「●と コナン・ドイル」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 「●と フョードル・ドストエフスキー」 【464】 フョードル・ドストエフスキー 『貧しき人びと』
鮎川版・英語版ともに、原著からのイラストが豊富。2冊並べて読む?
鮎川信夫(詩人・翻訳家、1920 - 1986/享年66)『シャーロック・ホームズ大全』『Original Illustrated Sherlock Holmes
』
かつて講談社文庫に収められていた鮎川信夫(1920 - 1986)訳のシャーロック・ホームズ・シリーズの復刻版で(ソフトカバー、1986年9月刊行)、「大全」とありますが、ホームズ・シリーズの短編集5冊、長編4冊、計60作品の内、第5短編集『シャーロック・ホームズの事件簿』12編と、最後の長編『恐怖の谷』の13作品は未収録です。
「大全」と称しながら未収録作品があるのは、訳者の鮎川信夫氏がホームズ・シリーズの全作品の翻訳を目指しながらも途中で逝去したためであるとの話もありますが(実際に氏が亡くなったのは'86年10月17日、甥の家で甥の家族とスーパーマリオブラザーズに興じている最中に脳出血で倒れ、その日に亡くなった。本書刊行の翌月である)、シリーズ完訳でないとは言え、『シャーロック・ホームズの冒険』『シャーロック・ホームズの回想』『シャーロック・ホームズの帰還』『シャーロック・ホームズの最後の挨拶』の4短編集、『緋色の研究』『四つの署名』『バスカビル家の犬』の3長編を1冊で読めるのは有難いことです。
イラスト(挿絵)が初出時の原著からふんだんにとりこまれているのも魅力で(2段組み約600ページの中に約200点のイラストがある)、難点は、活字が小さくなったことと、本が重くなってしまったことか。
字を大きくすれば、ますますページ数が増えて本は重くなるし(まあ、最初から携帯用としては想定されていないわけだが)、これは仕方がないか。
同じようなタイプで、1991年に米国で刊行された英語版のハードカバー『Original Illustrated Sherlock Holmes』(Castle; Facsimile edition版)も手元にあり、こちらは、『シャーロック・ホームズの冒険』『シャーロック・ホームズの回想』『バスカビル家の犬』『シャーロック・ホームズの帰還』を所収し、イラストは同じく原著から365点も拾っています。
英語版は日本の鮎川版に比べ、短編集は3/4、長編は1/3(全作品でみれば、鮎川版は7/9、英語版は4/9)所収していることになりますが、英語版の方は、これで636ページ超ですから、鮎川版がいかにコンパクトに、というか"ぎちぎちに"詰め込んだものであるかがわかります。
英語版の方は、秋の夜長などに、英語の勉強のため読むにはいいかも。
英語版にある作品は、鮎川版でカバーされているため、不確かなところがあれば、鮎川版で確認できます。
個人的には一番最初に読んだ『シャーロック・ホームズの冒険』が一番面白いと思いますが、永らく再読していない...ちょうど2010年に深町眞理子氏の新訳が創元推理文庫から出たので、そちらで読むかも。
こちらも、従来の他の文庫版のホームズ・シリーズに比べるとイラストは比較的豊富だし、別にでかい本を2冊机の上に並べなくとも、英語版と文庫の付き合わせで読んでも構わないわけか。


河出書房版を図書館から借りてみると(シャーロッキアンらしく『四つのサイン』としているが、より正確に言えば「四人のしるし」だろう。他の3人は字が書けないのだから)、注釈と解説、訳者あとがきで本全体の3分の1を占めていました(これだけで1つの読み物のよう)。


デヴォンシャーの名家バスカヴィル家の当主、チャールズ卿が怪死を遂げた。ベーカー街を訪れた医師モーティマーの依頼によって、チャールズ卿の死に関する調査とバスカヴィル家の新たな当主となったヘンリー卿護衛のため、多忙のホームズに代わりワトスンが、依頼人と共にデヴォンシャーへと向かう。彼を待ち受けていたのは独特の雰囲気に包まれた沼沢地帯と、そこに暮らすいずれも一癖ある隣人たち、そして今なおその地の人々の胸に現実の恐怖として生き続ける、バスカヴィルにまつわる魔犬伝説だった―。
『緋色の研究』、『四つの書名』、そして、本作の後に書かれた『恐怖の谷』の3つの長編は何れも2部構成になっていますが、この『バスカヴィル家の犬』は、前半ワトスンの手紙乃至報告文が中心で、後半がワトスンのリアルタイムでの語りのようになっているものの、明確に2部に分かれてはいません。
光文社文庫版は、初版時のシドニー・パジェットの挿画が30点掲載されていて(新潮文庫版は挿画無し)、当時の時代の雰囲気や登場人物の風貌が分かりやすいです。

1927年、コナン・ドイルが亡くなる3年前に刊行されたシャーロック・ホームズ・シリーズの最後の短編集(第5短編集)で(原題:The Case-Book of Sherlock Holmes)、ドイルの没後60年に当たる1990年に著作権が切れるまでは、延原謙訳の新潮文庫版しかありませんでした(従って、創元推理文庫版の訳者は、阿部知二(1973年没)ではなく、最初から深町眞理子氏になっている)。
一方、新潮文庫版は、例によって「隠居した画材屋」(延原謙訳では「隠居絵具屋」)と「ショスコム荘」の2編が『シャーロック・ホームズの叡智』の方に組み入れられていますが、この仕分け基準が未だによく分らない...。しかも、新潮文庫版は光文社文庫版と異なり発表順には並んでおらず、では何順なのかというと、この辺もよく分らない...(でも、訳文そのものは格調高い)。
一方で、最後まで新たな境地を探ろうとしているのか、「白面の兵士」(この作品、ドイルは医師だったはずだが、ハンセン氏病に対する誤解がみられる)などのようにワトスンではなくホームズ自身が事件を語ったり、結構"変化球"が多いという感じでしょうか。
「消えた蝋面」(「白面の兵士」)山中峯太郎 1956年ポプラ社(名探偵ホームズ全集19)




『
アーサー・コナン・ドイル(Arthur Conan Doyle、1859-1930)によるシャーロック・ホームズ・シリーズの最初の作品で、1886年に執筆され、翌1887年に発表されたもの(原題:A Study in Scarlet)。
19世紀のアメリカでのモルモン教の歴史が絡んだ、第2部の犯人の告白は結構「重たい」話であり、彼がどう裁かれるのかと思ったら実は重大な病気を抱えていて―というのは、その後のミステリでもよくあるパターンで、でも、これがホームズ・シリーズの後期に書かれたものだったら、ホームズの対処の仕方も少し違ったものになったかも知れないなあと。
シャーロッキアン2人が訳した河出書房のハードカバー版(小林司氏は日本シャーロック・ホームズ・クラブ主宰。先月(2010年9月27日)81歳にて逝去された)が、最も詳細(マニアック?)に解説されていて(本作のタイトルを『緋色の習作』としているのも"こだわり"の1つか)、挿画も発表当初のものを多く載せていますが、「入手しにくい・高い・重い」といった難点があります。