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「ケイ・スカーペッタ完全復活」には程遠い。

異邦人[上].gif 異邦人[下].gif 『異邦人 上 (講談社文庫 こ 33-26)』 『異邦人 下 (講談社文庫 こ 33-27)

Book of the Dead - Patricia Cornwell.jpg 全米女子テニス界のスター選手が休暇先のローマで惨殺されるが、その遺体はひどく傷つけられ、くり抜かれた眼窩には砂が詰め込まれていた。イタリア政府から依頼を受けた法医学コンサルタントのケイ・スカーペッタは、元FBI心理分析官で法心理学者のベントン・ウェズリーと共に、事件の調査に乗り出す―。

 2007年に発表された「検屍官シリーズ」の第15作で、"検屍官" ケイ・スカーペッタは、シリーズ第12作『黒蠅』('03年)以降、検屍局長の職を辞し、フロリダ州デルレイビーチに住んで法病理学者の資格で犯罪コンサルタントをしていますが、今回の事件の舞台はローマ、ということで、邦訳タイトルは『異邦人』(原題の「死者の書」(Book of the Dead)は確かにピンと来ない)。

 このシリーズ、日本では毎年年末に新作が出ていたのが、前作『神の手』('05年)との間に「捜査官ガラーノ」シリーズなどがあってやや間があっただけに、「ファン待望の作」、「ケイ・スカーペッタ完全復活」などと歓迎されましたが、一方で、「以前ほど面白くない」「ちょっとがっかり」との声も。

 自分自身の感想も後者で、以前の相方マリーノとかも落魄しておかしくなっていて、スカーペッタ自身の存在も、姪のルーシーなどに押され気味でやや薄く、久しぶり同窓会に行ったら皆が疲れて元気なくて盛り下がったみたいな感じ。

 ケイ・スカーペッタのフィアンセでもあるベントンがスカーペッタを巡ってローマのハンサム法医学者オットー・ポーマにやきもきさせられたり、スカーペッタを憎む女性精神科医マリリン・セルフの存在があったりと、登場人物が増えた分、愛憎ドラマみたいになって、事件そのものの影も薄い。

 そのマリリン・セルフのもとにサンドマンと名乗る者から怪しいメールが届いて、スカーペッタ自身にも危険が迫りますが、身内を事件に巻き込まないと話は盛り上がらないと作者は思っているのでしょうか。

 随所に織り込まれる"最新"の科学捜査のテクニックも、「FOXクライム・チャンネル」などでやっているものの後追いにしか見えず、やたら時事ネタが盛り込まれているところに、逆に、時代に後れまいとする作者の焦りのようなものを感じてしまいました。

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「CSI」や「NCIS」などの科学捜査ドラマの先駆けでもあった。

証拠死体.jpg 『証拠死体 (講談社文庫)』['92年] csi.jpg NCIS.jpg

Body of Evidence.jpg 1991年に発表されたパトリシア・コーンウェルの「検屍官ケイ・スカーペッタ・シリーズ」の第2弾(原題:Body of Evidence)。
 90年代の米国ミステリ界を最も席巻した作家をベストセラー量産度から言えば、『法律事務所』('91年)、『ペリカン文書』('92年)、『依頼人』('93年)などで知られるジョン・グリシャムですが、女流ではこのパトリシア・コーンウェルでしょう。

 このシリーズは15作ほど刊行されていますが、シリーズの最初の頃のものの方に傑作が多いような気がし、この第2作『証拠死体』は、第1作でシリーズの主要登場人物の紹介も終わっているので、ケイが惨殺された美人の売れっ子作家の死体に検屍官として向き合うという、事件の核心部分からいきなり入り、その後もテンポがいい。

 『検屍官』のところで、このシリーズが、女性が主役として活躍するクライム・ドラマ(「Law & Order:性犯罪特捜班」や「BONES」)の先駆となったと書きましたが、本書では、前作以上に科学捜査の実態が克明に描かれていて、こうした描き方は、「CSI:科学捜査班」(「CSI:マイアミ」「CSI:NY」といったスピンアウトもある)や「NCIS-ネイビー犯罪捜査班」(これ自体が「犯罪捜査官ネイビーファイル」のスピンアウト)などの先駆でもあったと言えるのではないかと思いました。

 第一、ケイの勤務する「検屍局」が「犯罪科学研究所」と同じビルにあり、そこには例えば「繊維班」などがあって、犯行現場に残った繊維を採取してその組成から犯行に関わる衣服や絨毯を特定する、そのやり方などは極めてシステマティック。
ポーリー・ペレット.bmp 「NCIS」の女性分析官アビー(ポーリー・ペレット)などがやっている科学分析に比べれば、本書にある科学分析は、今でこそ"原始的"な類なのかも知れませんが、それまでは、観察眼の鋭い探偵や刑事が出てきて、「この糸は何だろう」みたいに偶然見つけた微小残留物から事件の読み解きが始まるといった展開ばかりだったので、こうして残留物を収集し分析することがシステムとして行われている様は、当時としては目新しかったです。

