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「守・破・離」という従来の概念に、マネジャー、スペシャリストという概念をクロスオーバーさせたもの?

「一体感」が会社を潰す1.JPG「一体感」が会社を潰す 異質と一流を排除する<子ども病>の正体 (PHPビジネス新書)

 バブル崩壊までの高度経済成長期においては、社員は社長や上司の号令のもと、一致団結して同じ行動をとることが組織の勝利の方程式であり、そのため、組織において「一体感」や「仲間意識」を高めることが、非常に良いこととされてきた―しかし、これまでの社会情勢に合わせて発達してきたこの「一体感」や「仲間意識」が、ここに来て、たくさんの組織、会社の成長をかえって妨げているのではないか。そして、変化に適応できていない人や組織が、かつての成功モデルにしがみつき、かつて合理的であった、仲間ウチの「一体感」を高めるべく、子どもっぽい思考や行動、そして組織のあり方を続けているのではないか―。

 25年以上にわたり、30社以上の組織に経営改革のための助言をしてきた組織コンサルタントであるという著者(この人の本はあ『インディペンデント・コントラクター―社員でも起業でもない「第3の働き方」』を読んだことがある)は、こうした状況を「組織の<子ども病>」と呼び、本書前半部分(第1章~第3章)では、個人、組織文化、マネジメントの3つの観点から「コドモ組織」の以下の15のパターンを、事例でもって分かり易く示しています。著者が本書をエッセイ風に書いたブログで述べている通り、この部分は楽しく読めました。

「個人がコドモ」
 パターン1:誰が当事者?批評家ばかりの組織
  パターン2:「空気」に支配されている人たちの組織
  パターン3:「稼ぐ」ことを忘れた人たちの組織
 パターン4:仲間としか仕事をしない人たちの組織
 パターン5:忠誠心の表明を要求する上司がいる組織
「組織文化がコドモ」
 パターン6:全体最適より個別最適を優先する組織
 パターン7:必要以上に摩擦を回避する組織
  パターン8:よその部署の情報が流れてこない組織
 パターン9:例外対応ができていない組織
 パターン10:議論のための議論で満足する組織
「マネジメントがコドモ」
 パターン11:実現不可能な目標が設定される組織
 パターン12:権限と責任が不釣り合いな組織
 パターン13:優先順位がつけられない組織
 パターン14:反省しない、学習能力の低い組織
  パターン15:一流が排除される組織

 そして、続く第4章で、コドモ組織と大人組織の違いを「標準化力と同質性/専門技術力と異質性」といったように対比的に示し、コドモ組織が大人組織に変わるための3つのポイントとして、1.個人の「自立」と「自律」、2 .目的合理的な思考行動パターン、3.マネジメントのプロ化、を掲げ、それぞれ解説しています。

 この中ではまず、個人の「自立」と「自律」を具体的に考えるために、両要素を縦横の軸としたマトリクスを示しています。そして、目指すべき究極は「プロフェッショナル」乃至は「超一流」であるとの前提のもと、「丁稚」→「一人前」→「自律」というプロセスを経て次に「統合的役割」に至るのが通常だが、「自律」での研鑽が足りないために、次段階の「プロフェッショナル」に至る前に厚い壁があるとし、また、「一人前」段階で「一流」を目指すにしても、「一人前」から「自律」を経ないでそこへ行こうとするから、やはりそこには厚い壁があるとしています。つまり、「プロフェッショナル」への道と同様、「一人前」から「自律」へ行き、そこで研鑽を積むことで初めて「一流」「超一流」への道が開けるというものです。

 そして、コドモの組織から大人の組織になるためには、「目的合理的な思考行動パターン」が求められ、それは例えば、自分の仕事にこだわりを持ち、自分がやるべき仕事を深く理解して、自分のやりたい仕事ができる組織で働くことができることが目的合理的ということになると。そこで摩擦が起こるのは当たり前であり、それを回避するのではなく、摩擦が発展の糧となると考えるべきだとしています。

 更に、「マネジメントのプロ化」とは、専門家の持つ多様性を束ねて機能的に統合し、共通の目標を実現させるようにすることであり、一流から一目置かれる「眼力」と「質問力」を有するのがマネジメントのプロであり、また、大人の組織はルールではなくプリンシプルで動き、プロセス制御ではなく結果制御であるとしています。

そして、最後の第5章では、組織がコドモの組織である状況で、大人になるための戦略を、「一流の仕事人」の日常を通して解説し、一流の技術者、プロフェッショナルとして大切にしたい要素として、1.自助努力、2.連携、3.正直かつ率直、4.ポジティブ、5.基準を高くもつ、の5つを挙げています。

 全体を通して啓発的であるだけでなく理論構成もしっかりしていて、書かれていることは異を唱えるものではありませんが、考え方は、本書の中にも出てくる「守・破・離」という従来の概念と、マネジャー、スペシャリストという概念をクロスオーバーさせたものであるように思われました。

 但し、現代ビジネスに求められる高度の専門性や、常に変革が求められる時代環境に即した、新たなマネジャー、スペシャリスト像を示しているという点では評価できると思います(「一体感」を批判していると言うより、「自律」段階にある人を異質なもの、または脅威として潰してしまう組織体質を批判している本だと思った)。

 一方で、「一流」「超一流」という言葉を使っていることにやや引っ掛かりました。スポーツにおけるスター選手などと違ってビジネスの現場では、「一流」の仕事をしている人って意外と自分が「一流」だという意識は無かったりするのではないかなあ。まだ「丁稚」段階にある人に向かって、あんまり「一流」ということを言いすぎると、逆に「守・破・離」の「破」をすっ飛ばして「離」に行こうとして、著者が意図したものと逆の結果を生むことに繋がる気もするのですが、杞憂に過ぎないものでしょうか。 自己啓発書的要素もあり、読む人によって相性の違いはある本だと思います。

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手軽に読めるがややインパクトは弱いか。若手ビジネスパーソンへのサバイバルのための指南書?

崩壊する組織にはみな「前兆」がある 1.jpg崩壊する組織にはみな「前兆」がある: 気づき、生き延びるための15の知恵 (PHPビジネス新書)

 三菱商事で10年間海外プロジェクトを担当後、ボストン・コンサルティンググループ(BCG)で19年間内外の一流企業に経営アドバイスを行ってきたという著者(現在は経営大学院教授)が、企業組織が崩壊に向かう「前兆」となる現象を紹介するとともに、その問題点や発生原因を解説したものです。読者ターゲットは、キャリア半ばのビジネスパーソンであるとのことで、そのため、大手コンサルティングファームの出身者が書いた本であるわりには、"田の字"の図説が多用されているようなものに比べ、分かり易く書かれているように思いました。

 本書で取り上げられている15の前兆とは、「沈黙する」「どなり合う」「ブンブン回る」「飾り立てる」「コロコロ変わる」「誇大妄想する」「はしごを外す」「浮かれる」「MBAする」「面従腹背する」「密談する」「ぐちゃぐちゃになる」「からめとられる」「別居する」「マヒする」「落下する」の15です(なぜか16あるね)。

 これらの前兆の発生に大きく影響する要因として、①企業のライフサイクル・ステージ、②企業のDNA、③そのときどきのリーダーのタイプの3つがあり、これらが組み合わさってこうした前兆が生まれるとしています。15の前兆の並べ方は、概ね企業のライフサイクル・ステージに沿ったものであり、「ブンブン回る」あたりから創業期、「浮かれる」あたりから成長期の問題となり、「面従腹背する」「密談する」あたりで成熟期・再生期、「マヒする」「落下する」で衰退期から組織崩壊へ至るとしています。

 15の前兆は、何となく読む前から内容が分かりそうなものもありますが、そうでないものも、各章の冒頭に具体的な事例が紹介されていて、読み始めればすぐにナルホドなあと。例えば「飾り立てる」の章では、経営者が美術品や競走馬にはまった例が紹介されていますが、経営トップ自らが「経営者本」を出したりして、メディアなどで飾り立てられている組織も、顕在的・潜在的両面で問題を内包している可能性が高いとしています。

