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ジャンルを幅広く取って簡潔にポイントを解説。極々スッキリしたスタイル。

明日使える世界のビジネス書をあらすじで読む.jpg明日使える世界のビジネス書をあらすじで読む3.jpg
明日使える世界のビジネス書をあらすじで読む』(2014/04 ティー・オーエンタテインメント)

 ビジネス書の分析・解説がほぼメインの仕事になっていると思われる著者が、「明日から使える世界のビジネス書」を99冊セレクトし、あらすじと名著である理由を解説したもので、今回は海外のビジネス書に限定して、(1)ビジネス理論 Theory、(2)自己啓発 Self-Help、(3)経営者・マネジメント Management、(4)哲学 Philosophy、(5)古典中の古典 Classics、(6)投資 Investment の6つのジャンルに分類して取り上げ解説しています。

明日使える世界のビジネス書をあらすじで読む2.jpg 見開き2ページ毎に各1冊紹介する形で、左ページにその本の「著者略歴」の紹介と「この本を一言でいうと」どういう本なのか、また「この本が名著とされる理由」、更にはわかりやすさ度、有名度、お役立ち度、エンタメ度をそれぞれ★で5段階評価しています。

 そして右ページにその本のポイントを2つに絞って解説をしていますが、確かにスッキリしたスタイルではあるものの、そうなるとあまりに簡単にしか本の内容の紹介ができないのではないかという気もしますが、著者の考え方は、「本書ではざっくり言って、1冊の本に書かれている真実の量は1%程度だと結論づけている。つまり200ページの本であれば、2ページの自分にとって役立つ知識が吸収されれば十分なのだ」「したがってこの本では、筆者が厳選した"100冊のビジネス書"をジャンル分けしたうえで、内容を1%で要約し、"本書から得るべき真実"を抽出した」(水野俊哉,ITmediaより)とのことです。

 ナルホド、言い得ているなあと思われる面もあるし、何ページにもわたって解説したところで、結局のところ、元の本そのものに当たってみないと分からない(体感できない)エッセンスのようなものは残るものでしょう。短く纏める方が却って難しい場合もあるでしょうし、著者(水野氏)の視点での"纏め"ということで読めば(誰が纏めても"その人の纏め方"にしかならないわけだが)これはこれでいいのではないでしょうか(タイトルにある「あらすじ」とまではいっていない気もするが)。「この本がどうしてこのジャンル?」というのもありますが、ビジネス書って元々読み手によってどのジャンルに属するか違ってくる面もあるかもしれず、その点も含めて、著者の一視点と見ればいいのでは。

 著者のデビュー作が『成功本50冊「勝ち抜け」案内』('09年/光文社ペーパーバックスBusiness)であることからも窺えるように、著者はこれまでビジネス書の中でも「成功本」的な本を数多く取り上げているようです。元マイクロソフト日本法人社長の成毛眞氏が『本は10冊同時に読め!』('08年/知的生きかた文庫)の中で、「家にある成功者うんぬんといった本を捨てるべきである」としていますが、個人的にむしろそっちの考え方に近く、従って著者の選評本をまともに読むのは今回が初めてですが、この本に限れば、ジャンルを幅広く取っているため「成功本」指向はそれほど鼻につきませんでした。

 「哲学」や「古典中の古典」といったジャンルがあり、『銃・病原菌・鉄』や『奇跡の脳』『利己的な遺伝子』といった本なども取り上げられているのは興味深いですが、所謂「教養系」となると、成毛眞氏の編による『ノンフィクションはこれを読め!―HONZが選んだ150冊』('12年/中央公論新社)もそうですが、ライフネット生命の会長兼CEOの出口治明氏の『ビジネスに効く最強の「読書」―本当の教養が身につく108冊』('14年/日経BP社)など、筋金入りの読書人による更に"上手(うわて)"の(よりハイブローな)読書案内があるので、そうした本を指向する人はそちらの方がいいと思います。

 本書は本書で、これまでの著者の本との比較ではそう悪くないのではと思います。と言っても、これまで著者の本は書店の立ち読みでしか読んでいないのですが...(随分といっぱい書いてるなあ)。

《読書MEMO》
●目次と内容
1 ビジネス理論 Theory
・『ビジネスモデル・ジェネレーション』アレックス・オスターワルダー/イヴ・ピニュール
モチベーション3.0.bmp・『モチベーション3.0』ダニエル・ピンク
・『ザ・プロフィット』エイドリアン・スライウォツキー
・『ハイパワー・マーケティング』ジェイ・エイブラハム
・『MAKERS』クリス・アンダーソン
ビル・ゲイツの面接試験.jpg・『ビル・ゲイツの面接試験』ウィリアム・パウンドストーン
 ほか
2 自己啓発 Self-Help
・『ハーバードの人生を変える授業』タル・ベン・シャハー
・『一瞬で「自分の夢」を実現する方法』アンソニー・ロビンズ
・『スタンフォードの自分を変える教室』ケリー・マクゴニガル
 ほか
3 経営者・マネジメント Management
・『スティーブ・ジョブズ』ウォルター・アイザックソン
・『ストレスフリーの整理術』デビッド・アレン
LEAN IN(リーン・イン)3.jpg・『LEAN IN(リーン・イン)』シェリル・サンドバーグ
 ほか
4 哲学 Philosophy
・『これからの「正義」の話をしよう』マイケル・サンデル
EQリーダーシップ2.jpg・『EQ リーダーシップ』ダニエル・ゴールマン
・『フリーエージェント社会の到来』ダニエル・ピンク
・『ワーク・シフト』リンダ・グラットン
奇跡の脳.jpg・『奇跡の脳』ジル・ボルト・テイラー
・『なぜ選ぶたびに後悔するのか』バリー・シュワルツ
 ほか
5 古典中の古典 Classics
・『7つの習慣』スティーブン・R・コビー
ドラッカーマネジメント.jpg・『マネジメント[エッセンシャル版]』ピーター・F・ドラッカー
フロー体験 喜びの現象学1.jpg・『フロー体験 喜びの現象学』ミハイ・チクセントミハイ
ピーターの法則.jpg・『ピーターの法則』ローレンス・J・ピーター/レイモンド・ハル
 ほか
6 投資 Investment
・『となりの億万長者〔新版〕』トマス・J・スタンリー/ウィリアム・D・ダンコ
 ほか全99冊

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シニアの問題を、本人の意識・心構えの問題にすり替えてはならないというのが趣旨だが...。

劣化するシニア社員2.JPG劣化するシニア社員4.JPG  「新型うつ」な人々.jpg
劣化するシニア社員 (日経プレミアシリーズ)』 『「新型うつ」な人々 (日経プレミアシリーズ)

 『「新型うつ」な人々』('11年/日経プレミアシリーズ)などの著書のある産業カウンセラーによる本書は、仕事を選り好む、マネジメントに口を出す、「あと数年だから」と無気力に陥る、過去の経験や職位を振りかざす、「もう年だから」を理由に努力をしない等々、シニア社員の"問題児化"を六つのタイプに分類し、筆者が遭遇した実例を交えながら、シニア問題の根本要因に迫っています。

 第1章「『縦横無尽』に振る舞うシニア社員たち」で、その6タイプを示し、ケースを挙げて典型的な口癖などと示すとともに、そのケースの最後に周囲の声が付されており、それらは以下の通りです。
 ①自分の不遇への共感を周囲に求める「嘆きタイプ」
 「その仕事はちょっとね...」
  そんな人には「そんなに仕事をしたくなければ辞めてしまえ!」と叫びたくなる。
 ②年下の社員に対する依存が止まらない「おんぶに抱っこタイプ」
 「ねえねえ、パソコン教えて」
  「私はあなたのパソコンインストラクターではない!」と叫びたくなって、結局「そんなに働きたくないなら、早く辞めてよ!」と叫びたい。
 ③自分で選んだ仕事しかしない「わが道を行くタイプ」
 「1人でできる仕事がしたい」
  「いい加減、チームで働くことを覚えろ!」と叫びたい。
 ④職場を地域のサークルと勘違い「ご隠居タイプ」
 「その指輪、彼氏のプレゼント?」
  「頼むから、1日も早く全員辞めてほしい。その仕事は無償で引き受けてやる!」と叫びたい。
 ⑤安請け合いが最悪のトラブルを生む「無責任タイプ」
 「まあ、なんとかしますよ」
  「1日も早く、辞めてくれ!」と叫びたい。
 ⑥権限を超越し暴走する「勘違いやり過ぎタイプ」
 「俺が若手にビシッと言ってやる」
  「あなたにそんなことは期待していない、自分の身分をわきまえろ!」と叫びたい。
う~ん、これを読んで、確かにこういうシニアはいるなあと思った人は多いのでは。
 第2章「なぜ『問題児』化するのか」では、タイプごとに本人の抱える意識面での背景要因を分析していますが、これ読むと、本人の人格的要素が占める割合が大きいような...。

 ここまで本人責任論っぽいですが、第3章「ほんとうは本人が苦しい」では一転してシニア本人の側に立ち、上司サイドに問題があって職場適応でつまずいたり、更に職場適応への失敗からメンタル不調に陥ったりするケースなどが紹介されています。

 そして、第4章「その職場環境がやる気を奪う」では、無視できない環境・状況面での問題を取り上げ、第5章「周囲の社員の危険な思い込み」では、周囲の様々な思い込みが状況をますます悪化させることに繋がる場合があることを示唆しています。

 更に「実践編」として、シニア社員を受け入れる側からとシニア社員本人からのアプローチを示し(チェックリストのようなもの)、終章「『「意味』があれば仕事はつらくない」で、「価値観の創造」ということについて述べています。

 全体を通して、シニア社員の職場で問題になるケースや本人が辛い思いを抱えているケースを具体的に示し、環境・状況面の問題性、本人の意識の問題性、周囲の意識の問題性など幅広い観点から分析することで、シニアの問題を、本人の意識・心構えの問題にすり替えて考えてはならないことを訴えています。周囲が「いい大人なのだから、周囲にとけ込む努力をしてほしい」「わからないときは、本人から教えを請うべきである」と明らかな上から目線から捉えているとしたら、それはシニア社員を完全に拒絶する意識とも言え、"厄介者"発想に根ざして、はじめから配慮するつもりがないのなら、摩擦が起きてくるのも当然だというのは穿った指摘でした。

 但し、第1章「『縦横無尽』に振る舞うシニア社員たち」が全体の中で相対的にインパクトあり過ぎて(マンガ的であり過ぎて?)、"あるある本"みたいな(うっ憤解消本みたいな)印象が強くなってしまった感じもします(タイトルもさることながら、帯にも「"問題シニア"の驚くべき生態とは?」とあるくらいだからなあ)。それに比べると、後半は、産業カウンセラーという立場からなのか、企業内外の制度や仕組みには触れず、ヒューマンスキルでの対応のみで事を解決しようとしている分、ちょっと弱かったように思われました。

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「社内出世」と「プロとして生きること」の両方を論じている分、インパクトに欠けるか。

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出世する人は人事評価を気にしない (日経プレミアシリーズ)

 本書では、冒頭で、経営層に出世した人たちの特徴として、自分の人事評価を気にしていなかったことを挙げています。そして、その背景には彼らに共通した行動があり、それを整理する試みが本書であるとのことです。

 企業内では、目の前の仕事で結果を出していてもある日昇進できなくなることがあり、一方で、それまで評価の低かった人がいきなり出世することがあるとしています。なぜそうしたことが起きるのかというと、一般社員層の間の昇進基準は、今担当している仕事での評価結果に基づくのに対し、管理職になるときには、別の昇進基準が用いられる――つまり、上位者から「使われる側」でいる間は「競争」が基本だが、それ以上の「使う側」になるには「選ばれる」ルールが変わる、すなわち互いに選び合う立場になる「協奏」になるタイミングがあると指摘しています。

 一般社員の間は「卒業基準」で、課長からは「入学基準」となり、「職務主義」のもとでは、課長として優秀でも部長にはなれないといった本書の指摘は、一般のビジネスパーソン(とりわけ若い人たち)にとっては新たな知見として受け止められる面もあるかもしれませんが、人事パーソンにとってはある種コモンセンスに近いものではないでしょうか。ただし、ケース・ストーリーも交え、そうしたことが分かりやすく書かれているため、おさらい的に読むにはいいかもしれません。

 課長の手前までは「できる人」が出世するが、さらに上にいくには「できる」だけでよいのか、管理職止まりの人と経営陣になる人は何が違うのかといったことが、会社側のアセスメント基準として、また、ビジネスパーソンに対する啓発的示唆として説かれています。因みに、「出世する人」の行動パターンとして著者は、第一につながりを大事にしていること、第二に質問を繰り返していること、を挙げています。

 さらに、40歳からの10年間、課長時代の働き方がその後の人生を決定するとして、40歳は第二のキャリアの出発点であるとし、第二のスタートを切るにあたって自ら人的資本の棚卸しを行い、キャリアの再設計を行うことを提唱しています。

 その上で、40歳からのキャリアの選択肢として、社内プロフェッショナルになるという生き方を提唱しています。併せて、企業におけるプロフェッショナルの処遇の在り方が、本来の専門性を評価する方向に変わってきていることも指摘しています。ただし、プロフェッショナルとして認められるには高い評価を得る必要があり、では、評価を意識せずに専門性を認められるには、組織でどう働けばよいかといったことを、最終章にかけて指南しています。

 そして、プロフェッショナルとして認められるには、「明確な専門性がある」ことが第一条件であり、プロフェッショナルを目指す人なら、この条件はクリアしやすいだろうが、テクニックが求められるのは第二の条件の「ビジネスモデルに貢献する」ことであるとしています。

 以上の流れでも分かるように、途中までは「出世する」にはどうすればよいかということが書かれていたのが、途中から、組織の中でプロフェッショナルとして生きるにはどうすればよいか、言い換えれば、部下のいない管理職としての地位にあり続けるにはどうすればよいかという話に変わってきているように思いました。

 本書では、「出世」という言葉を社内での昇進のことだけではなく、起業して成功したり、転職して新たなキャリアやさらに高いポジションを得ることも含めて指しているとのことです。ならば、結局、本書の本来の趣旨は、社内外に関わらずプロフェッショナルを目指せということになるのでしょうか。

 プロフェッショナルとは、自分で自分の仕事に評価を下す人と解すれば、必ずしもタイトルから大きく外れるものではないともとれますが、「出世する人は―」というタイトルは間違いなくアイキャッチになっていると言えるでしょう。

 若年層向けの啓発書としてはそう悪くないと思いました。ただ、結局、前半部分は基本的に社内での出世について書かれていて、「それが叶わなくなった場合」に備えて今のうちにどうしておけばよいかということが後半部分に書かれているような気もしました。

 これでは、「とりあえず社長レースに参加しておこう」という"従来型サラリーマン"の発想を変えるものではなく、「本旨」であるべきところの後半部分が前半部分の「保険」に思えてしまう分、インパクトは弱かったように思います(ゼネラリストを目指す人、スペシャリストを目指す人、ゼネラリストを目指してダメだったらスペシャリストを目指す人の全てを読者ターゲットとして取り込もうとした?従来型サラリーマン"マジョリティ"との相性は良さそうだけれど)。

《読書MEMO》
●目次
第1章 評価が低いあの人が、なぜ出世するのか――「使う側」「使われる側」の壁
第2章 課長手前までは「できる人」が出世する――組織における人事評価と昇進のルール
第3章 役員に上がるヒントは、ダイエット本の中にある――経営層に出世する人たち
第4章 採用試験の本番は40歳から始まる――課長ポストからのキャリアの見直し
第5章 飲みに行く相手にあなたの価値は表れる――第二のキャリアを設計する
第6章 レースの外で、居場所を確保する方法――組織内プロフェッショナルという生き残り方
第7章 「求められる人」であり続けるために――会社の外にあるキャリア
おわりに 「あしたの人事の話をしよう」

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忘我の境地こそ「フロー」の感覚。フロー体験についての原典的な本。

Flow:The Psychology of Optimal Experience.jpgフロー体験 喜びの現象学1.jpg  フロー体験 喜びの現象学2.jpg
フロー体験 喜びの現象学 (SEKAISHISO SEMINAR)
"Flow: The Psychology of Optimal Experience"by Mihaly Csikszentmihalyi

ミハイ・チクセントミハイ.jpg 「フロー理論」とは、1960年代に当時シカゴ大学の教授であったハンガリー出身のアメリカの心理学者ミハイ・チクセントミハイ(Mihaly.Csikszentmihalyi)が提唱したもので、人が喜びを感じるということを内観的に調べていくと、仕事、遊びにかかわらず何かに没頭している状態であるというものであり、本書("Flow: The Psychology of Optimal Experience"1990)は、その考えを体系的に纏め上げたものです。

 チクセントミハイが「フロー」と呼ぶのは、完全に何かに集中し没頭している忘我の境地のことであり、このフローを手に入れる時、人は恋焦がれてやまない幸福という状態を手に入れるとのことです。活動の経験そのものがあまりに楽しいので、人はただ純粋に、何としてもそれを得ようとするとのことです。

 このような機会は、はかなくて予測不可能に思われがちですが、本書第1章「幸福の再来」で著者は、それは偶然に生じるものではなく、ある種の仕事や活動はフローの状態になりやすいとしています。以下、本書では、内面生活の統制による幸福への達成過程を検討しています。

 第2章「意識の分析」では、我々の意識はどのように働き、どのように統制されるのかについて述べています。我々が経験する喜びまたは苦しみ、興味または退屈は心の中の情報として現れ、この情報が統制できれば、我々は自分の生活がどのようなものになるかを決めることができるとしています。

 第3章「楽しさと生活の質」では、内的経験の最適状態とは、意識の秩序が保たれている状態であって、これは心理的エネルギー(注意)が目標に向けられている時や、能力や挑戦目標と適合している時に生じるとしています。1つの目標の追求は意識に秩序を与え、人は当面する目標達成に取り組んでいる時が、生活の中で最も楽しい時であるとしています。

 第4章「フローの条件」では、フロー体験が生じる条件を概観し、「フロー」とは意識がバランスよく秩序づけられた時の心の状態であるとしています。たえずフローを生み出すいくつかの行動―スポーツ、ゲーム、芸術、趣味―を考えれば、何が人々を楽しくするかを理解することは容易だとしています。

 第5章「身体のフロー」及び第6章「思考のフロー」では、心の中に生じることを統制することで、人は例えば競技や音楽からヨーガに至る身体的能力や感覚的能力の使用を通して、または詩、哲学、数学などの象徴的能力の発達を通して、殆ど無限の楽しみの機会を利用できるとしています。

 第7章「フローとしての仕事」第8章「孤独と人間関係の楽しさ」では、殆どの人々は生活の大部分を労働や他者との相互作用、特に家族との相互作用に費やしており、仕事をフローが生じる活動に変換すること、及び両親、配偶者、子供たち、そして友人との関係をより楽しいものにする方法を考えることが決定的に重要であるとしています。

 第9章「カオスへの対応」では、多くの生活が悲劇的な出来事によって引き裂かれ、最高の幸運に恵まれた人々ですら様々なストレスに悩まされるが、不幸な状態から益するものを引き出すか、惨めな状態に留まるかを決定するのは、ストレスにどう対応するかによるとし、人は逆境の中でどのようにして生活に楽しみを見出すかについて述べています。

 第10章「意味の構成」では、どうすればすべての体験を意味のあるパタンに結びつけることができるかというフローの最終段階について述べています。それが達成され、自分自身の生活を支配していると感じ、それを意味あるものと感じる時、それ以上望むものは何も無くなるとしています。

 本書は、課題達成に向けたアプローチを幅広く考察するうえで大いに参考になるとともに、「フロー」体験は、生産性以上に幸福な時間を生み出すものであるという観点からも重要と言えるでしょう。忘我の境地へもっと頻繁に至るには、努力を怠ってはならないということも忘れてはならないように思います。

チクセントミハイの本.JPG 本書のほかに、フロー体験について著者自身が書いたものに、『フロー体験入門―楽しみと創造の心理学』("Finding Flow: The Psychology of Engagement With Everyday Life"1997、'10年/世界思想社)や『フロー体験とグッドビジネス―仕事といきがい』("Good Business: Leadership, Flow, and the Making of Meaning"2003、'08年/世界思想社)がありますが、ビジネス寄りに書かれていたりするものの、「フロー」というものが何かについて最も深く書かれているのは本書であり(「フロー」状態の例として、ロッククライミング自体に何の外発的報酬もなく観客の喝采も期待出来ないのに、命を賭してまで没入する人のことを書いているが、ミクセントミハイ自身、ロッククライマーであり、それにのめりこんだ経験を持つ)、やや大部ではあるが、先に原典的な本書を読んでおいてから『フロー体験フロー体験 喜びの現象学3.jpg入門』や『フロー体験とグッドビジネス』に読み進む方が、結果として効率が良かったりするのではないでしょうか。

フロー体験.gif
清水康太郎「ベンチャー企業で働く人たちのモチベーション」

【2203】 ○ ジャック・コヴァート/トッド・サッターステン (庭田よう子:訳) 『アメリカCEOのベストビジネス書100』 (2009/11 講談社)

【2298】 ○ 水野 俊哉 『明日使える世界のビジネス書をあらすじで読む』 (2014/04 ティー・オーエンタテインメント)

《読書MEMO》
●著者のフロー関連本(出版順)
・Beyond Boredom and Anxiety: Experiencing Flow in Work and Play 1975
・The Meaning of Things: Domestic Symbols and the Self 1981
・Optimal Experience: Psychological studies of flow in consciousness 1988
・Flow: The Psychology of Optimal Experience 1990
・The Evolving Self 1994
・Creativity: Flow and the Psychology of Discovery and Invention 1996
・Finding Flow: The Psychology of Engagement with Everyday Life 1997
・Flow in Sports: The keys of optimal experiences and performances 1999
・Good Work: When Excellence and Ethics Meet 2002
・Good Business: Leadership, Flow, and the Making of Meaning 2002
●内、邦訳が入手可能なもの
・Beyond Boredom and Anxiety: Experiencing Flow in Work and Play 『楽しみの社会学』
・The Meaning of Things: Domestic Symbols and the Self 『モノの意味』
・Flow: The Psychology of Optimal Experience 『フロー体験 喜びの現象学』
・Finding Flow: The Psychology of Engagement with Everyday Life 『フロー体験入門』
・Flow in Sports: The keys of optimal experiences and performances 『スポーツを楽しむ フロー理論からのアプローチ』
・Good Business: Leadership, Flow, and the Making of Meaning 『フロー体験とグッドビジネス』

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奇を衒わずオーソドックス、マトモすぎてインパクトがやや弱い?