 事件の展開は複雑ですが、大風呂敷を拡げてたたみきれなくなっているようなシリーズ後半の作品に比べると、本作は一応しっかり"たたんでいる"し、何よりもケイと刑事マリーノの会話が楽しめました。
 第1作ではセクハラ気味なところもあったマリーノだけど、この作品では、ケイの庇護者的立場というのがかなりはっきり出ていたように思います(既に、第1作でケイを助け、"いい人"であることは読者にはわかっているわけだが)。

CSI科学捜査班 dvd.jpgNCIS ネイビー犯罪捜査班 dvd.jpg「CSI:科学捜査班」CSI: Crime Scene Investigation (CBS 2000/10~ ) ○日本での放映チャネル::WOWOW(2002~)/AXN/テレビ東京など

「NCIS~ネイビー犯罪捜査班」Navy NCIS: Naval Criminal Investigative Service (CBS 2003~ )○日本での放映チャネル:FOXチャンネル
NCIS ‾ネイビー犯罪捜査班 シーズン1 コンプリートBOX[DVD]

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ケイとマリーノのやりとりがいい。テレビドラマに「BONES」のようなフォロアーを生んだ。

検屍官.jpg 『検屍官 (講談社文庫)』 〔'92年〕 BONES.jpg "BONES"

Postmortem.jpg 1992 (平成4) 年度「週刊文春ミステリー ベスト10」(海外部門)第1位。 

 1990年に発表されたパトリシア・コーンウェルの「検屍官シリーズ」の第1作であり(原題は"Postmortem")、主人公である40歳の女性検屍官ケイ・スカーペッタが、バージニア州リッチモンドで起きた女性連続殺人事件の犯人に迫るというストーリー(但し、シリーズの途中で、ケイの年齢は30代に改変されている)。

 文庫で500ページを一気に読ませる力量は、その後のシリーズの人気を予感させ、ミステリとしての面白さよりは、主人公の魅力で引っぱられる感じがしますが、それだけで次作へ次作へと読み進みました。

 捜査に積極的に加わり捜査方針を左右する発言権を持つ検屍長官というのは超エリート、つまり彼女はスーパー・キャリアウーマンといったところでしょうが、彼女の一人称で語られる文章は、その冷静で知的な分析力だけでなく、人間的な感情の起伏をよく表していて、組織内での女性キャリアゆえのストレスや不安から幼い頃から抱えるコンプレックスまですべて吐露されていて、かえって親近感を覚えます。

 個人的には、部長刑事ピート・マリーノとの皮肉やユーモアに富んだやりとりが好きで、マリーノは時にセクハラともとれる言動があるが、実のところケイを大いに助けていて、イタリア系同士ということもあり、やはりこの2人、実は気が合っているということか。

 リッチモンドは当時、アメリカ随一の犯罪都市だったそうですが、地元新聞の警察担当記者として犯罪レポートを書いた著者の経歴が、物語のリアリティを高めていて、さらにこのデビュー作には、検屍局でコンピュータ・プログラマーとして勤務したという著者の経歴がよく生かされていると思いました。

 一方、事件が複雑なわりにはオチがあっさりしている傾向が、この作品も含めこのシリーズにあり、15年間で14作刊行されたのは、よく続いた方と見るべきかもしれません。

「Law & Order:性犯罪特捜班」   「BONES」
LAW & ORDER: 性犯罪特捜班.jpgBones (FOX).jpg テレビドラマなどに明らかにこのシリーズの影響を受けていると思われるフォロアーを多く生み、「Law & Order:性犯罪特捜班」(旧バージョンからスピンアウトして女性が主役になった)や「BONES」(こちらも有能な女性法人類学者が主人公で、殺人捜査班の男性捜査官と組ん仕事をする)、更には「女検死医ジョーダン」なんてパクリが出てきてしまっている今、このシリーズはもう復活はない?と思っていたら、'07年に15作目『異邦人(上・下)』('07年/講談社文庫)が出ました(手元にあるけれど、未読。第11作の『審問』以降、全部上下巻と長いんだよなあ)。

Law & Order:性犯罪特捜班 dvd.jpgLaw & Order:Special Victims Unit.jpg「Law & Order:性犯罪特捜班」Law & Order: Special Victims Unit (NBC 1999/09~2010/05)○日本での放映チャネル:FOX CRIME

BONES3.jpg「BONES」Bones (FOX 2005/09~ ) ○日本での放映チャネル:FOX (2006~2015/09)

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