 「はしごを外す」とは、リスクのある仕事を他人にやらせてその成否を見極め、うまくいけばすかさず自分の手柄にし、うまくいかなければ責任を他人に押し付けて逃げることであり、テレビドラマ「半沢直樹」を思い出してしまいました。ドラマでは、そうした上司に立ち向かう主人公がヒーローとして描かれているのに対し、本書のスタンスは、若いビジネスパーソンの立場に立って、そうしたことが蔓延する組織をどう見切るか、その"見切り"のポイント、ビジネスパーソンとしてのサバイバル方法を指南していると言えるかと思います。

 ただ、個人的に思うに、若いビジネスパーソンの方が意外とこれらの組織崩壊の前兆に敏感であり、むしろ、本書にもあるように、危機感覚が「マヒする」ことになりがちなのは、"組織の中にどっぷりと浸かっている"ベテランだったりするのではないかなあ。

 著者は、15の前兆の中で最も危険なものを一つ選べと言われれば、「沈黙する」(会議などで出席者が口を開かないこと)を選ぶとしており、ベテランの経営コンサルタントが、どのような視点で企業診断を行っているかを知るうえでは興味深い面もありました。ただ、人事パーソンの目線からすれば、全体としてはそれほどインパクトのある本ではないかも(まあ、一応、自らの組織の中で起きていることが、組織崩壊の"前兆"に該当するかどうかを振り返ってみる分には悪くない、と言うか、手軽に読める本ではありますが。

《読書MEMO》
●出席者が会議で沈黙する
役員会での沈黙、部門会議での沈黙、労使懇談会や職場をよくする会での沈黙。せっかく議論するために集まっているのに、みな口を開かない。(中略) 多くの場合、沈黙の会議は、その組織に何か大きな不具合が生じていることの「兆候」と考えてよい。役員会が静かで、議論が活発化していない企業は、おそらく経営的に問題があると疑ってよい。この例の会社もそれから間もなくして、経営不振に陥り、社長も退任させられてしまった。
●経営者が美術品や馬にはまる
これも有名な話だが、ある成功した技術系新興企業の経営者が、ふとしたはずみで馬主になったらその魅力に取りつかれ、ついには巨額の資金を競馬に投じるようになってしまった。しばらくして彼は、会社の役員会で社長を電撃的に解任されてしまった。一説には、彼が「競走馬育成事業」を会社の中核事業にしようと目論んだため、他の役員がそれを阻止するためだった、とも言われている。そのまま競馬事業に突き進んでいたら、その会社の経営はどうなっていただろうか。
●「はしご外し」が蔓延する
正しいことやチャンスがあることでも、そのリスクが目について、自分ではなかなか先頭を切れなくなる。そこで他の人にやらせて、その成否を見極める。うまくいけばすかさず前に出て、自分の手柄にするし、うまくいかなければ首を引っ込めて、責任をそいつに押し付けて逃げる。(中略)もちろん、こうした「はしご外し」行動が蔓延すれば、その組織には徐々に活力が失われ、もはやかつてのようなダイナミックな成長は期待できない。緩やかに衰退していくしかない。
●幹部社員が不審な行動をとる
会社の社員、特に幹部社員に不審な行動が目立つようになると、危険な兆候であることが多い。ひそひそ話、密談、長時間の離席、非常階段や喫煙コーナーなどでの長い携帯電話、会議の席などで目を伏せる、目を合わせない......。こうした行動がしばしば目撃されるのは、組織崩壊の前兆である。幹部や社員は、さまざまな理由で、会社を逃げ出そうとしている可能性が高い。
●利害関係者が多い
こうした体験を通じて、私が考え出したのは、「ステークホールダーの数と意思決定スピードは二乗に反比例する」という法則である。この意味は、ステークホールダーの数が、たとえば4人から5人へと2倍になると、意思決定のスピードは、2×2=4の逆数で4分の1に落ち、意思決定にかかる時問は逆に4倍に延びるということである。ステークホールダーが多いことは、それだけ組織の足を引っ張り、うすのろの組織にする絶大な効果があるということだ。
●「やつら対われわれ」と言いだすようになる
合弁会社や統合会社は、男女の結婚のようなものである。最初は、相思相愛の熱烈な恋愛感情で結ばれたカップルも、結婚して一緒に暮らすようになると、「こんなはずではなかった」という思いが生じ、両者の間に冷ややかなすきま風が吹くようになる。(中略)会話の中に、「やつら対われわれ」というような表現が出てくるのは、パートナー間に不信感が蔓延していることの表れである。こうなると、組織の崩壊も間近である。
●組織の中に浸かってマヒする
想定外の事故が起きたとき、事故調査委員会などが組織されて、事故原因を調査する。そうすると、経営が緩んでいた兆候や、事故が起きる伏線あるいは予兆がいたるところに出てくる。それに対して、調査委員会もまたメディアも「想定できたじゃないか」とか、「事前になぜ手を打てなかったのか」とか、「経営陣の怠慢だ」と責めることになる。(中略)しかし、実際に事故発生前の組織の中にどっぷりと浸かっていると、そうした兆候がいたるところにあったとしても、気がつかない。あるいは気がついていても手を打とうという行動にはならない。「まあ今まで大丈夫だったし...」とか、「自分の任期中には目をつむろう...」となるわけである。

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「●組織論」の インデックッスへ ○経営思想家トップ50 ランクイン(ピーター・M・センゲ)

「組織学習」の名著。核となる提案部分(5つのディシプリン)は旧版と同じ。旧版でも問題ない。
学習する組織0.JPG学習する組織 2011.jpg  最強組織の法則 - 原著1990.jpg  Peter M Senge .jpg
学習する組織―システム思考で未来を創造する』(2011/11 英治出版)/『最強組織の法則―新時代のチームワークとは何か』(1995/06 徳間書店) Peter M Senge

Peter M Senge 2.jpg 著者のピーター・M・センゲ(Peter M. Senge)はマサチューセッツ工科大学スローン経営大学院の組織センター長であり、本書のオリジナルに当たる1990年にセンゲが発表した『最強組織の法則―新時代のチームワークとは何か(The Fifth Discipline : The Art & Practice of The Learning Organization)』('95年/徳間書店)は、「ラーニング・オーガニゼーション(学習する組織)」というコンセプトを提唱したことで知られています。本書『学習する組織―システム思考で未来を創造する』('11年/英治出版)は、原著の2006年改訂版(原題同じ)であり、書き加えられた「学習する組織」の実践上の課題やそれを乗り越える事例と併せて、旧版の翻訳で一部割愛されていた内容を補完したものです。

 全5部構成の第Ⅰ部において、著者は、世界では物事の相互の繋がりは一層深まり、ビジネスは複合的でダイナミックになっていて、そうした中、仕事はもっと「学習的」にならなければならず、それは、会社のために誰か1人が学べばいいというものでもなく、また、トップが解決策を見つけ、社員がその大戦略家に付き従うという方法でももはや成功できず、これからはあらゆるレベルの社員から学習する意欲と能力を引き出すことができる企業こそ成功していくだろうとしています。

 従って、マネジャーは社員に①新しいアイデアに柔軟に対応する、②互いに気兼ねなく率直にコミュニケーションする、③企業がどのように運営されるべきか、深く理解する、④集団的なビジョンを構築する、⑤共通の目的を達成するために力を合わせる、といったことを奨励すべきだとしています。

 そのうえで、学習する組織には5つの基本的なディシプリン(構成要素)があるとしており、それらは以下の通りであるとともに(本書で意味する"ディシプリン"とは、学習し習得すべき理論及び技術の総体を指す)、第Ⅱ部において「システム思考」(第1のディシプリンとして重要視されるこのシステム思考は、これに続く他の4つを統合するものとされる)、第Ⅲ部において残りの4つのディシプリンについて解説しています。

