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自分はこの本のあまりいい読者ではなかったかも。

雑談力が上がる話し方7.JPG雑談力が上がる話し方.jpg
雑談力が上がる話し方―30秒でうちとける会話のルール』['10年/ダイヤモンド社]

鍛えないと損するョ!雑談力.jpg 「"やや中古"本に光を」シリーズ第2弾(エントリー№2271)。本書は'10年の刊行で、以来そこそこ売れていたようですが、'13年になってNHKの朝の番組などで取り上げられて多くの注目を集め、一気に版を重ねるスピードが増したようです。自分の手元にあるのは家人が買ったものですが、2013年5月第18刷版で、帯には「28万部突破」とあります。
鍛えないと損するョ!"雑談力" NHK「さきドリ」2013年3月24日放送

 「雑談」に目をつけたニッチ戦略の巧みさと「雑談力」としたネーミングの妙が功を奏したのでしょうか。ネーミングの方は著者によるものか編集サイドでつけたものか分かりませんし、「○○力」というタイトルの本を著者は既に結構たくさん出しているけれども(「力」が著者のトレードマークになっている感じもする)、「雑談」をテーマにこれだけ書けるのは著者ならではなのかも。因みに、大学教授である著者の専門分野の1つがコミュニケーション論だそうです。

 NHKの番組では、企業などで研修に取り入れるところも出てきているといった紹介もありましたが、実際に地方の銀行で、窓口業務担当者の利用客対応の研修に使ったり、雑談力研修を開催している社団法人もあるようです。インターネットで調べると、その他にも、歯科クリニックで受付嬢にこの本を贈ったという歯医者さんの話がブログにあったりし、また、「雑談力」の向上を請け負う研修会社がいつの間にか誕生していたりもするようです。

 本書の中身はどうかというと、まず冒頭に「雑談のルール」として、①雑談は「中身のない話」であることに意味がある、②雑談は「あいさつ+α」が基本、③雑談に「結論」はいらない、④雑談は、サクッと切り上げるもの、⑤訓練すれば誰でもうまくなる、と5つに纏められているのが分かり易いです。

 ただ、その先、それほど深いことが書いてあるかと言うと、そうでもないような気がしました。殆ど自己啓発書的な感じで、ここに書かれていることに目から鱗が落ちる思いをして痛く共感するか、意外と目新しさが無いなあと思うかは、もう「個人の好み」乃至は「その人と本書の相性」の問題だと思いますが、個人的には、やっている人は既にそうしているだろうし、出来ない人は本書を読んでも出来ないだろうなあという気がしてしまいました。

 では、自分が「雑談力」が高いかというと、全然そんなことはないわけで、自分は「出来ない人」の部類だろうなあ。こうした本から教訓を汲み取らないからいつまでも進歩しないのかな? でも、全然何も得られる点が無かったということでもなく、「目の前の相手の、『見えているところ』を褒める」というのなどはナルホドなあと思いました(但し、『コメント力』('04年/筑摩書房)などで既に、承認欲求の充足に絡めて「褒める」ということを著者は強調済みであるわけだが)。

国分太一.jpg 国分太一がその例で出てきて、人をさりげなく褒めるのが上手いとのこと(著者はネクタイの柄を褒められたそうな)。更に、終わりの方でももう1回出てきて、前に会った時の雑談の内容をよく覚えているとして絶賛しています(国分太一に学ぶ「覚えている能力」)。

 本書にあるテクニックの1つ「芸能ネタにすり替える」を使うわけではないですが、ニホンモニターの調べでの2014年のタレント番組出演本数ランキングは国分太一が第1位で、国分太一は「初の年間王者を奪取!」だそうです(2位:設楽統(バナナマン)、3位:有吉弘行)。タレントと営業マンは、自分のキャラクターを売っているという点で重なるかもしれず、目の前の相手を褒めるというのは、次の仕事に繋がる秘策となり得るのかもしれません。

 何だか世知辛い気もしますが(この人の本の特徴は「プラグマティックな問題構成」にあると指摘する人もいるが、その指摘は的を射ているように思う)、著者自身は、雑談は話すことで人は救われ、聞いてもらうことで人は癒されるものであり、「雑談力」とは、社会に出てすぐに役立つ最強のスキルであり「生きる力」に繋がるものであるとしています。本書に関して言えば、自分自身はこの本のあまりいい読者ではなかったかも。まあ、自分がわざわざ光を当てなくとも、十分に光が当たった中古本ではありますが。

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コミュニティや個々の文化の違いによる問題の解決法、文化差を積極的に活用するスキルを解説。事例がいい。

