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前作『失踪日記』を超えているか。糠漬けのキュウリは元のキュウリに戻らない...。

アル中病棟.jpgアル中病棟2.jpg  失踪日記 吾妻 ひでお.jpg
失踪日記2 アル中病棟』(2013/10 イースト・プレス)/『失踪日記』(2005)

 2013年10月刊行の描き下ろし作品で、サブタイトルは「失踪日記2」。『失踪日記』('05年/イースト・プレス)は、うつ病からくる自身の2回の失踪(1989年と1992年のそれぞれ約4か月間)を描いたものでしたが、もともと作者は1980年代半ばから盛んに飲酒し、「アル中」を自称していたのが、その後'98年には"連続飲酒状態"となり、その年12月26日に妻子に取り押さえられて「アル中病棟」へ放り込まれたとのこと(2回の失踪を挟んだこともあって、一般的なアルコール依存症患者よりも症状の進行が遅かったともとれる)、本篇はそうしたイントロダクションを経て、'99年1月からの「アル中病棟」での生活開始の様子からスタートします。

 前作『失踪日記』は文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞や手塚治虫文化賞マンガ大賞などを受賞した作品ですが、個人的には、作者は自らの経験を漫画として描くことが自己セラピーになっている面もあるのではないかと思ったりもしました。そしたら、本作『アル中病棟』で、しっかりそのことを自覚していた...やっぱり。

 作者一人の失踪と彷徨が描かれている色合いが強い前作『失踪日記』に比べ、本作は、アル中病棟にいる様々な患者や断酒会の参加者らの群像劇の色合いが強く、しかも何れも濃いキャラクターばかりで、その分、作品としてのパワーもアップしているように感じられました。嫌なキャラクターも多く出てきますが、読み終わってみれば何となく皆同じ人間なのだなあという気持ちになれなくもありません(作者自身がどう思っているかはともかく)。

 また、前作は「極貧生活マニュアル」乃至は「お仕事紹介」になっている印象がありましたが、今回は、まさに「アル中リハビリ案内」を兼ねたものとなっており、それでいてギャグも満載、作品としての"昇華度"(完成度)は、前作を超えて高いように思われました。『失踪日記』が出てすぐ本作に取りかかり10年くらいかけて書き溜めたものの集大成であるとのことで、自らの悲惨な体験を作品として昇華するにはやはりそれなりの時間を要するのでしょう。

 ネット情報によれば、作者は'99年春、本作にある3カ月の治療プログラムを終了して退院し、以後、断酒を続けているとのことですが、作中で、アルコール依存症は症状を改善できても完治は不可能であり、それは、糠漬けのキュウリが元のキュウリに戻らないとの同じだとあるのが印象的でした。少しでもアルコールを口にすればまた元に戻るというのは怖いなあと。そういうのを「スリップ」すると言うそうで本書にもさかんに出てきますが、この「スリップ」というのもネットで調べると"Sobriety(酒を飲まない生き方)Loses Its Priority"の略であるとも。単に"滑った"との語呂合わせかもしれないけれど。

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震災・原発事故に一早く反応した漫画家の一人。プルトニュウムを擬人化した女性像が興味深い。

なのはな 萩尾望都.jpg なのはな nhk.jpg           あの日からのマンガ  しりあがり寿.png
なのはな (フラワーコミックススペシャル)』 NHK「クローズアップ現代」(2014.6.2)より 『あの日からのマンガ (ビームコミックス)

 作者が2011年3月に発生した東日本大震災と、それに続く原発事故に衝撃を受けて発表した幾つかの短編を1冊に纏めたもので、福島に住む少女ナホの物語である冒頭の「なのはな」が'11年8月号の雑誌「flowers」発表と最も早く、この物語の続編の形で宮澤賢治の『銀河鉄道の夜』のモチーフを織り込んだ巻末の「なのはな―幻想『銀河鉄道の夜』」は、この短編集刊行のための描き下ろし('12年1月)。この2作の間に、'11年末から'12年にかけて雑誌発表された「プルート夫人」「雨の夜 ―ウラノス伯爵―」「サロメ20XX」の3作を挟む全5編から成り立ちます。

福島をテーマにしたさまざまな漫画.jpg 漫画「美味しんぼ」における原発事故による健康への影響を巡る表現が大きな波紋を呼んだ一方で、今、福島を描いた漫画が注目を集めているということで、今月['14年6月]2日放送のNHK「クローズアップ現代」で「いま福島を描くこと~漫画家たちの模索~」という特集を組んでいましたが、山本おさむ氏のグルメ漫画「そばもん」、竜田一人氏の福島第一原発での作業員体験のドキュメント漫画「いちえふ」が作者とともに紹介されていました(竜田氏は個人を特定できないように、との条件の下での登場)。
NHK「クローズアップ現代」(2014.6.2)より

今日のNHKクローズアップ.jpg こうした「原発漫画」の先駆けが、この萩尾望都氏の作品(コレ、個人的には偶々番組で紹介される前に読んでいた)と、番組にゲストとして登場していたしりあがり寿氏の『あの日からのマンガ(Beam comix)』('11年7月刊行)でしょう。
 しりあがり寿氏は朝日新聞夕刊に四コマ漫画の連載を持っていたことで、その連載漫画「地球防衛家のヒトビト」で2011年3月以降リアルタイムで東京からのフクシマなど被災地への想いを発信するともに、コミック誌では独自の前衛コミックの作風のまま、震災や原発を扱った短編を発表し、この単行本では、震災直後の「地球防衛家のヒトビト」の連載を再掲するほか、短編4作、シュール漫画「双子のおやじ」などを収録、加えて、家族で被災地へボランティアへ行った時の朝日新聞への寄稿記事も収めていますが、一方で、氏の他の作品集に見られるような解説やあとがきはなく、作品だけで勝負している感じです。

 しりあがり氏は、大学でメディア表現学の授業を担当するなどして、今年['14年]春の叙勲で紫綬褒章を受章するなど、急速に"文化人"っぽくなってきている印象もありますが、自らが創作者として原発・震災関連の作品をいち早く発表しているだけに、「クローズアップ現代」のこうした特集に出て語るには相応しい人ということになるのかも。個人的にも違和感はありませんでした。
puru-to.jpg 一方の萩尾氏は、2011年、東日本大震災の前に引退を考え、短編数編でフェイドアウトする予定だったのが、震災及び原発事故で引退を延期したとのこと(この人もしりあがり氏に先だって2012年春に少女漫画家では初となる紫綬褒章を受章している)。

 震災で終末を表すものには規制ムードがかかって描けない状況の中、「プルート夫人」「雨の夜 ―ウラノス伯爵―」「サロメ20XX」は放射性物質を擬人化した作品となっていますが、放射性物質や原発を擬人化する手法はしりあがり氏も用いています。

 個人的に興味深く思ったのは、萩尾氏の作品のプルトニュウムを擬人化した女性像などが、作者の普段の少女漫画風の筆のタッチとしてはやや異なり、非常にセクシーに描かれている点で、これは、原子力を理想のエネルギーとして崇めた"男性"原理や「原子力村」を形成した"男性"社会に対する風刺が込められているのかなとも思ったりしました。
「プルート夫人」より

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自分の経験を作品に"昇華"させることにより自らの明日を切り拓いていく(自己セラピー?)。

人間仮免中 卯月妙子.jpg人間仮免中』 失踪日記 吾妻 ひでお.jpg失踪日記』 失踪日記2 アル中病棟.jpg失踪日記2 アル中病棟

 『人間仮免中』は、2012(平成24)年度「『本の雑誌』編集部が選ぶノンジャンル・ベスト10」第1位。

人間仮免中1.jpg 夫の借金と自殺、自身の病気と自殺未遂、AV女優など様々な職業を経験―と、波乱に満ちた人生を送ってきた私は、36歳にして25歳年上の男性と恋をする―。

 '12(平成24)年に刊行された、'02年刊行の『新家族計画』以来10年ぶりとなる作者の描き下ろし作品ですが、単行本刊行時から話題なり、作家の高橋源一郎氏が「朝日新聞」の「論壇時評」(2012年5月31日朝刊)で紹介(推奨)していたり、同時期によしもとばなな氏、糸井重里氏といった人たちも絶賛しており、更には漫画家ちばてつや氏が自らのブログで「ショックを受けた」と書いていたりしました。

『人間仮免中』

 作者の病気とは「統合失調症」であり、衝動的に歩道橋から飛び降り、顔面を複雑粉砕骨折...この作品ではそれ以降のリハビリの日々が描かれていますが、まず思ったのは、動機らしい動機もないままにふわ~と歩道橋から飛び降りて、何の防御姿勢もとらずに顔面から地面に激突したというのが、統合失調症らしいなあと(そう言えば、昨年['13年]8月にマンションから転落死(飛び降り自殺)した藤圭子も、一部ではうつ病と統合失調症の合併障害だったと言われていたなあ)。

 夫の自殺で経済的苦境に陥ったとは言え、いきなりグロ系AV女優の仕事をするなどし、また飛び降りによる顔面骨折で顔がすっかり"破壊"されてしまうなど、経験していることが一般人のフツーの生活から乖離している分、恋愛物語の部分や家族との絆の部分の温かさが却ってじわっと伝わってくる感じでした。

 統合失調症(かつては「精神分裂症」と呼ばれていた)は罹患した個人によって症状が様々ですが、共通して言えるのは「常識」が失われるということであると、ある高名な精神科医(木村敏)が書いていたのを以前に読みましたが、この作品で言えば、病院のスタッフに対する被害妄想意識などがその顕著な例でしょう。統合失調症の一般的な病症についても書かれており、「闘病記」としても読めます。

 但し、Amazon.comのレビューには、読んでいて辛くなるというのも結構あり、身内にうつ病者がいて自殺したという人のレビューで、「精神病の人は自分の事しか考えていません。読んで再度、認識しました」という批判的なものもありました。

 この作品を読んで思い出されるのが、'05(平成17)年3月にこれもイースト・プレスから刊行された漫画家・吾妻ひでお氏の『失踪日記』('05年)で、こちらは多くの漫画賞を受賞しましたが、「日記」と謳いつつも"創作"の要素が入っていることを後に作者自身が明かしています。

 『失踪日記』にしてもこの『人間仮免中』にしても、もし作者が自分や周囲の人々の苦しみをストレートに描いていたら、あまりに生々しくなり、ユーモアの要素が抜け落ちて、コミック作品としては成立しなかったのではないかと思われます。『人間仮免中』についてのAmazon.comのレビューには、「意外と悲惨に感じなかった」というのもありましたが、個人的な印象はそれに近く、そうした印象を抱かせるのは"作品化"されていることの効果ではないかと。

 一方で『人間仮免中』の場合、最後はやや無理矢理「感動物語」風にしてしまったキライもありますが、こうしたことからも、作者の場合は創作活動が自己セラピーになっている面もあるのではないかと思われました。大袈裟に言えば、自分の経験を作品に"昇華"させることによって、自らの明日を切り拓いていくというか...。

