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雑学本としてオーソドックス。雑学にも「定番」がある?

IMG_7873.JPG大人の最強雑学1500.jpg  大人の博識雑学1000.jpg
大人の最強雑学1500』['19年]『大人の博識雑学1000 (中経の文庫)』['16年]
 チコちゃんに叱られる.jpgことば、生き物、地球・宇宙、地理、歴史、ワールド、人体、ライフ、文化・習慣、食べ物、スポーツ、芸術・娯楽、モノ・企業の13のジャンルから1500の雑学を集めたもの。NHKの「チコちゃんに叱られる!」が人気番組となったせいか、はたまた教養ブームのせいか、ここのところ雑学本が結構多く出版されているようですが、本書はその中でも「雑学総研」というところの本だけあってか、オーソドックスなものであるように思いました。

NHK「チコちゃんに叱られる」
「大人の最強雑学1500」  .jpg 単行本を文庫化したものでないのでタイムリーな話題も織り込まれている一方、かたちの上では文庫の改版でないとはいえ、同じ雑学総研の『大人の博識雑学1000』('16年/中経の文庫)とはかなり項目がダブっているので(実質的には同文庫の「増補改訂版」? やっぱり雑学ブームに"便乗"してやろうという狙いなのかなあ)、先に『大人の博識雑学1000』を買ってしまった人は留意しておいた方がいいと思います(実はこれ自分のことなのだが、3年経つと殆ど内容を忘れてしまうものだなあと。新鮮な気持ちで読めてしまった(笑))。

 珍談奇談の部類から、学術的に検証されているものまで、種々雑多な話題を分かりやすく提供してくれていて、ページ数も680ページ強と大部であるため、暇潰しにはもってこいという感じです。ことばの由縁などで諸説あるものはちゃんとそのことも記されていて、このあたりの丁寧さはNHKの「チコちゃんに叱られる!」などと似ている?

 そう言えば、以下は、それぞれの強調ポイントがやや違っていたりするかもしれませんが、「チコちゃんに叱られる!」でも取り上げられていたような記憶があります。

写真:「明屋書店」Twitterより

移動式銭湯.jpg●お風呂のことを「湯船」と呼ぶのは、船による「移動式銭湯」が江戸時代にあったため(473p)
シューマイとグリーンピース.jpg●「松竹梅」は中国の「歳寒三友」(冬の寒い季節に強いもの)に由来し、優劣は表さない(507p)
●シューマイとグリーンピースの組み合わせは昭和42年の日本の学校給食が始まり(538p)
●板チョコに溝があるのは、冷却する際に金型に接する面積を増やして早く固めるため(542p)
●サトーハチロー作詞「うれしいひなまつり」の「お内裏さまとおひなさま」は誤用である(597p)

homepage1.nifty.com

チコちゃんに叱られる 木彫りの熊.jpg 番組を全部チェックしているわけではないですが、それでもこれだけあるということは、雑学にも「定番」がある? ということなのでしょうか(それとも番組の出題担当者が本書をネタ本として使っているせいか)。
('19年11月29日放送の「チコちゃんに叱られる!」の「働き方改革のコーナー」で、早速に下記が登場。やっぱり番組の出題担当者が本書をネタ本に使っている?)
●なぜ北海道で木彫りの熊が名物なのか。その誕生の起源は尾張徳川家が冬の生活の糧としてスイスから持ち込んだから(186p)
「チコちゃんに叱られる!」('19年11月29日放送)
  

チコちゃんに叱られる 20200214.jpgチコちゃんに叱られる 湯舟.jpg('20年2月14日放送の「チコちゃんに叱られる!」(ゲストパネラー:前田敦子/土田晃之)で、「なんで浴槽のことを湯船っていう?」との上記と全く同じクエスチョンが登場。番組の出題担当者が本書をネタ本に使っている可能性がますます高まった?)
「チコちゃんに叱られる!」('20年2月14日放送)
 
 

《読書MEMO》
ガイ・フォークス.jpg●「ナイスガイ」の「ガイ」の起源は「アノニマス」で知られるガイ・フォークス(38p)
●「灯台下暗し」の「灯台」は「燭台」のこと(60p)
●「ターシャ」という繊細過ぎて自殺してしまうことがあるサルがいる(74p)
●食用豚の体脂肪率は14~18%で、人間ならモデル並み(82p)
●明治5年の第1回人口統計で全国一位の人口は広島県だった(178p)
天津甘栗 露店.jpg●「兄弟都市」ではなく「姉妹都市」というのは「都市」が女性名詞だから(278p)
●日本の玄関ドアが外開きなのは靴を脱ぐ習慣があるため(西洋は内開き)(455p)
●海外のワインは750ml瓶が一般的なのに対し日本は720ml瓶(日本酒の4合瓶に由来)(504p)
●「天津甘栗」は天津産ではなく、「天津港から出荷された栗」だった(505p)
●「スルメ」を「アタリメ」というのは「擦る目」を嫌った江戸時代の博徒の験担ぎから(526p)
ローソン.jpg●サイゼリアのキッチンには包丁が無い(ステーキもサラダもすべて加工済みのため)(645p)
●ローソンの看板にミルク缶が描かれているのは、起源がローソン氏の牛乳屋だったから(652p)
●化粧品製造・販売の「DHC」は、前身の翻訳業会社「大学翻訳センター」の略(661p)

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ビジュアルがキレイ。図形問題中心の正統派パズル書。

パズル 線の迷宮 .jpgパズル 四角の迷宮 .jpg パズル 丸の迷宮.jpg  1000 Play Thinks.jpg
線の迷宮 ―スーパーヴィジュアルパズル (カッパ・ブックス)』『四角の迷宮 ―スーパーヴィジュアルパズル (カッパ・ブックス)』『丸の迷宮 ―スーパーヴィジュアルパズル (カッパ・ブックス)』"1000 Play Thinks"(2001)
Ivan Moscovich
Ivan Moscovich.jpg線の迷宮_3436.JPG 全ページカラーのパズル集で、巨匠パズル作家イワン・モスコビッチ(この人、旧ユーゴスラビア生まれでもともとは機械技師だった)の「1000Play Thinks」(Ivan Moscovich、2001)から図形問題を厳選して再構成したものであるとのこと。但し、一部、論理パズルや代数問題も含まれていたでしょうか。

 「スーパーヴィジュアルパズル」と銘打つように、ビジュアルがキレイで、これが問題を解いてみたくなる動機づけにもなっているような印象です。しかしながら、各問題のレベルは結構高かったのではないでしょうか。「正統派パズル書」と言える内容です。