グローバル人材の新しい教科書.jpgグローバル人材の新しい教科書―カルチュラル・コンピテンスを伸ばせ

グローバル人材の新しい教科書 image.jpg 外国語教授や留学等、語学に関わるサービスを提供しているベルリッツ・ジャパンによる本であり、本書にある「カルチュラル・コンピテンス」を伸ばす手法は、ベルリッツの子会社であるTMC(Training Management Corporation)が開発したものであり、世界各国の組織や個人によって実務に適用されているとのこと(ベルリッツ・ジャパンも「カルチュラル・コンピテンス」を使った研修を2010年から実施している)。今回の刊行は、この研修の受講者からの、日本語で「カルチュラル・コンピテンス」を復習したいとの要望に応えてのものだそうです。

 ベルリッツによれば、多くの日本企業がグローバル化を目指し、グローバル人材の育成に注力している中、「英語力はそれなりにあるはずなのにうまくいかない」との悩みが多く聞かれるとのこと。本書では、この問題は語学力ではなく、文化の衝突や対立に対処できない「カルチュラル・コンピテンス」の不足から生じているとしています。「カルチュラル・コンピテンス」とは、こうした文化の違いを活用する力のことで、英語に不自由しない人でも、不断の努力をして身につけるものであるとのことです。

 本書によれば、通常の異文化研修は、いわば「知識」を得るための研修であり、カルチュラル・コンピテンスの一部ではあるが、本書が説いているのは「知識」(カルチュラル・ナレッジ)の重要性や必要性だけではなく、文化を生かして積極的に活用するための具体的なスキル(カルチュラル・スキル)も含めてであるとのこと。

 例えば、メールを送る際に、社会的慣例や言葉遣いを気にする人と、端的でカジュアルなメールを送る人とでは、「文化」が違うと言え、社会的慣例を重んじる人が、カジュアルなメールをもらった場合、「常識がない」と思い、不愉快に感じるかもしれず、一方、逆の場合は、勿体ぶった書き方が無駄で不愉快に感じるかもしれないと。「常識がない」ととるか「文化の違い」と捉えるかで、仕事関係に大きく影響し、但し、「文化」の違いを認識するだけでは何も解決せず、本書ではこの違いをどのように解決し、活用していけばいいのか具体的なスキルを紹介しています。

 第1部~第2部の第4章までは、「カルチュラル・コンピテンス」がどういうものかを詳しく説明しています。第2部の第5章からは、「森山豊」という、M&Aに伴う懸案で、中年にして初めてチームリーダーとして海外に派遣されることになった架空の人物「森山豊」の経験を通し、日本人が海外でビジネスを行っていく上でどのように「文化」を理解し、対応していったのかというケース・ストーリーとなっています。第3部では、ベルリッツが実際に行った研修の事例を紹介しており、会社が抱える「文化」の問題がより具体的に記されています。

 「グローバル人材」について書かれた本は、著者自身の経験に基づくものが多く、それはそれで参考になったりもしますが、日系企業から多国籍企業の経営トップに転身した人(その逆のケースもあるが)や、証券マンから国際金融アナリストに転身したといった人などが書いたりしたものが多く、その人のキャリアの華々しさに、読む側としてはちょっと引いてしまうことが少なからずあり、また、そこで語られる内容も、著者個人の経験や価値観が色濃く反映されたりもしているように思います(勿論、良書もあるが、コンサルタントとして独立したことに伴う名刺代わりの本だったりする側面もあったりする)。

 それらの本を場当たり的に読んでいくのも悪いとは言いませんが、やや非効率かも。その点、本書は、「教科書」と謳うだけあって、「カルチュラル・コンピテンス」の概念がよく整理されており、但し、概念整理だけだと読んでもそれほど頭に残らないということからか、「森山豊」という人物の"奮闘記"とも言える事例が挿入されていて、これが実に活き活きしていて、小説を読むように楽しく読め、また、そのケース・ストーリーを通して、個対集団、個対個の関係においてどのような形でリーダーシップを発揮していくかを示すとともに、最初に述べた理論をおさらいするような形になっていて、とても分かり良いもののように思えました。

 国による文化の違いだけでなく、日本人であろうと外国人であろうと、同国人であってもその中で個人差があることに着眼しており、また、相手の価値観や文化に合わせるだけでなく、自国の文化や自分自身の価値観を主張し、相手に理解させることの重要さを(これもストーリー仕立てで)説いている点もいいです(まえがきに「日本人同士の仕事であっても仕事の進め方に悩んでいる方には有益であろう」とあるが、まさにその通りかも知れない)。