失踪日記 夜を歩く.jpg 吾妻ひでお氏の『失踪日記』は、うつ病からくる自身の2回の失踪(1989年と1992年のそれぞれ約4か月間)を描いたものでした。1回目の失踪の時は雑木林でホームレス生活をしていて、2回目の失踪の時はガス会社の下請け企業で配管工として働いていたという具合に、その内容が異なるのが興味深いですが、1回目の失踪について描かれた部分は「極貧生活マニュアル」みたいになっていて、2回目は下請け配管工の「お仕事紹介」みたいになっています。

 1回目の失踪で警察に保護された際に、署内に熱烈な吾妻ファンの警官がいて、「先生ともあろうお方が...」とビックリされつつもサインをせがまれたという話は面白いけれど、事実なのかなあ。熱心な吾妻ファンである漫画家のとり・みき氏と1995年に対談した際に、「失踪の話はキャラクターを猫にして...」と言ったら、「吾妻さんが(ゴミ箱を)あさったほうが面白いですよ(笑)」と言われて、その意見も参考にしたとも後に明かしています。
『失踪日記』

 『失踪日記』も、個人的には、自らの経験を漫画として描くことが自己セラピーになっている面もあるのではないかと思うのですが、作者はこの失踪事件から復帰後、今度はうつ病の副次作用からアルコール中毒に陥り、重症のアルコール依存症患者として病院で治療を受けていて(但し、本作『失踪日記』が世に出る前のことだが)、この経験も「アル中病棟」(『失踪日記2-アル中病棟』('13年10月/イースト・プレス))という作品になっています。

 最後ばたばたっと"感動物語"にしてしまった『人間仮免中』よりは、「極貧生活マニュアル」乃至は「お仕事紹介」になっている『失踪日記』の方が、ある意味"昇華度"(完成度)は高いように思われますが、繰り返し"うつ"になってしまうということは、吾妻ひでおという人は根本的・気質的な部分でそうした素因を持ってしまっているのだろうなあと思われる一方で、「アル中病棟」退院後は断酒を続けているとのことで、セラピー効果はあったのか。

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丸尾作品に特徴的なウエット感が無く、スコーンと突き抜けている感じ。

パノラマ島奇談 丸尾末広.jpg       パノラマ島綺譚 光文社文庫.jpg    パノラマ島奇談他4編 春陽文庫.jpg
パノラマ島綺譚―江戸川乱歩全集〈第2巻〉 (光文社文庫)』『パノラマ島奇談 (1951年) (春陽文庫〈第1068〉)』(装画:高塚省吾)

パノラマ島綺譚 (BEAM COMIX)

 「月刊コミックビーム」の2007(平成19)年7月号から翌年の1月号にかけて連載された作品に加筆修正したもの。「エスプ長井勝一漫画美術館主催事業」として、「江戸川乱歩×丸尾末広の世界 パノラマ島綺譚」展が今年(2011年)3月に宮城県塩竈市の「ふれあい江戸川乱歩×丸尾末広の世界 パノラマ島綺譚.jpgエスプ塩竈」(生涯学習センター内)で開催されており(長井勝一氏は「月刊漫画ガロ」の初代編集長)、3月12日に丸尾氏のトークショーが予定されていましたが、前日に東日本大震災があり中止になっています。主催者側は残念だったと思いますが、原画が無事だったことが主催者側にとってもファンにとっても救いだったでしょうか。

 原作は、江戸川乱歩が「新青年」の1926(大正15)年10月号から1925(昭和2)年4月号にかけて5回にわたり連載した小説で、売れない小説家だった男が、自分と瓜二つの死んだ大富豪に成り替わることで巨万の富を得て、孤島に人工の桃源郷を築くというものです。

 光文社文庫版にある乱歩の自作解説(昭和36年・37年)によると、発表当初はあまり好評ではなく、それは「余りに独りよがりな夢に過ぎたからであろう」とし、「小説の大部分を占めるパノラマ島の描写が退屈がられたようである」ともしていますが、一方で、萩原朔太郎にこの作品を褒められ、そのことにより、対外的にも自信を持つようになったとも述べています。

 個人的には、昔、春陽堂文庫で読んだのが初読でしたが、ラストの"花火"にはやや唖然とさせられた印象があります。原作者自身でさえ"絵空事"のキライがあると捉えているものを、漫画として視覚的に再現した丸尾末広の果敢な挑戦はそれ自体評価に値し、また、その出来栄えもなかなかのものではないかと思われました。

 前半部分は、原作通り、主人公がいかにして死んだ大富豪に成り替わるかに重点が置かれ、このトリック自体もかなり無理がありそうなのですが、視覚化されると一応納得して読み進んでしまうものだなあと。

 但し、本当に描きたかったのは、後半のパノラマ島の描写だったのでしょう。海中にある「上下左右とも海底を見通すことのできる、ガラス張りのトンネル」などは、実際に最近の水族館などでは見られるようになっていますが、その島で行われていることは、一般的観念から見れば大いに猟奇変態的なものです。

 しかしながら、丸尾末広の他の作品との比較においてみると、独特の猥雑さが抑えられ、ロマネスク風の美意識が前面に押し出されているように思いました("妻"の遺体があるところが明智小五郎にバレるところなどは、原作の方が気持ち悪い。丸尾版では、明智小五郎が"ベックリンの絵"なる意匠概念を持ち出すなどして、ソフィストケイトされている)。

 でも、やはり、ここまでよく描いたなあ。乱歩が夢想した世界に寄り添いながらも、それでいて、丸尾パワー全開といった感じでしょうか。但し、丸尾作品に特徴的なウエット感が無く、逆に、スコーンと突き抜けてしまっています。個人的には、これはこれで楽しめました。

 江戸川乱歩の自作解説によると、原作は、昭和32年に菊田一夫がこれをミュージカル・コメディに書き換えて、榎本健一、トニー谷、有島一郎、三木のり平、宮城まり子、水谷良重などの出演で、東宝劇場で上演したとのことです(一体、どんな舞台だったのだろうか)。

 また、他の資料によると、1982(昭和57)年にジェームス三木の脚色により単発でテレビドラマ化されたことがあり(タイトルは「天国と地獄の美女」)、パノラマ島を造成する主人公役は伊東四朗で(明智小五郎役は天知茂、その他に叶和貴子、五十嵐めぐみ、小池朝雄、宮下順子らが出演)、1月2日に正月番組として放映されたようです。
 パノラマ島自体は再現し切れていないというのがもっぱらの評判で、DVD化されていますが、個人的には未見です。

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懐かしい「U結社編」。海中戦の3次元感覚を、漫画の2次元の世界の中で上手く描いている。

サブマリン707.jpg   サブマリン707 別冊サンデー.jpg    サブマリン707 完全復刻.jpg    サブマリン707r dvd.jpg
サブマリン707 1 (サンデーコミックス)』['67年]/『サブマリン707 1 完全復刻版 (ラポートコミックス)』['93年]/「サブマリン707R/MISSION:01 [DVD]」['03年]

サブマリン707 2.jpg 太平洋に出没する謎の怪潜を追って出撃する海上自衛隊の潜水艦「707号」は、途中で貨客船の生き残りの3少年を収容する―(「U結社編」)。

 「週刊少年サンデー」に'63(昭和38)年から'65年(昭和40)年まで連載された小澤さとる(1936-)氏による海洋冒険漫画で、当時の男子小学生はこぞってこの作品に没頭し、関連するプラモデル商品などを買い求め、ゴム動力の模型潜水艦を学校の中庭の池などに浮かべて遊んだものでした(ウチの学校だけか?)。

 '77(昭和52)年刊行の「秋田漫画文庫」(全7巻)で再読。いつも誰かしら強敵と海中で戦っていたイメージがありますが、「U結社編」(全51回)、「謎のムウ潜団編」(全42回)、「ジェット海流編」(全8回)、「アポロノーム編」(全20回)、「盗まれた潜水艦編」(全1回)という長短織り交ぜたシリーズ構成だったのだなあと。

「月刊別冊少年サンデー」(怪潜U結社団)

 読み返して最も面白かった(ノスタルジーを掻き立てられた)のは最初の「U結社編」で、敵役のウルフという元ドイツ第三帝国の中尉がなかなか渋く、また、作品中に「ホーミング魚雷」とか「ソナー」とか「フリゲート」といった用語解説が図入りで解説されており、ストーリー展開も本格的な戦記ものの雰囲気を醸しています。

 この時点での「707号」は旧式のオンボロ艦なのですが、潜水艦同士の海中での戦闘というのは、戦闘機同士の空中戦と同じく3次元の世界の戦いであり(この3次元感覚を、漫画という2次元の世界の中で上手く描いている)、707号の艦長・速水とかつての戦友で今は敵であるウルフとの戦いは、「兵力戦」というより「知力戦」になっていて、オンボロ艦が知力で強敵を負かすところがいいです。

 これが、「707号」が新式となり、救出された少年たちが少年自衛官として活躍するようになる「謎のムウ潜団編」以降になると、一気に冒険譚風となり、「謎のムウ潜団編」などには、古代ムウ文明の生き残りの人々が住む海底帝国とかが出てきて、やや子供っぽくなりますが、子供の頃は、この辺りも夢中になって読んだのかもしれません(現時点での星4つの評価は「U結社編」に対して)。

 '67(昭和42)年に秋田書店の「サンデーコミックス」(全6巻)として刊行された際に、すでに雑誌連載時のものから改変が加えられていたようで(その前の連載中の'64年に第1巻が刊行された東邦図書版もあるが絶版で入手困難)、'85(昭和60)年の「秋田コミックスセレクト」での再単行本化も同じ内容、それが、'93(平成5)年にラポートから雑誌連載の「完全復刻版」(全6巻)が出されたということで、やはりカルトなファンがいるのだなあという感じがします。

 '03(平成15)年に「サブマリン707R(Revolution) 」としてアニメ化(2度目)もされていますが(707号の船体が何だか「宇宙戦艦ヤマト」っぽくなっている)、今のようなCG全盛の時代ならば、実写版でも可能ではないかと(アニメにもCGが使われている)。但し、そうなればそうなったで、内容的はやはり大幅に改変されてしまうのだろうなあ、女性とかが登場したりして(原作では"登場人物"と呼べるレベルでの女性は一切登場しない)。

【1967年単行本化[秋田書店「サンデーコミックス(全6巻)」]/1977年文庫化[秋田漫画文庫(全7巻)]/1985年再単行本化[「秋田コミックスセレクト」]/1993年[ラポート「完全復刻版」(全6巻)]】

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「法律家っちゅうのはお上公認のヤクザなんじゃ!!」 でも、ちょっとやり過ぎ。

カバチタレ!.jpgカバチタレ!(1) (モーニング KC)カバチタレ!.jpgカバチタレ!<完全版> 1 [DVD]
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 講談社の漫画雑誌「モーニング」に'99(平成11)年5月から'05(平成17)年まで連載されていた漫画作品。

