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楽しく読め、資料的価値も高い。こうした本が出せる最後のタイミングだったかも。

名画座時代.jpg 『名画座時代―消えた映画館を探して』 ['06年]  阿奈井文彦.jpg 阿奈井 文彦 氏

 昭和30年代の映画黄金時代に最盛期を迎え、ビデオ・DVDの普及、シネコンの登場などで衰退していった「消えた映画館」のあった地を訪ね歩き、その関係者に取材して、映画への偏愛を聞き書きした本で、季刊誌「通販生活」(カタログハウス)の'02年から'05年までの連載に加筆して単行本化したもの。

 取り上げているのは、東京の映画館は、人世坐、日活名画座、佳作座、東急名画座の4館で、地方は、前橋、門司、松山、沖縄、福岡、浦河、広島、京都、倉敷の9つの町の名画座。

飯田橋佳作座.jpg 飯田橋の佳作座('88年閉館)は個人的に懐かしいですが(渋谷の東急名画座は、自分が初めて行った80年代前半頃にはもうロードショー館になっていた)、東京で「伝説の名画座」と言えば、やはり文芸坐の前身の人世坐('68年閉館)と新宿の日活名画座('72年閉館)なのでしょう。それぞれの当時の建物、パンフレットやプログラムの写真のほか、元支配人だった人への取材、日活名画座のポスターを描いていた和田誠氏へのインタヴューなどもあります。

 地方の映画館は殆ど知りませんが、この著者はかつていろいろな土地に住んだことがあるようで、著者にとっては紹介されている町の多くが想い出の地でもあり、旧支配人など、著者のインタヴューを受けた関係者の想いだけでなく、著者自身の思い入れも伝わってきます。
 また、映写技師や看板の描き屋さんだった人、当地の映画(館)ファンだった人などにも取材していて、沖縄のお医者さんで13床のベッドを潰して院内に患者向けの映写室を作ってしまった人とかもいて、スゴイなあと。

 「消えた映画館」が殆どですが、全部無くなってしまっているわけでもなく、浦河(北海道・日高管内)の大黒座みたいに、4代目の人がミニシアターとして復活させている例もあり、頑張っているなあという感じ。

 でも、当時現場にいた人の多くは既に高齢で、まさか今更取材を受けるとは思わなかったという感じで(但し、訊かれると昔のことをよく覚えている)、支配人だった人が亡くなって、その息子さんから話を伝え聞くような場面も多く、著者自身は年齢(昭和13年生まれ)の割にはフットワークはいいようですが、相手がいなければ仕方が無い・・・こうした本が出せる最後のタイミングだったかも。

 掲載されている当時の写真やポスター、オリジナルのパンフレットやチラシの数も多く(ある時期の年間の上映作品一覧などもある)、それだけでも資料としての価値はあるかと思いますが、こうした関係者の肉声が盛り込まれているのが貴重ではないかと(残念ながら生の声を聞けなかった人も多くいたわけだが)。

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消え行く映画館を追った写文集。写真があるというのは、それだけで資料的価値はあるかと。

映画館物語―映画館に行こう!.jpg映画館物語―映画館に行こう!』['02年] 想い出の映画館.jpg想い出の映画館』['04年]

 『映画館物語-映画館に行こう』('02年12月刊行)は、全国の映画館を旅歩いてカメラに収めてきた著者が、その中から数百点の写真を厳選し、その映画館に纏わるエピソードを添えた写文集で、札幌から始まって沖縄まで273館を紹介して終わっていますが、今は閉館になったものを重点的に拾っています。

 1枚1枚の写真が大判なのが良く(すべてモノクロ写真)、こうして見ると、東京の今は無き映画館も懐かしいですが、地方の行ったこともない映画館で今は閉館になっているものの写真も、どことなく郷愁をそそります(地方の映画館などは、街の過疎化を象徴しているようでもあり、侘びしさも感じる)。

 消え行くものは美しい―必ずしも、そういうコンセプトのみで作られた本ではないとは思いますが、表紙に'98年オープンの「ラピュタ阿佐ヶ谷」をもってきているのは、全体のトーンからして少しずれているような気も。

 『想い出の映画館』('04年9月刊行)も同趣の本で(こちらもすべてモノクロ写真)、概ね関東と関西に分けて紹介していて、東京地区だけで見ても、新宿、渋谷、池袋、浅草、錦糸町、亀有、大井・蒲田、銀座、有楽町、中野、吉祥寺・三鷹、高田馬場、早稲田と街ごとに、閉館となった名画座をより詳しく紹介しているため、自分としては親近感がありました。