入社1年目の教科書1.jpg入社1年目の教科書.jpg入社1年目の教科書3.jpg
入社1年目の教科書』(2011/05 ダイヤモンド社)

 ライフネット生命保険の代表取締役社長兼COOによる本で、この本を書いている時点ではまだ副社長ですが、ここまでの経歴がスゴイ。東大在学中に司法試験に合格して、ボストン・コンサルティング・グループなどを経て米国留学。ハーバード経営大学院(HBS)を修了し、帰国後ライフネット生命保険設立に参画と...(その後'13年に35歳の若さで社長に就任している)。

入社1年目の教科書2.jpg 学校を卒業して社会人となる人、またはなって間もない人のための仕事術集のような本で、こうした経歴の人の書いた本って結構ムチャなことが書いてあったりするのではないかと思いましたが、読んでみたらマトモで、ネットなどの書評でも好評のようです。

 仕事における3つの原則として「頼まれたことは、必ずやりきる」「50店で構わないから早く出せ」「つまらない仕事はない」を挙げており、仕事術というより仕事に対する心構え、社会人生活の送り方に対する指南書といった方がいいかも。啓発書的要素が大きいので、読む人によって相性はあるかと思いますが、まあまあマトモな線をいっているように思いました。

入社1年目から「できる人になる」43の考え方.jpg 奇を衒わずオーソドックス、マトモすぎてインパクトが弱い面もありますが、個人的には「速読するな」「新聞は2紙以上、紙で読め」といったところが自分の感覚には馴染みました。この手の本で、全く逆の事が書かれているものもあります。例えば、安田 正 著『一流役員が実践してきた入社1年目から「できる人になる」43の考え方』('14年/ワニブックス)には、「新聞も雑誌も読まずに検索しろ」とありますが、「読まずに検索」するだけで情報収集するというのも結構たいへんなのではないかと...(この「一流役員が実践して...」シリーズは、Amazon.comで毎回身内のレビュアーを何人も投入して作為的に5つ星評価にしているのが却って信頼感を損ねている)。

 ライフネット生命保険は、会長の出口治明氏が読書家で知られ、その薫陶を受けてか、著者も巻末に「僕がおすすめする本」を12冊挙げていますが、ケインズの『雇用・利子および貨幣の一般理論』や司馬遼太郎の『坂の上の雲』などに混じって出口氏の『百年たっても後悔しない仕事のやり方』を挙げているのは自分の親分だから仕方がないにしても、『生命保険のカラクリ』『ネットで生保を売ろう!』とういう自著2冊が、この12冊の中に含まれているのはいかがなものでしょうか(この点で星半個マイナス)。

 出口氏の近著『ビジネスに効く最強の「読書」』('14年/日経BP社)と比べれば分かりますが、「本」を紹介するということに関してはまだまだ出口氏の足元にも及ばないのではないでしょうか(しかし、ライフネットは経営者が啓発書を書くことが事業戦略の1つになっているのか? 一体、現社長と前社長で何冊書いている?)。

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全部読めるかどうかはともかく、こういう本もあるのだなあと知っておくだけでもいいのでは。

ビジネスに効く最強の「読書」.jpg
 
 
 
 
 

ビジネスに効く最強の「読書」 本当の教養が身につく108冊』(2014/06 日経BP社)

 読書家で知られるライフネット生命の会長兼CEOの出口治明氏による本の紹介。2012年10月から「日経ビジネスオンライン」に連載されたものを、連載が1年半続き、取り上げた本も100冊を超えたところで1冊の本にまとめたものであるとのことです。企業経営者として執筆の時間が取れないため当初は連載を断ったところ、女性編集者から対談(取材)を編集サイドでまとめるということでどうかとの提案があって連載が始まったとのことで、所謂「聞き語り」のような感じでしょうか(養老孟司氏の『バカの壁』シリーズもこのスタイル)。その意味では、半分は編集者が作った本とも言えますが、それでも永年の読書経験を通しての本に関する膨大な知識、引き出しの多さはこの人ならの水準です。

 経団連が毎年出している『新入社員に贈る一冊』などもそうですが、本書も、「ビジネスに効く」といってもノウハウ本などを排してるのは勿論のこと、ビジネス書自体も殆どありません。そういった意味では、「本当の教養本」ばかりと言えるでしょうか。個人の選評乃至コメント集なので、本の選び方が、世界史や日本史など歴史ものが多く(紀行ものも多い)、自然科学系はやや少なくて、文学関係とか小説は無いといった、出口氏の指向に沿ったウエィトになっていますが、これはこれで特徴が出ていていいと思いました。

 歴史関係などでは結構マニアックというか専門的な本もありますが、自ら本オタク、本フェチを自称しているだけに、これも納得。コラムによれば、社宅に本が溢れる事態になって、頭を保有から貸借に切り替え、ロンドン赴任を機に蔵書を売り払ったとのこと。また、ライフネットを創業するまでは書店通いしていたのが、創業準備で時間が取れなくなって、新聞の書評で本を探して、パソコンで近くの図書館に予約を入れる方式に切り替えたとのことで、これもナルホドね、と言う感じです(企業のトップでも自宅付近の図書館を使っていたりするのだあ)。

 道理でどこかでタイトルだけは見たことがある本が多いなあと思ったら新聞の日曜日の書評欄だったのかあ。あれ、結構レベル高かったりして、専門家以外に誰が読むのだろうという本もありますが、読んでいる人は読んでいるのだなあと。見ていくと、歴史関係などでは一部数千円もするような比較的高価な本も紹介されていますが、全体では新書であったり文庫化されているものが結構多く紹介されていて、学術系でも講談社学術文庫などになっているものだったりして、その辺りは一般読者に配慮したのでしょうか。

 全体を通しても(これは編集者の技量によるところもあるかと思うが)関連ある本を並べてそのポイントや特徴を平易にまとめているため読み易く、意外とペダンティックな印象はなく、むしろ選評者の飽くなき好奇心、知的探求心の発露がうかがえるものとなっています。全部読めるかどうかはともかく、こういう本もあるのだなあと知っておくだけでもいいのでは。

《本書で紹介されている本》(コラム部分で紹介されているものを一部除く)

1.リーダーシップを磨くうえで役に立つ本
ローマ政治家伝I カエサル.jpg ローマ政治家伝II ポンペイウス.jpgガリア戦記 (岩波文庫).jpgローマ人の物語 (1).jpgプルターク英雄伝(全12冊セット) (岩波文庫).jpg採用基準 伊賀.jpg新版 指輪物語 全10巻セット (評論社文庫).jpg君主論 (岩波文庫).jpg●マティアス・ゲルツァー『ローマ政治家伝I カエサル』『ローマ政治家伝II ポンペイウス』名古屋大学出版会/●カエサル『ガリア戦記 (岩波文庫 青407-1)』/●塩野 七生『ローマ人の物語 (1) ― ローマは一日にして成らず(上) (新潮文庫)』/●『プルターク英雄伝(全12冊セット) (岩波文庫)』/●伊賀 泰代『採用基準』ダイヤモンド社/●J.R.R. トールキン『文庫 新版 指輪物語 全10巻セット (評論社文庫)』/●ニッコロ マキアヴェッリ『君主論 (岩波文庫)
  
2.人間力を高めたいと思うあなたに相応しい本
韓非子 (第1冊) (岩波文庫).jpgブッデンブローク家の人びと.jpg夏の砦 (文春文庫).jpg王書.jpgチェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷 (新潮文庫).jpgドン・キホーテのごとく―セルバンテス自叙伝〈上〉.jpg 朗読者 (新潮文庫).jpg 供述によるとペレイラは....jpg白い城.jpg●韓非『韓非子 (第1冊) (岩波文庫)』/●トーマス マン 『ブッデンブローク家の人びと〈上〉 (岩波文庫)』/●辻 邦生『夏の砦 (文春文庫)』 /●フェルドウスィー『王書―古代ペルシャの神話・伝説 (岩波文庫)』/●塩野 七生『チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷 (新潮文庫)』/●スティーヴン マーロ 『ドン・キホーテのごとく―セルバンテス自叙伝〈上〉』文藝春秋/●ベルンハルト シュリンク『朗読者 (新潮文庫)』/●アントニオ タブッキ『供述によるとペレイラは... (白水Uブックス―海外小説の誘惑)』白水社/●オルハン パムク『白い城』藤原書店
  
3.仕事上の意思決定に悩んだ時に背中を押してくれる本
脳には妙なクセがある.jpg貞観政要 上.jpg宋名臣言行録.jpg戦争論〈上〉.jpg自分のアタマで考えよう.jpg宇宙は本当にひとつなのか.jpg宇宙論と神.jpgバウドリーノ(上).jpg西遊記〈1〉 (岩波文庫).jpg三國志逍遙.jpg預言者.jpg●池谷 裕二『脳には妙なクセがある (扶桑社新書)』扶桑社/●原田 種成『貞観政要 上 新釈漢文大系 (95)』明治書院/●梅原 郁『宋名臣言行録 (中国の古典)』講談社/●クラウゼヴィッツ『戦争論〈上〉 (岩波文庫)』/●ちきりん『自分のアタマで考えよう』ダイヤモンド社/●村山 斉『宇宙は本当にひとつなのか―最新宇宙論入門 (ブルーバックス)』/●池内 了『宇宙論と神 (集英社新書)』/●ウンベルト・エーコ『バウドリーノ(上)』岩波書店/●『西遊記〈1〉 (岩波文庫)』/●中村 愿 安野 光雅 『三國志逍遙』山川出版社/●カリール ジブラン 佐久間 彪『預言者』至光社

4.自分の頭で未来を予測する時にヒントになる本
2052 今後40年のグローバル予測.jpg2050年の世界 英『エコノミスト』誌は予測する.jpg第五の権力--Googleには見えている未来.jpgユートピア (岩波文庫).jpg一九八四年 新訳版.jpgすばらしい新世界.jpg迷宮に死者は住む2.jpg地図と領土 (単行本).jpg●ヨルゲン・ランダース『2052 今後40年のグローバル予測』/●英エコノミスト』編集部『2050年の世界―英『エコノミスト』誌は予測する』文藝春秋/●エリック・シュミット ジャレッド・コーエン『第五の権力---Googleには見えている未来』ダイヤモンド社/●トマス モア 『ユートピア (岩波文庫 赤202-1)』/●ジョージ・オーウェル『一九八四年[新訳版] (ハヤカワepi文庫)』/●ハックスリー『すばらしい新世界 (講談社文庫)』/●ハンス・ゲオルク・ヴンダーリヒ『迷宮に死者は住む―クレタの秘密と西欧の目覚め (1975年)』新潮社/●ミシェル ウエルベック『地図と領土 (単行本)』筑摩書房

5.複雑な現在をひもとくために不可欠な本
アンダルシーア風土記.jpg気候で読み解く日本の歴史.jpg歴史 上 (岩波文庫 青 405-1).jpg史記列伝 全5冊 (岩波文庫).jpgイタリア絵画史.jpg日本のピアノ100年.jpg国宝神護寺三像とは何か.jpgモンゴル帝国の興亡 (講談社現代新書).jpg完訳 東方見聞録.jpg1940年体制(増補版).jpg昭和史 1926-1945.jpg敗北を抱きしめて 上 増補版.jpg〈民主〉と〈愛国〉.jpg●永川 玲二『アンダルシーア風土記』岩波書店/●田家 康『気候で読み解く日本の歴史―異常気象との攻防1400年』日本経済新聞出版社/●ヘロドトス『歴史 上 (岩波文庫 青 405-1)』/●司馬遷『史記列伝 全5冊 (岩波文庫)』/●ロベルト ロンギ『イタリア絵画史』筑摩書房/●前間 孝則 岩野 裕一『日本のピアノ100年―ピアノづくりに賭けた人々』草思社/●黒田 日出男『国宝神護寺三像とは何か (角川選書)』/●杉山 正明『モンゴル帝国の興亡<上> (講談社現代新書)』/●マルコ ポーロ『完訳 東方見聞録〈1〉 (平凡社ライブラリー)』/●野口 悠紀雄『1940年体制(増補版) ―さらば戦時経済』東洋経済新報社/●半藤 一利『昭和史 1926-1945 (平凡社ライブラリー)』/●ジョン ダワー『敗北を抱きしめて 上 増補版―第二次大戦後の日本人』岩波書店/●小熊 英二『〈民主〉と〈愛国〉―戦後日本のナショナリズムと公共性』新曜社
  
6.国家と政治を理解するために押さえるべき本
田中角栄 - 戦後日本の悲しき自画像.jpg首相支配 日本政治の変貌.jpg変貌する民主主義 (ちくま新書).jpg職業としての政治 (岩波文庫).jpg人間の条件 (ちくま学芸文庫).jpg政治思想論集 (ちくま学芸文庫).jpg小説フランス革命11 徳の政治.jpg物語 フランス革命―バスチーユ陥落からナポレオン戴冠まで.jpgフランス革命の省察.jpgアメリカのデモクラシー.jpgトクヴィルが見たアメリカ 現代デモクラシーの誕生.jpg世界をゆるがした十日間〈上〉 (岩波文庫).jpgワイルド・スワン(上) (講談社文庫).jpg●早野 透『田中角栄 - 戦後日本の悲しき自画像 (中公新書)』/●竹中 治堅『首相支配-日本政治の変貌 (中公新書)』/●森 政稔『変貌する民主主義 (ちくま新書)』/●マックス ヴェーバー『職業としての政治 (岩波文庫)』/●ハンナ アレント『人間の条件 (ちくま学芸文庫)』/●カール シュミット『政治思想論集 (ちくま学芸文庫)』/●佐藤 賢一『小説フランス革命11 徳の政治 (小説フランス革命 11)』集英社/●安達 正勝『物語 フランス革命―バスチーユ陥落からナポレオン戴冠まで (中公新書)』/●エドマンド・バーク『フランス革命の省察』みすず書房/●トクヴィル『アメリカのデモクラシー (第1巻上) (岩波文庫)』/●レオ ダムロッシュ『トクヴィルが見たアメリカ: 現代デモクラシーの誕生』白水社/●ジョン リード 『世界をゆるがした十日間〈上〉 (岩波文庫)』/●ユン チアン『ワイルド・スワン(上) (講談社文庫)
  
7.グローバリゼーションに対する理解を深めてくれる本
ペルリ提督日本遠征記〈第1〉 岩波.jpgペリー.jpg大君の通貨.jpg近代世界システムI.jpgクアトロ・ラガッツィ (上).jpgモンゴル帝国が生んだ世界図.jpg黒いアテナ.jpgベネディクト・アンダーソン グローバリゼーションを語る.jpg定本 想像の共同体.jpg社会心理学講義.jpg増補 民族という虚構.jpg戦後世界経済史.jpg マッキンダーの地政学.jpgマハン海上権力史論.jpg海洋国家日本の構想.jpg世界正義論.jpg●ペルリ『ペルリ提督日本遠征記〈第1〉 (1953年) (岩波文庫)』/●佐藤 賢一『ペリー』角川書店(角川グループパブリッシング) /●佐藤 雅美『大君の通貨―幕末「円ドル」戦争 (文春文庫)』/●I. ウォーラーステイン 『近代世界システムI―農業資本主義と「ヨーロッパ世界経済」の成立―』名古屋大学出版会/若桑 みどり『クアトロ・ラガッツィ (上) 天正少年使節と世界帝国 (集英社文庫)』/●宮 紀子『モンゴル帝国が生んだ世界図 (地図は語る)』日本経済新聞出版社/●マーティン・バナール『黒いアテナ―古典文明のアフロ・アジア的ルーツ (2〔上〕)』藤原書店/●梅森 直之『ベネディクト・アンダーソン グローバリゼーションを語る (光文社新書)』/●ベネディクト・アンダーソン『定本 想像の共同体―ナショナリズムの起源と流行 (社会科学の冒険 2-4)』書籍工房早山/●小坂井 敏晶『増補 民族という虚構 (ちくま学芸文庫)』/●小坂井敏晶『社会心理学講義:〈閉ざされた社会〉と〈開かれた社会〉 (筑摩選書)』/●猪木 武徳『戦後世界経済史―自由と平等の視点から (中公新書)』/●ハルフォード・ジョン マッキンダー『マッキンダーの地政学―デモクラシーの理想と現実』原書房/●アルフレッド・T・マハン『マハン海上権力史論(新装版)』原書房/高坂 正堯『海洋国家日本の構想 (中公クラシックス)』/●井上 達夫『世界正義論 (筑摩選書)
  
8.老いを実感したあなたが勇気づけられる本
生物学的文明論 (新潮新書).jpg老い 上 (新装版).jpg決定版 第二の性〈1〉.jpgおひとりさまの老後 (文春文庫).jpgハロルド・フライの思いもよらない巡礼の旅.jpgブッダのことば―スッタニパータ.jpg生と死の接点.jpg5 (ファイブ) 5年後、あなたはどこにいるのだろう.jpg●本川 達雄『生物学的文明論 (新潮新書)』/●シモーヌ・ド ボーヴォワール 『老い 上 (新装版)』人文書院/●ボーヴォワール『決定版 第二の性〈1〉事実と神話 (新潮文庫) 』/●上野 千鶴子『おひとりさまの老後 (文春文庫)』/●レイチェル・ジョイス『ハロルド・フライの思いもよらない巡礼の旅』/●『ブッダのことば―スッタニパータ (岩波文庫)』/●河合 隼雄『生と死の接点』岩波書店/●ダン・ゼドラ『5 (ファイブ) 5年後、あなたはどこにいるのだろう? 』海と月社

  
9.生きることに迷った時に傍らに置く本
アルケミスト―夢を旅した少年.jpg君たちはどう生きるか.jpg幸福論 (岩波文庫).jpgラッセル幸福論 (岩波文庫).jpgニコマコス倫理学〈上〉.jpgルバイヤート.jpg幸福な王子―ワイルド童話全集 (新潮文庫).jpg男性論 ECCE HOMO.jpg●パウロ コエーリョ 『アルケミスト―夢を旅した少年 (角川文庫―角川文庫ソフィア)』/●吉野 源三郎『君たちはどう生きるか (岩波文庫)』/アラン『幸福論 (岩波文庫)』/●B. ラッセル『ラッセル幸福論 (岩波文庫)』/●アリストテレス『ニコマコス倫理学〈上〉 (岩波文庫)』/●オマル・ハイヤーム『ルバイヤート (岩波文庫 赤 783-1)』/●オスカー ワイルド『幸福な王子―ワイルド童話全集 (新潮文庫)』/●ヤマザキ マリ 『男性論 ECCE HOMO (文春新書 934)


  
10.新たな人生に旅立つあなたに捧げる本
何でも見てやろう.jpg深夜特急.jpgグレートジャーニー 人類5万キロの.jpg大唐西域記.jpgイタリア紀行 上.jpg三大陸周遊記 抄.jpgイブン・ジュバイルの旅行記.jpgインド日記―牛とコンピュータの国から.jpgスペイン旅行記 ――カレル・チャペック旅行記コレクション.jpg中国奥地紀行.jpg朝鮮紀行.jpg●小田 実『何でも見てやろう (講談社文庫)』/●沢木 耕太郎『深夜特急〈1〉香港・マカオ (新潮文庫)』/●関野 吉晴『グレートジャーニー 人類5万キロの旅 1 嵐の大地パタゴニアからチチカカ湖へ (角川文庫) 』/●玄奘『大唐西域記〈1〉 (東洋文庫)』/●ゲーテ『イタリア紀行(上) (岩波文庫 赤405-9)』/●イブン・バットゥータ『三大陸周遊記 抄 (中公文庫BIBLIO)』/●イブン・ジュバイル『イブン・ジュバイルの旅行記 (講談社学術文庫)』/●小熊 英二『インド日記―牛とコンピュータの国から』新曜社/●カレル・チャペック『スペイン旅行記―カレル・チャペック旅行記コレクション (ちくま文庫)』/●イザベラ・L バード 『中国奥地紀行〈1〉 (東洋文庫)』/●イザベラ・バード『朝鮮紀行〜英国婦人の見た李朝末期 (講談社学術文庫)

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若い人に向けて分かり易く語っている。古さを感じさせないのはスゴイことかも。

社員稼業 新書1.jpg 社員稼業 新書2.jpg  社員稼業 新版.jpg 社員稼業 旧版.jpg
社員稼業 仕事のコツ・人生の味 PHPビジネス新書 松下幸之助ライブラリー』『[新装版]社員稼業』『社員稼業―仕事のコツ人生の味 (PHPブックス)』['74年]

 松下幸之助(1894-1989/享年94)が社内外で行った講話を5話収めており、第一話「生きがいをどうつかむか」が昭和45年に朝日ゼミナールとして行われたものである以外は、第二話「熱意が人を動かす」が昭和34年の松下電器大卒定期採用者壮行会、第三話「心意気を持とう」が松下電器寮生大会、第四話「何に精魂を打ち込むのか」が昭和38年の大阪府技能大会、第5話「若き人びとに望む」が同じく昭和38年の郵政省近畿管内長期訓練生研修会での話と、何れも昭和30年代のもとなっています(松下幸之助は昭和36年に社長を退き、会長に就任しているが、会長職を退いたのは昭和48年、80歳の時だった)。

 本書を読むと、若い人に向けて分かり易く話すのが上手だったのだなあという気がしますが(元々そうした話をするのが好きだった?)、当時の若い人たちは、すでに「経営の神様」と呼ばれていた松下幸之助の話をどのような思いで聴いたのでしょうか。

自分自身、PHPから単行本で出されている松下幸之助の講話集はこれまでそれほどじっくり読んだことはなかったのですが(本書も昭和49年10月PHP研究書刊の単行本がオリジナル)、新書になったのを機に読んでみると、意外と今に通じる普遍性があって古さを感じさせず、さすが松下幸之助という感じです。

 とりわけ本書は「社員稼業」という言葉が特徴的で、松下幸之助の説く「社員稼業」とは、「たとえ会社で働く一社員の立場であっても、社員という稼業、つまり一つの独立した経営体の経営者であるという、一段高い意識、視点を持ってみずからの仕事に当たる」という生き方を指します。

 今風に言えば、プロフェッショナルとか、アントレプレナーとか、インディペンダント・コントラクターとか、いろんなものがこの概念に当てはまるのではないでしょうか。松下幸之助が自社の社員に向けてこうした話をするというのは、そのことが社員の独立を促して辞める社員が続出しそうな気もしますが(松下幸之助自身が企業を辞めて独立して会社を起こしたわけだが)、当時は「終身雇用」が守られていて、ましてや松下電器という大企業(既に数万人の従業員がいた)に就職したということでつい安心感に浸ってしまいがちで、こうした話をしないと、自らは何もせず指示待ちの、雇われ根性の社員ばかりになってしまうという危惧が松下幸之助にあったのではないかと思われます。

 結果として、今現在にも通じる話になっているわけですが、この外にも、今風に言えば「ワーク・ライフ・バランス」(松下は昭和40年、日本の大手企業で最初に完全週休2日制を導入している)、「CSR」(どの講話にも「松下電器は社会の公器である」といった話が出てくる)、「フォロワー・シップ」(本書の中で「上司を使う人間になれ」と言っている)に該当する話が出てきて、そうした意味でも古さを感じさせないのはスゴイことかもしれません。

 個人的には、織田信長の長所や、信長対する明智光秀と豊臣秀吉の態度の違いについて述べているところなどが興味深かったですが、非常に日本人の感性に訴えるような話し方をするなあという印象があります。

 リーダーシップの泰斗ジョン・コッタ―が、それまで松下幸之助について全く知らなかったのが、ハーバード・ビジネス・スクールで自分の担当する講座が松下幸之助記念講座(松下による寄付講座)であったこと契機に、幸之助について調べてみると、自分がこれから大学で教えようとしていることを既に幸之助が繰り返し述べていることに驚き、『幸之助論』を著すに至ったというのは有名な話です。

 日本の場合、マネジメントとかリーダーシップとかの「理論」の部分は殆ど「輸入品」だと思うのですが、それゆえに日本人の感性に合わない部分もあるように思え、しかしながら、例えば松下幸之助のこうした話などによって、同じような考えが働く人に浸透していったという経緯はあるのかもしれません。今回初めて松下幸之助の講話本を読んだのですが、単に「経営の神様」による訓話ということだけでなく、「輸入品」である「理論」を、日本的な観点から見直すという意味での効用もあるように思いました。