 広島市にある「大野行政書士事務所」を舞台に、事務所に補助者として入所した若者・田村勝弘の目を通して、その事務所のベテラン行政書士たちが、法知識を駆使した所謂"法テク"で社会的弱者を守っていく姿を描いた物語で、原作は行政書士の田島隆氏、監修は'03年に亡くなった『ナニワ金融道』の青木雄二氏、作画は、『ナニワ金融道』で青木雄二氏のアシスタントを務め、田島隆氏の従弟でもある東風(こち)孝広氏。

 『ナニワ金融道』同様の"濃い"タッチの絵は苦手なのですが、話自体はなかなか面白く、ちょうど自分が行政書士試験を受ける頃に読みましたが、試験勉強にはさほど寄与しなかったものの、いい息抜きになりました。
 2週間しか勉強せず、その間に漫画など読んでいたわけで、当然の如く試験は落っこちましたが、後で自己採点したら択一は合格ラインだったので(当時、問題の半分近くは一般常識・時事問題だった。その年の合格率4.29%だったとのこと)、翌年また受け直し、一応、有資格者になりました(でもこれ、会社勤めしている限り、殆ど使えない資格だということが後でわかった。むしろ、民法を初勉強する契機になった点で、少しだけでも齧ったメリットはあったが)。

 漫画の登場人物の中には、ヤクザ相手に「法律家っちゅうのはお上公認のヤクザなんじゃ!!」などと啖呵を切って相手を震え上がらせる威勢のいいキャラもいますが、この漫画に出てくる行政書士たちは、やや(弁護士の)職域侵犯気味で、弁護士法72条に抵触していると思われる部分も無きにしも非ずといった感じでしょうか(悪徳弁護士がよく登場する漫画でもあるが)。

 でも、「占有屋」(競売物件の改札日直前に、前家主との間に賃貸契約があったふりをして占有、立ち退き料を詐取する)などという稼業があることは、この漫画で初めて知ったし、読んでいて"社会勉強"になるなあと。最近の漫画で言えば、『闇金ウシジマくん』(真鍋昌平)や『クロサギ』(原案:夏原武、作画:黒丸)なども、"裏社会"を知るという点では同じ系譜と言えるかも。

カバチタレ. 2002.1.11 - 2002.3.22(フジテレビ系).jpg 『カバチタレ!』は'02年にTVドラマ化され、フジテレビで1クール放映されましたが、主人公の田村勝弘や栄田千春が女性(常盤貴子・深津絵里)に置き換えられていてどうかなあと思ったけれど、ほどほどに面白く、画面に「心裡留保」とか「供託」とか、解説がテロップ表示されるのが親切でした。

 原作の1巻から5巻ぐらいまでが映像化されましたが、深津絵里とこの頃の常盤貴子では、相当に演技力に差があったように思えました。

 脚色面では、「置屋から足抜け出来ない哀しい女性の話」が、「常盤貴子が置屋に売り飛ばされそうになるドタバタ劇」に改変されているなど、原作のウエット感を極力払拭しようとしているのが窺えました。

 タイトルバックからして、フレンチ・ポップス調。キタキマユの唄う主題歌の原曲は、加藤和彦プロデュース、岡崎有紀の"Do you remember me"('8山田優 in カバチタレ.jpg0年)。エンディング・タイトルのシルエット・ダンサーは山田優(ドラマ部分にも出演。彼女のドラマデビュー作だった)。山田 優 in 「カバチタレ!」
        
 テーマはいくらでもあり、視聴率も20%前後と良かったので、1クールで終わらなくてと思いましたが、'10年1月から、漫画の続編『特上カバチ!! -カバチタレ!2』をドラマ化したものが、TBSで放映されています(こちらも1クール放映、視聴率は10%前後と9年前の"元祖"「カバチタレ!」 と比べると約半分しかなかった)。


カバチタレ ドラマ.jpgカバチタレs.jpg「カバチタレ!」●演出:武内英樹/水田成英●制作:山口雅俊●脚本:大森美香●出演:常盤貴子/深津絵里/山下智久/篠原涼子/陣内孝則/岡田義徳/香里奈/岡田浩暉/田窪一世/伊藤さおり(北陽)●放映:2001/01~03(全11回)●放送局:フジテレビ

 【2006年文庫化[講談社漫画文庫]】

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「史記」誕生の背景がわかり易く描かれ、勇将たちの男気がストレートに伝わってくる。

李陵 史記の誕生1.jpg 李陵 史記の誕生2.jpg 李陵 史記の誕生3.jpg 久松文雄1.png
李陵―史記の誕生〈上〉 (コミック人物中国史)』『李陵―史記の誕生〈中〉 (コミック人物中国史)』『李陵―史記の誕生〈下〉 (コミック人物中国史)』['90年] 久松文雄氏(2009)

李陵 ド.jpg 漢の武帝の時代、匈奴との戦いで敵軍の捕虜となった友人の武将・李陵を弁護して武帝の怒りに触れ、宮刑に処せられた太史令・司馬遷は、歴史の真実を書き残すために「史記」を書き始める。一方、最初は匈奴の王・且鞮候(しょていこう)単于からの仕官の誘いを拒んでいた李陵は、誤報により祖国で裏切り者扱いにされて家族を殺され、やがて単于の娘を娶り左賢王となるが、一方、北海(バイカル湖)のほとりには、同じく匈奴に囚われながらも祖国への忠節を貫いた武人・蘇武がいた―。

 「史記」の誕生に纏わる司馬遷、李陵、蘇武などの人物像を描いた、久保田千太郎・作、久松文雄・画の歴史コミックで、オリジナル単行本は'83年10月の講談社刊(全4巻)。

李陵 2.jpg李陵・山月記.jpg この「李陵」の話自体は、中島敦の小説『李陵』でもそのまま取り上げられていて、よく知られているところです。波乱万丈のストーリーですが、大筋において「史記」や「漢書」に書かれて書かれている通りではないでしょうか。

小説十八史略 3.jpg 且鞮候単于の軍事参謀をしていた漢人は李陵ではなく、早々に匈奴側に寝返った李緒で、それが誤って李陵が匈奴軍を指導していると漢の側伝えられ、武帝が李陵が裏切ったと思ったのは「史記」にある通りですが、陳舜臣氏の『小説・十八史略』でも、李緒は漢では無名の軍人で、李将軍と聞けば、漢では李陵のことと思い込むのは当然であろうとしています。

 李陵も李緒に対して好感はもっていなかったようですが、家族を誅殺された憎悪の捌け口が李緒に向けられたのは自然の成り行きかも。但し、『小説・十八史略』では、李緒に直接手を下したのは本書のように李陵ではなく、李陵に同情する誰かであり、以前から李陵の助太刀を申し出る者は何人かいて、その内の誰が李緒を殺ったかということについて李陵は見当がついていたが、単于に問われても、その者を守るためにその名を口にしなかったとあります。

 この事件のために暫く李陵が北方へ引き下がっていたのは、殺された李緒の支持者の中に、彼が取り入った且鞮候単于の母大后がいたためで、その高齢の母親が亡くなり、胡地に戻った李陵は、且鞮候単于の跡をついで単于となった息子の左賢王を補佐するため右校王となる―李陵が捕虜になったのがB.C.99年、一族を殺されたのがB.C.97年、この間に司馬遷の宮刑があり、且鞮候単于の死と左賢王の即位、李陵の右校王就任がB.C.96年、この年、司馬遷が釈放されるなど、短い間にいろいろあったのだなあと。

 戻太子の乱(B.C.91年)というのは親子関係の悲劇だと思いますが、ちょうどそれが起きた頃、李陵は北海で蘇武と再開していたわけで、その蘇武が祖国に帰還したのが、本書では武帝の死(B.C.87年)の直ぐ後になっていて、蘇武の抑留期間は13年とありますが、通説では19年でないでしょうか(李陵が捕虜になる前年のB.C.100年に捕虜となり、漢へ帰還したのはBC81年)。

 司馬遷が、後代に歴史書の手本とされる「史記」を著すことになった背景がわかり易く描かれているとともに、且鞮候単于父子と李陵の男気の通い合い、蘇武とは異なる道を選ばざるを得なかった李陵の苦悩などがストレートに伝わってくるコミックに仕上がっているかと思います。

スーパージェッターモノクロ2.jpgスーパージェッター モノクロ.jpg 久松文雄氏(1943年生まれ)は、手塚治虫のアシスタントとして出発し、アニメ「スーパージェッター」「少年忍者風のフジ丸」「冒険ガボテン島」などの作画で知られる漫画家で、"原作付き"のものを専門にしており、「スーパージェッター」は前番組の「エイトマン」同様、まだ売れっ子になる前のSF作家らが脚本を書き、久松文雄氏が作画したもので(後に久松氏に原作権が認められた)、TV放映と同スーパージェッター2.jpg時期に「週刊少年サンデー」に連載された『スーパージェッター』はアニメのコミカライズであり、また「風のフジ丸」は白土三平の作品がベースとなっていますが、こうした空想科学SFの作画者である一方で歴史物の作画を得意とし、現在は「古事記」の全巻漫画化に取り組んでいます。
「スーパージェッター」●プロデューサー:三輪俊道●構成・監修:河島治之●音楽:山下毅雄(主題歌)作詞・加納一朗/作曲・山下毅雄/歌・上高田少年合唱団●原作:久松文雄●出演(声):市川治/松島みのり/熊倉一雄/田口計/樋口功/中村正/西桂太/中曽根雅夫●放映:1965/01~1966/01(全52回)●放送局:TBS


 【1983年単行本[講談社(『史記5〜8―李陵(中国歴史コミック)(全4巻)』)]/1989年文庫化[講談社(『李陵―史記(スーパー文庫)』)]/1990年単行本[文藝春秋(『李陵―史記の誕生(コミック人物中国史)(上・中・下)』)]/1995年再文庫化[講談社漫画文庫(『史記7〜9―李陵(上・中・下)』)]】

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実質的には伍子胥と范蠡の物語(それぞれに孫子が絡む)。"創作"を含むが面白い。

呉越1.jpg 呉越2.jpg 呉越3.jpg呉越燃ゆ―孫子の兵法〈上〉 (コミック人物中国史)』『呉越燃ゆ―孫子の兵法〈中〉 (コミック人物中国史)』『呉越燃ゆ―孫子の兵法〈下〉 (コミック人物中国史)

 今から2500年前、南方の大国・楚では、奸臣・費無忌が平王に取り入り、忠臣の伍奢と伍尚を謀殺、伍尚の弟・伍子胥は呉へ亡命し、軍師・孫子と共に公子光を助け呉王を刺殺、光は呉王闔廬となり、伍子胥は、闔廬を説得し楚を攻略、平王の墓を暴き復讐を果たす。しかしこの隙に、越の太子・勾践と軍師・范蠡が呉に戦いを仕掛けてきて、反撃を開始した呉軍は越へ侵入するが、范蠡の奇略にあい大敗、闔廬も殺される。越への復讐に燃える呉王夫差と伍子胥は、ついに越軍を破り会稽山に追いつめる―。

