マーレ●日本公開:1959/04●配給:映配●最初に観た場所:北千住・シネマブルースタジオ(14-07-08)(評価:★★★★)
恋人たち【HDマスター】《IVC 25th ベストバリューコレクション》 [Blu-ray]
Himawari(1970)
Himawari(1970).jpg
「ひまわり」.jpg「ひまわり」●原題:I GIRASOLI(SUNFLOWER)●制作年:1970年●制作国:イタリア・フランス・ソ連●監督:ヴィッひまわり01.jpgトリオ・デ・シーカ●製作:カルロ・ポンティ/アーサー・コーン●脚本:チェザーレ・ザsunflower 1970.jpgバッティーニ/アントニオ・グエラ/ゲオルギス・ムディバニ●撮影:ジュゼッペ・ロトゥンノ●音楽:ヘンリー・マンシーニ●時間:107分●出演:マルチェロ・マストロヤンニ/ソフィア・ローレン/リュドミラ・サベーリエワ/アンナ・カレーナ/ジェルマーノ・ロンゴ/グラウコ・オノラート/カルロ・ポンティ・ジュニア●日本公開:1970/09●配給:日本ヘラルド映画●最初に観た場所:目黒シネマ(83-05-01)(評価:★★★★)●併映:「ワン・フロム・ザ・ハート」(フランシス・フォード・コッポラ)  
 
魚が出てきた日ps3.jpg魚が出てきた日4.jpg THE DAY THE FISH COME OUT 1967 .jpg魚が出て来た日lp.jpg「魚が出てきた日」●原題:THE DAY THE FISH COME OUT●制作年:1967年●制作国:アキャンディス・バーゲンM23.jpgメリカ●監督・製作・脚本:マイケル・カコヤニス●撮影:ウォルター・ラサリー●音楽:ミキス・テオドラキス●時間:110分●出演:トム・コートネイ/キャンディス・バーゲン/サム・ワナメーキャンディス・バーゲン ボストン・リーガル.jpgカー/コリン・ブレークリー/アイヴァン・オグルヴィ/中野武蔵野ホール.jpgディミトリス・ニコライデス/ニコラス・アレクション●日本公開:1968/06●配給:20世紀フォックス●最初に観た場所:中野武蔵野館(78-02-24)(評価:★★★☆)●併映:「地球に落ちてきた男」(ニコラス・ローグ) 中野武蔵野館 (後に中野武蔵野ホール) 2004(平成16)年5月7日閉館 
キャンディス・バーゲン in 「ボストン・リーガル」 Boston Legal (ABC 2004~2008) ○日本での放映チャネル:FOX CRIME(2007~2011)

【1985年文庫化[文春文庫(『私の映画の部屋』)]】
 

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公安トップの移動手段は「丸ノ内線」の専用車両! 珍品的色合いが濃いが、映像的には貴重か。
007は二度死ぬ チラシ.jpgYOU ONLY LIVE TWICE 基地.jpg YOU ONLY LIVE TWICE images.jpg
007は二度死ぬ [DVD]

You Only Live Twice 3.jpg アメリカとソ連の宇宙船が謎の飛行物体に捉えられるという事件が起こり、米ソ間が一触即発の状態になるものの、英国の情報機関である MI6はその宇宙船が日本周辺から飛び立っているという情報を掴み、その真偽を確かめるために、ジェームズ・ボンド(ショーン・コネリー)が日本に派遣されることになる。ボンドは敵の目を欺くため、英国の植民地の香港の売春宿で、情報部により用意された現地の女性リン(ツァイ・チン)の手引きによって、寝室になだれ込んだ殺し屋にマシンガンで銃撃され死んだことに。その後ビクトリア・ハーバー内にYOU ONLY LIVE TWICE 05.jpg停泊するイギリス海軍の巡洋艦上で水葬され、その遺体を回収したイギリス海軍の潜水艦で隠密裏に日本へ。日本上陸後は、蔵前国技館で謎の女アキ(若林映(あき)子)と会い、彼女を通じて日本の公YOU ONLY LIVE TWICE 06.jpg安のトップ・タイガー田中(丹波哲郎)に会うが、在日オーストラリア人の捜査協力者のヘンダーソンは直後に殺されてしまう。その殺し屋は大里化学工業の本社から送られた者だと知ったボンドは、化学薬品を取り扱うビジネスマンを装って大里化学工業の東京本社に赴き、大里社長とその秘書ヘルガ・ブラント(カリン・ドール)と接触する―。 (右:サンヨー・テレビ「日本」の梱包)

『007号は二度死ぬ』早川書房.jpgYOU ONLY LIVE TWICE 08.jpg 事件の背後にはスペクターの影があり、ボンドはタイガー田中の助けを得てスペクターの秘密基地に潜入、宿敵ブロフェルド(「大脱走」('63年)、「刑事コロンボ/別れのワイン」('73年)のドナルド・プレザンス)と対決するというシリーズの第5作。原作はイアン・フレミングによるシリーズ第11作で(ハヤカワ・ポケット・ミステリの邦訳タイトルは『007号は二度死ぬ』)、脚本は、イアン・フレミングと親交のあったロアルド・ダール(ティム・バートン監督「チャーリーとチョコレート工場」 ('05年/米)として映画化された『チョコレート工場の秘密』の作者)であり、「女性を3人出し、最初の女はボンドの味方で敵方に殺され、2番目の女は敵の手先でこれも殺され、3番目の女は殺されず映画の終わりにボンドがものにするように」というのがプロデューサーの指示だったそうですが、ほぼその通りに作られています。 
You Only Live Twice.jpgMie Hama as Kissy Suzuki in "You Only Live Twice"(1967)
Mie Hama as Kissy Suzuki in  最初は日本に潜入したボンドをリードする公安エージェントの女性役が浜美枝で、ボンドが地方に行って出会う海女のキッシー鈴木の役が若林映子だったそうで、この配役は「キングコング対ゴジラ」('62年/東宝)を観て浜を知ったスタッフからの若林映子と併せての指名だったとのことです(若林映子は個人的には「宇宙大怪獣ドゴラ」('64年/東宝)などでリアルタイムで見た。浜美枝と若林映子は「国際秘密警察鍵の鍵」('65年/東宝)でも共演している)。ところが浜美枝の語学力ではボンドをリードする公安エージェント役が務まらないということで、若林映子がエージェント(アキという役名になった)を演じ、浜美枝の方がキッシー鈴木役になったとのこと。但し、海女役になった浜美枝は、ロケ地に来て潜れないということがYou Only Live Twice akiko wakabayashi.jpg若林映子3.jpg判明し、ショーン・コネリーに同伴していた妻のダイアン・シレント(彼女は子供の頃から泳ぎが得意で潜水も長時間できた)が、映画でキッシーが潜るシーンはスタントするなどしたとのことで、撮影に際しては結構ドタバタだった面もあったようです。
Akiko Wakabayashi in James Bond film You Only Live Twice (1967)

 都内並びに日本の各所でロケを行っているという007は二度死ぬ ニューオータニ.jpg点では、昭和40年代前半の日本の風景を映し出していて貴重かも。都内では、旧蔵前国技館、銀座四丁目交差点、ホテルニューオータニなどで、地方では富士スピードウェイ、神戸港、 姫路城、鹿児島県坊津町などでロケをしています。日本的なものを都会と地方、現代と伝統の両面からピックアップしている意欲は買えますが、一方で、姫路城で手裏剣で塀を傷つけたりするなどのトラブルも生じさせています。
ホテルニューオータニのエントランス(Osato Chemical & Engineering Co., LTD.(大里化学工業)になっている。)

007は二度死ぬ87.jpg オープニングの影絵は浮世絵のイメージ? イアン・フレミングは親日家ではあったものの、日本文化に対する外国人特有の偏見や誤解もあり、あまりに奇異な見方であると思われる部分は丹波哲郎が撮影陣に進言して直させたりもしたようですが、ボンドと若林演じるアキや丹波演じるタイガーなど日本の公安との橋渡し役が横綱・佐田の山(!)だったり、タイガーの移動手段が地下鉄「丸ノ内線」の深夜の007は二度死ぬ 丸ノ内線.jpg専用車両(!)だったり(中野坂上駅でロケ。タイガーのオフィスは地下鉄の駅の「地下」にある。公安は顔を知られてはならず、そのため下手に地上を歩けないからというその理由がこじつけ気味)、さらに007は二度死ぬ nihon.jpg公安所属の特殊部隊が全員忍者装束(!)で日本刀を背負っていたりと、ちょっYOU ONLY LIVE TWICE 丹波.jpgと飛躍し過ぎていて、さすがの丹波哲郎でも口を挟みにくかった部分もあったのか(まあ、いいかみたいな感じもあったのか)、結果として「!」連続の珍品で、ボンドが日本人に変装することなども含「007は二度死ぬ」 (67年/米)2.jpgめ、現実味という観点からするとどうかなあと思わざるを得ません(非現実性はロアルド・ダールらしく、また007らしくもあるのだが。因みに丹波哲郎は、英語が不得手な浜美枝の降板を要請する英国側スタッフに対し、ここまできたらそれは難しいと交渉するくらいの英語力はあったが、発音は日本語訛りであったため、作中での本人の英語の台詞は吹き替えられている)。

 ロケット遭難事故の黒幕は米ソ何れでもなければどこか、日本にはそんな技術はあるとは思えない、と英国情報部は最初から日本に対し"上から目線"ですが、冒頭の宇宙船の特撮シーンは円谷プロでもあれくらいは出来たかもしれません。

 個人的に不満な点は(プロデューサーの指示とは言え)ずっと頑張っていたアキをあっさり死なせてしまった点でしょうか。ややあっけ無さ過ぎた印象を受けました。アキは江戸川乱歩の「屋根裏の散歩者」と同じトリックで寝ている間に殺され、その間ボンドも寝ていたというのはどうもねえ(女性を守り切れていない)と言いたくなります(近作「007 スカイフォール」('12年)でもボンドガールをあっさり死なせているが)。

YOU ONLY LIVE TWICE 朝日グラフ.jpg まあ、かなりの部分を日本で撮影しているということで、映像的価値並びに珍品的価値(?)を加味して星半個オマケといったところでしょうか。アジア人が最初にボンド・ガ007 ミシェル・ヨー.jpgールになった作品であり、この次にアジア人ボンド・ガールが誕生したのは「007 トゥモロー・ネバー・ダイ」('97年)のミシェル・ヨーで、その間何と30年もあったわけだし、やっぱり若林映子、浜美枝の起用は今振り返っても画期的だったと言えるのだろうなあ。

若林映子 サルノ王女.jpg 若林映子は、「三大怪獣 地球最大の決戦」('64年/東宝)にもセルジナ公国のサルノ王女役で出ていましたが(サルノ王女の本名はマアス・ドオリナ・サルノ(まあ素通りなさるの!)。正体は5000年前、キングギドラによって滅ぼされた金星文明から地球に脱出してきた金星人の末裔の一人)、「007は二度死ぬ」の前年にTV番組の「ウルトラQ(第9話)/クモ男爵」('66年/TBS)にゲスト出演したりもしています。ストーリーは―、

桜井浩子/若林映(あき)子 in 「ウルトラQ/クモ男爵」('66年/TBS)
クモ屋敷で不安げな二人の美女(若林映子・桜井浩子).jpg ホテルのパーティに招かれた6人の男女客たちが、霧深い夜道を車を連ねて帰路に着く途中、竹原(鶴賀二郎)が誤って沼に落ちる。助けようとしたクモ男爵 若林1.jpg一平(西條康彦)も深みにはまり、後続車の万城目淳(佐原健二)と江戸川由利子(桜井浩子)、葉山(滝田裕介)と今日子(若林映子)が辛じて救出。霧が深くこれ以上車で先へ進めないので、淳たちはずぶ濡れの北原と一平をかかえて途方に暮れるが、沼の向う側に灯のついた洋館を発見、そちらに向かう。洋館の中は何十年も放置され荒れていたが、階上の方へ淳が行ってみると、そこで巨大なクモに突然襲われる。驚いて階投を転がり降りた淳は、九十年前いたという蜘蛛男爵の館みたいだと言う。その頃、地下のワイン倉庫にいっていた葉山は、例の巨大なクモに襲われ傷つく。淳たちは、はじめてここがまさに蜘蛛男爵の館であることに気づき、館から逃げ出そうとするが―。

クモ男 洋館.jpg 洋館は、コラムニストの泉麻人氏も言っていましたが、アルフレッド・ヒッチコックの映画「レベッカ」('40年/米)に出てくる邸宅みたいな雰クモ男爵カラー .jpg囲気があって良かったですが、男爵の死んだ娘がクモになり、娘の死を悲しんだ男爵自身もクモになっていまったという話はやや強引か(まあ、「ウルトラQ」は"強引"なスト-リーが多いのだが)。この回の視聴率は35.7%と(「ウルトラQ伝説」等による)シリーズ全27話の中では上位にくる数字を出しています。このシリーズ、総天然色版でDVDが出ているので、それでもう一度作品を鑑賞するとともに、若林映子や桜井浩子のファッションを見直してみるのもいいかも。

第9話「クモ男爵」.jpgウルトラQ.jpgクモ男爵 title.jpg「ウルトラQ(TV版・第9話)/クモ男爵」●制作年:1966年●監督:円谷一●監修:円谷英二●制作:円谷プロダクション●脚本:金城哲夫●撮影:内海正治●音楽:宮内国郎●特技監督:小泉一●出演:佐原健二/西條ウルトラQ クモ男爵 000.jpgウルトラQ クモ男爵 001.jpg康彦/桜井浩子/若林映子/滝田裕介/鶴賀二郎/永井柳太郎/岩本弘司/石坂浩二(ナレーター)●放送:1966/02/17●放送局:TBS(評価:★★★)      

007 wa nido shinu (1967)
007 wa nido shinu (1967) .jpg「007は二度死ぬ」●原題:YOU ONLY LIVE TWICE●制作年:1967年●監督:ルイス・ギルバート●製007は二度死ぬ 若林映子.jpg作:ハリー・サルツマン/アルバート・R・ブロッコリ●脚本:ロアルド・ダール●撮影:フレディ・ヤング●音「007は二度死ぬ」●2.jpg「007は二度死ぬ」●.jpg楽:ジョン・バリー●主題Kissy-Suzuki2-600x400.jpg歌:You Only Live Twice(唄:ナンシー・シナトラ)●原作:イアン・フレミング●時間:117分●出演:ショーン・コネリー丹波哲郎若林映子浜美枝/ドナルド・プレザンス/島田テル/カリン・ドール/チャールズ・グレイ/ツァイ・チン/ロイス・マクスウェル/デスモンド・リュウェリン/バーナード・リー●公開:1967/06●配給:ユナイテッド・アーティスツ (評価:★★★☆)
「007は二度死ぬ」 松崎真(ノンクレジット)/松岡きっこ(ノンクレジット)
007は2度死ぬ 松崎真.jpg007は2度死ぬ matuoka.jpg


松岡きっこ .jpg                                    
「007は二度死ぬ」 若林映子/ショーン・コネリー/カリン・ドール/ドナルド・プレザンス/浜 美枝
o0420021311847920120.jpgYOU ONLY LIVE TWICE last.jpg                                                                                                                                                                               
                                                                                                                       
ホテルニューオータニ東京のエントランス
ホテルニューオータニ.jpgホテルニューオータニ東京 のエントランス - コピー.jpg
                                                                
若林映子 浜美枝  キングコング対ゴジラ 2.jpg若林映子 浜美枝  キングコング対ゴジラ.jpg

「キングコング対ゴジラ」('62年/東宝) 若林映子/浜 美枝
(共演:高島忠夫) 
 
国際秘密警察 鍵の鍵1.jpg国際秘密警察 鍵の鍵0.jpg国際秘密警察鍵の鍵(浜美枝・若林映子).jpg


 



 

 
 
  

国際秘密警察鍵の鍵(浜美枝・若林映子)1.jpg「国際秘密警察鍵の鍵」('65年/東宝) 若林映子/浜 美枝
(共演:三橋達也)

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セリフの拾い方、連想ゲームのようにつないでいく手法の巧みさ&イラストも楽しめる優れもの。

お楽しみはこれからだ part3.jpg
  料理長殿、ご用心 p1.jpg 料理長シェフ殿、ご用心 02.jpg
料理長(シェフ)殿、ご用心 [DVD]」 Jacqueline Bisset
お楽しみはこれからだ〈part 3〉―映画の名セリフ (1980年)

  「PART2のあとがきに、PART3を作る予定はない、と書いたのだけれど、こうしてPART3が出来てしまった。「キネマ旬報」で連載を再開し、もう一冊分続けたというわけである。(中略)一つだけ新趣向を加えた。項目から次の項目への橋渡しを、シリトリのようにつないでゆく、というもので、いくらかこじつけもないではないが、どうやら最後の項目が最初に戻る形で輪のようにつながった。反省は、アメリカ映画に片寄り過ぎた点である。」 (あとがきより)

 和田誠(1936年生まれ)氏のシリーズ第3冊目で、あとがきに以上あるように、PART2で打ち止めの予定が「キネマ旬報」で連載を再開したために出来上がったもの(結局、その後も間歇的に連載し、シリーズは1995年単行本刊行の第7巻(PART7)までの累計ページ数は1,757ページに及ぶことになります。
 PART2で邦画も取り上げていましたが、PART3では洋画だけに戻しています。PART2で、洋画が多くなる理由として字幕で見たセリフの方が記憶に残っているからとありました。

 このシリーズ、あとがきは、読者からあった"誤り"の指摘に基づく訂正でほぼ費やされることが多いのですが、PART3のあとがきで、「七人の侍」で「勝ったのは百姓たちだ。俺たちではない」と書いたことに読者から「俺」ではなく「わし」と言ったはずだとの指摘があったという話に続いて、「ほとんど記憶だけで書いているので、一字一句正確にしなければならないとなると、ちょっとつらい。外国映画だとどっちみち翻訳になるから、意味さえ取り違えなければいいと思うが、日本映画はもともと日本語だから、意訳というわけにもいかず、つい敬遠することになる」とありました。ナルホドね。これも洋画が多くなる理由か。それにしても、連載しているのが「キネ旬」だから、読者も映画通が多かったりして、結構プレッシャーだろうなあ。実際には、どうしてあの映画のあのセリフをとりあげないのかといった手紙が多く、中には語気鋭いものもあったそうです。

 確かに今回はアメリカ映画に偏った分、マニアックになった感じもありますが、一方で「麗しのサブリナ」みたいな著者のお気に入りは、PART1に続いて再登場したりもしています。でも。こんな面白いセリフがあったのだなあという内容でした。

 年代的には、30年代終わりから始まって、40年代、50年代、60年代と割合均等で、70年代も、70年代終盤だけでも「さすらいの航海」('77年)、「アニー・ホール」('77年)、「ブリンクス」('78年)、「アルカトラズからの脱出」('79年)、「グッバイ・ガール」('77年)、「おかしな泥棒ディック&ジェーン」('77年)、「ジュリア」('77年)、「カリフォルニア・スイート」('78年)、「帰郷」('78年)、「遠すぎた橋」('77年)、「世界が燃えつきる日」('77年)、「リトル・モー」('77年)、「天国から来たチャンピオン」('78年)、「オー!ゴッド('77年)、「料理長(シェフ)殿、ご用心」('78年)、「リトル・ロマンス」('78年)、「ナイル殺人事件」('78年)、「チャイナ・シンドローム」('79年)、「愛と喝采の日々」('77年)、「マンハッタン」('79年)、「パワープレイ」('78年)など結構数多く取り上げています。このあたりは、連載時にほぼリアルタイムに近いかたちで公開されたものではないでしょうか(70年代は特に後半の方が多くなっている)。

Jacqueline Bisset Who Is Killing the Great Chefs.jpg1978 WHO IS KILLING THE GREAT CHEFS of EUROPE  PROMO MOVIE PHOT.jpg ジャクリーン・ビセットがジョージ・シーガルと共演した「料理長(シェフ)殿、ご用心」('78年)なんて、何てことはない映画だけれど(監督は4年後に「ランボー」('82年)を撮るテッド・コチェフ)懐かしいなあ。著者が書いているように、ちょっと洒落たスリラーで、ヨーロッパの一流シェフが次々と、それぞれの得意の料理法に因んだ方法で殺されていくというもの。ジャクリーン・ビセットの役は所謂パティシエですが、まあ当時の自分自身の理解としてはデザート専門のコックという感じ(著者も本書で「コック」と書いている。パティシエなんて言葉は当時日本では聞かなかった)。サスペンスですがユーモアがあって、ちょっとエロチックでもあるというもの(勿論ビセットが)。個人的には、本書が刊行される少し前くらいに名画座で観ましたが、「クリスチーヌの性愛記」('72年、ジャクリーン・ビセットが19才のストリッパー役で主演した作品)と「セント・アイブス」('76年、チャールズ・ブロンソン主演)の3本立て「ジャクリーン・ビセット特集」でした。 

音楽:ヘンリー・マンシーニ

ヒッチコック サイコ 予告編.jpg あと、個人的な収穫は、「サイコ」('60年)のところで、著者が予告編を観ていないことを非常に残念がっていて、ヒチコックがお喋りするだけのものでありながら、予告編史上に残る傑作と観た人は皆言ったそうですが、これ、今はネット動画で観ることが可能であったりもすると知ったこと(アップされてもすぐに消されたりもしているが)。

 1995年単行本刊行でこのシリーズが終わったというのは、DVDなどの普及などで便利になり過ぎて、セリフを追いやすくなったために、個人的な記憶の意義が相対的に軽くなったというのもあるのではないかなあ。誰もが検証可能だからといって、洋画のセリフまで一字一句正確を期さねばならなくなったら、そちらの方に時間をとられて、連載がしづらいというのもあるのでは?

 でも、セリフの拾い方にしても、こうした「新しい」映画や「古い」映画を織り交ぜて、しりとりか連想ゲームのようにつないでいく手法にしても、その技は著者ならではの巧みさがあり、しかも、イラストも楽しめるという、今読んでも優れものの映画エッセイであると思います。

料理長殿、ご用心 v1.jpg料理長殿、ご用心』.jpg「料理長(シェフ)殿、ご用心」●原題:SOMEONE IS KILLING THE GREAT CHEFS OF EUROPE●制作年:ヴァン・ライアンズ/料理長シェフ殿、ご用心 03.pngナン・ラ1978年●制作国:アメリカ●監督:テッド・コチェフ●脚本:ピーター・ストーン●撮影:ジョン・オルコット●音楽:ヘンリー・マンシーニ●原作:アイヴァン・ライアンズ/ナン・ライアンズ●時間:112分●出演:ジャクリーン・ビセット/ジョージ・シーガル/Jacqueline Bisset THE GRASSHOPPER.jpgロバート・モーリー/ジャン=ピエール・カッセル/フィリップ・ノワレ/ジャン・ロシュフォール/ルイージ・プロイェッティ/ステファノ・サッタ・フロレス●日本公開:1979/05●配給:日本ヘラルド映画●最初に観た場所:五反田TOEIシネマ(80-02-18)(評価:★★★)●併映「セント・アイブス」(J・リー・トンプソン)/「クリスチーヌの性愛記」(アロイス・ブルマー)
Jacqueline Bisset in "The Grasshopper"(クリスチーヌの性愛記)
五反田TOEIシネマ 2.jpg五反田TOEIシネマ79.jpg五反田TOEIシネマ.jpg五反田TOEIシネマ 3.jpg五反田TOEIシネマ/五反田東映 (写真:跡地=右岸) 1977(昭和52)年11月オープン、1990(平成2)年9月30日「五反田TOEIシネマ」閉館(1991年「五反田東映」閉館)

サイコ dvd.jpgPSYCHO2.jpg「サイコ」●原題:PSYCHO●制作年:1960年●制作国:アメリカ●監督・製作:アルフレッド・ヒッチコック●音楽:バーナード・ハーマン●原作:ロバート・ブロック「気ちがい(サイコ)」●時間:108分●出演:アンソニー・パーキンス/ジャネット・リー/ベラ・マイルズ/マーチン・バルサン/ジャン・ギャヴィン●日本公開:1960/09●配給:パラマウント●最初に観た場所:六本木・俳優座シネマテン(97-09-19) (評価★★★★)

「七年目の浮気」
お楽しみはこれからだ part3 七年目の浮気.jpg

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「ロボット」という言葉を生み出しただけでなく、SFの一定のモチーフを確立させた作品。

カレル・チャペック 『ロボット』岩波.jpgカレル・チャペック 『ロボット』2.jpg チャペック戯曲全集.jpg カレル・チャペック戯曲集.jpg 2001年宇宙の旅 特別版.jpg
ロボット (岩波文庫)』['89年('03年版)]/『R.U.R.ロボット (カレル・チャペック戯曲集 (1))』['92年](表紙絵:ヨゼフ・チャペック)/『チャペック戯曲全集』['06年]/『カル・チャペック戯曲集〈1〉ロボット/虫の生活より』['12年](装丁・挿絵:和田誠) 「2001年宇宙の旅 特別版【ワイド版】 [DVD]

カレル・チャペック 『ロボット』 2.jpg 舞台はヨーロッパ旧世界を遠く離れた海の孤島、そこに建てられたロボット=人造人間の製造・販売会社、R.U.R.(エル・ウー・エル、ロッスムのユニバーサル・ロボット)社のオフィス。執務するドミン社長を、「人権連盟」会長の娘、ヘレナが訪問する。ロボット製造の起源、ロボットの性質、そしてロボットによる人類社会変革の理想を語るドミンと、おのおのの担当部門の観点からそれを説明・擁護する役員達を相手に、ヘレナは労働者として酷使されているロボット達が人道的扱いを受けられるよう申し入れるが―。
1920年版表紙
rur 1920.jpgカレル・チャペック 『ロボット』 原著.jpg 『山椒魚戦争』(1936)などでも知られているカレル・チャペック(1890-1938)は、大戦間のチェコスロバキアで最も人気のあった作家で、1920年刊行の戯曲『ロボット (R.U.R.)』は「ロボット」という言葉を生んだことでも知られています(本邦初訳は1923年『人造人間』(宇賀伊津緒:訳))。作者によれば、「ロボット」という言葉そのものは、カレル・チャペックの兄で画家・漫画家のヨゼフ・チャペックの発案から生まれたものだそうで、チェコ語のrobota(もともとは古代教会スラブ語での「隷属」の意)に由来しているとのこと。ストーリーは労働用に作られたロボットが人間に対して反乱を起こすというものです。

カレル・チャペック 『ロボット』 3.jpgフランケンシュタイン dvd.jpg 人間が自ら作ったものに襲われるというのは、メアリー・シェリーの『フランケンシュタイン』(1818)以来ずっとあるテーマと言えるでしょう(映画「フランケンシュタイン」('31年/米)では怪物の呼び名はFrankenstein 博士による"creator"(創造物)となっている)。
 アイザック・アシモフ(1920-1992)がいわゆる「ロボット工学3原則」を提唱したのは、短編集『ロボットの時代』(1964)で自ら語っているところによれば、『フランケンシュタイン』や『R.U.R.』から延々と繰り返されてきた「ロボットが創造主を破滅させる」というプロットと一線を画すためであったようですが、アシモフの作品にも、創造主である人間に抵抗し滅ぼそうとするロボットが登場します。
 このチャペックの『ロボット』では、人間は最後アルクピストという建築士だけが生き残り、ロボット同士の結婚を認めるという(生殖機能を有している?)、ロボットにとってのハッピーエンドとなっています。
アルクピスト建築士 in 『ロボット (R.U.R.)』

人間ども集まれ!.jpg あの「鉄腕アトム」の生みの親である手塚治虫も、『人間ども集まれ!』(1967)で、奴隷や兵士として消耗されていたロボットが一斉に立ち上がって人間に抵抗する話を描いていますが、丁度その頃読んだチャペックの『山椒魚戦争』に触発されたのではなかったかと後に述懐しています。
人間ども集まれ!
 『山椒魚戦争』に出てくるサンショウウオと人間の中間みたいな奇妙な生物たちも、労働力として人間に使役されるうちに反乱を起こすわけですが、この『R.U.R.』のロボットは、脳・内臓・骨といった各器官は攪拌槽で原料を混合して造られる人工の原形質の培養で、神経や血管は紡績機で作られ、それらを部品として組み上げたもので、プログラムで動く点は機械であると言えますが、外観は人間と同じになっています。これは、本作が戯曲であることも関係しているかと思います。

『ブレードランナー』3.jpg もともと感情を持たず、20年くらいで消耗し破壊されるが、「死」を怖れるといったこともない―そうしたものだったはずのロボットが、開発者グループの博士の一人が密かに高次元のプログラムを組み入れたために自ら思考するようになり人間に近くなってしまったという設定で、こ『ブレードランナー』4.jpgれは所謂「自律型ロボット」と呼ばれるものであり、彼らの哀しみからは、個人的には、フィリップ・K・ディック(1928-1982)の『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』(1968)の映画化作品「ブレードランナー」('82/米)年の「レプリカント」を想起させられました(「レプリカント」はクローン技術の細胞複製(レプリケーション)からとった造語)。                       「ブレードランナー」('82/米)

 当時のチェコは労働者と富裕層との階級対立が深刻化していて、貴族階級の没落や社会主義革命への脅威といった世相がこの作品には反映されているとされていますが、政治的背景を除いて純粋にSFとしてみると、「ブレードランナー」とちょっとモチーフやテーマが重なるのではないでしょうか。「ブレードランナー」に限らず、この「人間 vs. 人間の創造物」というモチーフは様々な作品で2001年宇宙の旅1.jpg2001年宇宙の旅 haru.png青豆とうふ.jpg繰り返されているように思われ、イラストレーターで今年('14年)亡くなった安西水丸氏と同じくイラストレーターの和田誠氏のリレーエッセイ『青豆とうふ』('03年/講談社)を読んでると、和田誠氏がこの作品に触れて、「ロボット」と「コンピュータ」の区別が曖昧になっている気がするとし、拡げて解釈すれば、「ハル」と呼ばれるコンピュータが反乱を起こすスタンリー・キューブリックの「2001年宇宙の旅」('68年/米)などもこの範疇、系譜に入るような捉え方をしていました(和田氏は『カル・チャペック戯曲集』の装丁・挿絵を手掛けている。安西氏はプラハでチャペックのこの小説に出てくるロボットの置物を土産に買ったとか)。

2001 space odyssey2.jpg 「2001年宇宙の旅」は、雑誌「ぴあ」の読者が選ぶ「もう一度観たい映画No.1」の座を長年に渡って占めていた作品で、最初2001年宇宙の旅 2.jpg観た時は、哲学的な示唆が感じられる内容にやや驚き、他の人は皆が解ったのかなとも思ったりしましたが、脚本を書いたキューブリックとアーサー・C・クラークは「この映画は観客がどう解釈してもよい」と言い残2001年宇宙の旅 1968年.jpg2001年宇宙の旅 1978年リバイバル.jpgしています(キューブリックとアーサー・C・クラークがアイデアを出し合い、先ずアーサー・C・クラークが小説としてアイデアを纏め、その後キューブリックが脚本を執筆し、映画の公開の後に「小説」は発表されているが、その「小説」にはアーサー・C・クラーク独自の解釈がかなり取り入れられていることから、厳密に言えば、映画の原作であるともノベライゼーションであるとも言えないものとなっている。因みにコンピュータ「HAL9000」のHALは、IBMをアルファベット順で一文字ずつずらしたネーミング)。

1968年/1978年(リバイバル)各チラシ

2001年宇宙の旅 last.jpg 完璧な映像構成からキューブリック2001 space odyssey.jpgがカメラマン出身であることを強く感じさせる作品でしたが、ジョン・レノンも讃えたというラストのSFXは今日観るとそれほどでもないかも(もともと、このラスト及び映画自体は毀誉褒貶があり、小松左京、筒井康隆氏といった人たちはあまり買っていなかった記憶がある)。むしろ、ツァラトゥストラはかく語りき」や「美しく青きドナウ」などの曲が映像とマッチさせて上手く使われているのを感じました(宇宙飛行士が宇宙船外に放り出される場面は怖かった)。

 チャペックの『R.U.R.』は、単に「ロボット」という言葉を生み出したというだけでなく、それまであった一定のモチーフをSFとして確立させたという点でも、後に及ぼした影響力は大きいのではないでしょうか。「ブレードランナー」や「2001年宇宙の旅」に限らず、多くの映画や小説がこのモチーフを引き継いでいることを思うと、19世紀初頭の『フランケンシュタイン』と並んで、20世紀におけるエポック・メイキングな作品であると言えるかと思います。

珈琲屋チャペック2.jpg 因みに、北陸の金沢に行った時、金沢城の城跡付近にチャペック」というコヒー・ショップがありましたが、この作品の作者の名前からとったようです。ネットで確認すると、確かに兄ヨゼフ・チャペックの絵を使っている...。行った時には前を通っただけでしたが、店内にはチャペック関連の趣向も施されているようで、あの時店の中に入ればよかったと後でやや後悔しました。


ブレードランナー チラシ.jpgブレードランナー.jpg「ブレードランナー」●原題:BLADE RUNNER●制作年:1982年●制作国:アメリカ●監督:リドリー・スコット●製作:マイケル・ディーリー ●脚本:ハンプトン・フィンチャー/デイヴィッド・ピープルズ●撮影:ジョーダブレードランナー4.jpgン・クローネンウェス●音楽: ヴァンゲリス●時間:117分●出演:ハリソン・フォード/ルトガー・ハウアー/ショーン・ヤング/ダリル・ハンナ/ブライオン・ジェイムズ/エドワード・ジェイムズ・オルモス/M・エメット・ウォルシュ/ウィリアム・ サンダーソン/ジョセフ・ターケル/ジョアンナ・キャシディ/ジェームズ・ホン●日本公開:1982/07●配給:ワーナー・ブラザース●最初に観た場所:二子東急(83-06-05)●2回目:三軒茶屋東映(84-07-22)●3回目:三軒茶屋東映(84-12-22)(評価:★★★★☆)二子東急.jpg二子東急.gif●併映(2回目):「エイリアン」(リドリー・スコット)/「遊星からの物体x」(ジョン・カーペンター)●併映(3回目):「遊星からの物体x」(ジョン・カーペンター)
 


2001 nen: Uchuu no Tabi(1968)
2001 nen Uchuu no Tabi(1968).jpg「2001年宇宙の旅」●原題:2001:A SPACE ODYSSEY●制作年:1968年●制作国:アメリカ●監督・製作:スタンリー・キューブリック●脚本:スタンリー・キューブリック/アーサー・C・クラーク●撮影:ジェフリー・アンスワース/ジョン・オルコット●音楽:リヒャルト・シュトラウス《ツァラトゥストラはかく語りき》/ヨハン・シュトラウス2世《美しく青きドナウ》/他●時間:152分●出演:キア・デュリア/ゲイリー・ロックウッド/ウィリアム・シルベスター/ダニエル・リクター有楽座(旧)1.bmp/ダグラス・レイン(HAL 9000(声))●日本公開:1968/04●配給:MGM●最初に観た場所:日比谷・有楽座(78-12-10)(評価:★★★★)  右写真:有楽座[1984(昭和59)年9月]「ぼくの近代建築コレクション」より
旧有楽座内.jpg有楽座.jpg
旧・有楽座 1935(昭和10)年6月に演劇劇場として開館。1949(昭和24)年8月~ロードショー館(席数1,572)。1984年10月31日閉館。 

 
「RUR」hukamati.jpg【1924年単行本[金星堂(『ロボット』鈴木善太郎:訳)]/1968年単行本[平凡社『現代人の思想22 機械と人間との共生』収録(『ロボット製造会社R.U.R.』鎮目泰夫:訳)]/1977年文庫化『華麗なる幻想-海外SF傑作選』収録[講談社文庫(『R.U.R.』深町眞理子:訳)]/1989年再文庫化[岩波文庫(『ロボット (R.U.R.)』千野栄一:訳)]/1992年単行本[十月社(『R.U.R.ロボット』栗栖継:訳)]/2006年単行本[八月舎『チャペック戯曲全集』収録(『RUR』田才益夫:訳)]/2012年[単行本(『カル・チャペック戯曲集〈1〉ロボット/虫の生活より』栗栖継:訳)]】

RUR...ロッサム万能ロボット会社」電子版(深町眞理子:訳)

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ポーランド現代文学の中では珍しく「徹底的に非政治的で官能的な小説」という見方に共感。

尼僧ヨアンナ―他 (東欧の文学).jpg尼僧ヨアンナ (岩波文庫).jpg        尼僧ヨアンナ [DVD].jpg 尼僧ヨアンナ ps デザイナー大島弘義.jpg
尼僧ヨアンナ (岩波文庫)』 「尼僧ヨアンナ [DVD]」/「尼僧ヨアンナ」ポスター(デザイン:大島弘義)
尼僧ヨアンナ 格子03.jpg尼僧ヨアンナ―他 (東欧の文学)』福岡 星児:訳(1967/07 恒文社)

 中世末期、ポーランドの辺境の町ルーディンで、修道院の若き尼僧長ヨアンナに悪魔がつき、悪魔祓いに派遣された若き神父スーリンはあれこれ手を尽くすが万策尽きる―。

イヴァシュキェヴィッチ.jpg ウクライナ出身のポーランド人作家ヤロスワフ・イヴァシュキェヴィッチ(1894-1980)が、1943年、作者49歳の時に執筆した作品で(1946年に中短編集の中で発表された)、フランスの小都市ルーダンで実際に行われた悪魔裁判を素材とした作品ですが、それを、中世末期のポーランドの辺境の町「ルーディン」に舞台を置き換えています。その他は、驚愕の結末を除いてはほぼ史実に忠実だそうです。
ルーダンの悪魔.jpgJarosław Iwaszkiewicz(1894-1980)

 実際に起きた事件は、1632年からフランスの小都市ルーダンで、ウルスラ会の修道女たちが悪魔憑きの症状を示し、神を冒涜する言葉、痙攣と硬直、淫らでショッキングな振舞い等が人々に衝撃を与えたため、悪魔祓いと原因究明の審査が行われ、ルーダンの教会の司祭であり、教養と魅力的な物腰で街の女を次々にものにし(その結果、多くの敵も作っていた)ウルバン・グランディエが、悪魔と契約を結んだとの罪状で生きながら火刑に処されれたいうもので、この事件を素材とした小説には、この作品のほかにイヴァシュキェヴィッチと同年生まれの英国の作家オルダス・ハックスリー(1894-1963)の『ルーダンの悪魔』(The Devils of Loudun 、1952)などがあります。               『ルーダンの悪魔

尼僧ヨアンナ パティオ.jpg この作品の原題は『尼僧長"天使たちの"ヨアンナ』(Matka Joanna od Aniołów)ですが、1961年にポーランドの映画監督イェジー・カヴァレロヴィッチ(1922-2007)によって「尼僧ヨアンナ」(英文タイトル:Mother Joanna of the Angels)として映画化されてから世界的に有名になったことから、岩波文庫版('96年)関口時正氏の訳でもこれをタイトルにしています。
 本邦初訳は『「東欧文学全集」第8巻‐イヴァシュキェヴィッチ集』(恒文社)の福岡星児訳('67年)でこれも映画化の後の刊行であり、映画が本邦公開された時点('62年)では原作の邦訳は無かったことになります。

イェジー・カヴァレロヴィチ.jpg 個人的にもイェジー・カヴァレロヴィッチの映画の方を先に観て(1962年に発足した日本アート・シアター・ギルド(ATG)の配給第1作でもある)、やや内容を忘れかけた頃に原作を読みましたが、そのことにより改めて映画のシーンが甦ってきました。映画を観た際は、ストーリー面で、ラストでスリン神父(ミエチスワフ・ウォイト)がヨアンナ(ルチーナ・ヴィニエツカ)を悪魔から守ることと引き換えに自らが悪魔を引きうけ殺戮を行うというのは、やや映画的な作り方をしているのではないかとも思いましたが、読んでみたら原作もその通りでした。
Jerzy Kawalerowicz(1922-2007)

ツイン・ピークス1.jpgツイン・ピークス3.jpg まるで、デイヴィッド・リンチが監督して90年代初頭に人気を博したTVドラマ「ツイン・ピークス」の、主人公のFBI捜査官が少女を守るために悪魔に魂を売り渡してしまうラストみたいです。デイヴィッド・リンチによると、あのラストはあくまでも第2シーズンの最終話に過ぎないとのことですが、その続きは作られていません。

尼僧ヨアンナ 08.jpg 個人的には「原作が映画と同じ展開だった」のがやや意外であり、岩波文庫版の翻訳者・関口時正氏の解説でも、スーリンに重罪を犯させる結末ではなく、"小説的筋書きとしての効果の成否"についてはともかく、自殺させることでも足りたのではないか(自殺も罪ではあるが)と書いているのは、文学作品を読んだつ尼僧ヨアンナ 05.jpgもりが結構"ホラー"だったかもしれないという自分の読後感をある部分、代弁してくれているのでしょうか(ヨアンナが突然表情を変え、悪魔の語り口で話し始めるのはまるで映画「エクソシスト」みたい)。