【1974年単行本[PHP研究所]/1991年文庫化[PHP文庫]/2009年新装版[PHP研究所]/2014年新書化[PHPビジネス新書 松下幸之助ライブラリー]】

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全否定はしないが、「自己啓発ポルノ(キャリアポルノ)」の一種か。

小玉 歩 『仮面社畜のススメ』 .jpg仮面社畜のススメ (一般書)』(2013/12 徳間書店)

 著者の略歴(自己PR?)を見ただけで既に大いに胡散臭そうなのに、Amazon.comのブックレビューで意外と本書を推す人が多かったのには驚きましたが、個人的にはこの本は、谷本真由美氏が言うところの「キャリアポルノ」の典型ではないかと思いました。「自己啓発ポルノ」と言ってもいいかな。

 ビジネスパーソンは自分なりの考えや価値観、行動指針を持つべきでしょうが、実際のビジネスの場面においては状況対応型になるのが普通でしょう。リーダーシップ理論だって、あるべきリーダー像を唯一のものとする「特性論」は廃れ、50年前から「状況対応型」のリーダーシップ論が主流になっています。

 本書に書かれていることも、原則論で捉えれば、特段目新しいことでもないような内容が多く、但し、本書の危ういところは、ビジネス及び職場の実態や個別の状況に全くおかまいなしに、特定の形式やスタイルを押し付けている点で、その決めつけによって類書との差別化、影響力の強化を図っている点です。

 まあ、本書を読んで目からウロコが落ちたという人はそういないと思いますが、Amazon.comのブックレビューなどからみて、"我が意を得たり"と思ってしまった人は結構いたみたいです。でも、ここに書いてあることは全てが実行可能とは思えないし(逆に出来ることは既にやっているだろうし)、この本を読んだ人が明日から新たに本書にある通りに行動するかどうかも疑わしいです。

 考えなしに実行すれば(そんなこをする人も出来る人も殆どいないと思うが)、結局は著者と同じように会社をクビになるかも。この本、服務規律違反で会社をクビになった人物が書いていることに留意すべきでしょうね。

 ブラック企業と思われる会社に入ってしまった人が指南書として読むつもりならば、こんな本読んで「仮面」を気取ってその会社にしがみついているよりは、早目に自らのキャリア発達が可能な場を他所(よそ)に探した方が良いように思います。

 書かれていることを全否定はしませんが、読むことによって(ある人にとっては)その間ドーパミンが出続け、それで読み終わって暫くしたら後には何も残っていない―「消費されるだけの本」という意味で、やはり「自己啓発ポルノ」の一種、その典型でしょう。

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読み物としても楽しいが、異文化論に止まらず、対処法を具体的に示している点でビジネス書としても優れモノで。

外国人社員の証言 日本の会社40の弱点.jpg外国人社員の証言 日本の会社40の弱点 (文春新書 945)

 本書は、日本企業に勤務する外国人社員向けに研修や講演を行っている著者が、17ヵ国40人から相談された日本企業の困った事例を紹介し、その解決法を示したものであり、外国人社員と日本人社員の「常識」の違いを物語る40の実例が紹介されています。

 「職場のコミュニケーション編」「ビジネス日本語編」「マネジメント・チームワーク編」「悩める上司編」「就職活動・キャリア編」の5章から成り、例えば「職場のコミュニケーション編」では、中国に進出した日系アパレルメーカーに勤める40代の中国人男性が、日本人店長から7月7日に新規店のオープニングセレモニーを開くと聞いて激怒した―中国でも七夕はあるが、7月7日は盧溝橋事件が起きた日で、国内が反日一色染まるから―、「お客様は神様だ」という日本人上司のコメントが納得できない(インドネシア人)―イスラム教は一神教であり、お客は神ではありえないから―、部長に指示を仰いだら瞑想をはじめてしまった(イギリス人)、居酒屋で反対意見を述べて以来、同期とギクシャクしている(中国人)といったような事例が紹介されています。

 外国人社員の悩みや疑問に回答するという形を取りながら、そのまま、われわれ日本人が様々なビジネスシーンで常日頃当たり前のように思っている発言や行動が、外国人にとっては理解不能であったり奇異に感じられたりする場合があることを知らしめるものとなっており、そうした「認識のズレ」が、外国人との仕事を円滑に進めるうえでの障害となり得ることを改めて思い知らされました。

 著者は、グローバル・マネジメントは単なる価値観や精神論ではなく、その実現には、マネジメントする側である日本人管理職によるグローバル対応力の強化がポイントとなるとしています。そのうえで、国籍や性別などによって異なる考え方や行動パターンなどの異文化を企業競争力に転換するステップとして、①外国人社員の適応(理解→信頼)②ライン・マネジメントの高度化(信頼→提案)③知識移転(提案→展開)④制度の高度化(展開→深化)⑤組織改革(深化→文化)という5つのフェーズを示していますが、本書では主に「認識のズレ」にいかに対応するかという①のフェーズにフォーカスしています。

外国人社員の証言 日本の会社40の弱点 3.jpg 本書を読んで、その最初のフェーズというのが意外と重要であり、また多くのビジネスパーソンが悩んでいる部分ではないかと思いました。ただし、ポイントを押さえておけば、起こさなくてもよいトラブルは回避することができ、大切な時間や労力を本来業務に傾け、チームの生産性を上げることができるという思いにもさせられました。

 著者は、「違いを認識し、楽しむ」ことを目的としつつ、読者のグローバル対応力の強化につながればとの思いから本書を書いたとのことですが、その狙いの通り、読み物として読んでも楽しいものとなっています。ですから、今現在、外国人社員を部下に持っていない、あるいは外国人と一緒に仕事をしていない人が読んでも、最後まで飽きずに読めるのではないかと思います。ただし、単に異文化論に止まらず、事例に対する対処法を具体的に示しているという点では、ビジネス書としても優れモノではないでしょうか。新書で200ページ足らずと読みやすいのもいいです。
 
《読書MEMO》
●七夕の日に祝賀行事はありえない(中国人)... 日中戦争の発端・盧溝橋事件(1937年)が起きた日
●「お客様は神様?」納得できない(インドネシア人)... イスラム教は一神教
●なぜ上司を「牛みたい」と言ってはいけないのか(インド人)... インドでは牛は神聖さの象徴(中国では「まじめ」「愚直」「身を粉にして働く」の意)
●上司に相談すると、なぜ瞑想するかのように黙りこむのか?(イギリス人)
●プラスアルファ?初めて聞く英語(オーストラリア人)...「プラスアルファ」は和製英語(「最高!」→「Psycho」(精神病)、「あー、そう?」→「asshole」(肛門。嫌な奴)、「アホみたい」→「Aha! Hold me tight」(しっかり抱いて)
●「油断一秒、怪我一生」?(中国人)... 中国語では「一秒でも油を絶やすと一生責任を追及される」との意に。
●オフィスが好立地に移転するのは困る(ベトナム人)... 交通渋滞で通勤時間が大幅に増える
●社員同士で給与明細を見せ合うのは当然でしょ。(中国人)
●そろそろ出家したいのですが、有給休暇は取れますか?(タイ人)

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「上司学」「仕事術」という域にも達していない、毒にも薬にもならない「処世術」本。

上司は部下の手柄を奪え、部下は上司にゴマをすれ.jpg上司は部下の手柄を奪え、部下は上司にゴマをすれ 会社にしがみついて勝つ47の仕事術 (幻冬舎新書)

 景気回復期こそ企業はリストラを進めるということで、ビジネスパーソンの"リストラ防錆策"を説いた本が結構出されていますが、これも、「上司学」や「仕事術」の本というより、どちらかと言うとその手の本だったかも。少なくとも、「上司学」「仕事術」という域に達しておらず、毒にも薬にもならない「処世術」本という感じでした。

 第1章「上司は何を思う」、第2章「部下は何を願う」、第3章「組織人としての誇りと果たすべき役割」の3部構成ですが、第1章も含め、どちらかと言うと部下から見た視点で書かかれていて、そこから無理矢理、インパクトがありそうな項目をアイキャッチ的にタイトルにもってきた感じ。それも、「手柄はどんどん上司に渡そう」と部下の立場から書いてあるのであって、「上司は部下の仕事を奪え」なんて書いてないんだよなあ。

 「会社が提供してくれる安定やメリットを最大限に享受すべく努めることこそが、幸福な人生の第一歩」との考えのもと、「絶対にクビにならず会社人生をまっとうするための、忘れ去られた美徳ともいうべきマナーや義務を説いた」本であるとのことで、何となく"昭和"的な上司-部下関係の再構築を説いているマニュアル本みたいな印象でした。

 著者は、山一証券勤務時代に「シャインズ」を結成して(相方は杉村太郎(1963-2011/享年47)、その後、森永製菓に転職し、「東京プリン」を結成して森永の方は辞めるなど、会社員とアーティスト(?)を兼業したり、フリーで活動したりを繰り返しているような人で、この人自身は何度か会社を辞めているわけでしょ。「会社にしがみついて生きろ」と言っているこの人自身のアイデンティティがどうなっているのかよく解りません(会社を辞めてからよっぽどシンドイ思いをしたのか)。

 '13年7月の参院選挙で比例区から自由民主党公認で立候補して(安倍晋三首相の妻・昭恵夫人が森永製菓創業家の娘として伊藤と旧知だったことで公認を得られたらしい)、結局落選していますが、こうしたマニュアル本のような本を書いている人が、何のために国会議員になりたいのか、国会議員になって何をしたいのかもよく解らないね。選挙の前の、知名度アップ作戦だったのかな。

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本書そのものを味わってもいいのでは。紹介本へ読み進むうえでは、読み所や関連書籍をガイドしているのが丁寧。

The 100 Best Business Books of All Time.jpgアメリカCEOのベストビジネス書100.jpgアメリカCEOのベストビジネス書1002.jpg
アメリカCEOのベストビジネス書100』(2009/11 講談社)

 アメリカのビジネス専門誌書店「800-CEO-READ」の経営者らが、最高レベルのビジネス書と言えるものを100冊を選んで、第1章「まず、あなた自身から」から第12章「さわりで読む」まで12の章に分けて紹介したもので、1冊あたり3~5ページにわたってしっかり解説されているため、500ページを超える大著となっています。

"The 100 Best Business Books of All Time: What They Say, Why They Matter, and How They Can Help You"(2009)

『アメリカCEOのベストビジネス書100』.JPG 著者らによれば、2007年にアメリカで出版されたビジネス書の数は1万1千で、1冊ずつ積み重ねたら、9階建てのビルの高さに相当するとのことで、スゴイね。著者らがそれらの中からどういう基準で100冊を選んだかと言うと、まず「アイデアの質」を重視したとのことです。更に、「現代ビジネス社会で働く人にとって、そのアイデアが適用できるか」も重視し、最後に「読み易さ」を基準にしたとのことで、フレデリック・テーラーが20世紀の変わり目に提唱した「労働者は組織という機械における交換可能な歯車にすぎない」といった考え方は、現代は個人の多様性が職場に強みをもたらすという考え方に置き代わっているためテーラーは外し(個人的には、テーラーはそのことだけ言ったわけではないと思うが)、アダム・スミスの『国富論』などは、「読み易さ」重視の観点から外したとのことです(全体的には、所謂"準古典"系はあるが、ストレートな"古典"は取り上げていない)。

 経営学者による著書だけでなく、企業経営者によるものも幾つか含まれているのが特徴で(「伝記から選ぶ」という章がある)、但し、成功体験であっても現代の世の中で応用されにくいものは除外したとのこと、自己啓発的な本も若干含まれていますが(個人的にはあまり読まないなあ)、全体としてバランス良く、ドラッカーの著者を複数取り上げる中で『経営者の条件』などを紹介しているところなど、個人的には悪くないと思いました。

 著者のバックグランドやその本が書かれた経緯も述べられていて、ただ内容解説するだけでなく、著者らの観点から"書評"的に書かれている箇所もあり、本書自体が読み物として読めるようになっています。また、他の啓蒙家や経営思想家が述べていることと一致している点やそこから派生している点、或いは相反している点などの記述もあり、自ずと他の本と関連付けながら読めるのも本書の特長です。

 100冊も紹介されて、これだけでお腹一杯という印象もありますが、本書そのものを味わえばいいのではないかなあと。それで尚且つ、紹介されている本を読んでみたいと思えば読めばいいという感じでしょうか。本書によってその著書への関心が湧けば、著者のその他の本や同系の著者の本へと読み進んでいってもいいわけで、解説の終わりに「次に読むべきところは?」「さらに読むべき本は?」という項目で、解説した以外の読み所の箇所や同じ著者の関連書籍をガイドしているのも丁寧であると思いました。

 以下、紹介書籍の一部を示しますが、本の括り方(ジャンル分け)や小見出しの付け方にも工夫があるように思いました。

第1章 まず、あなた自身から
フロー体験 喜びの現象学1.jpg・忘我の境地こそフローの感覚 『フロー体験 喜びの現象学
・まず、必要な行動を明確にせよ 『ストレスフリーの整理術』
・リーダーにも新人にも必須のビジネス指南書 『経営者の条件 ドラッカー 旧版.jpg経営者の条件』 ほか
第2章 リーダーシップとは
・生まれながらのリーダーはいない 『リーダーになる』
・実話に学ぶリーダーシップの原則 『九つの決断』
・豊富なリサーチのもと「優れたリーダー像」を追求 『『リーダーシップ・チャレンジ』
・ハーマンミラーの元CEOが語る真のリーダーの意義 『響き合うリーダーシップ』 ほか
第3章 戦略を考える
・超優良企業の観察をもとに提言された時代を超える企業ビジョン『エクセレント・カンパニー』
・平均的企業が大きく飛躍する法則 『ビジョナリー・カンパニー2.jpgビジョナリー・カンパニー2
・IBM再建に見る戦略的措置 『巨象も踊る.jpg巨象も踊る
・目標達成には実行力が不可欠だ 『経営は「実行」 2010 - コピー.jpg経営は「実行」』ほか
第4章 販売とマーケティングのコツ
・セールスと消費における人間心理のメカニズム 『影響力の武器』
・モノと情報の過剰供給社会では「ポジショニングが不可欠だ」 『ポジショニング戦略』 ほか
第5章 ルールを知って、スコアをつける
・賢い人のための経済学入門 『裸の経済学』
・会計の基本ルールと問題点をわかりやすく示した書 『Financial Inteligence』 ほか
第6章 マネジメントは組織運営の要諦
・ドラッカー作品群の"ベスト盤" 『チェンジ・リーダーの条件』『プロフェッショナルの条件』『イノベーターの条件』
・徹底的にムダを排除する、トヨタの生産方式に学べ 『トヨタ生産方式』 ほか
第7章 伝記から学ぶ
・石油王ロックフェラーの貪欲かつ人道的な生涯 『タイタン(上・下)』
・GMの地位を引き上げた偉大な経営者の記録 『GMとともに』 ほか
第8章 起業家精神
・起業のノウハウを軽妙な語り口で説いた1冊 『起業成功マニュアル』
・スモールビジネスで成功する基本ルールとは 『はじめの一歩を踏み出そう』 ほか
第9章 物語(ナラティブ)
・厳格な戦略で築き上げたマクドナルドの成功物語 『マクドナルド』
・鉄鋼業界で生き残りをかけた、スリルとロマンあふれるストーリー 『鉄鋼サバイバル』 ほか
第10章 イノベーションと創造性
・アイデアを形にする「ベストプラクティス」の精神 『発想する会社!』
・創造的な自己発掘のための実践的ガイドブック 『A Whack on the Side of the Head.gif頭脳(あたま)を鍛える練習帳』 ほか
第11章 ビッグアイデアは未来に続く
・人々のライフスタイルはどのように変化していくのか 『ビジネスマン価値逆転の時代』
・コントロールを手放すことが進歩へのカギだ 『「複雑系」を超えて』 ほか
第12章 さわりで読む
・キャリアの移行期を乗り切る実用的な指針 『ハーバード・ビジネス式マネジメント』
・会社を再建させたCEOが語る経営のイロハと企業理念 『組織に活を入れろ』 ほか

《読書MEMO》
全100冊
YOU
 ・フロー体験 喜びの現象学 Mihaly Csikszentmihalyi  (Flow)
 ・はじめてのGTD ストレスフリーの整理術 David Allen(Getting Things Done:The Art of Stress-Free Productivity)
 ・経営者の条件 Peter F. Drucker  (The Effective)
 ・9つの黄金則 Robert E. Kelley  (How to Be a Star at Work)
 ・7つの習慣 Stephen R. Covey  (The 7 Habits of Highly Effective People)
 ・人を動かす Dale Carnegie  (How to Win Friends and Influence People)
 ・ビジネス人間学 Harvey Mackay  (Swim with the Sharks Without Being Eaten Alive)
 ・The Power of Intuition Gary Klein Ph.D.
 ・このつまらない仕事を辞めたら、僕の人生は変わるのだろうか?Po Bronson(What Should I Do with My Life?)
 ・きみの行く道 Dr.Seuss  (Oh, the Places You'll Go!)
 ・ビジネスマンに贈る最後の言葉 Eugene O'Kelly  (Chasing Daylight)
LEADERSHIP
 ・リーダーになる Warren Bennis  (On Becoming a Leader)
 ・九つの決断 Michael Useem   (The Leadership Moment)
 ・The Leadership Challenge James M. Kouzes, Barry Z. Posner
 ・響き合うリーダーシップ Max Depree  (Leadership Is an Art)
 ・LEAP! Steve Farber  (The Radical Leap)
 ・ジャック・ウェルチのGE革命 Noel M.Tichy, S. Sherman(Control Your Destiny or Someone Else Will)
 ・企業変革力 John P. Kotter  (Leading Change)
 ・Questions of Character Joseph L., Jr. Badaracco
 ・The Story Factor Annette Simmons
 ・Never Give In! Winston S. Churchill
STRATEGY
 ・エクセレント・カンパニー Thomas J. Peters, Robert H. Waterman  (In Search of Excellence)
 ・ビジョナリーカンパニー2 Jim Collins  (Good to Great)
 ・イノベーションのジレンマ Clayton M. Christensen  (The Innovator's Dilemma)
 ・インテルの戦略転換 Andrew S. Grove  (Only the Paranoid Survive)
 ・巨象も踊る Louis Gerstner  (Who Says Elephants Can't Dance?)
 ・成功企業のサービス戦略 Leonard L. Berry  (Discovering the Soul of Service)
 ・経営は「実行」 Larry Bossidy, Ram Charan  (Execution)
 ・コア・コンピタンス経営 Gary Hamel, C. K. Prahalad  (Competing for the Future)
SALES AND MARKETING
 ・影響力の武器 Robert B. Cialdini  (influence)
 ・ポジショニング戦略 Al Ries, Jack Trout  (Positioning)
 ・なぜみんなスターバックスに行きたがるのか? Scott Bedbury, Stephen Fenichell  (A New Brand World)
 ・逆転のサービス発想法 Harry Beckwith  (Selling the Invisible)
 ・ザグを探せ! Marty Neumeier  (ZAG)
 ・キャズム Geoffrey A. Moore  (Crossing the Chasm)
 ・販売成約120の秘訣 Zig Ziglar  (Secrets Of Closing The Sale)
 ・めざせ!レインメーカー Jeffrey J. Fox  (How to Become a Rainmaker)
 ・なぜこの店で買ってしまうのか Paco Underhill  (Why We Buy)
 ・経験経済 B. Joseph Pine, James H. Gilmore   (The Experience Economy)
 ・「紫の牛」を売れ! Seth Godin  (Purple Cow)
 ・急に売れ始めるにはワケがある Malcolm Gladwell  (The Tipping Point)
RULE AND SCOREKEEPING
 ・裸の経済学 Charles Wheelan  (Naked Economics)
 ・Financial Intelligence Karen Berman, Joe Knight
 ・バランス・スコアカード Robert S. Kaplan, David P. Norton  (The Balanced Scorecard)
MANAGEMENT
 ・チェンジ・リーダーの条件 Peter F. Drucker  (The Essential Drucker)
 ・プロフェッショナルの条件 Peter F. Drucker  (The Essential Drucker)
 ・イノベーターの条件 Peter F. Drucker  (The Essential Drucker)
 ・Out of the Crisis W. Edwards Deming
 ・トヨタ生産方式 大野 耐一  (Toyota Production System)
 ・リエンジニアリング革命 Michael Hammer, James Champy  (Reengineering the Corporation)
 ・ザ・ゴール Eliyahu M. Goldratt, Jeff Cox  (The Goal)
 ・その仕事は利益につながっていますか? Jack Stack  (The Great Game of Business)
 ・まず、ルールを破れ Marcus Buckingham, Curt Coffman  (First, Break All The Rules)
 ・さあ、才能(じぶん)に目覚めよう Marcus Buckingham, Donald O. Clifton(Now, Discover Your Strengths)
 ・実行力不全 Jeffrey Pfeffer, Robert I. Sutton  (The Knowing-Doing Gap)
 ・あなたのチームは、機能してますか? Patrick M. Lencioni  (The Five Dysfunctions of a Team)
 ・会議が変わる6つの帽子 Edward de Bono  (Six Thinking Hats)
BIOGRAPHIES
 ・タイタン〈上・下〉 Ron Chernow  (Titan)
 ・GMとともに Alfred Sloan  (My Years with General Motors)
 ・HPウェイ David Packard  (The HP Way)
 ・キャサリン・グラハム わが人生 Katharine Graham  (Personal History)
 ・真実の瞬間 Jan Carlzon  (Moments of Truth)
 ・私のウォルマート商法 Sam Walton  (Sam Walton)
 ・ヴァージン―僕は世界を変えていく Richard Branson  (Losing My Virginity)
ENTREPRENEURSHIP
 ・完全網羅 起業成功マニュアル Guy Kawasaki  (The Art of the Start)
 ・はじめの一歩を踏み出そう Michael E. Gerber  (The E-Myth Revisited)
 ・The Republic of Tea Mel Ziegler, etc.
 ・The Partnership Charter David Gage
 ・ビジネスを育てる Paul Hawken  (Growing a Business)
 ・Guerrilla Marketing Jay Conrad Levinson
 ・ランディ・コミサー Randy Kosimar  (The Monk and the Riddle)
NARRATIVE
 ・マクドナルド John F. Love  (McDonald's)
 ・American Steel Richard Preston
 ・いまだ目標に達せず David Dorsey  (The Force)
 ・The Smartest Guys in the Room Bethany McLean, Peter Elkind
 ・最強ヘッジファンドLTCMの興亡 Roger Lowenstein  (When Genius Failed)
 ・マネー・ボール Michael Lewis  (Moneyball)
INNOVATION AND CREATIVITY
 ・Orbiting the Giant Hairball Gordon MacKenzie
 ・発想する会社! Thomas Kelley  (The Art of Innovation)
 ・Jump Start Your Business Brain Doug Hall
 ・頭脳(あたま)を鍛える練習帳 Roger von Oech  (A Whack on the Side of the Head)
 ・クリエイティブな習慣 Twyla Tharp  (The Creative Habit)
 ・チャンスを広げる思考トレーニング Rosamund Stone Zander, Benjamin Zander (The Art of Possibility)
BIG IDEAS
 ・ビジネスマン価値逆転の時代 Charles Handy  (The Age of Unreason)
 ・「複雑系」を超えて Kevin Kelly  (Out Of Control)
 ・クリエイティブ資本論 Richard Florida  (The Rise of the Creative Class)
 ・EQ―こころの知能指数 Daniel Goleman  (Emotional Intelligence)
 ・Driven Paul R. Lawrence, Nitin Nohria
 ・人はだれでもエンジニア Henry Petroski  (To Engineer Is Human)
 ・「みんなの意見」は案外正しい James Surowiecki  (The Wisdom of Crowds)
 ・アイデアのちから Dan Heath, Chip Heath  (Made to Stick)
TAKEAWAYS
 ・ハーバード・ビジネス式マネジメント Michael Watkins  (The First 90 Days)
 ・組織に活を入れろ Robert C. Townsend  (Up the Organization)
 ・Beyond the Core Chris Zook
 ・営業の赤本 Jeffrey Gitomer  (Jeffrey Gitomer's Little Red Book of Selling)
 ・ビジネスの極意は、インドの露天商に学べ! Ram Charan  (What the CEO Wants You to Know)
 ・The Team Handbook Barbara J. Streibel, Brian L. Joiner, Peter R. Scholtes
 ・IBMを世界的企業にしたワトソンJr.の言葉 Thomas J., Jr. Watson  (A Business and Its Beliefs)
 ・セレンディピティ Bo Peabody  (Lucky or Smart?)
 ・レクサスとオリーブの木(上・下) Thomas L. Friedman  (The Lexus and the Olive Tree)
 ・アイデアのおもちゃ箱 Michael Michalko  (Thinkertoys)
 ・投資の科学 Michael J. Mauboussin  (More Than You Know)