葉山 考太郎 .jpg 編訳者はパズル作家の葉山考太郎氏で、ワインライターとしても知られており、ワイン専門誌をはじめ、一般情報誌のワイン特集などでも執筆を担当、『30分で一生使えるワイン術』('09年/ポプラ社)、『これだけは知っておきたい 必要最小限のワイン入門』('18年/スマート新書)などのワイン入門書も書いている人です。

 この葉山考太郎氏は同時にパズル作家でもあるわけで、世界各国のパズル・クイズ文献の収集家でもあります。また、本名でソフトウェア開発に関する翻訳本も手掛けているソフトウエア・エンジニアでもあるとのことで、なんだか色んな才能に恵まれている人だなあと。パズルの方は、1996年より『頭の体操』などにクイズ問題を出すなどしているそうです。

葉山考太郎氏

 この「スーパーヴィジュアルパズル」は、他に『四角の迷宮』、『丸の迷宮』(ともに2003年/カッパ・ブックス)というのも本書に先立って同じ年に刊行されていて(こちらも編者は葉山考太郎氏。氏はもともと図形、水平思考系のパズルを好むそうだ)、そちらの方も楽しそうです。

 夜寝る前に、寝つけに1問解いてみるのもいいと思います。却って寝られなくなるという心配は、自分については無いと思います(そこまで集中力が持たない?)。

Ivan  Moscovich.jpgイワン・モスコビッチ(右) ユーゴスラビア王国出身の機械技師、玩具・パズルデザイナー、ホロコースト生存者。2023年4月21日死去、96歳。
 

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応用はそう簡単ではない? 単なる「雑学本」として読んでしまった。

薀蓄雑学説教の事典.jpg薀蓄雑学 説教の事典』(2016/08 時事通信社)

 2010年から2011年にかけて警視総監を務めた著者による訓示集で、警察に入って訓示をしてきたある日「だれもちゃんと聞いていない」ことに気づいて、それから、雑学、薀蓄を思いきり入れて、記憶に沁み込む話にしようと考え、訓示に雑学を盛り込むようにしたともこと。著者はまさに博覧強記の人であり、吉本興業に誘われた過去を持つとのことです。

 ただ、読み物としてはそこそこ面白いのですが、こうした"薀蓄雑学"を、これから話を聞く側に伝えようとする趣旨にどのように絡めるかという応用ということになると、そのあたりは個々の創意というかセンスによるものではないかと。一応は、コミュニケーション、危機対応、マネジメント、計画立案、人事管理、人材育成、業務改善、広報戦略、複眼思考と、訓示の内容に沿って9つのジャンルに分けられていますが、本書に出てくるものは警視総監なりが警察幹部なりに話す訓示という枠組みがあるため、本書を読んだだけで読者がすぐに自らに応用するのは難しいかもしれません。

 知識の抽斗(ひきだし)を多く持つことは、ひとつの武器にはなると思いますが、ホントはどんな雑学を開陳するかということよりも、話の趣旨にどう繋げるのかがポイントなのでしょう。本来はそこを押さえながら読むべきなのでしょうが、自分には本書をそこまで敷衍する能力がないのか、単に「雑学本」として読んでしまった感じです(Amazon.comでの分類を見ると、「コミュニケーション」とか「ビジネス」とかでなく、「雑学・クイズ」になっていたりする)。雑学本としてはまずまずでしょうか。

《読書MEMO》
●乾杯は本来「毒殺防止」のために行われた。
●「ローマの休日」は、他人のドタバタを楽しむ悪趣味な人たちの意味
●「本日は晴天なり」(It's fine today)は英文の発音に多くの要素が入っているため使われた。
●NYヤンキースのマークの「Y」はヨークのY。
●エイトマンは警視庁捜査一課の8番目の刑事の意(本来はeighth man(エイスマン))。
●一寸法師の刀である針は、鍼灸師の使う鍼(はり)と考えるべき(鬼は病気の象徴)。
●「少年よ大志を抱け」の後には「この年老いた私のように」と続く。
●やくざ用語の「マッポ」の由来は「待つポリス」から。ヤバいの語源は「速い」からきているとも。
●パッションフルーツのパッションは「受難」の意(花の五本のおしべが十字架のキリストに見えるため)。
ゴディバ.jpg●サッポロビールの星のマークの星は北極星(北海道開拓使の旗のマークより)。
●パネリストは問題提起をする人、パネラーはただのパネルを貼る人。
●ゴディバのマークの由来は、馬に乗った裸のゴディバ伯爵夫人(ピーピング・トムの由来も同じ故事から)。

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往年の大物俳優のトリビア集。洋画ファンには気軽に楽しめる本。 

ハリウッド・スキャンダル―.jpgハリウッド・スキャンダル.jpg 『ハリウッド・スキャンダル―ちょっと気になる話 (現代教養文庫)

 プレイボーイ誌に連載されたゴシップ欄の集大成の抄訳で(原題"CELEBRITY TRIVIA:A Collection of Little‐Known Facts About Well‐Known People"、原著刊行は1980年)、ハリウッド映画のスターを中心に、映画監督や歌手などのトリビアを、編訳者が選んだもの。

 この翻訳が出て間もなくして読んだのですが、振り返ってみれば、出てくるのは大物スター、それも「超大物クラス」ではあるものの、そうドロドロした話ばかりでなくいい話もあったりして、洋画ファンには気軽に楽しめる本でした(版元が無くなっているので、新たに入手しようとすれば古書市場からになるが)。

ピーター・フォーク2.jpg 個人的に一番印象に残った話は、ピーター・フォークのエピソードで、彼は3歳の時に悪性の腫瘍のため右目を取り、代わりに義眼を入れていたのですが、12歳の時、野球の試合で二塁打を三塁打にしようと三塁にかけ込んだらアンパイアがアウトにしたので、「どこ見てんだヨォ。お前のがよっぽどこれが必要じゃねぇかァ?」と、おもむろに義眼を取り出して怒鳴ったことがある―というもの。

 気が強かったんだなあ。因みに、ベテラン性格俳優のトーマス・ミッチェルが1962年にブロードウェイの舞台で「コロンボ副隊長」を演じたのを、TV作家のリチャード・レヴィンソンとウィリアム・リンクがTV「刑事コロンボ」にするため、歌手のビング・クロスビーにコロンボ役の白羽を立てたもののクロスビーの都合がつかず、それでピーター・フォークにコロンボ役が廻ってきたとのこと。