①システム思考:全体のパターンを明らかにし、それを有効に変えていく視点でものを考えること。このシステム思考によって全体を纏め、一貫した実行プランが構築できる。
 センゲの組織研究のアプローチは一貫して、組織を独自の行動様式と学習パターンを持つ一個の生きた存在と捉えるシステムアプローチであると言えます。彼はここで、問題を頻発させたり成長を抑制したりする反復性のパターンをマネジャーが見抜くのに役立つ「システムの原型」の考え方を紹介しています。

②自己マスタリー:現実を客観的に捉える。そのために、個人の視野を拡げ、常に現実への理解を深めていくことの重要性を意識的に認識する必要がある。
 現代のマネジャーは誰でも個人のスキルや強みを開発することの大切さを認識していますが、センゲはこの考えからさらに一歩踏み込んで、学習する組織における個人の心の成長の重要性を強調しています。真に心が成長すれば、現実をよりはっきりと認識するようになるとして、心の成長によって現実をもっとはっきりと見据えることを教え、ビジョンと現実との違いを際立たせることにより、創造的な緊張関係を生み出すことが出来るとしています。そしてこの緊張関係から効果的な学習が生まれると。センゲの言う「学習する組織」とは、「自分が大切だと思うことを達成できるように自分を変える」ことにより「自分の未来を創造する能力を絶えず充実させている人々の集団」であると。

③メンタル・モデルの克服:自分たちの心に知らないうちに固定化されたイメージや概念(メンタル・モデル)を分析し、精査する。
 システムアプローチの次なる要素としてセンゲが強調しているのは、メンタル・モデルであり、センゲは、マネジャーたちに組織の価値観や理念を裏で支えるメンタルモデルを構築することを要求しています。組織レベルで培われてきた既成の思考パターンの影響力の大きさに注意を促し、これらのパターンの性質を検証するオープンな仕組みづくりが必要であるとしています。

④共有ビジョンの構築:組織内で共通のアイデンティとミッションのもとに個人を結束させる。そのためには、お題目だけのビジョンではなく個々が心から納得し、参加できるような共通の「将来像」を掘り起し、コミュニケーションを続ける必要がある。
 真の創造性やイノベーションは集団の創造性に基づくものであり、また、集団のビジョンはメンバーの個人的なビジョンの上に構築されるものであって、メンバーが集団のビジョンを自分と切り離すことなく考え始めたときにビジョンの共有が可能になるとしています。

⑤チーム学習:現代の組織では、個人ではなくチームで成果を出し、そのための学習の基礎を構築する。そのために対話と議論という2つの実践が伴う。チームが学び、成長できなければ集合体としての組織も成長できない。
 ここでは、効果的なチーム学習のためには、「ダイアローグ」(dialogue)と「ディスカッション」(discussion)という2つの異なる対話方法をうまく使い分けることが必要であるとしています。ダイアローグ(意見交換)は問題点をどんどん探し出してゆくことであり可能性を広げるものであり、ディスカッションとは将来の意思決定のために最善の選択肢を絞り込む作業であると。これらの2つのプロセスは相互補完的ではあるが、別々のものとして考えなければならず、実際には両者を意識して使い分けられるチームは残念ながら殆ど見当たらないとしています。

 本書で挙げられている事例を見ればわかる通り、企業をラーニング・オーガニゼーションに変身させるのは簡単なことではなく、それは何故かと言うと、最大の理由は、マネジャーが今まで持っていた権力や権限を手放し、学習している人に渡さなければならないからだとしています。社員が学習するためには試行錯誤が必要であり、とりわけ(旧来型の)責任追及型の企業文化であればそれは大胆な変革が必要となると。また、ラーニング・オーガニゼーションを築くには、信頼と関与が必要であり、これも多くの企業で欠けているとも言っています。

 旧版『最強組織の法則』第Ⅳ部では、「創造への課題」を取り上げ、この中では「仕事と家庭の対立は終わる」といったワーク・ライフ・バランスに対する早くからの炯眼を窺わせる記述もあり、第Ⅴ部では。「組織学習の新しいテクノロジー」を事例を交えて解説していました。新版『学習する組織』第Ⅳ部は、「実践から振り返り」となっており、第Ⅴ部が「結び」となっています。

 基本となる第Ⅰ部から第Ⅲ部までは『最強組織の法則』も『学習する組織』も同じ内容なので、どちらを読んでも構わないかと思います。取り上げている事例の部分で旧版の方が「アメリカ企業はなぜ日本企業に敗れたのか」といった例が多くなっているのが、やや時代を感じさせるぐらいしょうか。「組織学習」の名著としての評価は定着しているのではないかと思います。
 旧版1,900円、新版3,500円(何れも本体価格)。旧版の日本語タイトルは不評でしたが、旧版の方の訳が古びているとか硬いとかいったことはなく、読む上では旧版でも全く問題ないかと思います(むしろ旧版の方が単独翻訳者なので、訳調が統一されているかも)。

【2201】 ○ グローバルタスクフォース 『あらすじで読む 世界のビジネス名著』 (2004/07 総合法令)
【2202】 ○ ダイヤモンド社 『世界で最も重要なビジネス書 (世界標準の知識 ザ・ビジネス)』 (2005/03 ダイヤモンド社)

《読書MEMO》
●企業が抱える7つの学習障害
①「職務イコール自分」:
 個人が自分の職務だけに気を取られると、全ての職務が関連し合って生まれる結果に対して責任が薄れ、職務間の連携が阻害される。
②「敵は向こうに」:
 自分の仕事にしか目が向かないと、何のために仕事しているのかという本質的な目的や、自分の行動の影響が職務の範囲を超えてどう拡がっていくのかを認識できなくなる。そんな中、自分の仕事の結果が悪い形で出てくると、理由を外に向け、自分以外のせいにしようとする。
③積極策の幻想:
 「向こうの敵」と戦かおうとひたすら攻撃的になるとすれば、人は受身に反応しているということになる。これは積極策の幻想であり、真の積極性は、自分の抱える問題にどのように寄与するかの見通しから生まれる。
④個々の出来事に捉われる:
 我々の組織及び社会の生き残りにとっての中心的脅威は、不意の出来事からではなく、徐々にゆっくり進行するプロセスからくること。
⑤茹でられた蛙の寓話:
 徐々に変化していくプロセスを見極める力を養うには、現在の慌ただしいペースを緩め、全体像を見極めた上で、派手なものだけでなく目立たないものにも注意を払う必要がある。
⑥体験から学ぶという錯覚:
 人は経験から最も多くのことを学ぶが、重要な決定の場合は大抵(その影響が長期にわたるため)、その帰結を直接には経験しない。
⑦経営チームの神話:
 経営チーム=組織の様々な機能と専門分野を代表する有能で経験豊富な管理職の一団のはずが、実際には会社の現状を擁護し、保身のための能力だけに長けた「熟練した無能」集団と化す。
●システム思考の法則
①今日の課題が昨日の「解決策」からくる。
②システムは押せば押すほど強く押し返す(補償的フィードバック)
③状況は一旦好転してから悪化する
④安易な出口は通常元に戻る
⑤治癒策が病気そのものより問題になることがある
⑥急がば回れ
⑦原因と結果は時間的・空間的に近隣しているとは限らない
⑧小さな変化が大きな結果を生むことがある。しかし一番効果のある手段はしばしば一番見えにくい。
⑨ケーキを手に入れ、しかも味わうことができる(同時にではないが)
⑩1頭の象を分割しても2頭の小象にはできない
⑪罪を着せる外部はない...etc.

