「●算数」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 「●科学一般・科学者」 【1320】 マイケル・ファラデー 『ロウソクの科学』
「●講談社現代新書」の インデックッスへ
読み物としては楽しいが、実践には疑問も。タイトルもイマイチ。
『カレーを作れる子は算数もできる (講談社現代新書)』 〔'06年〕 『算数のできる子どもを育てる』〔'00年〕
同じ著者の『算数のできる子どもを育てる』('00年/講談社現代新書)の続編にあたる本で、前著では、「鯨8頭とサンダル2足は足すことができるか」といった問いから、算数を教える前に先ず数の概念を理解させることの大切さを説いていてナルホドと思わせるものがありましたが、今回は、数学者・秋山仁氏の掲げる「数学を理解する能力」について解説するという形をとっています。
秋山氏の言う「数学を理解する能力」=「日常生活を支障なく過ごす能力」とは、
①靴箱に靴を揃えて入れることができる、
②料理の本を見て、作ったことのない料理を作ることができる、
③知らない単語を辞書で引くことができる、
④家から学校までの地図を描くことができる、
という4つの能力で、前掲の「鯨8頭と...」は①に該当し、①から③までが具体的処理能力の段階で、④が抽象化能力ということになるようです。
これらの能力の具体的意味と、それが身につくには代数や幾何問題にどう取り組んだらよいのかを、「理科」的な発想を導入して"実験的に"解説していく様は、読み物としては楽しいものでした(円の面積の求め方の裏づけ説明などは、目からウロコだった)。
しかし、これを学校で教えるとなると、教師の資質にもよりますが、あまり現実的ではないように思えます。一部、学校教育の現場でも導入されているものもありますが、著者は、フリースクールの主宰者という立場で、こうした教え方をしているわけです。
著者自身も、本書において後半はネタ切れ気味というか、暗記や公式に頼った解説になっている面もありあます。「カレーを作れる子は算数もできる」とうタイトルも少し気になるところで(4つの能力表象の1つに過ぎない)、これを真(ま)に受けて、小学校受験の面接対策で、「家でお手伝いすることはありますか」という質問に答えられるように、子どもにカレーのレシピを覚えさせる親もいるとか。編集部の意向もあるのかも知れませんが、こうしたタイトルのつけ方には一長一短があるように思います(前著『算数のできる子どもを育てる』の方がタイトルとしてはマトモだが、『続・算数のできる子どもを育てる』ではマトモすぎてインパクトが弱いと思ったのだろなあ)。