 自社の研修テキストをオープンにしているという点では、(これもまた自社ビジネスの一環であるにしても)好感が持てます。日本は所謂モノカルチャー社会と言われており、異質な文化と接する機会が少なかったと言えますが、今後、グローバル社会へと進んでいくにあたり、ビジネス文化の異なる人たちとの問題解決の一助になればと考えての刊行とのことで、また、M&Aで生じる会社間の文化の違いや、各コミュニティや個々人の、文化の違いから発生する問題など、日常に潜む「文化」の違いを発見してみる一助にもなるかも知れません。

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「聞く力」というよりインタビュー術、更にはインタビューの裏話的エッセイといった印象も。

聞く力1.jpg 聞く力2.jpg聞く力―心をひらく35のヒント (文春新書)

阿川 佐和子 『聞く力―心をひらく35のヒント』130.jpg 本書は昨年('12年)1月20日に刊行され12月10日に発行部数100万部を突破したベストセラー本で、昨年は12月に入った時点でミリオンセラーがなく、「20年ぶりのミリオンゼロ」(出版科学研究所)になる可能性があったのが回避されたのこと。今年に入ってもその部数を伸ばし、5月には135万部を、9月13日には150万部を突破したとのことで、村上春樹氏の『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』が発売後7日で発行部数100万部に達したのとは比べようもないですが、今年('13年)上半期集計でも村上氏の新刊本に次ぐ売れ行きです。

プロカウンセラーの聞く技術3.jpg 内容は主に、「週刊文春」で'93年5月から20年、900回以上続いている連載インタビュー「この人に会いたい」での経験がベースになっているため、「聞く力」というより「インタビュー術」という印象でしょうか。勿論、日常生活における対人コミュニケーションでの「聞く力」に応用できるテクニックもあって、その辺りは抜かりの無い著者であり、エッセイストとしてのキャリアも実績もあって、文章も楽しく読めるものとなっています。

 ただ、対談の裏話的なものがどうしても印象に残ってしまい(それも誰もが知っている有名人の話ばかりだし)、タイトルからくるイメージよりもずっとエッセイっぽいものになっている印象(裏話集という意味ではタレント本に近い印象も)。「聞く力」を本当に磨きたければ、著者自身が別のところで推薦している東山紘久著『プロカウンセラーの聞く技術』(`00年/創元社)を読まれることをお勧めします。もしかしたら、本書『聞く力』のテクニカルな部分の典拠はこの本ではないかと思われるフシもあります。
プロカウンセラーの聞く技術

 因みに、昨年、その年のベストセラーの発表があった時点ではまだ本書の発行部数は85万部だったのが、同年4月に文藝春秋に新設されていた「出版プロモーション部」が、この本が増刷をかけた直後にリリースしたニュース情報が有効に購入層にリーチして一気に100万部に到達、この「出版プロモーション」の成果は村上氏の新刊本『色彩を持たない...』にも応用され、インターネット広告や新刊カウントダウンイベントなどの新たな試みも加わって、『色彩を持たない...』の「7日で100万部達成」に繋がったとのことです。

 本もプロモーションをかけないと売れない時代なのかなあ。ただ、こうしたやり方ばかりだと、更に「一極(一作)集中」が進みそうな気もします。まあ、この本は、村上春樹氏の新刊本とは異なり、発刊以降、地道に販売部数を重ねてきたものでもあり、プロモーションだけのお蔭でベストセラーになった訳でもないとは思いますが。

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着眼点は興味深かったが、事例が強引で、しっくりこないものが多かった。

「上から目線」の時代.jpg 『「上から目線」の時代 (講談社現代新書)』 勝間=ひろゆき対談.jpg「勝間=ひろゆき対談」

 "あの人は「上から目線」だからやり辛い"といった「上から目線」を過剰に意識する現象について、そもそも「上から目線」とは何なのか、「上から目線」という言葉がいつ頃から使われるようになったのか遡ることから考え始め、「上から目線」を過剰意識することの根底にある、日本語で会話する際の独特の当事者間の位置関係や枠組みを考察し、更には、日本文化の底流に流れるものを掘り起こそうと試みた本―但し、個人的には、日本語論、日本文化論というよりも、主にコミュニケーション論として読みました。

 「上から目線」ということがいつ頃から使われるようになったかを政権トップの発言に対する国民の反応から見て行くと、福田康夫首相や麻生太郎首相の頃かららしいですが、このように「上から目線」について「1対多」と「1対1」の両方のコミュニケーション・ケースを扱っていて、「1対多」の方が「首相vs.国民」になっているのが、読み物としては面白けれど、かなり、著者のバイアスが入らざるを得ないものになっているように思いました(一時の首相の言動から、日本文化の底流に流れるものを掘り起こすというのは、普遍性が弱いように思う)。