三軒茶屋中央劇場.jpg目黒シネマ.jpg それでも結構漏れていると思われるものもあり(『映画館物語』にあった「目黒シネマ」や「三軒茶屋中劇」の写真が『想い出の映画館』にはない)、紙数上、これは仕方がないことか。「三鷹」などは紹介文が3行しかなく「三鷹オスカー」の写真が1枚あるだけ。
 でも、やはり、写真が載っているというのは、それだけで資料的価値はあるかなあと。

パール座.jpg下高井戸東映.jpg 個人的には、古色蒼然とした写真よりもちょっと古め程度の写真、例えば「下高井戸シネマ」のリニューアル前の写真に「下高井戸京王」という看板が見えるのとか(『映画館物語』)、西友の地下にあった高田馬場「パール座」の入口の写真(『想い出の映画館』)などに懐かしさを覚えました。

自由が丘武蔵野館.jpg中野武蔵野ホール.jpg 『映画館物語』の中で、「中野武蔵野ホール」で頑張っている女性スタッフが紹介されていますが、1年半後に刊行の『想い出の映画館』では閉館となったと紹介されており('04年5月閉館)、「シネ・ラ・セット」(旧有楽シネマ)もそう('04年1月閉館)、どちらの本にも出てこないけれども、「自由が丘武蔵野館」もそうなんだよなあ('04年2月閉館)。

早稲田松竹.jpg このように、本書刊行後に閉館となった映画館も多いですが、「早稲田松竹」や「目黒シネマ」みたいに頑張っているところもあり、但し、レンタルビデオによって名画座が衰退し、更にデジタル録画時代に入り、昔ほどの"値ごろ"感がないのは事実。

 著者は、シネコンを味気ないとして嫌っているようですが、渋谷は既にそうだし、新宿も大方がシネコン化していくのでしょう。
 個人的には、シネコンであろうと、昔の名画座のようなその映画館独自の色合いがあればそれでいいのではとも思いますが、実際にはどれもこれも均質化してきているのが何とかならないものかと。

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資料的なものを期待した分、期待外れになってしまった。

東京名画座グラフィティ.jpg  文芸坐.jpg 文芸坐 三鷹オスカー予定表.jpg 五反田TOEIシネマ 2.jpg
東京名画座グラフィティ (平凡社新書)』['06年]

 1953年生まれの著者が青春時代に巡った都内及びその近郊の映画館の思い出を綴ったもので、名画座の衰退、シネマ・コンプレックスの台頭著しい今日、貴重な1冊となるのかと思って読み始めましたが、どちらかと言うと著者の思い入れが先行していて、渋谷、池袋、新宿、銀座・日比谷...と街ごとには章分けされてはいるものの、資料的なグラフィティと言うよりエッセイに近い感じ。

 懐かしい映画館が次々に登場し、ああ、池袋の旧「文芸坐」や銀座の「並木座」、飯田橋の「佳作座」や高田馬場の「パール座」...etc みんな無くなってしまったなあと感慨をそそる面はありますが、主にそこでアレを観たコレを観たと言うことを中心に書かれていて、映画館1つ1つの歴史については記述が乏しく、同時期に都内の名画座を巡った団塊の世代には懐かしいかも知れませんが、後から来た世代には、いつごろまでその映画館があっていつ無くなったかということがよくわかりません。

由が丘武蔵野館5.jpg 著者がB級グルメライターでもあるためか、近所にどういう食べ物屋があったとかそういうことは書かれていますが、個人的にはそうしたことに割く紙数をむしろ各映画館の歴史の方に割いて欲しかった気がします。

 「自由が丘武蔵野館」はかつて「自由が丘武蔵野推理」という名称だったことは書いてありますが、それを言うなら「中野武蔵野ホール」は「中野武蔵野館」だったし、「三鷹オスカー」は「三鷹東映」、「三軒茶屋中央劇場」はもともとあった「三軒茶屋映画劇場」の分館で「三軒茶屋映劇」の方が本家、著者の地元である渋谷の「東急ジャーナル」は「渋谷東急3」になる前は「東急レックス」だった...。その時代に本当にそこに通いつめていれば、絶対に忘れることのない名前だと思うのですが。

 個人の記憶と記録にのみ頼って書いている感じで、抜け落ちも結構あるような印象を持ちながら読んでいたら、あとがきで「漏れていました」みたいな感じで、「五反田東映シネマ」とか出てくる...(これも「五反田東映」という封切館に併設されていた3本立名画座(洋画館)「五反田TOEIシネマ」というのが正しい表記ではないだろうか)。

 最初からエッセイとして読めば良かったのかも知れませんが、資料的なものを期待した分、期待外れになってしまいました。

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