 「史記」の「呉越の争い」を描いた、久保田千太郎・作、久松文雄・画の歴史コミックで、オリジナル単行本は'84(昭和59)年6月講談社刊の全4巻。

呉越燃ゆ―孫子の兵法.jpg 後にそれぞれ「春秋五覇」の1人に数えられる呉王夫差と越王勾践が、自国の存亡を賭け、智謀の限りを尽くしたこの争いは、「臥薪嘗胆」の故事でも知られていますが、このコミック物語の前半の主人公は、知勇に優れた武将である呉の伍子胥(ごししよ)で、後半の主役は、名軍師として鳴らした越の范蠡(はんれい)と見ていいでしょう。

 その2人に比べると、伍子胥が仕えた夫差は、臆病なくせに功にはやる若者であり、范蠡が仕えた勾践は、自信家で戦さを好む性格が後に災いしたように描かれており、とりわけ夫差の呉王になってからの暗君ぶりは甚だしく、「西施の顰に倣う」(この故事成語の解説は出てこなかったけれど)で知られる、范蠡から送り込まれた美女・西施(せいし)との愛欲に溺れ、奸臣・伯嚭の讒言に乗せられ、伍子胥を殺してしまいます(伍子胥、無念!)。

小説十八史略 1.jpg 薪の上に練ることで復讐心を失わないようにする「臥薪」は、一般に強い復讐心を表すとされていますが、本書では伍子胥が驕慢な夫差に進言したものとなっており、作家の陳舜臣氏も『小説・十八史略』の中で、夫差の執念の弱さを物語るエピソードと解せなくもないとしています(因みに、勾践の"会稽の恥"を雪ぐための「嘗胆」も、自らの発案ではなく、范蠡の進言によるものとなっていて、勾践にも夫差と同じような意志の弱さがあったことが見てとれる)。

 文藝春秋版は、サブタイトルに「孫子の兵法」とあり、孫子(孫武)自身も活躍しますが、孫子が呉王闔廬や伍子胥を助け、楚を壊滅させたのは史実であるとしても、呉王夫差から死を賜った伍子胥の無念を晴らすべく、越の軍師・范蠡に策を授け、夫差を敗死させたというのは本当なの?

 ただ、全体を通してストーリー的には面白く、孫子の多彩な兵法のごく一部のみしか描かれていないのは不満ですが、田舎に隠遁している時の孫子の恐妻家ぶりとか、再婚して還暦近くなって子をもうけた時の喜びぶりとかは、孫子の意外な側面を見せています(これも"創作"の要素が強いと思えるが)。

 かつての呉王夫差と同じ愚を繰り返そうとしている越王勾践に国の先行きを読み、宰相の位を辞して越を去り、斉国で事業家として成功した范蠡の生き方などは、社長が無能だから自分の会社はダメなのだと思っているサラリーマンなどが読むと、ちょっと考えさせられるかも。

 【1984年単行本[講談社(『史記9〜12―呉越燃ゆ(中国歴史コミック)(全4巻)』)]/1989年文庫化[講談社(『呉越燃ゆ―史記(スーパー文庫)』)]/1990年単行本[文藝春秋(『呉越燃ゆ―孫子の兵法(コミック人物中国史)(上・中・下)』)]/1995年再文庫化[講談社漫画文庫(『史記4〜6―呉越燃ゆ(上・中・下)』)]】

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分かり易さが特長。クリニックで行う「復職支援デイケアプログラム」を紹介。

ササッとわかる「うつ病」の職場復帰への治療 図解大安心シリーズ.jpg 『ササッとわかる「うつ病」の職場復帰への治療』 ['09年] ツレがうつになりまして。.jpg 『ツレがうつになりまして。』 ['06年]

 3構成で、第1章で「うつ病」の基礎知識、第2章で職場復帰プログラムの実際、第3章で復職後の心得等について書かれています。
 テーマがテーマだけに「ササッとわかる」などというシリーズに入れていいのかなという思いも無きにしもでしたが、1テーマ見開きで、各左ページがイラストや図解になっていて、100ページ余りの本、実際よく纏まっているなあという印象です。

 そうした分かり易さという"特長"とは別に、本書の最大の"特徴"は、メディカルケア虎ノ門院長である著者が、自らのクリニックで実施している「復職支援デイケアプログラム」を詳細に紹介している点でしょう。
 うつ病で休職し、復職見込みにある者が会社に「馴らし出勤」するパターンは、企業が用意する復職支援プログラムとして一般的ですが、本書で言う「デイケアプログラム」とは、クリニックに"模擬出勤"するとでも言うべきものでしょうか。
 「馴らし出勤」の間に発生した業務遂行上のミスをどう扱うかとか周囲への負荷の問題などを考えると、こうした専門家に"預ける"というのも1つの選択肢のように思えました。

 但し、こうしたデイケアが受けられる施設数も受容人数も現状では限られているし、その間の費用は会社が一部補助したりするべきかとか、いろいろ考えてしまいます(そもそも「治療」とあるが、医療保険の対象になるのだろうか)。
 ただ、本としては、こうしたデイケアに参加できない人には何をどのように行えば良いかが2章から3章にかけて解説されていて、周囲が本人にどう接すればよいかということも含め参考になるように思えました。

ツレがうつになりまして.jpg『ツレがうつになりまして』.bmp NHKで今年('09年)の春に、漫画家・細川貂々氏の『ツレがうつになりまして。』('06年/幻冬舎)をドラマ化したものを放映していましたが、あれなどは家族(配偶者)が、この本で言うところの"デイケア"的な役割を担った例ではないかなと。

「ツレがうつになりまして。」●演出:合津夏枝/佐藤善木●制作:田村文孝●脚本:森岡利行●音楽(主題歌):大貫妙子●原作:細川貂々「ツレがうつになりまして。」「その後のツレがうつになりまして」●出演:藤原紀香/原田泰造/風吹ジュン/濱田マリ/小木茂光/設楽統(バナナマン)/駿河太郎/黒川芽以/田島令子●放映:2009/05~06(全3回)●放送局:NHK

 原作コミックも読みましたが、うつ病の特徴が分かり易く描かれているとともに、作品としても心温まるものに仕上がっていると思えました。

ツレがうつになりまして。2.jpg あのコミックの"ツレ"さんは、メランコリー親和型の典型例ではないでしょうか。社内でも有能とされるSEで責任感が強い。曜日ごとにどのネクタイをするか、どの入浴剤を使うか、弁当に入れるチーズの種類は何かまで決めているなんて、完璧癖の1つの現われ方なんでしょうね。

 また、うつを内因性・外因性で区分するやり方は、現在では治療的観点からはあまり意味がないとされているようですが、細川氏の夫はやや太った体型で、クレッチマーが言うところの、肥満型≒うつ型気質という類型に当てはまるかも(ドラマでその役を演じた原田泰造はやせ型。うつ型と言うより神経症型か。まあ、痩せている人はうつ病にならないというわけではないけれど、演技がうつのそれではなく、神経症のそれになってしまっているような印象を受けた)。

ツレがうつになりまして 映画.jpgツレがうつになりまして 映画2.jpg2011年映画化「ツレがうつになりまして。」(主演:堺雅人・宮崎あおい)

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"ゆったり感"と突き抜けたようなナンセンスが大陸的な「天花粉」。『聊斎志異』的雰囲気。

天花粉.jpg 『天花粉 (希望コミックス)』 ['86年] 天花粉 文庫.jpg 『坂田靖子セレクション (第1巻) 天花粉 潮漫画文庫』 ['00年]

 昔の中国で、雨の日は読書、晴れの日は釣りという日々を過ごしていた1人の男が大魚を釣り上げるが、その大魚は竜になるために高い所へ連れて行って欲しいと男に言い、その願いを聞き、仙人のご馳走になりかけた重い魚を救い出して山頂までしょってきた男が、竜になった魚から貰ったお礼とは―というのが表題作「天花粉」のストーリーですが、突然変身自在のユーモラスな化け物が出てきて大魚の身代わりに仙人の鍋に入ったりしてシュール極まりなく、竜になった魚が「することないから」とまた戻って来て、若者の作ったお粥のご相伴に与ろうとするなど、展開も最後までかなりハチャメチャ、でも、全体を通して大らかでほのぼのしたムードに満ちています。

 その他に、お化けたちが自分達の運営するホテルに人間も泊めてみようと思いたったはいいが、そこはどういう訳か何事においても時間厳守のルールが敷かれていて、たまたま泊まった人間は大変に往生するという「定刻ホテル」や、夜中にパンに曜日の刻印を押す小人達の話「七人の小人」、魔王が自分の宮殿の壁紙の貼り替えに狂奔する「階段宮殿」など、'85(昭和60)年から'86(昭和61)年にかけて雑誌「コミックトム」に発表の全7話を収録。

珍見異聞.gif珍見異聞.2.gif 作者の作品カテゴリーとしては、『バジル氏の優雅な生活』のような英国シリーズや、『闇夜の本』のようなSF・ファンタジー、『珍見異聞』(文庫タイトル『芋の葉に聴いた咄』、『磯の貝に聴いた咄』)のような古典お化けシリーズなどがありますが、本書はそれら色々なものが混ざっている感じで楽しめます。

坂田靖子セレクション (第5巻) 芋の葉に聴いた咄 潮漫画文庫』 『坂田靖子セレクション (第6巻) 磯の貝に聴いた咄 潮漫画文庫

 「天花粉」単体では「古典お化けシリーズ」に近いのかも知れませんが、絵面だけでなく、この鷹揚とでも言うか"ゆったり感"と、突き抜けたようなナンセンスは、やはり大陸的だなあと。
 『珍見異聞』が『宇治拾遺物語』や『今昔物語』に近いとすれば、こちらは『聊斎志異』風とでも言うか(『聊斎志異』も狐の話が最も多く、狐に化かされたというのは日本の昔話の専売特許でも何でもないのだが)。

 作者の坂田靖子氏の作品は遠藤淑子氏などと並んで「全1巻」モノが多いので気楽に楽しめますが、とりわけ短篇集に味のある作品が多いように思います。

 【2000年文庫化[潮漫画文庫(『天花粉―坂田靖子セレクション (1) 』)]】

《読書MEMO》 
・「天花粉」...「コミックトム」(1985年11月号) ★★★★

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薀蓄やテクニックだけではなく、ドラマ的にも結構面白かったが...。

ドラゴン桜 13.jpg ドラゴン桜 14.jpg ドラゴン桜15.jpg ドラゴン桜16.jpg ドラゴン桜17.jpg ドラゴン桜18.jpg ドラゴン桜19.jpg ドラゴン桜20.jpg ドラゴン桜21.jpg ドラゴン桜 ドラマ1.jpg テレビドラマ「ドラゴン桜」
ドラゴン桜 |モーニングKC [コミックセット])』 (全21巻)

 '03(平成15)年から'07(平成19)年まで講談社の「モーニング」に連載され、'05(平成15)年にTVドラマ化もされましたが、自分にとって直接関わるテーマに思えなくて(画も上手だとは思えないし)第1巻だけ買ってずーっと読まずにいて、ドラマも1度も見ずにいたのが、連載終了を機に全巻まとめ買いして読んでみたら、結構面白かったです。