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「●本・読書」の インデックッスへ

紙質もレイアウトもいい。選本も要所を押さえていて、解説もこなれている。

世界で最も重要なビジネス書.jpg世界で最も重要なビジネス書 .JPG 『世界で最も重要なビジネス書 (世界標準の知識 ザ・ビジネス)』['05年/ダイヤモンド社]

 全350ページの中で、ビジネス名著77冊を、「思想と人間」「戦略と理論」「マネジメントと組織」の3部に分け、1冊あたり4ページから5ページを割いて紹介し紹介・解説しています。

 ダイヤモンド社編となっていますが、英国ブルームズベリー社(確か「ハリー・ポッター」シリーズの版元のはず)のオリジナルの文章にダイヤモンド社の編集者が類書紹介(エディターズ・チョイス)を追加したもので、取り上げている本は『国富論』(アダム・スミス)、『資本論」(マルクス)、『君主論』(マキャベリ)などの歴史的書物から、『人を動かす』(カーネギー)、『現代の経営』(ドラッカー)などの古典的ビジネス書、『ビジョナリー・カンパニー』(コリンズ)、『ザ・ゴール』(ゴールドラット)など比較的近年ものまで(と言っても、原著が刊行されて10年経っているのだが)幅広く、『五輪書』(宮本武蔵)などもラインアップされています。

 各解説は「GETTING STARTED」(主要テーマについてのイントロ)、「CONTRIBUTION」(ラーニングポイント)、「CONTEXT」(その本の影響や意義)で構成され、全編を通して読み物のように読め、また、そうして読んでいくと、一見拡散気味に思えたラインアップが自然と流れとして繋がってくるという印象でした。
 
 2段組みですが行間はゆったりしていてたいへん読み易く、デザインやレイアウトも凝っていて紙質も良く、保存版として手元に置いておくのにいいです。その上、気持ち良く読めるという印象で(このレイアウトと紙質は、少なくとも本書自体への読書欲は増進させる効果はある)、各冒頭の1ページにある書影はくっきりと大きく、また、著者略歴、翻訳・原著のリソース、内容を一言で表したキャッチフレーズ、難易度、概説なども同じページ内に纏められているので、何だかもう手元に本があるような気分にもなってしまいます。

 選本も要所を押さえているように思え、解説もよくこなれているため、個人的には、本書1冊を読んでそれなりに満足してしまった感も。今まで読んだことがある本の振り返りにもなったし、ある程度、"時代限定"的に評価の定まっている本(今それほどこぞって読むようなものでもない本)もあるし...と言うと、何だか全てを読み切れないことの負け惜しみみたいですが、こうした本があるということだけでも知っておくことの意味はあるのではないかと思います(教養とは、自分が何を知らないかを知っていることである、という説もあるし)。

《読書MEMO》
●紹介書籍
第1部 思想と人間
 『IBMを世界的企業にしたワトソンJr.の言葉 (Eijipress business classics) 』
 『HPウェイ - シリコンバレーの夜明け』 (日経ビジネス人文庫)
 『新訳 君主論』 (中公文庫BIBLIO)
 『[新訳]経験経済』
 『経済発展の理論―企業者利潤・資本・信用・利子および景気の回転に関する一研究〈上・下〉』 (岩波文庫)
 『国富論』 (岩波文庫)
 『雇用・利子および貨幣の一般理論』
 『ザ チェンジ マスターズ―21世紀への企業変革者たち』
 『産業文明における人間問題―オーソン実験とその展開』 (1967年)
 『GMとともに』
 『自然資本の経済―「成長の限界」を突破する新産業革命』
 『資本論』
 『スモール イズ ビューティフル』 (講談社学術文庫)
 『セムラーイズム 全員参加の経営革命 (ソフトバンク文庫)
 『組織のなかの人間―オーガニゼーション・マン』 (現代社会科学叢書)
 『第三の波』 (中公文庫 M 178-3)
 『断絶の時代―いま起こっていることの本質』
 『人間性の心理学―モチベーションとパーソナリティ』
『ハーバード流交渉術』.jpg 『ハーバード流交渉術』 (知的生きかた文庫)
 『ビーイング・デジタル - ビットの時代』新装版
ピーターの法則.jpg 『ピーターの法則 創造的無能のすすめ』
人を動かす.jpg 『人を動かす』 新装版
プロフェッショナルマネジャー ハロルド ジェニーン.jpg 『プロフェッショナルマネジャー』
 『ボーダレス・ワールド』
 『MADE IN JAPAN(メイド・イン・ジャパン)』
 『メガトレンド』
 『20世紀の巨人事業家ヘンリー・フォード著作集』

第2部 戦略と理論
 『エクセレント・カンパニー』 (Eijipress business classics)
 『企業価値評価 第4版 【上】、企業価値評価 第4版 【下】』
 『企業生命力』
 『企業戦略論』
企業の人間的側面.jpg 『企業の人間的側面―統合と自己統制による経営』
 『競争の戦略』
 『国の競争優位〈上〉、国の競争優位〈下〉』
 『ゲーム理論で勝つ経営 競争と協調のコーペティション戦略』 日経ビジネス人文庫
 『コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント』
 『五輪書』 (岩波文庫)
 『ザ・ゴール― 企業の究極の目的とは何か』
 『シックスシグマ・ブレイクスルー戦略―高収益を生む経営品質をいかに築くか』
 『シナリオ・プランニングの技法』 (Best solution)
 『真実の瞬間―SAS(スカンジナビア航空)のサービス戦略はなぜ成功したか』
 『ストラテジック・マインド―変革期の企業戦略論』
 『戦争論』〈上・下〉』 (岩波文庫)
 『戦略計画 創造的破壊の時代』
 『戦略サファリ―戦略マネジメント・ガイドブック』 (Best solution)
 『戦略の原理―独創的なポジショニングが競争優位を生む』
 『孫子』 (講談社学術文庫)
 『地球市場時代の企業戦略―トランスナショナル・マネジメントの構築』
ビジョナリー・カンパニー1.jpg 『ビジョナリー・カンパニー―時代を超える生存の原則』
 『複雑系―科学革命の震源地・サンタフェ研究所の天才たち』 (新潮文庫)
 『マーケティングの革新―未来戦略の新視点』
 『マッキンゼー 経営の本質 意思と仕組み』
第3部 マネジメントと組織
1分間マネジャー.jpg 『1分間マネジャー―何を示し、どう褒め、どう叱るか! 』
 『イノベーションのジレンマ―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき』
科学的管理法.JPG 『[新訳]科学的管理法』
 『期待される管理者像―新・グリッド理論』
 『経営者の役割 (経営名著シリーズ 2) 』
 『経営の行動科学』 (1984年)
 『マックス・ウェーバー―経済と社会』
      
     
ドラッカー名著集2.jpgドラッカー名著集3.jpg 『現代の経営[上・下]』
 『コア・コンピタンス経営―未来への競争戦略』
最強組織の法則 - 原著1990.jpg 『最強組織の法則―新時代のチームワークとは何か』
産業ならびに一般の管理2.jpg 『産業ならびに一般の管理』 (1985年)
 『ディルバートの法則』
 『ジャパニーズ・マネジメント』(講談社文庫)
 『組織行動の原理―動態的管理 』
 『組織は戦略に従う』
 『知識構築企業』
 『トヨタ生産方式―脱規模の経営をめざして』
 『ナンバーワン企業の法則―勝者が選んだポジショニング』 (日経ビジネス人文庫)
 『21世紀の経営リーダーシップ―グローバル企業の生き残り戦略』
 『パーキンソンの法則』 (至誠堂選書)
 『ビジネスマン価値逆転の時代―組織とライフスタイル創り直せ』
マネジャーの仕事.jpg 『マネジャーの仕事』
 『リエンジニアリング革命―企業を根本から変える業務革新』 (日経ビジネス人文庫)
リーダーシップの王道.jpg 『リーダーシップの王道 』
 『リーダーになる』[増補改訂版]

  

  
   

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「●本・読書」の インデックッスへ

紹介冊数は多くないが、その分解説は丁寧。選本も手堅く、実際にその著書を読む時に使える。

あらすじで読む世界のビジネス名著.jpgあらすじで読む世界のビジネス名著2.jpgあらすじで読む 世界のビジネス名著』['04年/総合法令]

 世界のMBAカリキュラムでも必読テキストとなっているドラッカー、コトラー、ポーターなど、ビジネス書の名著とされる定番28冊のエッセンスを抜き出して1冊にしたもので(全195ページ)、1冊あたり6ページの割り振りの中で、冒頭のページの「キーワード」「機能別分類」「キャリア職位別分類」で、その本の理論や主張のキーとなる言葉、どういった領域のことが述べられているのか、初級者・中級者(マネージャー)・上級者(シニアマネージャー)の何れの読者層向きか示しています。

 本文各3ページはそれぞれ「1分解説」「要旨」「読書メモ」から成り、「1分解説」で、なぜその本がバイブルとされるのか、その経緯や背景を説明し、「要旨」で、著者がその本で伝えているメッセージを要約し、「読書メモ」で、そのメッセージで特に核となる部分、メッセージを補足する重要な事柄について、読書メモ的に抜書き整理しています。

そして、最後に見開き2ページの「目次体系マップ」があり、目次から各章の構成と関連を、論旨の流れに合わせてツリー状に図説するとともに、必要に応じてその要約が示されていますが(この部分が、タイトルの「あらすじで読む」に呼応しているとも言える)、全体に分かり易く、また使い勝手よく纏められているように思います。

ただ単に内容をざっと知るだけならば最初の4ページまででもいいのですが、実際にその著書を読むとなると、最後に見開き2ページを割いている「目次体系マップ」がかなり役立つように思われます。

章の構成としては、中心となる部分を「ヒト(HR/組織行動)」「モノ(マーケティング)」「カネ(会計・財務)」「戦略」という分け方にしているのが特徴で、各章5冊から7冊ずつ取り上げています。

 1冊ずつじっくり、しかも分かり易く紹介しているという印象。しかも、ビジネスの広い範囲に渡って取り上げているため、28冊という限られた冊数になっていますが、「名著」の選定に関しては、編者がグローバルなMBA同窓組織から生まれたプロジェクト支援組織であるだけに、MBA基準での手堅いラインアップという印象を受けた一方で、'04年の刊行ということで、当時のトレンドを反映している面も一部には感じられました(今読んでも"ハズレ"ということではないのでしょうが)。。

《読書MEMO》
●紹介書籍
第1章:ゼネラル・マネジメント
ドラッカー名著集2.jpgドラッカー名著集3.jpg 『新訳 現代の経営(上・下)』P・F・ドラッカー

第2章:論理的思考
 『考える技術・書く技術』バーバラ・ミント

第3章:技術経営・アントレプレナーシップ
 『増補改訂版 イノベーションのジレンマ』クレイトン・クリステンセン
 『イノベーションの解』クレイトン・クリステンセン他
 『ベンチャー創造の理論と戦略』ジェフリー・A・ティモンズ

第4章:ヒト(HR/組織行動)
ハーバードで教える人材戦略2.jpg 『ハーバードで教える人材戦略』M・ビアー+B・スペクター他
【新版】組織行動のマネジメント.jpg組織行動のマネジメント 旧.jpg 『組織行動のマネジメント』ステファン・P・ロビンス
 『コンピテンシー・マネジメントの展開』ライル・M・スペンサー他
最強組織の法則 - 原著1990.jpg 『最強組織の法則』ピーター・M・センゲ
 『企業変革力』ジョン・P・コッター

第5章:モノ(マーケティング)
 『コトラーのマーケティング・マネジメント ミレニアム版』フィリップ・コトラー
 『顧客ロイヤルティのマネジメント』フレデリック・F・ライクヘルド
 『サービスマーケティング原理』クリストファー・ラブロック他
 『ブランド・エクイティ戦略』D・A・アーカー

第6章:カネ(会計・財務)
 『企業分析入門 第二版』K・G・パレプ+P・M・ヒーリー他
 『企業価値評価』マッキンゼー・アンド・カンパニー+トム・コープランド他
 『コーポレイト・ファイナンス(上・下)第六版』リチャード・ブリーリー他
 『ABCマネジメント革命』R・クーパー+R・S・カプラン他
 『EVA創造の経営』G・ベネット・スチュワートIII
 『決定版リアル・オプション』トム・コープランド他
 『リスク 神々への反逆(上・下)』ピーター・バーンスタイン

第7章:戦略
 『新訂 競争の戦略』M・E・ポーター
 『競争優位の戦略』M・E・ポーター
 『コア・コンピタンス経営』ゲイリー・ハメル+C・K・プラハラード
 『知識創造企業』野中郁次郎+竹内弘高
 『ゲーム理論で勝つ経営』A・ブランデンバーガー&B・ネイルバフ
ビジョナリー・カンパニー1.jpg 『ビジョナリー・カンパニー』ジェームズ・C・コリンズ他
 『キャプランとノートンの戦略バランスト・スコアカード』ロバート・S・キャプラン他
 
 

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先輩が後輩に向けて説教調で自身の成功体験を語るパターンとちょっと似てしまっている。

世界で勝つグローバル人材の条件.jpg世界で勝つグローバル人材の条件』(2013/03 幻冬舎)

 世界最大の金融組織シティ・グループで20年間にわたりグローバル市場を舞台に活躍し、シティのトップ0.1%の経営陣にも選ばれたという著者が、ビジネスパーソンに向けて、弱肉強食のグローバル市場において日本人として活躍するための条件(心得)を説いた本です(著者は現在、国際金融コンサルタント乃至財務アドバイザーとして活躍しているらしい)。

 「持つべき武器は日本人としてのアイデンティティ」とし、「日本人に必要なサムライ魂の鍛え方」とは何かといった具合に、「日本人」の強みを強調している点が類書と比べた際の特徴と言えば特徴。「日本人としてのアイデンティティ」が大事との考え方に異論はないし、中身は読んで元気づけられる要素も多かったけれど、一方で、「自分の頭で考え、自分の言葉で伝え、自分で動く」「賢明であれ」「強靭であれ」「感性豊であれ」といった言葉は、月並みと言えば月並との印象を持ちました。

 自身の経験に裏付けされてのそれらの言葉とみれば、それなりに説得力はないことはないですが、金融市場も、またそこで働く日本人人材の市場も、著者がキャリアの階段を駆け昇っていた頃と今現在では大きく異なっていると思われますし、誰もが著者と同じようなキャリアを歩めるわけでもなく、先輩が後輩に向けて、説教調みたいな感じで自身の成功体験を語るパターンとちょっと似てしまっている印象も受けました(一般論に落とし込む段階で全て精神論になってしまっている)。

世界で通用するリーダーシップ2.jpg戦略人事のビジョン.jpg ビジネス啓蒙書として読む分にはまあまあですが、リーダーシップを学ぶという観点からみれば、こうした個人の成功譚を1つ1つ読むのは、あまり効率が良いことのように思えません(と言いつつ、GEの日本法人社長からノバルディス ファーマの日本法人社長に転じた三谷宏幸氏の 『世界で通用するリーダーシップ』 ('12年/東洋経済新報社) には★★★★☆の評価をつけたのだが、三谷氏は、執筆にあたって「自慢話」にならないよう配慮したとインタビューで語っている。コンサルタントとして独立したわけではないから、余計な自己宣伝は要らないというスタンスで書かれているという意味では、同じくGEからLIXILグループの執行役副社長に転じた八木洋介氏の 『戦略人事のビジョン―制度で縛るな、ストーリーを語れ』 ('12年/光文社新書)についても言える(評価★★★★★))。

 「グローバル人材の条件」というタイトルテーマに沿って本書の内容を振り返ると、逆に「素質」と「環境」で決まるのかなという思いにもさせられなくもなく、キャリア・デザイン支援や人材育成支援も今後の著者の事業ドメインに入っているようなので、その辺りもやや気になりました。

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「●日経プレミアシリーズ」の インデックッスへ

評判の良い人の方の3つの重要ポイントを示す。これって〈コンピテンシー〉だなと。

会社人生は「評判」で決まる.jpg  『会社人生は「評判」で決まる (日経プレミアシリーズ)』['12年]

 人事コンサルタントである著者は、企業内では「評価」に基づく人事が前提となっているにもかかわらず、「評判」が"裏スタンダード"として大きな影響力を発揮していると、本書で述べています。評価が高くても、たった一つの悪評で、彼には人望がないとされて、昇進が見送られたりすることもあるとしていますが、自社内を見回して、思い当たるフシのある人は多いのではないでしょうか。

 著者は本書で、評判がどのように形成され、どのような特徴を持つものなのかを解説するとともに、評判の善し悪しを分ける3つの重要ポイントを示しています。それによれば、悪い評判につながる傾向が強いと考えられるのは、1番目が、自分の力を誤認している、自信過剰な「ナルシスト」、2番目が、自分自身を省みないで、他人のことはとやかく言う「評論家」、3番目が、自分の立場を理解しておらず、勘違いの大きい「分不相応な人」であると。

 評判の良い人の方はこの裏返しとなり、1番目が、自分自身をよく分かっており「他者への十分な配慮のできる人」、2番目が、口は出すが手は出さない「評論家」の逆で、労をいとわない「実行力の人」、3番目が、自分の立場や役割を正しく理解し、それに基づいた「本質的な役割の果たせる人」であるとしています。

 また、著者がこれまで仕事上行ってきた好業績者に対する数多くのインタビューから、業種・職種を問わず、それらの人たちに見られる重要な共通点として、それらの人たちが20代~30代前半という時期に、脇目も振らずに目の前の仕事に没頭してきたことを挙げ、社外の人脈づくりに一生懸命であったり、資格取得に励んだりしてきた人たちではないとしています。

 数年前から若年層の間で"自己ブランド化"が流行っているようですが、著者は、見えやすい特徴をアピールすることに重点が置かれる「パーソナル・ブランディング」は、結果として、現在の仕事や組織と乖離してしまうということが起こりがちであり、今後のキャリアを切り拓くための実力を身に付けようとするならば、現在の仕事に没頭し、組織とより密着度を高めていく方向へ向かわなければならないとしています。

 つまり、社外へ向けての「パーソナル・ブランディング」ではなく、社内での自分自身の価値を高め、同時に評判を高めていく「パーソナル・レピュテーション・マネジメント」こそが、将来のキャリアを切り拓くことにつながるというのが本書の趣旨ですが、近年言われる「エンプロイアビリティ」とか「自律的キャリア」といった言葉には、「社外に向けて」「業界内でも通用する」といったイメージが付きまといがちであるため、こうした対比のさせ方は興味深く思いました。

 全体を通して具体例を踏まえ、分かりやすく書かれており、とりわけ若いビジネスパーソンには、単なる処世術・出世術ではない示唆を与えるようになっていると思いました(処世術・出世術として読んでしまう人も、もしかしたらいるかもしれないが、そうした人には物足りないかも。元々"人望"って、そう簡単に意図して形成されるものでもないと思うけれどね)。

 人事部の人から見れば、「好業績者に対するインタビューから」という箇所で、これって〈コンピテンシー〉だな、と思い当たる人も多いはず。実際、著者には、〈コンピテンシー〉や〈360°評価〉について書かれた著作もあります。

 〈コンピテンシー〉って、最近今一つ言われなくなった気がしますが、「行動評価」という風に形を変えて、定着している企業には定着しているのではないでしょうか。本来は「(性格に近いところの)能力」を指すものであったはずが、従来の「業績・能力・情意」の三大効果要素のうち、「能力」とではなく「情意」と置き換わり、「性格」を評価するのではなく、そうした「行動」をしたかどうか評価するようになっているというのが、"日本的コンピテンシー"の特徴ではないかと、個人的には思います(結局〈コンピテンシー〉って、本来は人物評価なんだよなあ)。

 一般のビジネスパーソンに向けて書かれた本ですが、著者がこれを人事部に向けて書くとすれば、「他者への十分な配慮のできる人」「実行力の人」「本質的な役割の果たせる人」という項目を、考課要素(とりわけ昇格・昇進において)に織り込みましょう、ということになるのかな(その方が、本来的な〈コンピテンシー〉に近いかも)。そうしたら、「評価」と「評判」がより一致することにも繋がるのだろうけれども...。

 但し、本書にもそうした事例があるように、日本企業の場合、昇格・昇進においては、「パーソナル・レピュテーション」のチェックが比較的"自動装置"的に機能し、結果をコントロールしてきたような気もします。

 むしろ著者自身も、「パーソナル・レピュテーション」そのもの自体を考課要素とすべきであるという考えではなく、「評価」と「評判」が乖離しないことが望ましいのであって、その手法として、〈コンピテンシー〉の考え方が補完的に生かせるという考え方なのだろうけれども、本書の対象読者層が一般ビジネスパーソンであるため、そのあたりまで踏み込んでいないのが、人事部目線でみた場合、やや物足りないか。

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グローバル人材としての「マインドセット」とは必ずしも目新しいものではないのが興味深い。

なぜ、日本企業は「グローバル化」でつまずくのか.jpg  なぜ、日本企業は「グローバル化」でつまずくのか2.jpg
 『なぜ、日本企業は「グローバル化」でつまずくのか―世界の先進企業に学ぶリーダー育成法

 スイスに本拠を置くビジネススクールIMDの学長と、その日本拠点の代表による共著で、このIMDのミッションは、グローバル・リーダーの開発であるとのことです。

 全5章構成の第1章では、マクロ的な観点からさまざまなデータを示すことで、世界において、日本および日本企業がいかにグローバル化の流れにたち遅れているかを示しています(IMDの調査による世界競争力ランキングでは、日本はバブル期には世界競争力第1位だったのが、2011年版調査では59カ国中26位とのこと)。

 さらに第2章では、今度はややミクロな観点から、日本企業が「グローバル化」につまずいた要因を取り上げるとともに、第3章では、IMDが社員教育等で関与する各国の企業のグローバル人材育成の取り組みや、いくつかの日本企業の事例を紹介しています。

 つまずきの要因としては、①もはや競争優位ではない「高品質」にこだわり続けた、②生態系の構築が肝心なのにモノしか見てこなかった、②地域規模の長期戦略が曖昧で、取り組みが遅れた、④生産現場以外のマネジメントがうまくできなかった、の4点を挙げ、具体的事例と併せて解説しています。