Gregory Peck/Gary Cooper
グレゴリー・ペック .jpgゲイリー・クーパー .jpg この手の話は本書の中で他にも幾つか紹介されていて、グレゴリー・ペックは「真昼の決闘」の主役を降りたが、「駅馬車」(1939)の主役を降りたゲイリー・クーパーが代わりに主役をやり、アカデミー主演男優賞を獲得した―。因みに、ウィキペディアによれば製作者のスタンリー・クレイマーはこの映画を「誰も守ろうとするガッツが無かったので滅んでいった町についての話だ」と語ったといい、別の本で、ジョン・ウェインなどは同じような理由でこの作品が好きではなかったというような話を読んだことがあります(作家の村上春樹氏が『村上さんのところ』('15年/新潮社)真昼の決闘 ド.jpgで「何度も観返している映画ベスト3はなんですか?」との問いに、「ジョン・フォードの『静かなる男』と、フレッド・村上春樹 09.jpg村上さんのところs.jpgジンネマンの『真昼の決闘』です。四面楚歌みたいな状況に置かれたときに(何度かそういうことがありました)、よく観ました。見終わると、「僕もがんばらなくちゃな」という気持ちになれます。どちらもとてもよくつくられた映画です。何度観ても飽きません」と答えていた。同氏によれば、アメリカのホワイトハウスの映画室で、もっとも数多く大統領に観られた映画は「真昼の決闘」だという話を聞いたことがあるそうな)

ユル・ブリンナー.jpg 「マイ・フェア・レディ」のヒンギス教授役で知られるレック・ハリスンは、ミュージカル「王様と私」の"王様"役を断り、代わりに初舞台を飾り、大成功を収めたのが当時新人のユル・ブリンナーであるとのこと。当然のことながら、そのまま映画でも"王様"を演じたユル・ブリンナーは、アカデミー主演男優賞を受賞しています("アンナ"役のデボラ・カーもゴールデングローブ賞主演女優賞を受賞)。

 ジェームズ・ディーンはテレビ出演のために映画「銀の盃」(1955)の出演を断ったが、ポール・ニューマンがその代役をやり、ポール・ニューマンのデビュー作となったとのこと(この映画は海外ではDVD化されているが、日本では現在['12年]リリースされていない)。

East of Eden .jpg ポール・ニューマンは、「エデンの東」(1955)では逆にジェット・リンク役を(これは「シェーン」のアラン・ラッドが役を降りたために空いてしまっていたのだが)ジェームズ・ディーンにもって行かれ涙をのむが、一方、「傷だらけの栄光」(1956)はジェームズ・ディーンが主役をやるはずだったのが、'55年9月に彼が自動車事故死したため、ポール・ニューマンが代わりにやることになった―。

ロバート・レッドフォード.bmp ジョン・ガ―フィールドが「欲望という名の電車」(1951)のスタンリー・コワルスキー役を断ったために、その役が廻ってきたのが明日に向かって撃て 0 1.jpgマーロン・ブランド。そのマーロン・ブランドは、「明日に向かって撃て!」(1969)でポール・ニューマンと共演するはずだったが、当時起きたキング牧師暗殺事件に衝撃を受けてその気になれず、結局代わりに大役を射止めたのがロバート・レッドフォードであるとのこと(これとは別に、ポール・ニューマンと共同で脚本を買い取ったスティーブ・マックイーンがブッチ役で、ポール・ニューマンがサンダンス役の予定だったのが、スティーブ・マックイーンが都合により出演しなくなったため、ポール・ニューマンがブッチ役に回り、当時無名のロバート・レッドフォードがサンダンス役に抜擢されたとの話もある)。

『追憶』(1973) 13.jpg卒業 [DVD] 2L.jpg そのロバート・レッドフォード主演の三大作品「スティング」「追憶」「華麗なるギャツビー」の何れも、ウォーレン・ビーティが主演を断ってロバート・レッドフォードの所に廻されたもの。

 ロバート・レッドフォード自身も、「卒業」(1967)のベンジャミン・ブラッド役を断っていて、その役はダスティン・ホフマンに廻った―(ロバート・レッドフォードとダスティン・ホフマンでは全然雰囲気違う感じがするけれど)。

 ロバート・レッドフォードは「バージニア・ウルフなんか恐くない」(1966)のニック役、「ローズマリーの赤ちゃん」(1968)のガイ・ウッドハウス役、「ある愛の詩」(1970)のジャッカルの日 パンフ2.jpgある愛の詩 1970.jpgRosemary's Baby2.jpgオリバー・バレット役、「ジャッカルの日」(1973)のジャッカル役を降りているとのことです(「ローズマリーの赤ちゃん」はジョン・カサヴェテス、「ある愛の詩」はライアン・オニール、「ジャッカルの日」はエドワード・フォックスがそれぞれ主演することになった)。

 最終的に主役俳優が決まるまでいろいろあったんだなあと、改めて思いました。

真昼の決闘.jpg「真昼の決闘」●原題:HIGH NOON●制作年:1952年●制作国:アメリカ●監督:フレッド・ジンネマン●製作:ス真昼の決闘 DVD.jpgタンリー・クレイマー/カール・フォアマン●脚本:カール・フォアマン●撮影:フロイド・クロスビー●音楽:ディミトリ・ティオムキン●原案:ジョン・W・カニンガム●85分●出演:ゲイリー・クーパー/グレイス・ケリー/トーマス・ミッチェル/ケティ・フラド/ロイド・ブリッジス/ロン・チェイニー・ジュニア/イアン・マクドナルド/シエブ・ウーリー/リー・ヴァン・クリーフ/ロバート・ウィルク/ジャック・イーラム●日本公開:1952/09●配給:ユナイテッド・アーチスツ日本支社=松竹●最初に観た場所:池袋・文芸座ル・ピリエ(83-01-10)(評価:★★★☆)
真昼の決闘 [DVD]

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頭の体操  〈第7集〉122.jpg パズルの基本は、時代を経てもあまり変わっていないのかも。

頭の体操 第11集.jpg     頭の体操1-6.jpg
頭の体操〈第11集〉夢のスーパー・ベースボール・パズル (カッパ・ブックス)』(カバーイラスト:松下進) 『頭の体操〈第1集〉~〈第6集〉』(カバーイラスト:伊坂芳太良(第1~4集)/水野良太郎(第5~6集))『頭の体操 (第7集) (カッパ・ブックス)』(カバーイラスト:水野良太郎)
[下]『頭の体操 第1集』['66年]より(イラスト:水野良太郎)

頭の体操 〈第7集〉.jpg頭の体操 水野良太郎.jpg 多湖輝氏の『頭の体操』は正規シリーズで23集までありますが、第1集が'66(昭和41)年12月刊行で、翌'67年に第2集から第4集が刊行され、その後約10年のブランクがあって、'77(昭和52)年とその翌'78年に第5集と第6集が、更に7年の間隔が空いて'85(昭和60)年に第7集が刊行されています(第7集のカバー裏の推薦文はプロスキーヤーの三浦雄一郎氏が書いている)。'86(昭和51)年刊行の第8集以降はカバーイラストが水野良太郎(1936-2018)(第1集から第4集までのカバーイラストは伊坂芳太良、本文イラ『頭の体操』第7集うら12.pngストは水野良太郎が永らく描いていた)から松下進に交替し、以降15年間ほぼ毎年刊行されて2001年刊行の第23集までいき、そこでようやっと「打ち止め」―という感じでしょうか)。