 一方、「1対1」のコミュニケーションを中心に論じている部分はなるほどと思わされる部分もあり、会話のテンプレートのようなものが、"共通価値観の消滅"により無くなってしまったのかどうかはともかく(そんなに簡単に消滅するかな)、日本語の会話というものが、構造自体に上下関の枠組みがデフォルトとして設定されていて、日本語で会話すると、上下関係が自然に発生してしまうという着眼点は興味深く、確かにそうかもと思いました。

 但し、大きな会社からベンチャー企業に転職してきた人が「僕の会社では」ということを繰り返し言うのが嫌われる(こういうの、「出羽守(ではのかみ)」という)というのは、そうした上下関係が生じていることへの自意識がないからであり、これはあまりに単純な話。

 そんな解説も要さないような話があるかと思うと、一方で、BS-Japanの「デキビジ」での勝間和代氏と元「2ちゃんねる」管理人のひろゆき(西村博之)氏の対談が噛みあわなかったことが、「上から目線」の事例として出てきたりして、勝間氏がひろゆき氏の発言に「上から目線」を感じたのではないか、とのことですが、これ、ちょっと違うんじゃないかなあと。

 著者は両者の「会話」の一部を取り上げ、その食い違いを指摘していますが、「議論」全体としては、勝間氏が「起業しなければ人では無い」的な前提で話していること自体が価値観の押しつけであり(これこそ著者の言うところの「上から目線」)、それを揶揄するというより、その前提がおかしいのではないかと、ひろゆき氏は言っているだけのように思え(意図的に揶揄することで、相手の土俵に乗せられないようにしているとも言えるが)、議論の前提に異議申すことは、頓珍漢なイチャモンでなければ、必ずしも「上から目線」とは言えないのではないかと(「議論」と「会話」が一緒くたになっている)。

そこまで言うか.jpg 「勝間=ひろゆき対談」については、根本的に両者の考え方、と言うより、対談に臨む姿勢が食い違っているように思いましたが、この対談をとり持ったのは、実は、後から2人に割り込んだフリをしている堀江貴文氏かなあ。その後、3人で「仲直り」対談をしたりして(これをネタに本まで出したりして)、共通のプラットフォームが出来あがってしまうと、途端に対談内容がつまらなくなるというのが、外野からみた印象でした(勝間和代氏と香山リカ氏の関係も同じ。ここで言う"共通のプラットフォーム"とは、"世間の注目を集める"こと、つまり、当事者双方にとっての経済合理性か)。

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P&G礼讃本。「広報」本のきらいあり。

P&G84.JPGP&G式 伝える技術 徹底する力.jpg 『P&G式伝える技術 徹底する力―コミュニケーションが170年の成長を支える (朝日新書)

 P&Gの人事は、デイビッド ウルリッチが90年代に、GEなど当時成功していた企業の人事部にヒアリングして書いた『MBAの人材戦略』の中で提唱した、「人事の4機能」(①ビジネスパートナー、②チェンジエージェント、③人材管理エキスパート、④社員チャンピオン)を忠実に実践したことで知られています。

 何年か前に企業向けセミナーで、かつてP&Gに在籍していた女性による、同社の人事マネジメントの考え方や人事制度に関する話を聞きましたが、その人はP&G在籍時代は営業のマネジャーを務めていて、そうした人が会社の人事についてしっかり語れるところが、いかにもP&Gらしいというか、スゴイなあと思いました。

 そうした経験もあって、組織内コミュニケーションの在り方という観点から本書を購入しましたが、第1章で、①3つにまとめる、②「目的」へのこだわりが結果につながる、③「イシュー(論点・課題)シート」で焦点を絞る、という、P&Gの社内におけるコミュニケーションの要諦が紹介されており(これも「3つ」にまとめられていることになる)、一応は参考になりました。

 但し、第2章以降は、消費者とのコミュニケーションや、社員に目的を達成させるためのマネジメント、グローバル・コミュニケーションのノウハウが紹介されていますが、殆ど完璧に「企業プレゼンテーション」という感じで、最後の第5章で「なぜ170年以上も成長を続けられたのか」と括られていて、これは「売上高800億ドル、世界80カ国以上に事業拠点を持ち、180以上の国と地域で製品が販売されるグローバル企業」のスゴさをアピールする"宣伝本"だったのかと。

 著者は元P&Gの社員ということですが、「広報」部長をしていたのだなあ。しかし、既に会社を辞めているのに、こんな自分がいた会社をとことん褒めちぎった"礼讃本"を書くもの何かなあ。
 
 P&Gの「広報」との繋がりを随所に感じさせるパブリシティのような内容に(朝日新聞社系のメディアへの広告出稿とバーターになっている?)やや辟易させられました(ウルリッチの話が無かったのも不満だが、広報だから仕方がないのか)。