 主人公の男女2人の高校生は教師・桜木と出会ってひょんなことから受験生としては殆ど"無"の状態で1年後の東大受験を目指すことになり、最初から東大受験のノウハウ、薀蓄がだーっと出てきてやや圧倒されましたが、先月('09年3月)退官した東大の小宮山総長が以前から「知識の構造化」の重要性を説いており、実際、東大の入試問題は、詰め込みの知識ばかりを問うのではなく、それを構造化する"知恵"のようなものを求めているのだということがこのマンガでよくわかりました。

 ただ、どこまで自分の社会人としての勉強法に取り込めるかと思うとやや消化不良気味で、このままテクニック・オンリーで最後までいくのはキツイなあと思いながら、それでも教師・桜木の断定的な物言いと周囲との確執などに引き込まれて読んでいると、後半部分は2人の受験生の精神面の問題に重点が移行し、それがそのまま2人の成長物語になっているという―たまたま選ばれた2人に発奮する要因がそれなりに内包されていたというのがマンガの"お約束ごと"であるにせよ、何故ヒトは勉強するのかといった問題にまで踏み込んでいて、ドラマ的にも良く出来ていると思いました。

 巻が進むにつれて、このマンガの人気が出たせいか、教育関係者に限らず色々な分野の人のアドバイスが挿入されていますが、受験産業の業界人パブリシティみたいなものも少なからずあり、便乗商法ではないかとちょっと邪魔っ気に感じたりもしました。

  '04年に同じく講談社のマンガ雑誌で連載がスタートした『もやしもん』が'08年の「手塚治虫文化賞」(朝日新聞社主催)のマンガ大賞を受賞し、薀蓄マンガは(身内の賞である「講談社漫画賞」を除いては)賞に縁が無いのか思っていたらそうでもないのかと。
 でも『ドラゴン桜』はテーマもテーマだし...と思ったら、既に'04年に「文化庁メディア芸術祭マンガ部門」の優秀賞を受賞していました(文化庁も"便乗"した?)。

 諦めかけている受験生をやる気にさせるという意味ではいいマンガかも知れませんが(親がやる気になって変な期待を抱いてしまう?)、桜木のような教師に巡り逢えない生徒は多いと思うし、このマンガでやっているのは、学校の授業の時間帯を全て(更に通常の時間帯を超えて)塾講師の講義に置き換えているようなものです。
 そこに作者の学校教育に対する批判が込められているとも言えますが、(文化庁は文部科学省の外局であるけれども)文科省はこのマンガをどう捉えているのだろうか。

 '05(平成17)年にTBSでドラマ化されましたが、連載が完結しないうちのドラマ化であったためか、原作における2人の中心的な生徒の外に何人かの原作に無い生徒の人物造型があって、教師とそれら生徒たちとの人間関係や葛藤が更に前面に出ているため(「金八先生」を意識したのか?)、「受験蘊蓄」的な要素はかなり薄まっています。

ドラゴン桜2.jpgドラゴン桜 ドラマ.jpg「ドラゴン桜」●演出:塚本連平/唐木希浩●制作:遠田孝一/清水真由美●脚本:秦建日子●音楽:仲西匡●原作:三田紀房「ドラゴン桜」●出演:阿部寛/長谷川京子/山下智久/長澤まさみ/中尾明慶/小池徹平/新垣結衣/サエコ/野際陽子/品川徹/寺田農/金田明夫●放映:2005/07~09(全11回)●放送局:TBS 

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イソベン物語。山口六平太と似たキャラ。このマンガで知った「ゴールデン・パラシュート」の意味。

あんたの代理人3.JPGあんたの代理人6.jpg 『あんたの代理人 【コミックセット】』 (全6巻)

 横町の法律事務所で居候弁護士として働いている新米弁護士・真野論平は、ビンボー劇団の役者でもあるが、与えられる役は着ぐるみを着た端役ばかり。そんな論平に舞い込んでくる仕事の相談は、名誉毀損、婚約不履行、遺産相続など様々であり、彼はハートでこれらの問題を解決する!

 小学館の「ビッグコミックスペリオール」の'87年7月の創刊ラインアップで、前年に「ビッグコミック」で連載がスタートした同じ作者の『総務部総務課 山口六平太』が20年以上も連載が続き、コミック本で60巻に迫りつつある今も主人公の山口六平太がずっと同じ年齢や役職であるのに対し、こちらの連載は2年半、論平がイソベンを卒業して独立するところで完結、コミック本で6巻は読み返すのに丁度手頃な感じでしょうか。

 彼の所属事務所が主に扱うのは「民事」案件で(だから"弁護人"ではなく"代理人"なのだが)、論平は人情派弁護士とでも言うか、時に情にかまけて暴走しかねない部分があるのを、飄々とした感じの老弁護士所長がうまくセーブしていて、この両者の師弟的関係にはなかなか味がありました。

 とは言え、結果を見れば、論平が(本人は役者が本職で、それでは食えないから弁護士をやっているという感覚であるにも関わらず)非常に優秀な弁護士であることは明らかなのですが、本人はそうしたことをひけらかしたり人に恩を売ったりすることは無く、この辺りは山口六平太とキャラがよく似ています。

 終わりの方で中小企業のM&Aの話が出てきて、M&Aと言うと何か大企業同士が行うものというイメージがありましたが、実際にはそんなことはなく、頻度としては中小企業の方が多いのかも(大企業だと専門の大手法律事務所が絡むが、中小企業だとこうした街ベンが絡むということになるのか。その場合、弁護士個人の能力に依存する部分が大きくなるが)。

 ライブドアとフジテレビのニッポン放送株を巡る経営権取得攻防があったのが'05年で、このマンガが描かれたのはその15年も前のこと。個人的には「ゴールデン・パラシュート」などというタームはこのマンガで知りましたが(学習マンガのように分かり易い!)、実際に仕事でそうしたM&Aが絡む話に遭遇することは今や珍しいことではなく、その度にこのマンガのことを思い出しています。
山口六平太5.jpg
《読書MEMO》
山口六平太 .JPG『総務部総務課 山口六平太』
1986年、「ビッグコミック」にて連載開始し、2016年22号まで連載を続けた。休載はなく2007年7号で500回を迎えた。
2016年11月14日に作画の高井研一郎氏が死去したことに伴い、ビッグコミック2016年22号(第731話)を以て連載打ち切りが決定した。


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予定調和だが、それなりに楽しめた。映画の方は「スーパーの女」などと比べるとやはり...。

県庁の星2.jpg 『県庁の星 (2) (ビッグコミックス)』 (全4巻) 県庁の星 桂.jpg 桂 望実 『県庁の星

 Y県のエリート県庁職員である野村聡は、民間との人事交流プロジェクトに選ばれ、スーパー富士見堂で1年間の研修を受けることになるが、最初は役員根性・県庁マインド丸出しだった彼が、全く肌違いの民間の仕事を通して変質し、真の"スーパー改革"を実現するに至る―。

 公務員って、民間で言う「出向」のことを「研修」と言ってるみたいですね(「研修(出向)」と言っても、労務提供はしているわけだが、民間の「出向」と異なり、労災の請け元は官公庁のまま)。

 ということで、実質的なマンガの舞台は県庁内では無く、前半部分(1巻・2巻)はスーパーマーケット。
 後半部分(3巻・4巻)は、スーパーの経営を建て直した彼が、第3セクター赤字テーマパークを"潰す"ために送り込まれますが、前半からの流れで、結果はともかく、彼がどう立ち回るかは大体予想がついてしまいます。

 官庁の上層部や主人公の同期の役人の描き方はパターン化していて、事の展開もかなりご都合主義ですが、それでも、主人公とその教育係であるシングルマザーのパート女性とのやりとりも含め、結構楽しく読めました。
 "ギャグ的"に面白いというか、テーマパークに赴任した初日、「名刺を猿に配って終了」には思わず噴きました。

県庁の星 ポスター.jpg県庁の星1.jpg '05(平成17)年から'07(平成19)年にかけて「ビッグコミックススペリオール」に連載されたコミックで(桂望実の原作を杉浦真夕が脚色)、連載途中の'06年に織田裕二主演で映画化されていますが(実際に制作されたのは'05年。「白い巨塔」などのTVドラマを手掛けた西谷弘の映画初監督作品)、織田裕二って本気で演技してそれが丁度マンガ的になるようなそんな印象があり、こうした作品にはピッタリという感じでした。 柴咲コウ/織田裕二
「県庁の星」●制作年:2006年●監督:西谷弘●製作:島谷能成/亀山千広/永田芳男/安永義郎/細野義朗/亀井修朗●脚本:佐藤信介●撮影:山本英夫●音楽:松谷卓●原作:桂望実「県庁の星」●時間:131分●出演:織田裕二/柴咲コウ/佐々木蔵之介/和田聰宏/紺野まひる/奥貫薫/井川比佐志/益岡徹/矢島健一/山口紗弥加/ベンガル/酒井和歌子/石坂浩二●公開:2006/02●配給:東宝(評価:★★★)

スーパーの女.jpgスーパーの女2.jpg 但し、スーパーを舞台にした作品では、伊丹十三(1933-1997)監督、宮本信子主演の「スーパーの女」('96年/東宝)があるだけに、それと比べるとインパクトは劣るし、「スーパーの女」が食品偽装問題など今日的なテーマを10年以上も前から先駆的に扱っていたのに対し、「県庁の星」は映画もマンガもその部分での突っ込み度は浅く、特に映画は単なるラブ・コメになってしまったきらいも無きにしも非ずという感じ。
「スーパーの女」●制作年:1996年●監督・脚本:伊丹十三●製作:伊丹プロダクション●撮影:前田米造/浜田毅/柳島克巳/高瀬比呂志●音楽:本多俊之●原作:安土敏「小説スーパーマーケット」●時間:127分●出演:宮本信子/津川雅彦/三宅裕司/小堺一機/伊東四朗/金田龍之介/矢野宣/六平直政/高橋長英●公開:1996/06●配給:東宝(評価:★★★★)

マルサの女 1987.jpgマルサの女.jpg 「お葬式」('84年/ATG)で映画界に旋風を巻き起こした伊丹十三監督でしたが、個人的には「マルサの女」('87年/東宝)がドラマチックで面白かったです(それぞれ第58回と第61回のキネマ旬報ベスト・テン第1位に選ばれている)。「マルサの女」は、山崎努がラブホテル経営者"権藤"を演じていますが、彼が新人として出演した「天国と地獄」('63年/黒澤プロ・東宝)で三船敏郎が演じていた会社社長の苗字も"権藤"でした。巧妙な手口で脱税を行う経営者らとそれを見破る捜査官たちとの虚々実々の駆け引きをテンポよく描いており、ラストに抜けてのスリリングな盛り上げ方はなかなかのものでした。

マルサの女2 三國.jpgマルサの女 .jpg それまであまり世に知られていなかった国税査察部の捜査の様子をリアルに描いたということで社会的反響も大きく、翌年には「マルサの女2」('88年/東宝)も作られましたが、山崎努に続いてこちらも、宗教法人を隠れ蓑とし巨額の脱税を企てようとする"鬼沢"に大物俳優・三國連太郎マルサの女2 dvd.jpgを配し、これもまた脇役陣を含め演技達者が揃っていた感じでした。

