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北の大地を流転した異能の持ち主と身寄りの無い少女の見えない心の絆。読後感がいい。
『白眼子』(2000/11 潮出版社) 『白眼子 (潮漫画文庫)』 ['06年]
'00(平成12)年5月から9月に「月刊コミックトムプラス」に連載された作品で、昭和21年の北海道・小樽が舞台。戦災孤児となった少女・光子は、ある姉弟に拾われ一緒に暮らすことになるが、その弟の方は「白眼子」と呼ばれる「運命観相」を生業とする盲目の霊能者だった―。
で、タイトルからしてホラー物かオカルト物という感じですが、ホラーではないですが確かにオカルティックなモチーフではあります。しかし、そうしたオカルト的関心を超えて、北の大地を転々とした異能の持ち主と、身寄りの無い少女の見えない心の絆を描いた、読後感の良い作品と言えるかと思います。
ストイックで一見とっつきにくそうな「白眼子」に光子が徐々に信頼を寄せるようになる過程が、戦後間もない時代の北海道という背景とともに、うまく描かれていると思いました。途中で新聞記事が出てきて、「えっ、これ、実話?」と一瞬思わせますが、このような霊能力者は、作品の中にもあるように、戦地から帰らぬ出征者の行方を案ずる人や新たな商売や投機を始める人の需要に沿って、当時結構いたのではないだろうか。
「人の幸・不幸は等しく同じ量」という達観したかのような「白眼子」の言葉が、この作品を読む過程では自然に受け容れることが出来、盲目の「白眼子」から光子がどう"見えた"かということが明かされるラストは、何かグッと心に沁み渡るものがありました。
光子というコンプレックスの固まりみたいだった少女の成長物語にもなっていて、利己的で世俗的に見えた「白眼子」の姉も、本当のところはいい人だったみたいで、こうしたことも、読後感の良さに繋がっているのでしょう。
【2006年文庫化[潮漫画文庫]】