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「相づち以外はしゃべらないこと」が第一歩。実生活でも役に立つ本。

プロカウンセラーの聞く技術.jpgプロカウンセラーの聞く技術』 ('00年/創元社)higashiyama.jpg 東山 紘久 氏(経歴下記)

 来談者中心療法の権威である著者が一般向けに書いた、人の話を「聞く技術」の本ですが、来談者中心療法の実生活での応用編ともとれ、カウウセラーを目指す人にも技法面で大いに参考になるのではないかと思います。

 久しぶりに友人と会食することになり、何か相談ごとでもあるのかなと思って行ったけれども、ついつい会った途端に自分の話ばかりしてしまい、その時は楽しかったけれども、ウチに帰った後で相手の話はあまり聞かなかったことに気付き、しゃべり過ぎたと後悔する...。
 そうした経験をよくする人にはお薦めです。
 本書の31章の中から、自分にとってのチェックポイントに線を引き、人に会う前にもう一度なぞっておく。
 そういうことを繰り返していくうちに、本書の効用を実感することがあるかと思います。
 そうした意味では、実生活でも大いに役に立つ本と言えるかも。

 因みに第1章の中に「相づち以外はしゃべらないこと」とあり、これがこの本の第1段階ですが、このことを実行するだけでも結構たいへんかも知れませんし、その難しさを意識することで、自分の未熟さに対し謙虚な気持ちにもなれます。

 他人から"頭のいい"人と思われたければ、"頭のいい話し方"の本を読む前に、まずこの本を読んでみてはどうでしょうか。

《読書MEMO》
●相づち以外はしゃべらないこと(11p)
●「なるほど」「なあるほど」「なるほどね」「なるほどねえ」「なるほどなあ」と「なるほど」だけでも使い分ける(26p)
●相手の話したことを繰り返すのは、すばらしい相づち効果(29p)
●悪口を言うからこそ我々は悪くならないですんでいる(48p)
●相手の思いのままに聞き、自分の思いは胸にしまっておく(101p)
●プロは相手の話の内容よりも、なぜその話をするのかに関心」ある(158p)
●聞きだそうとしない(193p)