 さらにその奥には、ある種の視野狭窄に陥って本当の土俵での戦略的な取り組みができていないことと、常にオープンで何事にも好奇心の心の扉を開き、他者や異文化を尊重できる、そうしたマインドセットを持った人材が少なく、新卒大卒男性を大量採用して会社のカラーに染めていく人材育成を続けてきたために、多様な人材が欠如していることの2つの課題が見えてくるとしています。

 ここまでの分析には説得力がありましたが、第4章では、グローバル・リーダーの必要条件として「グローバル・マインドセット」という概念をとりあげ、IMDが考える「マインドセット」とは、「異なる社会、文化システムから来る人たちやグループに対して影響を与えることを可能にするような思考」のことであるとしていますが、おそらくこの部分が本書の中核と言えるかもしれません。

 「マインドセット」は体験と学習によって高めることが可能であるとするとともに、IMDが経営幹部研修などにおいて活用している、個人の行動特性をはかるアセスメントツール(グローバル・コンピテンシー・インベントリー)は、「認知管理力」「関係構築力」「自己管理力」の3つの軸から成っているとしています。

 これらをバランスよく兼ね備えているのがグローブトロッター(グローバル人材)であり、3要素の何れかが欠けた場合、あるいは1要素しか満たさない場合、どのような行動特性が現れるかが、分かりやすく解説されていますが、これがなかなか面白い。

  「認知管理力」「関係構築力」のみ ⇒ 日和見主義者
  「関係構築力」「自己管理力」のみ ⇒ 調整役
  「自己管理力」「認知管理力」のみ ⇒ 冒険家
  「認知管理力」のみ ⇒ 観察者
  「自己管理力」のみ ⇒ 孤立主義者
  「関係構築力」のみ ⇒ 異業種交流好き
  何も無しみ ⇒ ひきこもり
 といった具合です。

 第5章では、グローバル人材育成のために日本企業ができることとして、人事異動の効果的活用や幹部教育を手厚くすること、人材育成は日本人も外国人も対象とすることなど、5つの提案をしています(最後に「海外ビジネススクールを有効に活用せよ」とある)。

 部分部分は面白く読め、特に第4章、第5章が、単に要素分析にとどまらず、今日本企業で求められる施策にまで踏み込んで書かれている点は評価できると思いますが、一方で、このあたりの踏み込みがやや浅く抽象的な印象もある...。

 全体としてよく纏まっているし、大いに啓蒙的ではあるけれど、具体策としては、結局は社員にいろいろと「経験を積ませろ」というところに落ち着くのかなという気も。

 考えてみれば、「認知管理力」「関係構築力」「自己管理力」などは、日本企業が管理職登用アセスメントなどで永らく用いてきた指標であり、これに異価値許容性(これも昔からアセスメント項目にあったことはあった)などのグローバルな視点をもっと取り込んで人材の育成をはかれということなんだろうなあ。

 集合研修としての育成ノウハウは、本書においては必ずしも具体的に公開されているとは言えず、そうした意味では、コンサル受注誘因本と言えなくもないし、研修よりも人事異動による育成等を説いている面では、そうでないとも言えます。

 ただ、本書で述べられているグローバル・リーダーのアセスメント要素自体は決して目新しいものではない(個人的にはそのことが、本書から学んだ最大のポイント)ことから考えても、わざわざ海外の研修機関に社員を派遣しなくとも、それ以前に、今までやってきた管理職育成施策のもとになっている「求められる人材像」というものを、もう一度見直してみる契機となる本ではあるかもしれません。

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波頭・茂木両氏のある種「職業的対談」みたいで、それほど心に響いてこない。

突き抜ける人材.jpg 突き抜ける人材』.JPG
突き抜ける人材 (PHPビジネス新書)

 NHKスペシャルの「シリーズ日本新生」の今年('11年)1月21日放送分で、「リーダー」をテーマとして取り上げ、この日本という国の難局を打開できるリーダーを生むためには何が必要なのかという議論がされていました。

NHKスペシャル 生み出せ 危機の時代のリーダー.jpg 番組のおおまかな落とし処が、強いリーダーの出現を受け身的に待つのではなく、一人ひとりが先ず自ら"小さなリーダー"となるべく一歩を踏み出そう的な感じで、これは、東日本大震災で被災住民の支援にあたるNPOボランティアの印象などがある程度影響しているのではないかと。

NHKスペシャル リーダー.jpg 主演者の面々に、姜尚中、田坂広志、古賀茂明の各氏らがいて、途中、日本の官僚と政治家の関係の問題が話題になったりし、現在の一律的な教育の問題も若干扱っていましたが、ややモヤっとした感じの議論の展開。デーブ・スペクター氏が受験教育の弊害にストレートに言及すると、それはその場で言っても詮無いことと思われたのか(パネリストの中に若手官僚などもいたせいか)、司会者にほ無視されたような...。

NHKスペシャル・シリーズ日本新生「生み出せ!危機の時代のリーダー」
                           
 本書は「突き抜ける人材」とは何か、どこがフツーと違うのか、そうした人材を生み出すにはどうすればいいのかを、波頭・茂木両氏が、直接対談ではありませんが、対談を模したようなリレー・エッセイの形で綴ったものです。

 必ずしも組織リーダーに限らず、ビジネスやイノベーションの分野での「突き抜ける人材」の輩出を模索したものと言えますが、教育の問題も一応はちゃんと扱っており、落とし処は「私塾」に対する期待のようなものになっています、

 2人とも話題は豊富と言うか、世相評論的な纏めは上手で、「海外ではこうしている」といった出羽守(ではのかみ)的な発言が少なからずあるものの、議論を更に進めており、現代教育の在り方への批判から、それではどうすればよいかということで、「私塾」というのが浮かんできたようです。

 但し、そこに至る1つ1つのテーマについての突っ込みがそれほど深くなく、どことなく既知感のある内容の評論風に流れていくため、危機感を煽りながらも"言い放っし"になっているような印象もあり、「お気楽対談」とまでは言いませんが、ある種「職業的対談」みたいで、それほど心に響いてきません(じゃあホントに「茂木塾」開くのかなあ)。

 NHKの「シリーズ日本新生」でもケーススタディとしてスティーブ・ジョブズが取り上げられていましたが、茂木氏が本書の中で、ジョブズ、ジョブズと連発するのにはやや辟易させられました(「ジョブズ追悼番組」にも出演していたし、この人のジョブズ崇拝は相当なもののようだ。番組ではWindowsは嫌いだと発言して、西和彦・元マイクロソフト副社長と喧嘩になったようだが)。
 
 ジョブズには個人的にも関心があり、学ぶ面も多いけれども、傑出した才能だけでなくキャラクターの激しさも含め、常人の域を超えているようなところがあるから(それでジョブズ自身も何度か大きな失敗をしているし)、彼自身をそのまま手本にするはちょっとキツいのではないかなあ(フェイスブックのマーク・ザッカーバーグについても同じ)。

 茂木氏って今やオールマイティ(専門分野不明)みたいな感じですが、こういうことを広く浅くスラスラ語れるのがまさにこの人の才能? 意図してやっているのではなく"天然"なのでしょう。

《読書MEMO》
●若くして頭角を現すための共通項(波頭氏)
「アメリカの経営学者であるジョン・コッターの調査によると、若くして頭角を現した人には、二つの共通項があるそうです。一つは、アジェンダを持っていること、もう一つは、ネットワークを持っていることです。アジェンダとは、日本ではよくミーティングで「その場での主要テーマ」といった意味で使われますが、ジョン・コッターのいうアジェンダは、「その人がつねに抱くこだわり」、つまり「執着するテーマ」のことです。(中略)コッターが指摘しているもう一つの共通事項のネットワークとは、社内や取引先、あるいはまったく無関係な外部にも、何かやろうとしたときにお願いできる人がいることです」

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製品写真が豊富で、記事も充実。エディトリアル・デザインが優れている。

The History of Jobs & Apple 2.jpg      The History of Jobs & Apple3.jpg
The History of Jobs & Apple 1976〜20XX【ジョブズとアップル奇蹟の軌跡】(100%ムックシリーズ)

 雑誌「MAC LIFE」の版元による特別編集の大判ムックで、昨年('11年)8月の刊行、2ヵ月足らず後のスティーブ・ジョブズの死が想定されていたかのような、彼の人生の振り返り及びアップルの歩みの振り返りとなっています。

The History of Jobs & Apple.jpg Mac製品の写真が、内容的にも点数的にも充実していて、それらが綺麗に配置されており、全体的にみても、ジョブズ自身の写真も充実しているばかりでなく、編集デザイン的にも美しい構成。更には記事も充実していて、「MAC LIFE」の執筆・編集・デザイン陣の総力結集という感じでしょうか。

 執筆陣は、「MAC LIFE」編集長で、ジョブが亡くなったすぐに刊行された『ジョブズ伝説』('11年11月/三五館)の著者である高木利弘氏や、テクノロジーライターで『スティーブ・ジョブズとアップルのDNA』('11年12月/マイナビ)の近著がある大谷和利氏など。

 大谷和利氏には、『iPodをつくった男―スティーブ・ジョブズの現場介入型ビジネス』('08年/アスキー新書)という著書がありますが、新書という体裁上、Mac等の製品デザインについての記述の部分に関して写真が少なく分かり辛かったのに対し、本書はムックの特性を十分に活かし、写真と記事が相乗効果をもたらすような作りになっています。

 iPhonだけでも相当数の写真がありますが、それらの並べ方が美しく、本書の最も優れている点は、エディトリアル・デザインにあると言っていいかと思います。

 個人的にはPCはMacを使ってはいないのですが、MacOSのモノクロのドット絵でデザインされたインターフェイスなどは懐かしさを覚えます。
 その他にも、かなりレアな製品写真や画像も多く含まれているようで、そのあたりは個人的にはあまり詳しくないのですが、永年のMacユーザー、Macファンにはたいへん魅力的な1冊ではないでしょうか(マニアならば、星5つ評価か)。

 ジョブズ及びアップル社の詳細な年譜も付いていて価格1,900円は、「保存版」的な価値からみると安いと思います。

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"イノベーションの人"であったことを改めて痛感する『全発言』。中学生から読める『全仕事』。

スティーブ・ジョブズ全発言.jpg 『スティーブ・ジョブズ全発言 (PHPビジネス新書)』['11年] スティーブ・ジョブズ全仕事.jpg図解 スティーブ・ジョブズ全仕事』['12年]

スティーブ・ジョブズ名語録.jpg 昨年('11年)11月の刊行(奥付では12月)ということで、10月のスティーブ・ジョブズの逝去を受けての執筆・刊行かと思ったら、昨年初から企画をスタートさせて脱稿したところにジョブズの訃報が入ったとのこと、著者には既に『スティーブ・ジョブズ名語録 (PHP文庫)』('10年)という著作があり、今回はその際に収録できなかったものも網羅したとのことで、その辺りが「全発言」という由縁なのでしょうか。

 彼の言葉を11のテーマ毎に括ってそれぞれ解説していますが、解説がしっかりしているように思え(前から準備していただけのことはある?)、内容も面白くて、一気に読めました(新書で330ページ超だが、見開きの右ページにジョブズの言葉が数行あって、左ページが解説となっているため、実質、半分ぐらいの厚さの新書を読む感じ)。

 必ずしも時系列に沿った記述にはなっておらず、冒頭にジョブズの年譜がありますが、1冊ぐらいジョブズの伝記を読んでおいた方が、そうした発言をした際のシチュエーションが、より把握し易いと思われます。

 11のテーマは、「ヒットの秘密」「自分の信じ方」「イノベーション」「独創の方法」「仕事のスキル」「プレゼンテーション」「リーダーの条件」「希望の保ち方」「世界の変え方」「チームプレー」「生と死」となっていますが、全般的にイノベーションに関することが多く(特に前半部分は全て)、ジョブズが"イノベーションの人"であったことを、改めて痛感しました。

 著者の解説と読み合わせて、特に個人的に印象に残った言葉を幾つか―。

「マッキントッシュは僕の内部にある。」
 ジョブズは、設計図の線を一本も引かず、ソフトウェア一行すら書かなかったにも関わらず、マッキントッシュは紛れも無くジョブズの製品だったわけで、マッキントッシュがどういう製品であるべきかという将来像は、彼の内部にしかりあった―何だか、図面を用いないで社寺を建てる宮大工みたい。

「イノベーションの出どころは、夜の10時半に新しいアイデアが浮かんだからと電話をし合ったりする社員たちだ。」
 著者が「多くの企業がイノベーションを夢見ながら一向に果たせずにいるのは、『イノベーション実現の五ヵ条』といったものを策定して壁に貼り出すことで満足するからだ。イノベーションとは、体系ではない。人の動きなのだ」と解説しているのは、確かにそうなのだろうなあと。ジョブズは、「研究開発費の多い少ないなど、イノベーションと関係はない」とも言っています。

「キャリアではない。人生なのだ。」
 '10年の春にジョブズを訪問したジャーナリストの、「キャリアの絶頂を迎え、この恰好の引き際でアップルをあとにされるのですか」との問いに答えて、「自分の人生をキャリアとして考えたことはない。なすべき仕事を手がけてきただけだよ...それはキャリアと呼べるようなものではない。これは私の人生なんだ」と―。今の日本、キャリア、キャリアと言われ過ぎて、"人生"がどっか行ってしまっている人も多いのでは...。

 後には、「第一に考えるのは、世界で一番のパソコンを生み出すことだ。世界で一番大きな会社になることでも、一番の金持ちになることでもない」との言葉もあります。
 これは「お金は問題ではない。私がここにいるのはそんなことのためではない」との言葉とも呼応しますが、ヒューレット・パッカードの掲げた企業目的が「すぐれた」製品を生み出すことだったのに対する、ジョブズの「すぐれた」では不足で、「世界で一番」でなければならないという考えも込められているようです。

 個人的には、自己啓発本はあまり読まない方ですが、読むとしたら、やはりジョブズ関連かなあ。神格化するつもりはありませんが、元気づけられるだけでなく、仕事や人生に対するいろいろな見方を示してくれるように思います。


 本書著者には、近著で『図解 スティーブ・ジョブズ全仕事』('12年1月/学研パブリッシング)というのもあり、これはスティーブ・ジョブズがその生涯に成し遂げた業績を解説しながら、イノベーション、チームマネジメント、プレゼン手法など、彼の「仕事術」をコンパクトに網羅したもの。

 190ページ足らずとコンパクトに纏まっていて、しかも、見開き各1テーマで、左ページは漫画っぽいイラストになっていますが、これがなかなか親しみを抱かせる優れモノとなっています。

 難読漢字(というほど難読でもないが)にはルビが振ってあり、中学生からビジネスパーソンまで読めるものとなって、特に中高生に、ジョブズの業績について知ってもらうだけでなく、ビジネスにおける「仕事術」というものを考えてもらうには、意外と良書ではないかと思いました。

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コンパクトに纏まっている。アップル社およびジョブズについて知る上で手頃な本。

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アップルの法則 (青春新書インテリジェンス)』['08年] スティーブ・ジョブスによるスタンフォード大学卒業式辞

 昨年('11年)10月にスティーブ・ジョブズが亡くなってから、ジョブズ関連本の刊行が相次ぎ、また結構売れているようですが、バタバタと急いで書かれた本よりは、ちょっと以前に書かれた本の方が良かったりもし、本書もその一つ。'08年の刊行であり、'07年のiPhone発表までをカバーしています。

 iMac、iPod、iPhoneとヒット製品を出し続けるアップル社がどのような会社で、どのように発想し、どのように製品を作ってきたのかが、アップルの誕生から凋落、そして奇跡の復活を遂げるまでのストーリーと併せてコンパクトに纏められています。

 著者はアップルを長年追いかけてきたITジャーナリストで、新書本は初めてとのことですが、一般向けに分かり易く書かれていて、既にアップルをよく知っている人が読むとあまり目新しい情報は無いかもしれませんが、今までアップル製品にあまり縁が無かったが、iPodやiPhoneを使い始めてから初めてアップル社やその製品に関心を持つようになったといった人には、アップル社を知る上で手頃な本かも。

 同じ年の1月に刊行された同著者の『スティーブ・ジョブズ―偉大なるクリエイティブ・ディレクターの軌跡』('08年/アスキー)が、ジョブズを撮った写真中心だったの対し(殆ど写真集?)、企画としては先行していたというこちらの方は、文章が中心であるため、相補関係にあつとも言えます。
 
 アップル社の歴史を追うということは、とりもなおさずスティーブ・ジョブズの歩んできた道を追うということになるとの思いを改めて抱かされ、ジョブズが亡くなってからジョブズという人物に関心を持ち始めた人にとって、ジョブズ自身の歩んできた道や、その製品戦略を知る上でも手頃な入門書と言えるかと思います(製品解説の部分、とりわけデザインについての部分は、もっと写真があった方が良かった)。

 著者は、アップル流のビジネスのやり方は、「日本の企業で、今すぐにそのまま実践しようとしても、なかなかうまくはいかないことも多いだろう」が、「アップルから今すぐ学んで取り入れることができることもある」と書いていますが、それは日本の企業に限らず言えることでしょう(ジョブズ亡き後、この会社がどうなるのか)。

 最後の方でジョブズが′05年にスタンフォード大学で行った、あの「ハングリーであれ、バカであれ」という言葉で締めくくられた有名なスピーチの内容が紹介されており、スタンフォード大学のWebサイトで「(英語の)文章として読むことができる」と補足されていますが、今はYouTube で日本語字幕付きで見ることができ、ちらっと見るつもりが、結局最後まで見てしまう―そんな味わい深い内容でした。

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大判の写真が充実(「写真集」に近い)。上質のクリエイティブ・センスで作られている本。

スティーブジョブズ偉大なるクリエイティブディレクター.jpgスティーブ・ジョブズ 偉大なるクリエイティブ・ディレクターの軌跡』['07年/アスキー]

スティーブ・ジョブズ3.jpg 昨年('11年)10月に56歳で亡くなったスティーブ・ジョブズの軌跡を追った本ですが、彼の人生のターニングポイントとなった幾つものシークエンスにおけるジョブズを撮った、余白スペース無しの大判の写真が充実していて、ジョブズの様々な発言と組み合わせたレイアウトも美しく、ジョブズの言葉の力強さを引きたてています。

 '07年末の刊行であり(奥付では'08年1月)、勿論その時点では大方の人がジョブズの死というものを('05年に一旦ガン克服宣言をしていることもあって)こんなに早く現実になるものとしてイメージしていなかったのではないかと思われ、そんな中、映画スターでもない企業経営者で(しかも存命中に)このような「写真集」のような本が刊行されたというのは、ジョブズの絶大なカリスマ性ならでのことではないでしょうか。

 長年アップル社及びジョブズを追いかけてきたITジャーナリストである著者が、ジョブズの軌跡を分かり易い文章で綴っていて、'07年のiPhone発表までをカバーしており、解説そのものは概ねジョブズやアップル製品のファンには既に知られていることが多いと思われますがが、中にはきらりと光るエピソードもあり、また、強いて言えば、サブタイトルにある「クリエイティブ・ディレクター」としての彼にスポットが当てられたものとなっています。

 写真の方も、冒頭の一枚に、今や多くのジョブズ関連本の表紙にその場面が用いられているiPhone発表の際のプレゼンテーションのものが、「今日、アップルは電話を再発明する」という彼の言葉とともにあり、最後のカラー写真は、そのプレゼンの最中に機材の不具合で中断を余儀なくされた際に、ジョブズが慌てる素振りも見せず、創業期に共同創業者のウォズニーらとやっていた悪戯を壇上にて身振りで紹介し、聴衆の笑いをとっている様を撮ったものであり、う~ん、大人の風格!

 ビル・ゲイツ('07年)との公開インタビューの写真で「昨日のことでクヨクヨするのではなく、一緒に明日をつくっていこう」との言葉があるのは、実際にその場でその通りのことを言ったにしても、やや出来過ぎの感もありますが('05年のスタンフォード大学の卒業式のスピーチでは、「WindowsはMacのコピーに過ぎない」と冗談っぽく言って、学生の笑いをとっていたけれど...)。

スティ―ブ・ジョブズIMG_2707.JPG 若い頃の写真もいい。アップル追放時代の中盤期の写真も少ないながらも何枚かあるようですが、「言葉」に年代が入っているのはいいけれど(「二十億ドルの売上と四三〇〇人の社員を抱える大企業が、 ジーンズを穿いた六人組と張り合えないなんてバカげている」という言葉は、アップル社に対して言っていたのだなあ)、出来れば「言葉」だけでなく「写真」の方にも年代を入れて欲しかったようにも思います。

 それでもグッドなエディトーリアル・デザイン。本書そのものが、上質のクリエイティブ・センスで作られているとの印象を受け、ファンには垂涎の1冊とまではいかなくても(価格的にも内容の割には安いと思う)手元に置いておきたい本ではないでしょうか。

《読書MEMO》
●目次
プロローグ ─iPhone─
「今日、アップルは電話を再発明する」
[第一章] さらばアップル
創業
「実はエジソンのほうが、世の中に貢献しているんじゃないかと思えてきた」
六色のロゴ
「私は、自分の思う方法で好きにやるチャンスを手に入れたんだ」
Apple II
「どうあってもコンピューターをプラスチックのケースに入れたいと思った」
Lisa
「どうしてこれを放っておくんだ? これはすごいことだ。これは革命だ!」
Mac
「海軍に入るくらいなら、海賊になったほうがましだ」
NeXT
「20億ドルの売り上げと4300人の社員を抱える大企業が、ジーンズを穿いた6人組と張り合えないなんてバカげている」
ピクサー
「ディズニーの白雪姫以来、最大の進歩だ」
[コラム] ジョブズとゲイツ

[第二章] アップル復活
Think different.
「私にはアップルを救い出す計画がある」
iMac
「いまの製品はクソだ! セックスアピールがなくなってしまった!」
Mac OS X
「画面上のボタンまで美しく仕上げた。思わずなめたくなるはずだ」
デジタル・ライフスタイル
「これは、われわれがリベラル・アートとテクノロジーの接点に立つ企業であることを示している」
iPod
「われわれはレシピを見つけただけではない。"アップル"というブランドが素晴らしい効果をもたらすと考えたのだ」
iTunes Store
「これは音楽業界のターニングポイントとして歴史に残るだろう。まさに画期的なものなんだ」
[コラム]
人々が語った「スティーブ・ジョブズ」
エピローグ ─ スタンフォードにて ─
「ハングリーであれ、バカであれ」

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考え方はマットウ。「勝間」本などの啓発本批判は明快。どう若い世代に理解させるかが課題。

社畜のススメ.jpg  藤本 篤志 『社畜のススメ (新潮新書)断る力.jpg 勝間 和代『断る力 (文春新書)

 目立つなあ、このタイトルは―。著者は、USENの取締役などを経て独立して起業した人ですが、IT企業出身の人というと、華々しく転職を繰り返しているイメージがあるけれど、著者に関して言えば、一応USENだけで18年間勤めていて、スタート時はそれこそ、カラオケバーやスナックを廻る「有線」のルートセールスマンだったようです。

 本書では冒頭で、「個性を大切にしろ」「自分らしく生きろ」「自分で考えろ」「会社の歯車になるな」という、いわゆる"自己啓発本"などが若いサラリーマン(ビジネスパーソン)に対し、しばしば"檄"の如く発している4つの言葉を、サラリーマンの「四大タブー」としています。