 伊丹十三監督は「前作はマルサの入門編」であり、本当に描きたかったのは今作であるという伊丹十三.jpg趣旨のことを後に述べていますが、確かに、鬼沢さえも黒幕に操られている駒の1つに過ぎなかったという展開は重いけれども、ラストは前作の方がスッキリしていて個人的には「1」の方がカタルシス効果が高かったかなあ。監督自身は、高い娯楽性と巨悪の存在を一般に知らしめることとの両方を目指したのでしょう。
伊丹十三(1933-1997/享年64(自死))

お葬式 映画 dvd.jpgお葬式 映画 00.jpg 確かに「お葬式」で51歳で監督デビューし、高い評価を得たのは鮮烈でしたが、作品の質としては3作目・4作目に当たる「マルサの女」「マルサの女2」の方が密度が濃いように思いました。それが、この「マルサの女1・2」以降は何となく作品が小粒になっていたような気がしたのが、この「スーパーの女」を観て、改めて緻密かつパワフルな伊丹作品の魅力を堪能できた―と思ったら、この「スーパーの女」を撮った翌年に伊丹十三は自殺してしまった。残念。
伊丹十三DVDコレクション お葬式

お葬式 映画 02.jpg「お葬式」●制作年:1お葬式 映画01.jpg984年●監督・脚本:伊丹十三●製作:岡田裕/玉置泰●撮影:前田米造●音楽:湯浅譲二●時間:124分●出演:山崎努/宮本信子/菅井きん/財津一郎/大滝秀治/江戸家猫八/奥村公廷/藤原釜足/高瀬春菜/友里千賀子/尾藤イサオ/岸部一徳/笠智衆/津川雅彦/井上陽水●公開:1984/11●配給:ATG●最初に観た場所:池袋日勝文化 (85-11-04)(評価:★★★☆)●併映「逆噴射家族」(石井聰互)
Marusa no onna (1987)
Marusa no onna (1987) .jpgマルサの女  .jpg「マルサの女」●制作年:1987年●監督・脚本:伊丹十三●製作:玉置泰/細越省吾●撮影:前田米造●音楽:本多俊之●時間:127分●出演:宮本信子/山崎努/津川雅彦/大地康雄/桜金造/志水季里子/松居一代/室田日出男/ギリヤーク尼ヶ崎/柳谷寛/杉山とく子/佐藤B作/絵沢萠子/山下大介/橋爪功/伊東四朗/小沢栄太郎/大滝秀治/芦田伸介/小林桂樹/岡ジョイシネマ3 .jpg新宿ジョイシネマ3.jpg田茉莉子/渡辺まちこ/山下容里枝/小坂一也/打田親五/まる秀也●公開:1987/02●配給:東宝●最初に観た場所:新宿シネパトス (88-03-12)(評価:★★★★)●併映「マルサの女2」(伊丹十三)
新宿シネパトス (1956年3月「新宿名画座」オープン→1987年5月「新宿シネパトス」→1995年7月「新宿ジョイシネマ5」→1997年11月「新宿ジョイシネマ3」) 2009(平成21)年5月31日閉館 

マルサの女2 三國連太郎_1.jpg佐渡原:丹波哲郎.jpg「マルサの女2」●制作年:1987年●監督・脚本:伊丹十三●製作:玉置泰/細越省吾●撮影:前田米造●音楽:本多俊之●時間:127分●出演:宮本信子/津川雅彦/三國連太郎丹波哲郎/大地康雄/桜金造/加藤治子/益岡徹他/マッハ文朱/加藤善博/浅マルサの女2 笠.jpg利香津代/村井のりこ/岡本麗/矢野宣/笠智衆/上田耕一/中村竹弥/小松方正●公開:1988/01●配給:東宝●最初に観た場所:新宿シネパトス (88-03-12)(評価:★★★☆)●併映「マルサの女」(伊丹十三)

企業家サラリーマン.gif 「スーパーの女」の原作は、『小説スーパーマーケット』(『小説流通産業』('81年))で、作者の「安土敏」こと荒井伸也氏は元サミット社長であり、この人の『企業家サラリーマン』('86年/講談社、'89年/講談社文庫)は、海外飲食店グループを指揮する男と、新しい時代の経営者を目指す女の22人の生き方を描いた作品で、作者が現役役員の時点で書いているということもあってシズル感があり面白かったですが、こちらもテレビドラマ化されているらしい。どこかで再放送しないものかなあ。

企業家サラリーマン (講談社文庫)

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被爆家族の3代を描く。約100ページしかないのに、長編小説を読み終えたような余韻。

夕凪の街 桜の国2.jpg 夕凪の街桜の国1.jpg夕凪の街桜の国夕凪の街 桜の国 (双葉文庫).jpg夕凪の街 桜の国 (双葉文庫)

 広島に投下された原爆によって命運を左右された家族3世代を描いた作品で、'03(平成15)年発表の「夕凪の街」、'04(平成16)年発表の「桜の国(第1部)」と書き下ろしの「桜の国(第2部)」の合本ですが、刊行時の反響に違わず、平成16年度(第8回)文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞、第9回('05年)手塚治虫文化賞新生賞などを受賞し、'07年には映画化もされました。

 「夕凪の街」は、'55(昭和30)年の広島市の基町にあった原爆スラムを舞台に、少女の頃に被爆した平野皆実(みなみ)という23歳の女性の被爆10年後が描かれ、「桜の国」では、第1部が'87(昭和62)年の春、第2部が'04(平成16)年の夏の東京と広島を舞台に、皆実の弟・石川(旧姓平野)旭の子・七波(ななみ)の小学生時代と28歳のOLになってからの話が描かれています(映画では、「桜の国」第2部を'07年に年代変更して、田中麗奈、麻生久美子が主演)。

 「夕凪の街」の主人公・皆実は、原爆で父、姉、妹を失い、被災地で多くの遺体を乗り越えてきた経験のフラッシュバックとともに、自分は生きていてよいのだろうか、周囲からも死ねばいいと思われているのではないかという思いに悩まされ、優しい男性同僚との恋愛にも一歩踏み込めないでいる中、被爆後遺症が勃発し、離れて暮らしていた弟などが見舞いに来る頃には、既に眼も見えなくなっていますが、この最後の場面が視力を失った主人公に合わせて空白のコマになって内語だけが書かれており、「十年たったけど、原爆を落とした人はわたしを見て『やった!またひとり殺せた』とちゃんと思ってくれとる?」というその言葉は、平和な時代になっても原爆後遺症によってその命を奪われねばならなかった主人公の無念さを表していて痛切な響きがあります。

 「桜の国」の主人公・七波は野球好きの活発な少女ですが、広島出身の母・京花が自宅で血を吐いて倒れているのを発見し、それが母の最期となったという哀しい体験をしています。
 京花がまだ幼い頃の、学生だった七波の父・旭(「夕凪の街」の皆実の弟)との出会いも描かれていて、ああ、彼女も原爆後遺症だったのかなあと。
 その旭も今ではすっかり年をとり、時々家を抜け出て遠出しているようですが、それをボケの始まりではないかと疑った七波は、ある日、家を抜け出した父を尾行すると、彼は広島行きの長距離バスに乗り込んでいた―。

『夕凪の街 桜の国』.bmp 「桜の国」の主人公は七波ですが、その父・旭の負っているものも重い。それに加え、七波の親友であり、弟・凪夫に思いを寄せる利根東子。七波の父を追っての広島行きは、彼女に引っ張られてのことですが、彼女は被爆一家と付き合うことを親から禁じられていて、ここに1つ、被爆者に対する差別というのがテーマとして浮き彫りにされています。

 全体で約100ページしかありませんが、「夕凪の街」の約30ページの執筆だけで1年かけたとのことで、それだけ密度の濃い労作であると言えます。
 「桜の国」に入って登場人物の関係がやや錯綜しますが、注意して読むと「夕凪の街」との様々な相似形やリフレイン的な描写が見られ、単なる感動物語というだけでなく、全体としての緻密な構成の上に成り立っていて、但し、技法が目的化するのではなく(この物語には所謂"オチ"というものが無い-強いて言えば、七波の父・旭が何故広島通いをしていたのかとうのが"オチ"だが)、例えば、旭の娘・七波に対する思いが、姉・皆実へのレクイエムと重なっているというような重層的効果を持たせることで、長編小説を読み終えたような余韻を読者に与えることに繋がっているように思いました。

夕凪の街 桜の国 1.jpg夕凪の街 桜の国 2.jpg「夕凪の街 桜の国」('07年/「夕凪の街 桜の国」製作委員会)
監督・脚本: 佐々部清
出演:田中麗奈/麻生久美子/藤村志保/堺正章/吉沢悠/中越典子


 【2008年文庫化[双葉文庫]】

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佐々木倫子の部分が星3.5で、綾辻行人の部分が星2.5。

月館の殺人.jpg 佐々木 倫子 (原作:綾辻行人) 『月館の殺人』.jpg 『月館の殺人 上 IKKI COMICS』 『月館の殺人 (下)

 沖縄育ちの雁ヶ谷空海は、鉄道嫌いの母の影響もあり、未だかつて電車に乗ったことがなかったが、母の死後、弁護士に「母方の祖父が生きていて、財産相続の件でぜひ北海道まで来てほしい」と伝えられ、祖父の待つ月館へ列車で向かうことになり、そのSL《幻夜号》には、祖父の招待客らしい6人の鉄道マニアも乗っていたが、そこで密室殺人事件が―。

 '04(平成16)年12月から翌年にかけて「月刊IKKI」('05年2月号〜'06年6月号)に連載された、『おたんこナース』の佐々木倫子の作画による本格ミステリの漫画化作品(原作・綾辻行人)で、上巻を読んでから下巻にいく間に随分間が空いてしまい(下巻は上巻刊行の約1年後の'06年7月刊行)、そうしたら、下巻に入って状況が随分違っているではないかとやや唖然とさせられました(雑誌連載は読んでないんで)。

 鉄道ミステリと言えば、本書にも出てくる『オリエント急行殺人事件』や『Xの悲劇』が有名ですが、「オリエント急行」とは車両だけ同じでストーリーは違うだろうことは予想に難くないのですが、『Xの悲劇』と似たようなことになるのかなと、一瞬思ったりもして...。

 結局それなりにオリジナリティはあったけれども、前提状況にかなり無理があり、相当「空海」という主人公がボケっとしていないと成り立たないような話にも思えました(雪の中で停止している列車というのは、クリスティの『オリエント急行殺人事件』へのオマージュだろうが)。

 むしろ、鉄道マニアの類型が鉄道に関するマニアックな薀蓄に絡めて面白く描き分けられていて、その部分では最後まで楽しめた感じです。

 Amzon.comかどこかの評で、佐々木倫子の部分が星3.5で、綾辻行人の部分が星2.5という評価があったように思いますが、個人的には全く同感で、装丁などは立派ですが、内容的には、息抜き程度には悪くないといったところでしょうか(『おたんこナース』の単行本同様、大判で読み易いし)。

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小学校5年生の光君とその周囲。とり上げるべきテーマの多い年代。