「労政時報」3773号 "人事のプロ"が薦める15冊
『プロカウンセラーの聞く技術』(東山 紘久 著/創元社 2000年)
■ 聞き上手になるためには
 本書は、プロのカウンセラーである著者が、聞き上手になるための技術を解説したものである。著者によれば、ほとんどの人は、話を聞くよりも話をする方が好きで、たとえ話すのが苦手だという人でも、リラックスして話せる相手にめぐりあえると、とどまることを知らないほど話したりするものだという。
 では、聞き上手になるにはどうすればよいか。それには、相手の話したいという気持ちを負担に感じず、また、こちらからは話したくならないような訓練が必要であるという。本書は、聞く技術を習得するための31項目のキーフレーズを掲げ、それらを順に解説している。  
■ 相づち以外はしゃべらない
 第1項「聞き上手は話さない」には、「とにかく、まずは、相づち以外はしゃべらないこと」とあり、第4項「相づちの種類は豊かに」では、プロのカウンセラーは、「なるほど」という相づちだけでも「なるほど」「なあるほど」「なるほどね」「なるほどねえ」「なるほどなあ」と使い分けるとある。また、「相手の話したことを繰り返すのは、すばらしい相づち効果」になるともある。だだし、相手のどの言葉がキーワードかを判断しつつ、それをしなければ逆効果になるため、これは高等技術である。
 また、第8項に「自分のことは話さない」とあり、第10項に「聞かれたことしか話さない」とあるが、これは、「聞き手モード」を意識的にキープしないと、ついつい「話し手モード」になってしまうということである。
 第12項に「情報以外の助言は無効」とあり、助言として自分の体験を話す人がいるが、こうした話が相手の心に響くことはまれであるという。聞き手は話し手より偉くないことを自覚しているべきであって、第15項にあるように、「素直に聞くのが極意」であり、「相手の思いのままに聞き、自分の思いは相手が聞くまで胸にしまって」おくのが、その「素直」ということである。
■ どのような姿勢で相手の話を聞くか
 中には、相手の話に共感しようとするあまり、相手に同情し、相手の問題を自分の問題と混同してしまう人もいる。第19項には、「相手の話は相手のこと」と考えるとある。もちろん、温かい気持ちでそれができるためには、相手に対する理解が必要であり、相手の気持ちになって、しかも相手と自分を混同しないことが肝要なのである。
 また、第22項にある、「LISTENせよ、ASKするな」とは、相手の話を「聞く」のであって、「たずねる(質問する)」のではないということである。「たずねる」と「聞く」の大きな差は、「たずねる」のが質問者の意図にそっているのに対して、「聞く」のは話し手の意図にそっていることである。さらに、第29項には、「聞きだそうとしない」とあり、相手の話を聞く態度で、「聞きだす」というのは、さしさわりがあるとしている。
 どの項も、どのように相手の話を聞くべきかということを、深く教えてくれているように思える。
■ 「聞く技術」の効力
 人はだれでも、信頼しあえる人間関係を持ちたいと思っている。それは、職場においても同じである。仮に自分が人事部にいるとして、会社の考えを社員に伝えるのが使命であって、そのためには社員から嫌われてもしかたがないというのは、あまりにも後ろ向きである。といって、社員ひとりひとりから嫌われないようにすることに腐心していては、仕事にならない。社員の何人かは、自分の考えや不満を会社に聞いてもらいたいという気持ちを強く抱いている。そうした際に、窓口となる人事部の人間が、しっかりとその気持ちを受けとめてくれるかどうかが、人事部と社員の信頼関係、しいては会社と社員の信頼関係の構築において、ひとつの大きな要素になるのではないか。
 コンサルティングの場でも同様である。一方的に自らの考えを顧客に押しつけるコンサルタントは、たとえその知識や理論が洗練されたものであっても、心底からの顧客の信頼を得ることは難しい。経営者は、誰にも言えないでいる悩みを抱えていることが少なくない。まず、その悩みを、相手があたかも自分自身のことであるように聞いてくれたという顧客の実感が、両者の関係を次のステップに導く。信頼関係が構築されていない場合は、制度やシステムの完成間近になって、それまで見えなかった齟齬が次々と顕在化してくる。
 「聞く技術」は、こうした仕事場面において効果を発揮するばかりでなく、家庭生活や友人・恋人との交流においても応用が可能であると考えられる。
■ ベースにあるカウンセリング技法
 本書のベースにあるのは「来談者中心療法」のカウンセリング技法である。一般に来談者中心療法はカール・ロジャーズによって開発され、ロジャーズ理論とイコールとされているが、厳密にいえばそれは正しくはない。なぜならば、ロジャーズが提唱した「純粋性」(カウンセラーがありのままの自分になること)、「受容」(すべてをクライエントの感情に立って受け入れ、積極的に尊重すること)、「共感的理解」(クライエントの内的世界において理解する態度)という概念は、カウンセラーがクライエントに向かう態度を示したものであり、彼自身は技法論を提唱していないからである(東山紘久『来談者中心療法』(2003年 ミネルヴァ書房))。
 来談者中心療法の技法は、ロジャーズの弟子たちが開発・体系化したもので、著者自身も30代に、ちょうど河合隼雄がスイスのユング研究所で学んだように、米国のカール・ロジャーズ研究所で学んだ人である。本書は、来談者中心療法の実生活での応用編ともとれ、カウウセラーを目指す人には技法面で参考になるのだろう。
 ただし、本書には、難解な用語はいっさい出てこない。それどころか、来談者中心療法という言葉さえ出てこない。これを啓蒙書と読もうと技術書として読もうと、それは読者の自由であるが、読み進むにつれて、双方の視点は統合されてくるように思う。
■ 遅々たる"成長"過程ではあるが
 本書の31項は、"31段階"ともとらえられる。「相づち以外はしゃべらないこと」というのが"第1段階"ということになり、実践してみればわかることだが、このことだけでも容易ではない。
 本書全体を400m走にたとえれば、自分自身はまだ、第1コーナーあたりを迷走している。最初に読んでから何年にもなるのに情けない話ではあるが、これは鍛錬の足りなさによる。そうした本を、「私を作った"成長"本」とするのはおこがましい気もする。しかし、本書の内容のうち、自分にとってのチェックポイントに線を引き、人に会う前に再度なぞっておく―そういうことを繰り返していくうちに、本書の効用を実感することが今まで何度もあり、あえて本書を選んだ次第である。

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東山 紘久 (臨床心理士・京都大学副学長)
昭和17年、大阪市に生まれる。
昭和40年、京都大学教育学部卒業。
昭和48年、カール・ロジャース研究所へ留学。教育学博士、臨床心理士。
現在は京都大学大学院教授。専攻は臨床心理学。
著書には、『遊技両方の世界』創元社、『教育カウンセリングの実際』培風館、『愛・孤独・出会い』福村出版、『子育て』(共著)創元社、『母親と教師がなおす登校拒否――母親ノート法のすすめ』創元社、『カウンセラーへの道』創元社 他

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コミュニケーション能力を高めるための考え方のヒントを提示している。