 こうした自己啓発本が奨める「自分らしさ」を必要以上に求め、自己啓発本に書かれていることを鵜呑みにすることから生まれるのは、ずっと半人前のままでいるという悲劇であり、そこから抜け出す最適の手段は、敢えて意識的に組織の歯車になることであるとしています。したがって、これから社会に出る若者たちや、サラリーマンになったものの、どうもうまく立ち回れないという人に最初に何かを教えるとすれば、まずは「会社の歯車になれ」と、著者は言うとのことです。

守破離.jpg さらに、世阿弥の「守破離」の教えを引いて、サラリーマンの成長ステップを、最初は師に決められた通りのことを忠実に守る「守」のステージ、次に師の教えに自分なりの応用を加える「破」のステージ、そしてオリジナルなものを創造する「離」のステージに分け、この「守」→「破」→「離」の順番を守らない人は成長できないとしています(「守」が若手時代、「破」が中間管理職、「離」が経営側もしくは独立、というイメージのようです)。

 「守」なくして「破」や「離」がありえないと言うのは、ビジネスの世界で一定の経験年数を経た人にはスンナリ受け容れられる考えではないでしょうか。先に挙げたような"檄"を飛ばしている"自己啓発本"を書いている人たち自身が、若い頃に「守」の時期(組織の歯車であった時期)を経験していることを指摘している箇所は、なかなか小気味よいです。

 
 その冒頭に挙っているのが、勝間和代氏の『断る力』('09年/文春新書)で、これを機に勝間氏の本を初めて読みましたが(実はこのヒト、以前、自分と同じマンションの住人だった)、確かに書いてあるある、「断ること」をしないことが、私達の生産性向上を阻害してストレスをためるのだと書いてある。「断る」、すなわち、自分の考え方の軸で評価し選択することを恐れ、周りに同調している間は、「コモディティ(汎用品)を抜け出せないと。

 これからの時代は「コモディティ」ではなく「スペシャリティ」を目指さなければならず、それには「断る力」が必要だ、との勝間氏の主張に対し、著者は、こうした主張は「個性」を求めるサラリーマンの耳には心地よく響くだろうが、それは、本書で言う「四大タブー」路線に近いものであり、勝間氏のような人は「天才」型であって、それを「凡人」が鵜呑みにするのは危険だとしています。

 勝間氏は、自分が「断る力」が無かった時代、例えばマッキンゼーに在職していた頃、「究極の優等生」と揶揄されていたそうですが、「断る」ことをしないことと引き換えに得られたのは、同期よりも早い出世や大型クライアントの仕事だったとのこと、その仕事を守るために、何年間も自分のワークライフバランスや健康を犠牲にしたために、32歳の時にこんなことではいけないと方針転換して「コモディティ」の状態を脱したそうですが、藤本氏が言うように、「コモディティ」状態があったからこそ、今の仕事をバリバリこなす彼女があるわけであって、20代の早い内から「断る」ことばかりしていたら、今の彼女の姿はあり得ない(いい意味でも、悪い意味でも?)というのは、想像に難くないように思えます(そうした意味では自家撞着がある本。元外務省主任分析官の佐藤優氏が「私のイチオシ」新書に挙げていたが(『新書大賞2010』('10年/中央公論社))、この人も何考えているのかよく分からない...)。

藤本 篤志 『社畜のススメ』.JPG 但し、『社畜のススメ』の方にも若干"難クセ"をつけるとすれば、日本のサラリーマンの場合、藤本氏の言う「歯車」の時代というのは、単に機械的に動き回る労働力としての歯車ではなく、個々人が自分で周囲の流れを読みながら、その都度その場に相応しい判断や対応を求められるのが通常であるため、「歯車」という表現がそぐわないのではないかとの見方もあるように思います(同趣のことを、労働経済学者の濱口桂一郎氏が自身のブログに書いていた)。そのあたりは、本書では、「守」の時代に漫然と経験年数だけを重ねるのではなく、知識検索力を向上させ、応用力へと繋げていくことを説いています(そうなると「社畜」というイメージからはちょっと離れるような気がする)。

 むしろ気になったのは、本書が中堅以上のサラリーマンに、やはり自分の考えは間違っていなかったと安心感を与える一方で、まだビジネ経験の浅い若い人に対しては、実感を伴って受けとめられにくいのではないかと思われる点であり、そうなると、本書は、キャリアの入り口にある人へのメッセージというより、単なる中高年層向けの癒しの書になってしまう恐れもあるかなと。

 前向きに捉えれば、中高年は、自分のやってきたことにもっと自信を持っていいし、それを若い人にどんどん言っていいということなのかもしれないけれど。例えば、「ハードワーカー」たれと(これ、バブルの時に流行った言葉か?)。


 第5章には、サラリーマンをダメにする「ウソ」というのが挙げられていて、その中に「公平な人事評価」のウソ、「成果主義」のウソ、「学歴神話崩壊」のウソ、「終身雇用崩壊」のウソといった人事に絡むテーマが幾つか取り上げられており、その表向きと実態の乖離に触れています。

 著者は、世間で言われていることと実態の違い、企業内の暗黙の了解などを理解したうえで行動せよという、言わば"処世術"というものを説いているわけですが、これなんかも人事部側から見ると、図らずも現状を容認されたような錯覚に陥る可能性が無きにしも非ずで、やや危ない面も感じられなくもありません。

 色々難点を挙げましたが、基本的にはマットウな本ですし、「自己啓発本」批判をはじめ、個人的には共感する部分も多かったです。でも、自分だけ納得していてもダメなんだろうなあ。
 
 「マズローの欲求五段階説」が分かり易く解説されていて、「社会的欲求」の段階を軽んじてしまい、いきなり「尊厳の欲求」と「自己実現の欲求」を満たそうとするサラリーマンが多くなっていることを著者は危惧しているとのことですが、それは同感。そうした若い人の心性とそれを苦々しく思っている中高年の心性のギャップをどう埋めるかということが、実際の課題のように思いました。

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啓蒙書としても読めるし、ジョブズの失敗と成功、遺したものの大きさも知ることができる。
 
スティーブ・ジョブズ 失敗を勝利に変える底力.gif                     ファインディングニモ dvd.jpg
スティーブ・ジョブズ 失敗を勝利に変える底力 (PHPビジネス新書)』「ファインディング・ニモ [DVD]

 スティーブ・ジョブズがその個性の強さゆえに犯した数々の失敗と、彼自身がそこから学び復活を遂げたことに倣って、ビジネスにおいてどのようなことに留意すべきかを教訓的に学ぶという、ビジネス・パーソン向けの啓蒙書的な体裁を取っていますが、併せて、ジョブズの歩んできた道における様々なビジネス上のイベントが、必ずしも時系列ではないですがほぼ取り上げられているため、ジョブズの足取りを探ることが出来るとともに、コンピュータ産業や映画産業の裏事情なども知ることができ、180ページほどの薄手の新書ですが、かなり面白く読めました。

 ジョブズを徒らに偶像化するのではなく、素晴らしい面とヒドイ面、それぞれについて書かれていますが、こうした体裁から、むしろ「反面教師」として部分にウェイトがかかっているのが本書の1つの特徴でしょうか。但し、こうした人間的にどうなのかと思われるような行動そのものが、ある意味、常人には測り知れない天才の個性でもあることは、著者も重々承知のうえなのですが。

 ジョブズがアップルへの奇跡的な復帰を遂げたことについては、当時のCEOギル・アメリオの"引き"が大きかったわけですが、そのアメリオをジョブズが策略を用いて放逐したことは、ジョブズの"悪行"としてよく知られているところ。本書でも「恩人を蹴落とし、CEOの座を射止める」と小見出しを振っていますが、ジョブズがアップルへの復帰を果たさなかったら、ジョブズの情熱はピクサーに注ぎ込まれ、ピクサーはジョブズの現場介入により、「トイ・ストーリー」('95年)のようなヒット作は生み出せず、駄作のオンパレードになっただろうという分析は興味深く、更には、iPodもiPhoneも誕生しなかったとして、アメリオの救済がいかに大きかったかを述べている辺りは、説得力がありました(そのアメリオを裏切ったジョブズがいかにヒドイ人間かということにも繋がるのだが、「裏切り者が作る偉大な歴史」という小見出しもある)。

ファインディング・ニモ whale.jpg 因みに、「ファインディング・ニモ」('03年)の制作の際に、ピクサーの美術部門のメンバーは、クジラの中にニモが呑みこまれるシーンを描くために、海岸に打ち上げられたクジラの死体を見に出かけたとのこと、ピクサーのデザイナー達は、アニメの映像世界の細部にジョブズ以上のこだわりを持っていたわけです。

ジョブズ&ゲイツ 2007年5月.jpg 更に、ジョブズとビル・ゲイツの間の様々な交渉についても、ジョブズが犯した過ちを鋭く検証していて、いかにジョブズが失ったものが大きかったかということが理解でき、Windowsのユーザーインターフェイスがその典型ですが、ある意味オリジナルはMacであり、普通ならばマイクロソフトではなくアップルがコンピュータ産業の覇者となり、ジョブズが世界一の億万長者の地位にいてもおかしくなかったことを示唆しているのも頷けました。
Steve Jobs and Bill Gates Interviewed together at the D5 Conference (2007).

スティーブ・ジョブズ 偶像復活.jpg ジョブズの秘密主義にもスゴイなあと思わされるものがあり、2005年に刊行されたジェフリー・ヤング、ウィリアム・サイモン著『スティーブ・ジョブズ―偶像復活』(′05年/東洋経済新報社)を読みましたが、そこにはiPhoneのことは全く出てきませんでしたが、2004年夏にジョブズが「アップルフォンを作ることはない」と正式発表した時、心の底では逆のことを考えていたというわけだと。

 著者は、アップルにおいてマーケティングに携わっていたこともある人で、現在はドラッカーの解説本を書いたり講演活動を行ったリもしている人。本書はビジネス啓蒙書としても読めるし、ジョブズの失敗と成功、遺したものの大きさをも知ることができ、更には、もしあの時ジョブズがこうしていたら...といったことに思いを馳せることにも繋がる本です。

ファインディング・ニモo5.jpg「ファインディング・ニモ」●原題:FINDING NEMO●制作年:2003年●制作国:アメリカ●監督:アンドリュー・スタントン/リー・アンクリッチ●製作:グラハム・ウォルターズ(製作総指揮:ジョン・ラセター)●脚本:アンドリュー・スタントン/ボブ・ピーターソン/デヴィッド・レイノルズ● 音楽:トーマス・ニューマン/ロビー・ウィリアムズ●時間:100分●出演:アルバート・ブルックス/エレン・デジェネレス/アレクサンダー・グールド/ウィレム・デフォー/オースティン・ペンドルトン/ブラッド・ギャレット/アリソン・ジャニー●日本公開:2003/12●配渋谷東急 閉館2.jpg渋谷東急 閉館.jpg給:ウォルト・ディズニー・ カンパニー●最初に観た場所:渋谷東急 (03‐12‐23) (評価★★★☆)

映画館「渋谷東急」が5月23日閉館.jpg渋谷東急 2003年7月12日、同年6月の渋谷東急文化会館の閉館に伴い、直営映画館(「渋谷パンテオン」「渋谷東急」「渋谷東急2」「渋谷東急3」)の代替館として渋谷クロスタワー2Fにオープン。2013年5月23日閉館。

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スラスラ読める分、物足りない。パソコン雑誌の記事文章みたい。

IPodをつくった男  スティーブ・ジョブズ.jpgiPodをつくった男 スティーブ・ジョブズの現場介入型ビジネス (アスキー新書 048)

 スティーブ・ジョブズという人物のアウトライン、アップル社の経営方針、アップル製品のデザイン戦略、キャッチコピーから見たアップル社、ジョブズの犯した誤りとそこからの軌道修正など、盛りだくさんな内容で、それでいて全体で190ページしかなく、しかもスラスラ読める本でしたが、それだけに色々物足りない点もありました。

スティーブ・ジョブズ 偶像復活.jpg Amazon,comのレビューで、ジェフリー・ヤング、ウィリアム・サイモン著『スティーブ・ジョブズ―偶像復活』(′05年/東洋経済新報社)を薄めて新書にしたようなもの、という評がありましたが、著者自身が翻訳したアラン・デウッチマン著『スティーブ・ジョブズの再臨』('01年/毎日コミュニケーションズ)を主に参照しているようで、'90年代のことに関する記述が多いのに対し、今世紀に入ってからの記述が少ない点がまず物足りません。

 アスキー新書で、著者はテクノロジージャーナリストということで、テクノロジーの面での記述に期待したのですが、記述が広い範囲に及ぶ分、それぞれの中身はやや浅く、ジョブズのプレゼンとビル・ゲイツのプレゼンの違いを写真入りで解説するならば、Mac等の製品デザインについての記述の部分にも写真を入れるなどの気遣いが欲しかったように思います。

 本文がパソコン雑誌の記事文章のようで、その味気無さを補うかのように、章ごとにジョブズ語録を挟んでいますが、やはり全体として内容そのものが、新書という制約もあり、かなり"薄い"ものとなってしまった感じがしました。

 ジョブズの歩んできた道を把握する上でも、本書サブタイトルにある「現場介入型ビジネス」というキーワードを掘り下げる上でも、やはり、『スティーブ・ジョブズ―偶像復活』などを読んだ方がよさそう(ジョブズの「現場介入」主義を全面肯定しているのもやや気になる。映画「トイ・ストーリー」は、ジョブズがエド・キャットムルらに権限委譲したから誕生したのでは)。

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ジョブズの多面性をそのままに描く。こんな劇的な話があっていいのかと思うくらい面白かった。

スティーブ・ジョブズ 偶像復活.jpg スティーブ・ジョブズ 偶像復活2.bmp スティーブ・ジョブズ 1977.jpg Steve Jobs.jpg Steve Jobs
スティーブ・ジョブズ-偶像復活』['05年/東洋経済新報社] AppleⅡを発表するスティーブ・ジョブズ(1977)本書より

ウォルター・アイザックソン スティーブ・ジョブズ.jpg アップル創業者スティーブ・ジョブズ(1955-2011/享年56)の半生記であり、ジョブズの伝記はこれまでも多く刊行されていますが、昨年['11年]10月にジョブズが亡くなったことで、ウォルター・アイザックソン『スティーブ・ジョブズ(上・下)』('11年10月/講談社)をはじめ、多くのジョブズ関連本がベストセラーにランクインすることとなりました。

 アイザックソン版は絶妙のタイミングでの邦訳刊行でしたが、取材嫌いのスティーブ・ジョブズが唯一全面協力した「本人公認の決定版評伝」とのことで、スティーブ・ジョブズという人の評伝を読むに際し、彼のキャラクターからみて果たしてそのことがいいのかどうか。上下巻に渡る長さということもあり、翻訳の方もかなり急ぎ足だったことが窺えるようで、同じ井口耕一氏の翻訳によるものですが、本書の方を読むことにしました。

 本書は、原著も'05年刊行であり、ジョブズの生い立ちから始まって、一度はアップルを去った彼が倒産寸前のアップルに復帰し、iPod等で成功を収めるまでが描かれていますが、翻訳はこなれていて読み易く、ジョブズの歩んできた道が成功―挫折―復活の繰り返しであったこともあって、とにかく内容そのものが波瀾万丈、こんな劇的な話があっていいのかというくらい面白かったです。

ジョブズ nhk.bmp 個人的には、ちょうどNHKスペシャルで「世界を変えた男 スティーブ・ジョブズ」('11年12月24日放送)を見たところでしたが、それと照らしても、偏りの少ない伝記と言えるのではないでしょうか。元々が毀誉褒貶の激しいジョブズですが、そのスゴイ面、人を強烈に引きつける面と、ヒドイ面、友人や上司にはしたくないなあと思わせる面の両方が書かれていて、それでいて、ジョブズに対する畏敬と愛着が感じられました。

 単巻ながらも約500ページの大著ですが、アップル創業時代を描いた第1部(21歳でアップルを創業し、僅か4年で「フォーチュン500」に名を連ねる企業にするも、経営予測を誤り'85年に同社を追われる)、追放時代を描いた第2部(NeXT社を設立する一方、ルーカス・フィルムの子会社を買収して設立したピクサーで成功を収め、表舞台に復帰する)、アップル復帰以降の第3部(13年ぶりにアップルに復帰するやiMac('98年)をヒットさせ、更にiPod('01年)、iTunesなどのヒットをも飛ばす)とバランスよく配分されています。

「マッキントッシュ」新発売コマーシャルと発表するジョブズ(1983)
steve jobs 1983.jpg アップルの共同創業者や自らが引き抜いた経営陣との確執のほかに、同年代のライバルであるビル・ゲイツとの出会いや彼との交渉、Windowsの牙城を切り崩そうするジョブズの攻勢なども描かれていますが、ピクサーでの仕事におけるディズニー・アイズナー会長との様々な権利を巡るビジネス面での交渉が特に詳しく描かれており、アメリカのコンピュータ業界の内幕を描いた本であると同時に、映画ビジネス界を内側から描いたドキュメントにもなっています。

Luxo Jr.(1986)
Luxo Jr.jpg NHKスペシャルの「世界を変えた男 スティーブ・ジョブズ」を見て、彼の人生には幾つかの印象的な場面が印象的な映像と共にあったように思われ、とりわけ、'84年のマッキントッシュ発売の際のジョージ・オーエルの『1984』をモチーフとしたコマーシャル(CM監督は「ブレードランナー」('82年)のリドリー・スコット)や、'86年のCGの可能性を如実に示した"電気ランプ"の親子が主人公の短篇映画「ルクソーJr.」(Luxo Jr.)、'95年の「世界初のフル3DCGによる長編アニメーション映画「トイ・ストーリー」などが個人的には脳裡に残りました。

「トイ・ストーリー」(1995)
トイ・ストーリー1.jpg 「トイ・ストーリー」以外は番組で初めて見ましたが、そうした映像のイメージもあって本書を比較的身近に感じながら読むことができ、「トイ・ストーリー」も、初めて観た時はCGが進化したなあと思っただけでしたが、ジョブズが買収も含め個人資産を10数年も注ぎこむも全く利益を生まなかったピクサーが、土壇場で放った"大逆転ホームラン"だったと思うと、また違った感慨も湧きます(この作品だけでも公開までの4年間の投資額は5千万ドルに及び、「こんなに金がかかるなら投資しなかった」とジョブズは語っているが、本作のヒットでピクサー株は高騰し、結果的にジョブスの資産は4億ドル増えた)。

 そもそも、ジョブズのアップル復帰そのものが、次世代マッキントッシュの開発に失敗したジョブズ無き後のアップルが、次世代OSを求め、その開発に当たっていたNeXT社を買収、それに伴いジョブズの非常勤顧問という形でのアップル復帰が決まったわけで、それを機にジョブズは経営の実権を握るべくポリティックな画策をするわけですが、この「トイ・ストーリー」のヒットが、ジョブズの立場を押し上げ強固なものとする追い風になったのは確かでしょう。

 「トイ・ストーリー」に続くピクサー作品も、興行記録を次々塗り変えるヒットで、その生み出す利益があまりに膨大であるため、本書にあるようなディズニー・アイズナー会長との確執ということに繋がっていったのでしょうが、その後アイズナーの方は会長職を追われ、ジョブズはピクサーをディズニーに売却すると共に、ディズニーの筆頭株主に収まるという決着となっています。

iMacを発表するジョブズ(1998)
iMac 1998.jpg 人々を惹き付ける素晴らしいプレゼンテーションをする一方で、傲慢な人柄で平気で人を傷つけ、また、類まれなイノベーターとして製品のデザインや性能への完璧主義的なこだわりを持つ一方で、相手の弱みに付け込む政治的画策も厭わない冷酷な経営者という一面も持つ―こうしたジョブズの多面性が、本書では充分に描かれているように思いました。

 彼の次の視野には、マイクロソフトからコンピュータ業界の覇権を奪回すべく、Windows及びOfficeに匹敵するようなOSやアプリの開発があることが本書では示唆されていますが、実際に彼が'07年1月のMacworld 初日の基調講演で発表した新製品は、次世代携帯端末のiPhoneだった―徹底した秘密主義というのもあるかと思いますが、ほんの1年か2年後にどんな(しかもメガヒットとなる)製品を出すのか、誰も予測がつかなかったということなのでしょうか。

トイ・ストーリー17.jpgトイ・ストーリー dvd.jpg「トイ・ストーリー」●原題:TOY STORY●制作年:1995年●制作国:アメリカ●監督:ジョン・ラセター●製作:ラルフ・グッジェンハイム/ボニー・アーノルドズ●脚本:ジョス・ウィードン/アンドリュー・スタントン/ジョエル・コーエン/アレック・ソコロウ●撮影:スティーヴン・H・ブラム●音楽:ランディ・ニューマン●時間:81分●出演:トム・ハンクス/ティム・アレン/ドン・リックルズ/ジョン・モリス/ウォーレス・ショーン/ジョン・ラッツェンバーガー/ジム・バーニー●日本公開:1996/03●配給/ブエナ ビスタ インターナショナル ジャパン(評価★★★☆)
トイ・ストーリー [DVD]

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企業理念・経営理念やビジョン・ミッション・バリューなどと微妙にニュアンスが異なるのが興味深い。

できる会社の社是・社訓6.JPGできる会社の社是・社訓.jpg 『できる会社の社是・社訓 (新潮新書)

 電通の「鬼十則」や日本電産、日清など有名企業の社是・社訓の成り立ちや、そこに込められた創業者や中興の祖の思いなどが、コンパクトに分かり易く紹介されていますが、各見出しには、社是・社訓に限らず、創業者の言葉などを引いているものもあり、併せて、創業者がどのようにして事業を起こし、どのようにしてそれを育て、現在の会社の礎を築いたかが書かれていて、ミニ社史を読んでいる感じも...(多分に各社の社史を参考にしているということもあるだろう)。

大丸.jpg先義後利.jpg 大丸の「先義後理」など享保年間(18世紀初頭)に遡るものから。楽天の「スピード!! スピード!! スピード!!」など近年のものまであり(因みに、ライブドアには社訓が無かったそうな)、また、シャープ、松下電器(現パナソニック)、ホンダなどになると、創業者の立志伝の紹介みたいになってきますが、それらはそれで、自分が知らなかったことなどもあって面白く読めました。

 著者は、就職を切り口にした教育問題などの特集記事を担当する経済週刊誌記者だそうで、社是・社訓が実際にその企業に今どのような形で定着し、活かされているかといった組織・人事的な視点は殆どありませんが、さすがに大きな不祥事のあった会社については、その時の経営者が社訓に悖る行動をとったことを解説しています。

 大丸の「先義後理」などの古い社訓は、広い意味でのCSR、コンプライアンスに沿っているように思われ、一方、資生堂のエシックス(倫理)カードにある「その言動は、家族に知れても構いませんか?」などは、90年代の企業不祥事の多発を受けてのものなのだろうなあ。

 サントリーが、山口瞳、開高健らが執筆陣に加わった社史『サントリーの70年』で、創業者・鳥井信治郎「やってみなはれ」「みとくんなはれ」を前面に押し出していたのに、100年史では「人と自然と響きあう」が企業理念となっていて、つまらなくなったようなことを著者は書いていますが、確かに。

 こうしてみると、創業者個人の強烈な思いが込められた「社是・社訓」は、「企業理念」「経営理念」や「ビジョン」「ミッション」「バリュー」などと呼ばれるものと重なる部分は多いものの(IBMの"THINK"とかアップルの"Think different"なども「行動規範」であり「バリュー」の一種とみていいのではないか)、「社是・社訓」と「企業理念」「経営理念」と言われるものとは、或いは日本と海外との間では、それぞれ微妙にニュアンスが異なる部分もあり、もしかしたらその部分に日本的経営の特性があるのかも―と思ったりもしました。