 但し、"ホラー"と言っても作者の筆致は冷静であり、むしろ、憑依現象を冷静に解析した情動力学的な"心理劇"ともとれるように思います。読んでいて、修道院で起きていることは、戒律による性的抑圧に起因する集団ヒステリーに類するものであることの察しがつくようになっています。また、ヨアンナの体の中に複数の悪魔がいて、それらが交互に姿を現すというのは、ダニエル・キイスの『24人のビリー・ミリガン』を想起させます(「複数の悪魔」は複数人格を呈す解離性障害として説明可能ではないか)。

尼僧ヨアンナ 07.jpg 因みに、小説は前任者の司祭が火刑に処せられ、若き神父スーリンが悪魔祓いのため派遣されるところから始まりますが、ヨアンナにはジャンヌという実在のモデルがいる一方、このスーリンにもスュランという実在のモデルがいて、1634年、34歳の時に悪魔祓いのため修道院に派遣されて、ジャンヌの悪魔をわが身に引き受けた結果としてボロボロになり、殺人を犯したり自殺したりするまでには至らなかったけれど(自殺未遂はあった)、20年近く闘病・治療生活を送って、60歳を過ぎてやっとジャンヌと過ごした濃密な時間を書き記したものを完成させたようです(内容は、宗教的な矩を超えない範囲で、神秘主義的色合いの濃いものらしい)。
ルチーナ・ヴィニエツカ (カヴァレロヴィッチ監督夫人)

尼僧ヨアンナ パティオ02.jpg 1961年に作られた映画「尼僧ヨアンナ」は、スターリン主義の抑圧を受けていた当時のポーランド情勢を、戒律下に置かれた修道尼らの性的抑圧として表したと解されることが多いようですが、イエジー・カヴァレロヴィッチ監督には、社会派サスペンス映画「影」('56年)など、ポーランドの政治情勢を反映させながらも娯楽性を含んだ作品も撮っており(この作品と「夜行列車」('59年)、「尼僧ヨアンナ」の3本が最高傑作とされている)、また、「尼僧ヨアンナ」において修道尼たちが一斉に地面に倒れ込むのを俯瞰で撮るなど、カメラワークにも非常に洗練されたものがあって、芸術的完成度は高いように思います(その分、"政治"が後退する? 少なくとも個人的にはあまりプロパガンダ性を感じなかった)。

尼僧ヨアンナ 04.jpg また、イヴァシュキェヴィッチの原作の方も、1943年という、ポーランドのユダヤ人や知識層が厳しい弾圧を受けていた時期に書かれたものですが(イヴァシュキェヴィッチは既にポーランドを代表する文人であったとともにレジスタンス運動を指揮していた)、岩波文庫版解説で関口時正氏は、「尼僧ヨアンナ」にしてもその他の作品にしても、彼の作品はポーランド現代文学の中では珍しく「徹底的に非政治的で、官能的な小説」であるとしています。

尼僧ヨアンナ_2.jpg この関口時正氏の本作に対する見方には痛く共感しました。イヴァシュキェヴィッチという人は政治と文学を分けて考えていたのではないか。そうして考えると、映画「尼僧ヨアンナ」も、いろいろと背景はあるのかもしれませんが、先ずは、観たままの通り感じればよい作品なのかもしれません。 
 
尼僧ヨアンナ0.jpg「尼僧ヨアンナ」●原題:MATKA JOANNA OD ANIOLOW(MOTHER JOAN OF THE ANGELS)●制作年:1960年●制作国:アメリカ●監督:イェジー・カヴァレロヴィッチ●脚本:タデウシュ・コンビッキ/イェジー・カヴァレロヴィッチ●撮影:イェジー・ウォイチック●音楽:アダム・ワラチニュスキー●原作:ヤロスワフ・イヴァシュキェヴィッチ●時間:110分●出演:ルチーナ・ウィンニッカ/ミエチスワフ・ウォイト/ミエチスワフ・ウォイト/アンナ・チェピェレフスカ/マリア・フヴァリブク/スタニスラフ・ヤシュキェヴィッチ●日本公開:1962/04●配給:東和/ATG(共同配給)●最初に観た場所:カトル・ド・シネマ上映会(79-04-18)●2回目:北千住・シネマブルースタジオ(10-07-03)(評価:★★★★)●併映:「パサジェルカ」(アンジェイ・ムンク)

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戦争の悲劇を描いたマルグリット・デュラス原作(脚本)の映画化作。DVD化されていない名作。

かくも長き不在 ポスター.jpgかくも長き不在 vhs.jpg かくも長き不在 01.jpg かくも長き不在 ちくま.jpg
輸入版ポスター/「かくも長き不在」VHS/『かくも長き不在 (ちくま文庫)

UNE AUSSI LONGUE ABSENCE.jpg パリ郊外でカフェを営むテレーズ(アリダ・ヴァリ)はある日、店の前を通る浮浪者に目を止める。その男(ジョルジュ・ウィルソン)は16年前に行方不明になった彼女の夫アルベールにそっくりであった。テレーズはその男とコンタクトをとるが、その男は記憶喪失だった―。
 アンリ・コルピ(1921-2006/享年84)監督の1961年公開の作品で、この人は映画監督の他に雑誌編集者、脚本家、音楽家、編集技師として幅広く活動した人ですが、逆に単独監督した作品として有名なのはこの一作くらいではないでしょうか。但し、この作品でカンヌ国際映画祭パルム・ドールを受賞しています。

 この作品もある種"企画"的側面があり、原作者のマルグリット・デュラス(1914-1996/享年81)は1960年にこの物語を、同じくデュラスマルグリット・デュラス.jpgの小説『モデラートカンタービレ』(原題:Moderato Cantabile, 1958年)を原作としジャンヌ・モロー、ジャン=ポール・ベルモンドが主演した「雨のしのび逢い」('60年/仏・伊)の脚本家ジェラール・ジャルロと共同でいきなり脚本から書き起こしていて、それは「ちくま文庫」に所収されています。
Marguerite Duras(1914 - 1996)
かくも長き不在 02.jpg
 戦争の悲劇を描いた感動作ですが、マルグリット・デュラスの作品の中でも分かり易く、また、件(くだん)の浮浪者は果たしてテレーズの夫であるのかどうかという関心から引き込まれます。そして、事実は結末で意外な形で示唆されますが(テレーズの呼んだ夫の名を街の人が次々と伝えていき、それに反応する形で浮浪者が降参するかのように両手を上げるのが悲しい)、その前のテレーズと浮浪者のダンスシーンなども、ぎこちなく二人が抱き合うところなどは逆にリアルで感動させられ、定番的な作り物にしてしまわない脚本と演出の上手さが感じられました。

UNE AUSSI LONGUE ABSENCE aridabari.jpg アリダ・ヴァリはキャロル・リード監督の「第三の男」('49年/英)が有名ですが、この作品を観ると、ミケランジェロ・アントニオーニ監督の「さすらい」('57年/伊)で夫と別れて暮らすことになった妻を演じていたのを思い出します。「さすらい」において、夫は疲弊して妻の元に戻りますが、アリダ・ヴァリ演じる妻は既に新たな生活を築いており、夫は妻の目の前で自死を遂げます。

UNE AUSSI LONGUE ABSENCE 1.jpg この「かくも長き不在」においても、アリダ・ヴァリ演じるテレーズには日常においては暗さは無く、16年前にゲシュタポに捕えられたまま消息を絶った夫の帰りを待ちながらも店を営んで逞しく生活しており、若い恋人までいるような様子であって、そこへ抜け殻のようになって現れた"夫かもしれない男"との対比が、逆に男の心的外傷によるトラウマの闇の深さを際立たせています。テレーズが男とぎこちないダンスをした際に、男の頭部の傷に気づく場面はぞっとさせられますが、一方で、そのことにより"夫かもしれない男"に憐れみと慈しみを覚えるテレーズの表情は、まさにアリダ・ヴァリにしか出来ないような演技であり、この作品の白眉と言えます。

 因みに、この映画を観て、いくら心的外傷を負ったとは言え、自分の夫と他人の区別がつかないものだろうかという慰問を抱く人がいますが、心的外傷だけでなく記憶中枢である海馬を損傷するなど脳に器質的障害を負った場合、その人の顔つきまでも全く変わってしまうことが見受けられるようで、個人的にもそうしたケースに接したことがあります。

「二十四時間の情事」1.jpg マルグリット・デュラスは多くの作品を残しながら自身も監督業を手掛けていますが、どちらかと言うと原作や脚本を書いたものを別の映画監督が映画化したものの方が知られており、有名なものでは原作・脚本を書き、アラン・レネが監督した「二十四時間の情事」('59年/仏・日)がありますが、こちらもモチーフとしてナチの収容所体験を持つ女性が出てきます。ヌーヴェル・ヴァーグの色合いを感じる作品で、観念的な原作の文脈でそのまま映像化するとこんな感じかなという作品ですが、これもオリジナルよりは分かり易くなっています。同じアラン・レネ監督の、後にノーベル文学賞を受賞する作家アラン・ロブ=グリエ(1922-2008/享年85)原作の「去年マリエンバートで」('61年/仏)ほどには前衛的ではなく、デュラスの小説の映画化作品は、小説より分かり易くなる傾向にあるように思います(それでもまだ難解な面もあるが、「去年マリエンバートで」のように観ていて眠くなる(?)ことはない)。デュラスの小説『ジブラルタルから来た水夫』を原作とするトニー・リチャードソン監督の「ジブラルタルの追想」('67年/英)なども、えーっ、原作ってこんなラブロマンスなの、というようなハーレクイン風の仕上がりで、ここまで噛み砕いてしまうとどうかなというのはありますが、さすがにこの作品は自身で脚本までは書いていないようです。

UNE AUSSI LONGUE ABSENCE 7.jpg 「かくも長き不在」のちくま文庫版の原作脚本を読むと、自身で監督したものに有名な作品は無いけれど、(脚本家の協力・示唆はあったにせよ)小説的効果と映画的効果の違いはわかっていた人ではないかという気がします。特に、この映画のラストの男を呼ぶ声が伝言のように街中を伝わっていく場面は、映画的シチュエーションの極致と言ってよいかと思います。

 しかし、この「かくも長き不在」、以前はビデオとLD(レーザーディスク)で発売されていたけれど、2014年現在DVD化はされていないようです。どうして?

かくも長き不在 シアターアプル.jpgUNE AUSSI LONGUE ABSENCE 3.jpg「かくも長き不在」●原題:UNE AUSSI LONGUE ABSENCE●制作年:1960年●制作国:フランス●監督:アンリ・コルピ●脚本:マルグリット・デュラス/ジェラール・ジャルロ●撮影:マルセル・ウェイス●音楽:ジョルジュ・ドルリュー●時間:98分●出演:アリダ・ヴァリ/ジョルジュ・ウィルソン/シャルル・ブラヴェット/ジャック・アルダン/アナ・レペグリエ●日本公開:1964/08●配給:東和●最初に観た場所:新宿シアターアプル(85-04-21)(評価:★★★★)[右]ポスター(イラスト:和田 誠

二十四時間の情事 02.jpg「二十四時間の情事」●原題:HIROSHIMA 二十四時間の情事_.jpgMON AMOUR●制作年:1959年●制作国:フランス・日本●監督:アラン・レネ●脚本:マルグリット・デュラス●撮影:サッシャ・ヴィエルニ/高橋通夫●音楽:ジョヴァンニ・フスコ(イタリア語版)/ジョルジュ・ドルリュー●時間:90分●出演:エマニュエル・リヴァ/岡田英次/ステラ・ダサス/ピエール・バルボー/ベルナール・フレッソン●日本公開:1959/06●配給:大映●最初に観た場所:京橋・フィルムセンター(80-07-15)(評価:★★★★)
二十四時間の情事 [DVD]

THE SAILOR FROM GIBRALTAR PERFORMER.jpg「ジブラルタルの追想」●原題:THE SAILOR FROM GIBRALTAR PERFORMER●制作年:1967年●制作国:イギリス●監督:トニー・リチャードソン●製作:オスカー・リュウェンスティン●脚本:クリストファー・イシャーウッド/ドン・マグナー/ジブラルタルの水夫.jpgトニー・リチャードソン●撮影:ラウール・クタール●音楽:アントワーヌ・デュアメル●原作:マルグリット・デュラス「ジブラルタルから来た水夫(ジブラルタルの水夫)」●時間:90分●出演:ジャンヌ・モロー/イアン・バネン/オーソン・ウェルズ/ヴァネッサ・レッドグレーヴ●日本公開:1967/11●配給:ユナイテッド・アーチスツ●最初に観た場所:大塚名画座(78-12-12)(評価:★★☆)●併映:「悪魔のような恋人」(トニー・リチャードソン)(原作:ウラジミール・ナボコフ)
ジブラルタルの水夫

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ニューヨークという大都会を舞台にしたダスティン・ホフマン主演'69年作品2作。

ジョンとメリー [VHS].jpgジョンとメリー [DVD].jpg 真夜中のカーボーイ dvd.jpg 卒業 [DVD] L.jpg
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ジョンとメリー 1.jpg マンハッタンに住む建築技師ジョン(ダスティン・ホフマン)のマンションで目覚めたメリー(ミア・ファロー)は、自分がどこにいるのか暫くの間分からなかった。昨晩、独身男女が集まるバーで2人は出会い、互いの名前も聞かないまま一夜を共にしたのだった。メリーは、整頓されたジョンの家を見て女の影を感じる。ジョンはかつてファッションモデルと同棲していた過去があり、メリーはある有力政治家と愛人関係にあった。朝食を食べ、昼食まで共にした2人は、とりとめのない会話をしながらも、次第に惹かれ合っていくが、ちょっとした出来事のためメリーは帰ってしまう―。

 ピーター・イエーツ(1929-2011/享年81)監督の「ジョンとメリー」('69年)は、行きずりの一夜を共にした男女の翌朝からの1日を描いたもので、男女の出会いを描いた何とはない話であり、しかも基本的に密室劇なのですが、2人のそれぞれの回想と現在の気持ちを表す独白を挟みながらストーリーが巧みに展開していき、2人の関係はどうなるのだろうかと引き込まれて観てしまう作品でした。

ジョンとメリー 4.jpg 脚本は「シャレード」('63年)の原作者ジョン・モーティマーですが、構成の巧みさもさることながら、演じているダスティン・ホフマンとミア・ファローがそもそも演技達者、とりわけダスティン・ホフマン演じるジョンの、そのままメリーに居ついて欲しいような欲しくないようなその辺りの微妙に揺れる心情が可笑しく(ジョンの方に感情移入して観たというのもあるが)ホントにこの人上手いなあと思いました(でも、ミア・ファローも良かった)。

ジョンとメリー 2.jpg 最後に互いの気持ちを理解し合えた2人が、そこで初めて「ぼくはジョンだ」「私はメリーよ」という名乗り合う終わり方もお洒落(その時大方の観客は初めて、そっか、2人はまだ名前も教え合っていなかったのかと気づいたのでは)。観た当時は、これが日本映画だったら、もっとウェットな感じになってしまうのだろうなあと思って、ニューヨークでの一人暮らしに憧れたりもしましたが、逆に、ニューヨークのような大都会で恋人も無く一人で暮らすということになると、(日本以上に)とことん"孤独"に陥るのかも知れないなあとも思ったりして。

真夜中のカーボーイ1.jpg そうした大都会での孤独をより端的に描いた作品が、ダスティン・ホフマンがこの作品の前に出演した同年公開のジョン・シュレシンジャー(1926-2003/享年77)監督の「真夜中のカーボーイ」('69年)であり、ジョン・ヴォイトが、"いい男ぶり"で名を挙げようとテキサスからニューヨークに出てきて娼婦に金を巻き上げられてしまう青年ジョーを演じ、一方のダスティン・ホフマンは、スラム街に住む怪しいホームレスのリコ(一旦は、こちらもジョーから金を巻き上げる)役という、その前のダスティン・ホフマンの卒業 ダスティン・ホフマン .jpg主演作であり、彼自身の主演第1作だったマイク・ニコルズ監督の「卒業」('67年)の優等生役とはうって変った役柄を演じました(「卒業」で主人公が通うコロンビア大学もニューヨーク・マンハッタンにある)。

卒業 ダスティン・ホフマン/キャサリン・ロス.jpg 映画デビューした年に「卒業」でアカデミー主演男優賞ノミネートを受け(この作品、今観ると「サウンド・オブ・サイレンス」をはじめ「スカボロ・フェアー」「ミセス・ロビンソン」等々、サイモン&ガー卒業(1967).jpgファンクルのヒット曲のオン・パレードで、そちらの懐かしさの方が先に立つ)、主演第2作・第3作が「真夜中のカーボーイ」(これもアカデミー主演男優賞ノミネート)と「ジョンとメリー」であるというのもスゴイですが、ゴールデングローブ卒業 1967 2.jpg賞新人賞を受賞した「卒業」の、その演技スタイルとは全く異なる演技をその後次々にみせているところがまたスゴイです(「卒業」で英国アカデミー賞新人賞を受賞し、「真夜中のカーボーイ」と「ジョンとメリー」で同賞主演男優賞を受賞している)。

真夜中のカーボーイQ.jpg 3作品共にアメリカン・ニュー・シネマと呼ばれる作品ですが、その代表作として最も挙げられるのは「真夜中のカーボーイ」でしょう。ニューヨークを逃れ南国のフロリダへ旅立つ乗り合いバスの中でリコが息を引き取るという終わり方も、その系譜を強く打ち出しているように思われます。「真夜中のカーボーイ」も「ジョンとメ真夜中のカーボーイs.jpgリー」も傑作であり、ダスティン・ホフマンはこの主演第2作と第3作で演技派としての名声を確立してしまったわけですが、個人的には「ジョンとメリー」の方が、ラストの明るさもあってかしっくりきました。一方の「真夜中のカーボーイ」の方は、ジョーとリコの奇妙な友情関係にホモセクシュアルの臭いが感じられ、当時としてはやや引いた印象を個人的には抱きましたが、2人の関係を精神的なホモセクシュアルと見る見方は今や当たり前のものとなっており、その分だけ、今観ると逆に抵抗は感じられないかも。

ミスター・グッドバーを探して [VHS].jpg 「ジョンとメリー」に出てくる"Singles Bar"(独身者専門バー)を舞台としたものでは、リチャード・ブルックス(1912-1992/享年72)監督・脚本、ダイアン・キートン主演の「ミスター・グッドバーを探して」('77年)があり、こちらはジュディス・ロスナーが1975年に発表したベストセラー小説の映画化作品です。
ミスター・グッドバーを探して [VHS]

ミスター・グッドバーを探して1.jpg ダイアン・キートン演じる主人公の教師はセックスでしか自己の存在を確認できない女性で、原作は1973年にニューヨーク聾唖学校の28歳の女性教師がバーで知り合った男に殺害された「ロズアン・クイン殺人事件」という、日本における「東電OL殺人事件」(1997年)と同じように、当時のアメリカ国内で、殺人事件そのものよりも被害者の二面的なライフスタイルが話題となった事件を基にしており、当然のことながら結末は「ジョンとメリー」とは裏腹に暗いものでした。主人公の女教師は最後バーで拾った男(トム・ベレンジャー)に殺害されますが、その前に女教師に絡むチンピラ役を、当時全く無名のリチャード・ギアが演じています(殺害犯役のトム・ベレンジャーも当時未だマイナーだった)。

恋におちて 1984.jpg 何れもニューヨークを舞台にそこに生きる人間の孤独を描いたものですが、ニューヨークを舞台に男女の出会いを描いた作品がその後は暗いものばかりなっているかと言えばそうでもなく、ロバート・デ・ニーロとメリル・ストリープの演技派2人が共演した「恋におちて」('84年)や、メグ・ライアンとトム・ハンクスによるマンハッタンのアッパーウエストを舞台にしたラブコメディ「ユー・ガット・メール」('98年)など、明るいラブストーリーの系譜は生きています(「ユー・ガット・メール」は1940年に製作されたエルンスト・ルビッチ監督の「街角/桃色(ピンク)の店」のリメイク)。
「恋におちて」('84年)

ユー・ガット・メール 01.jpg 「恋におちて」はグランド・セントラル駅の書店での出会いと通勤電車での再会、「ユー・ガット・メール」はインターネット上での出会いと、両作の間にも時の流れを感じますが、前者はクリスマス・プレゼントとして買った本を2人が取り違えてしまうという偶然に端を発し、後者は、メグ・ライアン演じる主人公は絵本書店主、トム・ハンクス演じる男は安売り書店チェーンの御曹司と、実は2人は商売敵だったという偶然のオマケ付き。そのことに起因するバッドエンドの原作を、ハッピーエンドに改変しています。
「ユー・ガット・メール」('98年)

めぐり逢えたら 映画 1.jpg トム・ハンクスとメグ・ライアンは「めぐり逢えたら」('93年)の時と同じ顔合わせで、こちらもレオ・マッケリー監督、ケーリー・グラント、デボラ・カー主演の「めぐり逢い」('57年)にヒントを得ている作品ですが(「めぐり逢い」そのものが同じくレオ・マッケリー監督、アイリーン・ダン、シャルル・ボワイエ主演の「邂逅」('39年)のリメイク作品)、エンパイア・ステート・ビルの展望台で再開を約するのは「めぐり逢い」と同じ。但し、「めぐり逢い」ではケーリー・グラント演じるテリーの事故のため2人の再会は果たせませんでしたが、「めぐり逢えたら」の2人は無事に再開出来るという、こちらもオリジナルをハッピーエンドに改変しています。
「めぐり逢えたら」('93年)

 最近のものになればなるほど、男女双方または何れかに家族や恋人がいたりして話がややこしくなったりもしていますが、それでもハッピーエンド系の方が主流かな。興業的に安定性が高いというのもあるのでしょう。「恋におちて」は、古典的ストーリーをデ・ニーロ、ストリープの演技力で引っぱっている感じですが、2人とも出演時点ですでに大物俳優であるだけに、逆にストーリーの凡庸さが目立ち、やや退屈?(もっと若い時に演じて欲しかった)。但し、「恋におちて」「めぐり逢えたら」「ユー・ガット・メール」の何れも役者の演技はしっかりしていて、ストーリーに多分に偶然の要素がありながらも、ディテールの演出や表現においてのリアリティはありました。しかしながら、物語の構成としては"定番の踏襲"と言うか、「ジョンとメリー」を観て感じた時のような新鮮味は感じられませんでした。

 こうして見ると、ニューヨークという街は、「真夜中のカーボーイ」や「ミスター・グッドバーを探して」に出てくる人間の孤独を浮き彫りにするような暗部は内包してはいるものの、映画における男女の出会いや再会の舞台として昔も今もサマになる街でもあるとも言えるのかもしれません(ダスティン・ホフマンは同じ年に全く異なるキャラクターで、ニューヨークを舞台に孤独な男性の「明・暗」両面を演じてみせたわけだ。これぞ名優の証!)。

ジョンとメリー [VHS]
JOHN AND MARY 1969.jpgジョンとメリーdvd3.jpg「ジョンとメリー」●原題:JOHN AND MARY●制作年:1969年●制作国:アメリカ●監督:ピーター・イェーツ●製作:ベン・カディッシュ●脚本:ジョン・モーティマー●撮影:ゲイン・レシャー●音楽:クインシー・ジョーンズ●原作:マーヴィン・ジョーンズ「ジョンとメリー」●時間:92分●出演:ダスティン・ホフマン/ミア・ファロー/マイケル・トーラン/サニー・グリフィン/スタンリー・ベック/三鷹オスカー.jpgタイン・デイリー/アリックス・エリアス●日本ジョンとメリーe.jpg公開:1969/12●配給:20世紀フォックス●最初に観た場所:三鷹東映(78-01-17)(評価:★★★★☆)●併映:「ひとりぼっちの青春」(シドニー・ポラック)/「草原の輝き」(エリア・カザン)三鷹東映 1977年9月3日、それまであった東映系封切館「三鷹東映」が3本立名画座として再スタート。1978年5月に「三鷹オスカー」に改称。1990(平成2)年12月30日閉館。

Dustin Hoffman and Mia Farrow/Photo from John and Mary (1969)

「真夜中のカーボーイ」●原題:MIDNIGHT COWBOY●制作年:1969年●制作国:アメリカ●監督:ジョン・シュレシンジャー●製作:ジェローム・ヘルマン●脚本:ウォルド・ソルト●撮影:アダム・ホレンダー●音楽:ジョン・バリー●原作:ジェームズ・レオ・ハーリヒー「真夜中のカーボーイ」●時間:113真夜中のカーボーイ2.jpg真夜中のカーボーイ 映画dvd.jpg分●出演:ジョン・ヴォイト/ダスティン・ホフマン/シルヴィア・マイルズ/ジョン・マクギヴァー/ブレンダ・ヴァッカロ/バーナード・ヒューズ/ルース・ホワイト/ジェニファー・ソルト/ボブ・バラバン●日本公開:1969/10●配給:ユナイテッド・アーティスツ●最初に観た場所:早稲田松竹(78-05-20)(評価:★★★★)●併映:「俺たちに明日はない」(アーサー・ペン)
真夜中のカーボーイ [DVD]

「卒業」●原題:THE GRADUATE●制作年:1967年●制作国:アメリカ●監督:マイク・ニコルズ●製作:ローレンス・ター卒業 1967 pster.jpgマン●脚本:バック・ヘンリー/カルダー・ウィリンガム●撮影:ロバート・サーティース●音楽:ポール・サイモン卒業 1967 1.jpg/デイヴ・グルーシン●原作:チャールズ・ウェッブ●時間:92分●出演:ダスティン・ホフマン/アン・バンクロフト/キャサリン・ロス/マーレイ・ハミルトン/ウィリアム・ダリチャr-ド・ドレイファス 卒業.jpgニエルズ/エリザベス・ウィルソン/バック・ヘンリー/エドラ・ゲイル/リチャード・ドレイファス●日本公開:1968/06●配給:ユナイテッド・アーティスツ●最初に観た場所:池袋・テアトルダイヤ(83-02-05)(評価:★★★★)●併映:「帰郷」(ハル・アシュビー)
卒業 [DVD]

映画パンフレット 「ミスターグッドバーを探して」.jpg「ミスター・グッドバーを探して」●原題:LOOKING FOR MR. GOODBAR●制作年:1977年●制作国:アメリカ●監督・脚本:リチャード・ブルックス●製作:フレディ・フィールズ●撮影:ウィリアム・A・フレイカー●音楽:アーティ・ケイン●原作:ジュディス・ロスナー「ミスター・グッドバーを探して」●時間:135分●出演:ダイアン・キートン/アラン・フェインスタイン/リチャード・カイリー/チューズデイ・ウェルド/トム・ベレンジャー/ウィリアム・アザートン/リチャード・ギア●日本公開:1978/03●配給:パラマウント=CIC●最初に観た場所:飯田橋・佳作座(79-02-04)(評価:★★☆)●併映:「流されて...」(リナ・ウェルトミューラー)
映画パンフレット 「ミスターグッドバーを探して」監督リチャード・ブルックス 出演ダイアン・キートン

FALLING IN LOVE 1984.jpg恋におちて 1984 dvd.jpg「恋におちて」●原題:FALLING IN LOVE●制作年:1984年●制作国:アメリカ●監督:ウール・グロスバード●製作:マーヴィン・ワース●脚本:マイケル・クリストファー●撮影:ピーター・サシツキー●音楽:デイヴ・グルーシン●時間:106分●出演:ロバート・デ・ニーロ/メリル・ストリープ/ハーヴェイ・カイテル/ジェーン・カツマレク/ジョージ・マーティン/デイヴィッド・クレノン/ダイアン・ウィースト/ヴィクター・アルゴ●日本公開:1985/03●配給:ユニヴァーサル映画配給●最初に観た場所:テアトル池袋(86-10-12)(評価:★★★)●併映:「愛と哀しみの果て」(シドニー・ポラック)
恋におちて [DVD]

YOU'VE GOT MAIL.jpgユー・ガット・メール dvd.jpg「ユー・ガット・メール」●原題:YOU'VE GOT MAIL●制作年:1998年●制作国:アメリカ●監督:ノーラ・エフロン●製作:ノーラ・エフロン/ローレン・シュラー・ドナー●脚本:ノーラ・エフロン/デリア・エフロン●撮影:ジョン・リンドリー●音楽:ジョージ・フェントン●原作:ミクロス・ラズロ●時間:119分●出演:トム・ハンクス/メグ・ライアン/グレッグ・キニア/パーカー・ポージー/ジーン・ステイプルトン/スティーヴ・ザーン/ヘザー・バーンズ/ダブニー・コールマン/ジョン・ランドルフ/ハリー・ハーシュ●日本公開:1999/02●配給:ワーナー・ブラザース映画配給(評価:★★★)ユー・ガット・メール [DVD]

SLEEPLESS IN SEATTLE.jpgめぐり逢えたら 映画 dvd.jpg「めぐり逢えたら」●原題:SLEEPLESS IN SEATTLE●制作年:1993年●制作国:アメリカ●監督:ノーラ・エフロン●製作:ゲイリー・フォスター●脚本:ノーラ・エフロン/デヴィッド・S・ウォード●撮影:スヴェン・ニクヴィスト●音楽:マーク・シャイマン●原案:ジェフ・アーチ●時間:105分●出演:トム・ハンクス/メグ・ライアン/ビル・プルマン/ロス・マリンジャー/ルクランシェ・デュラン/ルクランシェ・デュラン/ギャビー・ホフマン/ヴィクター・ガーバー/リタ・ウィルソン/ロブ・ライナー●日本公開:1993/12●配給:コロンビア映画(評価:★★☆)めぐり逢えたら コレクターズ・エディション [DVD]

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ノン・シリーズものを「面白く」と言うより「複雑に」改変した、「スリークラウンの謎」と呼ぶべき別物の話。

シタフォードの謎 dvd.jpg第8話シタフォードの謎 01.jpg 第8話シタフォードの謎 title.jpg
アガサ・クリスティーのミス・マープル DVD-BOX 2

第8話シタフォードの謎 00.jpg プロローグで、エジプトの秘宝発掘現場で2人の男が王の墓から財宝を見つける。その25年後、「シタフォード荘」に住むトレヴェリアン大佐(ティモシー・ダルトンは、現首相チャーチルの後継と目されている。彼が後見人となっているジム・ピアソン(ローレンス・フォックス)は、素Zoe Telford.jpg行不良のため遺産相続人から外す旨の手紙を大佐から受け取ったとして怒っているが、大佐は、自分がその手紙を書いたことを否定する。酔い潰れたジムを、その婚約者エミリー(ゾーイ・テルフォードは、パーティーで偶然知り合った新聞記者チャールズ・バーナビー(ジェームズ・マリー)とともに家に送り届けるが、翌日ジムは大佐に会うと言って、降りしきる雪の中、シタフォード荘に向かう。ミス・マープル(第8話シタフォードの謎 07.pngジェラルディン・マクイーワン)は甥で作家のレイモンドの別荘を訪ねてシタフォードに来たが、レイモンドは戻れず、彼女は、近くの「シタフォード荘」に泊めてもらうことになる。大佐の親友エンダービー(メル・スミスは、大佐の政務官であり「シタフォード荘」を管理している。大佐は、そのエンダービーにも行先を告げずに山荘を出るが、ミス・マープルは彼が、ホテル「スリークラウン館」に偽名で予約を入れるのを聞いていた。エンダービーは、山荘に送り届けられたゼリーを食べた飼い鷹が死んだのを見て、大佐の身を案じて吹雪の中「スリークラウン館」に向第8話シタフォードの謎 o6.jpgかうが、歩いて2時間はかかる。更にそれを案じたチャールズが後を追う。「スリークラウン館」は、カークウッド(ジェームズ・ウィルビー)が昨年ここを買い取ったもの第8話シタフォードの謎 04.jpgで、ミセス・ウィレット(パトリシア・ホッジ)と娘のヴァイオレット(キャリー・マリガン、ミス・パークハウス(リタ・トゥシンハム)ら何人かの客がいて、ウィレット夫人の提案で、ホテルの客たちを集めての心霊占いが始まるが、占いの結果「今夜トレヴェリアン大佐が死ぬ」という言葉が現れる。エンダービーが到着し、途中で彼に追いついたチャールズと共に大佐の部屋に行くと、彼は胸を刺されて死んでいた。大雪で警察が来られないため、エンダービーが捜査に当たる―。

シタフォードの秘密  ハヤカワ・ミステリ文庫.jpg第8話シタフォードの謎 06.jpg 2006年に本国イギリスで放映されたジェラルディン・マクイーワン主演のグラナダ版で、シーズン2の第4話(通算第8話)。日本ではNHK‐BS2で2008年6月26日に初放映。原作は、アガサ・クリスティ(1890‐1976)が1931年に発表し作品で(原題:The Sittaford Mystery (米 Murder at Hazelmoor))で、ポアロもミス・マープルも登場しないノン・シリーズものです。
エミリー(ゾーイ・テルフォード)/チャールズ・バーナビー(ジェームズ・マリー

 原作は、結構、登場人物が多くて人物相関が複雑な割には、犯行に直結するプロットも動機も単純で、個人的にはクリスティ作品としては物足りなかった印象があり、「面白い方向」に改変してくれるならばいいかなと思いましたが、「面白い方向」と言うより「複雑な方向」に改変しただけの映像化作品でした。

第8話シタフォードの謎 シタンフォード荘.jpg 降霊会の行われるのが原作の「シタフォード荘」でではなく、「スリークラウン館」に改変されていて、「シタフォード荘」の降霊会で「大佐が死ぬ」というお告げがあったちょうどその頃、「スリークラウン館」で大佐は殺害されたらしい、というのが原作のミソであるのに対し、「スリークラウン館」で行われた降霊会に大佐自身が加わっていて、その後で殺害されるので、その分、ミステリアスな雰囲気は削がれてしまっています。

 ジム・ピアソンが第一容疑者として拘束されるのは原作と同じ。原作では、「シタフォード荘」のコテージに住む隣人たちが次に疑わしい容疑者になるわけですが、ここでは「スリークラウン館」の客らがそれに該当します(彼らの人物像は、ウィレット夫人と娘のヴァイオレット以外は全面改変されている)。原作での真犯人バーナビー少佐に該当するエンダービーが、なんと、いきなり刑事役を買って出ます(原作での素人探偵役は、ジム・ピアソンの婚約者エミリーと新聞記者のチャールズ・"エンダービー")。

Zoe Telford2.jpg 原作では、事件を解決したエミリーが、頼りない男である婚約者ジムと、事件を通して距離の狭まった新聞記者チャールズのどちらを選ぶかが1つの見所で、最終的にはやはり婚約者の方を選んで、出来る女性というのは意外と頼りない男の方を選んだりするものだなあと思わせる面がありましたが、この映像化作品に登場するジム・ピアソンは最初からどうしようもない男で、そもそもなぜエミリーはこんな男と婚約したのかと思わざるをえません(そのエミリーも、やや高慢ちきで、原作ほど魅力的な女性にはなっていないのだが)。 エミリー(ゾーイ・テルフォード

第8話シタフォードの謎 09.jpg 「この線でいくと、こっちは最後、チャールズの方を選ぶだろうなあ」と思わせるのが1つの引っ掛けだったわけかと。原作の真犯人バーナビー少佐がエンダービーに改名され、新聞記者のチャールズ・"エンダビー"の名前がチャールズ・"バーナビー" に改名されていることが「伏線」だったわけですが、凝り過ぎていて分かんないよ、そんな細かいところは...(因みに、ミセス・ウィレットの娘で原作のヴァイリットも"ヴァイオレット"に改変され、トレヴェリアン大佐がエジプト時代に愛した娘と同名という設定になっているが、こんな話は原作には元々は無い)。 トレヴェリアン(ティモシー・ダルトン)/ヴァイオレット(キャリー・マリガン

 第2の殺人となるドクターの殺害や、エジプトでの過去の殺人(大佐も殺人犯だったのか)、そして最後は、エメリーによるチャールズの○○(どうして、その後の女2人の南米行きに繋げることができるのだろうか。取り敢えず、身柄拘束されて警察の尋問を受けるのでは?)等々、原作に無い話がてんこ盛りで、脚本家がもう好き放題に造っている感じ。 「シタフォードの謎」ではなく、「スリークラウンの謎」とでも呼ぶべき、原作とは別物の話でした。

007 リビング・デイライツ ポスター.jpg007 リビング・デイライツ 洋物.jpg ティモシー・ダルトンは007シリーズの4代目ジェームズ・ボンド役で、シリーズ第15作、第16作に主演(原作は共にイアン・フレミングの短編、監督は共にジョン・グレン)。第15作「007 リビング・デイライツ」('87年)は、高齢ロジャー・ムーアからの大幅若返りということで、ハードアクションが多く、アンケートによっては、シリーズの中、ショーン・コネリーの「ロシアより愛をこめて」に次いで人気が高いという結果が出ているものもありましたが、ロケや仕掛けにお金がかかっている割には個人的にはイマイチでした。アクションも、最初の、久しぶりにシリーズで復活したアストン・マーチンで山から下っていくカーチェイスは迫力がありましたが、それ以外は...。

007 消されたライセンス チラシ.jpg007 消されたライセンス 1シーン.jpg 続く第16作「007 消されたライセンス」('89年)は、'89年11月にベルリンの壁が崩壊したこともあり、冷戦下で作られた最後の007シリーズ作品です。ストーリー的も冷戦の要素が組み込まれた最後の作品とされていますが、ボンドの実質的な敵役は既に、前作のKGBから麻薬王へと変わっています。「古い時代の名残を感じられる最後のボンド映画」との見方もありますが、個人的には、ティモシー・ダルトンになってアメリカのアクション映画とあまり変わらなくなってきた印象を受けました(ボンド・ガールはキャリー・ローウェルとタリサ・ソトで共に米国出身)。

ティモシー・ダルトン2.jpg ティモシー・ダルトンは、'71年にショーン・コネリーの後任としてボンド役を依頼されていますが、ボンドを演じるには若すぎるという理由で辞退し、'79年にロジャー・ムーアが降板を考えていたために来た依頼も断っており、3度目の依頼でようやく引き受けたとのことです。但し、この2作でボンド役を降ろされてしまい、次回作からボンド役はピアース・ブロスナンになっています。もう何本かボンド役を演じていればまた違ったかもしれませんが、結果的には、ちょうどシリーズの転換期にボンドを演じた俳優であり、方向性試行錯誤の犠牲になったというイメージがあります。


Carey Mulligan.jpg第8話シタフォードの謎 2.jpg「アガサ・クリスティー ミス・マープル(第8話)/シタフォードの謎」●原題:THE SITTAFORD MYSTERY, AGATHA CHRISTIE`S MARPLE SEASON 2●制作年:2006年●制作国:イギリス●演出:ポール・アンウィン●脚本:スティーヴン・チャーチェット●原作:アガサ・クリスティ●時間:93ティモシー・ダルトン 007.jpg分●出演:ジェラルディン・マクイーワン/ティモシー・ダルトン/マイケル・ブランドン/ローレンス・フォックス/ロバート・ハーディ/パトリシア・ホッジ/ポール・ケイ/マシュー・ケリー/ジェフリー・キッスーン/キャリー・マリガン/ジェームズ・マリー/メル・スミス/ゾーイ・テルフォード/リタ・トゥシンハム/ジェームズ・ウィルビー●日本放送:2008/06/26●放送局:NHK‐BS2(評価:★★★)
Carey Mulligan 

007 リビング・デイライツ  dvd2.jpg「007 リビング・デイライツ」●原題:JAMES BOND 007 THE LIVING DAYLIGHT●制作年:1987年●制作国:イギリス・アメリカ007 リビング・デイライツ  dvd1.jpg●監督:ジョン・グレン●製作:マイケル・G・ウィルソン/アルバート・R・ブロッコリ●脚本:リチャード・メイボーム/マイケル・G・ウィルソン●撮影:アレック・ミルズ●音楽:ジョン・バリー●原作:イアン・フレミング●時間:130分●出演:ティモシー・ダルトン/マリアム・ダボ/ジェローン・クラッベ/ジョー・ドン・ベイカー/ジョン・リス=デイヴィス/アート・マリック/ジョン・テリー/アンドレアス・ウィズニュースキー/デスモンド・リュウェリン/ロバート・ブラウン/キャロライン・ブリス●日本公開:1987/12●配給:MGM=ユナイテッド・アーティスツ(評価:★★★) 「007 リビング・デイライツ アルティメット・エディション [DVD]

007 消されたライセンス dvd.jpg「007007 消されたライセンス dvd2.jpg 消されたライセンス」●原題:JAMES BOND 007 LICENCE TO KILL●制作年:1989年●制作国:イギリス・アメリカ●監督:ジョン・グレン●製作:マイケル・G・ウィルソン/アルバート・R・ブロッコリ●脚本:リチャード・メイボーム/マイケル・G・ウィルソン●撮影:アレック・マイルズ●音楽:マイケル・ケイメン●原作:イアン・フレミング●時間:133分●出演:ティモシー・ダルトン/キャリー・ローウェル/ロバート・ダヴィ/タリサ・ソトアンソニー・ザーブ/フランク・マクレイ/エヴェレット・マッギル/ウェイン・ニュートン/デスモンド・リュウェリン●日本公開:1989/09●配給:MGM=ユナイテッド・アーティスツ(評価:★★★) 「消されたライセンス (デジタルリマスター・バージョン) [DVD]