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MBA教科書の要約版。組織行動論の定番的教科書。これ一冊で組織行動論を概観できる貴重なテキスト。

【新版】組織行動のマネジメント.jpg
組織行動のマネジメント 旧.jpg                  Stephen P. Robbins.jpg
組織行動のマネジメント―入門から実践へ』['97年] Stephen P. Robbins

【新版】組織行動のマネジメント―入門から実践へ』['09年]

 経営に携わる人、経営を学ぶ人にとっての定番的教科書とされている本書(原題:Essentials of Organizational Behavior)は、MBAの教科にあるOrganizational Behavior(OB=組織行動論)の授業で使われる教科書の要約版であり、訳者もあとがきで書いているように、グローバル・スタンダードなマネジメントの教科書ではあるが、基本的にはアメリカのビジネス価値観に根ざしているものとしています。言い換えれば、「グローバル市場で競争するとき、仮に競争相手がMBAホルダーなら、人と組織のマネジメントはこの教科書で学んでいると想定するほうがよい」としています。

 原著は近年は毎年改版されていて、最新版は第12版(2013年現在)になり、邦訳は、旧版が第5版、新版が第8版を訳していて、改版に翻訳が追いつかない傾向もありますが、組織行動論に関する教科書的な本が日本にはあまりない現況では、(要約版であっても)これ一冊で組織行動論を概観できる貴重なテキストかと思います。

 本書では、組織行動学を、個人的なレベルからグループのレベル、組織システムのレベルへと3つの分析レベルで捉えています。

 第1部で組織行動学とは何かを説いたあと、第2部では組織における個人の問題を扱い、個人の行動の基礎―価値観、態度。認知、学習に目を向け、それから、動機づけの問題と個人の意思決定の問題に移っています。

 第3部ではグループ行動の問題を取り上げ、そのモデルを紹介し、チームの効率を高める方法について考察、更には、コミュニケーションの問題やグループの意思決定について考え、リーダーシップ、権力、政治的な駆け引き、対立、交渉という問題を探っています。

 第4部では、組織の構造、テクノロジー、職務設計がいかに行動に作用するか、組織の公式の業績評価や報酬システムが人々にいかに作用を及ぼすか、組織の独自の文化がいかにそのメンバーの行動を形づくるか、更には、マネジャーが組織の利益のためにどのような組織変革や開発のテクニックを利用して、部下の行動を導くかといった問題を扱っています。

 以上の内、第2部では、主だった動機づけ理論が網羅されているとともに、MBO(目標管理)などへのその応用が述べられ、また、意思決定のスタイルとモデルなども示されており、第3部では、集団行動の基礎、チームとは何か、コミュニケーションの機能とプロセスなどが述べられ、更に、主だったリーダーシップ理論が紹介されるとともに、パワー理論などにも触れ、第4部では、組織構造の定義や類型、組織文化の特性と人材管理の考え方及び方法、組織変革や組織開発のモデルや方法などが示されています。

 本書一冊で、組織行動に関する代表的な理論が、心理学や社会学など様々な学問から得られる知見も織り交ぜながら紹介されており、個人→グループ→組織という各分析レベルと全体プロセスの流れの中でそれらを概観できるようになっている点が、本書の良書たる所以でしょう。

 新訳では、グローバル化、情報化、多様化が当然となっている経営環境で、人と組織をいかにマネジメントするかが重点的に述べられていますが、そのポイントとして「チーム化」と階層の「フラット化」を掲げ(激変する時代の組織でチームを多用するのは、その有機的組織特性が革新を生む源泉となる)、但し、チーム化やフラット化が万能のものではないことも指摘しています。

 組織論を学ぶには、こうした関連項目を系統立ててしっかり押さえてある本に先に目を通してから、リーダーシップ論やモチベーション論などの各論に当たる方が、ばらばらと啓蒙書的なリーダー論に当たるよりは、圧倒的に効率がよいように思います。

 語学に自信がある人は原著の方がお奨め(エッセンシャル版で充分)。ほぼ毎年改訂されているというだけでなく、ふんだんにビジュアライズされていて概念把握がし易くなっています。

 因みに、著者のスティーブン・P・ロビンスは、米国マスターズ陸上殿堂のメンバーであり、個人短距離走で11度の世界タイトルに輝き、米国と世界の年齢別記録を何度も塗り変えているそうな。

【2201】 ○ グローバルタスクフォース 『あらすじで読む 世界のビジネス名著』 (2004/07 総合法令)

《読書MEMO》
●目次
1.組織行動論とは何か
2.個人の行動の基礎
3.パーソナリティと感情
4..動機づけの基本的なコンセプト
5.動機づけ:コンセプトから応用へ
6・個人の意思決定
7.集団行動の基礎
8・"チーム"を理解する
9・コミュニケーション
10.リーダーシップと信頼の構築
11.力(パワー)と政治
12.コンフリクトと交渉
13.組織構造の基礎
14.組織文化
15.人材管理の考え方と方法
16.組織変革と組織開発

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ホールシステム・アプローチの"思想"と"枠組み"を理解するうえでは良かった。

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俊敏な組織をつくる10のステップ2.jpg
       ホールシステム・アプローチ.jpg  ワールド・カフェをやろう.jpg
俊敏な組織をつくる10のステップ』['12年]『ホールシステム・アプローチ―1000人以上でもとことん話し合える方法』['09年]『ワールド・カフェをやろう!』['11年]

 本書は同じ著者らの前著『決めない会議―たったこれだけで、創造的な場になる10の法則』('09年/ビジネス社)、『ワールド・カフェをやろう!』('09年/日本経済新聞出版社)、『ホールシステム・アプローチ―1000人以上でもとことん話し合える方法』('11年/日本経済新聞出版社)などに続く、「ホールシステム・アプローチ」の入門書です。

 「ホールシステム・アプローチ」とはアメリカ生まれの会議の手法であり(ベースにはピーター・センゲの「学習する組織」の考え方がある)、検討すべき課題に関係するすべての関係者を集めて、共通の課題や目指したい未来などについて話し合う大規模な会話の手法の総称であるとのことですが、今回の本書では、ホールシステム・アプローチを単なる会議の手法として取り上げるのではなく、組織変革プロセスの視点から加筆されています。

The World Café.jpg ホールシステム・アプローチの代表的な手法には、ワールド・カフェやOST(オープンスペース・テクノロジ―)、AI(アプリシエイティブ・インクワイアリ)、フューチャー・サーチなどがあり、これらの会議の特徴は、無理に結論を出そうとしたり、結果を出すことに最初からこだわらないで、むしろ話し合いの質やプロセスに気を配り、参加者同士の関係の質を向上させることを大切にしているところであり、こうした「決めない会議(決めようとしなくても決まってしまう会議)が今注目されているとのことです。

The World Café(上・イメージイラスト/下・解説図)

ワールドカフェ01.gif 本書によれば、ホールシステム・アプローチによる組織改革においては、組織の階層や部門の違いを超えた密接な社内コミュニケーションを維持し、多様なものの見方や意見を尊重し、自由活発な意見交換がなされ、また、組織が何を実現したいのか。そのために何が必要なのかを全員が共有することを目的とするとのことで、それが、本書のタイトルにある「アジャイル(俊敏)な組織をつくる」ということになります。
 
 本書では、そのためのホールシステム・アプローチによる組織改革プロセス、並びに、ワールド・カフェやOSTといった手法がそのプロセスのどの手法をカバーするかを示すとともに、ホールシステム・アプローチによる変革プロセスを組み立てる際のポイントとなる10の視点を挙げていて、それらについての解説が、実質的な本書の"本編"となっています。

 また、後半は、ホールシステム・アプローチのワークショップを組み入れて組織や地域の変革をプロセスとして展開している企業、自治体、業界、海外の事例が詳しく紹介されており、ワークショップの在り様がイメージしやすくなっています。

 前著から続編的な側面があり、AIやOSTといった用語がいきなり出てきますが、それらについては巻末で解説されているため、この分野が初めての読者は、先にそちらに目を通した方がいいかもしれません。

 ホールシステム・アプローチの"思想"と"枠組み"を理解するうえでは良かたと思います。人事パーソン的な視点からすれば、ファシリテーターとして社内ワークショップを成功させるためのテクニカルなポイントについてもう少しあれば、例えば社内ワークショップの運営を想定した際のイメージが掴みやすかったのではないかという気もしますが、そうなると、一冊の入門書にあまりに多くのことを求め過ぎることになるのかも。