『頭の体操〈第1集〉~〈第7集〉』(カバーイラスト:伊坂芳太良(第1~4集)/水野良太郎(第5~7集))
2『頭の体操』第1~7集1.jpg
                                                                                                                         
 全23集のうちの後半の方は、刊行が続いていたこと自体あまり印象が無いのですが、ちょうど真ん中あたりに当たるこの第11集は'89(平成元)年の刊行で、このシリーズは第10集まで文庫化されていますが、この第11集以降は文庫化されていないようです。振り返ってみれば、この頃にはもうプロのクイズ作家が作問したり、一般公募して寄せられた問題の中から選んだりしていたのだなあと(「あるなしクイズ」の考案者として知られるクイズ作家の芦ヶ原伸之(1936-2004)が第5集から参画し、また、第5集刊行時から一般に問題を公募している)。
       
 著者・多湖輝氏(この年に千葉大の「名誉教授」になっている。シリーズ最初の頃は「助教授」だった)のカラーがちょっと見えにくくなっているかなあ。テーマは「ベースボール」だけど、あまり"野球繋がり"が感じられない問題が多いように思います。

 中には屁理屈問題も無くは無いですが、概ね1つ1つのパズルの質自体は落ちていないと思われ、今テレビでやっているクイズ番組(ブームと言ってもいいくらい、いっぱいやっているなあ)で出されているような問題と同レベルかそれよりはやや難しいかも。

 「犬⇔神」「壺⇔頂上」「十⇔網」の3つのグループにある法則を探せとか、「(A)3、4、7、8」「(B)1、1、9、9」の各4つの数字を1回ずつ使って、+-×÷の記号と()の組み合わせで、それぞれ答えを「10」にしなさいとか。

 前者の問題は、単語を英語に置き換えてみればわかります(こういうのは最近のテレビのクイズ番組などでもよく見かける)。後者の問題は、これが出来れば算数の天才と思っていいとのこと。分数(割り算)を使うのがミソですが、ヒントをもらったとしても解けなかったと思います。
 
頭の体操 1-162.jpg そう言えば、有名進学校の数学研究会か何かで、予めミッション数を定め、トランプを順番にめくっていき、四則記号との組み合わせでミッション数になる組み合わせを早く見つけ出すことを競うパズルを、日頃からやっているのをテレビで見たことがあります。

 最近の「脳トレ」とかを見ても(今はみんなDSでやるんだなあ)、パズルの基本は、時代を経てもあまり変わっていないような気がします。問題が解ける人よりも、問題を作っている人の方が頭いい?

 「Yahoo!オークション」に第1集から第16集までまとめて出点されていました。一部現在自分の手元にあるものもあるためわざわざ買わないけれど。

《読書MEMO》
水野 良太郎 2018年10月30日死去
水野 良太郎.jpg

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『頭の体操』シリーズ"第1期"4冊の最終弾。ここまでの4冊で売り尽くした?

頭の体操2872.JPG 頭の体操4.bmp頭の体操〈第4集〉.jpg  頭の体操 パズル・クイズで脳ミソを鍛えよう 多湖輝.jpg頭の体操第1集.jpg
頭の体操〈第4集〉―これがカラー・テレビ式パズルだ (1967年) (カッパ・ブックス)』『頭の体操〈第1集〉―パズル・クイズで脳ミソを鍛えよう (カッパ・ブックス)』(カバーデザイン:田中一光//カバーイラスト:伊坂芳太良

頭の体操 〈第1―4集〉.JPG頭の体操 第2集・第3集.jpg 『頭の体操』の第1集「パズル・クイズで脳ミソを鍛えよう」は'66(昭和41)年刊行で、この第1集だけで250万部発行されたそうで、昭和のベストセラーの中でも、最も短期間で100万部に達した本の1冊でもあります。刊行が12月だったため、翌'67(昭和42)年のベストセラーランキングで第1位となっており、この年には、第2集「百万人の脳ミソに再び挑戦する」、第3集「世界一周旅行をパズルでやろう」も、それぞれベストセラーランキングの第3位と第6位に入っています。

頭の体操 第2集 百万人の脳ミソに再び挑戦する (カッパ・ブックス)』『頭の体操〈第3集〉―世界一周旅行をパズルでやろう (1967年) (カッパ・ブックス)』(カバーイラスト:伊坂芳太良) 

 この第4集「これがカラー・テレビ式パズルだ」('67年刊行)は、翌'68(昭和43)年のベストセラーランキング第5位。結局、『頭の体操』の正規シリーズとしては第23集('01年)まで出されていて、累計で1200万部売れたそうですが、この第4集までの勢いがとにかく凄かったようです。

 第4集の刊行と第5集の刊行の間に約10年もの間隔があり(新海均著『カッパ・ブックスの時代』('13年/河出ブックス)によれば、著者の多湖輝にドクターストップがかかったとのこと)、第4集までが、このシリーズの言わば"第1期"と言っていいのではないでしょうか(第1集から第4集までの表紙イラストは:伊坂芳太良(いさか・よしたろう))。この4冊で売り尽く頭の体操 第6集 2.jpg頭の体操 第5集 - 2.jpgしたと言う感じで、それに比べると、シリーズ再開後の第5集・第6集まではまだ個人的にも何となく「こんな問題、あったなあ」という印象がありますが、表紙カバーイラストが水野良太郎(1936-2018)から松下進に交替した第8集以降は記憶の影が薄いか、或いはそもそも読んでいないかも(本文イラストは水野良太郎が永らく描いていた)。
頭の体操〈第5集〉―天才のパーティに参加しよう (1977年) (カッパ・ブックス)』『頭の体操 第6集 (カッパ・ブックス)』(カバーイラスト:水野良太郎)

頭の体操 多湖明 文庫.jpg頭の体操1-6.jpg '66年から'78年の間に刊行された第1集から第6集までは後に文庫化もされ(最終的には第10集まで文庫化された)、'09年には過去問から抜粋した「BEST」集も出されていて、ニンテンドーDS用にソフト化されているし、時々ぶり返すようにブームになっているみたいです。こうした根強い人気の背景には、「パズル」の基本を押さえたオーソドックスな問題が数多く採り入れられていたということがあるのかもしれません。