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最後に生き残ったのは"善男善女"なのか、ファム・ファタール(悪女)なのか。

そして誰もいなくなった 1945 01 00.jpg  And Then There Were None 2.jpg  そして誰もいなくなった 1945 01.jpg
"And Then There Were None"輸入盤DVD/クラシック・ポスター
「そして誰もいなくなった」岩波ホール公開時(1976) チラシ/パンフレット
そして誰もいなくなった  チラシ.jpgそして誰もいなくなった/1976 岩波ホール パンフレット.jpg 孤島の別荘に8人の男女が招待されてやって来るが、別荘には主人の姿が見えず、執事のロジャース夫婦がいるだけだった。彼らは皆、手紙で招かれたのだが、差出人のユー・エヌ・オーエン(U. N. Owen)氏を誰も知らず、執事夫婦も手紙で雇われ、つい先日島に来たばかりだった。本土との連絡は数日後に来るボートのみで、それ迄彼らは島に閉じ込められたことになる。ホールの10体のインディアンの置物を見てヴェラ(ジューン・デュプレ)は、10人のインディアンが最後は「誰もいなくなった」という古い子守唄を思い出す。彼らがくつろいでいる時、執事がかけたレコードから声がして、10人はいずれも過去に殺人を犯したと告発、全員がそれを否定する。判事(バリー・フィッツジェラルド)は U. N. Owen が Unknown(名無し者)と発音できることに気づく。一人が毒入る酒を飲んで咽喉をつまらせて死んだのを皮切りに、彼らは唄の文句通りに次々殺されてゆき、殺人の後は必ずインディアンの人形が1体壊されていた。殺人者は彼らの中にいることは明らかである。判事、アームストロング医師(ウォルター・ヒューストン)、ブロア、ロンバード(ルイス・ヘイワード)、ヴェラの5人が残る。4人は罪を認めるがヴェラは無実を主張する。更に3人が殺され、残りはヴェラとロンバードの2人となる―。
 
そして誰もいなくなった 洋物ポスター.jpgそして誰もいなくなった クリスティー文庫 新.jpg 原作は1939年にアガサ・クリスティ(1890‐1976)が発表した作品(原題:Ten Little Niggers (米 Ten Little Indians) (改 And Then There Were None))で、クリスティ作品の中でも最もよく知られ人気も高い作品ですが、このルネ・クレール(René Clair:1898-1981)監督の「そして誰もいなくなった」('45年/米)をはじめ、10回以上映画化されている作品の何れもが、小説の方ではなく、クリスティ自身が舞台用に書いた「戯曲」版をベースにしたものです。「戯曲」では島に残された10人全員が死ぬのではなく、生存者が2人(男女1組)いて、"見立て殺人"のベースになっている童謡の歌詞の最後が「首を吊る」と「結婚する」の2通りあるうちの「結婚する」の方を採用していることになります。

 本当に「誰もいなくなった」ら芝居として成り立ち難いというのもあるし(原作では、謎解きは犯人が瓶に詰めて海に流した手記による)、戯曲化する頃('43年)には原作の結末は広く世に知られており、そこでクリスティが自らヒネリを加えて観客に新たな"お楽しみ"を提供したのではないかとも思われます。

 戯曲は、愛し合う男女を見て犯人が自ら敗北を悟るような結末のようですが、このルネ・クレールの映像化作品は、ウォルター・ヒューストンやバリー・フィッツジェラルドなど名優たちの演技は堅いものの、ラストはちょっと軽かったかなあという印象でした。振り返れば、執事が皆に犯人ではないかと疑われてヤケになって酔っぱらったり、互いが疑心暗鬼になって相手を鍵穴から覗き、その覗いている者をまた別の者が覗いているというのが数珠繋ぎの環になっていたりするなどユーモラスな場面が多く、それはそれで楽しめますが、その分、サスペンスフルな雰囲気がやや削がれてしまったようにも思います。しかし、巷に言われているほどに「失敗作」であるとまでは思いませんでした(特にクリスティの原作のコアなファンから批判が多い?)。

そして誰もいなくなった  1シーン.jpg 他の映画化作品と比べ、最も「戯曲」に忠実に作られているとのことですが、戯曲では、ヴェラとロンバードは実は無実だったということになっているのに対し、この映像化作品では、ヴェラに関して本当はどうだったのか明確ではなく、ロンバードに至っては、ロンバートという人物は既に自殺していて、彼の正体はロンバートの友人で彼に成りすましたチャーリー・モーレイという探偵であったとされています。その彼が、いわばその通り"探偵"となって犯人を炙り出すという構図になっていて、但し、そのこと自体は観終わった後に判るようになっています(彼がチャーリー・モーレイであることは、トランクのイニシャルで示唆されている。但し、これも最後の方で判ることだが)。

そして誰もいなくなった dvd.jpg 原作では、ヴェラがロンバードを射殺した後で自殺しますが、戯曲では、弾が外れて(彼を愛してしまったがゆえに撃てなかった?)ロンバードは死ななかったことになっており、それがこの映画では、ロンバードの発案によりヴェラは彼を撃ったふりをし、そのことによって犯人を欺いたともとれるものになっています。

 戯曲同様、善男善女が1組生き延びたという結末であり、トリックに嵌っことを知った犯人が、最後に「女を信用してはならぬ」という言葉を残して自殺しますが、この言葉を深読みすれば、ヴェラは本当に"善女"なのか、という疑問も残ります(彼女が罪の告白をしなかったのは、その言葉通り妹が犯人だったのかもしれないし、彼女がウソをついているのかもしれない)。

 考えてみれば、島に呼ばれた執事夫婦を含む10人のうち、本物のロンバードは既に自殺していて、残る9人で生き残ったのは彼女のみで、しかも最後に「結婚」を手に入れるという、この結末をフィルム・ノワール風にとれば、彼女こそ実はファム・ファタール(悪女)であったともとれる?(ジューン・デュプレ演じるヴェラは、美人だがやや冷たい印象で翳がある)
そして誰もいなくなった CCP-147 [DVD]

 ただ一般には、当時フランスのドイツ占領を逃れて渡米中の巨匠ルネ・クレールが、無聊を託っていても仕方がないとのことで、余技的に撮った作品であるとの捉えられ方もされていて、また一方で、映画化に際して、クリスティが戯曲に込めた若い女性に対する肯定的な思いに出来るだけ沿って撮ろうとしたとの話もあり、そこまで深読みするものではないのかもしれません(ヴェラが「悪女」だったという解釈の方が面白いには面白いけれどね)。

そして誰もいなくなった 映画 dvd カバー.jpg「そして誰もいなくなった」●原題:AND THEN THERE WERE NONE●制作年:1945年●制作国:アメリカ●監督:ルネ・クレール●製作:ルネ・クレール/ハリー・M・ポプキン●脚本:ダドリー・ニコルズ/ルネ・クレール●撮影:リュシアン・N・アンドリオ●音楽:マリオ・カステルヌオーヴォ・テデスコ●原作:アガサ・クリスティ「そして誰もいなくなった」(戯曲版)●時間:97分●出演:バリー・フィッツジェラルド/ウォルター・ヒューストン/ルイス・ヘイワード/ローランド・ヤング/ジューン・デュプレ/ミーシャ・アウア/C・オーブリー・スミス/ジュディス・アンダーソン/リチャード・ヘイドン/クィーニー・レナード●日本公開:1976/08●配給:インターナショナル・プロモーション(評価:★★★☆)

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スタンリー・キューブリック28歳の時のフィルム・ノワール作品。カットバック映画の第一級品。

THE KILLING 1956.jpgTHE KILLING 1956-2.jpg現金に体を張れ1.jpg  現金に体を張れ.jpg
現金(ゲンナマ)に体を張れ [DVD]
Gennama ni karada wo hare(1956)
現金に体を張れ02.jpg
 5年の刑期を終えて出所したジョニー・クレイ(スターリング・ヘイドン)は、恋人フェイ(コリーン・グレイ)との新たな生活のため、仲間を2THE KILLING 1956 .jpg集めて再び犯罪に手を染めようとしていた。それは、ダービーの行われる日に競馬場の売上金を強奪しようというもので、集まったのは、ジョニーの他に、軍資金を出すマーヴィン(ジェイ・C・フリッペン)、競馬場の馬券売場の現金係ジョージ(エライシャ・クック)、競馬場のバーのバーテンダーのマイク( ジョー・ソウヤー)、競馬場の整備を担当している悪徳警官ランディ(テッド・デコルシア)、元レスラーのモーリス(コーラ・クワリアーニ)の5人。ジョニーは更に射撃の名手ニッキを雇う。競馬場近くのモーテルの一室借りて犯行当日の根城とし、決行の前日、一味は最後の打合せをしたが、警官まで仲間に引き込んだ計画に隙はないように思われた。しかし、妻シェリー(マリー・ウィンザー)の尻に敷かれっぱなしのジョーが、妻から嘲りの言葉を浴びてプライドを踏みにじられTHE KILLING 1956.jpg、思わず計画のことを口にしてしまう。彼女からそれを聞いた彼女の不倫相手のヴァル(ヴィンス・エドワーズ)は、彼らが奪った金をさらに強奪する計画を立てる―。

『現金(げんなま)に体を張れ』(1956).jpg 決行の日、先ずモーリスがバーに来て飲物を注文、マイクの出した飲物に因縁をつけ暴れ始める。彼を押さえようとする警備員を大男のモーリスは次々と投げ飛ばして騒ぎは拡がり、競馬場の金庫室を見張っていた警官まで出てくる。一方、ニッキは競馬場の外側コースからレース中の馬を一発で倒してレースを混乱させるが、来合せた警官の銃弾に倒れる。競馬場の騒ぎの間にジョニーはジョージの合図で金庫室に入り、職員を機関銃で脅して200万ドルの紙幣を袋に詰込ませ、それを窓から投げて表へ出る。袋はランディが自分のパトカーに積んでモーテルの一室へ一旦放り込む。先に戻ったジョージら5人は別のホテルの一室で金を持って現れるはずのジョニーを待つが、そこへ現れたのは機関銃を構えたヴァルとその仲間で、その場で銃撃戦となり、重傷のジョージ以外は敵味方とも全員死んでしまう。ジョージは血まみれのまま車で自分のアパートへ戻り、ヴァルとの高跳びのための荷造りしていたシェリーを射殺、自身も息絶える。ジョージが血まみれになって車で行くのを、ホテルへ急ぐ途中で見つけたジョニーは、危険を覚ってフェイの待つ飛行場へ直行する―。

スタンリー・キューブリック.jpg スタンリー・キューブリック(1928-1999/享年70)監督の劇場公開第1作で(原題:THE KILLING)、この時彼は28歳でしたが、自ら脚本も手掛けたこの作品の完成度の高さには目を瞠るものがあります。前年作で同じくフィルム・ノワール系の「非情の罠」('55年、原題:THE KILLER'S KISS)も観ましたが、1年で格段の進歩という感じ(まあ、この「現金に体を張れ」は「非情の罠」より以前から彼が構想を暖めていたものだそうだが)。
Self-portrait taken from Stanley Kubrick : Photographs 1945-1950

 原作は、ライオネル・ホワイトの『見事な結末』("Clean Break")で(ゴダールの「気狂いピエロ」もこの人の『十一時の悪魔』が原作)、綿密なはずの現金強奪計画がちょっとした偶然から崩れていくその様を、同時に起きている出来事を、時間を繰り返し何度も戻してそれぞれの登場人物の立場から描いています。

『パルプ・フィクション』(1994) 2.jpgパルプ・フィクション.bmp こうしたカットバック方式の作品としては、後にクエンティン・タランティーノが自ら脚本を書き監督した「パルプ・フィクション」('94年)があり、これもアカデミー脚本賞受賞の傑作ですが、ジョン・トラヴォルタとサミュエル・L・ジャクソンの二人組がコーヒー・ショップで強盗を働く話であるのに対し、こちらの「現金に体を張れ」の強盗チームは6人組+狙撃犯で、スケールの大きさからみてもプロットの精緻さからみても、その上を行く第一級品だと思います("B級"ノワールと呼ぶには失礼かも)。

 カメラワークやプロットの見事さは勿論のこと、人間の弱さ、夢の儚さもしかっり描けていて(ラストはジャン・ギャバンとアラン・ドロンの「地下室のメロディ」('63年/仏)を想起させるが、「現金に体を張れ」の方が7年早く作られている)、エライシャ・クックをはじめ脇役陣も演技達者の性格俳優ばかり。28歳にしてこの演出力はさすがキューブリックという感じで、テンポの良さもあって、約1時間半の上映時間が短く感じられた作品でした。

 因みに、「フィルム・ノワール」作品の多くに共通する特徴として、主役乃至準主役の女性が明確に悪女(ファム・ファタール)であるか、そうでない場合でも、結果的に主人公の男を破滅させる原因を作ることの多い役柄であることだそうで、この作品の場合は当然のことながら、「悪女」はマリー・ウィンザー演じるシェリーということになります。

現金に体を張れ01.jpg現金に体を張れ03.jpg「現金に体を張れ」●原題:THE KILLING●制作年:1956年●制作国:アメリカ●監督:スタンリー・キューブリック●製作:ジェームス・B・ハリス●脚本:スタンリー・キューブリック/ジム・トンプスン●撮影:ルシエン・バラード●音楽:ジェラルド・フリード●原作:ライオネル・ホワイト「見事な結末」●時間:83分●出演:スターリング・ヘイドン/ジェイ・C・フリッペン/メアリ・ウィンザー/コリーン・グレイ/エライシャ・クック/マリー・ウィンザー/テッド・デコルシア/ ジョー・ソウヤー/コーラ・クワリアーニ/ヴィンス・エドワーズ●日本シアターアプル・コマ東宝.jpg公開:1957/10●配給:ユニオン=映配●最初に観た場所:新宿シアターアプル (86-03-22) (評価:★★★★☆)
歌舞伎町・新宿シアターアプル・コマ東宝  2008(平成20)年12月31日閉館

ライオネル・ホワイト原作: 「現金に体を張れ」 ('56年/米)/「気狂いピエロ」 ('65年/仏)
現金に体を張れド.jpg 気狂いピエロ Pierrot Le Fou.jpg

パルプフィクション スチール.jpgパルプ・フィクション ポスター.jpg「パルプ・フィクション」●原題:PULP FICTION●制作年:1994年●制作国:アメリカ●監督・脚本:クエンティン・タランティーノ●製作:ローレンス・ベンダー●原案:クエンティン・タランティーノ/ロジャー・エイヴァリー●撮影:アンジェイ・セクラ●音楽:カリン・ラットマン●時間:155分●出演:ジョン・トラヴォルタ/サミュエル・L・ジャクソン/ユマ・サーマン/ハーヴェイ・カイテル/アマンダ・プラマー/ティム・ロス/クリストファー・ウォーケン/ビング・ライムス●日本公開:1994/09●配給:松竹富士 (評価:★★★★)

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見ていると眠れなくなってしまいそうな本。美麗本であれば、ファンには垂涎の一冊。

怪奇SF映画大全2.jpg メトロポリス.JPG アマゾンの半漁人.JPG
怪奇SF映画大全』(30 x 23 x 2.4 cm) 「メトロポリス」('27年) 「アマゾンの半魚人」('54年)

図説ホラー・シネマ.jpgGraven Images 1992.jpgGraven Images 2.jpg 先に『図説 モンスター―映画の空想生物たち(ふくろうの本)』('07年/河出書房新社)を取り上げましたが、本書(原題"Graven Images" 1992)は怪奇映画だけでなくSFホラーまで領域を拡げた「映画ポスター+解説集」であり、「カリガリ博士」「キング・コング」から「吸血鬼ドラキュラ」「2001年宇宙の旅」まで怪奇・SF・ファンタジー映画の歴史をポスターの紹介と併せて解説したまさに永久保存版であり、1910~60年代まで450本の映画及びポスターが紹介されています。
"Graven Images: The Best of Horror, Fantasy, and Science-Fiction Film Art from the Collection of Ronald V. Borst"

 ポスターの紹介点数もさることながら、大型本の利点を生かしてそれらを大きくゆったりと配置しているためかなり見易く、また、迫力のあるものとなっています(表紙にきているのはボリス・カーロフ主演の(「フランケンシュタイン」ではなく)「ミイラ再生」('32年)のポスター)。

 「ふくろうの本」の方が映画そのものの解説が詳しいのに比べ、こちらはポスターそのものを見せることが主で、その余白に映画の解説が入るといった作りになっていますが、それでも解説も丁寧。「10年代と20年代」から「60年代」まで年代ごとの"編年体"の並べ方になっているため、時間的経緯を軸に怪奇SF映画の歴史を辿るのにはいいです。

 更に各章の冒頭に、ロバート・ブロック(「サイコ」の原作者)、レイブラッド・ベリ、ハーラン・エリスン、クライブ・パーカーなどの作家陣が、年代ごとの作品の解説を寄せていますが(序文はスティーヴン・キング)、それぞれエッセイ風の文章でありながら、作品解説としてもかなり突っ込んだものになっています。

「キング・コング」('33年)
kingkong 1933 poster.jpgキング・コング 1933.jpg ポスターに関して言えば、60年代よりも前のものの方がいいものが多いような印象を受けました。個人的には、「キング・コング」('33年)のポスターが見開き4ページにわたり紹介されているのが嬉しく、「『美女と野獣』をフロイト的に改作」したものとの解説にもナルホドと思いました。映画の方は、ストップ・アニメーションでの動きはぎこちないものであるにも関わらず、観ていてコングについ感情移入してしまいますが、意外とこの時のコングは小さかったかも...現代的感覚から見るとそう迫力は感じられません。但し、当時は興業的に大成功を収め(ポスターも数多く作られたが、本書によれば、実際の映画の中でのコングの復讐_1.jpgコングの姿を忠実に描いたのは1点[左上]のみとのこと)、その年の内に「コングの復讐」('33年)が作られ(原題は「SON OF KONG(コングの息子)」)公開されました。 「コングの復讐」('33年)[上]

紀元前百万年 ポスター.jpg
紀元前百万年 スチール.jpg 因みに、アメリカやイギリスでは「怪獣映画」よりも「恐竜映画」の方が主に作られたようですが、日本のように着ぐるみではなく、模型を使って1コマ1コマ撮影していく方式で、ハル・ローチ監督、ヴィクター・マチュア、キャロル・ランディス主演の「紀元前百万年」('40年)ではトカゲやワニに作り物の角やヒレをつけて撮る所謂「トカゲ特撮」なんていう方法も用いられましたが、何れにしても動きの不自然さは目立ちます。そもそも恐竜と人類が同じ時代にいるという状況自体が進化の歴史からみてあり得ない話なのですが...。
     
one million years b.c. poster.jpg この作品のリメイク作品が「恐竜100万年」('66年)で、"全身整形美女"などと言われたラクエル・ウェルチが主演でしたが(100万年前なのにラクェル・ウェルチ   .jpg彼女はバッチリ完璧にハリウッド風のメイキャップをしている)、やはりここでも模型を使っています。結果的に、ラクエル・ウェルチの今風のメイキャップでありながらも、何となくノスタルジックな印象を受けて、すごく昔の映画のように見えてしまいます(CGの出始めの頃の映画とも言え、なかなか微妙な味わいのある作品?)。

King Kong 02.jpg「キングコング」(1976年)1.jpg「キングコング」(1976年).jpg それが、その10年後の、ジョン・ギラーミン監督のリメイク版「キングコング」('76年)(こちらは邦題タイトル表記に中黒が無い)では、キング・コングの全身像が出てくる殆どのシーンは、リック・ベイカーという特殊メイクアーティストが自らスーツアクターとなって体当たり演技したものであったとのことで、ここにきてアメリカも、「ゴジラ」('54年)以来の日本の怪獣映画の伝統である"着ぐるみ方式"を採り入れたことになります(別資料によれば、実物大のロボット・コング(20メートル)も作られたが、腕や顔の向きを変える程度しか動かせず、結局映画では、コングがイベント会場で檻を破るワンシーンしか使われなかったという)。

フランケンシュタインの花嫁 poster.jpg 「フランケンシュタイン」('31年)「フランケンシュタインの花嫁」('35年)のポスターもそれぞれ見開きで各種紹介されていて、本書によれば、ボリス・カーロフは自分の演じる怪物にセリフがあることを不満に思っていたそうな(普通、逆だけどね)。その後も続々とフランシュタイン物のポスターが...。やはり、フランケンシュタインはSFまで含めても怪奇物の王者だなあと。

cat people 1942 poster.jpgthe thing 1951 poster.jpgforbbidden planet 1956 poster.jpg 40年代では「キャット・ピープル」('42年)や「ミイラ男」シリーズ、50年代では「遊星よりの物体X」('51年)「大アマゾンの半魚人」('54年)などのポスターがあるのが楽しく、50年代では日本の「ゴジラ」('54年)のポスターもあれば、「禁断の惑星」('56年)「宇宙水爆線」('55年)のポスターもそれぞれ見開きで各種紹介されています(50年代の最後にきているのはヒッチコックの「サイコ」('60年)のポスター)。

「キャット・ピープル」('42年)/「遊星よりの物体X」('51年)/「禁断の惑星」('56年)

 「キャット・ピープル」はポール・シュレイダー監督、ナスターシャ・キンスキー主演で同タイトル「キャット・ピープル」('81年)としてリメイクされ(オリジナルは日本では長らく劇場未公開だったが1988年にようやく劇場公開が実現したため、多くの人がリメイク版を先に観たことと思う)、「遊星よりの物体X」は、ジョン・カーペンター監督により「遊星からの物体X」('82年)としてリメイクされています。

cat people 1942 01.jpgcat people 1982.jpg 前者は、オリジナルでは、猫顔のシモーヌ・シモンが男性とキスするだけで黒豹に変身してしまう主人公を演じていますが、ストッキングを脱ぐシーンとか入浴シーン、プールでの水着シーンなどは当時としてはかなりエロチックな方だったのだろうなあと。実際に黒豹になるナスターシャ「キャット・ピープル」.jpg場面は夢の中で暗示されているのみで、それが主人公の妄想であることを示唆しているのに対し、リメイク版では、ナスターシャ・キンスキーが男性と交わると実際に黒豹に変身します。ナスターシャ・キンスキーの猫女(豹女?)はハマリ役で、後日「あの映画では肌を露出する場面が多すぎた」と述懐している通りの内容でもありますが、構成がイマイチのため、ストーリーがだらだらしている上に分かりにくいのが難点でしょうか。

the thing 1951.jpgthe thing 1982.jpg 後者「遊星からの...」は、オリジナル「遊星よりの...」の"植物人間"のモチーフを更に"擬態"にまで拡げてアレンジ、犬の顔がバナナの皮が剥けるように割けるシーンや、首を切られて落ちた頭に足が生えてカニのように逃げていくシーンのSFXはスゴかった...。これを観てしまうと、オリジナルはやや大人し過ぎるか。リメイクの方がむしろジョン・W・キャンベルの原作『影が行く』に忠実な面もあり、オリジナルを超えていたかも。SFXを駆使して逆にオリジナルの良さを損なう作品が多い中、誰が「偽人間」なのかと疑心暗鬼に陥った登場人物らの心理をドラマとして丁寧に描くことで成功しています。

フェイ・レイ.jpg2フェイ・レイ.jpgキング・コング 1976 ジェシカ・ラング.jpg 「キング・コング」('33年)のリメイク、ジョン・ギラーミン監督の「キングコング」('76年)は、オリジナルは、ヒロイン(フェイ・レイ)に一方的に恋したコングが、ヒロインをさらってエンパイアステートビルによじ登り、コングの手の中フェイ・レイは恐怖のあまりただただ絶叫するばかりでしたが(このため、フェイ・レイ"絶叫女優"などと呼ばれた)、King Kong 1976 03.jpgリメイク版のヒロイン(ジェシカ・ラング)は最初こそコングを恐れるものの、途中からコングを慈しむかのように心情が変化し、世界貿易センタービルの屋上でヘリからの銃撃を受けるコングに対して「私といれば狙われないから」と言うまでになるなど、コングといわば"男女間的コミュにケーション"をするようになっています(そうしたセリフ自体は観客に向けての解説か?)。但し、「美女と野獣」のモチーフが、それ自体は「キング・コング」の"正統的"なモチーフであるにしてもここまで前面に出てしまうと、もう怪獣映画ではなくなってしまっている印象も。個人的には懐かしい映画であり、郵便配達は二度ベルを鳴らす 1981.jpg興業的にもアメリカでも日本でも大ヒットしましたが、後に観直してみると、そうしたこともあってイマイチの作品のように思われました。ジェシカ・ラングも「郵便配達は二度ベルを鳴らす」('81年)で一皮むける前の演技であるし...2005年にナオミ・ワッツ主演の再リメイク作品が作られましたが、ナオミ・ワッツもジェシカ・ラング同様、以降の作品において"演技派女優"への転身を遂げています。
 因みに、ボブ・ラフェルソン監督、ジャック・ニコルソン、ジェシカ・ラング主演の「郵便配達は二度ベルを鳴らす」はジェームズ・M・ケインの原作の4度目の映画化作品でしたが(それまでに米・仏・伊で映画化されている)、その中で批評家の評価は最も高く、個人的もルキノ・ヴィスコンティ監督版('42年/伊、出演はマッシモ・ジロッティとクララ・カラマイ)を超えていたように思います。
ジェシカ・ラング in「郵便配達は二度ベルを鳴らす」('81年)

 「蠅男の恐怖」('58年)のリメイク、デヴィッド・クローネンバーグ監督の「ザ・フライ」('86年)などは、原作の"ハエ男"化していく主人公の哀しみをよく描いていたように思われ、こちらはもオリジナル以上と言えるのではないかと思います。ラストは、視覚的には"蠅男"が"蟹男"に見えるのが難点ですが、ドラマ的にはしんみりさせられるものでした。

 見ていると眠れなくなってしまいそうな本であり、ファンには垂涎の一冊と言えますが、絶版中。発売時本体価格6,800円で、古本市場でも美麗本だとそう安くなっていないのではないかな。そこだけが難点でしょうか。

キングコング 髑髏島の巨神 日本ポスター.jpgキングコング 髑髏島の巨神 日本ポスター2.jpg (キングコングについては2017年に新進気鋭の監督ジョーダン・ヴォート=ロバーツによる「キングコング:髑髏島の巨神」('17年/米)が作られ、シリーズのスピンオフにあたる作品とのことだが、主役はあくまでキングコング。1973年の未知の島髑髏島がキングコング 髑髏島の巨神 01.jpg舞台で、一応、コングが島の守り神であったり、主人公の女性を救ったりと、オリジナルのコングに回帰している(一方で、随所にフランシス・フォード・コッポラ監督の「地獄の黙示録」('79年/米)へのオマージュが見られる)。コングのほかにいろいろな古代生物が出てくるが、コングも含め全部CG。コングはまずまずだが、天敵の大蜥蜴などは何だかアニメっぽかったように思えた(日本のアニメへのオマージュもキングコング 髑髏島の巨神 02.jpg込められているようだ)。本作のプレゼンテーションに参加した「シン・ゴジラ」('16年/東宝)の樋口真嗣監督は、本作のコングについて、'33年のオリジナル版キングコングのような人形劇の動きに近く、2005年版で描かれたような巨大なゴリラではなく、どちらかといえばリック・ベイカー(1976年版コングのスーツアクター)っぽいと語したそうだが、おそらくモーション・キャプチャを使っているせいだろう。同じCG主体でも、「ジュラシック・パーク」('93年/米)が登場した時のよう新奇性もなく(もうCG慣れしてしまった?)、その上、サミュエル・L・ジャクソンやオスカー女優のブリー・ラーソンが出ている割にはドラマ部分も弱くて、人間側の主人公が誰なのかはっきりしないのが痛い。)

キング・コング [DVD]
キング・コング 1933 dvd.jpgキング・コング 02.jpg「キング・コング」●原題:KING KONG●制作年:1933年●制作国:アメリカ●監督:メリアン・C・クーパー/アーネスト・B・シェードサキング・コング(オリジナル).jpgック●製作:マーセル・デルガド●脚本:ジェームス・クリールマン/ルース・ローズ●撮影:エドワード・リンドン/バーノン・L・ウォーカー●音楽:マックス・スタイナー●時間:100分●出演:フェイ・レイ/ロバート・アームストロング/ブルース・キャボット/フランク・ライチャー/サム・ハーディー/ノーブル・ジョンソン●日本公開:1933/09●配給:ユニヴァーサル映画●最初に観た場所:池袋・文芸座ル・ピリエ(84-06-30)(評価:★★★)●併映:「紀元前百万年」(ハル・ローチ&ジュニア)

紀元前百万年 dvd.jpg紀元前百万年 dvd.jpg「紀元前百万年」●原題:ONE MILLION B.C.●制作年:1940年●制作国:アメリカ●監督:ハル・ローチ&ジュニア●製作:マーセル・デルガド●脚本:マイケル・ノヴァク/ジョージ・ベイカー/ジョセフ・フリーカート●撮影:ノーバート・ブロダイン●音楽:ウェルナー・リヒャルト・ハイマン●時間:80分●出演:ヴィクター・マチュア/キャロル・ランディス/ロン・チェイニー・Jr/ジョン・ハバード/メイモ・クラーク/ジーン・ポーター●日本公開:1951/04●配給:ユナイテッド・アーティスツ●最初に観た場所:池袋・文芸座ル・ピリエ(84-06-30)(評価:★★★)●併映:「キング・コング」(ジュニアメリアン・C・クーパー/アーネスト・B・シェードサック) 「紀元前百万年 ONE MILLION B.C. [DVD]

恐竜100万年 [DVD]
恐竜100万年 dvd.jpg恐竜100万年 ラクエル・ウェルチ.jpg「恐竜100万年」●原ラクエルウェルチ71歳.jpg題:ONE MILLION YEARS B.C.●制作年:1966年●制作国:イギリス・アメリカ●監督:ドン・チャフィ●製作:マイケル・カレラス●脚本:ミッケル・ノバック/ジョージ・ベイカー/ジョセフ・フリッカート●撮影:ウィルキー・クーパー●音楽:マリオ・ナシンベーネ●時間:105分●出演:ラクエル・ウェルチ/ジョン・リチャードソン/パーシー・ハーバート/ロバート・ブラウン/マルティーヌ=ベズウィック/ジェーン・ウラドン●日本公開:1967/02●配給:20世紀フォックス●最初に観た場所:杉本保男氏邸 (81-02-06) (評価:★★★)  Raquel Welch age71

フランケンシュタインの花嫁 dvd.jpg「フランケンシュタインの花嫁」●原題:BRIDE OF FRANKENSTEIN●制作年:1935年●制作国:アメリカ●監督:ジェイムズ・ホエール●製作:カール・レームル・Jr●脚本:ギャレット・フォート/ロバート・フローリー/フランシス・エドワード・ファラゴー●撮影:ジョン・J・メスコール●音楽:フランツ・ワックスマン●時間:75分●出演:ボリス・カーロフ/エルザ・ランチェスター/コリン・クライヴ/アーネスト・セシガー●日本公開:1935/07●配給:ユニヴァーサル映画●最初に観た場所:渋谷ユーロ・スペース (84-07-21)(評価:★★★★)●併映:「フランケンシュタイン」(ジェイムズ・ホエール)
フランケンシュタインの花嫁[DVD]

CAT PEOPLE 1942 .jpgキャット・ピープル 1942 DVD.jpg 「キャット・ピープル」●原題:CAT PEOPLE●制作年:1942年●制作国:アメリカ●監督:ジャック・ターナー●製作:ヴァル・リュウトン●脚本:ドゥィット・ボディーン●撮影:ニコラス・ミュスラカ●音楽:ロイ・ウェッブ●時間:73分●出演:シモーヌ・シモン/ケント・スミス/ジェーン・ランドルフ/トム・コンウェイ/ジャック・ホルト●日本公開:1988/05●配給:IP●最初に観た場所:千石・三百人劇場(88-05-04)(評価:★★★)●併映:「遊星よりの物体X」(クリスチャン・ナイビー) 「キャット・ピープル [DVD]

シモーヌ・シモン(1910-2005)

「キャット・ピープル」●原題:CAT PEOPLE●制作年:1982年●制作国:アメリカ●監督:ポール・シュレイダー●製作:チャールズ・フライズ●脚本:アラン・オームキャット・ピープル 1982.jpgズビー●撮影:ジョン・ベイリー●音楽:ジョルジキャット・ピープル dvd.jpgキャット・ピープル ポスター.jpgオ・モロダー(主題歌:デヴィッド・ボウイ(作詞・歌)●原作(オリジナル脚本):ドゥイット・ボディーン●時間:118分●出演:ナスターシャ・キンスキー/マルコムジョン・ハード/ アネット・オトウール/ルビー・ディー●日本公開:1982/07●配給:IP●最初に観た場所:新宿(文化?)シネマ2(82-07-18)(評価:★★☆)
キャット・ピープル [DVD]」/チラシ

禁断の惑星 dvd.jpg禁断の惑星 ポスター(東宝).jpg「禁断の惑星」●原題:FORBIDDEN EARTH●制作年:1956年●制作国:アメリカ●監督:フレッド・マクラウド・ウィルコックス●製作:ニコラス・ネイファック●脚本:シリル・ヒューム●撮影:ジョージ・J・フォルシー●音楽:ルイス・アンド・ベベ・バロン●原作:アーヴィング・ブロック/アレン・アドラー「運命の惑星」●時間:98分●出演:ウォルター・ピジョン/アン・フランシス/レスリー・ニールセン/ウォーレン・スティーヴンス/ジャック・ケリー/リチャード・アンダーソン/アール・ホリマン/ジョージ・ウォレス●日本公開:1956/09●配給:MGM●最初に観た場所:新宿・名画座ミラノ(87-04-29)(評価:★★★☆)
禁断の惑星 [DVD]」/パンフレット

宇宙水爆戦 dvd.jpg「宇宙水爆戦」.bmp「宇宙水爆戦」●原題:THIS ISLAND EARTH●制作年:1955年●制作国:アメリカ●監督:ジョセフ・ニューマン●製作:ウィリアム・アランド●脚本:フランクリン・コーエン/エドワード・G・オキャラハン●撮影:クリフォード・スタイン/デビッド・S・ホスリー●音楽:ジョセフ・ガ―シェンソン●原作: レイモンド・F・ジョーンズ●時間:86分●出演:フェイス・ドマーグ/レックス・リーズン/ジェフ・モロー/ラッセル・ジョンソン/ランス・フラー●配給:ユニバーサル・ピクチャーズ●日本公開:1955/12)●最初に観た場所:新宿・名画座ミラノ(87-05-17)(評価:★★★☆)
宇宙水爆戦 -HDリマスター版- [DVD]

遊星よりの物体X3.jpg遊星よりの物体X dvd.jpg「遊星よりの物体X」●原題:THE THING●制作年:1951年●制作国:アメリカ●監督:クリスチャン・ナイビー●製作:ハワード・ホークス●脚本:チャールズ・レデラー●撮影:ラッセル・ハーラン●音楽:ディミトリ・ティオムキン●原作:ジョン・W・キャンベル「影が行く」●時間:87分●出演:マーガレット・シェリダン/ケネス・トビー/ロバート・コーンスウェイト/ダグラス・スペンサー/ジェームス・R・ヤング/デウェイ・マーチン/ロバート・ニコルズ/ウィリアム・セルフ/エドゥアルド・フランツ●日本公開:1952/05●配給:RKO●最初に観た場所:千石・三百人劇場(88-05-04)(評価:★★★)●併映:「キャット・ピープル」(ジャック・ターナー)
遊星よりの物体X [DVD]

遊星からの物体X.jpg遊星からの物体Xd.jpg遊星からの物体X dvd.jpg「遊星からの物体X」●原題:THE THING●制作年:1982年●制作国:アメリカ●監督:ジョン・カーペンター●製作:デイヴィッド・フォスター/ローレンス・ターマン/スチュアート・コーエン●脚本:ビル・ランカスター●撮影:ディーン・カンディ●音楽:エンニオ・モリコーネ●原作:ジョン・W・キャンベル「影が行く」●時間:87分●出演:カート・ラッセル/A・ウィルフォード・ブリムリー/リチャード・ダイサート/ドナルド・モファット/T・K・カーター/デイヴィッド・クレノン/キース・デイヴィッド●日本公開:1982/11●配給:ユニヴァーサル=CIC●最初に観た場所:三軒茶屋東映(84-07-22)(評価:★★★★)●併映:「エイリアン」(リドリー・スコット)
遊星からの物体X [DVD]
遊星からの物体X(復刻版)(初回限定生産) [DVD]

音楽:エンニオ・モリコーネ
    
King Kong 01.jpgking kong 1976.jpg「キングコング」●原題:KING KONG●制作年:1976年●制作国:アメリカ●監督:ジョン・ギラーミン●製作:ディノ・デ・ラウレンティス●脚本:ロレンツォ・センプル・ジュニア●撮影:リチャード・H・クライン●音楽:ジョン・バリー●時間:134分●出演:ジェフ・ブリッジス/ジェシカ・ラング/チャールズ・グローディン/ジャック・オハローラン /ジョン・ランドルフ/ルネ・オーベルジョノワ/ジュリアス・ハリス/ジョン・ローン/ジョン・エイガー/コービン・バーンセン/エド・ローター ●日本公開:1976/12●配給:東宝東和●最初に観た場所:新宿プラザ劇場(77-01-04)(評価:★★★)

郵便配達は二度ベルを鳴らす [DVD].jpg郵便配達は二度ベルを鳴らす br.jpg「郵便配達は二度ベルを鳴らす」●原題:THE POSTNAN ALWAYS RINGS TWICE●制作年:1981年●制作国:アメリカ●監督:ボブ・ラフェルソン●製作:チャールズ・マルヴェヒル/ ボブ・ラフェルソン●脚本:デヴィッド・マメット●撮影:スヴェン・ニクヴィスト●音楽:マイケル・スモール●原作:ジェイムズ・M・ケイン「郵便配達は二度ベルを鳴らす」●時間:123分●出演:ジャック・ニコルソン/ジェシカ・ラング/ジョン・コリコス/マイケル・ラーナー/ジョン・P・ライアン/ アンジェリカ・ヒューストン/ウィリアム・トレイラー●日本公開:1981/12●配給:日本ヘラルド●最初に観た場所:三鷹オスカー (82-08-07)●2回目:自由ヶ丘・自由劇場 (84-09-15)(評価★★★★)●併映:(1回目)「白いドレスの女」(ローレンス・カスダン(原作:ジェイムズ・M・ケイン))●併映:(2回目)「ヘカテ」(ダニエル・シュミット)
郵便配達は二度ベルを鳴らす [DVD]」「郵便配達は二度ベルを鳴らす [Blu-ray]

ザ・フライ dvd.jpg「ザ・フライ」●原題:THE FLY●制作年:1986年●制作国:アメリカ●監督・脚本:デヴィッド・クローネンバーグ●製作:スチュアート・コーンフェルド●撮影:マーク・アーウィン●音楽:ハワード・ショア●原作:ジョルジュ・ランジュラン「蠅」●時間:87分●出演:ジェフ・ゴールドブラム/ジーナ・デイヴィス/ジョン・ゲッツ/ジョイ・ブーシェル●日本公開:1987/01●配給:20世紀フォックス●最初に観た場所:大井武蔵野舘 (87-07-19)(評価★★★★)●併映:「未来世紀ブラジル」(テリー・ギリアム)
ザ・フライ <特別編> [DVD]

キングコング 髑髏島の巨神24.jpgキングコング 髑髏島の巨神es.jpgキングコング 髑髏島の巨神 海外.jpg「キングコング:髑髏島の巨神」●原題:KONG:SKULL ISLAND●制作年:2017年●制作国:アメリカ●監督:ジョーダン・ヴォート=ロバーツ●脚本:ダン・ギルロイ/マックス・ボレンスタイン/デレク・コノリー●原案:ジョン・ゲイティンズ/ダン・ギルロイ●製作:トーマス・タル/ジョン・ジャシュー/アレックス・ガルシア/メアリー・ペアレント●撮影:ラリー・フォン●音楽:ヘンリー・ジャックマン●時間:118分●出演:トム・ヒドルストン/キングコング髑髏島の巨神ド.jpgブリー・ラーソン キング・コング.jpgサミュエル・L・ジャクソン/ジョン・グッドマン/ブリー・ラーソン/ジン・ティエン/トビー・ケベル/ジョン・オーティス/コーリー・ホーキンズ/ジェイソン・ミッチェル/シェー・ウィガム/トーマス・マン/テリー・ノタリー/ジョン・C・ライリー●日本公開:2017/03●配給:ワーナー・ブラザース●最初に観た場所:OSシネマズ ミント神戸 (17-03-29)(評価★★☆)
旧神戸新聞会館9.jpgミント神戸6.jpgミント神戸.jpgOSシネマズ ミント神戸 神戸三宮・ミント神戸(正式名称「神戸新聞会館」。阪神・淡路大震災で全壊した旧・神戸新聞会館跡地に2006年10月完成)9F~12F。全8スクリーン総座席数1,631席。