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広い意味での国際プロトコルについて書かれた本。実践の場がないとなあ。

「お辞儀」と「すり足」はなぜ笑われる.jpg 『お辞儀」と「すり足」はなぜ笑われる』(2010/01 日経プレミアシリーズ)

 国連機関などで長年に渡って仕事し、国際会議やパーティなどを通じて外国人との仕事・交流の経験が豊富な著者が、外国人の思考・行動特性と日本人のそれとの違いを踏まえた上で、外国人との付き合い方を指南したもの。

 本書の後半では、欧米人と対等に付き合うためのマナーや、レセプションやディナーでの基礎理式、スピーチの秘訣や国際会議での立ち回り方などが書かれていて、最終章が「恥をかかないための基礎的なプロトコル」となっていますが、後半全体が広い意味での国際プロトコルについて書かれたものであり、見方によっては本書全体がそうであるとも言えるのでは。

 但し、前半部分の、日本人がよく使う「すみません」という言葉が欧米人にとっては何を意味しているのか理解されにくい、とか、欧米では、自己主張できなければ無能力と評価されるため、子供の頃からいかに自分の意見を主張し、他人を説得できるかを鍛えられるが、謙虚が美徳の日本社会では「沈黙は金なり」と教えられる、従って、日本人と欧米人とが一番異なる行動をするところは、発言するかしないかである、といったことは、これまでも多くの本などで言われてきたことではないでしょうか。

 日本の社会では、結果よりもプロセスが大事にされるが、欧米社会では結果が全てであるというのは、時と場合によるような気もしました。
 以前、女子サッカーの2011年FIFAワールドカップの日本対アメリカの決勝戦の選手別採点表の日本版とドイツ版をネットで比較してみたことがありますが(サイトの運営会社は同じ)、日本の場合は優勝したこともあって皆高い評価になっていたのに対し、ドイツの方は、苦戦したプロセスを見ているのか、結構厳しかったように思います。

 尤も、日本人は分析力や総合力に長けているので、問題を分析し、解決方法を探し、自分で改善して行く能力を持っているため、いわゆるマニュアルは不要で、上司の役割も細部にわたる指示ではなく、むしろ問題点を発掘し大きな方針を示すことに重点が置かれるが、一方、西欧では、事細かに何をするのかを指示しなければ人々は動かない、という指摘など、改めてナルホドなあと思わされる部分も多々ありました。
 
「お辞儀」と「すり足」はなぜ笑われる 2.jpg 表題の「お辞儀」に関しては、日本人はやたらとお辞儀をするが、平常の挨拶で頭を下げてお辞儀をする国はあまり無く、殆どの国でお辞儀は君主に会ったりしたときに使う最敬礼の挨拶であるとのことで(だからオバマ大統領は天皇に会った際にお辞儀したわけか)、通常のビジネスの場においては、堂々と胸を張り握手をすべきであり、それが欧米人と対等に付き合うことができる第一歩であると。

 前半は比較文化論的で面白いけれども、聞いたことがあるような内容も多く、後半に行くほど「プロトコル」色が強くなっていくため、知識として持っているにこしたことはないけれど、周囲に外国人がいて実践する機会がないと、応用に繋がらないかなあと(誰かレセプションにでも呼んでくれないと、忘れてしまいそう?)。

 『国家の品格』という本がありましたが、国際社会は闘争の場であり、自国において「誇り」や「品格」を大事にしている外国人でさえも、国際社会に出た途端にそうしたものを捨て去るという指摘は興味深かったです。

 その他にも、外国人間では、相手の家族のことを気に掛けたり、家族同士で付き合ったりすることが、日本人間以上に高い親密度の表れとみなされるといった指摘なども興味深かったですが、やはり、応用の場がないとなあ(実践の場がある人にとってはいいかも知れないが、そうした人達にとっては、すでに分かり切ったことかも)。

女子サッカー.jpg2011 FIFA女子ワールドカップドイツ大会 決勝戦(対アメリカ)先発メンバー個人別評価

女士サッカー.jpg 

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あくまでも、初めてマーケティングを学ぶ人向け。ストーリー的にはしょぼい。

新人OL、つぶれかけの会社をまかされる.jpg新人OL、つぶれかけの会社をまかされる (青春新書PLAYBOOKS)

 ベストセラー『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』(2009/12 ダイヤモンド社)のマーケティング版のような本です。

 但し、著者が以前書いた『ドリルを売るには穴を売れ!』(2006/12 青春出版社)をリニューアルしたもので、元本も、新人OLが会社傘下のイタリアン・レストランの経営を立て直すというストーリー自体は同じであり、今回は、中身よりも主にタイトルと装丁を変えた"新装バージョン"とのことのようです。

 そうした意味では、『もしドラ』を真似したわけではなく、むしろこちらの方がこの手の本では元祖とも言えるし、元本は元本で、分りやすいマーケティング入門書として定評があるようです。

 確かに、読んでみて分り易かった。ストーリーがあるために分り易いというよりも、基本にある理論構成が、「ベネフィット」「ターゲット」「強み・差別化」「4P」という4つに集約されていて分り易いのです。
但し、そこから先が、元本よりも中身もやや柔らかくなっているせいか、ホントに入門レベルで留まっている感じもしました。

 広告代理店の新人研修レベル、までも行かないか。あくまでも、初めてマーケティングを学ぶ人向けと考えれば、この程度でもいいのかも知れませんが、ストーリー部分は、理論よりもむしろ啓蒙という感じでしょうか。

 思えば、こうした物語風の入門書は、本書や『もしドラ』に限らず今までもあったのでしょうが、『もしドラ』は、野球部という企業経営とは異なる舞台で、ドラッカーの理論を敷衍的に活かすというストーリー構成の旨さがあったし、まあ、ドラッカー・ブームに乗ったということも相俟って、あれほど売れたのだろうなあ。

 一方、こちらは、直接的にレストラン経営というビジネスの場を扱っているため、「敷衍」の幅が小さいというか、むしろ、あまりストーリーに拘泥されずに、各章の纏めの部分を何度か読めば、体系的なことは理解できてしまう...。

 ストーリー部分も、9人でやる野球と数人のプロジェクトという人数の違いもあってか、それほど深みがなく、登場人物の人物造形も浅いように思えました。

 単独で入門書としてみればそう悪くもないですが、『もしドラ』を意識してリニューアルしたことは明らかで、テーマも「マネジメント」と「マーケティング」という違いがあり、ついついストーリー部分を比べてしまいました。

 改めて、『もしドラ』のストーリー展開の旨さ(ヤングアダルト小説の典型パターンの1つともとれるが)を認識しました(自分は、両方とも"テキスト"としてよりも"小説"として読んだということか?)

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冒頭の旅館とホテルの事例は良かった。だんだん、ビジネス誌の連載みたいになってくる。

「最強のサービス」の教科書.jpg「最強のサービス」の教科書 (講談社現代新書)

 いかにも編集サイドがつけたようなタイトルですが、「最強のサービス」とは何かということよりも、工学的アプローチにより無駄な部分を廃し、本当に顧客が望むサービスの強化に経営リソースを投下することで、そうして顧客満足を効率的に実現するという「サービス工学」という視点を、事例を通して訴えたかった本のようです。

加賀屋.jpg 社会の状況や顧客の要望、嗜好に合わせ、サービスの内容や提供方法を変化させることで成功し、今も成長を続ける企業8社の事例が紹介されていますが、最初に登場する「加賀屋」の事例が(すでに台湾進出などで、マスコミで取り上げられることも多いが)際立っているように思えました。

「BIGLOBE みんなで選ぶ 温泉大賞」温泉宿部門 総合1位(3年連続)「加賀屋」(石川県・和倉温泉)

 本当の意味での「おもてなし」とは何かを顧客目線で考え、顧客にとって価値を生まないサービスは省力化し、客室係が接客に注力できるようにする一方で、人的サービスが「良質」であるのはいいが、人によってサービスに「ムラ」が出ないように、顧客の要望や意見などをデータベースしている―とりわけこのデータベースの力が大きいように思いました(客室まで客を案内する間に、旅館の様々な情報を教えてくれる宿というのは、最近は少ないなあ)。

 続いてのビジネスホテルチェーン「スーパーホテル」の事例は、チェックイン・アウトの機械化されていて、現金や鍵の収受などフロント業務も行っておらず、ちょうど一見「加賀屋」の対極にあるようにも見えますが、部屋置きの電話機やドリンク入り冷蔵庫など、顧客がメリットをさほど感じていないサービスは廃止し、ユニットバスも無く、代わりに温泉大浴場があって、これが顧客に好評を博しているとのこと、顧客目線に立ったサービスとは何かということを考え、従来の既定のサービスの見直しを行ったという意味では、やはり「加賀屋」に通じるものがあると思いました。

 ベッドの脚を無くして床に直置きにしたのは従業員のアイデアだそうですが、こうなると、経営者や(現場のことをよく知っている)従業員の、常日頃の意識の問題と言うか、「サービス工学」という理論は、後から説明的についてくるような気がしなくもありません。
 
 実際に本書に出てくる企業は何れも、従業員満足(ES)ということに非常に力を注いでおり、そうしたことが、従業員の変革のモチベーションに繋がっているのではないかと思われ、そこへ現場を知らないコンサルタントが入ってきて、「サービス工学」とか振り回しても、あまりに効果はないのではないかというのは、後ろ向きの考え方ということになるのでしょうか。

 「サービス工学」というものへの懐疑もあり、読み進むにつれて、何だかビジネス書で連載されて成功事例集のように思えてきて、う~ん、新書で出すような本なのかなあとも。

 グローバルな視点みて、顧客の創造というものを行っているのは、やはり台湾に進出した「加賀屋」でしょう。
テレビの特番で、現地採用の新米仲居を躾けるベテラン従業員を見ましたが、今後どうなるか注目したいところです。

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「個」としての自分をしっかり持て―と。「自己啓発セミナー」を聴いているような感じも。

仕事で成長したい5%の日本人へ.jpg 『仕事で成長したい5%の日本人へ (新潮新書)

 欧州で生活して30年、現在パリに住み、グローバルビジネスのコンサルティングをしているという著者の、国際的な観点からの、日本人に向けた仕事論、ビジネス論、キャリア論といった感じの本でしょうか。

 前半部分は、自らのキャリアを通しての仕事論で、そのキャリアというのが、東大の応用物理学科、同大学院化学工学科卒後、国内メーカー(旭硝子)に勤務し、オックスフォード大学の招聘教官を経て、スイスのバッテル研究所、ルノー公団、エア・リキード社とヘッドハンティングされながら渡り歩いたというもので、あまりに"華麗"過ぎて、最初はちょっと引いてしまいました。

 しかしながら、読み進むうちに、「自分の仕事の相場観を持て」、「評論家ではなく実践家になれ」、「他人を手本にしても、憧れは抱くな」、「成長願望と上方志向を混同するな」といった著者のアドバイスが、欧米のビジネスの現場で様々な人々と会い、そうした外国人と交渉したり共に仕事してきた経験に裏打されているものであることが分かり、説得力を感じるようになりました。

 フランス人のバカンスの過ごし方に触れて、バカンスに仕事を持ち込むのは無能である証拠とみなす彼らの考え方を知ったり、ルノーの労組リーダーに、労組の理論家としての立場を放棄することとバーターでの昇給を申し出て断られたことから、自らの成長願望のために昇給を犠牲にするその生き方に爽やかさを覚えたりするなど、著者自身の異価値許容性の広さも感じました。

 後半部分は、そうした経験を通しての異文化コミュニケーションの在り方を、これも具体的な事例を通して解説しており、また、そしたことを通して、「夢」と「パッション」を持つことの大切さを説いています。

 読んでいて、「成功セオリー本」という感じを受けることは無く、むしろ「個」としての自分と言うものをしっかり持てという根本的なところを突いていて(日本人が弱い部分でもある)、自律的なキャリア形成を促す「自己啓発セミナー」を聴いている感じでしょうか。

 振り返ってみれば、著者自身、ルーティン化したサラリーマン生活に嵌ってしまうのが嫌で日本を飛び出したわけで、一見"華麗"に見えるキャリアも、最高学府を出ているとか頭の良さとかからくるものではなく、著者自身の、決して現状に充足しない成長願望の賜物なのでしょう。

 著者が親交のあるラグビーの平尾誠二氏、指揮者の佐渡裕氏、柔道の山下泰裕氏、将棋の羽生善治氏らのエピソードを挙げ、彼らのような天才と比べ自らを凡人であるとしつつも、そこから学ぼうと言う姿勢は謙虚且つ貪欲であるように思えました。
 但し、終盤にこれら著名人の逸話を多くもってきたことで、所謂「自己啓発セミナー」の観が、パターナルな方向で強まったかも知れません。

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典拠を1冊に絞っているのがいい。すらすら読めることが本書の狙いの1つ。読後感も爽やか。

もし高校野球の女子マネージャーが2.bmp 『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』(2009/12 ダイヤモンド社)

 タイトル通りの設定で、進学校の弱小野球部の女子マネージャーになった主人公の女の子・みなみが、「野球部を甲子園に連れていく」という自らに課したミッションのもと、偶然出会ったドラッカーの経営書『マネジメント』を片手に野球部の強化に乗り出し、ドラッカーの教えを1つ1つ実践して、やがて―。

 面白かったです。ドラッカーの数ある著作の中から『マネジメント―基本と原則[エッセンシャル版]』('01年/ダイヤモンド社)1冊に絞って引用しているので典拠が分かり易く、また、それらを旨く物語に織り込んでいるように思われ、これだと、かなりの読者を、元本(もとほん)を読んでみようという気にさせるのではないでしょうか。

上田惇生、糸井重里 nhk.jpg 著者は、放送作家としてバラエティ番組の制作に参加したり、「AKB48」のプロデュース等にも携わった人とのことですが、NHKの「クローズアップ現代」で「よみがえる"経営の神様"ドラッカー」としてドラッカー・ブームをフィーチャーした際に('10年3月放映)、ドラッカー本の翻訳者である上田惇生氏と共にゲスト出演していたコピーライターの糸井重里氏もさることながら、その糸井氏よりも著者の方がより"ドラッカリアン"ではないでしょうか(但し、本書とこの糸井氏出演のテレビ番組でドラッカーブームに火がついたとされているようだ)。
NHKクローズアップ現代「よみがえる"経営の神様"ドラッカー」出演:上田惇生、糸井重里(2010年3月17日放送)

 本書を読んでこんな旨くコトが運ぶものかと思う人もいるかも知れませんが、ビジネス書(テキスト)として捉えれば、その枠組みとしての"お話"なので、そうした目くじら立てるのは野暮でしょう。ドラッカー自身が、オプティミストであったわけだし、バリバリの経営コンサルタントである三枝匡氏の 『Ⅴ字回復の経営』('01年/日本経済新聞社)だって、こんな感じと言えばこんな感じでした。

 主人公のみなみと親友の夕紀や後輩の文乃、野球部のメンバー達との噛ませ方は、ヤングアダルト・ノベルのストーリーテリングの常套に則っていますが、このYA調が意外とこの手の「テキスト」としてはマッチしていて、構想に4年かけたというだけのことはあります(著者自身、高校時代は軟式野球部のピッチャーだったと、朝日新聞に出ていた)。
 最初は主人公のみなみが"マネージャー"の意味を"マネジャー"と勘違いして、それが結果的にうまくいくというコメディにしようと思っていたそうですが、そうしなくて良かったし、そうする必要も無かった(でも、"マネジャー"って、日本語の発音上は"マネージャー"と言ってるなあ)。

 文章が稚拙との評もありましたが、飾り気の無い文体で、個人的にはすらすら読めたし、すらすら読めることが本書の大きな狙いの1つなのだと思います。読後感が爽やかなのも良かったです。

【2015年文庫化[新潮文庫]】

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一企業に膨大な個人情報が蓄積されることの不安。「検索」の次に何をしようとしているのか。

グーグル革命の衝撃 新潮文庫.jpg 『グーグル革命の衝撃 (新潮文庫)』  グーグル革命の衝撃 NHK.jpg 「NHKスペシャル"グーグル革命の衝撃"あなたの人生を検索が変える [DVD]

 NHKスペシャルで'07年1月21日に放映された「"グーグル革命"の衝撃~あなたの人生を"検索"が変える」は、思えばそれが自分にとって"Web2.0"的な世界を初めて認識した機会だったかも知れません。
 番組の内容はその年の5月に単行本化されましたが、本書はその後のグーグルとそれを取り巻く世界の動向を加筆し、2年の月日を経て文庫化したもので、単行本の方は読んでなかったこともあり、久しぶりにグーグルという企業の"凄さ"が自分の中で甦ってきました。

 まず、冒頭の広報チームの構成からして凄く、ハーバード・ロー・スクールの出身者であったりします。そして、番組にもあった、難解な数学の問題だけを表示した高速道路脇にあるグーグルの求人広告。優秀な人材を根こそぎ採用していて、普通の会社に1人か2人しかいないようなスーパースターが、グーグルにはごろごろいるとのことです。

 グーグルの検索結果の表示順位のアルゴリズムは明かされていませんが、本書では、グーグルの草創期の物語を通して、サイトのバックリンクの多さなど、その基本的な指標は明かされているように思います。

 グーグルの収入源である"グーグル・アドワーズ"、コンピュータがニュースを編集する"グーグル・ニュース"についても1章ずつ割いて解説されていますが、検索順位を上げることだけを目的としたリンクなどに対して、グーグルがどのように対処しているのかという話が、やはり興味深かったです。

 企業のグーグルでの検索順位を上げるためのコンサルティング会社の隆盛を番組で見た時は驚きましたが、今では「SEO対策」などといった言葉が日本でも身近なものになっています(アドワーズの代理店から、広告掲載を勧誘された経験を持つ人も多いのでは)。

 ここで本書が問題提起しているのは、情報収集の全てをグーグルに依存し、また、グーグルに個人情報の全てを委ねるようなライフスタイルが新たに現出しようとしていることです。

 本書で紹介されているサンフランコ市の例のように、グーグルが接続業者と組めば、そして、その接続業者が都市全体を無線LANでカバーするアクセスポイントを有していれば、グーグルには間接的に市民の個人生活情報が蓄積されることになり、これは、自治体や国家以上の情報を、それもナマの情報を、一企業が蓄積していることになるということではないかと。
 また、そうした情報は、マーケティング的立場から見れば関係者にとっては垂涎の的であり、これは結構危険な状態なのではないかと思いました。

 '06年のユーチューブの買収発表後も、最近では中国市場からの撤退表明やオンラインビデオサービス会社の買収など、依然話題に事欠かないグーグルですが、この企業が「検索サービス」の次に何をしようとしているのかということは、我々の生活にも影響が無いとは言えない気が、本書を読んでしました。

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この本そのものも、「心理屋さん」が書いた成功本。

成功本はムチャを言う 青春新書INTELLIGENCE.jpg 『成功本はムチャを言う!? (青春新書INTELLIGENCE)』 ['08年] 本は10冊同時に読め.png 成毛 眞 『本は10冊同時に読め!―本を読まない人はサルである!生き方に差がつく「超並列」読書術 (知的生きかた文庫)』['08年]

 タイトルから「成功本」を斬って捨てる本かと思いきや、「成功本の著者が説く成功ノウハウや成功法則と、それをなかなか自分に生かし切れない読者のギャップを埋めることを目的に」書かれた本であるとのことで、著者は、小学校教師から出版社の編集者、取締役を経て、今は、コーチングやカウンセリングを行う心理カウンセラー(乃至コンサルタント)―と言うか、そうしたことを商売とする事業者と言った方がいいかも。

 本書では、成功本そのものを否定しているのではなく、成功本が説く法則(ノウハウ)を、「目標を明確にする」「期日を決める、スケジュールを立てる」「好きな仕事をする」「ポジティブ思考をする」「人に感謝する、人に与える」「自分に投資する」「いい人と付き合う、人脈を広げる」「潜在意識を活用する」の8つ類型に分け、これらの法則を読んでも実行できない読者の心理的障壁について、つまり読者が読んでどこに無理が生じる原因があるかを分析しています。

 更に、人の行動価値基準を「目標達成的傾向(「勇」:行動を重視する人)」「親和的傾向(「親」:調和することを重視する人)」「献身的傾向(「愛」:愛し愛されることを重視する人)」「評価的傾向(「智」:考えることを重視する人)」の4つの性格傾向に分け、これらに沿って成功本を"自分流"に読み替えるコツを伝授していますが、いかにも「心理屋さん」が書いた本といった印象も受けなくもなく、気づいてみれば、この本そのものも「成功本」の1種だったのかと...(この著者には『異性を思いどおりに動かす!』('93年/橘出版)なんて著書もある)。

 「成功本」というのがどこまでを指すのかよくわかりませんが、個人的にはあまりそうした本は読まない方だと思います。
 元マイクロソフト日本法人社長の成毛眞氏が『本は10冊同時に読め!』('08年/知的生きかた文庫)の中で、「家にある成功者うんぬんといった本を捨てるべきである」とし(こっちの方がスッキリしている)、「ビジネスハウツー書ばかり読む人も、私から見れば信じられない人種である。まず、『金持ち父さん、貧乏父さん』系の本を読んでいる人、こうすれば儲かるという投資本や、年収1500万円を稼げるといった本を読んでいる人は、間違いなく『庶民』のまま終わるだろう。できる社員系の本を読んでいる人も同じである。なぜならば、他人のノウハウをマネしているかぎり、その他大勢から抜け出すことはできないからだ」と書いていますが、庶民のままで終わって何が良くないのかとは思うものの、「成功本」に対するスタンスは自分も成毛氏に近いかも知れません。この本は"ムチャ本"ではありません(但し、古典や文学作品は読む価値が無いというのはやや乱暴)。

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「●新潮新書」の インデックッスへ

「博報堂生活総研」×「人材コンサル」? サラッと読めて、新たな視点を提供してくれる。

ネコ型社員の時代.jpgネコ型社員の時代―自己実現幻想を超えて (新潮新書)』 ['09年] 山本直人.jpg 山本 直人 氏(略歴下記)

 かつて大手広告代理店・博報堂の人事部門に在籍し、現在は人材開発コンサルタントをしている人が書いた本で、新潮新書らしいサラッと読めてしまうビジネス本。
 著者の言う「ネコ型社員」とは、「『自己実現』に幻想を持たず、出世のためにあくせくせず、滅私奉公に背を向けつつも、得意分野では爪を磨ぐ」タイプとのことで、そんな「ネコ型社員」が増殖しているそうな。

 著者が挙げる「ネコ型社員」の特徴は、「1.滅私奉公より、自分を大切にする、2.アクセクするのは嫌だが、やる時はやる、3.自分のできることは徹底的に腕を磨く、4.隙あらば遊ぶつもりで暮らしている、5.大目標よりも毎日の幸せを大切にする」ということだそうで、ちょっぴり「犬型」的要素も入っているような気がしないでもないですが、本書では、名犬・忠犬・警察犬はいるけれど名猫・忠猫・警察猫はいないよねという話は冒頭あるものの、「犬型」の特徴を挙げて対比するようなやり方はしておらず、あくまで「ネコ型」について述べるのみ、これ、戦略的かも。

 ネコ型社員の信条は、「『忠誠』よりも『信義』、『上昇』よりも『向上』、『一人前』よりも『一流』」ということで、博報堂のR&D部門にもいた人らしく、こうした分類にはマーケティング的というか「博報堂生活総合研究所」的な匂いを感じなくもありません(「生活総研」×「人材コンサル」といったところか)。