「頭の体操」4 多胡輝.jpg この第4集は、「これがカラー・テレビ式パズルだ」というなんだか時代を感じさせるサブタイトルですが、当時のテレビ番組をモチーフとして番組の放送時間順にクイズが構成されています(モノスコープのテストパターンが時代を感じさせる)。因みに、当時のカラーの世帯普及率は'68(昭和43)年で4.4%、'69(昭和44)年で10.9%、'70(昭和45)年で40.2%であり、短期間で急速に普及したものの、取り上げられている番組は当然のことながら本書刊行年('67(昭和42)年)以前から放映されていたものであり、後にカラー化されたものもありますが、当時はほぼすべてモノクロ番組と言っていいかと思います。

七人の刑事2.jpgザ・ガードマン.jpg 出てくる番組が、「モーニングショー」「ロンパールーム」「ローハイド」「ウルトラセブン」「シャボン玉ホリデー」「意地悪ばあさん」「コンバット」「七人の刑事」「ザ・ガードマン」「ルーシー・ショー」「八十七分署」「ワイオミングの兄弟」「三匹の侍」等々であり、今見ると懐かしいなあという感じ(この懐かしさで、星半個オマケ)。

ローハイド3.bmp 「ローハイド」なんて、話は覚「ローハイド」イーストウッド.jpgえてなかったけれど('06年にNHK-BSで再放映されたのを観てクリント・イーストウッドが出ていたことを思い出したぐらい)、フランキー・レインが唄うテーマソングだけは忘れられず、いつローハイド1.jpgの間にか口ずさんでいたりするメロディです。

「ローハイド」(Rawhide) (CBS 1959~1965) ○日本での放映チャネル:NET(現テレビ朝日)(1959~1965)

 
 論理パズルや頓知クイズなど、このシリーズにおけるパズルの種類は多岐に渡りますが、本書を再読してみると意外と数学パズルが多かったのだなあ。本書では、設問ごとに、当時の大学生(青山学院大学)200人の正答率が出ていますが、そのため、こんなの解けるはずないよ~と思っても、学生が一定率の正解をしているとなると、あまり文句が言えなくなる? 当時の学生の成績はなかなか優秀で、自分としては完全に負けている...。

 印象に残っている問題は、「ある朝受け取った2日前の消印がある封書の中に、今朝の新聞が入っていた」ことのカラクリを考えさせるもので、これ、有名な推理小説のトリックでも使われているそうですが、かつて実際に、"地震予言者"と称する人が、「2日後に地震があります」と書いたハガキをご近所さんに出していた、その2日前の消印のハガキをご近所さんが受け取った日の朝、実は地震があった―という話がありましたねえ(このトリックを成すには、自分宛の宛名を鉛筆下記したハガキを毎日出すようにしていなければならないのだが。ご苦労さん、と言うか...)。

【2005年文庫化[知恵の森文庫]】

《読書MEMO》
●1967年(昭和42年)ベストセラー
1.『頭の体操(1)』多湖 輝(光文社)
2.『人間革命(3)』池田大作(聖教新聞社)
3.『頭の体操(2)』多湖 輝(光文社)
4.『華岡青洲の妻』有吉佐和子(新潮社)
5.『英単語記憶術』岩田一夫(光文社)
6.『頭の体操(3)』多湖 輝(光文社)
7.『姓名判断』野末陳平(光文社)
8.『捨てて勝つ』御木徳近(大泉書店)
9.『徳川の夫人たち』吉屋信子(朝日新聞社)
10.『道をひらく』松下幸之助(実業之日本社)

●1968年(昭和43年)ベストセラー
1.『人間革命(4)』池田大作(聖教新聞社)
2.『民法入門―金と女で失敗しないために』佐賀 潜(光文社)
3.『刑法入門―臭い飯を食わないために』佐賀 潜(光文社)
4・『竜馬がゆく(1~5)』司馬遼太郎(文藝春秋)
5.『頭の体操(4)』多湖輝(光文社)
6.『どくとるマンボウ青春記』北杜夫(中央公論社)
7.『商法入門―ペテン師・悪党に打ち勝つために』佐賀 潜(光文社)
8.『愛(愛する愛と愛される愛) 』御木徳近(ベストセラーズ)
9・『道路交通法入門―お巡りさんにドヤされないために』佐賀 潜(光文社)
10.『Dの複合』松本清張(光文社)

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日本、お化け、看護婦、躁鬱の4テーマの「雑学記」。「お化けについて」が充実していた。

どくとるマンボウ航海記6.jpgマンボウ雑学記』.JPGマンボウ雑学記.jpg どくとるマンボウ航海記 1960.jpgどくとるマンボウ航海記 新潮文庫.jpg
マンボウ雑学記 (岩波新書 黄版 167)』 『どくとるマンボウ航海記 (1960年)』『どくとるマンボウ航海記 (1965年) (新潮文庫)』(カバーイラスト:佐々木侃司)

 どちらかというと小説よりもエッセイの方がよく読まれているのではないかと思われる著者ですが、自分自身も、一応は『夜と霧の隅で』('60年/新潮社、'63年/新潮文庫)などの小説から入ったものの、結局エッセイの方をより多く読んだように思われ、実際、ある年代以降はこの人は著作の殆どがエッセイになっています。

どくとるマンボウ航海記 中公文庫.jpg太平洋ひとりぼっち 文藝春秋新社.jpg その先駆けが、'60(昭和35)年刊行(『夜と霧の隅で』と同じ刊行年)の『どくとるマンボウ航海記』('60年/中央公論社、'62年/中公文庫、'65年/新潮文庫)であり(『夜と霧の隅で』は、'60年の芥川賞受賞作。一方、『どくとるマンボウ航海記』は児童文学にジャンル分けされていたりもする)、この本は40日ぐらいで一気に書かれたそうですが、そう言えば、堀江謙一氏の『太平洋ひとりぼっち』('62年/文藝春秋新社)も帰国後2ヵ月で書きあげたそうで、やはり、航海の際に日誌をつけているというのが大きいのかな(その堀江氏が日本帰国直後、ホテルに連れて行かれ最初に対談した相手が北杜夫氏だったと『太平洋ひとりぼっち』に書いてある)。

どくとるマンボウ航海記 (中公文庫)』['73年改版版]/『太平洋ひとりぼっち (1962年) (ポケット文春)』['62年/ポケット文春]

どくとるマンボウ航海記 (1960年).jpg北杜夫e.jpg 『どくとるマンボウ航海記』のあとがきには、「大切なこと、カンジンなことはすべて省略し、くだらぬこと、取るに足らぬことだけを書くことにした」とあり、ある意味これは、高度成長期の波に乗らんとし、一方で「政治の季節」でもあった当時ののぼせ上ったような社会風潮に対するアンチテーゼでもあったのかも。作者自身、「僕の作品の中で古典に残るとすれば、『航海記』ではないか」と、後に語っています。