なぜあの人とは話が通じないのか.gif  『なぜあの人とは話が通じないのか? 非・論理コミュニケーション』 光文社新書 〔'04年〕

Communication.bmp 「話が通じない人」とコミュニケーションする場合、言葉や論理に頼りすぎない方が良い場合もあり、それが著者の言う「非・論理コミュニケーション」ですが、「なぜ話が通じないのか」という切り口から、コミュニケーション・トラブルの対処法、背後にある力関係、日本的な"面子"の問題、非言語コミュニケーションの役割、「聴く」ことの重要性、異価値に対する柔軟さの必要性などを指摘し、コミュニケーション能力を高める様々なヒントを提示しています。

 コミュニケーション学の本には、米国の理論を引くものが多い。本書で引用されているものも'70年代の米国のものが主流です。
 ただし、理論紹介が目的化してしまっていたり、逆に実用を強調するあまり1つの理論を万能薬のように唱える本が多い中、本書での事例と理論のとり上げ方は納得性の高いもので、日本においてはどうかという考察もしています。

 例えば米国流コミュニケーション学によく出る「エトス(精神的訴求)」という言葉ですが(もともとは哲学家アリストテレスの思想で、「優れたリーダーの3つの条件」はエトス(精神)・パトス(情熱)・ロゴス(意義)であるというのがベースになっているのですが)、それについての説明でも、元来エトスとは「高い精神性」のことだったのが、近年は情報ソースの「信憑性」を指す傾向にあるというように最近動向を押さえながらも、さらに日本では、それに「カリスマ性」といった情緒的要素が入る傾向があると指摘しています。

 全体を通して、答えを示すよりも考え方のヒントを提示するようなスタンスで、お仕着せがましさが無くて自分には合った本でした。

中西 雅之.jpg 中西 雅之 氏
略歴(ホームページより)
1953年東京都生まれ。国際基督教大学卒業後渡米、ヴァージニア大学で修士号、カンザス大学で博士号を取得。カンザス州立大学専任講師、共立女子大学専任講師を経て、現在、津田塾大学学芸学部英文学科コミュニケーションコース教授。専門はコミュニケーション学。コミュニケーションを人間の最も基本的な社会活動と捉え、対人関係、小集団、組織、異文化、メディアなど様々な状況におけるコミュニケーションの諸問題について実証データを基に研究している。

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本書使用上の注意書を皮肉を込めてを付けるとすれば...。

頭がいい人、悪い人の話し方2.jpg頭がいい人、悪い人の話し方.jpg  頭がいい人、悪い人の話し方 250.jpg
頭がいい人、悪い人の話し方』PHP新書〔'04年〕

Caution.bmp どうして本書がベストセラーになったのか、読み終えて(途中から通読になってしまいましたが)今ひとつピンとこなかったのですが、よくよく考えると、方法論的な何かを得るというよりも、読み手によってはカタルシス効果のようなものがあるのではないかと思った次第です。"充分なカタルシス効果"を得るための、本書の「使用書」と「注意書」を皮肉を込めてを付けるとすれば、こうなるのでは...。

 貴方の周囲に"どうもシャクにさわる人"がいたとしたら、その人の話し方を本書の"頭が悪い人の話し方"のどれかに当てはめてください(必ずいくつか当てはまるようになっています)。
 その結果、その人は"頭が悪い人"であることが明らかになり、納得できた気持ち、スッキリした気分になれます。
 実際の対処法も参考までに示してありますが、この部分に過度の現実性を求めないでください。
 相手が仕事上の上司なら堪えるしかないのが現実なのです。
 そのことよりもまず"スッキリした気分"になることが大切なのです。

 ご自分の話し方に "頭が悪い人の話し方"ととられる部分がないかをチェックするのは構いません。
 ただしあまり熱心にやり過ぎると、自分に当てはまる項目が思った以上に多くなることもあり、自己嫌悪に陥るか本書が嫌いになるか、何れにせよこれまでの作業がムダになる恐れがありますのでご注意ください。

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コミュニケーションの指南書。エトス(精神性)の高い本。

山田.jpg伝わる・揺さぶる!文章を書く』 PHP新書 〔'01年〕 p_01.jpg 山田ズーニー氏 (略歴下記)

ca_img03.jpg ちょっと引き気味になりそうなタイトルですが、読んで見るとなかなかでした。
 著者はあの進研ゼミのベネッセ・コーポレーションで、小論文通信教育誌の編集長をしていた女性です。
 しかし内容は、小論文に限らず、上司を説得する文章、お願いの文章、議事録、志望理由(自己推薦)の文章、お詫び文、メールの書き方など、高校生の試験向けというよりは、ビジネスシーンでの実践的活用に即したものとなっています。

 しかも、文章(著者は実用以上、芸術未満と規定していますが)を書く上でのテクニックにとどまらず、“伝わる・揺さぶる”文書を書く上での根幹となるものを示唆していて、むしろコミュニケーション全般にわたる指南書とも言えます。