阪神・淡路大震災で廃墟と化した旧・神戸新聞会館(1995.2.3大木本美通氏撮影)

Raquel Welch
Raquel Welch RPT 0005.jpgRaquel Welch RPT.jpgRaquel Welch RPT 0006.jpg




 
 
 
  
《読書MEMO》
●主な収録作品
【10~20年代】エッセイ=ロバート・ブロック
カリガリ博士/吸血鬼ノスフェラトゥ/巨人ゴーレム/ロスト・ワールド/猫とカナリヤ/メトロポリス/狂へる悪魔/ダンテ地獄篇/バット/オペラの怪人/真夜中すぎのロンドン/プラーグの大学生/他
【30年代】エッセイ=レイ・ブラッドベリ
魔人ドラキュラ/フランケンシュタイン/フランケンシュタインの花嫁/透明人間/モルグ街の殺人/悪魔スヴェンガリ/M/怪人マブゼ博士/倫敦の人狼/猟奇島/恐怖城/怪物団/肉の蝋人形/キング・コング/オズの魔法使/ミイラ再生/獣人島/バスカヴィル家の犬/他
【40年代】エッセイ=ハーラン・エリスン
狼男の殺人/バグダッドの盗賊/猿人ジョー・ヤング/キャット・ピープル/ミイラの復活/謎の下宿人/スーパーマン/夢の中の恐怖/凸凹フランケンシュタインの巻/美女と野獣/バッタ君町に行く/死体を売る男/猿の怪人/他
【50年代】エッセイ=ピーター・ストラウブ
遊星よりの物体X/地球最後の日/宇宙戦争/大アマゾンの半魚人/原子怪獣現わる/ゴジラ/放射能X/タランチュラの襲撃/禁断の惑星/宇宙水爆戦/海底二万哩/蠅男の恐怖/吸血鬼ドラキュラ/ミイラの幽霊/狩人の夜/空の大怪獣ラドン/ボディ・スナッチャー 恐怖の街/シンドバッド7回目の航海/戦慄!プルトニウム人間/他
【60年代】エッセイ=クライヴ・パーカー
サイコ/血だらけの惨劇/ローズマリーの赤ちゃん/忍者と悪女/血塗られた墓標/吸血狼男/テラー博士の恐怖/ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド/タイム・マシン/恐竜100万年/猿の惑星/2001年宇宙の旅/怪談/鳥/何がジェーンに起ったか?/華氏451/バーバレラ/博士の異常な愛情/ミクロの決死圏/血の祝祭日/他

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クルド人問題の入門書として定番的位置付け。映画「路」は重かった。

クルド人 もうひとつの中東問題.jpg        路(みち)04.JPG  ギュネイ.jpg 
クルド人 もうひとつの中東問題 (集英社新書)』 「映画パンフレット 「路(みち)」 監督 ユルマズ・ギュネイ 出演 タルック・アカン/シェリフ・セゼル/ハリル・エルギュン/メラル・オルホンソイ/ネジュメッティン・チュバンオウル/セムラ・ウチャル/ヒクメット・チェリク」 ユルマズ・ギュネイ(Yilmaz Güney 1937-1984/享年47)

川上洋一.bmp 朝日新聞社の中東アフリカ総局長などを務めたベテラン記者の川上洋一氏(本書執筆時は既に新聞社を退職し大学教授)がクルド人問題について書いたもので、'02年の刊行ですが、その後最近まであまりこうしたクルド人にフォーカスした本がそう多く出されていなかったため、クルド人問題の入門書としては定番的位置付けになっているのではないでしょうか。

kurd-map.gif 本書によれば、「祖国なき最大の民」と言われるクルド人の居住地域(クルディスタン)は主にトルコ、イラン、イラクにまたがり、面積はフランス一国にも匹敵、人口は2500万人とも推定され、パレスチナ人約800万を大きく凌ぐとのことです。

地図出典:www.fuzita.org

 クルドの歴史を古代シュメールにまで遡り紹介していますが、クルド人の自治・独立活動が活発化したのは19世紀末以降であって、その後、第一次世界大戦によってオスマン・トルコ帝国が崩壊してから今日まで、国際政治のパワー・ゲームに翻弄されてきた経緯を特に詳しく書いており、この辺りは、根っからの大学教授(といってもどれぐらい研究者がいるのか)よりも、著者のような記者経験者の書くものの方が、より時事的な視点に沿った書き方になって、読む側としては良いのかも。

 オスマン・トルコ時代も「トルコ化」政策などの下で圧迫されていたわけですが、20世紀に入ってからの、トルコ、イラン、イラク三国による翻弄のされ方が哀しい―クルディスタンが紛争多発地域にまたがっているとうのが、ある意味、不幸の源なのでしょうが、それに大国の利権が絡んで、もうグジャグジャという感じ。

 但し、著者の視点は冷静で、幾多の自治・独立活動がの挫折をタ丹念に追うと共に、クルド人自身が、彼らの解放闘争の史上では部族主義になりがちで民族の統一が実現しない、外国依存に陥りやすい、というマイナス要因を持っているとしています。

 今後の見通しも示していますが、こうなると悲観的なものにならざるを得ない―トルコ、イラン、イラクの三国の何れにとってもクルド人国家の独立は脅威であって容認されざるものであり、強いて言えば、クルド寄りの政党、クルド人市長などがいるトルコに若干の光明が見えるといったところでしょうか(国会議員にも入り込んでいるが、これまで出自を明かしていないケースが殆ど。しかし、近年になって自らをクルド人と認める人が増えているようである)。

路(みち)05.JPG 本書を読んで思い出されるのは、クルド人であるユルマズ・ギュネイ(1937-1984)監督の映画「路<みち>」('82年/トルコ・スイス)でした(この人、元は二枚目俳優。反体制作家でもあり、獄中から代理監督を立てて映画を作っていた)。

 映画は、1980年秋、マルマラ海の小島の刑務所から5日間の仮出所を許された5人のクルド人の囚人を追っていますが、その内の一人は、故郷への帰途にある街で、軍による外出禁止令が出てしまっていて足止めを喰い、もう一人は仮出所許可証が見つからずに軍に拘留され、何れもなかなか故郷に辿りつけない。何とか故郷に辿りついた一人は、そこでクルド・ゲリラと憲兵隊との銃撃戦があり、兄が亡くなったこと知って、刑務所には戻らず自らゲリラとなって戦う道を選ぶ―。

 こうした政治的状況と併せて、クルド人の男女観や社会的因習などもが描かれており、フィアンセと再会した一人は、デートを親族から監視されることに嫌気がさして売春宿に駆け込みながら、フィアンセに対しては専制的に服従を要求し、また別の男は、妻の兄を死なせたのは自分に責任があると告白したばかりに村に居れなくなって、最後は妻の弟に射殺されてしまう―。

路(みち)06.JPG 最初の男がやっと故郷に戻ってみると、妻は彼が入獄中に売春した咎で実家に戻され鎖に繋がれていて、しかも、掟により家名を汚した妻を自ら殺さなければならず、彼は妻を背負って山中へ逃げるが、鎖で繋がれていた間パンと水しか与えられていなかった妻は、雪の中で衰弱死する―。

 兄を亡くしゲリラになることを決意した3番目の男には好きな娘がいたが、兄が死に独身の弟がいる場合は、弟は兄嫁と結婚しなければならないというクルドの因習を拒否できない―。

路(みち)07.JPG クルド人の圧政に対する不屈の精神と家族愛、男女愛を描く一方で、クルド人自らが、旧弊な因習により自らを縛っている面もあること如実に示した作品で、本国(クルド社会)内でも評価が割れたのではないかなあ。いや、そもそも、ギュネイ監督の作品は国内上映が禁止されているか(国際的にはカンヌ国際映画祭パルム・ドールを受賞)。

 この作品も獄中から指揮して作ったもの。5人の顔が何となく似ているので(クルド人も皆トルコ髭を生やしている)、初めて観た時は途中で誰が誰だったか分からなくなったりもしたけれど、いろいろ考えさせられる重い映画には違いなく、監督の死が惜しまれます(撮影後、仮出所の際に脱走しフランスで映画を仕上げたが、その2年後に癌で死去)。

路 YOL 1982l5.jpgYol(1982).jpg「路<みち>」●原題:YOL●制作年:1982年●制作国:トルコ/スイス●監督・脚本:ユルマズ・ギュネイ●製作:エディ・ヒュプシュミット/K・L・プルディ●演出:シェリフ・ギョレン●撮影:エルドーアン・エンギン●音楽:セバスチャン・アルゴン/ケンダイ●時間:115分●出演:タルク・アカン/シェリフ・セゼル/ハリル・エルギュン/メラル・オルホンソイ/ネジュメッティン・チュバンオウル/セムラ・ウチャル/ヒクメット・チェリク●日本公開:1985/02●配給/フランス映画社●最初に観た場所:有楽町スバル座(85-10-27) (評価★★★★)
Yol(1982)

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'94年公開の個人的ラスト・アクション・ヒーロー・ムービー「トゥルーライズ」「スピード」。

映画イヤーブック 1995.JPG  スピードdvd1.jpg  トゥルーライズ dvd2.jpg TRUE LIES movie.jpg
映画イヤーブック〈1995〉 (現代教養文庫)』「スピード [DVD]」「トゥルーライズ [DVD]

 1994年劇場公開の全作品(洋画304本、邦画161本、計465本)にデータと解説を付して収録、ビデオ・ムービー、未公開ビデオのデータなども網羅しているほか、『映画イヤーブック』としては5冊目になるということで、全5冊の総索引も付きました。

 本書での最高評価になる「四つ星」作品は、「トゥルー・ロマンス」「シンドラーのリスト」「さらば、わが愛 覇王別姫」「ピアノ・レッスン」「青い凧」「ギルバート・グレイブ」「パルプ・フィクション」「ショート・カッツ」「スピード」の9作品、一方邦画は、「トカレフ」(阪本順治監督)「全身小説家」(原一男監督)「棒の哀しみ」(神代辰巳監督)「忠臣蔵外伝・四谷怪談」(深作欣二監督)の4作品。

 '94年の映画館入場者数は1億2299万人で、それまでの史上最低だったそうで、前年の「ジュラシック・パーク」のような大ヒット作が無かったということもあるようですが、この頃には平成不況による停滞感が定着して、多くの人が、わざわざ映画館まで行かなくともビデオで観ればいいいという感覚になっていたのではないかなあ。

スピードdvd.jpg ハリウッド映画のアクション系で、「ダイ・ハード」('88年)、「氷の微笑」('92年)のカメラマンだったヤン・デ・ボン(「トータル・リコール」「氷の微笑」のポール・バーホーベン監督と同じくオランダ人)の初監督作品「スピード」('94年)が気を吐きました。

「スピード」('94年).jpg 時速を80キロ以下に落とすと爆発する爆弾を仕掛けたバスの疾走が迫力満点のノンストップアクションで、バスが街中を車をはじき飛ばしながら爆走したり、キアヌ・リーブスが爆弾を解除するために高速で走るバスの下にもぐりこむシーン、或いは、地下鉄の車両が工事現場を破壊しながら地上に突き抜けるシーンなどは実写中心であるため見応えはありました。

スピード01.jpgスピード.jpg 脚本を書いたグレアム・ヨストは、 アンドレイ・コンチャロフスキー監督の「暴走機関車」('86年/米)の原案である黒澤明のオリジナル脚本を読んで着想を得たと述懐していますが、その脚本もまずまずではないでしょうか。但し、脚本を含めてよく出来ていた「ダイ・ハード」と比べるのと、トータルではやや落ちるか。キアヌ・リーブス、サンドラ・ブロック共に頑張っているけれど、爆弾魔のデニス・ホッパー(1936-2010)は、クイズ好きのオタクみたいで、それほど凄味がないような....。デニス・ホッパーということで、期待し過ぎてしまったのかもしれませんが(結局、大掛かりなアクションで見せる映画だった。元々の狙いも概ねそうだとは思うが)。

speed 2s.jpgスピード2  05.jpg ということで、個人的にはヤン・デ・ボン監督には次に期待、というところだったのですが、その続編「スピード2」('97年/米)であっさりコケてしまった感じでした(既に同年の「ツイスター」('97年/米)を観れば、この監督の力量の限度は窺い知れたのだが。因みに、竜巻パニックスピード2 dvd.jpg映画「ツィスター」はアメリカではそこそこヒットしたらしい。アメリカ人にとって竜巻は身近な恐怖なのだろう)。「スピード2」は舞台を大型客船に移したことで、看板の〈スピード〉感は無くなり、サンドラ・ブロック演じるヒロインは残りましたがキアヌ・リーブスは出演しておらず、代わりにジェイソン・パトリックが出演していましたが地味で、敵役のウィレム・デフォーの方がむしろ頑張ってはいましたが、それでもデニス・ホッパーに比べるとやはり格下感は否めなかったでしょうか。話の展開にも〈スピード〉感は感じられなかった...(いずれにせよ、キアヌ・リーブスとデニス・ホッパーがいないというのはロスト感が大きい)。
スピード2 [DVD]

トゥルーライズ dvd.jpg 「スピード」の「四つ星」評価に対し、本書で星3つの評価となっている「ターミネーター」シリーズのジェームズ・キャメロンが監督した「トゥルーライズ」('94年)の方が、ユーモアの要素があって個人的な評価はやや上になります。

トゥルーライズ1.jpg アガサ・クリスティの「おしどり探偵」シリーズの現代アクション版みたいで、アーノルド・シュワルツェネッガーはコメディも充分にこなすし、スタント無しのジェイミー・リー・カーティスも良かったです(アクションでもそれ以外でも身体を張った演技をしていたなあ)。

トゥルーライズ jlカーチス.jpg カーチェイスの場面で実際に橋を爆破したというのもスゴいですが、一方で、シュワちゃんがゴールデン・ゲート・ブリッジにしがみつくシーンやハリヤー・ジェット機上でのテロリストとの"生身"のバトルシーンなど、デジタル合成のSFXをふんだんに使っています。

 アクション・シーンをCGで撮るというのは「バットマン リターンズ」('92年)あたりがハシリだそうですが、米国の俳優協会ではその頃から、役者自身がアクションを演じる場面が無くなってしまうということで問題視され始めていたようです。「バットマン リターンズ」の中には、一旦CGで撮ったものを、俳優協会からの要請で俳優やスタントマンを使ったものに撮り直した場面があります(高い所から飛び降りたバットマンが地面に着地するシーンなど)。

トゥルーライズ2.jpg 「トゥルーライズ」ではそのほかに、ハリヤー・ジェット機の熱で空気が揺らぐシーンなどにもデジタル・ドメイン社が開発したCGが初めて使われていて、この技術は「アポロ13」('95年)のロケット発射シーンなどにも使われました(ジェームズ・キャメロンはデジタル・ドメイン社の初代共同経営者)。

 シュワルツェネッガーは、この作品の前年に「ラスト・アクション・ヒーロー」('93年)を製作総指揮しており(主演もシュワルツェネッガー)、もう生身の肉体を使ってのアクションは終わりだなという意識はこの頃からあったのではないかなあ。その前の作品が、それこそCGで描かれる敵と戦う「ターミネーター2」('91年)だったし(これもジェームズ・キャメロン監督)。

 個人的には、「トゥルーライズ」が(すでにCGがいっぱい使われてはいるけれども)自分の中での"ラスト・アクション・ヒーロー"ムービーという印象で、「スピード」も、キアヌ・リーブスの次のヒット作「マトリックス」('99年)がアクションシーンをCG主体で構成していたことを考えると、同じことが言えるかも。
 
SPEED 1994.jpgスピード02.jpg「スピード」●原題:SPEED●制作年:1994年●制作国:アメリカ●監督:ヤン・デ・ボン●製作:マーク・ゴードン●脚本:ランダル・マコーミック/ジェフ・ナサンソン●撮影:アンジェイ・バートコウィアク●音楽:マーク・マンシーナ/ビリー・アイドル●時間:115分●出演:キアヌ・リーブス/デニス・ホッパー/サンドラ・ブロック/ジョー・モートン/ジェフ・ダニエルズ/アラン・ラック●日本公開:1994/12●配給:20世紀フォックス映画●最初に観た場所:有楽町・日本劇場(94-12-17)(評価:★★★☆)
SPEED-1994 -On set / Keanu Reeves|Sandra Bullock

speed 2es.jpgスピード2 01.jpg「スピード2」●原題:SPEED:CRUISE CONTROL●制作年:1997年●制作国:アメリカ●監督:ヤン・デ・ボン●製作:マーク・ゴードン●脚本:グレアム・ヨスト●撮影:ジャック・N・グリーン●音楽:マーク・マンシーナ●時間:121分●出演:サンドラ・ブロック/ジェイソン・パトリック/ウィレム・デフォー/テムエラ・モリソン/ブライアン・マッカーディー/グレン・プラマー/コリーン・キャンプ/ロイス・チャイルズ/マイケル・G・ハガーティー/ボー・スヴェンソン/フランシス・ギナン/ジェレミー・ホッツ●日本公開:1997/08●配給:20世紀フォックス映画(評価:★★☆)

「トゥルーライズ」.jpgトゥルーライズ01.jpg「トゥルーライズ」●原題:TRUE LIES●制作年:1994年●制作国:アメリカ●監督・脚本:ジェームズ・キャメロン●製作:ジェームズ・キャメロン/ステファニー・オースティン●オリジナル脚本:クロード・ジディ/シモン・ミシェル/ディディエ・カミンカ●撮影:ラッセル・カーペンター●音楽:ブラッド・フィーデル●時間:144分●出演:アーノルド・シュワルツェネッガー/ジェイミー・リー・カーティス/トム・アーノルド/アート・マリック/チャールトン・ヘストン●日本公開:1994/09●配給:日本ヘラルド映画●最初に観た場所:有楽町・日本劇場(94-09-25)(評価:★★★★)

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'92年公開作品はバブル崩壊"効果"? ちょっと変わった感じの映画が目立った年。

映画イヤーブック 1993.jpg   バートン・フィンク vhs1.jpg フライド・グリーン・トマト vhs.jpg
映画イヤーブック〈1993〉 (現代教養文庫)』/「バートン・フィンク」(VHS)/「フライド・グリーン・トマト」(VHS)  

プリティ・リーグ dvd.jpg 1992年に公開された洋画317本、邦画133本、計450本の全作品データと解説を収録していますが、この数字、本書の前年版によれば、前年の1991年に劇場公開された洋画は413本、邦画は151本、計564本となっていましたから、前年の2割減(洋画は2割5分減)ということになり、バブル崩壊の影響がこの辺りにも出たなあと。

 本書での最高評価になる「四つ星」作品は、「バートン・フィンク」「JFK」「美しき諍い女」「フライド・グリーン・トマト」「仕立て屋の恋」「プリティ・リーグ」など10作品、邦画は、「シコふんじゃった。」「いつかギラギラする日」「青春デンデケデケデケ」など4作品とやや寂しいか。
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バートン・フィンク0.jpg 結局、邦画界は1月に公開された周防正行監督の「シコふんじゃった。」がその年の映画賞を総ナメした形になりましたが、これ、意外と穴だったと言うか、実際に面白く(個人的にもこの年のナンバー1作品。但し、これだけ賞を獲ると、日本映画は他にいい作品がないのかという気も)、一方、洋画も例年の大作とは一味違ったものがじわじわ人気を呼んだりして、その典型がジョエル・コーエン監督の「バートン・フィンク」('91年/米)ではなかったでしょうか。

バートン・フィンク1.jpg 1941年、場末の安ホテルに籠って脚本を書いていた劇作家バートン・フィンク(ジョン・タトゥーロ)は、隣室のセールス男メドウズ(ジョン・グッドマン)と親しくなるが、フィンク自身は脚本が書けなくなるスランプに陥り、更には自分の部屋で殺人事件が起きて、メドウズが死体を片付けてくれたものの、彼は完全に神経症に陥る―。

 幾つもの解釈ができる面白い作品で、結局、フィンク自身が現実と空想の区別がつかなくなっているようです。ラストのホテルの部屋の壁に架かった絵画のアップが1つの謎解きと言えるかも(バートン・フィンクのモデルはフォークナーだそうだ)
 カンヌ映画祭で史上初の三冠(グランプリ・監督賞・主演男優賞)を成し遂げた作品とのことで、ストーリーの巧さもあるけれども、脚本執筆という創造の苦しみが描かれているのが、同業者の共感を呼んだ?

フライド・グリーン・トマト1.jpg もう一つ、同じく'92年公開のジョン・アヴネット監督の「フライド・グリーン・トマト」('91年/米)は、「ドライビング・ミス・デージー」のジェシカ・タンディが演じる元カフェ経営者の昔話を、「ミザリー」のキャシー・ベイツ演じる夫に愛想をつかされた女性が聴くという展開でしたが(アカデミー主演賞女優同士!)、ジェシカ婆さんが淡々と語る話の内容が、ある種、女性たちの人間として生きる権利を求めての闘いの軌跡というか、感動ストーリーでありながらも、合間に入るエピソードがグリム童話みたいに残酷(猟奇的)だったりして、この取り合わせの妙が何とも言えない作品でした。
    
プリティ・リーグ 2.png 女流監督ペニー・マーシャルが「レナードの朝」('90年)の次に撮った「プリティ・リーグ」('91年/米)のあらすじは―、1943年、男たちが戦争に駆り出され、プロ野球閉鎖の危機が訪れる中、全米女子プロ野球リーグが結成され、最強チーム"ピーチズ"のメンバーは、田舎の主婦からホール・ダンサーまで、野球を愛する男顔負けのスーパー・レディースで構成さMadonna A League of Their Own.jpgれていたが、汗と埃にまみれて白球を追う彼女たちの力強く美しい姿には全米が拍手を贈った―という感動もので、一見すると漫画的題材ですが、実話がベースになっているというのはやはり強いなあと。監督役のトム・ハンクスの演技が冴え、痛快スポーツ・ドラマとなっていますが、最後の同窓会的にかつてのメンバーが集う場面は、賛否があるものの個人的には良かったです。スーパースターのマドンナがナインの一員として(エース役のジーナ・デイビスの助演として)しっかり演技しているという点で興味深い作品でもあります。マドンナはハマリ役でした。 

Madonna in A League of Their Own

バートン・フィンク dvd.jpg 好き嫌いが分かれそうな作品もありますが、バブル崩壊"効果"ではないでしょうが、がんがん力で押していくタイプの大作より、こうしたちょっと変わった感じの映画が目立った年でした。

「バートン・フィンク」●原題:BARTON FINK●制作年:1991年●制作国:アメリカ●監督:ジョエル・コーエン●製作:イーサン・コーエン●脚本:ジョエル&イーサン・コーエン●撮影:ロジャー・ディーキンス●音楽:カーター・パウエル●時間:116分●出演:ジョン・タトゥーロ/ジョン・グッドマン/ジュディ・デイヴィス/マイケル・ラーナー/ジョン・マホーニー/トニー・シャルーブ●日本公開:1992/03●配給:KUZUIエンタープライズ(評価:★★★★)
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「フライド・グリーン・トマト」 (91年/米).jpgフライド・グリーン・トマト dvd.jpg「フライド・グリーン・トマト」●原題:FRIED GREEN TOMATO●制作年:1991年●制作国:アメリカ●監督:ジョン・アヴネット●製作:ジョン・アヴネット/ジョーダン・カーナー●脚本:キャロル・ソビエスキー/ファニー・フラッグ●撮影:ジェフリー・シンプソン●音楽:トーマス・ニューマン●原作:ファニー・フラッグ「フライド・グリーン・トマト・アット・ザ・ホイッスル・ストップ・カフェ」●時間:130分●出演:キャシー・ベイツ/ジェシカ・タンディ/メアリー・スチュアート・マスターソン/メアリー=ルイーズ・パーカー/スタン・ショウ/シシリー・タイソン●日本公開:199206●配給:アスキー映画(評価:★★★★)
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プリティ・リーグ [DVD].jpgプリティ・リーグ 1.png「プリティ・リーグ」●原題:A LEAGUE OF THEIR OWN●制作年:1991年●制作国:アメリカ●監督:ペニー・マーシャル●製作:ロバート・グリーンハット/エリオット・アボット●脚本:ババルー・マンデル/ローウェル・ガンツ●撮影:ミロスラフ・オンドリチェク●音楽:ハンス・ジマー●時間:116分●出演:トム・ハンクス/ジーナ・デイヴィス/ マドンナ/ロリー・ペティ/ロージー・オドネル/ジョン・ロビッツ●日本公開:1992/10●配給:コロンビア・トライスター映画社(評価:★★★★)

トム・ハンクス/ジーナ・デイヴィス/ マドンナ

Madonna - 1992 Steven Meisel
Madonna - 1992 Steven Meisel.jpg

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'91年公開作品で個人的◎は「テルマ&ルイーズ」。この年は「ツイン・ピークス」の年だった。

映画イヤーブック 1992 1.JPG映画イヤーブック 1992.jpg  テルマ&ルイーズ dvd.jpg ターミネーター2 dvd.jpg ツイン・ピークス dvd.jpg映画イヤーブック〈1992〉 (現代教養文庫)』「テルマ&ルイーズ (スペシャル・エディション) [DVD]」「ターミネーター2 特別編 [DVD]」「ツイン・ピークス ファーストシーズン [DVD]

 現代教養文庫の『映画イヤーブック』の1992年版で、1991年に劇場公開された洋画413本、邦画151本。計564本のデータを収めるほか、映画祭、映画賞の記録、オリジナル・ビデオムービー、未公開ビデオデータなども網羅しています(付録の部分が充実して、前年版より約50ページ増の470ページに)。

 本書での最高評価になる「四つ星」作品は、「わが心のボルチモア」「ワイルド・アット・ハート」「ニキータ」「マッチ工場の少女」「ダンス・ウィズ・ウルブス」「羊たちの沈黙」「エンジェル・アット・マイ・テーブル」「ターミネーター2」「コルチャック先生」「テルマ&ルイーズ」「真実の瞬間(とき)」「ボイジャー」「髪結いの亭主」「トト・ザ・ヒーロー」など、一方、邦画で四つ星は、大林宣彦監督の「ふたり」、山田洋次監督の「息子」、北野武監督の「あの夏、いちばん静かな海」、竹中直人監督の「無能の人」の4本だけで、分母数が違うけれどこの頃は概ね「洋高邦低」が続いた時期だったのかもしれません。

テルマ&ルイーズ1.bmp 個人的なイチオシは、リドリー・スコット監督の「テルマ&ルイーズ」('91年/米)で、専業主婦のテルマ(ジーナ・デイヴィス)とレストランでウエイトレスとして働く独身女性のルイーズ(スーザン・サランドン)の親友同士が週末旅行に出掛けた先で、自分たちをレイプしようとした男を射殺したことから、転じて逃走劇になるという話。

テルマ&ルイーズ2.bmp リドリー・スコットが女性映画を撮ったという意外性もありましたが、ジーナ・デイヴィスとスーザン・サランドンが、どんどん破局に向かいつつも、その過程においてこれまでの束縛や因習から解放され自由になっていく女性を好演し、彼女ら追いつつも彼女らの心情を理解し、何とか連れ戻したいと思う警部役のハーベイ・カイテルの演技も良かったです(まださほど知られていない頃のブラッド・ピットが、彼女らの金を持ち逃げするヒッチハイカー役で出ていたりもした)。

 逃避行の背景となる西部の大自然を、映像に凝るリドリー・スコット監督らしく美しく撮っていて、最後は何台ものパトカーによりグランドキャニオンの絶壁に2人は追いつめられるのですが、こうなると結末は見えてしまうものの(「明日に向かって撃て!」の現代女性版だね)、からっとした爽快感があって、ある種、日常生活や夫の面倒にかまけ、生きることに飽いている女性の「夢」を描いた作品と言えるかも(アメリカの女性ってそんなに鬱々とした日常を生きているのか?―でも、ある層はそうかもしれないなあ)。


ターミネーター2 01.jpg 「ダンス・ウィズ・ウルブス」といったアカデミー賞受賞作品と並んで「羊たちの沈黙」や「ターミネーター2」が星4つの評価を得ているというのがこの年の特徴でしょうか。

ターミネーター2L.jpg ジェームズ・キャメロン監督の「ターミネーター2」('91年/米)は、形状記憶疑似合金でできたT1000型ターミネーターが登場したものでしたが、この作品の前に「アビス」('89年)を撮り、ずっと後に「アバター」('09年)を撮ることになるターミネーター2 t1000.jpgキャメロン監督らしい特撮CGが冴えていたように思われ、T1000型を演じるロバート・パトリックも、華奢なところがかえって凄味がありました。一方、アーノルド・シュワルツネッガーが演じる旧タイプのT800型ターミネーターを善玉にまわしてヒューマンにした分、前作「ターミネーター」に比べ甘さがあるように思いました(これ、本書において山口猛氏が書いている批評とほぼ同じなのだが、山口氏の評価は星4つ)。

 「ターミネーター」('84年/米・英)はシュワルツネッガーを一気にスターダムに押し上げた作品でしたが、ジェームズ・キャメロン監督にとっても監ターミネーター14.png督デビュー作「殺人魚ターミネーター00.jpgフライング・キラー」(81年)に続く監督2作目であり、彼の出世作と言えます。ジェームズ・キャメロン監督はシュワルツネッガーと1度会食をしただけで、キャリアが浅く当初脇役で出演の予定だった彼をT800型ターミネーター役に抜擢することを決めたそうですが、シュワルツネッガーの全裸での登場シーンから始まって、そのストロングタイプのヒールぶりは今振り返ってもターミネーター    .jpg強烈なインパクトがあったように思います。ただ、この作品の後、「ターミネーター2」との間の7年間の間隔があり(B級映画にありがちだが、版権が複数社に跨っており、続編を撮ろうにも撮れなかった)、その間にターミネーター01.pngシュワルツネッガーは「レッドソニア」「コマンドー」「ゴリラ」「プレデター」「バトルランナー」「レッドブル」「ツインズ」「トータル・リコール」「キンダガートン・コップ」といった作品に主演しており、こうなるともう悪役には戻れない...。特に「ツインズ」や「キンダガートン・コップ」といったコメディもそつなくこなしているのが大きいと思われ、人気面だけでなく演技面でも、「コナン・ザ・グレート」('82/米)でラジー賞の"最低男優賞"になってしまった人とは思えない成長ぶりでした(このことが「ターミネーター2」の"ヒューマンなターミネーター"役につながっていくわけか)。 

ツイン・ピークス1.jpg 因みに、91年は、これも映像表現に特徴のあるデイヴィッド・リンチ監督のテレビ・シリーズ「ツイン・ピークス」のビデオが日本でリリースされた年で、日本中のレンタルビデオ店が「ツイン・ピークス」入荷&予約待ち状態になるという大ブームになりましたが、この作品もある意味「脱日常」的な作品だったなあと(まあ、「Xファイル」にしろ「LOST」にしろ、どれもみんな「脱日常」なのだが)。

ツイン・ピークス2.jpg ビデオ14巻、全29話(パイロット版を含めると30話)、24時間強のサスペンス・ミステリーですが、毎回毎回いつもいいところで終わるので、続きを観るまで禁断症状になるという(あの村上春樹も米国でリアルタイムでハマったという)―ラストは腑に落ちなかったけれども(「えーっ、これが結末?」という感じか)、そのことを割り引いてもテレビ・ムービーの金字塔とツイン・ピークス3.jpg言えるのでは(デイヴィッド・リンチによると、このラストはあくまでも第2シーズンの最終話に過ぎず、「ツイン・ピークス」という物語そのものの結末ではないとのことだが、続編は未だ作られていない)。

 この作品のパイロット版は、もともとTVシリーズの第1話として作られたものですが、ヨーロッパへの輸出用に作られた、それ自体で映画として完結するインターナショナル・ヴァージョンが当時リリースされており、本編の「謎とき」とまではいかないですが、背景の説明としてガイド的役割を果たしています。

ツイン・ピークス ローラ・パーマー最期の7日間.jpg また、'92年に「ツイン・ピークス ローラ・パーマー最期の7日間」という劇場版が作られ、本編との矛盾もあるものの、こちらも本編の解説的役割を果たしています(と言っても、到底一筋縄で解るといったものではないけれど)。

ツイン・ピークス ローラ・パーマー最期の7日間 [DVD]

 TV版の雰囲気をしっかり引き継いでいるし(むしろデイヴィッド・リンチ的な雰囲気はより前面に出ている)、"壊れゆくローラ"を演じたシェリル・リーの演技も悪くない。ある意味、TV版の結末よりも正統派的な展開なのかもしれないけれど、メタファーの大部分が理解不能だったなあ。《ツイン・ピークス・フリークス》と言われる人のサイトを見て、なるほどそういうことなのかと理解した次第(登場人物そのものがメタファーだったりしてるわけだ)。まあ、TVシリーズを最後まで観てから映画を観た方がいいに違いはありません(それでも、よく解らないところが多かったのだが)。

THELMA & LOUISE 2.jpgTHELMA & LOUISE.jpg「テルマ&ルイーズ」●原題:THELMA & LOUISE●制作年:1989年●制作国:アメリカ●監督:リドリー・スコット●製作:リドリー・スコット/ミミ・ポーク●脚本:カーリー・クーリ●撮影:エイドリアン・ビドル●音楽:ハンス・ジマー●時間:129分●出演:スーザン・サランドン/ジーナ・デイヴィス/ハーヴェイ・カイテル/マイケル・マドセン/ブラッド・ピット●日本公開:1991/10●配給:松竹富士(評価:★★★★☆)

ターミネーター2-15.jpg「ターミネーター2」●原題:TERMINATOR2:JUDGMENT DAY●制作年:1991ターミネーター2 02.jpg年●制作国:アメリカ●監督・製作:ジェームズ・キャメロン●脚本ジェームズ・キャメロン/ウィリアム・ウィッシャー●撮影:アダム・グリーンバーグ●音楽:ブラッド・フィーデル●時間:137分(公開版)/154分(完全版)●出演:アーノルド・シュワルツェネッガー/リンダ・ハミルトン/エドワード・ファーロング/ロバート・パトリック/アール・ボーエン/ジョー・モートン/ジャネット・ゴールドスタイン●日本公開:1991/08●配給:東宝東和(評価:★★★)

ターミネーター ps.jpgターミネーター25.jpg「ターミネーター」●原題:THE TERMINATOR●制作年:1984年●制作国:アメリカ/イギリス●監督:ジェームズ・キャメロン●製作:ゲイル・アン・ハード●脚本:ジェームズ・キャメロン/ゲイル・アン・ハードターミネーター03.png●撮影:アダム・グリーンバーグ●音楽:ブラッド・フィーデル●時間:108分●出演:新宿文化シネマ2.jpgアーノルド・シュワルツェネッガー/マイケル・ビーン/リンダ・ハミルトン/ポール・ウィンフィールド/ランス・ヘンリクセン/リック・ロッソヴィッチ/ベス・マータ/ディック・ミラー●日本公開:1985/05●配給:ワーナー・ブラザーズ●最初に観た場所:新宿・文化シネマ2 (85-05-26) (評価:★★★☆)
新宿文化シネマ2 2006(平成18)年9月15日閉館、2006(平成18)年12月9日〜文化シネマ1・4が「新宿ガーデンシネマ1・2」としてオープン(2008(平成20)年6月14日「角川シネマ館」に改称)、文化シネマ2・3が「シネマート新宿1・2」としてオープン

Twin Peaks (1990)
Twin Peaks (1990).jpg
Twin Peaks (ABC 1990).jpgツイン・ピークス.jpg「ツイン・ピークス」 Twin Peaks (ABC 1990/04~1991/06) ○日本での放映チャネル: WOWWOW(1991)
                                   
       
ツイン・ピークス4.bmp
カイル・マクラクラン

「ツイン・ピークス ローラ・パーマー最期の7日間」●原題:TWIN PEAKS THE LUST SEVEN DAYS OF LAURA PALMER(Twin Peaks:Fire Walk With Me)●制作年:1TWIN PEAKS THE LUST SEVEN DAYS OF LAURA PALMER2.jpgTWIN PEAKS THE LUST SEVEN DAYS OF LAURA PALMER.jpg992年●制作国:アメリカ●監督:デイヴィッド・リンチ●製作:グレッグ・ファインバーグ●脚本:デイヴィッド・リンチ/ロバート・エンゲルス●撮影:ロン・ガルシア●音楽:アンジェロ・バダラメンティ●時間:135分●出演:シェリル・リー/レイ・ワイズ/カイル・マクラクラン/デヴィッド・ボウイ/キーファー・サザーランド●日本公開:1992/05●配給:日本ヘラルド映画(評価:★★★?)