 本書とは別の切り口からホールシステム・アプローチの"思想"を解説するとともに、リーダーシップ研修にホールシステム・アプローチを採り入れた事例なども紹介されている、高間邦男 著『組織を変える「仕掛け」―正解なき時代のリーダーシップとは』(2008年/光文社新書)などを併せて読んでみるのもいいのではないかと思います。

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組織にも「感情」特性ごとの処方箋。人間性善説に依拠した啓蒙書? 前著の方が良かった。

職場は感情で変わる.png職場は感情で変わる (講談社現代新書)』['09年] 不機嫌な職場―なぜ社員同士で協力できないのか.jpg不機嫌な職場~なぜ社員同士で協力できないのか (講談社現代新書)』 ['08年]

 前著(コンサルタント4人の共著)『不機嫌な職場―なぜ社員同士で協力できないのか』('08年/講談社現代新書)では、社員同士での協力関係が生まれないために、職場がギスギスして、生産性も向上せず、ヤル気のある人から辞めていく、こうした組織における協力関係阻害の要因はどこにあるのかを、「役割構造」「評価情報」「インセンティブ」という3つのフレームで捉えていました。

 例えば、「役割構造」の変化については、従来の日本企業の特徴であった個々の仕事の範囲の「緩さ・曖昧さ」が、協力行動を促すことにも繋がっていたのが、成果主義が導入されると、今度は、個々は自分の仕事のことしか考えなくなり、外からは誰が何をしているのかよくわからなくなって、仕事(役割)が「タコツボ化」しがちになっているが今の状態であるとし、そのことが結果として、組織力の弱体化に繋がっているとした分析は、明快なものであったように思います。

 前著共著者の1人による本書は、「ベストセラー『不機嫌な職場』の解決編登場!」というキャッチコピーで、組織にも「感情」特性があるという視点から、それを「イキイキ感情」「あたたか感情」「ギスギス感情」「冷え冷え感情」の4象限に分類し、それぞれの処方箋を示しています。

 「イキイキ感情」というのは、①高揚感(ワクワクする気持ち)、②主体感(自らやってみようという気持ち)、③連帯感(みんなでがんばろうという気持ち)であり、「あたたか感情」というのは、①安心感(ここにいても大丈夫だよという気持ち)、②支え合い感(お互いに助け合っているという気持ち)、③認め合い感(自分は必要とされているという気持ち)であって、「ギスギス感情」や「冷え冷え感情」を「イキイキ感情」「あたたか感情」に変えていくことが大切だが、それが行き過ぎて「燃え過ぎ感」や「ぬるま湯感」に陥らないようにしなければならないと。

 組織力は個々人の力と個人間のつながりで決まるとの考えに則り、まず、個々人が良い方向に変わっていくことから始めようという、その趣旨はわからないでもないですが、同じことが前著の範囲内で繰り返し何度も書かれているようにも思え、そのトーンも、何となく自己啓発セミナーそのそれに近い感じがしました。

 1人の人間が組織全体をも変えてしまうケースはままあるわけで、書かれていること自体を否定はしませんが、あまりに"人間性善説"的なもの(或いは、マクレガーの「Y理論」的なもの)に依拠し過ぎている感じ。

 前著『不機嫌な職場』とどちらか1冊と言われれば、前著『不機嫌な職場』の方が圧倒的にお奨めで、人事担当者、教育研修担当者や組織リーダー、チームリーダーが次に読む本としては、経営コンサルタントの高間邦男氏の『組織を変える「仕掛け」―正解なき時代のリーダーシップとは』('08年/光文社新書)あたりになるのではないでしょうか。個人的には、そちらの方が、より地に足のついた組織変革の実践論となっているように思えました。

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参考にならないわけではないが、あまりに「リクルート」回顧調。
  
職場活性化の「すごい!」手法.png 『職場活性化の「すごい!」手法 (PHPビジネス新書)』 ['09年] 組織を変える「仕掛け」.jpg 高間 邦男 『組織を変える「仕掛け」 (光文社新書)』 ['08年]
 
 『組織を変える「仕掛け」-リーダーシップとは』(高間邦男著/'08年/光文社新書)を読んだ後に、実際の"テクニカル編"に当たるような本かなと思い本書を読みましたが、う〜ん、この著者はリクルートのトップ営業だったそうで、「やまびこあいさつ」、「寄せ書き」「社員図鑑」「社内パーティ」等々、いかにも「リクルート」という印象を受けました(他社の事例も多少はあるが)。

 職場を活性化するための手法が具体的に幾つも紹介されていて、その背後にある著者の考え方には異を唱えるわけではないですが、実際この本に書かれているようなことをやって効を奏す会社(職場)とそうでもない会社(職場)があるのではないかとも。

 著者自身、重厚長大で伝統的な企業には、「リクルートのようなイケイケ・ドンドンの社風は異次元のものに映るに違いない」、「工場や研究所の活性化のために太鼓や鳴り物で鼓舞激励するような手を使うというのは、TPOがずれているだろう」と最初に断りながらも、紹介されている例の多くは、リクルートで著者自身が経験したものです。

 著者がいた頃のリクルートは、単一または少数の自社メディアを掲げ皆で一斉にセールスにかける、そうした営業スタイルが主体だったのではないでしょうか。
 一見、最近のベンチャー企業と似てなくもないですが、例えばITベンチャーでも回線リセールのような業務を主体とする会社と、コンテンツ・ビジネスを主体とする会社では大きく業態が異なり、後者の方は、下手すると社員数だけの職種があったりするわけで、そうした意味では「研究所」的な要素もあって、ベンチャーだからと言って、本書にあるような手法が向いているとも限らないのでは。

 但し、社風や職場風土に似つかわしくないかなと思われることでも、職場のムードを変えるために、ある時期、思い切ってやってみた方が良いというようなこともあるでしょう。
 ナレッジ・マネジメントにおける「場」の考え方にあるように、インフォーマル・コミュニケーションの充実が図られるならば、それが人と人の関係や職場の活性化に寄与するところは大きいと思います。

 「社内報」や「社内イベント」などは、かつて企業業績が好況だった時期には、別にそうした意図のもとでなくても、自然発生的にあったように思います。
 今は、入社以来そうしたことを経験したこともなく、日々の業務に追われている人が、企業の若手社員には結構多いのでは。

 本書に紹介されている活性化事例が参考にならないわけではないですが、「リクルートではこうしていた」的な話ばかりで、冒頭の断り書きを除いては、その方式がどの会社や職場でも通用するような感じで書かれているのがやはり気になりました。
 著者が若手社員だった頃と今とでは社会情勢も就労意識も異なるし、また、その中でも当時のリクルートは特殊な会社だったわけです。
 帯にある「これだけあればどれかは効く!」というのは確かかもしれないけれど、どれが自社に効くかというのが難しいわけであって、その辺りを冒頭の一言で済ませているのはちょっと乱暴な感じも。

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理念的に纏まっていて、且つ、地に足のついた組織変革の実践論・手法論となっている。

組織を変える「仕掛け」.jpg 『組織を変える「仕掛け」 (光文社新書)』 ['08年]  リーダーシップの旅.jpgリーダーシップの旅 見えないものを見る (光文社新書)』 ['07年]

 『組織を変える「仕掛け」-正解なき時代のリーダーシップとは』は経営コンサルタントの高間邦男氏による組織変革並びにリーダーシップに関する本で、同じくAmazon.comのレビューの評価が高かった『リーダーシップの旅-見えないものを見る』(野田智義・金井壽宏著/'07年)と共に読みましたが、『リーダーシップの旅』は、リーダーシップは先天的なものか後天的なものかという論争には意味がなく、後天的な環境がリーダーを育むものであり、「すごいリーダー幻想」に惑わされてはいけないと説きながらも、例に引いてくるのが歴史上の偉人や有名な経営者など「すごい」人物ばかりで、却って「すごいリーダー幻想」を助長しているような気もしました(横文字がやたら多いにも気になった)。