[上写真]1960年、「夜と霧の隅で」で芥川賞を受けるとともに、『どくとるマンボウ航海記』がベストセラーになっていたころの北杜夫氏(兄の斎藤茂太氏邸に居候中)。

どくとるマンボウ航海記 (1960年)

 そんな著者のエッセイの中で、本書は「岩波新書」に書いているという点でちょっと変わっているかも知れず、また、当時の岩波新書のラインナップには、まだ今ほどこのようなこなれたエッセイは少なかったため、岩波としても思い切った試みだったのかも知れません(『航海記』などの"実績"も加味されていると思うが)。

 神話や伝承の中に民族の魂の遍歴を探った「日本について」、日本のお化けの怖さ・面白さを明らかにした「お化けについて」、自らの経験に基づく「看護婦について」「躁鬱について」の4編から成りますが、著者自らも言うように、前2編がメインで、まさに「雑学記」であり、後2編はオマケのエッセイといった感じでしょうか。

 中でも、最もボリュームのある「お化けについて」は、日本の中世・近世の文献にある様々なお化けを体系的に紹介していて、「雑学記」のレベルを超えており、それでいて(岩波新書らしからぬ?)ユーモアも交えて書かれていて、楽しく読めました。

 しかし、よく調べたものだなあ(かなりの執着ぶり)。水木しげる氏の「妖怪」モノの文章版みたいだと思ったら、最後にその水木氏の名が出てきましたが、水木氏にも岩波新書に『妖怪画談』('92年)などの著書があります。

 オマケ2編では、「躁鬱について」が、著者自身の昭和41年から昭和55年の間に6回ほど訪れた「躁病期」のことを書いていて、これがなかなか面白く、かなり常識人では考えられないようなこともやっているのだなあと(本書には無いが、後に、株投資で自己破産に陥る経験もしている)。

 かつての著者は、1年間のうちに2、3カ月の躁状態とその倍の鬱状態があったとのことで、「躁」と併せて「鬱」についても、その特徴や対処法が書かれていますが、分かり易く纏まっているように思えます。

北杜夫.jpg 著者はこの頃('81年)、世田谷の自宅を「マンボウ・マブゼ共和国」として独立を宣言しており、ムツゴロウこと畑正憲氏と対談した際、「ムツゴロウ動物王国」と「マンボウ国」を日本から分離独立し同盟を結ぶ提案をしたというから、躁状態だったのかも知れません。

 近年は、躁鬱病の症状は治まり、軽井沢の別荘でエッセイなどの執筆活動をするなど、落ち着いた老境にあるようです(「マンボウ夢草子」を月刊誌「J‐novel」に連載中)。

 『マンボウ雑学記』の文中に、友人の相場均・早稲田大学教授の話が出てきますが、「看護婦について」のところでは「故」とついていて、本書執筆中に亡くなったのだなあ。

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飽きずに読める雑学本。自然科学に限らず、歴史など多岐にわたるSF作家の好奇心。

『アシモフの雑学コレクション』.JPGアシモフの雑学コレクション.jpgIsaac Asimov's Book of Facts 3000 of the Most Entertaining, Interesting, Fascinating, Unusual and Fantastic Facts.jpg    世界史こぼれ話2三浦一郎.jpg
アシモフの雑学コレクション (新潮文庫)』 "Isaac Asimov's Book of Facts: 3,000 Of the Most Interesting, Entertaining, Fascinating, Unbelievable, Unusual and Fantastic Facts"(原著)三浦一郎 『世界史こぼれ話 2 (角川文庫)

星新一.jpgアイザック・アシモフ.jpg SF作家アイザック・アシモフ(1920‐1992)による原著には3,000 項目の雑学が収められていて、星新一(1926‐1997)がその中から抜粋して編訳していますが、スッキリした翻訳で楽しみながら読め、また、雑学に潜むアシモフの科学的視点というものも大切に扱っている気がしました。前半部分は自然科学系の雑学ですが、後半部分は歴史、文学、天才、人の死など様々な分野の雑学となっているのが、歴史本も書いているというアシモフらしく、SF作家としての作風が全く異なる星新一も、その好奇心の幅広さ、旺盛さの部分に呼応するものがあったのでしょう。

世界史こぼれ話.jpg世界史こぼれ話 1.2 三浦一郎.jpg 歴史系に限った雑学本では、故・三浦一郎(1914‐2006)の『世界史こぼれ話』('55年/学生社)も楽しい本でした(アシモフのこの本と、歴史に関する部分はトーンが似ている)。『世界史こぼれ話〈続〉 』('56年/学生社)と併せて'73年から角川文庫でシリーズ化され、今のところ自分の手元には2巻しか残っていませんが、全部で6巻まであり、これも、比較的飽きずに読める(もちろん暇潰しにはうってつけの)雑学本でした。

真鍋博.jpg 因みに『アシモフの雑学コレクション』のイラストは星新一のショートショート作品には欠かせない存在だった真鍋博(1932‐2000)、『世界史こぼれ話』(角川文庫)は、北杜夫の「どくとるマンボウ」シリーズのイラストなどで知られた佐々木侃司(1933‐2005)、何だか亡くなった人が多くて、少し寂しい。
真鍋 博

《読書MEMO》
●銀河系のなかで、太陽よりも大きい恒星は、5%しかない。5%といっても、50億個だが。(19p)
●冥王星に直接に行こうとすれば、47年かかる。しかし、木星経由だと、25年ですむ。宇宙船は木星の引力で加速され、より早く行けるのだ。(24p)
●1400年代の初期、世界で最もすぐれた天文学者は、モンゴルの王子だった。テムジン(ジンギスカン)の孫のベグ。サマルカンドに天文台を作り、正確な星図と惑星運行表を作成した。(29p)
●蚕はガの一種だが、長い養殖のため、人間の世話なしには生きられない。(53p)
●インフルエンザは、邪悪な星の「影響(インフルエンス)」のためとされ、この呼称となった。(83p)
●バクダッドに病院をたてる時、場所の選定にある方法を使った。各所に肉の塊をつり下げ、最もくさるのがおそかった地点を、最適とした。(84p)
●アルキメデスは入浴中、浮力の原理を発見し、わかったの意味の「ユリーカ」の叫びとともに、裸で街を走り回った。有名な話だが、古代ギリシャでは裸で運動するのが普通で、男の裸は珍しくなかった。(108p)
●(南北戦争時、)陸軍長官のカメロンは、反乱軍を指揮したリー将軍の家へのいやがらせに、その近くに兵士たちを埋葬した。のちに政府の所有となり、アーリントン軍用墓地となった。
●無名時代、ピカソは寒い時、自分の作品を燃やして、あたたかさを求めた。(177p)
●ゆり椅子の発明者は、ベンジャミン・フランクリン。(209p)
●ニュートンは十代の時、母に言われて学校を中退したことがある。農業がむいているのではないかと期待されて。(210p)