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アクション映画としてはよく出来ているが、列車が危険物を積んでいるという実感が無い。

アンストッパブル チラシ.jpg アンストッパブル dvd.jpg UNSTOPPABLE2.jpg 暴走機関車 poster.jpg
「アンストッパブル」チラシ「アンストッパブル[DVD]」クリス・パイン/デンゼル・ワシントン「暴走機関車」poster

アンストッパブル 09.jpg ペンシルバニア州のある操車場に停車中の最新式貨物列車が、整備士の人為的ミスによって無人のまま走り出してしまうが、積荷は大量の化学薬品とディーゼル燃料であることが判明、操車場長のコニー・フーパー(ロザリオ・ドーソン)は極めて深刻な事態が発生アンストッパブル10.jpgしたことを認識し、州警察に緊急配備を依頼する。フランク・バーンズ(デンゼル・ワシントン)と職務経験4ヵ月のその頃、勤続28年のベテラン機関士車掌ウィル・コルソン(クリス・パイン)は、この日初めてコンビを組み、旧式機関車に乗り込み職務に就いていた―。
暴走機関車 [DVD]
暴走機関車 dvd2.jpg暴走機関車 .jpg暴走機関車03.jpg 列車の暴走を扱った映画ということで、アラスカの刑務所から脱獄した男たちが乗った機関車が運転手が心臓発作で亡くなったため暴走する、アンドレ・ミハルコフ=コンチャロフスキー監督、ジョン・ヴォイト主演の「暴走機関車」('85年/米)を想起しましたが(映画の原案は黒澤明だが黒澤は完成した映画を批判している)、こちらは2001年にオハイオ州で実際に発生した貨物列車暴走事故が下敷きになっています。但し、発生場所も含め変更が加えられており、そのため「事実に着想を得た」作品となっていますが、ハリウッド映画にありがちなテロリストやサイコパスの"悪意"による事故ではなく、純粋に人為的ミスの積み重ねで生じたトラブルをモチーフアンストッパブル 1.jpg『アンストッパブル』(2010)2.jpgにしているところに興味を惹かれました(「リスク管理」の教材?この作品の日本初試写会は鉄道高校として有名な東京・上野の岩倉高等学校の体育館で行われ、ゲストにAKB48のメンバーが登場した(2010年11月17日) )。
「アンストッパブル」
アンストッパブル 3.jpg デンゼル・ワシントンは、同じくトニー・スコット監督作品の「サブウェイ123 激突」('09年)でも鉄道員の役を演じていて、前回は運行司令官役でしたが、今回は運転士役。デンゼル・ワシントンが、妻と死別し2人の難しい年頃の娘がいる寡男で会社からは退職勧告を受けていて、クリス・パインの方は、妻の浮気疑惑で離婚争議中のため接近禁止命令が出ている男といった具合に、共に仕事や家庭生活に難点を抱える者同士の組み合わせですが、映画の主役は、劇薬を積んで市街地へ向かって暴走する800メートルの貨物列車でしょうか。

トニー・スコット 「アンストッパブル」.bmpアンストッパブル 2.jpg 鉄道会社の上層部の見通しの甘い事故対応が更に「アンストッパブル」●2.jpg事態を悪化させるといった社会批判も織り交ぜ、また、アクション映画としてもよく出来ているけれども、最初からデンゼル・ワシントン(観ていて安心感あり過ぎ)らが事態を収束するであろうことが見えていて、あまりドキドキしなかった感じも(むしろ、デンゼル・ワシントンは彼自身のアクション・シーンが危なっかしい感じだったけれど、勿論これは演技のうち?)。

恐怖の報酬3.jpg恐怖の報酬.jpg恐怖の報酬1.bmp 街中のカーブで貨物列車が脱線する恐れがあるいうのは確かにスリリングかも知れませんが、列車が危険物を積んでいるという実感が無く、その点は、イヴ・モンタンがニトログリセリンを積んだトラックを運転するアンリ・ジョルジュ・クルーゾーの「恐怖の報酬」('53年/仏)などは上手かったなあ(ラストは「徒然草」の「高名の木登り」を想起した)。
恐怖の報酬
 油田火災を消火するためにニトログリセリンをトラックで運ぶ仕事を請け負った男たちの話ですが、男たちの目の前で石油会社の人間が積み荷であるニトロの一滴を岩の上に垂らしてみせると岩が粉微塵になってしまうという、導入部の演出が効果満点! 一滴だけでもこれだけの威力があるものを、トラックに目一杯積んで、これから危険な山道を走るという...シズル感のあるスリルの演出―どうして、こうした先人たちのテクニックを活かさないのだろう。カメラワーク一つとっても半世紀以上前の作品の方が上であるというのは...。 

ロザリオドーソン.jpgUNSTOPPABLE.jpg 女性操車場長のロザリオ・ドーソンは、リー・ストラスバーグ演劇学校で学んだ演技派で、この作品でも好演(「メン・イン・ブラック2」('02年)の店員役の頃に比べると随分貫禄がついた?)。但し、事故の収束とともに2人の男がヒーローになるのは"予定調和"の内だけれど、それで両者の仕事や家庭問題まで一気に解決されてしまったとなると、"事故様様"みたいな感じもしてしまいました(1人犠牲者が出ている。「危機管理」の観点からももっと反省すべきケースではないか)。
ロザリオ・ドーソン

クリムゾン・タイド01.jpgクリムゾン・タイド02.jpg トニー・スコット監督、デンゼル・ワシントンの組み合わせでは、米軍原子力潜水艦を舞台にした「クリムゾン・タイド」('95年)が傑作でしょうか。
 ロシア起きた超国家主義による反乱に備え出港した弾道ミサイル原子力潜水艦内で、ICBMを発射するかしないかを巡ってエリート艦長の白人と、現場たたき上げの黒人副官が対立するというもので、この映画の出来は、クエンティン・タランティーノ(ノンクレジット)がリライトしたという脚本と艦長役のジーン・ハックマンの好演に負うところが大きいと思うのですが、あの頃のデンゼル・ワシントン、まだ若かったなあ。いつまで「善い者」役ばかりやってるんだろう(シドニー・ポワチエの現代版か)。

「アンストッパブル」●ps.jpgUNSTOPPABLE 2010.jpg「アンストッパブル」●原題:UNSTOPPABLE●制作年:2010年●制作国:アメリカ●監督:トニー・スコット●製作:ジュリー・ヨーン/トニー・スコット/ミミ・ロジャース/エリック・アンストッパブル 岩倉高校.jpgマクレオド/アレックス・ヤング●脚本:マーク・ボンバック●撮影:ベン・セレシン●音楽:ハリー・グレッグソン=ウィリアムズ●時間:98分●出演:デンゼル・ワシントン/クリス・パイン/ロザリオ・ドーソン/ケヴィン・ダン/イーサン・サプリー/T・J・ミラー/リュー・テンプル/ジェシー・シュラム/ケヴィン・チャップマン/ケヴィン・コリガン/デヴィッド・ウォーショフスキー●日本公開:2011/01●配給:20世紀フォックス(評価:★★★) 東京・上野の岩倉高等学校での公開記念イベント(AKB48高橋みなみ、渡辺麻友、宮澤佐江)
暴走機関車 [DVD]
暴走機関車 dvd1.jpg暴走機関車 02.jpg暴走機関車 01.jpg「暴走機関車」●原題:RUNAWAY TRAIN●制作年:1985年●制作国:アメリカ●監督:アンドレ・ミハルコフ=コンチャロフスキー●製暴走機関車 チラシ.jpg作:ヨーラン・グローバス/メナハム・ゴーラン●脚本:ジョルジェ・ミリチェヴィク/ポール・ジンデル/エドワード・バンカート●撮影:アラン・ヒューム●音楽:トレヴァー・ジョーンズ●原案:黒澤明/菊島隆三(ノンクレジット)/小國英雄(ノンクレジット)●時間:111分●出演:ジョン・ヴォイト/エリック・ロバーツ/レベッカ・デモーネイ/カイル・T・ヘフナー/ジョン・P・ライアン/ケネス・マクミラン/T・K・カーター/ステイシー・ビックレン/エドワード・バンカー/ダニー・トレホ●日本公開:1986/06●配給:松竹富士●最初に観た場所:有楽町・丸ノ内ピカデリー1(86-06-29)(評価:★★☆) 「暴走機関車」チラシ

LE SALAIRE DELA PEUR.jpg恐怖の報酬3.jpg「恐怖の報酬」●原題:LE SALAIRE DELA PEUR●制作年:1953年●制作国:フランス●監督・脚本:アンリ・ジョルジュ・クルーゾー●撮影:アルマン・ティラール●音楽:ジョルジュ・オーリック●原作:ジョルジュ・アルノー●時間:131分●出演:イヴ・モンタン/シャルル・ヴァネル/ヴェラ・クルーゾー/フォルコ・ルリ●日本公開:1954/07●配給:東和●最初に観た場所:新宿アートビレッジ (79-02-10)(評価:★★★★)●併映:「死刑台のエレベーター」(ルイ・マル)  

クリムゾン・タイド dvd.jpg「クリムゾン・タイド」●原題:CRIMSON TIDE●制作年:1995年●制作国:アメリカ●監督:トニー・スコット●製作:ドン・シンプソン/ジェリー・ブラッカイマー●脚本マイケル・シファー(原案・脚色)/リチャード・P・ヘンリック(原案)/クエンティン・タランティーノ (リライト、クレCRIMSON TIDE.jpgジットなし)●撮影:ダリウス・ウォルスキー●音楽:ハンス・ジマー●時間:116分●出演:デンゼル・ワシントン/ジーン・ハックマン/ジョージ・ズンザ/ヴィゴ・モーテンセン/ジェームズ・ガンドルフィーニ/リロ・ブランカート.Jr/ダニー・ヌッチ/スティーヴ・ザーン/リッキー・シュローダー/ロッキー・キャロル/ヴァネッサ・ベル・キャロウェイ●日本公開:1995/10●配給:ブエナ・ビスタ(評価:★★★★)
クリムゾン・タイド [DVD]

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地上で繰り広げられるドタバタ劇はともかく、宇宙怪獣ドゴラはなかなかいい。若林映子も...。

宇宙大怪獣ドゴラ.jpg ドゴラ vhs.jpg 宇宙大~4.JPG  007は二度死ぬ ps.jpg 若林映子.jpg
ポスター/「宇宙大怪獣 ドゴラ [VHS]」「宇宙大怪獣ドゴラ [DVD]」「007は二度死ぬ [DVD]」/若林映子(あきこ)

宇宙大怪獣 ドゴラ ポスター.jpg  日本上空を周回中のテレビ中継衛星が突然消え、時を同じくして世界各国の宝石店が襲われて多量のダイヤモンドが盗まれる事件が頻発し、警視庁は宝石強盗団一味の仕業として捜査を開始、警視庁の駒井刑事(夏木陽介)は、ダイヤの研究を行なっている宗方博士(中村伸郎)のもとを訪れるが、マークという謎の外国人(ダン・ユマ)に襲撃されてダイヤを奪われ、そのマークも強盗団にダイヤを奪われる。一方の強盗団も、盗んだダイヤを積んだトラックが突如浮遊して落下するという異常事態に見舞われる―。

宇宙怪獣ドゴラ2.jpg 1960年代半ばの東宝映画は、「ゴジラ」シリーズの全盛期でしたが、この頃東宝はゴジラを主役にした映画ばかりではなく、こんなのも撮っていました。こんなのと言ってもどう言えば良いのか。クラゲのお化けみたいな巨大宇宙生物が出てくる作品です。

 この巨大クラゲ、エネルギー補給のために炭素を必要とし、そのためダイヤや石炭を地上から吸い上げるようにして補給するということで、この「ドゴラ」と命名された巨大クラゲが、ボタ山から石炭を吸い上げるシーンはなかなか見応えがあります(今観れば、水槽に落とした黒い粉末の塊が拡散していく様を、逆モーションで撮っていたのが分かるが、それにしても大した創意工夫)。

宇宙大怪獣ドゴラ  サントラ.jpg宇宙第怪獣ドゴラ 若戸大橋.jpg クラゲの全体像がなかなか見えないのもイマジネーションを駆りたてるし、実はこのクラゲ、ビニール製だそうですが、CGの無い時代にジェームズ・キャメロンの「アビス」('89年/米)顔負けの映像作りをしているなあと感心しました(「ドゴラ」の原案イメージは小松崎茂)。
宇宙大怪獣ドゴラ」サントラ

 映画公開の前年に完成したばかりの「東洋一の吊り橋」若戸大橋を破壊するなど、その"活躍"は派手ですが、結局、終盤になっても、ドゴラがあまり画面に出てこなかったのがやや残念か。

ドゴラ 若林.jpg 映画の大部分は、地上で繰り広げられる警察と強盗団のダイヤ争奪・奪回戦に費やされ、盗んだのがダイヤだと思ったら氷砂糖だったとか、ドタバタ喜劇調でもあります。主演の夏木陽介や、3年後に「007は二度死ぬ」('67年)でボンドガールとなる若林映子(あきこ)(警官をして「動くベッド」と言わしめる妖艶さ)などの演技陣は真剣に演じているのですが...。

Uchû daikaijû Dogora(1964).jpg宇宙大怪獣ドゴラ.jpg 今観ると、ストーリー映画としては星3つに届くか届かないですが、ドゴラだけはなかなかいいと思います。この作品を最初に観たのは学校の「課外授業」としてで、併映は家城巳代治監督、池田秀一主演の「路傍の石」('64年/東映)でしたが、その後の授業で感想文を書けと言われて「路傍の石」ではなく「ドゴラ」の方の感想文を書きました。 
Uchû daikaijû Dogora(1964)
 特撮映画としてもユニークだし、スタジオセット撮影と併せて実際に筑豊産炭地区でもロケをしているため、石炭産業華やかなりし頃の当地の様子や石炭積出港であった若松港の様子を収めた貴重な記録映像としても鑑賞できます。
007は二度死ぬ ニューオータニ.jpg007は二度死ぬ チラシ.jpg 因みに、「007は二度死ぬ」('67年)も、そのロケ地は都内では旧蔵前国技館、銀座四丁目交差点、ホテルニューオータニなど、地方では神戸港、 姫路城、鹿児島県坊津町などに及び、昭和40年代前半の日本各所の風景を映し出しているという点では貴重かもしれません。

若林 映子(あきこ)
「宇宙大怪獣ドゴラ」若林映子.jpg若林映子5.jpgドゴラ 夏木.jpg「宇宙大怪獣ドゴラ」●制作年:1964年●監督:本多猪四郎●特撮監督:円谷英二●製作:田中友幸/田実泰dogora 中村・藤田.jpg良●脚本:関沢新一●撮影:小泉一●音楽:伊福部昭●時間:81分●出演:夏木陽介/ダン・ユマ/小泉博/藤山陽子/若林映子藤田進中村伸郎/河津清三郎/田島義文/天本英世/田崎潤/加藤春哉/桐野洋雄/若松明/篠原正記/堤康久/岩本弘司/津田光男/熊谷卓三/当銀長太郎/広瀬正一/中山豊/上村幸之●公開:1964/08●配給:東宝 (評価:★★★☆)●併映:「路傍の石」(家城巳代治)

ドゴラ vhs.jpg

007は二度死ぬ 若林映子.jpg「007は二度死ぬ」●原題:YOU ONLY LIVE TWICE」●制作年:1967年●監督:ルイス・ギルバート●製作:ハリー・サルツマン/アルバート・R・ブロッコリ●脚本:ロアルド・ダール●撮影:フレディ・ヤング●主題歌:You Only Live Twice(唄:ナンシー・シナトラ)●原作:イアン・フレミング●時間:117分●出演:ショーン・コネリー/丹波哲郎/若林映子/浜美枝/ドナルド・プレザンス/島田テル/ カリン・ドール/チャールズ・グレイ/ツァイ・チン/ロイス・マクスウェル/デスモンド・リュウェリン/バーナード・リー●公開:1967/06●配給:ユナイテッド・アーティスツ (評価:★★★☆)
007は二度死ぬ」 若林映子

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思っていた以上に良かった「トゥームストーン」。ちょっと長過ぎる「ワイアット・アープ」。

トゥームストーン ポスター.jpg TOMBSTONE movie 1993.jpg トゥームストーン dvd.jpg   ワイアット・アープdvd.jpg

「トゥームストーン」ポスター/「トゥームストーン [DVD]」/「ワイアット・アープ 特別版 〈2枚組〉 [DVD]

トゥームストーン1.jpg トゥームストーンへ平穏な暮らしを求めやって来た元保安官のワイアット・アープ(カート・ラッセル)は、町がクラントン兄弟や凄腕のガンマン、ジョニー・リンゴ(マイケル・ビーン)らカウボーイズと名乗る無法者集団に牛耳られていることを知る。ワイアットは旧友ドク・ホリデイ(ヴァル・キルマー)と再会したが、彼は結核に冒されていて、恋人のケイト(ジョアンナ・パクラ)が彼の生き方を全うさせようと寄り添っている。一方ワイアットは、舞台女優のジョセフィーヌ(ダナ・デラニー)と知り合う。カウボーイズの無法ぶりを抑Tombstone(1993).jpgえようと、ワイアットの兄と弟は保安官となり、アープ兄弟は一味からOKコラルでの決闘を申し込まれるが、ドクの加勢を得て勝利する。しかし、敵の報復により兄が重体に、弟が殺されるに及んで、ワイアットは再び保安官のバッジを付け、ドクと共に立ち上がる―。

 「トゥームストーン」('93年/米)の監督は「ランボー 怒りの脱出」のジョージ・P・コスマトスで、あまり期待していなかったけれども、観てみたら思っていた以上に良かった作品。史実に忠実に作られているとのことで、僅か約2分間のことだったというOKコラルでの決闘を、実際の時間通りに描いているほか、服装や小道具なども丁寧に再現しているようですが、何といっても初めて知ったのは、カウボーイズ一味との銃撃戦は1回ではなかったということでした。
Tombstone(1993)

トゥームストーン ヴァル・キルマー.jpg この作品でみると、敵役のリンゴなどはワイアット・アープの手に余る相手で、ワイアットを助太刀したのがドグ・ホリディという構図になっているのが興味深いです(一番の拳銃使いはドグ・ホリディということか)。

Val Kilmer (Doc Holliday) in Tombstone (1993)

 最初はワイアット・アープ(カート・ラッセル)もドグ・ホリディ(ヴァル・キルマー)もちょっと線が細いかなと思いましたが、2人の心の交流やものの考え方を丁寧に描いて成功しているように思われ、娯楽映画としてもテンポ良く、アープらに宿を提供する牧場主の役でチャールトン・ヘストンが出演していたりします(現時点['11年3月]でDVDが廃盤になっているのが惜しい)。


ワイアット・アープ コスナー.jpg 同じ頃に公開された「ワイアット・アープ」('94年/米)は、「シルバラード」のローレンス・カスダン監督ということで期待しましたが、こちらは完全にケヴィン・コスナーの映画という感じ。やりたかったんだろうなあ、この役を。

Kevin Costner in Wyatt Earp (1994)

ワイアット・アープ デニス・クエイド.bmp こちらも「史実に忠実」が謳い文句で、同じくOKコラルの決闘の後にもう一度、ワイアット・アープ(ケヴィン・コスナー)とドグ・ホリディ(デニス・クエイド)はカウボーイズ一味を相手にワイアットの弟の弔い合戦をやっています。

 デニス・クエイドのワイアット・アープは、ヴァル・キルマーより更に線が細い、というより病的。事実、結核病みだったから、リアルと言えばリアルなのかも(自分の頭の中にある「荒野の決闘」のヴィクター・マチュアのイメージが強すぎるのか。何せ、「サムソンとデリラ」のサムソンをやった役者だったからなあ)。

 3時間11分の大作になっているのは、ワイアット・アープの生涯を通しで描いているためで、若い頃に身重の妻を病気で喪って酒浸りの日々を送り、馬泥棒で留置所に入れられたりもしたのだなあと(よくぞ立ち直った)。

 但し、決闘に至るまでがあまりに長く(これはある種「伝記映画」か?)、ケヴィン・コスナーの熱演(?)にもかかわらず(コスナーはこの作品で「ゴールデン・ラズベリー賞」の最低主演男優賞を受賞している)冗長な感は否めませんでした(この人が製作に関わった作品は、長尺になる傾向がある。カットするのが惜しい?)。

「トゥームストーン」('93年/米).jpg「トゥームストーン」●原題:TOMBSTONE●制作年:1993年●制作国:アメリカ●監督:ジョージ・P・コスマトス●製作:ジェームズ・ジャックス/ショーン・ダニエル/ボブ・ミシオロウスキ●脚本:ケヴィン・ジャール●撮影:ウィリアム・A・フレイカー●音楽:ブルース・ブロートン●時間:130分●出演:カート・ラッセル/ヴァル・キルマー/サム・エリオット/ビル・パクストン/ダナ・デラニー/ジョアナ・パクラ/パワーズ・ブース/マイケル・ビーン/チャールトン・ヘストン/ジェイソン・プリーストリー/マイケル・ルーカー/ビリー・ゼーン/ロバート・ミッチャム●日本公開:1994/05●配給:東宝東和(評価:★★★★)

Wyatt Earp(1994)     ジーン・ハックマン
Wyatt Earp(1994).jpgワイアット・アープ ジーン・ハックマン.jpg「ワイアット・アープ」●原題:WYATT EARP●制作年:1994年●制作国:アメリカ●監督:ローレンス・カスダン●製作:ケヴィン・コスナー/ ジム・ウィルソン/ローレンス・カスダン●脚本: ローレンス・カスダン/ダン・ゴードン●撮影:オーウェン・ロイズマン●音楽:楽:ジェームズ・ニュートン・ハワード●時間:191分●出演:ケヴィン・コスナー/デニス・クエイド/ジーン・ハックマン/イザベラ・ロッセリーニ/マイケル・マドセン/デヴィッド・アンドリュース/リンデン・アシュビー/トム・サイズモア/ビル・プルマン/マーク・ハーモン/ジェフ・フェイヒー/アダム・ボールドウィン/アナベス・ギッシュ/メア・ウィニンガム/ジョアンナ・ゴーイング/キャサリン・オハラ/ジョベス・ウィリアムズ/アリソン・エリオット/ベティ・バックリー/ジェームズ・カヴィーゼル/ランドル・メル/レックス・リン/ルイス・スミス/トッド・アレン●日本公開:1994/07●配給:ワーナー・ブラザース映画(評価:★★★)

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「集団主人公」映画。「アメリカン・アイドル」の地方予選を想起させる「ナッシュビル」。

グランドホテル(GRAND HOTEL)パンフレット.jpg
ナッシュビル Nashville.jpg ナッシュビル チラシ.jpg   グランド・ホテル ポスター.jpg
Nashville [DVD] [Import]」(輸入盤)/チラシ  「グランド・ホテル[DVD]」/「グランド・ホテル」米国版パンフレット(1932)

ナッシュビル 映画.jpg カントリー音楽のメッカ、ナッシュビルで、ある大統領候補のキャンペーンのためにコナッシュビル 1場面.jpgンサートが行われる準備が進められていて、町には、イベント関係者や働き口を求める者、野次馬、音楽ファンなど、多くの人間が集まってきていた。その中には、自分がカントリー歌手であることに疑問を感じている黒人や、芸能界で生きることを夢見る運転手、歌手希望の音痴のウエイトレス、家出してきたノイローゼ青年、カントリー歌手になりたくて田舎の農家の夫から逃れきた女など、様々な人間がいた―。

 ロバート・アルトマン(Robert Altman、1925-2006)監督の1975年の作品で(Nashville)、主人公が24人もいるという所謂「グランド・ホテル」形式の映画ですが、最初に観た時はむしろ、「主人公がいない映画」という印象だったように思います。

グランドホテル オールキャスト.jpg エドマンド・グールディング監督の元祖「グランド・ホテル」('32年/米)を後に観ましたが、ベルリンの一流ホテルのそれぞれの部屋で1日の間に起きる人間ドラマを描いた映画で、旧い映画のわりには面白かったです。
 但し、この"元祖"作品よりも、新「グランド・ホテル」形式とも言われた「ナッシュビル」の方がより面白かったと言うか、インパクトありました。

マンハッタン乗換駅.jpg こうした試みは、文学では既に先行して行われていて、例えば、ジョン・ドス=パソスが1925年に発表した『マンハッタン乗換駅(Manhattan Transfer)』(中央公論社「世界の文学36」)は、ニューヨークの一画に住み、同じ乗換駅を利用する何人もの人々の、彼らの意識を1つ1つ切り取るように描いた作品ですが、これもある種「グランド・ホテル」的形式と言えるのではないでしょうか(コーラスグループ「マンハッタン・トランスファー」の名は、この小説に由来する。「マンハッタン乗換駅」とは要するに「グランド・セントラル駅」なのだが)。

『グランド・ホテル』.jpg 「グランド・ホテル」は、オーストリアの作家ヴィッキー・バウム(Vicki Baum、1888-1960)の小説『ホテルの人びと』を、アメリカで舞台化した戯曲に基づき映画化したもので、バウムはこの小説を書くために実際にホテルでメイド(客室係)として働いたそうな(実際にあった有名企業経営者と速記者とのスキャンダルがストーリーに使われているが、ホテル従業員としての守秘義務違反にならないのか?)。映画はアカデミー作品賞(第5回)を受賞しましたが、作品賞でしか候補に挙がらずに受賞を果たした珍しいケースです(主演○○賞とか言われても、誰が主演で誰が助演なのか判別しにいくいとうのもあるのか)。
ジョーン・クロフォード & ウォーレス・ビアリー in 「グランド・ホテル」

 映画化作品の出演者には有名スターが名を連ねていて、彼らが演じている役柄が中心的登場人物ということになり、こっちの方は「集団」と言うより「複数主人公」というイメージに近いかも。その中でもグレタ・ガルボとジョーン・クロフォードが目を引きますが、今思い起こしても、"共演"していたという印象はあまりないです(その辺りが、まさに「グランド・ホテル」形式と言えるかもしれないが)。
Joan Crawford
ジョーン・クロフォード.jpg これ、実は、『淀川長治究極の映画ベスト100』('03年/河出文庫)によれば、撮影初日、ホテルのセットが出来上がって、ガルボが一段高い所に立っていた、そこにクロフォードが入ってきて、ガルボの所へ行って「お早うございます」と言ったら、ガルボは上から見下ろして、「ご苦労さん」と言ったもので、クロフォードはかんかんに怒って、「私だって主役よ。何がご苦労さんなの。絶対にこんな映画になんか出ません」淀川長治究極の映画ベスト100_1.jpgと言い出す騒ぎになり、それで二人が一緒に映る場面がこの映画には無いそうです(クロフォードはこの悔しさから、ハリウッドの第一級プロデューサーのサミュエル・ゴールドウィンに泣きついて、生涯最高の作品に出演させて欲しいと頼み込み、そこでゴールドウィンはサマセット・モームの小説の映画化作品「」('32年/米)の主演の娼婦の役を与えたとのこと)。
淀川長治 究極の映画ベスト100 (河出文庫)
 
Nashville (1975).jpg 一方、「ナッシュビル」はどのようにして作られたかと言うと、アルトマン監督がスタッフをナッシュビルに滞在させて毎日日記を書かせ、それを繋ぎ合せてストーリーを作り上げたのだそうで、ナッシュビルでの撮影期間中も、スタッフやキャストは全員同じモーテルに泊まっていたそうです(出演者のギャラは均一だった)。

 そのためか、観ていてアドリブ感があると言うか、撮りながら作り、作りながら撮っていったという感じがします(カレン・ブラックが"カントリーの女王"という役どころで自作の歌を歌うなど)。
アメリカン・アイドル.bmp 当時としては抜きん出て有名なスター俳優は(カメオ出演以外は)使っていないということもあって(当時無名で、後に有名になる役者も多く出ているが)、結果として「集団主人公」という映画の特質がよく出ているように思いました。

 アルトマンは「M★A★S★H マッシュ」('70年/米)の監督でもあり、ある意味、ベトナム戦争終結当時の「病めるアメリカ社会」の断片像ともとれますが、オーデション歌番組「アメリカン・アイドル」の地方予選などは、いまだにこの「ナッシュビル」とう映画の雰囲気と重なる部分があるような気もします。

M★A★S★H マッシュ ポスター.jpg★A★S★H マッシュ 3.jpg 「M★A★S★H」は、朝鮮戦争を舞台にしたブラック・コメディで、野戦病院(マッシュ)に派遣されたドナルド・サザーランド、エリオット・グールド、トム・スケリット演じる3人の医師が、軍規を無視して婦長の尻を追いかけたり、女性将校(サリー・ケラーマン)をからかったりとやりたい放題をやる話。でも、この3人、実は「M☆A☆S☆H」.jpg極めて優秀な外科医であって、負傷して血だらけの患者を面白可笑しく冗談を言いながら手術するけれど、結局は治してしまうし、いたずらや悪事を企んだりはするけれど、人情味もあるということで、ちょっと憎めない...コメディ部分にもやや毒気のある鬼才ロバート・アルトマンらしい作品でしたが(1970年の第23回カンヌ国際映画祭でグランプリ受賞)、個人的には「ナッシュビル」の方がやや上でしょうか(「ナッシュビル」は全米映画批評家協会賞・作品賞&監督賞受賞)。両作品について言えることですが、アルトマンの社会批判精神はストレートな表され方をするのはでなく、ユーモアを介するなどして屈折した形で表現されるので、背景が掴めていないと、ただ面白かったで終わってしまうこともあるかもしれません(その面白さにもクセがあって、人や作品によって評価が分かれるが)。
Nashville(1975)
Nashville(1975).jpg「ナッシュビル」●原題:NASHVILLE●制作年:1975年●制作国:アメリカ●監督・製作:ロバート・アルトマン●脚本:ジョーン・テューケスベリー●撮影:ポール・ローマン●音楽:リチャード・バスキン/キース・キャラダイン●時間:160分●出演:ヘンリー・ギブソン/カレン・ブラック/アレン・ガーフィールド/ネッド・ビーティー/マイケル・マーフィー/ジェフ・ゴールドブラム/リリー・トムリン/ジェラルディン・チャップリン/キース・キャラダイン/ロニー・ブレイクリー/グウェン・ウェルズ/バーバラ・ハリス/スコット・グレン/エリオット・グールド/ジュディー・クリスティー/デイヴィッド・アーキン/バーバラ・バクスレイ/ティモシー・ブラウン/ロバート・ドキ/シェリー・デュヴァル/アラン・ニコルズ/デイヴィッド・ピール/バート・レムゼン/キーナン・ウィン●日本公開:1976/04●配給:パラマウント映画=CIC●最初に観た場所:新宿西口・新宿(西口)パレス(78-02-08)(評新宿西口パレス3.jpg新宿三葉ビル.bmp価:★★★★)●併映:「バーブラ・ストライサンド スター誕生」(フランク・ピアスン) 

新宿(西口)パレス 新宿西口小田急ハルクそば「新宿三葉ビル(三葉興行ビル(現・三葉興業本社ビル))」内。1986(昭和61)年11月閉館。


有楽座(旧)3.bmpみゆき座.jpg「グランド・ホテル」●原題:GRAND HOTEL●制作年:1932年●制作国:アメリカ●監督:エドマンド・グールディング●製作:ポール・バーン/アーヴィング・G・サルバーグ●脚本:ウィリアム・A・ドレイク●撮影:ウィリアム・H・ダニエルズ●音楽:ウィリアム・アックスト/グランド・ホテル dvd ivc.jpgチャールズ・マックスウエル●原作:ヴィッキー・バウム●時間:112分●出演:グレタ・ガルボ/ジョン・バリモア/ジョーン・クロフォード/ウォーレス・ビアリー/ライオネル・バリモア/ ロバート・テイラー/ジョージ・キューカー●日本公開:1933/10●配給:MGM日本支社●最初に観た場所:日比谷・みゆき座(86-11-18)(評価:★★★)●併映:「暗黒街の顔役」(ハワード・ホークス)グランド・ホテル《IVC BEST SELECTION》 [DVD]
旧・みゆき座 1957(昭和32)年、東宝会館ビル(東宝本社ビル)竣工に伴い、同年4月、1階に邦画の「千代田劇場」、地下1階に洋画の「みゆき座」オープン。2005(平成17)年3月31日閉館(同年4月1日「日比谷スカラ座2」が「みゆき座」の名を引き継ぐ)。[写真]千代田劇場・みゆき座[1984(昭和59)年9月]「ぼくの近代建築コレクション」より

マッシュ [DVD]
★A★S★H マッシュ dvd.jpgM★A★S★H マッシュ ケラーマン.jpg「M★A★S★H マッシュ」●原題:M*A*S*H●制作年:1975年●制作国:アメリカ●監督:ロバート・アルトマン●製作:インゴ・プレミンジャー●脚本:リング・ランドナーJr.●撮影:ハロルド・E・スタイン●音楽:ジョニー・マンデル●時間:116分●出演:ドナルド・サザーランド/トム・スケリット/エリオット・グールド/ロバート・デュヴァル/サリー・ケラーマン●日本公開:1970/07●配給:20世紀フォックス●最初に観た場所:三鷹オスカー(79-05-13)(評価:★★★★)●併映:「まぼろしの市街戦」(フィリプド・ロカ)/「博士の異常な愛情」(スタンリー・キューブリック)

ドナルド・サザーランド(ホークアイ・ピアース大尉)/ロバート・デュヴァル(フランク・バーンズ少佐)
M★A★S★H マッシュ サザーランド.jpg M★A★S★H マッシュ  .jpg

アメリカン・アイドル1.jpgアメリカン・アイドル2.bmp「アメリカン・アイドル」American Idol (FOX 2002/06~ ) ○日本での放映チャネル:FOX(2006~)

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マフィアの一族においても強力な「父性原理」が過去のものとなりつつあったことの予兆。

ゴッドファーザーⅡ チラシ.jpg  ゴッドファーザーⅡ パンフレット.jpg    ゴッドファーザーPARTIIDVD.jpg
「">ゴッドファーザー PART II 」チラシ/パンフレット(1975.04)/「ゴッドファーザー PART II [DVD]

ゴッドFⅡ 012.JPG 1958年、湖畔の教会ではドン・マイケル・コルレオーネ(アル・パチーノ)の息子の聖餐式が行われており、湖に臨む大邸宅の庭でのパーティには、妻ケイ(ダイアン・キートン)と息子、妹らが、来賓には、ママ・コルレオーネ(マリア・カータ)、次兄フレドー(ジョン・カザール)夫婦、妹コニー(タリア・シャイア)とその恋人(トロイ・ドナヒュー)、相談役トム・ヘーゲン(ロバート・デュヴァル)らが招かれていた。パーティが済みマイケルがベッドへ入ろうとした時、機関銃の弾が寝室にぶち込まれ、床に伏したマイケルは、ベッドから転がり落ちた妻ケイを抱きかかえていた―。

ゴッドFⅡ 021.JPG 言わずと知れたフランシス・フォード・コッポラ監督による前作「ゴッドファーザー」(′69年/米)の続編で、正編・続編共にアカデミー作品賞を受賞した唯一のシリーズ。

 サンチャゴ版「ゴッドファーザー」的なドン・ウィンズロウの『フランキー・マシーンの冬』('10年/角川文庫)に、映画「ゴッドファーザー」のトリビアなネタが幾つか出てくるので思い出したのですが、「PARTⅡ」では、コルレオーネ家は本拠をニューヨークからネバダ州に移していて、それは近くに収入源であるラスベガスがあるからだったのだなあと。

ゴッドFⅡ 031.JPG 本編でマーロン・ブランドが演じたヴィトー・コルレオーネの後継者としてゴッドファーザーになった三男のマイケルが、今度は父の遺産を守るために苦悩する姿が描かれる一方で、マリオ・プーゾの原作にはあるものの本編では描かれなかった、若き日のヴィトー(ロバート・デ・ニーロ)がシチリアからアメリカに移民としてやって来て、一代で裏社会の巨大ファミリーを築くまでのエピソードが、共に本編を挟むような形で対を成しています。

ゴッドFⅡ 041.JPG 時間的にはヴィトーの出ている時間の方が少ないのですが、「ミーン・ストリート」('73年/米)の演技が認められてコッポラ監督に抜擢されたロバート・デ・ニーロの演技が良く、彼がリトル・イタリーで次第に人望を集めていく様が、最初の内は、パン屋とか八百屋とか様々なごく普通の市井の民としての仕事をしながら、まるで地区の"相談係"乃至はもめ事の"解決係"みたいなことを任されていくという風に描かれているのが興味深いです(「タクシードライバー」('76年/米)の主人公トラヴィスの持つ繊細な一面を彷彿させるが、この作品のデ・ニーロは「タクシードライバー」に出演する2年前。若いなあ)。

ゴッドFⅡ 051.JPG 一方、家族の確執に悩まされるマイケルの方は、崩壊していく家族の絆を目の当たりにし、自らも裏切った親族に手を下しつつ、改めてヴィトーの偉大さに想いを馳せるという、アル・パチーノとしてはやや損な役回りだったかも(本編のマーロン・ブランドの下でひ弱な印象をこの作品でも引き摺っている?)。

 本編あっての続編ではあるものの、続編でヴィトーの若き日の台頭と、現在のマイケルの孤絶を描くことで、単なるマフィアものを超えて、イタリア移民の一族の年代記としての厚みが増したように思います。

 本編では"家族の絆"の強さというものが描かれていて、日本でも大いに受けたわけですが、心理療法家の河合隼雄が、プロスペル・メリメがシチリアの伝承に材を得た小編「マテオ・ファルコーネ」(岩波文庫『エトルリヤの壷』に所収)(官憲に追われている男を腕時計と引き換えに官憲に密告した息子をその場で射殺した父親の話)を挙げて、こうした強力な「父性原理」は、日本のような「母性原理」の社会では見られないと指摘したように、"家族の絆"の根底にあるものが根本的に日本と異質のような感じもします(だから、肉親であっても裏切者は殺られてしまう)。

ザ・ソプラノズ.jpg ただ、米国のイタリア(シチリア)系社会でもこうした強力な「父性原理」はすでに過去のものとなっているのかも知れず、それがこの続編で予兆として現れていて、近年の海外ドラマ「ザ・ソプラノズ 哀愁のマフィア」('99-07年)などを観ていると、そのギャップがある種パロディカルに描かれるに至っているように思いました。

 「ザ・ソプラノズ 哀愁のマフィア」のジェームズ・ギャンドルフィーニ演じる主人公のマフィアのボスであるトニー・ソプラノは、ストレスと悩みが原因のパニック障害を有し、精神科のカウンセリングを受けていますが(ギャンドルフィーニはこの役でエミー賞を3回受賞)、ロバート・デ・ニ―ロもハロルド・ライミス監督のコメディ「アナライズ・ミー」('99年/米)で、パニック障害で精神分析医に掛かるマフィアのボスを演じています。

The Godfather Part II(1974).jpgThe Godfather: Part II(1974)
「ゴッドファーザーPARTⅡ」●原題:THE GODFATHER PART II●制作年:1974年●制作国:アメリカ●監督:フランシス・フォード・コッポラ●製作:フランシス・フォード・コッポラ/グレイ・フレデリクソン/フレッド・ルース●脚本:マリオ・プーゾ/フランシス・フォード・コッポラ●撮影:ピーター・ツィンナー/バリー・マルキン/リチャード・マークス●音楽:ニーノ・ロータ/カーマイン・コッポラ●原作:マリオ・プーゾ「ゴッドファーザー」●時間:200分●出演:アル・パチーノゴッドファーザーPARTⅡ ロバート・デュヴァル0.jpgロバート・デ・ニーロ/マリア・カータ/ダイアン・キートン/ロバート・デュヴァル/ジェームズ・カーン/ジョン・カザール/タリア・シャイア/リー・ストラスバーグ/マイケル・ヴィンセント・ガッツォ/リチャード・ブライト/ガストン・モスチン/トム・ロスキー/ブルーノ・カ-ビー/フランク・シベロ/フランチェスカ・デ・サピオ/モーガナ・キング/マリアナ・ヒル/レオパルド・トリエステ/ドミニク・キアネーゼ/アメリゴ・トット/トロイ・ドナヒュー●日本公開:1975/04●配給:パラマウント映画=CIC●最初に観た場所:池袋文芸坐(78-01-12)(評価:★★★★)●併映:「コーザ・ノストラ」(フランチェスコ・ロージ)     
 
The Sopranos (1999).jpgザ・ソプラノズ 哀愁のマフィア.jpgThe Sopranos 2.jpg「ザ・ソプラノズ 哀愁のマフィア」The Sopranos (HBO 1999/01~2007)○日本での放映チャネル:WOWOW/スーパー!ドラマTV

The Sopranos (1999)

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私設部隊による人質奪回。原作も映画も大いに楽しめたのは、"ノンフィクション"だからか。

鷲の翼に乗って (Playboy books).jpg鷲の翼に乗って 集英社文庫 上.jpg 鷲の翼に乗って 集英社文庫 下.jpg 「鷲の翼に乗って」 (86年/米).jpg
鷲の翼に乗って(上) (集英社文庫)』『鷲の翼に乗って(下) (集英社文庫)』 TV-M「鷲の翼に乗って」('86年)
鷲の翼に乗って (Playboy books)

 1978年、イランではパーレヴィ王朝の独裁に対し民衆の怒りが昂り、テヘランでは軍と市民の衝突が繰り返されていたが、そうした中、米テキサス州ダラスに本社を置くコンピュータ関連会社EDSの重役2人が不当逮捕され、EDS会長ロス・ペローは在イラン米大使館やキッシンジャー前国務長官に働きかけて救出を依頼するが失敗、遂に自力での人質救出をすべく、社員による救出チームを組織し、元グリーンベレーのアーサー・D・"ブル"・サイモンズ大佐に協力を依頼する―。

On Wings of Eagles (VHS, 1991).jpg鷲の翼に乗って On Wings of Eagles .jpg 1983年に英国の作家ケン・フォレットが発表した小説で(原題:On Wings of Eagles)、実際にあった事件を取材して作品化したものであり(単行本帯には「ケン・フォレット初のノンフィクション」とあるが、"ノンフィクション小説"という感じか)、本書に登場するEDS会長ロス・ペローという人物は、1992年の大統領選に民主・共和両党とは別に第3政党を立ち上げ立候補したあのロス・ペロー氏です(小柄だが気骨ありそうな老人という印象)。

ロス・ペロー 大統領選.jpg この選挙は、一般投票率が、ビル・クリントン43%、ジョージ・ブッシュ37%、ペロー19%という結果で、彼の善戦は、パパ・ブッシュの票を獲り込んだため、クリントン大統領誕生の副次的要因となったと言われていますが、自分で傭兵部隊を作って直接行動に出るというのは、一部のアメリカ人にはいかにも受けそうだなあと(共和党寄りの考えに近いと言えるか)。
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 ストーリーは、複雑な政治背景の部分以外は冒険小説風で、比較的すらすら読めてしまうのですが、実話がベースになっていることを思って読めば、それなりの重みも感じられ、但し、どの程度の脚色がされているのかは測りかねるといったところでしょうか(大統領やホワイトハウスはかなり無能・無力な存在として描かれている)。

 そうした憶測は抜きにして、サイモンズ大佐らによる計画立案から必要物資や人員の調達、拠点確保から行動実施までの流れは、ビジネス書によくある「Plan(計画)→Do(実行)→See(統制)」の所謂「PDSサイクル」の実践版のようでもあり、「リーダーシップとは何か」ということのケーススタディのようでもあります。

鷲の翼に乗って 輸入版DVD.jpg鷲の翼に乗って 輸入版VHS.jpg '86年にアンドリュー・V・マクラグレン監督によってTⅤ映画化されており、サイモンズ大佐を演じたバート・ランカスターは貫禄の演技で、ああ、この人なら部下はついてくるなあと。

On Wings of Eagles [VHS] [Import]
On Wings of Eagles [VHS] [Import]
 輸入版VHS(英語・ペルシャ語)

鷲の翼に乗って  ON WING OF EAGLES 1986.jpg 慎重なサイモンズは、社員たちに様々な事態を想定した訓練を施しますが、イランに入ってからの交渉は難航し、革命に乗じて何とか刑務所から2人を脱獄させた後も、トルコへの脱出行の最中に不測の事態が次々発生し、そうした際にそれらの訓練が役立つ―では、サイモンズは超人的な予言者のような人物なのかというとそうではなく、実行されることの無かった訓練も数多くあったわけで、要するに、あらゆる不測の事態を想定して、入念に計画し、備えたということことなのでしょう。

 TV版のためか、特別凝った演出がされているわけでもなく、原作を忠実に追うことを主眼としているようで、爆弾を作ったり、暗号を作成したりするといった細部まで映像化されており、そのために約4時間の長尺にはなっていますが、起伏に富んだストーリーを、原作同様に飽きさせず一気に見せます。

地獄の7人.jpg地獄の7人 ちらし.jpg そう言えば、テッド・コチェフ監督の「地獄の7人」(′83年/米)という、ベトナム戦争終結後10年経っても戻らない息子の生存を信じ、息子のかつての戦友を集めて現地へ救出に向かう大佐(「鷲の翼に乗って」 のサイモンズ大佐と同じく退役軍人)の話の映画があって(主演はジーン・ハックマン)、同じ「私設部隊」でも、「地獄の7人」の方はどちらかというと"傭兵"というより"OB会"という感じが色濃かったでしょうか。