 斬って捨てるような本ではないし、部分部分では共感するのですが、何となく肌に合わなかったというか、自分はこの本向きの読者では無かったのかも。

 一方、高間氏の『組織を変える「仕掛け」』の方にも横文字は少なからず出てきますが、こっちの方がかっちりと理念的に纏まっていて、且つ、より地に足のついた組織変革の実践論となっているように思えました(最後にリーダーシップ論も出てきますが、メインは組織改革の手法を説いた本だった)。

 従来のトップダウンやボトムアップに替わる手法として〈ホールシステム・アプローチ〉という「経営トップから管理者層、メンバー、協力会社まで、ステークホルダーが全員集まり、状況や背景を共有し、全員が話をし、人の話を聴くことで、全員で自分たちのありたい姿を考え、新しいアイディアや施策を生み出していく」方法を提唱していて、更に、このアプローチの背景になる思想は、従来型の問題解決アプローチ(ギャップアプローチ)では限界があり、人の「強み」や「価値」に焦点を当てていく〈ポジティブアプローチ〉であるべきだとしています。

 前半部分だけだとやや抽象的ですが、後半において、「ポジティブアプローチの6つの原則」として、〈ポジティブアプローチ〉を更に具体的な幾つかの手法に落とし込み、研修場面などを想定しながら話を進めていくので、非常にわかり易いし、最後の「組織変革の9つのステップ」もしっくりくるものでした(但し、あまりに多くのことに触れているので、一読して全てを習得するのは難しいかもしれないが、取り敢えず要点と流れだけ掴めば、それだけでも随分違うのでは)。

 『不機嫌な職場―なぜ社員同士で協力できないのか』('08年/講談社現代新書)を読んだ際にも思ったのですが、結局、これからはリーダーシップ研修というよりメンバーシップ研修が大切になってくるのだろうと思わされた1冊でした。

《読書MEMO》
インクルージョン(⇔イクスクルージョン)-境界を外していく(⇔閉じている)
「女性の活用」といい続けるのは、「女性」というラベルを貼って区別していることになる(49p)
●生物学的な統合的(シンセシス)アプローチ(⇔分析的(アナリシス)アプローチ)
私たちを取り囲むシステムの変化や影響関係を、物語や映画のように全体の流れの中でとらえ、感性や皮膚感覚といったもので、察知していきます。自分たちは何者であるのか、一人ひとりがどうありたいのか、自分たちの組織や、社会がどうなったらいいのかを共有するところから、行動を生み出していく(53p)
●ミツバチの生態系の破壊
 アーモンドの需要増→5キロ四方のアーモンド畑→単一の花の蜜ばかり食べる→免疫力低下(70p)
●アポトーシス
 新規プロジェクトが100ぐらい走っているが、その多くが失敗。非効率に見えるが、どうも社内的にアポトーシスを持っているようで、長い時間軸で見るといい結果に(74p)
●ポジティブアプローチの6つの原則
原則1:信頼感のある対話の場をつくる(108p)
組織のメンバーの関係性を徐々に高めながら、メンバーの思いを引き出し、共有できるコミュニケーションの場をつくる。(「怒ってはいけない」「根に持たない」「自分のことは棚に上げてよい」)
原則2:メンバーの「察知力」を高める(129p)
メンバー自身が自己の認知の癖を知り、また、他者のことを自分のことのように捉える力を磨く。そのために自己に向き合うプログラムを取り入れる(内観/トイレ掃除/身体性を高める/瞑想をする)。
原則3:一人ひとりをリスペクトし、強みを認める(138p)
組織の一人ひとりに一人の人間として関心を寄せ、尊重する(問題解決の責任は問題に気づいた人にある/ミーティングで一人ひとりをリスペクトする/必ず全員が話しするようにする/メンバーの強みを引き出す手法―アプリーシアティブ・インクワイアリー(AI)のハイポイント・インタビュー(フロー体験(生きがいや達成感を抱いた体験)を語る)。
原則4:主体性を引き出す(161p)
メンバーが主体的に学習に取り組んだり、ミーティングに参加したりする工夫をする。(プロセス・ガーディナー/ファシリテーターはごみ拾いが理想)
原則5:自他非分離の場を作る(177p)
組織の一体感を高める活動を。組織変革を促すミーティングの場ではディスカッショよりも、メンバーの思いが表出するストーリーテリングが大切(ストーリーを共有する→個々のメンバーに内在するコンテクストが浮き彫りに→共感が生まれる)
原則6:暗在的リーダーシップでサポートする(192p)
組織メンバーの良い面を引き出し、サポートしていくことに徹することができるリーダーが組織変革には不可欠(顕在的リーダー(カリスマ)ではなく、メンバーを励ましていけるリーダーシップ)
●組織変革の9つのステップ(214p)
ステップ1:全体観を持ち、状況の共有によって視座の向上を図る
ステップ2:みなのありたい姿、夢を共有する
ステップ3:関係性の向上を図る
ステップ4:目的・ゴールを共有する
ステップ5:否定と創造
ステップ6:新しい意味の創造
ステップ7:アクションプランをつくる
ステップ8:行動する
ステップ9:振り返り、成果を実感する
●「メンバーが好きに目標を立てたら、組織目標が達成できないだろう」と危惧するマネージャーも多いが、それは思い込み。AIミーティングで主体的に売上げ目標を立ててもらったら、組織目標をはるかに上回った(215p)
●魂の入ってないプランをサラサラつくらないようにスピードを落とす。メンバーが本当に考え、腹に落ちている言葉であれば、稚拙な表現でもよい(232p)

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社員同士の協力関係を、役割構造、評価情報、インセンティブの3つで捉える。

不機嫌な職場―なぜ社員同士で協力できないのか.jpg不機嫌な職場~なぜ社員同士で協力できないのか (講談社現代新書)』 ['08年]

 なかなか惹きつけるタイトルで、こういう場合、読んでみたら通り一遍のことしか書いてない紋切り型の“啓蒙書”だったりしてガッカリさせられることがままありますが、この本は悪くなかったです。
 但し、やはり基本的には(いい意味での)“啓蒙書”であり、読んで終わってしまってはダメで、書かれていることで自分が納得したことを、常に意識し、実践しなければならないのでしょう。

 社員同士での協力関係が生まれないために、職場がギスギスして、生産性も向上せず、ヤル気のある人から辞めていく―こうした協力関係阻害の要因を、役割構造、評価情報、インセンティブという3つのフレームで捉えた第2章(ワトソンワイアット・永田稔氏執筆)が、特にわかり易く、また、頷ける点が多かったです。

 特に、「役割構造」の変化について、従来の日本企業の特徴であった、会社で仕事をする際に決められる「仕事の範囲」の「緩さ・曖昧さ」が協力行動を促すことにも繋がっていたことを指摘しているのには頷けて(但し、フリーライド、つまり、仕事してないのに仕事しているように見せる“ただ乗り”を許すことにも繋がっていた)、それが、成果主義が導入されると、今度は、個々は自分の仕事のことしか考えず、外からは、誰が何をしているのかよくわからなくなって、仕事が「タコツボ化」していると―。

 それが、組織力の弱体化に繋がるとしているわけですが、これは、成果主義の弊害としてよく言われることであるものの、併せて、個々の仕事が高度化していることも、仕事が「タコツボ化」する要因として挙げているのには、確かにその通りかもしれないと思いました。

 このことは、続く、インフォーマル・コミユニケーションを通じての社員同士の「評価情報」の共有化がもたらす効果や、金銭的報酬以外の、社内や仕事仲間の間での承認願望の充足がもたらす「インセンティブ」効果という話に、スムーズに繋がっているように思えました。

 「仕事の高度化」ということで言えば、IT企業などは正にそうでしょうが、第4章で、組織活性化に成功している企業の事例が3社あり、その内2社は、グーグルとサイバーエージェントです。
 両社の組織活性化施策は、人事専門誌などでは、もうお馴染みの事例となっていますが、本書におけるそれまでの繋がりの中で読んでみると、改めて新鮮でした。