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「三十数年の歳月を経ても、内容は古くなっておらず」と著者自身が言った通りに新鮮。

パズル・物理入門_0231.JPGパズル・物理入門_0.jpgパズル・物理入門.jpg新装版 パズル・物理入門―楽しみながら学ぶために』〔'02年〕  

旧版〔'68年〕

 ブルーバックスに多くの著作がある都築卓司(1928-2002)の物理学入門シリーズのうちの1冊の新装版で、83問から成るパズル形式のものですが、中学生ぐらいから充分理解できる内容で、それでいて奥が深いです。

 オリジナルの初版が'68年で(56刷34万部売れたとか)、40年近く経て1問もいじらずにそのまま"新装版"として出版し、今読んでもそれなりに新鮮で、かつ面白いというのは、文学作品ならともかく、「物理」の入門書としては何か意外な気もしますし、やはりスゴイことではないかと思います。

パズル・物理入門_0232.JPGパズル・物理入門_0233.JPG 本書の続編『新・パズル物理入門』のほか、『四次元の世界』『マックスウェルの悪魔』『不確定性原理』『タイムマシンの話』なども、みんな新装版になりました。

 本書の「新装版刊行にあたって」という著者の小文の執筆年月が、'02年7月になっていますが、著者が亡くなった月です。亡くなったことは残念な気もしますが、「三十数年の歳月を経ても、内容はけっして古くなっておらず、物理パズルの醍醐味を味わっていただけると思う」と結語した著者には、それなりの自負と確かな充実感、満足感があったのではと思われます。

《読書MEMO》
●ブルーバックス創刊50年の通算ランキング ベスト20(2013年)
1 1998『子どもにウケる科学手品77』 後藤道夫
2 1975『ブラックホール』 ジョン・テイラー
3 1966『相対性理論の世界』 ジェームズ・A.コールマン
4 1968『四次元の世界』 都筑卓司
5 1967『パズル・物理学入門』 都筑卓司
6 1965『量子力学の世界』 片山泰久
7 1970『マックスウェルの悪魔』 都筑卓司
8 1965『計画の科学』 加藤昭吉
9 1968『統計でウソをつく法』 ダレル・ハフ
10 1969『電気に強くなる』 橋本尚
11 1971『タイムマシンの話』 都筑卓司
12 1978『相対論はいかにしてつくられたか』 リンカーン・バーネット
13 1974『相対論的宇宙論』 佐藤文隆/松田卓也
14 1972『新・パズル物理入門 都筑卓司
15 1970『不確定性原理』 都筑卓司
16 1968『確率の世界』 ダレル・ハフ
17 2001『記憶力を強くする』 池谷裕二(21世紀のランキング1位)
18 1968『推計学のすすめ』 佐藤 信
19 1964『こんなことがまだわからない』 相島敏夫/丹羽小彌太
20 1977『マイ・コンピュータ入門』 安田寿明

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身近に問題を"出しっこ"できる相手がいれば楽しいと思う。

算数パズル「出しっこ問題」傑作選.jpg  『算数パズル「出しっこ問題」傑作選―解けて興奮、出して快感! (ブルーバックス)』 〔'01年〕

 問題の数は60問で、難易度は、ブルーバックスにあるこの手の本の中では高い方ではないと思いますが、古典的な傑作問題が多く含まれています。

 例えば「うそつき村と正直村」の問題。
 たどり着いた村がうそつき村か正直村かを、住人に1つだけ質問して言い当てるにはどんな質問をすればいいのか。

 それから「神様と悪魔と人間」の問題。
 Aは「私は神様ではない」と言い、Bは「私は悪魔ではない」と言い、Cは「私は人間ではない」と言う。神様はホントのことを言い、悪魔は嘘しか言わないが、人間は嘘をついたりホントのことを言ったりする。ならば、ABCはそれぞれ何者か。

 さらには、「白い帽子と赤い帽子」の問題。
 赤い帽子が3個、白い帽子が2個あって、ABCの順に前向きに並んだ3人に自分の帽子の色がわからないように被せ、自分の帽子の色を訊ねたところ、Cは「自分の帽子の色がわからない」と言い、Bも「わからない」と。それを聞いたAは「わかった!」と。Aの帽子は何色か。

 簡単に暗記できる内容なので、身近に問題を"出しっこ"できる相手がいれば楽しいと思います。
 著者自身は以前からが学校の算数・数学教育に提言をしている人で、一方で、『お父さんのための算数と数学の本』('79年/日本実業出版社)などといった著作もあります(...とすると、出す相手は自分の子どもということになるのか)。
 ブルーバックスには本書の姉妹編として 『論理パズル「出しっこ問題」傑作選-論理思考のトレーニング』(小野田博一著/'02年)という結構売れた本もありますが、本書より問題がやや難しい気がしました。
 
 ちなみに、上記3問の答えは、
 「あなたはこの村に住んでいますか」
 「A人間・B悪魔・C神様」
 「赤」
 ですが、答えが合った合わないよりも、発想と考え方のプロセスが大切なのでしょう。

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ベストに選んだ理由に選者の思い入れや機知があり、楽しく読めた。

『ベスト・ワン事典』.JPG
ベスト・ワン事典2.jpg
 The Man Who Skied Down Everest dvd.jpg
ベスト・ワン事典 (現代教養文庫)』教養文庫 〔'82年〕「エベレスト大滑降」('70年/松竹)英語版「Man Who Skied Down Everest [DVD] [Import]」(1975)
    
 動物、美術、ビジネス、映画、犯罪から文学、医療、軍事、スポーツ、音楽、娯楽、政治まで、20余りの分野の「ベスト」を、分野ごとの専門家にその専門家自身の「独断と偏見」で選んでもらったものです(原題:The Best of Everything:A Guide To Quality For Those Who Know How To Appreciate It,1980)。
    
The Best of Everything2.jpgThe Best of Everything.jpg 「ギネス・ブック」の客観的・量的ベストに対し、本書は主観的・質的ベストを追求していて、「絵画のベスト」とか「病院のベスト」などマトモなものから、「死体を強奪する方法のべスト」「上流階級に仲間入りできる場所のベスト」といったものまで何でもありなのが楽しいです。