 書かれていることに読者をアッと言わせようというような作為性はなく、「自分を偽らない文章を書くことによってのみ、読み手の心は動く」のだという著者の考えが、そのまま真摯な語り口で実践されている本です。

 こうした本は頭で理解できても、なかなか実践は難しいもの。
 特に著者の言う「自分の頭でものを考える」ということ。何か忘れた気持ちになったとき、また読み返してみるのも良いかも。読み返す価値のあるエトス(精神性)の高い本だと思います。
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山田ズーニー (コミュニケーション・インストラクター)
1984年ベネッセコーポレーション入社。進研ゼミ小論文編集長として高校生の「考える力・書く力」の育成に尽力。
2000年に退社。同5月より「ほぼ日刊イトイ新聞」に「おとなの小論文教室。」を連載。
以降、執筆、講演、編集長・ライターの育成など文章表現教育を幅広く行うようになる。

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全部を熟読すると、どうすればいいのか、かえってわからくなる。

アタマにくる一言へのとっさの対応術.jpg 『アタマにくる一言へのとっさの対応術』 ('00年/草思社) アタマにくる一言へのとっさの対応術2.jpg 『アタマにくる一言へのとっさの対応術 (SB文庫 ヘ 1-1)』 ['07年]

cat communication.bmp 著者はドイツ人で、大学で心理学を学び、今はコミュニケーショントレーナーであるということですが、タイトルに惹かれた人が多かったのか、かなり売れた本です。

 自分の意見を否定されたり相手から侮辱を受けたりし「アタマにきた」場合に、どう対応すれば良いかが、具体例と併せて数多く書かれていますが、大まかに分けて、無視して相手を空回りさせたり、話題を変えるなどして相手をはぐらかす方法と、我慢しないで、相手に対し一言ビシッと、できるだけ効果的な言葉で言い返す方法、があるということでしょうか。

 その場で即、「言葉」による対応をすることで自分を護る、という点が西洋的で、「はぐらかし」というのは、彼らにとっては一種の応用形なのかも。
 日本人は「はぐらかし」てばかりで、外国人から嫌われている気もしますが...。

 でも、「どうしていいかわからなくなったら黙りこむ」とも書かれていて、全部を熟読すると、かえって、どうすればいいのかわからなくなってしまうような本でもあるような気もします。
 そこで、もっと理解を深めようと、『グサリとくる一言をはね返す心の護身術』('02年/草思社)などの続編までも買ってしまうのかなあ(家の本棚にいつの間にか?ある)。
 
 個人的に思うのは、自分に一点の非も無ければ、比較的ゆとりを持って対応できるだろうし、相手の指摘で自分の方の筋に自信が持てなくなるとイライラ度が増すのではないかとも思うのですが、この本は、一応自分はまったくもって正しいという前提で書かれているようです。

 【2007年文庫化〔SB文庫(ソフトバンク クリエイティブ )〕】

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真面目だが愉快で刺激的。発想・思考トレーニングの示唆も多い。

危険な文章講座.jpg 『危険な文章講座』 ちくま新書 〔'98年〕

pen2.jpg 鬼才コラムニストとして知られる著者が「危険な」と冠するからには一体どんな内容かと思いきや、技術論よりも、文章を書く際に邪魔になる囚われから読者を解き放つことに主眼を置いた真面目な文章論でした。「批判」と「悪口」の違いを述べた部分など、啓蒙書としての倫理性すら感じます。

 しかしながらユニークな視点は健在で、書くことは「自己相対化」作用であることを「幽体離脱体験」に喩えて論じ、「文は人なり」という精神主義を喝破するのに「酒鬼薔薇聖斗」の手紙を立花隆らが「文章はセミプロ級で書いたのは高学歴者」などと推察したことを例に挙げるなど、巷にある真面目くさった文章読本に比べれば、愉快で刺激に満ちたものとなっています。

 発想と思考のトレーニングについての示唆も多っかたと思います。
 情報収集やカード整理といった作業は、それ自体が自己目的化してまだ始まっていないはずの〈思考〉にすり代わってしまう傾向があると。
 こうして書評を書くのも、どこかにその恐れがあるということを、いつも認識しておくべきだということでしょう。

《読書MEMO》
●メモをっとることは大事だが、本当に大切なのはその後の作業。「とにかく自分の頭から生まれたランダムでアンバランスな断片を、どのようにして他者に共有してもらえる表現へと鍛えあげていくのか」
情報収集やカード整理は、往々にしてそれ自体が自己目的化してしまって、まだ始まっていないはずの〈思考〉にすり代わってしまう傾向がある(156p)

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