地獄の7人 [DVD]

地獄の7人 ジーン・ハックマンs.jpg 「地獄の7人」では、男たちの友情や親子の愛情がテーマとなっていましたが、年寄りにアクションはキツいんじゃないかとつい余計な心配してしまったりするのは、元になっているのがフィクションだからでしょう。そうした意味では、「鷲の翼に乗って」のような「事実に立脚した」とか「実話に基づく」という謳い文句は強みだなあと(それさえ信じ込ませれば怖いもの無し?)。原作も映画も共に大いに楽しめたのは、自分がその"ノンフィクション効果"を、大いに受けたからかも。
ジーン・ハックマン in「地獄の7人」

"On Wings of Eagles" (1986)
鷲の翼に乗ってON WING OF EAGLES 1986.jpgON WING OF EAGLE 1986.jpg「鷲の翼に乗って」●原題:ON WING OF EAGLES●制作年:1986年●制作国:アメリカ●監督:アンドリュー・V・マクラグレン●音楽:ローレンス・ローゼンタール●原作:ケン・フォレット●時間:235分●出演:バート・ランカスター/リチャード・クレンナ/ポール・ル・マット/ジム・メッツラー/イーサイ・モラレス/ジェームズ・ストリウス/ローレンス・プレスマン/コンスタンス・タワーズ/カレン・カールソン/シリル・オライリー●テレビ映画:1990/10 テレビ東京(評価:★★★★)

地獄の7人 ジーン・ハックマンl.jpg「地獄の7人」●原題:UNCOMMON VALOR●制作年:1983年●制作国:アメリカ●監督:テッド・コッチェフ●製作:ジョン・ミリアス/バズ・フェイトシャンズ●脚本:ジョー・ゲイトン●撮影:スティーヴン・H・ブラム●音楽:ジェームズ・ホーナー●時間:105分●出演:ジーン・ハックマン/ロバート・スタック/フレッド・ウォード/レブ・ブラウン,/パトリック・スウェイジ●日本公開:1984/06●配給/パラマウント映画●最初に観た場所:三軒茶屋映劇(85-05-25)(評価★★★)●併映:「ゴールド・パピヨン」(ジュスト・ジャキャン)

 【1986年文庫化[集英社文庫(上・下)]】 

「●は M・バルガス=リョサ」の インデックッスへ Prev|NEXT⇒「●ひ 東野 圭吾」【475】東野 圭吾『秘密
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「穢れを知らない無垢な天使と肉感的な美の象徴であるヴィーナスが出会えばどうなるのか」

継母礼讃 (中公文庫).jpg継母礼讃 リョサ.jpg  Emmanuelle video.jpg 夜明けのマルジュ チラシ2.jpg 夜明けのマルジュ dvd.jpg
継母礼讃 (モダン・ノヴェラ)』「エマニエル夫人 [DVD]」「夜明けのマルジュ [DVD]
継母礼讃 (中公文庫)

Elogio de La Madrastra.jpg バルガス=リョサが1988年に発表した作品で(原題:Elogio de La Madrastra)、父親と息子、そして継母という3人家族が、息子であるアルフォンソ少年が継母のルクレシアに性愛の念を抱いたことで崩壊していく、ある種アブノーマル且つ"悲劇"的なストーリーの話。

candaules.jpg 当時からガルシア=マルケス、ホルヘ・ルイス・ボルヘス、フリオ・コルタサルと並んでラテンアメリカ文学の四天王とでもいうべき位置づけにあった作家が、こうしたタブーに満ちた一見ポルノチックともとれる作品を書いたことで、発表時は相当に物議を醸したそうですが、バルガス=リョサの描く官能の世界は、その高尚な文学的表現のため、どことなく宗教的な崇高ささえ漂っており、「神話の世界」の話のようでもあります。そのことは、現在の家族の物語と並行して、ヘロドトスの『史記』にある、自分の妻の裸を自慢したいがために家臣に覗き見をさせ、そのことが引き金となって家臣に殺され、妻を奪われた、リディア王カンダウレスの物語や、ギリシャ神話の「狩りの女神」の物語が挿入されていることでより強まっており、更に、物語の展開の最中に、関連する古典絵画を解説的に挿入していることによっても補強されているように思いました。

Candaules, rey de Lidia, muestra su mujer al primer ministro Giges, de Jacob Jordaens(「カンダウレス王室のギゲス」ヤコブ・ヨルダーエンス(1648)本書より)

Mario Vargas Llosa Julia Urquidi.jpg ただ、個人的には、バルガス=リョサの他の作品にもこうした熟女がしばしば登場し、また、彼自身、19歳の時に義理の叔母と結婚しているという経歴などから、この人の"熟女指向"が色濃く出た作品のようにも思いました。それがあまりにストレートだと辟易してしまうのでしょうが、「現代の物語」の方は、ルクレシアの視点を中心に、第三者の視点など幾つかに視点をばらして描いていて、少年自身の視点は無く、少年はあくまでも無垢の存在として描かれており、この手法が、「穢れを知らない無垢な天使と肉感的な美の象徴であるヴィーナスが出会えばどうなるのか」というモチーフを構成することに繋がっているように思いました。

Mario Vargas Llosa y Julia Urquid Illanes,París, 7 de junio de 1964

 しかし、帯には「無垢な天使か、好色な小悪魔か!?」ともあり、父親にとってこの息子は、好色な小悪魔であるに違いなく、また、継母が去った後、今度は召使を誘惑しようとするところなど、ますます悪魔的ではないかと...。「現代の物語」と、挿入されている「リディア王の話」(家臣に自分の眼の前で妻と交情するよう命じ、これを拒んだ家臣の首を刎ねた)とは、それぞれ異質の性愛を描いているように思えました。

 強いて言えば、「現代の物語」の方は、エディプス・コンプレックスの変型であり(バルガス=リョサ型コンプレックス?)、「リディア王の話」は、エマニュエル・アルサン(1932-2005)原作、ジュスト・ジャカン監督の「エマニエル夫人」('74年/仏)のアラン・キュニーが演じた老紳士マリオの"間接的性愛"のスタンスに近いと言えるでしょうか。性に対してある種の哲学(「セックスから文明社会の意味を取り除いた部分にしか、性の真理はない」という)を持つマリオにとって、エマニエルはそうした哲学を実践するにまたとない素材だった―。

エマニエル夫人 アラン・キュニ―.jpg エマニエル夫人 チラシ.jpg 華麗な関係.jpg 夜明けのマルジュ チラシ.jpg
「エマニエル夫人」の一場面(A・キュニー)/「エマニエル夫人」/「華麗な関係」/「夜明けのマルジュ」各チラシ

エマニエル夫人の一場面.jpg 「エマニエル夫人」はいかにもファッション写真家から転身した監督(ジュスト・ジャカン)の作品という感じで、モデル出身のシルヴィア・クリステルが、演技は素人であるにしても、もう少し上手ければなあと思われる凡作でしたが、フランシス・ジャコベッティが監督した「続エマニュエル夫人」('75年)になっても彼女の演技力は上がらず、結局は上手くならないまま、シリーズ2作目、3作目(「さよならエマニュエル夫人」('77年))と駄作化していきました。内容的にも、第1作にみられた性に対する哲学的な考察姿勢は第2作、第3作となるにつれて影を潜めていきます。その間に舞台はタイ → 香港・ジャワ → セイシェルと変わり「観光映画」としては楽しめるかも知れないけれども...。でもあのシリーズがある年代の(男女問わず)日本人の性意識にかなりの影響を及ぼした作品であることも事実なのでしょう。

華麗な関係 1976ド.jpg華麗な関係lt.jpg 同じくシルヴィア・クリステル主演の、ロジェ・ヴァディムが監督した「華麗な関係」('76年/仏)も、かつてジェラール・フィリップ、ジャンヌ・モロー、ジャン=ルイ・トランティニャンを配したロジェ・ヴァディム自身の「危険な関係」('59年/仏)のリメイクでしたが、原作者のラクロが墓の下で嘆きそうな出来でした。

「華麗な関係」('76年/仏)

夜明けのマルジュの一場面.jpg 同じ年にシルヴィア・クリステルは、ヴァレリアン・ボロヴズィック監督の「夜明けのマルジュ」('76年/仏)にも出演していて(実はこれを最初に観たのだが)、アンドレイ・ピエール・マンディアルグ(1909 -1991)のゴンクール賞受賞作「余白の街」が原作で、1人のセールスマンが、出張先のパリで娼婦と一夜を共にした翌朝、妻と息子の急死の知らせを受け自殺するというストーリー。メランコリックな脚本やしっとりしたカメラワーク自体は悪くないのですが、「世界一美しい娼婦」という触れ込みのシルヴィア・クリステルが、残念ながら演技し切れていない...。

「エマニエル夫人」●1.jpg「エマニエル夫人」●2.jpg 何故この女優が日本で受けたのかよく解らない...と言いつつ、自分自身もブームからやや遅れながらもシルヴィア・クリステルの作品を5本ぐらい観ているわけですが、個人的には公開から3年以上経って観た「エマニエル夫人」に関して言えば、シルヴィア・クリステルという女優そのものが受けたと言うより、ピエール・バシュレの甘い音楽とか(「続エマニュエル夫人」ではフランシス・レイ、さよならエマニュエル夫人」ではセルジュ・ゲンズブールが音楽を担当、セルジュ・ゲンズブールは主題歌歌唱も担当)、女性でも観ることが出来るポルノであるとか、商業映画として受ける付加価値的な要素が背景にあったように思います(合計320万人の観客のうち女性が8割を占めたという(『ビデオが大好き!365夜―映画カレンダー』('91年/文春文庫ビジュアル版)より))。
「続エマニュエル夫人」('75年/仏) 音楽:フランシス・レイ

A Man for Emmanuelle (1969) L.jpg バルガス=リョサの熟女指向から始まって、殆どシルヴィア・クリステル談義になってしまいましたが、シルヴィア・クリステルの「エマニュエル夫人」はエマニュエル・シリーズの初映像化ではなく、実際はこの作品の5年前にイタリアで作られたチェザーレ・カネバリ監督、エリカ・ブラン主演の「アマン・フォー・エマニュエル(A Man for Emmanuelle)」('69年/伊)が最初の映画化作品です(日本未公開)。
A Man for Emmanuelle(1969)

 因みに、「エマニュエル夫人」「続エマニュエル夫人」はエマニュエル・アルサンが原作者ですが、最後エマニュエルが男性依存から抜け出して自立することを示唆した終わり方になっている「さよならエマニュエル夫人」は、オリジナル脚本です。一方で、エマニュエル・アルサン原作の他の映画化作品では、女流監督ネリー・カプランの「シビルの部屋」('76年/仏)というのもありました。

シビルの部屋 旧.jpgシビルの部屋 pabnnhu.jpg 「シビルの部屋」のストーリーは、シビルという16歳の少女がポルノ小説を書こうと思い立って、憧れの中年男に性の手ほどきを受け、その体験を本にしたところベストセラーになってしまい、執筆に協力してくれた男を真剣に愛するようになった彼女は、今度は手を切ろうとする男に巧妙な罠をしかけて陥落させようとする...というもので、原作はエマニュエル・アルサンの半自伝的小説であり、アルサンは実際にこの作品に出てくる「ネア」という小説も書いている-と言うより、この映画の原作が「ネア」であるという、ちょっとした入れ子構造。映画化作品は、少女の情感がしっとりと描かれている反面、目的のために手段を選ばないやり方には共感しにくかったように思います。

エマニエル夫人00.jpg「エマニエル夫人」●原題:EMMANUELLE●制作年:1974年●制作国:フランス●監督:ジュスト・ジャカン●製作:イヴ・ルッセ=ルアール●脚本:ジャン=ルイ・リシャール●撮影:リシャール・スズキ●音楽:ピエール・バシュレ●原作:エマニュエル・アルサン「エマニュエル」●時間:91分●出演:シルヴィア・クリステル/アラン・キューリー/ダニエル・サーキー/クリスティーヌ・ボワッソン/マリカ・グリーン●日本公開:1974/12●配給:日本ヘラルド映画●最初に観た場所:三鷹オスカー(78-07-17)(評価:★★)●併映:「続・エマニエル夫人」(フランシス・ジャコベッティ)/「さよならエマニエル夫人」(フランソワ・ルテリエ)

続エマニエル夫人 ド.jpg続エマニエル夫人 vhs.jpg「続エマニエル夫人」●原題:EMMANUELLE, L'ANTI VIERGE/EMMANUELLE: THE JOYS OF A WOMAN●制作年:1975年●制作国:フランス●監督:フランシス・ジャコベッティ●製作:イヴ・ルッセ=ルアール●脚本:フランシス・ジャコベッティ/ロベール・エリア/ジェラール・ブラッシュ●撮影:ロベール・フレース●音楽:フランシス・レイ●原作:エマニュエル・アルサン●時間:91分●出演:シルヴィア・クリステル/ウンベルト・オルシーニ/カトリーヌ・リヴェ/カロライン・ローレンス/フレデリック・ラガーシュ/ラウラ・ジェムサー●日本公開:1975/12●配給:日本ヘラルド映画●最初に観た場所:三鷹オスカー(78-07-17)(評価:★☆)●併映:「エマニエル夫人」(ジュスト・ジャカン)/「さよならエマニエル夫人」(フランソワ・ルテリエ)
続エマニエル夫人 [DVD]

さよならエマニエル夫人1977.jpg「さよならエマニエル夫人」●原題:GOOD-BYE, EMMANUELLE●制作年:1977年●制作国:フランス●監督:フランソワ・ルテリエ●製作:イヴ・ルッセ=ルアール●脚本:さよならエマニエル夫人 dvd .jpgフランソワ・ルテリエ/モニク・ランジェ●撮影:ジャン・バダル●音楽:セルジュ・ゲンズブール●時間:98分●出演:シルヴィア・クリステル/ウンベルト・オルシーニ/アレクサンドラ・スチュワルト/ジャン=ピエール・ブーヴィエ/ジャック・ドニオル=ヴァルクローズ/オルガ・ジョルジュ=ピコ/シャルロット・アレクサンドラ●日本公開:1977/12●配給:日本ヘラルド映画●最初に観た場所:三鷹オスカー(78-07-17)(評価:★☆)●併映:「エマニエル夫人」(ジュスト・ジャカン)/「続エマニエル夫人」(フランシス・ジャコベッティ)
さよならエマニエル夫人 [DVD]

UNE FEMME FIDELE 1976.jpgUNE FEMME FIDELE.jpg華麗な関係 チラシ2.jpg「華麗な関係」●原題:UNE FEMME FIDELE●制作年:1976年●制作国:フランス●監督:ロジェ・ヴァディム●製作:フランシス・コーヌ/レイモン・エジェ●脚本:ロジェ・ヴァディム/ダニエル・ブーランジェル●撮影:クロード・ルノワ●音楽:モルト・シューマン/ピエール・ポルト●原作:ピエール・コデルロス・ド・ラクロ「危険な関係」●時間:91分●出演:シルヴィア・クリステル/ジョン・フィンチ/ナタリー・ドロン/ジゼール・カサドジュ/ジャック・ベルティエ/アンヌ・マリー・デスコット/セルジュ・マルカン●日本公開:1977/05●配給:東宝東和●最初に観た場所:三鷹東映(78-01-16)(評価:★☆)●併映:「エーゲ海の旅情」(ミルトン・カトセラス)/「しのび逢い」(ケビン・ビリングトン)

夜明けのマルジュの一場面2.jpg「夜明けのマルジュ」●原題:LA MARGE●制作年:1976年●制作国:フランス●監督:ヴァレリアン・ボロヴズィック●製作:ロベール・アキム/レイモン・アキム●撮影:ベルナール・ダイレ夜明けのマルジュ 09.jpgンコー●音楽:ロベール・アキム●原作:アンドレイ・ピエール・ド・マンディアルグ「余白の町」●時間:93分●出演:シルヴィア・クリステル/ジョー・ダレッサンドロ/ミレーユ・オーディベル/アンドレ・ファルコン/ドニス・マニュエル/ノルマ・ピカデリー/ルィーズ・シュヴァリエ/ドミニク・マルカス/カミーユ・ラリヴィエール●日本公開:1976/10●配給:富士映画●最初に観た場所:中野武蔵野館(77-12-15)(評価:★★☆)●併映:「続 個人教授」(ジャン・バチスト・ロッシ)

NEA 1976_01.jpgシビルの部屋 新.jpg「シビルの部屋」●原題:NEA●制作年:1976年●制作国:フランス●監督:ネリー・カプラン ●製作:ギー・アッジ●脚本:ネリー・カプラン/ジャン・シャポー●撮影:アンドレアス・ヴァインディング●音楽:ミシェル・マーニュ●原作:エマニュエル・アルサン「少女ネア」●時間:106分●出演:アン・ザカリアス/サミー・フレイ/ミシュリーヌ・プレール/フランソワーズ・ブリオン/ハインツ・ベネント/マルタン・プロボスト●日本公開:1977/09●配給:日本ヘラルド映画●最初に観た場所:池袋・テアトルダイヤ(77-12-24)(評価:★★☆)●併映:「さすらいの航海」(スチュアート・ローゼンバーグ)シビルの部屋 [DVD]

【2012年文庫化[中公文庫]】

「●く アガサ・クリスティ」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【2522】 クリスティ 『死との約束
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原作はプロットも心理描写も見事。映画は"観光映画(?)"としては楽しめたが...。

ナイルに死す.jpg ナイルに死す2.jpg ナイルに死す3.bmp ナイル殺人事件 DVD.jpg DEATH ON THE NILE  .jpg
ナイルに死す (1957年) 』『ナイルに死す (ハヤカワ・ミステリ文庫 1-76)』(表紙:真鍋博) 『ナイルに死す (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)』 「ナイル殺人事件 デジタル・リマスター版 【プレミアム・ベスト・コレクション\1800】 [DVD]」 ピーター・ユスティノフ

ナイルに死す ハ―パーコリンズ版.jpg ハネムーンをエジプトに決めた大富豪の娘リンネットは、ナイル河で遊覧船の旅を楽しんでいたが、そこには夫のかつての婚約者ジャクリーンの不気味な影が...果たして、乗り合わせたポワロの目の前でリンネットは殺され、さらに続く殺人の連鎖反応が起きるが、ジャクリーンには文句無しのアリバイが―。

ナイル殺人事件 北大路.jpg"Death on the Nile" ハ―パーコリンズ版

 1937年に発表されたアガサ・クリスティ(1890‐1976)の作品で(原題:Death on the Nile)、プロットもさることながら、会話を主体とした多くの登場人物の心理描写が見事。ああ、この作家は小説でも戯曲でも"何でもござれ"だなあと改めて思わされた次第ですが、この作品はあくまでも小説です(クリスティはこの作品の戯曲版も残していて、日本でも北大路欣也などの主演で上演されているが、こちらはポワロが登場しない)。

ナイル殺人事件 スチール.jpg 「タワーリング・インフェルノ」('74年)、「キングコング」('76年)のジョン・ギラーミン監督によって「ナイル殺人事件」('78年/英)として映画化されており、ポアロ役はピーター・ユスティノフです(ピーター・ユスティノフ はその後「地中海殺人事件」('82年/英)、「死海殺人事件」 ('88年/米)でもポアロを演じている)。シドニー・ルメットが監督した「オリエント急行殺人事件」('74年/英)ほどの「往年の大スターの豪華競演」ではないにしても、こちらも名優がたくさん出演しています。
音楽:ニーノ・ロータ

ナイル殺人事件  Death on the Nile(1978英).jpg '78年の公開時に、今は無きマンモス映画館「日比谷映画劇場」で観て、90年代初めにビデオでも観ましたが、映画は、原作をやや端折ったような部分もあり、最後はちょっとドタバタのうちにポアロの謎解きが始まって、原作との間に多少距離を感じました。

 映画化されると、本格推理の部分よりも人間ドラマの方が強調されてしまうのは、この作品に限らず、この手の作品によくあるパターンで、しかも、この作品は登場人物が結構多いとあって、時間の制約上やむを得ない面もあるのかなあ(一応、2時間20分とやや長めではあるのだが)。それでも、原作の良さに救われている部分が多々あるように思いました。

『ナイル殺人事件』(1978) 2.jpg また、この映画に関して言えば、本場エジプトでのオールロケで撮影されているため(同じナイル川でも原作の場所とはやや違っているようだが)、ある種"観光映画"(?)としても楽しめたというのがメリットでしょうか。行ってみたいね、ナイル川クルーズ。雪中で止まってしまった「オリエント急行」と違って、ナイルの川面を船が「動いている」という実感もあるし、途中で下船していろいろ観光もするし...。

 映画「オリエント急行殺人事件」は、トリックの関係上(犯人同士しかいない場で演技させると"映像の嘘"になってしまうという制約があり)、ポワロの容疑者に対する個別尋問に終始しましたが、こちらはそのようなオチではないので、登場人物間の心理的葛藤は比較的自由かつ丁寧に描けていたと思います。

ナイル殺人事件ド.jpgDEATH ON THE NILE_original_poster.jpg 名優揃いの作品ですが、やはり何と言ってもオリジナルがいいんだろうなあ。この意外性のあるパターン、男女の関係なんて、傍目ではワカラナイ...。クリスティが最初の考案者かどうかは別として、この手の「人間関係トリック」は、その後も英国ミステリで何度か使われているみたいです。

DEATH ON THE NILE UK original film poster(右)/「ナイル殺人事件」映画パンフレット/単行本(早川書房(加島祥造:訳)映画タイアップカバー)
ナイル殺人事件 パンフレット.jpg「ナイルに死す」.jpg「ナイル殺人事件」●原題:DEATH ON THE NILE●制作年:1978年●制作国:イギリス●監督:ジョン・ギラーミン●製作:ジョン・ブラボーン/リチャード・グッドウィン●脚本:アンソニー・シェーファー●撮影:ジャック・カーディフ●音楽:ニーノ・ロータ●原作:ミア・ファロー_3.jpgアガサ・クリスティ「ナイルに死す」●時間:140分●出演:ピーター・ユスティノフ/ベティ・デイヴィス/ミア・ファロー/アンジェラ・ランズkinopoisk.ru-Death-on-the-Nile-1612358.jpgベリー/ジョージ・ケネディ/オリヴィア・ハッセー/ジョン・フィンチ/マギー・スミス/デヴィッド・ニーヴkinopoisk.ru-Death-on-the-Nile-1612353.jpgン/ジャック・ウォーデン/ロイス・チャイルズサイモン・マッコーキンデール/ジェーン・バーキン/サム・ワナメイカー/ハリー・アンドリュース●日本公開:1978/12●配給:東宝東和●最初に観た場所:日比谷映画劇場(78-12-17)(評価:★★★☆)
日比谷映画劇場.jpg日比谷映画劇場(戦前).bmp日比谷映画5.jpg 
     
日比谷映画劇場(日比谷映劇)
1934年2月1日オープン(現・日比谷シャンテ辺り)(1,680席)1984年10月31日閉館

戦前の日比谷映画劇場(彩色絵ハガキ)

名探偵ポワロ  ナイルに死す 02.jpg名探偵ポワロ 52  ナイルに死す.jpg「名探偵ポワロ(第52話)/ナイルに死す」 (04年/英) ★★★☆

 【1957年ポケット版[ハヤカワ・ミステリ(脇矢徹:訳)]/1965年文庫化[新潮文庫(西川清子:訳)]/1977年ノベルズ版[ハヤカワ・ノヴェルズ(加島祥造:訳)]/1984年再文庫化[ハヤカワ・ミステリ文庫(加島祥造:訳)]/2003年再文庫化[ハヤカワ・クリスティー文庫(加島祥造:訳)]】

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高評価作品が多い30年~50年代。40年~50年代の12作品の著者の評価を自分のと比べると...。

ミュージカル洋画 ぼくの500本.jpg     巴里のアメリカ人08.jpg バンド・ワゴン 映画poster.jpg 南太平洋 チラシ.jpg
ミュージカル洋画ぼくの500本 (文春新書)』 「巴里のアメリカ人」1シーン/「バンド・ワゴン」ポスター/「南太平洋」チラシ

 著者の外国映画ぼくの500本('03年4月)、『日本映画 ぼくの300本』('04年6月)、『外国映画 ハラハラドキドキぼくの500本』('05年11月)、『愛をめぐる洋画ぼくの500本』('06年10月)に続くシリーズ第5弾で、著者は1910年10月生まれですから、刊行年(西暦)の下2桁に90を足せば、刊行時の年齢になるわけですが、凄いなあ。

 本書で取り上げた500本は、必ずしもブロードウェイなどの舞台ミュージカルを映画化したものに限らず、広く音楽映画の全般から集めたとのことですが、確かに「これ、音楽映画だったっけ」というのもあるにせよ、500本も集めてくるのはこの人ならでは。何せ、洋画だけで1万数千本観ている方ですから(「たとえ500本でも、多少ともビデオやDVDを買ったり借りたりするときのご参考になれば幸甚である」とありますが、「たとえ500本」というのが何だか謙虚(?))。

天井桟敷の人々 パンフ.JPG『天井桟敷の人々』(1945).jpg 著者独自の「星」による採点は上の方が厳しくて、100点満点換算すると100点に該当する作品は無く、最高は90点で「天井桟敷の人々」('45年)と「ザッツ・エンタテインメント」('74年)の2作か(但し、個人的には、「天井桟敷の人々」は、一般的な「ミュージカル映画」というイメージからはやや外れているようにも思う)。
 85点の作品も限られており、やはり旧い映画に高評価の作品が多い感じで、70年代から85点・80点の作品は減り、85点は「アマデウス」('84年)が最後、以降はありません。
 これは、巻末の「ミュージカル洋画小史」で著者も書いているように、70年代半ばからミュージカル映画の急激な凋落が始まったためでしょう。

 逆に30年代から50年代にかけては高い評価の作品が目白押しですが、個人的に観ているのは40年代半ば以降かなあという感じで自分で、自分の採点と比べると次の通りです。(著者の☆1つは20点、★1つは5点)

①「天井桟敷の人々」 ('45年/仏)著者 ☆☆☆☆★★(90点)/自分 ★★★★(80点)
天井桟敷の人々1.jpg天井桟敷.jpg天井桟敷の人々 ポスター.jpg 著者は、「規模の雄大さ、精神の雄渾において比肩すべき映画はない」としており、いい作品には違いないが、3時間超の内容は結構「大河メロドラマ」的な要素も。占領下で作られたなどの付帯要素が、戦争を経験した人の評価に入ってくるのでは? 著者は「子供の頃に見た見世物小屋を思い出す」とのこと。実際にそうした見世物小屋を見たことは無いが(花園神社を除いて。あれは、戦前というより、本来は地方のものではないか)、戦後の闇市のカオスに通じる雰囲気も持った作品だし、ヌード女優から伯爵の愛人に成り上がる女主人公にもそれが体現されているような。

「天井桟敷の人々」●原題:LES ENFANTS DU PARADIS●制作年:1945年●制作国:フランス●監督:マルセル・カルネ●製作:フレッド・オラン●脚本:ジャック・プレヴェール●撮影:ロジェ・ユベール/マルク・フォサール●音楽:モーリス・ティリエ/ジョセフ・コズマ●時間:190分●出演:アルレッティ/ジャン=ルイ・バロー/ピエール・ブラッスール/マルセル・エラン/ルイ・サルー/マリア・カザレス/ピエール・ルノワール●日本公開:1952/02●配給:東宝●最初に観た場所:池袋文芸坐(82-03-21)●併映:「ネオ・ファンタジア」(ブルーノ・ボセット)

②「アメリカ交響楽」 ('45年/米)著者 ☆☆☆★★(70点)自分 ★★★☆(70点)
アメリカ交響楽 RHAPSODY IN BLUE.jpgアメリカ交響楽.jpg この映画の原題でもある「ラプソディー・イン・ブルー」や、「スワニー」「巴里のアメリカ人」「ボギーとベス」などの名曲で知られるガーシュウィンの生涯を描いた作品で、モノクロ画面が音楽を引き立てていると思った(著者は、主役を演じたロバート・アルダより、オスカー・レヴァント(本人役で出演)に思い入れがある模様)。因みに、日本で「ロード・ショー」と銘打って封切られた映画の第1号。

「アメリカ交響楽」 ●原題:RHAPSODY IN BLUE●制作年:1945年●制作国:アメリカ●監督:アーヴィン・クーパー●製作:フレッド・オラン●脚本:ハワード・コッホ●撮影:ソル・ポリート●音楽ジョージ・ガーシュウィン●時間:130分●出演:ロバート・アルダ/ジョーン・レスリー/アレクシス・スミス/チャールズ・コバーン/アルバート・バッサーマン/オスカー・レヴァント/ポール・ホワイトマン/ジョージ・ホワイト/ヘイゼル・スコット/アン・ブラウン、アル・ジョルスン/ジュリー・ビショップ●日本公開:1947/03●配給:ワーナー・ブラザース映画●最初に観た場所:テアトル新宿(85-09-23)

③「錨を上げて」 ('45年/米)著者 ☆☆☆★(65点)自分 ★★★(60点)
錨を上げて08.jpg錨を上げて2.jpg錨を上げて.jpgAnchors Aweigh.jpg 4日間の休暇を得てハリウッドへ行った2人の水夫の物語。元気のいい映画だけど、2時間20分は長かった。ジーン・ケリーがアニメ合成でトム&ジェリーと踊るシーンは「ロジャー・ラビット」の先駆けか(著者も、その技術を評価。ジーン・ケリーが呼び物の映画だとも)。
錨を上げて アニメ.jpg
「錨を上げて」●原題:ANCHORS AWEIGH●制作年:1945年●制作国:アメリカ●監督:ジョージ・シドニー●製作:ジョー・パスターナク●脚本:イソベル・レナート●撮影:ロバート・プランク/チャールズ・P・ボイル●音楽監督:ジョージー・ストール●原作:ナタリー・マーシン●時間:140分●出演:フランク・シナトラ/キャスリン・グレイソン/ジーン・ケリー/ホセ・イタービ /ディーン・ストックウェル/パメラ・ブリットン/ジョージ・シドニー●日本公開:1953/07●配給:MGM日本支社●最初に観た場所:テアトル新宿(85-10-19)

④「夜も昼も」 ('46年/米)著者 ☆☆☆★(65点)自分 ★★★(60点)
NIGHT AND DAY 1946.jpg夜も昼も NIGHT AND DAY.jpgNight and Day Cary Grant.jpg アメリカの作曲家コール・ポーターの伝記作品。著者の言う通り、「ポーターの佳曲の数々を聴かせ唄と踊りの総天然色場面を楽しませる」のが目的みたいな作品(曰く「その限りにおいては楽しい」と)。

「夜も昼も」●原題:NIGHT AND DAY●制作年:1946年●制作国:アメリカ●監督:マイケル・カーティズ●製作:アーサー・シュワルツ●脚本:チャールズ・ホフマン/レオ・タウンゼンド/ウィリアム・バワーズ●撮影:ペヴァレル・マーレイ/ウィリアム・V・スコール●音楽監督:レオ・F・フォーブステイン●原作:ナタリー・マーシン●時間:116分●出演:ケーリー・グラント/アレクシス・スミス/モンティ・ウーリー/ジニー・シムズ/ジェーン・ワイマン/カルロス・ラミレス●日本公開:1951/01●配給:セントラル●最初に観た場所:テアトル新宿(85-10-19)

⑤「赤い靴」('48年/英)著者 ☆☆☆☆(80点)自分 ★★★(60点)
赤い靴 ポスター.jpg赤い靴.jpg赤い靴2.jpg ニジンスキーとロシア・バレエ団の主宰者ディアギレフとの関係がモデルといわれているバレエもの(ハーバート・ロス監督の「ニジンスキー」('79年/英)は両者の確執にフォーカスした映画だった)だが、主人公が女性になって、「仕事か恋か」という今も変わらぬ?テーマになっている感じ。著者はモイラ・シアラーの踊りを高く評価している。ヨーロッパには「名人の作った赤い靴をはいた者は踊りの名手になれるが、一生踊り続けなければモイラ・シアラー.jpgならない」という「赤い靴」の伝説があるそうだが、「赤い靴」と言えばアンデルセンが先に思い浮かぶ(一応、そこから材を得ているとのこと)。

「赤い靴」 ●原題:THE RED SHOES●制作年:1948年●制作国:イギリス●監督:エメリック・プレスバーガー●製作:マイケル・パウエル/エメリック・プレスバーガー●脚本:マイケル・パウエル/エメリック・プレスバーガー●撮影:ジャック・カーディフ●音楽演奏:ロイヤル・フィルハーモニック・オーケストラ●原作:ハンス・クリスチャン・アンデルセン●時間:136分●出演:アントン・ウォルブルック/マリウス・ゴーリング/モイラ・シアラー/ロバート・ヘルプマン/レオニード・マシーン●日本公開:1950/03●配給:BCFC=NCC●最初に観た場所:高田馬場パール座(77-11-10)●併映:「トリュフォーの思春期」(フランソワ・トリュフォー)
モイラ・シアラー

⑥「イースター・パレード」('48年/英)著者 ☆☆☆☆(80点)自分 ★★★☆(70点)
Easter Parade (1949).jpgイースター・パレード dvd.jpg ジュディ・ガーランドとフレッド・アステアのコンビで、ショー・ビズものとも言え、一旦引退したアステアが、骨折のジーン・ケリーのピンチヒッター出演で頑張っていて、著者の評価も高い(戦後、初めて輸入された総天然色ミュージカルであることも影響している?)。

「イースター・パレード」●原題:EASTER PARADE●制作年:1948年●制作国:アメリカ●監督:チャールズ・ウォルターズ●製作:アーサー・フリード●脚色:シドニー・シェルダン/フランセス・グッドリッチ/アルバート・ハケット●撮影:ハリー・ストラドリング●音楽演奏:ジョニー・グリーン/ロジャー・イーデンス●原作:フランセス・グッドリッチ/アルバート・ハケット●時間:136分●出演:ジュディ・ガーランド/フレッド・アステア/ピーター・ローフォード/アン・ミラー/ジュールス・マンシュイン●日本公開:1950/02●配給:セントラル●最初に観た場所:テアトル新宿(85-10-19)

⑦「踊る大紐育」('49年/米)著者 ☆☆☆☆★(85点)自分 ★★★☆(70点)
踊る大紐育.jpg 24時間の休暇をもらった3人の水兵がニューヨークを舞台に繰り広げるミュージカル。3人が埠頭に降り立って最初に歌うのは「ニューヨーク、ニューヨーク」。振付もジーン・ケリーが担当した。著者はヴェラ=エレンの踊りが良かったと。

踊る大紐育(ニューヨーク) dvd.jpg「踊る大紐育」●原題:ON THE TOWN●制作年:1949年●制作国:アメリカ●監督:スタンリー・ドーネン●製作:アーサー・フリード●脚本:ベティ・カムデン/アドルフ・グリーン●撮影:ハロルド・ロッソン●音楽:レナード・バーンスタイン●原作:ベティ・カムデン/アドルフ・グリーン●時間:98分●出演:ジーン・ケリー/フランク・シナトラ/ジュールス・マンシン/アン・ミラー/ジュールス・マンシュイン/ベティ・ギャレット/ヴェラ・エレン●日本公開:1951/08●配給:セントラル●最初に観た場所:テアトル新宿(85-09-23)

巴里のアメリカ人 ポスター.jpg⑧「巴里のアメリカ人」 ('51年/米)著者 ☆☆☆☆★(85点)自分 ★★★★(80点)
巴里のアメリカ人2.jpg巴里のアメリカ人 dvd.jpg 音楽はジョージ・ガーシュイン。踊りもいいし、ストーリーも良く出来ている。著者の言う様に、舞台装置をユトリロやゴッホ、ロートレックなど有名画家の絵に擬えたのも楽しい。著者は「一番感心すべきはジーン・ケリー」としているが、アクロバティックな彼の踊りについていくレスリー・キャロンも中国雑伎団みたいで凄い(1951年アカデミー賞作品)。

ジーンケリーとレスリーキャロン.jpg巴里のアメリカ人09.jpg「巴里のアメリカ人」●原題:AN AMERICAN IN PARIS●制作年:1951年●制作国:アメリカ●監督:ヴィンセント・ミネリ●製作:アーサー・フリード●脚本:アラン・ジェイ・ラーナー●撮影:アルフレッド・ギルクス●音楽:ジョージ・ガーシュイン●時間:113分●出演:ジーン・ケリー/レスリー・キャロン/オスカー・レヴァント/ジョルジュ・ゲタリー/ユージン・ボーデン/ニナ・フォック●日本公開:1952/05●配給:MGM日本支社●最初に観た場所:高田馬場パール座(78-05-27)●併映:「シェルブールの雨傘」(ジャック・ドゥミ)

⑨「バンド・ワゴン」('53年/米)著者 ☆☆☆☆★(85点)自分 ★★★★(80点)
バンド・ワゴン08.jpgバンド・ワゴン2.jpgバンド・ワゴン.jpgバンド・ワゴン 特別版 [DVD].jpgシド・チャリシー.jpg 落ち目のスター、フレッド・アステアの再起物語で、「イースター・パレード」以上にショー・ビズもの色合いが強い作品だが、コメディタッチで明るい。ストーリーは予定調和だが、本書によれば、ミッキー・スピレーンの探偵小説のパロディが織り込まれているとのことで、そうしたことも含め、通好みの作品かも。但し、アステアとシド・チャリシーの踊りだけでも十分楽しめる。シド・チャリシーの踊りも、レスリー・キャロンと双璧と言っていぐらいスゴイ。

THE BANDO WAGON.jpg「バンド・ワゴン」●原題:THE BANDO WAGON●制作年:1953年●制作国:アメリカ●監督:ヴィンセント・ミネリ●製作:アーサー・フリード●脚本:ベティ・コムデン/アドルフ・グリーン●撮影:ハリー・ジャクソン●音楽:アドルフ・ドイッチ/コンラッド・サリンジャー●時間:112分●出演:フレッド・アステア/シド・チャリシー/オスカー・レヴァント/ナネット・ファブレー●日本公開:1953/12●配給:MGM●最初に観た場所:テアトル新宿(85-10-19)

⑩「パリの恋人」('53年/米)著者 ☆☆☆☆(80点)自分 ★★★☆(70点)
パリの恋人dvd.jpg『パリの恋人』(1957).jpgパリの恋人 映画ポスター.jpg 著者曰く「すばらしいファション・ミュージカル」であり、オードリー・ヘプバーンの魅力がたっぷり味わえると(原題の「ファニー・フェイス」はもちろんヘップバーンのことを指す)。
Funny Face.jpg 衣装はジバンシー、音楽はガーシュウィンで、音楽と併せて、女性であればファッションも楽しめるのは確か。
'S Wonderful.bmp ちょっと「マイ・フェア・レディ」に似た話で、「マイ・フェア・レディ」が吹替えなのに対し、こっちはオードリー・ヘプバーン本人の肉声の歌が聴ける。それにしても、一旦引退したこともあるはずのアステアが元気で、とても57才とは思えない。結局、更に20余年、「ザッツ・エンタテインメント」('74年)まで活躍したから、ある意味"超人"的。

『パリの恋人』(1957) 2.jpgパリの恋人 パンフ.jpg「パリの恋人」●原題:FUNNY FACE●制作年:1956年●制作国:アメリカ●監督:スパリの恋人 パンフ.jpgタンリー・ドーネン●製作:アーサー・フリード●脚本:レナード・ガーシェ●撮影:レイ・ジューン●音楽:ジョージ・ガーシュウィン/アドルフ・ドイッチ●時間:103分●出演:オードリー・ヘプバーン/フレッド・アステア/ケイ・トンプスン/ミシェル・オークレール●日本公開:1957/02●配給:パラマウント映画●最初に観た場所:高田馬場ACTミニシアター(85-11-03)●併映:「リリー・マルレーン」(ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー) 
南太平洋パンフレット.jpg
⑪「南太平洋」('58年/米)著者 ☆☆☆★(65点)自分 ★★★☆(70点)
  1949年初演のブロードウェイ版の監督であるジョシュア・ローガンが映画版でもそのまま監督したもので、ハワイのカウアイ島でロケが行われた(一度だけ行ったことがあるが、火山活動によって出来た島らしい、渓谷や湿地帯ジャングルなど、野趣溢れる自然が満喫できる島だった)。
 著者は「戦時色濃厚な」作品であるため、あまり好きになれないようだが、それを言うなら、著者が高得点をつけている「シェルブールの雨傘」などは、フランス側の視点でしか描かれていないとも言えるのでは。超エスニック、大規模ロケ映画で、空も海も恐ろ「南太平洋」(自由が丘武蔵野館).jpgしいくらい青い(カラーフィルターのせいか?)。トロピカル・ナンバーの定番になった主題歌「バリ・ハイ」や「魅惑の宵」などの歌曲もいい。