 ワトソンワイアットは、外資系の中では日本企業の人事制度構築に定評のあるファームですが、日本での強さのベースには、組織心理学に重きを置いている点にあるのかも。

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処世術としてではなく、組織論の1つの考え方、言い表し方として押さえておきたい。

ピーターの法則s.jpgピーターの法則.jpg The Peter Principle.jpg  
ピーターの法則』新訳版 〔'02年〕 The Peter Principle〔'84年版〕

ピーターの法則』(1970/01 ダイヤモンド社)

Laurence J. Peter.jpg 教育学者ローレンス・J・ピーター(Laurence.J.Peter、1919‐1990)が唱えた有名な「ピーターの法則」の原著『The Peter Principle』は'69年に出版され(実際にはカナダ人作家のレイモンド・ハルが書いた)、'70年に邦訳されていますが、'02年には新訳が出されていることから、やはりインパクトは今でもあるのではないかと思われます。
Laurence J. Peter(1919‐1990)

vision03.jpg 「ピーターの法則」とは、「階層社会では、すべての人は昇進を重ね、おのおのが無能レベルに到達する」というものです。さらに、これに続く「ピーターの必然」というものがあり(「ピーターの法則」の系1,系2とされることもある)、それは、 「やがて、あらゆるポストは、職責を果たせない無能な人間によって占められる」、「仕事は、まだ無能レベルに達していない者によって行われている」というものですが(何れも渡辺伸也氏訳)、組織論的に見てかなり当たっているのではないかという気がしています。

 読む側が、上司である管理職の無能を嘆いている場合は、一定のカタルシスを得られる本かもしれませんが、最後の「必然」を飛ばしてしまうと、自分がいる組織は回らなくなるというパラドックスに陥ります。それでも組織が回っているのは、「必然」の後段(系2)が示唆するように、組織を構成する個々において"無能化"に至る時間差があるためです。

 冒頭にこうしたパラドックスの種明かしをしておきながら、本文全体は、人々が"無能化"する経緯を様々な事例を挙げてパラドキシカルに述べているために本書は"奇書"と見なされ(新訳の帯にも「"構造社会学"の奇書」とある)、しかも最後に、"昇進しない"ための〈創造的無能〉を"大真面目に"説いていているため、書店では、ビジネス書コーナーよりも、啓蒙書・人生論のコーナーに置かれていたりします。

 "スロー・キャリア"などが唱えられる昨今、意外と自らのキャリア・プランのヒントとして、或いは処世術として本書を読む人もいるかも知れませんが(新訳の帯に「無敵の処世術!」とある)、一方で、著者の読者を煙に巻くような言い方が合わない人も多いのではないでしょうか。本書の啓発的ポイントはどこかという観点から見れば、努力することによって無能に到達するまでのステップを増やせ、という自助努力論であって、所謂効率良く世の中を泳ぎ切ろうという"処世術"とは少し違うのではないかと思います。

 これまで個人的には、本書に横溢するパラドックスはユーモアとしてのものであると捉え、処世術の本としてではなく、ちょっとひねった感じの組織論の本として読んできましたが、最近は、結構奥が深いというか、「ピーターの法則」とは必ずしもパラドックスというようなものではなく、むしろ、現実のジレンマとしてあるものではないかと思うようになりました。

 人事コンサルティングの現場においても、「プレイヤーとして優秀な人が必ずしも優秀なマネジャーになるとは限らない」といったことはよく聞きますし、昇格・昇進において当初は「卒業方式」でいくとしても上位職層にいけばいくほど「入学方式」でいきべきだとも言われますが、これらなども「ピーターの法則」が示唆する教訓と呼応するのではないでしょうか。「役職定年制」や「役職任期制」などを提案する際などもこの「ピーターの法則」を引くことが多く、組織論の1つの考え方、言い表し方として、是非とも押えておきたい概念ではないかと思います。

 マネジャーになるために、一旦会社を辞めて大学に通ってMBAを取ってから企業に入り直すようなことが珍しくない米国などと、その部署で係長の仕事をしていた人がやがて課長になり、その何年か後に部長になるような日本と比べた場合、「ピーターの法則」の"ジレンマ"により陥りやすいのは日本の方かもしれません。

 【1970年単行本[ダイヤモンド社(田中融二:訳)]/2002年単行本[ダイヤモンド社(渡辺伸也:訳)]】

【2202】 ○ ダイヤモンド社 『世界で最も重要なビジネス書 (世界標準の知識 ザ・ビジネス)』 (2005/03 ダイヤモンド社)

【2298】 ○ 水野 俊哉 『明日使える世界のビジネス書をあらすじで読む』 (2014/04 ティー・オーエンタテインメント)

《読書MEMO》
●「ピーターの法則」(田中融二氏訳)
「階層社会にあっては、その構成員は(各自の器量に応じて)それぞれ無能のレベルに達する傾向がある」
系1:「時がたつに従って、階層社会のすべてのポストは、その責任を全うしえない従業員(構成員)によって占められるようになる傾向がある」
系2:「仕事は、まだ無能のレベルに達していない従業員(構成員)によって遂行される」

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短時間でビジョン、ミッション、バリューなどの概念整理はできるが...。

組織変革のビジョン.jpg  『組織変革のビジョン』 光文社新書 〔'04年〕 金井壽宏.jpg 金井壽宏 氏 (略歴下記)

 大学教授であり、教育研修コンサルタントでもある著者によって書かれた本書は、働く個々人に対し「ビジョン」、「ミッション」、「バリュー」を創ることで、生きていく方向性や指針が見つかるとし、とりわけビジョニング(自分自身のマイビジョンを創ること)が自己改革をもたらすと説いていますが、併せて、企業を活性化するためには「組織ビジョン」と「個人ビジョン」の相乗効果が大切であると言っていて、組織論の書としても読めます。

 「経営理念」の重要性というのがわかっていても、企業によっては額縁に入れて飾ってあるだけで形骸化していたりして、何でも横文字が良いというわけではありませんが、自社の「ビジョン」「ミッション」「バリュー」はそれぞれ何であるかという切り口で改めて問い直してみるということも、創造的組織改革への道筋を探る上で無駄ではないと思います。

 「ビジョン」は長期のもの、「ミッション」は短期のもの、「バリュー」は現状からビジョンへ至る過程での価値観・行動規範であるという概念区分がスッキリしていてわかりやすく、リーダーシップ論などのマネジメント理論も紹介されています。

 短時間で概念整理するには良い本だと思いますが、最終章の組織メンバーがCOEになったつもりで組織変革を考える「バーチャルCEO」 や「忌憚のない議論が大切」といった提案部分が、独自性が弱かったり(ジュニア・ボードという手法は以前からあります)、抽象的だったりするのがやや物足りなかったです(基本的にはやはり個々人に向けた啓蒙書という感じでしょうか)。

《読書MEMO》
●ジョン・P・コッター『リーダーシップ論』でマネジメントよりリーダーシップが大事、コーチングによる組織活性化が必要(56p)
 ★コッターのリーダーシップの定義...①方向設定 ②人的連携 ③動機付けと鼓舞
●ジェームズ・C・コリンズ『ビジョナリーカンパニー』 成功の鍵はビジョン(110p)
●好き嫌いチャートと強み弱みチャート(116p)
●ルイス・ガースナー(ナビスコ会長→IBMのCEO)『巨象も踊る』 顧客志向へ変革(149p)

_________________________________________________
金井壽宏 (神戸大学大学院経営学研究科教授)
1954年生まれ。兵庫県神戸市出身。京都大学教育学部卒業。神戸大学大学院経営学研究科修士課程修了。マサチューセッツ工科大学でPh.D(マネジメント)、神戸大学で博士(経営学)を取得。現在はリーダーシップ、モティベーション、キャリア・ダイナミクスなどのテーマを中心に、個人の創造性を生かす組織・管理のあり方について研究。

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短時間でビジョン、ミッション、バリューなどの概念整理はできるが...。