 「ネコ型社員」であることを勧める共に、企業としての「ネコ型社員」の活かし方にも触れていて、「1.砂場を作る、2.見返りを求めない、3.自信を持って甘やかす」ということになるようで、それぞれについては中身を読んでいただければと思いますが、「ネコ型社員」になることよりこっちの方が難しいかも知れないとも思ったりしました。

 個人的に感性が一致したのは、転職支援の「あなたの可能性はまだまだそんなものじゃない」といった"眩しい"コピーを「自己実現熱」を煽るものとして批判している点で、元コピーライターが言うだけに説得力があったりして(「粘土上司」なども言い得て妙)。

 「ワーク・ライフ・バランス」という言葉の流行に対しても、経営側は「結局ワークを中心として、ライフとのバランスをとろうというように聞こえる」と言っているのには素直に共感しました。

 実践面でそんなに旨くいくかなという部分もありましたが、"目から鱗"とまでは行かないでも、働き方や物事への取り組み方、部下の扱い方などを少し違った角度から考察してみるには悪くない本でした。
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山本 直人 (やまもと なおと)
1964(昭和39)年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部卒業。博報堂に入社後、コピーライター、研究開発、人事局での若手育成などを経て、2004年退職、独立。著書に『売れないのは誰のせい?』など。青山学院大学講師。

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「●講談社現代新書」の インデックッスへ

さほど目新しさが感じらず、むしろ、テレビって簡単には変われないのかも、とも。

テレビ進化論.jpg 『テレビ進化論 (講談社現代新書 1938)』 ['08年]

 梅田望夫氏の『ウェブ進化論』('06年/ちくま新書)を模したようなタイトルで、本書の方もそれなりに売れたようですが、内容的にはさほど目新しさが感じられませんでした。

 コンテンツ・ビジネスの現状を、最近のトピックス(かなり瑣末なものも含まれているように思える)を織り交ぜ、「再確認」的な意味でわかり易く取り纏めてはいるものの、最近の動向や現状分析が主体で、主テーマであるはずのテレビの「今後」ということに関してはやや漠としており、角川が昔やったメディアミックス戦略(出版・TVと広告と芸能キャラクターの複合戦略)に注目していたりしますが、これって、多かれ少なかれ今はどこの局でも(NHKですら)やっていることではないかと。

 一見、「ギョーカイ」人が語るメディアの未来像みたいなムードを漂わせていますが、著者は最近まで経済産業省の官僚であった人で、TV局や映画会社など映像メディアの流通・配信に関わる産業が、いかに過去の因習やインフラ整備に係る法的な規制に縛られているかという「業界」内の産業構造の問題点が重点的に指摘されており、電波事業は郵政省の許認可及び監督事業であるわけですが、経済産業省にもメディアコンテンツ課というのがあり(著者はかつてここに勤務していた)、やはり人は自分の得意分野のことしか書けないということか、とも思ったりしました。

 但し、グーグルのビジネス技法の特徴を「直接収益のように単一の受益者に金銭対価を要求するのではなく、複数の受益者を想定し、ある受益者には無償で利益を与え、そこから、獲得した情報と引き換えに別の受益者から金銭を回収するというやり方」だとし(これも言わば"再確認"事項に過ぎないが)、こうした「情報の三角貿易」を映像ビジネス世界でも模索する動きがあるというのには関心を持ちました。

 ただ全体としては、ウェブの世界でアルゴリズム化されたOne To Oneマーケティングが進む中、テレビの方はそう簡単には変われないのではないか(「地デジ」にしても、郵政族議員の利権の上に進められているのであって、そうした双方向効果が具体的に見えているわけではない)という思いを、本書を読むことで更に強くしました。

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「●海外のTVドラマシリーズ」の インデックッスへ(「HEROES」)

「目からウロコ」と言うより、もやっと感じていたものをスッキリと表現したという感じ。

パラダイス鎖国.jpgパラダイス鎖国 忘れられた大国・日本 (アスキー新書)』['08年]海部 美知.jpg 海部 美知 氏(帯の写真は梅田望夫氏と池田信夫氏)

 「日本人は海外に行きたくなくなったし、海外のことに興味がなくなった」のではというのは、確かに言えているかも。
 本田技研に総合職一期生として就職後、米国に留学し、現在シリコンバレーで通信・IT事業に関するコンサルタントをしている著者は、こうした「自国が住みやすくなりすぎ、外国のことに興味を持つ必要がなくなってしまった状態」を「パラダイス鎖国」と呼び、これは個人レベルに止まらず、産業レベル、例えば自らが携わった携帯端末事業などにおいても、ほどほどに大きい日本市場に安住して囲い込み競争を続けているうちに世界市場にとり残されることになったような状況が見られるとしています。

 著者は、'05年の日本での夏休みの後、米国に戻った際に、日本人は「誰も強制していないけれど、住み心地のいい自国に自発的に閉じこもる」ようになったのではないかと感じ、そのことを自らのブログ「Tech Mom from Silicon Valley」に綴った際に用いた言葉が、この「パラダイス鎖国」。
 これが、翌年「月刊アスキー」編集部の目にとまり、更に2年を経て、新書として刊行されることになったという点では「ブログ本」だとも言えますが、「パラダイス鎖国を、国家とか全産業とかのレベルでどうすべきだ、なんぞという大きな話は私にはよくわからない」とブログで述べていた当初に比べると、本書では「パラダイス鎖国・産業編」という章を設け、産業統計を用いて自己の考えを検証するなどし、「ブログ本」によく見られるブログ記事を引き写しただけのような安直さ、読みにくさはありませんでした。

 著者は自らのブログで、携帯端末に関して日本の企業は、いかに大きいといっても日本市場しか相手にしておらず、特に日本ではメーカーの数が多すぎて世界で売っているメーカーと比べてスケールも違いすぎ、一方海外の安い端末は日本のあまりに進んだ市場に合わず、そのため日本で普及している製品は皆コスト高となっている、こうした状況がユーザーに割高な使用料を強いていることを指摘していましたが、すでに料金システムの見直しや端末メーカーの撤退が始まっている...。
 こうした著者の経験分野に近いところの話は(ブログと内容は重複するものの)シズル感を持って読むことができましたが、統計数字を用いた貿易収支の話などは、経済白書を読まされているような印象も。

 「パラダイス鎖国」を脱するための問題解決の提言が抽象レベルに止まっているのもやや不満で、最後は、まだキャリアの入り口にいるような人に向けての"もっと視野を拡げよう"的「啓蒙書」になった感じ。
 但し、そのことを割り引いても、個人の意識レベルの問題と産業レベルの問題を「パラダイス鎖国」という概念で貫いて示した点は評価できると思いました(「目からウロコ」と言うより、もやっと感じていたものをスッキリと表現したという感じ)。

ヒロ・ナカムラ.jpg 個人的には、「HEROES/ヒーローズ」のマシ・オカ演ずるヒロ・ナカムラの描き方について、「日本人の記号」を装飾しているが、中身は「普通の人」として描かれているとし、「パラダイス鎖国」の裏側で、アメリカ人から見た日本人の姿もまた変化してきているとしている点などはナルホドと思わされました(但し、ヒロ・ナカムラ像は、英語を母国語としながらも、流暢な日本語とブロークンの英語を操るマシ・オカこと岡政偉(おか まさのり)の異才に依るところ大のように思う。彼は頑張っているのだが、ドラマ自体は、共同脚本の常でストーリーが破綻気味であり、観ているうちにだんだん訳がわからなくなってきた)。

HEROES ヒーローズ.jpg「HEROES」HEROES (NBC 2006~2010) ○日本での放映チャネル:スーパー!ドラマTV(2007/10~2011/10)/日本テレビ

HEROES ファイナル・シーズン DVD-BOX

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「●さ行の現代日本の作家」の インデックッスへ

楽しく読めて、商法や会社法の考え方を大筋で知る上では、今でも役立つ。

I商法入門.jpg  商法入門/佐賀潜.jpg 『商法入門』 改版版/民法入門.jpg民法入門―金と女で失敗しないために (1967年) (カッパ・ビジネス)
商法入門―ペテン師・悪党に打ち勝つために (1967年)

 佐賀潜の法律入門書シリーズの1冊であり、学生時代に法律を勉強したことが無かった自分には、例えば、商法における「商人」とは何かについて、「売春婦は商人ではないが、売春宿の主人は商人である」といった説明の仕方で入る点などは興味を引かれるとともに、条文解釈が懇切丁寧で、全体を通して非常にわかり易かったです。

 今は別立ての法律となっている会社法の部分が含まれており、株式会社とは何か、取締役とは何かといったことのアウトラインも掴め、細部は法改正などで変わっている部分もありますが、商法や会社法の考え方を大筋で知るための入門書としては、今でも役立つのではないでしょうか。

 社長は取締役を解任できないが、「取締役の過半数が結託すれば、社長をクビにできる」などといったことは、本書で初めて知りましたが、その後、三越の岡田社長解任劇など、そうしたことが本当に起きるような時代になっていきました。
 取締役は原則として労働基準法ではなく商法(会社法)の適用を受けるので、企業法務に携わる仕事をする人にとっては、商法(会社法)の知識は必須のものと言えるでしょう。

佐賀潜.jpg 佐賀潜(1914‐1970/享年56)は、中央大学法学部在学中に司法試験に合格し、検事として活躍した後、弁護士に転じた、所謂"ヤメ検"でした(最近では 大澤孝征弁護士・元東京地検検事などがそう)。
 弁護士時代もやり手だったようで、それでいて、推理作家としても華々しいデビューをし、多くの娯楽作品を手掛けた人で、佐賀県出身ですが、ペンネームは、その"佐賀"に「犯人をなかなか"捜せん"」を懸けたものです。

民法入門02.jpg この作家の、小説ではないところの「法律シリーズ」は、『民法入門-金と女で失敗しないために』(これもかなり面白い。お薦め!)、『刑法入門-臭い飯を食わないために』が'68(昭和43)年にベストセラー2位と3位になったほか、『商法入門』、『道路交通法』も同年の7位と9位にランクインしていて、これはかなりスゴイことではないでしょうか。

商法入門1.jpg 表紙カバーの推薦の辞を、『商法入門』が作家の梶山李之、『民法入門』が経済評論家の三鬼陽之助が担当しているのも、時代を感じさせます(佐賀潜自身は、三島由紀夫の『葉隠入門』('67年/光文社カッパブックス)に推薦の辞を寄せている)。

 【1974年・1986改版/1990年新版[カッパビジネス『新版 商法入門―安全・確実に儲けるために』]】

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アラブ入門書としても読めるが、観光立国を目指す「CEO」的首長や「投資家」王子の存在が興味深い。

アラブの大富豪.jpg 『アラブの大富豪 (新潮新書 251)』 ['08年] ドバイ政府観光.jpg(写真提供)ドバイ政府観光商務局 http://dubaitourism.ae/japan  

 著者はアラビア石油に勤務し、サウジアラビアに長く駐在していた人で、ジェトロのリヤド事務所長を務めた経歴もあり、アラ石を定年退職後に始めたアラブ関係のブログが契機で、経済誌の取材を受けたりし、新潮社から誘いを受け本書の慣行に至ったとのこと。

 サウジアラビアの王家の歴史や政商のルーツ、アラブ人の宗教観とビジネスの関係、今回の産油国の「オイル・ブーム」の特徴や「オイル・マネー」を巡る諸国の動き、更には、石油は枯渇しないのか、なぜ湾岸諸国の多くが旧態の王制ながら政情が比較的安定しているのか、といったことまで書かれていて、コンパクトなアラブ入門書としても読めますが、面白かったのはやはり、特定の「大富豪」に絞って解説した第2章と第3章でした。 

"The Infinity Tower"(330m)-Duabi/'Palm island' - Dubai/'Burj Dubai'(800m)
The Infinity Tower - Duabi.jpgPalm island Dubai.jpg'Burj Dubai'.jpg 第2章では、UAEの1つ、ドバイのムハンマド首長に焦点を当てていて、既に「NHKスペシャル」などでも特集されたりして、「ヤシの木リゾート」や世界一の高層ビル「ブルジュ・ドバイ」をはじめとする建設ラッシュなど、ドバイの観光開発やビジネス投資が凄いことになっているのは知っていましたが、これを牽引しているのが「ドバイ株式会社のCEO」と言われる彼であるとのことで、なかなかのやり手だなあと。
 日本でも、ドバイのことを「世界中のセレブが集う夢のリゾート」と謳った観光ガイドブックが見られるようになった一方で、峯山政宏氏の『地獄のドバイ』('08年/彩図社)などという本も刊行されており、「光」の部分だけではなく、観光立国を目指す裏には「闇」の部分もあると思いますが、それはともかく、個人的には、王族の兄弟が世界各地のリゾートで放蕩し、また競馬やギャンブルで莫大な散財をしたことが、リゾート計画の立案や投機ビジネスに生かされているというのが、ちょっと面白いと思いました。

'The Kingdom Tower' (302 m)-Riyadh
The Kingdom Tower.jpg 第3章では、サウジアラビアのアルワリード王子にスポットを当て、こちらは、王族には珍しい起業家タイプで、米国のウォーレン・バフェット並みの投資家であり(実際、「アラビアのバフェット」と呼ばれている)、世界有数の大富豪でもあるとのこと。彼の率いるキングダム・ホールディングのリャドにある本拠地「キングダム・タワー」は、投資家の憧れの地みたいになっているようです。
 個人的には、彼が起業家を目指した経緯が、王家の傍流にいて、当初は父親が国王になる見込みが無かったためというのも、これまたちょっと面白い(やはり、人間どこかハングリーなところがないと、伸びないのか)。

 著者によれば、こうしたアラブ諸国は、支配者である国王が膨大な冨を国民に分配することを役割としている「レンティア(金利生活)国家」であり、額に汗流して働かなくとも(それでいて、税金は無く、医療や義務教育も無料)国民全体が生活できるというもので、著者自身は王国の将来について、近未来の範囲では楽観的に捉えているようですが、う〜ん、どうなんだろう。本書で取り上げられているUAE各国やカタルなど、人口が小さい国では、そうかも知れないなあ(使い切れずに余ったオイル・マネーはどこに流れているのか、不思議)。

 世界の長者番付に出てこない「大富豪」も沢山いるようで、オイル・マネー潤沢の王族企業は不特定多数の個人や法人から資金を調達する必要がないため、株式上場もしなければ、財務諸表も開示していないとのこと。ビル・ゲイツの資産は殆どマイクロソフト社の彼自身の保有株の時価総額が占めているわけですが、確かにアラブの大富豪王族だと、非公開企業のオーナーである彼らの保有資産額はわからない...。

「ブルジュ・ドバイ」と世界の高層ビルの高さ比べ http://v4vikram.blogspot.com  "Al Burj "(1050m=計画中)-Duabi
Al Burj.jpg「ブルジュ・ドバイ」と世界の高層ビルの高さ比べ.gif 
 
 
 
 

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さらっと読める現代「インド入門」。多民族・多宗教・多言語国家であることを再認識。

インドビジネス.jpg 『インドビジネス―驚異の潜在力 (祥伝社新書 (050))』 島田 卓 (インド・ビジネス・センター代表取締役社長).jpg 島田 卓(たかし) 氏

india it.jpg 本書によれば、11億の人口を抱えるインドは、その平均年齢がたいへん若く、毎年1200万人の新たな労働人口が生じているとのこと(高齢化の進む日本とは違いすぎ!)、しかも、彼らの多くが英語を能くし、数学に強く、IT(情報技術)力が高い―。

 60年代から始まった米国へのインド人の頭脳流出が、80年代からの米シリコンバレーのIT革命の原動力になったことは知られていますが、その頭脳がインドに還流し、今、インドITの発展に貢献しているそうで、教育熱も盛んで、インド工科大学は、「IIT(インド工科大学)に落ちたらMIT(マサチューセッツ工科大学)へ行け」と言われるぐらい難関だそうです(中国にも、清華大学という理科系分野の殆ど全てにおいて国内最高のレベルを占める特異な大学があるが、国内需要と教育熱が難易度を高めるという点で似ていると思った)。          

 本書は、インドでのビジネスを経験した著者(現在、インド・ビジネス・センター代表取締役社長)が、インドビジネス・コンサルタントの立場から、インドの政治・経済・産業の現況やインド人のビジネスの考え方を示したもので、このタイトルで〈日経文庫〉などから刊行されていれば、経済主体の解説で終わってしまっていたかも知れませんが、一般向け新書として刊行された本書では、歴史・民族・文化から社会・宗教・慣習等まで、幅広い話題をとり上げ、インドというものを多角的に捉える助けになるとともに、読み物としても読みやすいものになっています。

 とりわけ、前半部分のインド人のビジネス場面で見られる国民的特徴を紹介した部分が面白く、インド人が日本人と接するときは、最初は低姿勢で従順だが、実は彼らは大変プライドが高く、また論議好きで(インドでは「沈黙は金」ではなく「死」であるとのこと)理屈っぽいというのが元々のところであるようで、第一印象で甘く見ると後で痛い目に逢う?

 多少、著者個人の体験から来る主観もあるでしょうが、本書は後半に行けば行くほどデータブック的になってくるだけに、この前半部分の、やや放言的?なトーンは、読者を引きつけ、読後にインド及びインド人についての何らかイメージを読者に持ってもらう意図としては悪くないと思い、日本はインドのソフトパワー(人材)への投資(企業でのインターン受け入れなど)をすべきだなどの提言が盛り込まれているのもいいです。

インド紙幣.jpg 本書を読んで、インドという大国の今後の台頭を予感させられましたが、この国が多民族・多宗教・多言語国家であることも再認識させられたことの1つで、言語で言えば、地方言語を含めると300近くあるとのこと、国会議員が議場では同時通訳のヘッドフォンをしていて、紙幣には17の言語で金額が表記されているというのにはビックリしました。

 インドは映画大国でもありますが、サタジット・レイの「大地のうた」3部作みたいな教養映画は少数で、殆どがミュジカール映画とのこと。日本でもヒットした「踊るマハラジャ」なんかまだストーリーが凝っている方で、2時間ぶっ続けで踊っているシーンばかりのもあるようです(一応その中に、典型的な勧善懲悪ストーリーなどが組み込まれていたりはするが)。

                                                                    アイシュワリヤ・ラーイ
アイシュワリヤ・ラーイ2.jpgアイシュワリヤ・ラーイ.jpg でも、女優は美人が多く、本書でも紹介されているミス・ワールドになったアイシュワリヤ・ラーイというのは、いつまでもキレイ(ニックネームはアイシュ。LUX Super Rich のCMに出ていた。ダンスも上手い)。出演している映画はともかく、インドの自信とプライドを体現しているような女優だと思った次第です。この他にもインドには、シュリヤー・サラン、ヴァルシャといっシュリヤー・サラン.bmpヴァルシャ.bmpた美人女優が数多くいて、この辺りは"ボリウッド"だけでなく"ハリウッド"にも進出しています。

シュリヤー・サラン/ヴァルシャ
 
 
 
 

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なぜアメリカ人の"巡礼地"となったのかを、文化社会学的に分析。ビジネス書としても人物評伝としても読める。

ディズニーランドという聖地.gif 『ディズニーランドという聖地 (岩波新書)』 ウォルト・ディズニー (1901-1966).jpg W・ディズニー(1901-1966)

 主にアメリカのディズニーランドの歩んできた道を描いた本書は、ビジネス書としての要素もウォルト・ディズニーの評伝としての要素もありますが、タイトルの通り、いかにしてディズニーランドがアメリカ人の「聖地」となり得たのかを分析した「文化社会学」的な本としての要素が最も強いと言えます。
 但し、ディズニーについて米国人などが書いた大概のビジネス書よりもずっと楽しく読め、しかも、'90年の刊行でありながら、その後に刊行されたディズニー関連の多くのビジネス書よりも、含蓄にも富んだものとなっているように思われます。

 著者は、米国の大学院に学んだアメリカ研究者(文化人類学者)ですが、もともとディズニーランドにはあまり楽しくない印象を抱いていたのが、たまたま仕事で東京ディズニーランド開設に関与することになり、また、そこで知り合った人に勧められてディズニーの伝記を訳すことになったということで、ディズニーランドのコンセプト、ウォルトの個人史を通じて、ディズニー文化とアメリカ人、アメリカ社会との関わりを探るうえでは、ピッタリの人と言えるかも(ディズニーに関わりながらも、普通のライターやマニアとは異なる冷静な視線がいい)。

Disneyland Railroad.jpgSanta Fe & Disneyland Railroad.jpg ウォルト・ディズニーの幼少時代は、家庭的・経済的に暗いもので、ディズニーランドは彼にとって単なる遊園地ではなく(映画プロデューサーが本職の彼には、遊園地を作るという発想は無かった)、そうした暗いものを全部裏返しにしたような、彼にとっても「夢の国」であったということを本書で知りました。

Santa Fe & Disneyland Railroad (Disneyland Railroad)

 共同作業で機械的に生産されるようになったアニメーションの仕事で行き詰っていたときに、鉄道模型にハマり、それで心癒されたウォルトの気持ちが、「サンタフェ鉄道」(ディズニーランド鉄道)に込められているとのことで、その他にも、ディズニーランドのアトラクション1つ1つの歴史や意味合いがわかり、楽しく読めます(東京ディズニーリゾートに同じものがコピーされているというのも、本書が親しみ易く読める理由)

The third most elaborate Pirate walk-through plan  circa 1963.gifWalt.gif ウォルトが最後に関与したアトラクションが「カリブの海賊」ですが、実際の"カリブの海賊"に勇ましい歴史などは無く(死因のトップは性病だった)、ウォルトの故郷を模したというメインストリートも、実は彼の故郷は殺風景な町並みであり、ミシシッピーの川下りで川辺に見える景色についても、同じことが言える―。
 つまり彼は、「本物の佳作」を作ろうとしたのでなく、「ニセモノの大傑作」を作ろうとしたのであり(ディズニーランド内の開拓時代風の建物や島などは、確かにそれらの殆どがセメントで出来ている)、そこに「死と再生」の意匠が反映されていると著者は分析しています。

 アメリカ人の方が日本人よりもアメリカの歴史を知っているだろうし、ディズニーランドにある多くのニセモノに気づくのではないかと思われますが、それでも、アメリカ人にとってディズニーランドは、どんな離れた所に住んでいても1度は行きたい「巡礼地」であり、訪れた人の多くが、ディズニーランドのゲートをくぐった途端に多幸感に包まれる...。
 どうしてディズニーランドが、アメリカの歴史と文化を象徴するものとしてアメリカ人に承認されるのか、本書を読み、アイデンティtティって、リアリズムじゃなくて"ドリーム(夢見=幻想)"なのだなあと(ディズニーランドででは"夢見"を阻害するものは徹底して排除されているわけだ)、そう思いました。

「ディズニーランド」.jpgディズニーランド(テレビ番組).jpg 因みに、ディズニーランドがアメリカでオープンする前年の1954年にテレビ番組「ディズニーランド」がスタートしており、日本では4年遅れで日本テレビ系列で放送が開始され、'72年まで続きました。
 番組の冒頭、ウォルト・ディズニー本人が喋って、ティンカー・ベルが「未来の国」「おとぎの国」「冒険の国」「開拓の国」の4つ中から、妖精の粉を振りかけたものがその日の番組内容のジャンルになるという趣向が懐かしく思われます。

「ディズニーランド」Disneyland (ABC 1954~61/NBC 1961~81/CBS 1981~83)○日本での放映チャネル:日本テレビ(1958~72)

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