「南太平洋」映画チラシ/期間限定再公開(自由が丘武蔵野館) 1987(昭和62)年7月4日~7月31日 
       
                                             
南太平洋(87R).jpg南太平洋.jpg「南太平洋」●原題:SOUTH PACIFIC●制作年:1958年●制作国:アメリカ●監督:ジョシュア・ローガン●製作:バディ・アドラー●脚本:ポール・オスボーン●撮影:レオン・シャムロイ●音楽:リチャード・ロジャース●原作:ジェームズ・A・ミッチェナー ●原作戯曲:オス自由が丘武蔵野館.jpgカー・ハマースタイン2世/リチャード・ロジャース/ジョシュア・ローガン●時間:156分●出演:ロッサノ・ブラッツィ/ミッチー・ゲイナー/ジョン・カー/レイ・ウォルストン/フランス・ニューエン/ラス・モーガン●日本公開:1959/11●配給:20世紀フォックス●最初に観た場所:自由が丘武蔵野館(87-07-05)(リバイバル・ロードショー) 自由が丘武蔵野館 (旧・自由が丘武蔵野推理) 1951年「自由が丘武蔵野推理」オープン。1985(昭和60)年11月いったん閉館し改築、「自由が丘武蔵野館」と改称し再オープン。2004(平成16)年2月29日閉館。

⑫「黒いオルフェ」('59年/仏)著者 ☆☆☆☆(80点)自分 ★★★★(80点)
黒いオルフェ2.jpg黒いオルフェ (1959).jpg黒いオルフェ dvd.jpg 娯楽作品と言うより芸術作品。ジャン・コクトーの「オルフェ」('50年)と同じギリシア神話をベースにしているとのことだが、ちょっと難解な部分も。著者も言うように、リオのカーニヴァルの描写が素晴らしい。

「黒いオルフェ」●原題:ORFEO NEGRO●制作年:1959年●制作国:フランス●監督:マルセル・カミュ●製作:バディ・アドラー●脚本:マルセル・カミュ/ジャック・ヴィオ●撮影:ジャン・ブールゴワン●音楽:アントニオ・カルロス・ジョビン/ルイス・ボンファ●原作:ヴィニシウス・デ・モライス●時間:107分●出演:ブレノ・メロ/マルペッサ・ドーン/マルセル・カミュ/ファウスト・グエルゾーニ/ルルデス・デ・オリベイラ/レア・ガルシア/アデマール・ダ・シルバ●日本公開:1960/07●配給:東和●最初に観た場所:八重洲スター座(79-04-15)

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"ヴォーグ"のトップ・モデルで、映画「詩人の血」にも主演した、才色兼備の写真家。

リー・ミラー写真集.jpg  Lee Miller.bmp Lee Miller (1907-1977)photo by Man Ray/Self-Portrait(下右)
(27.4 x 22.8 x 2.4 cm)『リー・ミラー写真集 -いのちのポートレイト-』 ['03年]
Lee Miller2.jpg
 モデルや女優から写真家になった人は多く、かのレニ・リーフェンシュタール(1902-2003)も元は女優であり、キャンディス・バーゲンも一時は写真家の方が本業だったし、日本でも元ミス・ユニバース日本代表の織作峰子や元モデルの桐島ローランド、男性まで含めると加納典明(俳優と兼業だった)もいて、最近では福山雅治、松田美由紀まで"参入"しているけれど、この辺りになると実力のほどはよく分からない...。

Man Ray and Lee Miller.jpg そうした中(と言っても、この中で比べて差し支えないにはレニぐらいだろうが)、このリー・ミラー(Lee Miller)は、モデルとしても写真家としても一流だったと言えるでしょう。

Man Ray and Lee Miller

 雑誌"ヴォーグ"のトップ・モデルだった22歳の時に写真家に転身、マン・レイに師事するとともに、マン・レイの以前の恋人だった"モンパルナスのキキ"から彼を奪って彼の愛人になってしまうのですが、初期の頃はファッション写真やポートレートを撮っていたのが、第二次世界大戦の戦場に赴いて戦場ジャーナリストになりました。

Lee Miller3.jpgLee Miller 1.jpg 戦場に向かう女性将校や戦場に斃れた兵士などを撮り、自決したナチの将校や頭髪を剃られたナチ協力者の女性、殴られて顔が変形したナチ収容所の元警備兵などの生々しい写真もありますが、ファッション写真を撮っていた頃に既にシューレアリストから強い影響を受けており(彼女はジャン・コクトー監督の「詩人の血」('30年/仏)に"生きた彫像"役で出ている。面白いけれど評価不能に近いシュールな映画だった)、そうした勇壮な、或いは悲惨な写真においても、その光と影の使い方にシュールな感覚が見られ、その覚めた意匠が、却って報道写真としての説得効果を増しているように思います。

Lee Miller in Hitler's bath.jpgLee Miller.jpg 戦後はポートレートに復帰し、長年親交のあった画家ピカソの日常の"素"の姿を写し撮っていて、そのくつろいだ様が興味深いですが、その他にも多くの芸術家や映画俳優の写真を残しています。
 しかし、一番美しく撮れているのが彼女自身のポートレートであり、この写真集の中でそれに匹敵する美人と言えば、彼女が撮ったマレーネ・デートリッヒぐらいでしょうか。
 この写真集を見ていると、ついミラー自身のセルフポートレートや撮影の合間に自分がモデルになって撮られた写真に目が行っていまいます。

Lee Miller in Hitler's bath (ヒトラーの浴室のミラー 1945.5.1)

 まさに才色兼備、生き方も奔放だったようで、彼女について書かれた伝記もあり彼女自身も文筆家でしたが、'60年代以降の活動がやや地味だったこともあり(自分の仕事をやり尽くしてしまった感じがした?)、20世紀の「伝説の写真家」と言っていい女性です。

詩人の血.jpg「詩人の血」(1930年).jpg詩人の血1.jpg 「詩人の血」●原題:LE SANG D'UN POETE●制作年:1930年●制作国:フランス●監督・脚本:ジャン・コクトー●製作:ド・ノアイユ伯爵●撮影:ジョルジュ・ペリナール●音楽:ジョルジュ・オーリック●時間:50分●出演:リー・ミラー/ポリーヌ・カルトン/オデット・タラザック/エンリケ・リベロ/ジャン・デボルド●パリ公開:1930/01(プレミア上映)●最初に観た場所:新宿アートビレッジ (79-03-02)(評価:★★★?)●併映:「忘れられた人々」(ルイス・ブニュエル)/「アンダルシアの犬」(ルイス・ブニュエル/サルバトーレ・ダリ)

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1篇1篇は旨くまとめているなあという気がしたが...。「デッドゾーン」を思い出した。

死神の精度.jpg  死神の精度 文庫.jpg     デッドゾーン dvd.jpg ビデオドローム.jpg ザ・フライ dvd.jpg
死神の精度』 ['05年] 『死神の精度 (文春文庫)』 ['08年]/デヴィッド・クローネンバーグ「デッドゾーン デラックス版 [DVD]」「ビデオ・ドローム [DVD]」「ザ・フライ (特別編) [DVD]

 2004(平成16)年・第57回 「日本推理作家協会賞」(短編部門)受賞作(連作の第1部「死神の精度」に対する授賞)。

 人の死の1週間前に派遣され、その死について「可」または「見送り」の判断をすることを仕事とする死神の千葉は、クールでちょっとズレている雨男だが、その彼が、大手電機メーカーの苦情係の女性、兄貴分を守ろうとするヤクザ、吹雪でホテルに雪隠詰めになった宿泊客たち、近隣女性に恋するブティックの男性店員、逃走中の殺人犯、美容院店主の老婆の前にそれぞれ現れる連作。

 死という重いテーマを敢えて軽いタッチで扱っていて、最初は星新一のショートショートでも読んでいるような感じでしたが、千葉の冷静さを鏡として登場人物の心の機微もそれなりに描かれていて、結構突飛な(?)状況設定の割には、1篇1篇は旨く纏めているなあという気がしました。ゴダールの影響は引用フレーズなどでの面でのことであり、モチーフとしては、握手した相手の未来が見えるというスティーブン・キング『デッド・ゾーン』('87年/新潮文庫(上・下))に近いのでは...。

 作者が直木賞候補になったのは'03年『重力ピエロ』、'04年の『チルドレン』『グラスホッパー』に続き本作が4回目で、この時は東野圭吾氏の『容疑者χの献身』が受賞していますが、個人的には『死神の精度』の方がやや面白いかなあと(『グラスホッパー』の対抗馬が角田光代氏の『対岸の彼女』だったのはいたしかたないが)。この後'06年に『砂漠』でも直木賞候補となっていますが、'08年に『ゴールデンスランバー』が候補になったとき、ノミネート辞退をしています。

 ただ、この作品に関しても、「吹雪に死神」がいきなり本格推理調だったり(パロディなのか?)、最後の「死神対老女」が必ずしもそれまでの5話を収斂し切れているように思えなかったりし、全体構成において少し不満も残りました。

 直木賞の選考委員の何人かが、時には死神の精度が狂って失敗するケースも加えた方が良かったのではないかと言っていましたが(渡辺淳一、井上ひさし両氏)、仮にそうするならばそれはモチーフ自体の改変であり、かなり違った展開になってしまうような...。但し、タイトルはそうしたこともあるのかなあと思わせるタイトルなので紛らわしい気もしました(読んでみれば"精度100%"で、あとは死神が「可」の判断をするかどうかということだけではないか)。その最終判断にも、もう少し「見送り」の作品があってもよかったのではとの意見もありましたが(平岩弓枝氏)、それは言えているような気がします。

 「恋愛で死神」なども読後感は悪くなかったですが、ややメルヘンっぽい。阿刀田高氏さえ、「もっと深い思案があってよかったのではないか」と言っているぐらいで、この人が「△」では、他の直木賞選考委員も引いてしまうのではないかと個人的にも思ったりして...。― 殆ど、「選評」評になってしまいましたが。

 因みに、スティーブン・キングの『デッド・ゾーン』は、当時無名のデヴィッド・クローネンバーグ監督が「デッドゾーン」('83年/米・カナダ)として映画化し、'84年のアボリアッツ・ファンタスティック映画祭で批評家賞受賞、'85年6月の東京国際映画祭の"ファンタスティック映画祭"で観ましたが、キング原作の映画化作品の中ではいい方だったのではないかと。

ヴィデオドローム パンフ.jpgVideodrome [1982].jpg 当時の評判も良かったみたいで、同月には渋谷ユーロスペースで同監督の前作「ヴィデオドローム」('82年/カナダ)が上映され、ジェームズ・ウッズ主演のこの作品は見た人の性格を変える暴力SMビデオによって起きる殺人を描いたもので(鈴木光司原作の日本映画「リング」はこれのマネか?)、この2作でクローネンバーグの名は日本でも広く知られるようになりました(「ヴィデオドローム」は、ちょっと気持ち悪いシーンがあり、イマイチ)。
Videodrome [1982] /パンフレット

ヴィデオドローム01.jpg ヴィデオドローム02.jpg Videodrome
 
蠅.jpgザ・フライ.jpg その後、クローネンバーグは、ジョルジュ・ランジュラン原作、カート・ニューマン監督の「ハエ男の恐怖(The Fly)」('58年/米)のリメイク作品「ザ・フライ」('86年/米)を撮り(ホント、"気色悪い"系が好きだなあ)、ジェフ・ゴールドブラムが変身してしまった「ハエ男」が最後の方では「カニ男」に見えてしまうのが難でしたが、ストーリーはなかなかの感動もので、ラストはちょっと泣けました。                   

デッドゾーン パンフ.jpgデッドゾーン 映画.jpg 「デッドゾーン」ではクリストファー・ウォーケンが演じる何の前触れもなく突然に予知能力を身につけてしまった主人公の男(スティーヴン・キングらしい設定!)は、将来大統領になって核ミサイルの発射ボタンを押すことになる男(演じているのは、後にテレビドラマ「ザ・ホワイトハウス」で合衆国大統領役を演じることになるマーティン・シーン)に対して、彼の政治生命を絶つために犠牲を払って死んでしまうのですが(未来を変えたということか)、これならストーリー的にはいくらでも話が作れそうな気がして、これきりで終わらせてしまうのは勿体無いなあと思っていたら、約20年を経てTVドラマシリーズになりました(テレビドラマ版の邦題は「デッド・ゾーン」と中黒が入る)。
The Dead Zone [1983] /パンフレット

アンソニー・マイケル・ホール 「デッドゾーン」s.jpg「デッドゾーン」    ドラマ.jpg テレビドラマ版「デッド・ゾーン」で主役のアンソニー・マイケル・ホールを見て、雰囲気がクリストファー・ウォーケンに似ているなあと思ったのは自分だけでしょうか。意図的にクリストファー・ウォーケンと重なるイメージの俳優を主役に据えたようにも思えます。

                      
'85年東京国際映画祭"ファンタスティック映画祭"カタログより
コデッドゾーン20761.jpgデッドゾーン dvd.jpg「デッドゾーン」●原題:THE DEAD ZONE●制作年:1983年●制作国:アメリカ・カナダ●監督:デヴィッド・クローネンバーグ●製作:デブラ・ヒル●脚本:ジェフリー・ボーム●撮影:マーク・アーウィン●音楽:マイケル・ケイメン●原作:スティーヴン・キング●時間:103分●出演:クリストファー・ウォーケン/マーティン・シーン/ブルック・アダムス/トム・スケリット/ハーバート・ロム/アンソニー・ザーブ●日本公開:1985/06●配給:ユーロスペース●最初に観た場所:渋谷パンテオン (85-06-06)(評価★★★☆)

ビデオドローム.jpg「ヴィデオドローム」●原題:VIDEODROME●制作年:1982年●制作国:カナダ●監督・脚本:デヴィッド・クローネンバーグ●製作:クロード・エロー●撮影:マーク・アーウィン●音楽:ハワード・ショア ●時間:87分●出演:ジェームズ・ウッズ/デボラ・ハリー/ソーニャ・スミッツ/レイ・カールソン/ピーター・ドゥヴォルスキー●日本公開:1985/06●配給:欧日協会(ユーロスペース)●最初に観た場所:渋谷ユーロスペース (85-07-21)(評価★★★)
ヴィデオドローム5.jpgヴィデオドローム04.jpgヴィデオドローム03.jpg
David Cronenberg & James Woods

ザ・フライ dvd.jpgザ・フライges.jpg「ザ・フライ」●原題:THE FLY●制作年:1986年●制作国:アメリカ●監督・脚本:デヴィッド・クローネンバーグ●製作:スチュアート・コーンフェルド●撮影:マーク・アーウィン●音楽:ハワード・ショア ●原作:ジョルジュ・ランジュラン「蠅」●時間:87分●出演:ジェフ・ゴールドブラム/ジーナ・デイヴィス/ジョン・ゲッツ/ジョイ・ブーシェル/レス・カールソン/ジョージ・チュヴァロ/マイケル・コープマン●日本公開:1987/01●配給:20世紀フォックス●最初に観た場所:大井武蔵野舘 (87-07-19)(評価★★★★)●併映:「未来世紀ブラジル」(テリー・ギリアム)


デッド・ゾーン tv.jpgデッドゾーン」.jpg「デッド・ゾーン」The Dead Zone (USA 2002~2007) ○日本での放映チャネル:AXN(2005~2010)
デッド・ゾーン シーズン5 コンプリートBOX [DVD]


 【2008年文庫化[文春文庫]】

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ストレートに感動したが、神父の頼みは、いくら相手と強い友情で結ばれているとは言え、酷すぎるのでは?

Angels with Dirty Faces(1938).jpg汚れた顔の天使ポスター.jpg 汚れた顔の天使1.jpg    汚れた顔の天使5jpg.jpg 
Angels with Dirty Faces(1938)/ポスター/「汚れた顔の天使 特別版 [DVD]」/スチール

汚れた顔の天使4.jpg 幼い頃に不良仲間だったロッキー(ジェームズ・キャグニー)とジェリー(パット・オブライエン)だが、ロッキーは、2人でやった盗みの罪を自分1人で被ったことから転落の道を辿り、今やいっぱしのギャングとして、街の不良少年のヒーローとなっていた。ある「汚れた顔の天使」1.jpg日、刑務所を出所したばかりのロッキーは、今では神父となって貧しい少年達にスポーツを教えているジェリーを訪ね、旧交を温めるも、一方で、金を巡るトラブルで悪徳弁護士(ハンフリー・ボガート)を殺し、警官との大立ち回りの末に逮捕され、裁判で死刑宣告を受ける―。   Humphrey Bogart & James Cagney

汚れた顔の天使3.jpg 自らが死刑なるというのに「電気椅子に座るのなんか、床屋の椅子に座るのと同じだ」と言って平然としているロッキー。このままロッキーにギャングに相応しい堂々とした死に方をされては、少年達がますます彼を敬愛することになるであろうことを危惧したジェリーは、ギャングらしく死のうとするロッキーに対し、全く逆の行動を取るよう最後の頼みを託す―。

 ストレートに感動しました。ちょっと甘い感じもある作品ですが(強面のギャング役で鳴らしたですジェームズ・キャグニーがこの役を受けるかどうか当初は危惧された)、キャグニーがギャングぶりを発揮する部分については犯罪映画としてサスペンスフルかつロッキーの非情ぶりがストレートに描かれていて(脇役時代と言え、あのハンフリー・ボガートが裏切り者としてあっさりキャグニーに殺されてしまうぐらい)、ギャング映画としてのリアリティが、物語に厚みを持たせているように思いました。

『汚れた顔の天使』(1938).jpg でも、ちょっと冷静になって考えると、神父がロッキーに託した願いというのは、ロッキーにとって、自分のように誤った道を歩むことのないようにという子供達へのメッセージになるのかも知れないですが、同時に、自ら人生を全否定せしめるようなものであり、それを受ける側(ロッキー)もともかく、頼む方(神父)も、いくら相手と強い友情で結ばれているとは言っても、よくこんな酷なことを頼んだなあという感じも。

「汚れた顔の天使」3.jpg 結局、ロッキーは刑吏らにも嘲られながら死んでいくわけで、死に行く者に対してこんなキツイお願いはないだろうなあと。
 ロッキーは土壇場で死刑が怖くなったともとれ、和田誠氏によれば、キャグニー自身、後に自伝で「どちらともとれるように演じた」と語っているそうですが(『お楽しみはこれからだ PART3』 ('80年/文藝春秋))、最後に友人の頼みを聞き入れたととtるのがスジでしょう。
 神父は、いつか自分が面倒を見ている子供達が立派な大人になった時に、ロッキーの最期についての真実を話してあげるべきでしょうね。

 ある意味、ロッキーは、神父が将来そうするであろうことを確信しているから、神父の願いを聞き入れたのかも。そう考えないと、リアリティが弱いような...。

Yogoreta kao no tenshi (1938).jpg「汚れた顔の天使」2.jpg「汚れた顔の天使」●原題:ANGEL WITH DIRTY FACE●制作年:1938年●制作国:アメリカ●監督:マイケル・カーティス●製作:サミュエル・ビショフ●原案:ローランド・ブラウン●脚本:ジョン・ウェクスリー/ウォーレン・ダフ/ローランド・ブラウン●撮影:ソル・ポリート●音楽:マックス・スタイナー●時間:98分●出演:ジェームズ・キャグニー/パット・オブライエン/ハンフリー・ボガート/アン・シェリダン/ジョージ・バンクロフト●日本公開:1939/11●配給:ワーナー・ブラザーズ(評価:★★★★)
Yogoreta kao no tenshi (1938)

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"quick read but strong "。スタインベックに「文学の神様」が宿った時期の作品。

『ハツカネズミと人間』.JPGハツカネズミと人間.jpg   二十日鼠と人間 新潮文庫.jpg     二十日鼠と人間.jpg 
ハツカネズミと人間 (新潮文庫)』['94年/'53年]/映画「二十日鼠と人間 [DVD]

Of Mice and Men.jpg 小さな家と農場を持ち、そこでウサギを飼い、土地のくれる一番いいものを食べて暮らすこと夢見るジョージとレニーは、共に農場を渡り歩く期間労働者で、ジョージは小柄ながら知恵者、一方のレニーは巨漢だがちょっと頭が鈍いという具合に対照的ながらも、いつも助け合って生きてきた―この2人がある日また新たな農場にたどり着くが、そこには思わぬ悲劇が待ち受けていた―。

 1937年に出版された米国人作家ジョン・スタインベック(John Steinbeck、1902‐1968/享年66)の中編小説で、以前読んだ大門一男訳に対し、入れ替わりで新潮文庫に入った大浦暁生訳は題名の「二十日鼠」の表記がカタカナになっているなどの違いはありますが、文庫で約150ページと再読するにも手頃で、それでいて、初読の際の時の衝撃が甦ってくるものでした(洋書の書評に"quick read but strong "とあったが、まさにその通り)。

 1930年代の大恐慌時代のカリフォルニア州が舞台なのですが、スタインベック自身の季節労働者としての経験がベースになっており、寓話的でありながらも細部にリアリティがあるし、ラマ使いの名人で農場労働者のリーダー格のスリムや厩に住む黒人クルックスなど、短い物語の中に、極めて印象に残る人物が見事に配置されているように思いました(特にスリム、このキャラクターは渋い!)。

 ラストのジョージの苦渋の行動は、知恵遅れのレニーがいつも問題を起こすための2人で農場を転々としてきた過去の経緯があり、その上で、今度こそはもう手の打ちようがないという判断の末でのことでしょう。
 キャンディという老人が、自らが可愛がっていた老犬の処分を他人に委ね、後で「あの犬は自分で撃てばよかった」と悔いるエピソードが、伏線として効いています。

『怒りの葡萄』(1940).jpg怒りの葡萄 ポスター.jpg怒りの葡萄.gif スタインベックはこの作品でその名を知られるようなり、2年後に発表した、旱魃と耕作機械によって土地を奪われた農民たちのカリフォルニアへの旅を描いた『怒りの葡萄』('39年)でピューリツァー賞を受賞しますが、共に映画化されており、「二十日鼠と人間」は'39年と'92年に映画化されているものの未見、ジョン・フォード監督の「怒りの葡萄」('40年/米)は吉祥寺の「ジャヴ50」で深夜に観ましたが、電車の座席みたいな長椅子の客席に集った客の半分が外国人でした(同劇場でその少し前に「わが谷は緑なりき」('41年/米)を観た時もそうだった)。

 刑務所帰りの貧農の息子をヘンリー・フォンダが好演しており(彼はこの作品で"もの静かに不正に向かって闘う男"というイメージを確立)、母親とまた別れなければならないという結末のやるせなさが「Red River Valley」のテーマと共に心に残りましたが、アメリカ人は、こうした作品に日本人以上に郷愁を感じるのでしょう(個人的には、小津安二郎や山田洋次の家族モノに通じるものを感じたりもしたのだが)。

EAST OF EDEN 1955 dvd.bmpエデンの東ポスター.jpgEast of Eden.jpg ジェームズ・ディーンがその演技への評価を確立したとされるエリア・カザン監督の「エデンの東」('55年)も、スタインベックの『エデンの東』('50年)がベースになっているのですが、原作が南北戦争から第1次世界大戦までの60年間の2つの家族の3代にわたる歴史を綴った4巻56章から成る膨大な物語であるのに対し、映画の中で描かれているのは最後のほんの一時期のみで1家族2世代の話に圧縮されており、実質的には、父に好かれたいがそれが叶わないケイレブ(キャル)・トラスク (ジェームズ・ディーン)の苦悩の物語となっています。「エデンの東」の原作は読んでいませんが、スタインベックは後期作品ほど大味の嫌いがあるらしく(エリア・カザンの翻案は当然の選択だったのだろう)、そうした意味では『二十日鼠と人間』は、スタインベックに「文学の神様」が宿った時期の作品であると言えるかと思います。

「怒りの葡萄」ポスター(和田 誠
THE GRAPES OF WRATH 1940.jpg怒りの葡萄 和田誠ポスター.jpg「怒りの葡萄」●原題:THE GRAPES OF WRATH●制作年:1940年●制作国:アメリカ●監督:ジョン・フォード●製作:ダリル・F・ザナック●脚本:ナナリー・ジョンソン●撮影:グレッグ・トーランド●音楽:アルフレッド・ニューマン●原作:ジョン・スタインベック●時間:128分●出演:ヘンリー・フォンダ/ジェーン・ダーウェル/ジョン・キャラダイン/チャーリー・グレイプウィン/ドリス・ボードン/ラッセル・シンプソン/メエ・マーシュ/ウォード・ボンド●日本公開:1963/01●配給:昭映フィルム●最初に観た場所:吉祥寺ジャヴ50(84-07-14)(評価:★★★★)
  
「エデンの東」 公開時ポスター/1977年公開時チラシ
east of eden  1955.jpg「エデンの東」ps.jpgエデンの東 1977年公開時チラシ.bmp「エデンの東」●原題:EAST OF EDEN●制作年:1955年●制作国:アメリカ●監督・製作:エリア・カザン●脚本:ポール・オスボーン●撮影:テッド・マッコード●音楽:レナード・ローゼンマン●原作:ジョン・スタインベック●時間:115分●出演:ジェームズ・ディーン/ジュリー・ハリス/レイモンド・マッセイ/バール・アイヴス/リチャード・ダヴァロス/ジュー・ヴェン・フリート/エデンの東<サントラ盤>.jpgEAST OF EDEN3.jpgアルバート・デッカー/ロイス・スミス/バール・アイヴス●日本公開:1955/10●配給:ワーナジュリー・ハリス_3.jpgー・ブラザース●最初に観た場所:池袋文芸坐(79-02-18)●2回目:テアトル吉祥寺(82-09-23)(評価:★★★☆)●併映(1回目):「理由なき反抗」(ニコラス・レイ)●併映(2回目):「ウェストサイド物語」(ロバート・ワイズ)

Julie Harris(1925-2013)
           
"Of Mice and Men" from Iron Age Theatre(舞台劇「二十日鼠と人間」)
Of Mice and Men 1.jpg Of Mice and Men 3.jpg

 【1953年文庫化[新潮文庫(大門一男訳)]/1994年再文庫化[新潮文庫(『ハツカネズミと人間』大浦暁生訳)]】

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自分まで沼に浸かっている気分になった。プロパガンダに走っていないのがいい。
無人の野 パンフ.bmp 無人の野.jpg 無人の野 ポスター.jpg CANH DONG HOANG2.png Lam Toi
映画パンフレット 「無人の野」 監督 グェン・ホン・セン 出演 グェン・トゥイ・アン/ラム・トイ/グェン・ホン・トゥアン/ダオ・タイン・トゥイ/ホン・チー/ロバート・ハイ」「【映画チラシ】無人の野/監督・グェン・ホン・セン

CANH DONG HOANG1.jpgグェン・ホン・セン 「無人の野」 (80年/ベトナム).jpg 舞台はベトナム戦争後期の1972年のメコンデルタ。葦の茂る水上家屋に住む若い家族(夫婦は解放戦線の連絡員をしている)の愛情溢れる暮らしと、命の危険に晒されながらも連絡員としての任務を果たそうとするしたたかな様を、リアルに描いています。

 アメリカ軍のヘリに襲撃されたりもしながらも、彼らの目を巧みにくらまし(ヘリが襲ってくると大人は沼に潜って竹筒で呼吸し見つからないようにするのだが、幼児はビニール袋に入れてそのまま沼に沈めて隠すというのがスゴかった)、自活するために水稲作を行無人の野1.jpgいながらも、時に負傷者を助け、更には解放戦線の作戦を援護するなど、いつも沼地に腰まで浸かりながら八面六臂の活躍を見せます。ああ、こうしてアメリカ軍の侵攻を阻んだのだなあと思わせる"戦術解き明かし"のような内容ですが、最後に夫がヘリに囲まれて悲劇が―。

無人の野 撮影風景.jpg 映画的には、水面の高さでのカメラワークが素晴らしい(自分まで沼に浸かっている気分になった)一方で、ヘリからの空撮と地上から見たヘリとの距離感が整合しないなどの粗い作りの部分もありますが(予算的・技術的要因によるものかも)、そうしたことを勘案しても佳作だと思います。

「無人の野」撮影風景

 ベトナム戦争が終わって5年後に作られた作品であることを思えば、当時のかなり高い水準に達していると思うし、日本で観ることができた当時の数少ないベトナム映画の1つという点でも貴重な作品。ベトナム側の視点で作られた映画であるにも関わらず、プロパガンダに走らず、撃墜された米軍ヘリのパイロットの家族の写真を映し出すなど、普遍的な平和への願いが込められているように感じました。

 '07年にNHK‐BSで再放映されましたが、今やすっかり友好国同士になったなあ、アメリカとベトナムは。やはり、経済的互恵というのは大きいのか。それで平和が保たれるならそれに越したことはないとは思いますが...。

グェン・ホン・セン 「無人の野」.jpg「無人の野」●原題:CANH DONG HOANG●制作年:1980年●制作国:ベトナム●監督:グェン・ホン・セン●脚本:グェン・クァン・サン●撮影:ズオン・トゥアン・バ●音楽:チン・コン・ソン●時間:95分●出演:グェン・トゥイ・アン/ラム・トイ/グェン・ホン・トゥァン/ダオ・タイン・トゥイ●日本公開:1982/08●配給:「無人の野」普及委員会●最初に観た場所:高田馬場ACTミニシアター(83-03-19)(評価:★★★★)
ACTミニ・シアター.jpgACTミニ・シアター2.jpg早稲田通りビル.jpg高田馬場(西早稲田)ACTミニシアター 1970年代開館。2000(平成12)年頃 閉館(活動休止)




  
ACTミニシアターのチラシ.gif

ACTミニシアターのチラシ http://d.hatena.ne.jp/oyama_noboruko/20070519/p1 大山昇子氏「女おいどん日記」より

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ノルマンディ作戦の「第1号の犠牲者」となった青年を通して、戦争の非人間性を浮き彫りに。

兵士トーマス チラシ.jpg OVERLORD.jpg 兵士トーマス パンフレット.jpg 兵士トーマス  01.jpg
「兵士トーマス」チラシ/クライテリオン版DVD/シナリオ付パンフレット (「シネ・フロント」別冊)

Overlord, Dir Stuart Cooper, UK 1975 1.jpg 第二次世界大戦中、イギリスに住むごく普通の二十歳の青年の元に召集令状が届く。彼が両親に別れを告げて戦地に赴き、ノルマンディ上陸作戦において戦死するまでを、ドキュメンタリーフィルムを交えて淡々と描いた佳作。

兵士トーマス 02.jpg と言っても、通常の戦争映画とは異なり、兵営における非人間的な部隊生活の中で主人公の将来が少しずつ奪われていくような様や、そうした中、村のダンス・ホールで知り合った若い娘への想いを抱くも、前線に送られることが決まって、束の間の若者らしい夢も立ち切れられ、21歳にして遺言状を書くに至るまでの心理的経緯など、ノルマンディに向かうまでに主人公の身辺及び心の中での出来事が映画の大部分を占めています。

Overlord, Dir Stuart Cooper, UK 1975.jpg モノクロですが、膨大な量を誇る大英帝国戦争博物館の未公開フィルムがふんだんに使われていて、ラストのノルマンディの戦闘シーンは、実際の空爆の映像なども交え、兵士の視点からの臨場感にあふれたものとなっています。

SOLDIER'S STORY.jpg 主人公の青年は上陸艇から1歩踏み出したところで流れ弾に当たり、あまりにあっけなく死んでしまう―(普通の戦争映画ならここからがヤマなのだが、青年の視点から描かれたこの映画はここで終わる)。

映画スチール 「兵士トーマス」3.jpg 自らの死に脅えつつも(彼は自分の死ぬ場面の悪夢に悩まされ続ける)、遺言状をしたためたぐらいですから、主人公には死の覚悟がそれなりあったかと思われますが、それでもやはり、戦わずしてノルマンディ上陸作戦の「第1号の犠牲者」となった彼にとって("彼"自身は勿論架空の人物であると思われるが)戦争とは何だったのか、果たして「犠牲者」ということで片付けてよいものなのかと考えさせられます。

 国家と国家の争いの中で、主人公個人の死は、ある種の「数」(または、全体に対する「対数」)に過ぎないものとなってしまうのでしょう(だから、「犠牲」という言葉が使われる)。しかし、彼にとって自身の生は、かけがいのないものであったはずであり、但し、そうした生きたいという彼の人間的な気持ちに顧慮してはならないのが戦争であり、あくまでも人間を「駒」として捉えるという戦争の非人間性を見事に浮き彫りにした作品となっています。また、戦勝国であるイギリスので作られた映画であるだけに、ことさらに重いものがあります。
   
映画スチール 「兵士トーマス」1.jpg映画スチール 「兵士トーマス」2.jpg「兵士トーマス」●原題:OVERLORD●制作年:1975年●制作国:イギリス●監督:スチュアート・クーパー●製作:ジェームズ・クイン●脚本: クリストファー・ハドソン/スチュアート・クーパー●撮影:ジョン・オルコット●音楽:ポ自由が丘武蔵野推理2.jpgール・グラス●時間:84分●出演:ブライアン・スターナー/デヴィッド・ハリーズ/ ニコラ自由ガ丘武蔵野推理2.jpgス・ボール●日本公開:1978/07●配給:日本ヘラルド映画●最初に観た場所:自由が丘武蔵野推理(77-12-21)(評価:★★★★)●併映:「戦艦ポチョムキン」(セルゲイ・エイゼンシュタイン)
自由が丘武蔵野推理 (後の自由が丘武蔵野館)1951年オープン、1985(昭和60)年11月いったん閉館し改築、「自由が丘武蔵野館」と改称して再オープン。 2004(平成16)年2月29日閉館

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青春映画の原点とされる作品。主演3人がそれぞれに夭逝しているだけに複雑な思いも。

理由なき反抗 輸入版ポスター.jpg  理由なき反抗パンフレット.jpg 理由なき反抗.jpg Rebel Without A Cause.jpg
「理由なき反抗」輸入版ポスター/パンフレット 「理由なき反抗 特別版 [DVD]
Co-stars Natalie Wood and Sal Mineo
Co-stars Natalie Wood and Sal Mineo.jpg ジェームズ・ディーンが補導されて警察署いる場面のパンフレットが懐かしいこの映画は、「理由なき反抗」1.jpgマーロン・ブランドが出演を断った脚本が、ジョージ・スティーブンス監督の「ジャイアンツ」('56年)の撮影がエリザベス・テーラーの妊娠により中断し時間的余裕のあったジェームズ・ディーンに回ってきて、急遽彼を使うことにした低予算映画だったそうですが、当初はモノクロの予定が、エリア・カザン監督の「エデンの東」('55年)のヒットでカラーに計画変更されたとのことです。ジェームズ・ディーンの演技が良く、結果として青春映画の原点みたいな位置づけの作品になりました(ディーンは撮影の途中からノッてきて、ナイフでの喧嘩シーンでは本物のナイフを使ったりしている)。

理由なき反抗・Rebel Without a Cause.jpg「理由なき反抗」 2.jpg この映画でのジム(ジェームズ・ディーン)とプレイトウ(サル・ミネオ)の関係はよく同性愛だと言われていますが、17歳という設定ですから思春期的なものであると思われ、それでも当初はジムがプレイトウにキスしようとするシーンもあったそうですが、米国内の検閲でカットされたとのこと。個人的には、カットされて良かったと思います。もしそのシーンがあると、BL色が濃くなって、ジュディ(ナタリー・ウッド)を含めた3人の関係のバランスが壊れていたのではないかと思われるからです。

『理由なき反抗』(1955).jpg 一方で、この映画の脚本には、当時の若者の声を聞いたアンケートが反映されていて、そのため、世間の親への教唆的要素が多分に含まれているようにも思います(「理由なき反抗」というタイトルからして)。

 ジムが"チキン・ラン"レースに臨む前に小心者の父親にナイフで切られた血のついたシャツをわざと見せて、これから自分がする事の危険について話したにも関理由なき反抗 Jディーン・Nウッド.jpgわらず、父親は叱ることも止めることも出来ずジムをガッカリさせる場面な理由なき反抗 ディーン.jpgどは、当時言われるようになっていた"父権の失墜"に対する警告ともとれるのではないでしょうか。

 この作品については、こうした作品の意図とは別に、主演の3人の俳優が何れも不慮の死を遂げたこともあって、やや複雑な感慨があります(よく知られるように、ジェームズ・ディーンはこの作品の公開の1ヵ月前に事故死していている(享年24)。アカデミー賞に死後ノミネートされた俳優は何人かいるが、2度ノミネートされたのはジェームズ・ディーンのみである(「理由なき反抗」と「ジャイアンツ」)。

Sal Mineo(1936-1976)/Natalie Wood(1938-1981)
サル・ミネオ.jpgサル・ミネオes.jpg「理由なき反抗」3.jpgNatalie Wood.jpgNATALIE WOOD  (1938 - 1981).jpg '75年にレイ・コノリー監督により「ジェームズ・ディーンのすべて-青春よ永遠に」(James Dean:The First American Teenager)という記録映画(TV用ドキュメンタリー)が作られていて、その中でナタリー・ウッドもサル・ミネオもジェームズ・ディーンの思い出を語っていますが、その翌年の'76年にサル・ミネオは強盗に刺殺され(享年38、生前はピーター・フォークと知己の関係にあり、「刑事コロンボ」の「ハッサン・サラーの反逆」('75年)に、アラブのある国の大使館員の役で出演していた。犯人役はヘクター・エリゾンド(最近では「名探偵モンク」でモンクの新しいかかりつけの精神分析医役を演じている)で、犯人に協力させられて、結局口封じのため殺されてしまう役だった)、更にそのハッサン・サラーの反逆720.jpgハッサン・サラーの反逆 2.jpgハッサン・サラーの反逆 サル・ミネオ.jpg5年後の'81年には、ナタリー・ウッドが撮影中にボートの転覆事故で亡くなっています(享年43、その死因には、事故説以外に他殺説、自殺説もある)。

サル・ミネオ、ヘクター・エリゾンド in「刑事コロンボ(第33話)/ハッサン・サラーの反逆」

Marlon Brando and James Dean.bmp この記録映画の中では、ジェームズ・ディーンがマーロン・ブランドの演技を意識していたことが窺えたのが興味深かったです(演技ばかりでなく、自分はパーティ嫌いでバーティを避けていたのに、パーティに出ていたマーロン・ブランドがどういった様子だったかを人に聞くなど、普段の立ち振る舞いにも強い関心を示していた)。もし、もっと長生きしていたら、どんな作品に出ていただろうかと、ついつい考えてしまいますが、オヤジになったジェームズ・ディーンなんて見たくないという人も結構いるだろうなあ。

James Dean and Marlon Brando
 
James Dean in「エデンの東」('55年)(ケイレブ(キャル)・トラスク)/「ジャイアンツ」('56年)(ジェット・リンク)
iエデンの東H.jpgGiant is best known as Dean's last film.jpg         
James Dean and Natalie Wood
nwood-0730-06.jpg「理由なき反抗」 ちらし.jpgJAMES DEAN REBEL WITHOUT A CAUSE.jpg「理由なき反抗」●原題:REBEL WITHOUT A COUSE●制作年:1955年●制作国:アメリカ●監督・原案:ニコラス・レイ●製作:デヴィッド・ワイスバート●脚本:スチュワート・スターン
/アーヴィング・シュルマン●撮影:アーネスト・ホーラー●音楽:レーナード・ローゼンマン●時間:105分●出演:ジェームズ・ディーン/ナタリー・ウッド/サル・ミネオ/デニス・ホッパー/ジム・バッカス/ロシェル・ハドソン/コーレイ・アレン/ウィリア理由なき反抗08.jpgム・ホッパー/ニック・アダムス/エドワード・プラット/アン・ドーラン/フランク・マッゾラ●日本公開:1956/04●配給:ワーナー・ブラザース●最初に観た場所:高田馬場・早稲田松竹(77-12-21)●2回目:池袋文芸坐(79-02-18)(評デニス・ホッパー 理由なき反抗.jpg価★★★★)●併映(1回目):「ジャイアンツ」(ジョージ・スティーブンス)●併映(2回目):「エデンの東」(エリア・カザン」

デニス・ホッパー(左から2人目)
 

ジェームズ・ディーンのすべて パンフ.jpgJAMES DEAN THE FIRST AMERICAN TEENAGER.jpg「ジェームズ・ディーンのすべて 青春よ永遠に」●原題:JAMES DEAN:THE FIRST AMERICAN TEENAGER●制作年:1975年●制作国:アメリカ●監ジェームズ・ディーンのすべて 青春よ永遠に00.jpg督:レイ・コノリー●製作:デイヴィッド・パトナム/サンディ・リーバーマン●時間:80分●出演:ジェームズ・ディーン/ナタリー・ウッド/サル・ミネオ/デニス・ホッパー/サミー・デイビスJr./キャロル・ベイカー●日本公開:1977/09●配給:東宝東和●最初に観た場所:テアトル新宿(78-01-13)(評価★★★) ●併映:「サスペリア」(ダリオ・アルジェント)●記録映画
「ジェームズ・ディーンのすべて 青春よ永遠に」 パンフレット

