『柳原良平の仕事 (玄光社mook)』['15年](29.9 x 21 x 1 cm)『柳原良平の装丁』['03年]
柳原良平(1931-2015) 2015年8月に84歳で亡くなった、イラストレーター、デザイナーで、船の画家でもあり、アンクルトリスの生みの親でもある柳原良平(1931-2015)の仕事集。このムック版が初めての本格的仕事集とのことですが、上記に加え、漫画家、文筆家としても知られたように、仕事の範囲がかなり広範に及び、また晩年まで活動していたため、本人が亡くなってやっとこうしたものが刊行されるということになるのでしょう。装丁、絵本、漫画にアニメーション、さらにはグッズやオリジナル作品まで、900点以上を図版に収めています。
'04年に絵本『レッドツリー―希望まで360秒』('01年発表、'04年/今人舎)が早見優の訳で紹介され(絵が主体で文章は僅か。メーテルリンクっぽい寓話的ストーリー)、SF小説の挿絵のような画風の絵本『遠い町から来た話』(Tales from Outer Suburbia、'08年発表、'11年/河出書房新社)で認知度が高まり(これ、大友克洋とか宮崎駿っぽい雰囲気もある)、この『アライバル』(The Arrival、'06年発表)は、日本紹介作としては第3弾です(早見優訳『レッドツリー』は'11年に大判となって改版)。
但し、当然のことながら、その作品のすべてを載せているわけではなく、タイプライターの「オリベッティ」やTBSラジオ「ヤングタウン」などのシリーズ広告ものはその一部だけ。一方で、裸婦のデッサン習作などもあり、没後4年目に刊行されたということもあって、その仕事の全体像とその原点を探る「追悼集」の色合いが濃い作品集と言えます(因みに、'83年PARCO出版から刊行の『伊坂芳太良作品集成(PERO The Works of Isaka)』は446点収録。古書市場プレミア価格になっているみたい)。
1961年に絵本作家トミー・アンゲラー(ウンゲラー)(Tomi Ungerer)が30歳で発表した絵本で(原題:Die Drei Räuber、英題:The Three Robbers)、三人組の泥棒がひょんなことから全国の孤児を集めて城をプレゼントするというハッピーエンドですが、ここまで色んなものを削ぎ落として話を単純化してしまっていいのかなあというぐらいシンプルなストーリーで(「富の再配分」がテーマであるとも言える)、それでも日本では人気の高い作品です(手元にある偕成社の'06年版は166刷になっている)。アンゲラーの作品の中では同系統の作品とも言える『ゼラルダと人喰い鬼』(英題:Zeralda's Ogre)なども、日本でも結構読まれているのではないでしょうか。