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権威に臆することのない批評メスの切れ味は相変わらず。
『誤読日記』 (2005/07 朝日新聞社)
著者の『読書は踊る』('98年/マガジンハウス)、『趣味は読書。』('03年/平凡社)に続く書評集ですが、今回は175冊もの本がしっかりジャンル分けされていて、より体系的にアイテム整理されているのではないかと思います。
『チーズはどこへ消えた?』、『バカの壁』など、とり上げている本の3分の2以上がベストセラー本です。
話題にはなっているが何となくクダラナイあるいは胡散臭いと思っても気にはなる、そんな本の中身をいちいち確かめる暇のない人にとっては実用性(?)が高いと思われます。
タレント本や"幸せになりたい本" "泣きたい本"、良識ある新聞の書評欄は取り上げないけれどバカ売れだけはしている本を多くとり上げるなど、出版文化批評(多少大袈裟に言えば「文芸社会学」)の様相がますます強くなった感じです。
もちろん、芥川・直木各賞受賞作品、丸谷才一、渡辺淳一といった大御所から政治家の書いたものまでも広く網羅し、「誤読」という控えめなタイトルに反し、権威に臆することのない著者の批評メスの切れ味は相変わらずです。
普通、書評集というのは、読んでいて「あ〜、あれも読んでない。これも読んでない」と少し焦ったりすることがあるのですが、著者のこの一連の書評集は、その逆の気持ち、つまり読んでないことで安心し、読んでいたら「しまった!」みたいに思わせるところがあったりします。
とはいえ、全部を全部こき下ろしていたら読む方は結構マンネリを感じるかもしれないけれど、加賀まりこの『とんがって本気』はタレント本だけど貶してはいないし、魚住昭の『野中広務 差別と権力』など高い評価のものもあります。
この辺りの配置がいいアクセントになっているかも。
【2009年文庫化[文春文庫]】