光とともに8巻.jpg 『光とともに... (8)』 〔'05年〕

 '05(平成17)年5月刊行のシリーズ第8巻(「for Mrs」'04(平成16)年〜'05(平成17)年発表)で、主人公の自閉症児・光君は小学校5年生の冬を迎えています。
 このシリーズの第3巻で光君は小学校4年になり、作者はその後しばらく小学生の彼とその周辺を描き続けていますが、それだけ小学校高学年という年代とそれを取り巻く問題については、とり上げるべきテーマも多いのだと思います。

 このシリーズの良いところは、親や教師が、主人公を通して成長し変化していくのがよくわかるところです。
 周囲にはなかなか変わらない人もいますが、それを単なる善玉・悪玉の物語にせず、われわれをとりまく社会の問題として考えなければならないことを教えてくれるという点でも、優れていると思います。

 療育支援の具体的な方法などもわかりやすく示されていますが、巻が進むにつれて、療育の現況に対する問題提起も出てきて、作者の意欲が感じられます。
 両親も、いろいろな人々の励ましや支援を受けることで、自分の子供のことだけでなく、他者へのまなざしも変化していきますが、その両親の他の子どもへの気遣いがある事件の発見につながり、そこでは施設の閉鎖性、暴力の連鎖、問題事実をやり過ごすネグレクトといった深刻な問題が、善意の内部告発という今日的テーマと併せて描かれています。
 以前作者は「漫画にはいといろと制約がある」という発言をしていましたが、これらの描き方には、作者の描かずにはおれないという思いが感じられます。

 一方で、個性の明確化、友との別れ、異性への意識といったこの年代の子どもの世界や、子の進路を意識し始めた親同士の交流と確執も描かれています。
 一種のリベンジ・ファクターで子を受験に駆りたてる親もいれば、1年先を見通すのもたいへんな障害児の親もいる...。
 作者のそれらを包含するような視線が、そのまま、子もそれぞれに違えば親もそれぞれに違うということを認め合うことの大切さを伝えているような気がします。

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自閉症児とその親の歩み。母親の一番苦しい時期を描く第1巻。

光とともに1巻.bmp光とともに... (1)』〔'01年〕光とともに 自閉症児を抱えて.jpg光とともに... ~自閉症を抱えて~ DVD-BOX

光とともに3.jpg '00(平成12)年、女性コミック誌「for Mrs.(フォアミセス)」(秋田書店)にて連載がスタートした、自閉症児とその親の歩みを描いたコミックの第1巻で、主人公の光君の誕生から保育園卒園までを画いています。
 '04年にNTV系でドラマ化され話題を呼びましたが(主演は、'01年に蜷川幸雄演出の舞台「ハムレット」でオフィーリア役を演じて"一皮むけた"篠原涼子)、ドラマを見て少しでも関心を抱いた人にはお薦めしたいと思います。

 母親と目を合わせようとしないし、いつまでたっても母親を「ママ」と呼ばないわが子。最初は自分でもわが子のことがよくわからないで困惑する母親。そして、〈自閉症〉という診断にたどり着く―。自閉症だとわかった後も、家族・親戚・周囲の理解がなかなか得られない、そうした母親の一番苦しい時期が描かれています。
NTV系ドラマ「光とともに~自閉症児を抱えて~」 ('04年放映)
光とともに2.jpg光とともに.jpg これを読むと、TVドラマ(母親役は篠原涼子)の方は途中から始まっていることになり(小学校入学の少し前から)、またかなり明るいシーンが多かったような気がします。作者は漫画にはいろいろ制約があるといったことを以前言っており、テレビの場合はなおさらそうでしょう。
出演:篠原涼子/小林聡美/山口達也

光とともに(戸部けいこ 秋田書店) .jpg わが子との心の繋がりを懸命に模索する母親。光君が初めて母親のことを「ママ」と呼ぶ場面や、さまざまな出来事を経て保育園の卒園式で新たな一歩を踏み出す場面は胸を打ちますが、いずれも作者が取材した事実に基づいているようです。

 続きモノで手をつけるのはちょっと...という人もいるかもしれませんが、この第1巻はこれ1冊でも完結した感動的物語として読めるので、未読の人も手にとりやすいのではないかと思います(もちろん療育に簡単な"終わり"はないのでしょうが)。 

 自閉症という一般の人にはなかなか理解されない障害を、多くの人にわかりやすく知らしめたという意味でも、本書の功績は大きいと思います。

光とともに 篠原.jpg「光とともに~自閉症児を抱えて~」●演出:佐藤東弥/佐久間紀佳●制作:梅原幹●脚本:水橋文美江●音楽:溝口肇●原作:戸部けいこ●出演:篠原涼子/小林聡美/山口達也/武田真治/鈴木杏樹/井川遥/齋藤隆成/市川実日子/大倉孝二/大城紀代/高橋惠子/渡辺いっけい/金沢碧/福田麻由子/佐藤未来/池谷のぶえ●放映:2004/04~06(全11回)●放送局:日本テレビ

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戦中の玉の井界隈の活気や人情味、猥雑なパワーや哀しさが滲む自伝的作品。

寺島町奇譚.jpg寺島町奇譚』ちくま文庫 〔'88年〕 滝田ゆう.jpg 滝田 ゆう (1932-1990/享年58)

ぬけられます 全1巻.jpg寺島町奇譚 ぬけられます.jpg '68(昭和43)年の「月刊ガロ」12月号より連載された滝田ゆう(1932-1990)の「寺島町奇譚」シリーズは、『寺島町奇譚』、『ぬけられます』(共に'70年/青林堂)として単行本刊行され、復刻版なども出ていますが、本書はそれらを合本化した文庫で、作者の真骨頂である戦前・戦中の玉の井遊郭界隈の郷愁溢れる世界を20篇、600ページ余にわたって堪能できます。

 主人公は色街・玉の井に両親、祖母、姉、そして猫のタマと暮らしている息子キヨシで、家族は母と姉を中心に階下に営業するスタンドバー「ドン」で働いていていますが、キヨシも、粗野でちょっと恐い(でも時に優しい)母に言われて、小学生ながらに掃除をしたりして店を手伝っている―、そうした戦前から戦中にかけての下町の家族の様子が、作者の自伝的要素を入れ、生き生きと描かれています。

 場所が場所だけに、いろいろな人物が店にやってきて、また行き交い、そうした人々の生活や人生の断片を、「よくわからない」なりの子供の目線で描いていて、そこに滲む活気や人情味、猥雑なパワーや哀しさなどが、しっとりした下町の情景と相俟って伝わってきます。

吉行 淳之介.jpg原色の街2.jpg 文庫解説の吉行淳之介は、「滝田ゆう」と「つげ義春」の作品が好きだそうですが、この2人の作品は、劇画とは異なる独立したジャンルで、しいて言えば「文学的雰囲気を持った連続画」とでも言うべきものだとしています。

 寺島町は今の東向島付近で、吉行淳之介は、玉の井が戦後、現在の「鳩の街商店街」(東向島1丁目)まで拡がってきたあたりを舞台に『原色の街』を書いていますが、戦中の玉の井の中心部の様子を、自らの記憶だけを頼りにここまで描いたということに、作者・滝田ゆうのこの街の記憶に対する並々ならない愛着が感じられます。

玉の井.jpg 街の入り口の「ぬけられます」という看板とは裏腹に複雑に入り組んだ路地に、銘酒屋(私娼旅)の娼婦たちの世界とベーゴマに熱狂する子供たちの世界が同居しているこの不思議な空間も、物語の最後で米軍の攻撃(東京大空襲)を受けて火の海と化す―。

 キヨシが疎開先へ向かう汽車の窓から愛惜の念をもって眺める、焼け野原になってしまった住みなれた街の瓦礫の中に、行方不明になったキヨシの愛猫タマを探す立て札が立つラストは、胸に迫るものがあります(因みに、神代辰巳が「赤線玉の井 ぬけられます」('74年)で作品の舞台とした「玉の井」は、昭和33年の売春防止法が施行される直前、つまり戦後のそれである)。

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センセーショナリズム? 暴走気味の主人公の独善が気になる。

ブラックジャックによろしく.jpg                 ブラックジャックによろしくドラマ3.jpg
ブラックジャックによろしく (1)』 〔'02年〕 「ブラックジャックによろしく 涙のがん病棟編 [DVD]

立花隆.bmp '02(平成14)年に第1巻が刊行されたこのシリーズは、あの立花隆氏が絶賛、氏曰く―、「(この漫画は)いまやコミックを超え、ノンフィクションを超え、文学すら超えて、我々の時代が初めて持った、知・情・意のすべてを錬磨する新しい情報メディアとなった。これからの時代、『ブラックジャックによろしく』を読んで悩み苦しんだことがない医者にはかかるな、と言いたい」と、ものすごい褒めようで、東大での講義素材にも使ったりしていますが、確かに医療現場においてあるかもしれない問題を鋭く突いているなあという感じはします(実態とかけ離れているという現場の声もあったようですが)。

ブラックジャックによろしく1.jpg この第1巻では、研修医の劣悪な労働条件や治療よりも研究を優先する大学病院の内実を抉っていて、続く第2巻で主人公の研修医は、大学病院の面目を潰してまでも患者を市井の名医に診せたりしています(なかなかの行動力)。

ブラックジャックによろしく がん病棟編.bmp 第3巻、第4巻でダウン症の生前告知を通して新生児医療の問題を扱っていて(これは感動しました)、第5巻~第8巻のガン告知の問題を扱っているところまで読みましたが(この部分は'03年にTBS系でテレビドラマ化されたシリーズの中では取り上げられず、翌年の正月にスペシャル版としてドラマ化された)、その後も精神障害とマスコミ報道の問題を扱ったりしているようで、どちらかと言うとジャーナリスティックな(悪く言えばセンセーショナリスティックな)路線を感じます。

 それはそれでいいのですが、主人公の正義感がややもすると暴走的な行動に表れ、主人公の独善に思えてきます。山崎豊子の『白い巨塔』では、この種の"正義感"を揶揄するような描き方がありましたが、この漫画は、「強者は悪者で、善なる者は弱者」みたいな構図の中で、弱者にはどんな非常手段も許される...みたいなを感じがあるのが引っかかります。

Er.jpgER 緊急救命室.jpg 同じ「青臭さ」でも、個人的には、テレビドラマ『ER』初期の研修医時代の"カーター君"みたいな、周囲に対するセンシビリティのあるタイプの方が好きなのですが、多分、立花氏は、自分とは違った視点でこの作品を見ているのだろうなあと。

ブラックジャックによろしくドラマ2.jpg
ブラックジャックによろしく47.jpg
「ブラックジャックによろしく」●演出:平野俊一/三城真一/山室大輔●チーフプロデューサー:貴島誠一郎●脚本:後藤法子●音楽:長谷部徹●原作:佐藤秀峰●出演:妻夫木聡/国仲涼子/鈴木京香/加藤浩次/杉本哲太/松尾政寿/綾瀬はるか/今井ブラックジャックによろしく  緒形拳.jpg陽子/伊東四朗/泉ピン子/原田芳雄/笑福亭鶴瓶/吉田栄作/横山めぐみ/浅茅陽子/石橋凌/伊東美咲/藤谷美紀/阿部寛/鹿賀丈史/小林薫/薬師丸ひろ子/三浦友和/緒形拳●放映:2003/04~06(全11回)●放送局:TBS