 原著は'80年に英国で出版されたもので、少し古くかつ英国贔屓で、ビジネスや法律に関わる分野などはほとんど英米から選ばれていますが、「中央銀行のベスト」にオイルショックによるインフレ後も、円を最強通貨とした「日本銀行」が、「赤ちゃんを産むのによい場所のベスト」に赤ちゃんの死亡率が1%の「日本」(2位はオランダの1.03%)、「汽車のベスト」に「東京-大阪間を走る超特急」(当然のことながら"新幹線"を指している)、「ホテルマッサージのベスト」に「東京のニューオータニ」などが選ばれています(ニューオータニは、「下の方の階のどこかでマッサージ室を経営007は二度死ぬ  nihon.jpgしていて、そこで働いている女性たちは魔法のような指を持っています」と書いてある。この日本のマッサージ技術への憧憬は映画「007は二度死ぬ」('67年/英)でジェームズ・ボンドが浴槽つきのマッサージルームでリラックスするシーンなどにも反映されていたように思う)。

羅生門4.bmp北斎ド.jpg  芸術関連もヨーロッパ中心に「ベスト」が選出されている傾向はありますが、その中で「挿絵画家のベスト」に「北斎」が、「フラッシュバック映画のベスト」に「羅生門」が選ばれています(「日本の小説のベスト」には谷崎潤一郎の『瘋癲老人日記』が選ばれているが、「古今東西の小説のベスト」にはジェイムス・ジョイスの『ユリシーズ』が選ばれている)。

 それとスポーツの分野で日本人が2人選ばれていて、「滑降スキーヤーのベスト」にジャン・クロード・キリー、フランツ・クラマーを抑えて、エベレストを滑降した「無茶苦茶な日本人」三浦雄一郎が、「レスリング選手のベスト」に、「186戦無敗のキャリアを持つ獰猛なフェザー級選手」渡辺長武(おさむ)が選ばれています(「無茶苦茶な」とか「獰猛な」という修辞が面白い)。

The Man Who Skied Down Everest.jpg 三浦雄一郎がエベレスト滑降に挑んだのは'70年5月6日で、「エベレスト大滑降」('70年/松竹)という記録映画になりましたが(昔、学校の課外授業で観た)、これを観ると、当初エベレスト8000メートルのサウスコルから(そもそもここまで来るのが大変。シェルパ6名が遭難死している)3000メートルを滑走する予定だったのが、2000メートルぐらい滑って転倒したままアイスバーンに突入(何せスタートから5秒で時速150キロに達したという)、パラシュートの抑止力が効かないまま150メートルほど滑落し、露岩に激突して止まっています。

エベレスト大滑走2.jpg 3000メートル滑るところを2000メートルで転倒してこれを「成功」と言えるかどうか分かりませんが、標高6000メートルの急斜面でアイスバーンに突っ込んで転倒して更に露岩にぶつかって死ななかったのは「奇跡」とも言えます。この「エベレスト大滑降」を再編集した英語版作品"The Man Who Skied Down Everest"('75年/石原プロ・米→カナダ)は、カナダの映画会社が石原プロから版権を買い取り台本・音楽等を再編三浦雄一郎03.jpgしたもので、'75年に米アエベレスト大滑降 pamhu .jpgカデミー賞長編ドキュメンタリー賞を受賞していて、これがカナダ映画史上初のオスカー受賞作品となっています。三浦雄一郎氏の狂気染みた挑戦に外国人もたまげたのか?
三浦雄一郎氏(2002年)
映画パンフレット 「エベレスト大滑降」 製作/監修 銭谷功 スキー探検隊 石原慎太郎/三浦雄一郎/藤島泰輔/加藤幸彦/安間荘 語り手 芥川隆行

186戦無敗の渡辺長武
渡 辺 長 武.jpg 一方、渡辺長武の「186戦無敗」はギネスブックにも掲載されたことがあり(ウィキペディアでは189戦189勝となっている)、無敗記録としてみれば、後に柔道において、山下泰裕の「203戦無敗」という記録が生まれますが、山下泰裕の「203戦無敗」には7つの引き分けが吉田沙保里.jpg含まれているため、渡辺長武の記録はそれ以上に価値があるかも。世界選手権を連覇し('62年・'63年)、東京オリンピック('64年)でも金メダルを獲得しています(後に、女子レスリングで吉田沙保里の、2016年のリオ五輪決勝で敗れるまでの206連勝、オリンピック・世界選手権16連覇という記録が生まれることになるが)。

朱里エイ子.jpg その渡辺長武は『アニマル1』(アニマルワン)というレスリング・アニメのモデルになりました(原作は「川崎のぼる」のコミック)。アニメ主題歌を、一昨年('04年)亡くなった朱里エイコが歌っていましたが、歌唱力のある人でした。「あの鐘を鳴らすのはあなた」を歌うと、このヒトがイチバン、相良直美が2番か3番、和田アキ子はそれらより落ちるという感じでした(個人的には)。

朱里エイコ(1948-2004/享年56)

 版元が倒産しているため古書市場でしか入手できない本で、また、特に人に薦めるという類の本でもないのですが、ベストに選んだ理由に選者の思い入れや機知があり、読んで楽しく、個人的には暇つぶしや気分転換に重宝しました。 

Yuichiro Miura The Man Who Skied Down Everest.jpgThe Man Who Skied Down Everest5.jpg「エベレスト大滑降」●制作年:1970年●監督:銭谷功●製作:中井景/銭谷功●撮影:金宇満司●音楽:団伊玖磨●時間:119分●公開:1970/07●配給:松竹(評価:★★★☆)

"Yuichiro Miura The Man Who Skied Down Everest"

アニマル1 アニメ.jpg「アニマル1(アニマルワン)」●演出:杉山卓●脚本:山崎忠昭/雪室俊一/辻真先/川崎泰民●音楽:玉木宏樹(主題歌:朱里エイコ「アニマル1の歌」)●原作:川崎のぼる●出演(声):竹尾智晴/富山敬/北川智恵子/北村弘一/田の中勇/山本嘉子/栗葉子/雨森雅司/松尾佳子/神山卓三/小林修/鎗田順吉/野沢那智●放映:1968/04~09(全27回)●放送局:フジテレビ

《読書MEMO》
●レスリング・柔道(男女)日本人選手連勝記録
・吉田沙保里 206戦206勝(個人戦のみ。五輪・世界選手権16連覇。2016年のリオ五輪決勝で敗れる)
・山下 泰裕 203戦196勝7分け(1977年の日ソ親善試合から1985年の全日本選手権まで。継続したまま引退)
・渡辺 長武 189戦189勝(1987年の全日本社会人選手権で終了)
・伊調  馨  189戦189勝(2007年5月の不戦敗を除く試合でのもの。不戦敗以降は108連勝。2003年~2016年)
・吉田沙保里 119戦119勝(団体戦も含む。全日本女子選手権で山本聖子に判定負けして以来、公式戦119連勝。2001年~2008年)
・田村 亮子 84戦84勝(1996年のアトランタ五輪決勝で敗れる)

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