テアトル新宿 tizu.jpgテアトル新宿13.jpgテアトル新宿3.jpgテアトル新宿 1968年12月5日、靖国通り沿いに名画座としてオープン、1989年12月に封切り館としてニューアル・オープン(新宿伊勢丹メンズ館の隣、新宿テアトルビルの地下一階)
  
ハッサン・サラーの反逆9.jpgハッサン・サラーの反逆 00.jpg「刑事コロンボ(第33話)/ハッサン・サラーの反逆」●原題:A CASE OF IMMUNITY●制作年:1975年●制作国:アメリカ●監督:テッド・ポスト●製作:エドワード・K・ドッズ●脚本:ルー・ショウ●撮影:リチャード・C・グローナー●音楽:ベルナルド・セガール/ハル・ムーニー●時間:73分●出演:ピーター・フォーク/ヘクター・エリゾンド/サル・ミネオ/ケネス・トビー/バリー・ロビンス/ビル・ザッカート/ハンク・ロビンソン/ハーヴェイ・ゴールド/アンドレ・ローレンス/ネイト・エスフォームス/ジョージ・スカフ/ジェフ・ゴールドブラム(ノンクレジト(デモ隊の男))●日本公開:1976/12●放送:NHK:★★★☆)
ヘクター・エリゾンド in「名探偵モンク」(2008)
ヘクター・エリゾンド モンク.jpg 名探偵モンク1.jpg

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映画も怖かったが、映画ではそぎ落とされてしまった独特の怖さが原作にはある。

シャイニング(上).gifシャイニング(下).gif シャイニング(下)映画.gifシャイニング(上)映画.gif シャイニング〈新装版〉 上.jpgシャイニング〈新装版〉 下.jpg  The scrap.jpg
シャイニング (1978年) 』 初版(上・下)/パシフィカ 1980年改装版 (上・下)(映画タイアップ・カバー)/『シャイニング 上』 ['08年/文春文庫 新装版]/村上春樹『'THE SCRAP'―懐かしの1980年代』(装丁:和田 誠

The Shining.bmp コロラド山中にある「オーバールックホテル」は冬の間閉鎖されるリゾートホテルで、作家志望のジャックはその妻と息子と共にホテル住み込みの冬季管理人としてやってきたが、そのホテルでは過去に、管理人が家族を惨殺するという事件が起こっていた―。

THE SHINING3.jpg 1977年に書かれたスティーヴン・キング(Stephen Edwin King, 1947- )の長編第3作(原題:"THE SHINING")で、この人のホラー小説は、後期のものになればなるほど「何でもあり」Stephen King.jpgみたいになってきていて、どちらかというと初期のものの方がいいような気がしていますが(TVドラマの「デッド・ゾーン」はそう悪くないと思うが)、その中でもこの作品はやはり記念碑的傑作と言ってよいのではと思います。
Stephen King

シャイニング  00.jpg スタンリー・キューブリック(1928-1999/享年70)の監督・製作・脚本による映画化作品('80年/英)の方を先に観ましたが、映画の方も、イギリスの学者によると数学的に計算すると世界最高のホラー映画になるとのこと(根拠よくわからないが)、確かに、家族を殺し自殺したホテルの前任者の霊にとりつかれた主人公が、タイプに向かって"All work and no play make Jack a dull boy "(働かざるもの食うべからず)と打ち続けるシーンは、映画のオリジナルですが怖かったです(それにしてもシェリー・デュバルは恐怖顔がよく似合う女優だ)。

THE SHINING2.jpg 但し、原作では、ホテル自体が邪悪な意志のようなものを宿し、それに感応する能力を持つ5歳の息子の(内なる)異界との交流がかなりのページを割いて描かれているのに対し、映画は、ジャックが閉塞状況の中で神経衰弱になり狂気に蝕まれていく様に重点が置かれており、ジャック・ニコルソンの演技自体には鬼気迫るものがあるものの、そこに至る過程は、書けない作家の単なるノイローゼ症状の描写みたいになってしまっている感じもしなくもないです。

シャイニング s.jpg 最後に、生垣を走り回って...というのも映画のオリジナルで、独創性は感じられるものの原作を曲げていることには違いなく、これでは原作者のキングが怒るのも無理からぬこと。

シャイニング es.jpg 劇場予告編で、ホテルの過去の歴史を暗示すべく、双子の少女をモチーフにした怖〜いイメージ映像がありましたが、これは本編では違った使われ方になっていて、こうした取ってつけたようなやり方もルール違反ではないかなあ。

creepshow (1982).jpgcreepshow .jpg キングはキューブリックに対して「あの男は恐怖の何たるかを知らん」とくそみそにこきおろした末に、「クリープ・ショー」というオムニバス・ホラー・ムビーの脚本を自分で書き、自らも出演したほか、「シャイニング」も自分で脚本を書き下ろして製作総指揮を務めTV版に作り直していますが、どういうわけか共に評判は今一だったようです。

"creepshow" (1982)

THE SCRAP80.JPG村上春樹 09.jpg キングの「クリープ・ショー」の失敗を指して作家の村上春樹氏が、「恐怖小説作家が真剣に恐怖とは何かと考えはじめたり、ユーモア小説作家が真剣にユーモアとは何かと考えはじめたりすると、物事はわりにまずい方向に流れちゃうみたいである」と『'THE SCRAP'―懐かしの1980年代』('87年/文藝春秋)に書いています。まあ、何となく当たっているような気がします。

村上春樹『'THE SCRAP'―懐かしの1980年代』(装丁:和田 誠

 因みにこの『'THE SCRAP'』という本の中身は、スポーツ雑誌「ナンバー」に連載されたもので、アメリカの雑誌や新聞に掲載された記事やコラムをネタに、村上春樹流にコラムとして再構成した感じの本ですが、アメリカナイズされている感性の持ち主であるとも言われる彼の、アメリカ文化に関する「元ネタ帳」みたいで興味深いです。雑誌連載期間は'82年春から'86年2月にかけてで、単行本刊行は'87年。「懐かしの1980年代」とサブタイトルにありますが、80年代前半、彼が33~37歳の頃に、当時の雑誌から"リアルタイム"での様々な出来事、流行事をピックアップして書いているわけであって、その際に話が更に遡ることもあるけれど、基本的には、過去を振り返った回想記ではないです。でも、結構、「アメリカ文化オタク」みたいで面白かったです。

THE SHINING4.jpg「シャイニング」●原題:The Shining●制作年:1980年●制作国:イギリス・アメリカ●監督・製作・脚本:スタンリー・キューブリック●音楽:ベラ・バルトーク●原作:スティーヴン・キング「シャイニング」●吉祥寺東亜.jpg時間:140分●出演:ジャック・ニコルソン/シェリー・デュヴァル/ダニー・ロイド/スキャットマン・ クローザース/バリー・ネルソン/フィリップ・ストーン/ジョー・ターケル/アン・ジャクソン●日本公開:1980/12●配給:ワーナー・ブラザーズ●最初に観た場所:吉祥寺セントラル(83-12-04) (評価★★★)●併映:「時計じかけのオレンジ」(スタンリー・キューブリック )
吉祥寺スカラ座・吉祥寺オデヲン座・吉祥寺セントラル・吉祥寺東宝
吉祥寺セントラル・吉祥寺スカラ座.jpg吉祥寺セントラル内.jpg吉祥寺セントラル 1954(昭和29)年、吉祥寺駅東口付近に「吉祥寺オデヲン座」オープン。1978(昭和53)年10月、吉祥寺オデヲン座跡に竣工の吉祥寺東亜会館5階にオープン(3階「吉祥寺スカラ座」、2階「吉祥寺アカデミー」(後に「吉祥寺アカデミー東宝」→「吉祥寺東宝」)、B1「吉祥寺松竹オデヲン」(後に「吉祥寺松竹」→「吉祥寺オデヲン座」)。 2012(平成24)年1月21日、同会館内の全4つの映画館を「吉祥寺オデヲン」と改称。2012(平成24)年8月31日、地下の前・吉祥寺オデヲン座(旧・吉祥寺松竹)閉館。 

吉祥寺東亜会館
吉祥寺オデオン.jpg 吉祥寺オデヲン.jpg

 【1986年文庫化・2008年新装版[文春文庫]】

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シリーズ中、特に充実した内容。回答者のコメントを読むのが楽しい。

ミステリーサスペンス洋画ベスト150.jpg大アンケートによるミステリーサスペンス洋画ベスト15074.JPG  『現金(げんなま)に体を張れ』(1956).jpg
大アンケートによるミステリーサスペンス洋画ベスト150 (文春文庫―ビジュアル版)』['91年]/「現金(げんなま)に体を張れ」(1956).

 映画通と言われる約400人からとったミステリー・サスペンス洋画のアンケート集計で、『洋画ベスト150』('88年)の姉妹版とも、専門ジャンル版とも言えるもの('91年の刊行)。

 1つ1つの解説と、あと、スチール写真が凄く豊富で、一応、"ベスト150"と謳っていますが、ランキング200位まで紹介しているほか、監督篇ランキングもあり、個人的に偏愛するがミステリーと言えるかどうかというものまで、「私が密かに愛した映画」として別枠で紹介しています。また、エッセイ篇として巻末にある、20人以上の映画通の人たちによる、テーマ別のランキングも、内容・写真とも充実していて、このエッセイ篇だけで150ページあり、全体では600ページを超えるボリュームで、この文春文庫の「大アンケート」シリーズの中でもとりわけ充実しているように思えます。                                                         
第三の男.gif『恐怖の報酬』(1953) 2.jpg太陽がいっぱい.jpg 栄えある1位は「第三の男」、以下、2位に「恐怖の報酬」、3位に「太陽がいっぱい」、4位「裏窓」、5位「死刑台のエレベーター」、6位「サイコ」、7位「情婦」、8位「十二人の怒れる男」...と続き、この辺りのランキングは順当過ぎるぐらい順当ですが、どんな人が票を投じ、どんなコメントを寄せているのかを読むのもこのシリーズの楽しみで、時として新たな気づきもあります。因みに、ベスト150の内、ヒッチコック作品は17で2位のシドニー・ルメット、ビリー・ワイルダーの6を大きく引き離し、監督部門でもヒッチコックは1位です。
第三の男
第三の男2.jpg第三の男 観覧車.jpg 「第三の男」はグレアム・グリーン原作で、大観覧車、下水道、ラストの並木道シーン等々、映画史上の名場面として語り尽くされた映画ですが、個人的にも、1位であることにとりあえず異論を挟む余地はほとんどないといった感じ。
 この映画のラストシーンは、映画史上に残る名シーンとされていますが、男女の考え方の違いを浮き彫りにしていて、ロマンチックとかムーディとか言うよりも、ある意味で強烈なシーンかも。
 オーソン・ウェルズが、短い登場の間に強烈な印象を残し(とりわけ最初の暗闇に光が差してハリー・ライムの顔が浮かび上がる場面は鮮烈)、「天は二物を与えず」とは言うものの、この人には役者と映画監督の両方が備わっていたなあと。この若くして過剰なまでの才能が、映画界の先達に脅威を与え、その結果彼はハリウッドから締め出されたとも言われているぐらいだから、相当なものです。
恐怖の報酬
恐怖の報酬3.jpg『恐怖の報酬』(1953).jpg恐怖の報酬1.bmp 「恐怖の報酬」は、油田火災を消火するためにニトログリセリンをトラックで運ぶ仕事を請け負った男たちの話ですが、男たちの目の前で石油会社の人間がそのニトロの1滴を岩の上に垂らしてみせると岩が粉微塵になってしまうという、導入部の演出が効果満点。イヴ・モンタンってディナー・ショーで歌っているイメージがあったのですが、この映画では汚れ役であり、粗野ではあるが渋い男臭さを滲ませていて、ストーリーもなかなか旨いなあと(徒然草の中にある「高名の木登り」の話を思い出させるものだった)。この作品は、'77年にロイ・シャイダー主演でアメリカ映画としてリメイクされています。
太陽がいっぱい」(音楽:ニーノ・ロータ
太陽がいっぱい PLEIN SOLEIL.jpg 「太陽がいっぱい」は、原作はパトリシア・ハイスミス(1921- 1995)の「才能あるリプレイ氏」(『リプリー』(角川文庫))で、'99年にマット・デイモン主演で再映画化されています(前作のリバイバルという位置づけではない)。
『太陽がいっぱい』(1960).jpg この映画の解釈では、淀川長治のホモ・セクシュアル映画説が有名で(因みに、原作者のパトリシア・ハイスミスはレズビアンだった)、あの吉行淳之介も、淀川長治のディテールを引いての実証に驚愕した(吉行淳之介『恐怖対談』)と本書にありますが、ルネ・クレマンが来日した際に淀川長治自身が彼に確認したところ、そのような意図は無いとの答えだったとのこと(ルネ・クレマン自身がアラン・ドロンに"惚れて"いたとの説もあり、そんな簡単に本音を漏らすわけないか)。 
            
日比谷映画・みゆき座.jpg日比谷映画.jpg第三の男 ポスター.jpg「第三の男」●原題:THE THIRD MAN●制作年:1949年●制作国:イギリス●監督:キャロル・リード●製作:キャロル・リード/デヴィッド・O・セルズニック●脚本:グレアム・グリーン●撮影:ロバート・クラスカー●音楽:アントン・カラス●原作:グレアム・グリーン●時間:104分●出演:ジョセフ・コットン/オーソン・ウェルズ/トレヴァー・ハワード/アリダ・ヴァリ/バーナード・リー●日本公開:1952/09●配給:東和●最初に観た場所:千代田映画劇場(→日比谷映画) (84-10-15) (評価:★★★★☆)
千代田映画劇場 東京オリンピック - コピー.jpg日比谷映画内.jpg千代田映画劇場(日比谷映画) 1957年4月東宝会館内に「千代田映画劇場」(「日比谷映画」の前身)オープン、1984年10月、「日比谷映画劇場」(1957年オープン(1,680席))閉館に伴い「日比谷映画」に改称。2005(平成17)年4月8日閉館。

千代田劇場 「東京オリンピック」('65年/東宝)封切時
                                                     
「恐怖の報酬」.bmp恐怖の報酬.jpg恐怖の報酬3.jpg「恐怖の報酬」●原題:LE SALAIRE DELA PEUR●制作年:1953年●制作国:フランス●監督・脚本:アンリ・ジョルジュ・クルーゾー●撮影:アルマン・ティラール●音楽:ジョルジュ・オーリック●原作:ジョルジュ・アルノー●時間:131分●出演:イヴ・モンタン/シャルル・ヴァネル/ヴェラ・クルーゾー/フォルコ・ルリ●日本公開:1954/07●配給:東和●最初に観た場所:新宿アートビレッジ (79-02-10) (評価:★★★★)●併映:「死刑台のエレベーター」(ルイ・マル)
太陽がいっぱい 和田誠.jpg「太陽がいっぱい」ポスター(和田 誠
太陽がいっぱい15.jpg太陽がいっぱい ポスター2.jpg太陽がいっぱい ポスター.jpg 「太陽がいっぱい」●原題:PLEIN SOLEIL●制作年:1960年●制作国:フランス●監督:ルネ・クレマン●製作:ロベール・アキム/レイモン・アキム●脚本:ポール・ジェゴフ/ルネ・クレマン●撮影:アンリ・ドカエ●音楽:ニーノ・ロータ●原作:パトリシア・ハイスミス 「才能あ文芸坐.jpg文芸坐ル・ピリエ.jpgるリプレイ氏」●時間:131分●出演:アラン・ドロン/マリー・ラフォレ/モーリス・ロネ/ エルヴィール・ポペスコ/エルノ・クリサ●日本公開:1960/06●配給:新外映●最初に観た場所:文芸坐ル・ピリエ (83-02-21) (評価:★★★★)

文芸坐ル・ピリエ (1979年、池袋文芸坐内に演劇主体の小劇場としてオープン)1997(平成9)年3月6日閉館

 個人的に、もっと上位に来てもいいかなと思ったのは(あまり、メジャーになり過ぎてもちょっと...という気持ちも一方であるが)、"Body Heat"という原題に相応しいシズル感のある「白いドレスの女」(27位)、コミカルなタッチで味のある「マダムと泥棒」(36位)、意外な場面から始まる「サンセット大通り」(46位)、カットバックを効果的に用いた強盗劇「現金(げんなま)に体を張れ」(51位)、「大脱走」を遥かに超えていると思われる「第十七捕虜収容所」(55位)、これぞデ・パルマと言える「殺しのドレス」(70位)(個人的には「ボディ・ダブル」がランクインしていないのが残念)、チャンドラーの原作をボギーが演じた「三つ数えろ」(92位)、脚本もクリストファー・リーブの演技も良かった「デス・トラップ/死の罠」(94位)、ミステリーが脇に押しやられてしまっているため順位としてはこんなものかも知れないけれど「ディーバ」(101位)、といった感じでしょうか、勝手な見解ですが。

kathleen-turner-body-heat.jpg白いドレスの女1.jpg白いドレスの女2.jpg白いドレスの女.jpg 「白いドレスの女」は、ビリー・ワイルダーの「深夜の告白」('48年)をベースにしたサスペンスですが、共にジェイムズ(ジェームス)・M・ケインの『殺人保険』(新潮文庫)が原作です(ジェイムズ・ケインは名画座でこの作品と併映されていた「郵便配達は二度ベルを鳴らす」の原作者でもある)。この映画では暑さにむせぶフロリダが舞台で、主人公の弁護士の男がある熱帯夜の晩に白いドレスの妖艶な美女に出会い、彼女の虜になった彼は次第に理性を奪われ、彼女の夫を殺害計画に加担するまでになる―という話で、ストーリーもよく出来ているし、キャスリーン・ターナーが悪女役にぴったり嵌っていました。kathleen-turner-body-heat(1981)

マダムと泥棒1.jpgマダムと泥棒.jpg 「マダムと泥棒」は、老婦人が営む下宿に5人の楽団員の男たちが練習部屋を借りるが、実は彼らは現金輸送車を狙う強盗団だった―という話で、これもトム・ハンクス主演で'04年に"The Ladykillers"(邦題「レディ・キラーズ」)というタイトルのまま再映画化されています。イギリス人の監督と役者でないと作り得ないと思われるブラック・ユーモア満載のサスペンス・コメディですが、この作品でマダムこと老婦人を演じて、アレック・ギネスやピーター・セラーズといった名優と渡り合ったケイティ・ジョンソンは、後にも先にもこの映画にしか出演していない全くの素人というから驚き。
 この作品は、本書の姉妹版の『洋・邦名画ベスト150 〈中・上級篇〉』('92年/文春文庫ビジュアル版)では、洋画部門の全ジャンルを通じての1位に選ばれています。

現金に体を張れ.jpg 「現金に体を張れ」(原題:THE KILLING)は、刑務所を出た男が仲間を集めて競馬場の賭け金を奪うという、これもまた強盗チームの話ですが、綿密なはずの計画がちょっとした偶然から崩れていくその様を、同時に起きている出来事を時間を繰り返カットバック方式でそれぞれの立場から描いていて、この方式のものとしては一級品に仕上がっており、また、人間の弱さ、夢の儚さのようなものもしかっり描けています。 ◎ スタンリー・キューブリック (原作:ライオネル・ホワイト) 「現金(ゲンナマ)に体を張れ」 (56年/米) ★★★★☆

『パルプ・フィクション』(1994) 2.jpgPulp Fiction(1994) .jpg 本書刊行後の作品ですが、同じくカットバックのテクニックを用いたものとして、ボスの若い妻(ユマ・サーマン)と一晩だけデートを命じられたギャング(ジョン・トラヴォルタ)の悲喜劇を描いたクエンティン・タランティーノ監督の「パルプ・フィクション」があり、テンポのいい作品でしたが(アカデミー脚本賞受賞)、カットバック方式に限って言えば、「現金に体を張れ」の方が上だと思いました(競馬場強盗とコーヒー・ショップ強盗というスケールの違いもあるが)。

Pulp Fiction(1994)

deathtrap movie.jpgdeathtrap movie2.jpg 「デス・トラップ 死の罠」の原作は「死の接吻」「ローズマリーの赤ちゃん」のアイラ・レビンが書いたブロードウェイの大ヒット舞台劇。落ち目の劇作家(マイケル・ケイン)の許に、かつてのシナリオライター講座の生徒クリフ(クリストファー・リーヴ)が書いた台本「デストラップ」が届けられ、作家は、金持ちの妻マイラ(ダイアン・キャノン)に「この劇は傑作だ」と話し、盗作のアイデアと青年の殺害を仄めかし、青年が郊外の自宅を訪れる際に殺害の機会を狙う―(要するに自分の作品にしてしまおうと考えた)。ドンデン返しの連続は最後まで飽きさせないもので、「スーパーマン」のクリストファー・リーブが演じる劇作家志望のホモ青年も良かったです(この人、意外と演技派俳優だった)。

ディーバ.jpgJean-Jacques Beineix's Diva.jpg 「ディーバ」は、オペラを愛する18歳の郵便配達夫が、レコードを出さないオペラ歌手のコンサートを密かに録音したことから殺人事件に巻き込まれるというもので、サスペンスでもラブ・ストーリーでもあったのですが、それ以前に、映画全体を通して視覚的・聴覚的に不思議な雰囲気のある作品で、セザール賞の最優秀新人監督作品賞(ジャン=ジャック・ベネックス)のほかに、同賞の撮影賞(フィリップ・ルースロ)、音楽賞(ウラディミール・コスマ)も獲っています。 Jean-Jacques Beineix's "Diva"

「白いドレスの女」.jpg「白いドレスの女」●原題:BODY HEAT●制白いドレスの女8.jpg作年:1981年●制作国:アメリカ●監督・脚本:ローレンス・カスダン●製作:フレッド・T・ガロ●撮影:リチャード・H・クライン●音楽:ジョン・バリー●原作:ジェイムズ・M・ケイン 「殺人保険」●時間:113分●出演:ウィリアム・ハート/BODY HEAT.bmpキャスリーン・ターナー/リチャード・クレンナ/テッド・ダンソン/ミッキー・ローク/J・A・プレストン/ラナ・サウンダース/キム・ジマー●日本公開:1982/02●配給:ワーナー・ブラザース●最初に観た場所:三鷹オスカー (82-08-07) ●2回目:飯田橋ギンレイホール(86-12-13)(評価:★★★★☆)●併映(1回目):「郵便配達は二度ベルを鳴らす」(ボブ・ラフェルソン)

THE LADYKILLERS 1955.jpgマダムと泥棒2.jpg「マダムと泥棒」●原題:THE LADYKILLERS●制作年:1955年●制作国:イギリス●監督:アレクサンダー・マッケンドリック●製作:セス・ホルト●脚本:ウィリアム・ローズ●撮影:オットー・ヘラー●時間:97分●出演:アレック・ギネス/ピーター・セラーズ/ハーバート・ロム/ケイティ・ジョンソン/シル・パーカー/ダニー・グリーン/ジャック・ワーナー/フィリップ・スタントン/フランキー・ハワード●日本公開:1957/12●配給:東和 (評価:★★★★)

現金に体を張れ01.jpgthe killing.jpg現金に体を張れ1.jpg「現金に体を張れ」●原題:THE KILLING●制作年:1956年●制作国:アメリカ●監督:スタンリー・キューブリック●製作:ジェームス・B・ハリス●脚本:スタンリー・キューブリック/ジム・トンプスン●撮影:ルシエン・バラード●音楽:ジェラルド・フリード●原作:ライオネル・ホワイト 「見事な結末」●時間:83分●出演:スターリング・ヘイドン/ジェイ・C・フリッペン/メアリ・ウィンザー/コリーン・グレイ/エライシャ・クック/マリー・ウィンザー/ヴィンス・エドワーズ●日本公開:1957/10●配給:ユニオン=映配●最初に観た場所:新宿シアターアプル (86-03-22) (評価:★★★★☆)

パルプ・フィクション4.jpgパルプフィクション スチール.jpgパルプ・フィクション ポスター.jpg「パルプ・フィクション」●原題:PULP FICTION●制作年:1994年●制作国:アメリカ●監督・脚本:クエンティン・タランティーノ●製作:ローレンス・ベンダー●原案:クエンティン・タランティーノ/ロジャー・エイヴァリー●撮影:アンジェイ・セクラ●音楽:カリン・ラットマン●時間:155分●出演:ジョン・トラヴォルタ/サミュエル・L・ジャクソン/ユマ・サーマン/ハーヴェイ・カイテル/アマンダ・プラマー/ティム・ロス/クリストファー・ウォーケン/ビング・ライムス●日本公開:1994/09●配給:松竹富士 (評価:★★★★)

DEATHTRAP 1982.jpgデス・トラップ 死の罠.jpgデストラップ・死の罠3.jpg「デス・トラップ 死の罠」●原題:DEATHTRAP●制作年:1982年●制作国:アメリカ●監督:シドニー・ルメット●製作:バート・ハリス●脚本:ジェイ・プレッソン・アレン●撮影:アンジェイ・バートコウィアク●音楽:ジョニー・マンデル●原作:アイラ・レヴィン●時間:117分●出演:マイケル・ケイン/クリストファー・リーヴ/ダイアン・キャノン/アイリーン・ワース/ヘンリー・ジョーンズ/ジョー・シルヴァー●日本公開:1983/09●配給:ワーナー・ブラザース●最初に観た場所:テアトル吉祥寺 (86-02-15) (評価:★★★☆)●併映「殺しのドレス」(ブライアン・デ・パルマ)

ディーバ  チラシ.jpgディーバ 1981.jpg「ディーバ」●原題:DIVA●制作年:1981年●制作国:フランス●監督:ジャン=ディーバ dvd.jpgジャック・ベネックス●製作:イレーヌ・シルベルマン●脚本:ジャン=ジャック・ベネックス/セルジュ・シルベルマン●撮影:フィリップ・ルースロ●音楽:ウラディミール・コスマ●原作:デラコルタ●時間:117分●出演:フレデリック・アンドレイ/ウィルヘルメニア=ウィンギンス・フェルナンデス/リシャール・ボーランジェ/シャンタル・デリュアズ/ジャック・ファブリ/チュイ=アン・リュー●日本公開:1981/12●配給:フランス映画社●最初に観た場所:大井武蔵野舘 (84-06-16)●2回目:六本木・俳優座シネマテン(97-10-03) (評価:★★★★)●併映(1回目):「パッション」(ジャン=リュック・ゴダール)
 
パワー・プレイ.jpgPower Play by Peter O'Toole.jpg「パワー・プレイ (1978).jpg 「私が密かに愛した映画」で「パワー・プレイ」を推した橋本治氏が、「すっごく面白いんだけど、これを見たっていう人間に会ったことがない」とコメントしてますが、見ましたよ。

Power Play (1978).jpg ヨーロッパのある国でテログループによる大臣の誘拐殺人事件が起き、大統領がテロの一掃するために秘密警察を使ってテロリスト殲滅を実行に移すもののそのやり方が過酷POWER PLAY OPERATION OVERTHROW.jpgで(名脇役ドナルド・プレザンスが秘密警察の署長役で不気味な存在感を放っている)、反発した軍部の一部が戦車部隊の隊長ゼラー(ピーター・オトゥール)を引き入れクーデターを起こします。クーデターは成功しますが、宮殿の大統領室にいたのは...。「漁夫の利」っていうやつか。最後、ピーター・オトゥールがこちらに向かってにやりと笑うのが印象的でした。

「パワー・プレイ」輸入版ポスター/輸入盤DVD(右上)

POWER PLAY OPERATION OVERTHROW 1978 .jpg「パワー・プレイ 参謀たちの夜」●原題:POWER PLAY OPERATION OVERTHROW●制作年:1978年●制作国:イギリス/カナダ●監督:マーティン・バーク●製作:クリストファー・ダルトン●撮影:オウサマ・ラーウィ●音楽:ケン・ソーン●時間:110分●出演:ピーター・オトゥール/デヴィッド・ヘミングス/バリー・モース/ドナルド・プレザンス/ジョン・グラニック/チャック・シャマタ/アルバータ・ワトソン、/マーセラ・セイント・アマント/オーガスト・シェレンバーグ●日本公開:1979/11●配給:ワールド映画●最初に観大塚駅付近.jpg大塚名画座 予定表.jpg大塚名画座4.jpg大塚名画座.jpgた場所:大塚名画座 (80-02-21) (評価:★★★☆)●併映:「Z」(コスタ・ガブラス)

大塚名画座(鈴本キネマ)(大塚名画座のあった上階は現在は居酒屋「さくら水産」) 1987(昭和62)年6月閉館

《読書MEMO》
- 構成 -
○座談会 それぞれのヒッチコック
○作品編 ここに史上最高最強の151の「面白い映画」がある
○監督編 人をハラハラさせた人たち
○エッセイ集-映画を見ることも、映画について読むことも楽しい(一部)
 ・原作と映画の間に (山口雅也)
 ・どんでん返しの愉楽 (筈見有弘)
 ・ぼくの採点表 (双葉十三郎)
 ・映画は見るもの、ビデオは読むもの (竹市好古)
 ・わたしの「推理映画史」 (加納一朗)
 ・法廷映画この15本- 13人目の陪審員 (南俊子)
 ・襲撃映画この15本-なにがなんでも盗み出す (小鷹信光)
 ・ユーモア・パロディ映画この20本-笑うサスペンス (結城信孝)
 ・10人のホームズ、10人のワトソン、10人のモリアティ、そして8人のハドソン夫人 (児玉数夫)
 ・世界の平和を守った10人の刑事 (浅利佳一郎)
 ・世界を震えあがらせた10人の悪党 (逢坂剛)
 ・サスペンス映画が似合う女優10人 (渡辺祥子)
 ・フランス人はなぜハドリー・チェイスが好きなのか (藤田宜永)
 ・主題曲は歌い、叫ぶ (岩波洋三)
 ・『薔薇の名前』と私を結んだ赤い糸 (北川れい子)
 ・マイケル・ケインはミステリー好き (松坂健)
 ・TV界のエラリー・クイーン (小山正)
 ・394のアンケートを読んで (赤瀬川準)

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多くの人が犠牲となった原因を浮き彫りに。2つの"The Tower"を思い出した。
World trade centers attack Here is a diagram showing where the planes hit and the times of impact and collapse.gif
9.11生死を分けた102分 崩壊する超高層ビル内部からの驚くべき証言.jpg 『9・11生死を分けた102分 崩壊する超高層ビル内部からの驚くべき証言』 ['05年]

9.11 生死を分けた102分.jpg ニューヨークタイムズの記者が、2001年に起きた世界貿易センター(WTC)の9.11事件後、生存者・遺族へのインタビューや警察・消防の交信記録、電話記録などより、その実態を詳細にドキュメントしたもので、"102分"とは、WTC北タワーに旅客機が突入してからビルが2棟とも崩壊するまでの時間を指していますが、その間の北タワー、南タワーの中の状況を、時間を追って再現しています。

 380ページの中に352人もの人物が登場するので混乱しますが(内、126人は犠牲者となった。つまり、犠牲者の行動は、残りの生存者の目撃談によって記されていることになる)、米国の書評でも、この混乱こそ事件のリアリティを伝えている(?)と評されているとのこと。

 WTCは、大型旅客機が衝突しても倒れないように設計されたとかで、確かに、旅客機が「鉛筆で金網を突き破る」形になったのは設計者の思惑通りだったのですが、その他建築構造や耐火性の面で大きな問題があったとのこと(建材の耐火試験をしてなかった)、それなのに、人々がその安全性を過信していたことが、犠牲者の数を増やした大きな要因であったことがわかります。

航空機の衝突で炎上する世界貿易センタービル.jpg 旅客機衝突50分後にやっと南タワーに救出に入った多くの消防隊員たちは、その時点で、旅客機が衝突した階より下にいた6千人の民間人はもう殆ど避難し終えていたわけで、本書にあるように、上層階に取り残された600人を助けにいくつもりだったのでしょうか(ただし内200人は、旅客機衝突時に即死したと思われる)。ビルはゆうにあと1時間くらいは熱に耐えると考えて、助けるべき民間人が既にいない階で休息をとっている間に、あっという間にビル崩壊に遭ってしまった―というのが彼らの悲劇の経緯のようです。

航空機の衝突で炎上する世界貿易センタービル

崩壊した世界貿易センタービル.jpg 一方、北タワーに入った消防隊員たちには、南タワーが崩壊したことも、警察ヘリからの北タワーが傾いてきたという連絡も伝わらず(元来、警察と消防が没交渉だった)、そのことでより多くが犠牲になった―。

 亡くなった消防隊員を英雄視した筆頭はジュリアーニ市長ですが、本書を読み、個人的には、こうした人災的問題が取り沙汰されるのを回避するため、その問題から一般の目を逸らすためのパーフォーマンス的要素もあったように思えてきました。

崩壊した世界貿易センタービル

 事件後、消防隊員ばかり英雄視されましたが、ビル内の多くの民間人が率先して避難・救出活動にあたり、生存者の多くはそれにより命を落とさずに済んだことがわかります。

 それでも、北タワーの上層階では、避難通路が見つけられなかった千人ぐらいが取り残され犠牲となった―、そもそも、110階建てのビルに6階建てのビルと同じ数しか非常階段が無かったというから、いかにオフィススペースを広くとるために(経済合理性を優先したために)安全を蔑ろにしたかが知れようというものです。


 本書を読んで、2つの"The Tower"を思い出しました。

The Tower SP.gifThe Tower.jpg 1つは、ビル経営シミュレーションゲームの"The Tower"(当初は「タワー」というPCゲーム、現在は「ザ・タワー」というゲームボーイ用ソフト)で、収入を得るために賃貸スペースばかり作っていると、初めは儲かるけれどもだんだん建物のあちこちに不具合が出てくるというものでした(オートモードにして、ちょっと外出して戻ってみると、空き室だらけなっていた...)。 

タワーリング・インフェルノ3.jpgtowering.gif もう1つは、"The Tower"というリチャード・マーティン・スターンが'73年に発表した小説で(邦訳タイトル『そびえたつ地獄』('75年/ハヤカワ・ノヴェルズ))、これを映画化したのが「タワーリング・インフェルノ」('74年/米)ですが、映画ではスティ―ブ・マックィーンが演じた消防隊長が、ポール・ニューマン演じるビル設計者に、いつか高層ビル火災で多くの死者が出ると警告していました。

 この作品はスティーブ・マックイーンとポール・ニューマンの初共演ということで(実際にはポール・ニューマン主演の「傷だらけの栄光」('56年)にスティーブ・マックイーンがノンクレジットでチンピラ役で出ているそうだ)、公開時にマックイーン、ニューマンのどちらがクレジットタイトルの最初に出てくるかが注目されたりもしましたが(結局、二人の名前を同時に出した上で、マックイーンの名を左に、ニューマンの名を右の一段上に据えて対等性を強調)、映画の中で2人が会話するのはこのラストのほかは殆どなく、映画全体としては豪華俳優陣による「グランド・ホテル」形式の作品と言えるものでした。スペクタクル・シーンを(ケチらず)ふんだんに織り込んでいることもあって、70年代中盤期の「パニック映画ブーム」の中では最高傑作とも評されています。双葉十三郎氏も『外国映画ぼくの500本』('03年/中公新書)の中で☆☆☆☆★(85点)という高い評価をしており、70年代作品で双葉十三郎氏がこれ以上乃至これと同等の評点を付けている作品は他に5本しかありません。

 因みに、映画の中での「グラスタワー」ビルは138階建て。そのモデルの1つとなったと思われるこの「世界貿易センター(WTC)」ビルは110階建て二棟で、映画公開の前年('73年)に完成して、当時世界一の高さを誇りましたが(屋根部分の高さ417m(最頂部:528m))、翌年に完成した同じく110階建てのシカゴの「シアーズ・タワー」(現ウィリス・タワー)に抜かれています(シアーズ・タワーは屋根部分の高さ442m(アンテナ含:527m))。

タワーリング・インフェルノ dvd.jpg『タワーリング・インフェルノ』(1974) 2.jpg「タワーリング・インフェルノ」●原題:THE TOWERING INFERNO●制作年:1974年●制作国:アメリカ●監督:ジョン・ギラーミン●製作:アーウィン・アレン●脚色:スターリング・シリファント●撮影:フレッド・J・コーネカンプ●音楽:ジョン・ウィリアムズ●原作:リチャード・マーティン・スターン「ザ・タワー」●時間:115分●出演:スティーブ・マックイーン/ポール・ニューマン/ウィリアム・ホールデン/フェイ・ダナウェイ/フレッド・アステア/スーザン・ブレークリー/リチャード・チェンバレン/ジェニファー・ジョーンズ/O・J・シンプソン /ロバート・ヴォーン/ロバート・ワグナー/スーザン・フラネリー/シーラ・アレン/ノーマン・バートン/ジャック・コリンズ●日本公開:1975/06●配給:ワーナー・ブラザース映画)(評価:★★★☆)
タワーリング・インフェルノ [DVD]

「●あ ジェフリー・アーチャー」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【1026】アーチャー 『ロスノフスキ家の娘
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ミステリアスに交錯する2人の実業家の運命。テレビ映画版もお薦め。

ケインとアベル 上.jpg ケインとアベル下.jpg Kane & Abel.jpg   ケインとアベル vhs.jpg
ケインとアベル 上下 新潮文庫』 ['83年]/ "Kane & Abel"/「ケインとアベル(VHS)」(絶版)

 1979年に発表された英国の作家ジェフリー・アーチャー(Jeffrey Howard Archer)の長編。

百万ドルをとり返せ!.jpg アーチャーの作品は、『百万ドルをとり返せ!』(Not a Penny More, Not a Penny Less '77年発表/新潮文庫)のようなコン・ゲーム(Confidence Game)作品、つまり信用詐欺をユーモラスに描いた中編や、『十二本の毒矢』(A Quiver Full of Arrows '80年発表/新潮文庫)のようなO・ヘンリーを髣髴させる洒落た短編集も楽しいけれど、こうした長編もかなりいいです。本書の続編にあたる『ロスノフスキ家の娘』(アベルの娘がケインの長男と結婚して米国初の女性大統領をめざすというスゴイ筋書き)や、同じく政界トップの座を主人公たちが競う『めざせダウニング街10番地』なども楽しめました。

百万ドルをとり返せ! (新潮文庫)
                                       
Kane and Abel.jpg 特に本書は2人の実業家を描いたビジネス小説ながら、20世紀初頭から中盤、後半にかけての欧米の時代背景や歴史的事件が巧みに盛り込まれていて、中短編とはまた異質の重厚さを持つものとなっています。そして重厚なだけでなく、著者のストーリー・テラーとして才能も存分に発揮されています。ボストン金融界の名門出身のウィリアム・ケインと、貧しいポーランド移民の子からホテル王にのし上がるアベル・ロスノフスキ。同じ日に生まれた対照的なこの2人の実業界における凄まじい対立と、本人たちも知らない過去の出来事も含めたミステリアスに交錯する運命を描いて、読み手を飽きさせることがありません。

Corgi Books 〔'86/UK〕

KANE AND ABEL2.bmpSam Neill.jpg 『百万ドルをとり返せ!』も『ケインとアベル』も共にテレビ映画(ドラマ)化されていてどちらも観ましたが、とりわけドラマ版「ケインとアベル」は力作で(テレビ東京「午後のロードショー」で'97年9月8日から3日間にわたって放送された)、後に「ジュラシック・パーク」('93年/米)に出演するサム・ニールがケインを好演し、こちらも後にジョニー・デップ主演の「ニック・オブ・タイム」('95年/米)などハリウッド映画に出ることになるピーター・ストラウスが演じたアベルも良かったです。通しで5時間を超える大作ですが、原作同様、最後まで飽きさせませんでした(今でもたまに民放やCS放送などで放映されることがあるが、日本語版ビデオは絶版に)。ラストの2人が偶然道で出会うシーンが、原作の情感を損なわずに描かれていて、そこに至るまでの作りこみも原作からの期待を裏切らないものでした。  

KANE AND ABEL 1985.jpgKANE AND ABEL 1985 2.jpg「ケインとアベル/権力と復讐にかけた男の情熱」(「ケインとアベル/愛と野望に燃える日々」)●原題:KANE AND ABEL●制作年:1985年●制作国:アメリカ●監督:バズ・キューリック●脚本:ロバート・W・レンスキー●撮影:マイク・ファッシュ●音楽:ビリー・ゴールデンバーグ●原作:ジェフリー・アーチャー●時間:312分●出演: ピーター・ストラウス/サム・ニール/デヴィッド・デュークス/ヴェロニカ・ハーメル/ケイト・マクニール/ ロン・シルヴァー/ジル・アイケンベリー /アルバータ・ワトソン/リチャード・アンダーソン/クリストファー・カザノフ●日本公開(VHS発売):1986/03 (日本エイ・ヴィー・シー) ●日本公開(TV放映):1994/05 (NHK‐BS2) (評価:★★★★☆)
"Kane and Abel: the Complete Mi [Import anglais]"

Sam Neill as Dr. Alan Grant in Jurassic Park (1993)/Marsha Mason, Peter Strauss (in picture), Johnny Depp in NICK OF TIME(1995)
sam-neill-as-dr-alan-grant-in-jurassic-park.jpgPeter Strauss .jpg

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