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赤ん坊に対する素直な驚き、既成概念にとらわれない子育てぶり。

私たちは繁殖している.jpg 『私たちは繁殖している (Bunka comics)』 〔'94年〕

 1994(平成6)年・第4回「Bunkamuraドゥマゴ文学賞」受賞作(自伝的小説『ファザーファッカー』と併せての受賞。この年の選者は文化人類学者の中沢新一氏)。

 '94(平成6)年にシリーズの第1巻が刊行され、その後文庫化もされたもので、作者・内田春菊氏と思しめき主人公の出産・子育て奮闘記であり、赤ん坊という生き物に対する驚きの気持ちなどが素直に表現されていて非常に楽しめたし、同じ立場にある女性にとって参考にも励みにもなるではと思いました。

 特に、既成概念にとらわれない子育てぶりは、仕事を持つ女性を勇気づけると思います。
 確かに、一般育児書に書いてあるようなことをすべて働きながらやろうとしても無理で、暗に仕事をやめろと言っているようなものかもしれず、本書はそうしたものへの逞しいアンチテーゼになっていると思えました。

 シリーズの4巻まで単行本で"熟読"しましたが、巻が変わるとパートナーも変わっていたり、流産あり子宮外妊娠ありで、ホントにこの人及びその周辺にはいろいろなことが起こるなあと。

 前年('93年)刊行の小説『ファザーファッカー』は直木賞候補に、さらに『キミオ』で芥川賞候補にもなっているから、やはり"才人"なのでしょう。
 本書(第1巻)は『ファザーファッカー』と抱き合わせで「Bunkamuraドゥマゴ文学賞」を受賞しましたが(その年の選考委員は中沢新一氏ただ1人、この賞は毎年選行委員が変わるシステム)、個人的には、星4つの評価は第4巻ぐらいまでかな、という感じ。
 5巻、6巻と読み進むにつれ、前夫や親戚に対する悪口など、他者に対する異価値許容性の無さが目立ってきて残念です。

 『ファザーファッカー』に書かれていることに因を求めるわけではないですが、著者自身の性格に大きな欠損部分があるようにも思えてくるのが少し哀しい。
 しかし見方を変えれば、彼女は自分自身のトラウマと常に格闘し、新しい家族像というものを模索しているともとれます。

 【2000年文庫化[角川文庫(『私たちは繁殖している イエロー』)]】

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嗜好からくるイメージをここまで物語として膨らませることができるものかと、ちょっと感心。『痴人の愛』と少しダブった。

家畜人ヤプー (1970年)2.jpg 家畜人ヤプー (1970年).jpg 家畜人ヤプー角川文庫版.jpg 『劇画家畜人ヤプー「快楽の超SM文明」編』.jpg
家畜人ヤプー (1970年)』(挿画・装本:宇野亜喜良)/['70年/都市出版社]/『家畜人ヤプー』 角川文庫改訂増補決定版(カバー・イラスト:村上芳正)['72年]/『劇画家畜人ヤプー「快楽の超SM文明」編 (3巻)』['14年/電子書籍版]

 ドイツのとある森の中で、麟一郎とその婚約者クララは謎の飛行船を見つけるが、それは2000年後の宇宙大帝国イースから来て不時着したもので、2人はその飛行船で、白人至上主義、女権主義のイースに連れて行かれる。イースでは、白人が支配層で黒人はみな奴隷、そして日本人はヤプーという"家畜人"の扱いを受けていて、ヤプーは皮膚をはじめとして体を改造され、人間椅子、畜人犬、畜人馬、河童、自慰機械、肉便器などに改造されている―。

奇譚クラブ 昭和33年2月号.png 1956年より『奇譚クラブ』に「ある夢想家の手帖から」というタイトルで連載され、その後断続的に書き継がれた長編小説で、自分が読んだ角川文庫版も、文庫化に際して加筆・修正されたものであるとのこと。

 作者の「沼正三」は正体不明の作家で、現職エリート判事K氏だったという説が有力ですが、自分の社会的立場は伏せる一方で、角川文庫版の巻末に、「捕虜生活中、ある運命から白人女性に対して被虐的性感を抱くことを強制されるような境遇に置かれ、性的異常者として復員して来た」と、その嗜好の原因を明かしています。

 自らの性的嗜好からくるイメージをここまで物語として膨らませることができるものかと、嫌悪を超えてちょっと感心してしまうし、ぺダンティックな要素を含んだ文脈や全体の構築力から、作者が相当の知識人であることが窺えますが、『奇譚クラブ』という雑誌が初出であることからもわかるように、「表現すること」自体が目的として書かれたものであるような気もします(同じような嗜好を持った人には評価の対象になり得るだろうが、一般的には、「奇書」と見られているのではないか)。

三島由紀夫.jpg 生前の三島由紀夫がこの作品に強い関心を示し、版元を通じて「沼正三」に会おうとしたらしいですが、三島の全集の"しおり"に「沼正三」が寄稿していて、"沼氏"は編集部と「沼正三」の"仲介役"のフリをして三島に会ったとあります。しかし、この"仲介役"の人物は別に実在していて、時に自ら「沼正三」を名乗り、実際『続・家畜人ヤプー』はこの人の筆によるものらしいというからややこしい(三島は晩年、自分は「沼正三」が誰だか知っていると言っていたそうですが...)。

家畜人ヤプー〈第1巻〉 (幻冬舎アウトロー文庫)』 (コミック/全5巻)['99年]
家畜人ヤプー 第1巻.jpg石森章太郎 家畜人ヤプー.jpg かつて石森章太郎が本作を劇画化し、'83(昭和58年)1月に辰巳出版より刊行されていますが(最近では江川達也のものがある)、石森章太郎のものは、ストーリーは原作に忠実ながらも「サイボーグ009」みたいなタッチなので、SFっぽく(元来はSFという形を「借りているだけ」の作品だが)、原作の、あの"肉便器"に尻の皮膚が触れたときのウェットな感覚の描写のようなものは伝わってきません。

劇画 家畜人ヤプー 宇宙帝国への招待編』 石森章太郎・作 ('83年/辰巳出版) 昭和58年1月左開き版(初版)/昭和58年6月右開き版(5版)

 それでも、原作の中にある西洋へのコンプレックスと女性へのコンプレックスの一体化を再認識させられ(文庫解説にある作者の西洋&女性コンプレックスの元となった捕虜体験は、個人的には、会田雄次の『アーロン収容所』を想起させた)、そう言えば谷崎の『痴人の愛』についてもそうした読み解きをする見方があることを思い出しました。 

家畜人ヤプー 改訂増補限定版.bmp 【1970年単行本[都市出版社](挿画:宮崎保之)/1970年改訂増補限定版・1971年改訂増補限定版特別再販[都市出版社](挿画・装本:村上芳正)/1970年単行本・1971年改訂増補普及版[都市出版社](挿画・装本:宇野亜喜良)/1972年改訂増補決定版[都市出版社](挿画・装本:村上芳正)/1972年文庫化(改訂増補決定版)[角川文庫](カバー・イラスト:村上芳正)/1975年初版本愛憎版[出帆社](装幀:勝川浩二/挿画:宮崎保之)/1984年限定愛蔵版[角川書店](画:村上昴)/1991年改訂増補完全復刻版[スコラ](挿画・装本:宇野亜喜良)/1992年最終増補決定版[大田出版(全3巻)](装幀・画:奥村靫正)/1999年再文庫化[幻冬舎アウトロー文庫(全5巻)](カバーデザイン:金子國義)】

『家畜人ヤプー』改訂増補限定版(1971年・都市出版社/挿画・装本:村上芳正) 
                                      
                                            
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劇画家畜人ヤプー【復刻版】』『劇画家畜人ヤプー2【復刻版】』 
 
《読書MEMO》
沼正三『家畜人ヤプー』.gif「捕虜生活中、ある運命から白人女性に対して被虐的性感を抱くことを強制されるような境遇に置かれ、性的異常者として復員して来た。(中略)以来20余年間の異端者の悩みは、同じ性向を有する者にしかわかるまい。昼の私は人と議論して負けることを知らなかったが、夜の私は女に辱められることに陶酔した。犬となって美女の足先に戯れることが、馬となって女騎士に駆り立てられることが、その想念だけでも快感を与えてくれた。被虐と汚辱の空想の行きつくところに汚物愛好も当然存在した。/祖国が白人の軍隊に占領されているという事態が、そのまま捕虜時代の体験に短絡し、私は、白人による日本の屈辱という観念自体に興奮を覚えるようになって行った。」(角川文庫版627p)

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虐待の多様な現実と被虐待児や親などへのケアの重要性を訴える。

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凍りついた瞳(め)―子ども虐待ドキュメンタリー』ソフトカバー版 ['96年]/椎名篤子『親になるほど難しいことはない―「子ども虐待」の真実 (集英社文庫)

 本書はの'94年9月号の雑誌「YOU」に発表され、以降10回にわたって連載されたノンフィクション漫画ですが、描かれている「虐待」問題というテーマは重く、「児童虐待防止法」制定への大きな推進力になったとされるほどの反響を呼びました。

 作者は、本書の元になった椎名篤子氏の『親になるほど難しいことはない』('93年/講談社)という虐待の実態をレポートしたノンフィクションと偶然出合い(たまたま入った喫茶店に置いてあった)、作品イメージが噴出するとともに、この内容を多くの人に伝えねばと、ほとんど"啓示的"に思ったそうです。

 虐待問題に関わった保健婦や医師、ケースワーカーなどの視点から8つのケースが取り上げられ(身体的虐待だけでなくネグレクトや性的虐待も含む)、解決に至らなかったケースもあれば、医師、保健婦、ケースワーカーらの洞察と親や子へのケア、関係機関との連携などにより、母子関係を修復し、子の将来に明るい兆しが見えたものもあります。

 センセーショナリズムに走らず、虐待の背後にあるDVなどの夫婦関係や親自身の養育歴の問題を、家族カウンセリングなどを通してじっくり描き、関係者が、いっそ親子を引き離した方が子のためではと思いながらも、根気よく母親を援助し、母親が愛情を回復することで子供が少しずつ明るくなっていくという話は感動的です。

 親にすべての責任を押し付け、また(女性漫画誌に連載されたということもあるが)親自身がそう思い込むことは問題の解決にならないことをこの漫画は教えてくれ、虐待を受けた子や親などへのケアとその後の支援の必要を訴えています。
 
 しかし一方で、虐待しているという意識さえない"未成熟"な親や、児童相談所の対応の拙さ(本書でも多々出てくる)などのために、子供を救うことができなかったケース(といって親や児相は何か罰を受けるわけではない!)などを考えると、虐待は「犯罪」であるという社会的意識を強化することも大切ではないかと思いました。 

 【1995年愛蔵版・1996年ソフトカバー版{集英社]】

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