ビジョニング.jpgビジョニング―あなたのビジョンは今、組織で活きていますか。』('04年/日経BPクリエーティブ)

VisionMissionValues.jpg 教育研修コンサルタントによって書かれた本書は、働く個々人に対し「ビジョン」、「ミッション」、「バリュー」を創ることで、生きていく方向性や指針が見つかるとし、とりわけビジョニング(自分自身のマイビジョンを創ること)が自己改革をもたらすと説いていますが、併せて、企業を活性化するためには「組織ビジョン」と「個人ビジョン」の相乗効果が大切であると言っていて、組織論の書としても読めます。

 「経営理念」の重要性というのがわかっていても、企業によっては額縁に入れて飾ってあるだけで形骸化していたりして、何でも横文字が良いというわけではありませんが、自社の「ビジョン」「ミッション」「バリュー」はそれぞれ何であるかという切り口で改めて問い直してみるということも、創造的組織改革への道筋を探る上で無駄ではないと思います。

 「ビジョン」は長期のもの、「ミッション」は短期のもの、「バリュー」は現状からビジョンへ至る過程での価値観・行動規範であるという概念区分がスッキリしていてわかりやすく、リーダーシップ論などのマネジメント理論も紹介されています。

 短時間で概念整理するには良い本だと思いますが、最終章の組織メンバーがCOEになったつもりで組織変革を考える「バーチャルCEO」 や「忌憚のない議論が大切」といった提案部分が、独自性が弱かったり(ジュニア・ボードという手法は以前からあります)、抽象的だったりするのがやや物足りなかったです(基本的にはやはり個々人に向けた啓蒙書という感じでしょうか)。

《読書MEMO》
●ジョン・P・コッター『リーダーシップ論』でマネジメントよりリーダーシップが大事、コーチングによる組織活性化が必要(56p)
 ★コッターのリーダーシップの定義...①方向設定 ②人的連携 ③動機付けと鼓舞
●ジェームズ・C・コリンズ『ビジョナリーカンパニー』 成功の鍵はビジョン(110p)
●好き嫌いチャートと強み弱みチャート(116p)
●ルイス・ガースナー(ナビスコ会長→IBMのCEO)『巨象も踊る』 顧客志向へ変革(149p)

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企業に見られる組織心理のダイナミズムを解き明かしてはいるが...。

ホンネで動かす組織論.jpg  『ホンネで動かす組織論』 ちくま新書 〔'04年〕 photo_ota.jpg 太田 肇 氏

 本書は3部構成になっていて、第1部「なぜ、やる気がでないのか」、第2部「ホンネの抑圧が組織を滅ぼす」において企業や組織におけるタテマエとホンネの乖離とその弊害を説き、第3部で「ホンネからの組織づくり」、つまり旧来の「全社一丸」的な"直接統合"ではなく、「個人が組織の一員でありながら、組織と同じ目標を追求する必要はない」という"間接統合"の考え方を提唱しています。

 組織における人の行動や人間関係についてのさまざまな事例やエピソードには非常に頷かされるものが多く、著者が一般企業などで見られる組織心理のダイナミズムに精通していることがわかります(さすがサラリーマン経験者!)。
 
 一方、提案部分の方は、「内発的動機づけ」(高橋伸夫『虚妄の成果主義』などでも強調されていましたが)など仕事の「面白さ」を重視しすぎるのを戒め、むしろ「目立ちたい」といった承認願望など「健全な利己心」をベースに動機づけを図ることを提唱しています。

 全体を通して読みやすくスラスラと読めてしまいますが、「タテマエ・ホンネ論」というのは意外と、どこまでがタテマエでどこまでがホンネなのかわかりにくく、またタテマエがすべて弊害とは言い切れない部分もあり、その点本書は、やや問題を単純化しすぎた「タテマエ・ホンネ論」になっているのも否めないのではないかと思いました。

《読書MEMO》
●いかに会社に貢献するかよりも、いかに自分が評価されるかが関心事(48p)
●有給休暇の権利を行使しないことは、サービス残業と同じように、やる気をアピールする手段になる。(54p)
●やる気をみせるためのファザード(演技)は組織にとっても社員にとっても有害でこそあれ何の価値も無い、一種の病理現象(中略)。演技を続けるうちにタテマエがホンネに近づくという奇妙な現象が起きている(57p)
●いくら会社が情報を共有するように呼びかけても、その価値に見合う対価が得られない限り、積極的に情報を出そうとはしなくなる。(67p)
●私用を優先させたければ、仕事上の理由を装うことが必要になる。(94p)
●「私」より「公」が優先される組織では、個人はホンネを隠そうとする(98p)
●タテマエの行使を控える会社や管理者に対し、社員は協力的な姿勢や打算を超えた貢献によって報いようとする。(120p)

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「組織心理学」から「組織論」、「文化社会学」的な話へと展開。

上司は思いつきでものを言う.jpg  『上司は思いつきでものを言う』 集英社新書 〔'04年〕 橋本 治.jpg 橋本 治 氏 (略歴下記)

 このタイトルに、誰もが自分の会社のことだと思うのではないでしょうか。著者独特のやや回りくどい言い回しも、本書に関しては「そうだ、そうだ」というカタルシスの方が勝り、それほど気になりませんでした。

 「埴輪の製造販売」会社での会議の例え話で、「埋葬品でなく美術品としての埴輪を」という部下の提案に対し、上司の「いっそ、ウチもコンビニをやろう」というトンチンカン発言に会社の決定が靡いていく様は、企業の中にある「ありふれた不条理」をうまく描いていると思いました。

 著者によれば、結局、上司とは現場という"故郷"を離れ、管理職という"都会"に住む先輩で、田舎の青年団の後輩(部下)が持ってきた村おこしプラン(企画)に対し、故郷をバカにしている先輩はアラ探しをし、故郷を愛し過ぎている先輩は、自分も青年団の一員になったような錯覚に陥り、いずれの場合も「思いつきでものを言う」のであると。

 「組織心理学」の話かと思い読み進むと、日本の会社の下から上への流れがない組織的特徴を指摘する「組織論」そのものの話になり、さらに中国から伝わった儒教が日本的変容を遂げて、官僚や企業組織の中にどのように反映されたかという、「文化社会学」的な話になってきます。
 
 確かに本書については、前書きにサラリーマン社会の欠点を書こうとしたとあるように、そのあたりが著者の最も言いたかったことなのかも知れませんが、こうした歴史文化論的分析に対しては、賛否が割れるとかも知れません。

 一方、こうした困った上司への対処法としては、その場で「ええーっ」と呆れればいいと。
 個人的には、このやり方自体にさほど現実味を感じず(実践している人はいるかも知れないが)、これらも含めて、そういう下からの声が無さ過ぎるのだという著者の批判の一形態としてこれを捉えた次第です。
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橋本 治(はしもと おさむ)
1948年、東京生まれ。作家。東京大学文学部国文科卒。77年『桃尻娘』で講談社小説現代新人賞佳作受賞。以後、小説、評論、戯曲、古典現代語訳、エッセイ、芝居の演出等で幅広い創作活動を続ける。主な著作に『江戸にフランス革命を!』『窯変源氏物語』『ひらがな日本美術史』等。『宗教なんかこわくない!』で第9回新潮学芸賞、『「三島由紀夫」とはなにものだったのか』で第1回小林秀雄賞を受賞している。

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目新しさは少ないが、組織腐敗のメカニズムを旨く解き明かしている。

組織戦略の考え方.jpg 『組織戦略の考え方―企業経営の健全性のために』 ちくま新書 〔'03年〕 沼上 幹 (ぬまがみ つよし).jpg 沼上 幹 (ぬまがみ つよし)氏 (一橋大教授)

 硬そうなタイトルですが、ビジネス誌「プレジデント」に連載したエッセイがベースになっていて、文章が平易でスラスラ読めます。
 冒頭で「組織設計の基本は官僚制である」と言っているのが、組織はフラットな方がいいという昨今の通説に対峙して一見ユニークですが、読めばある意味至極当然のことに気づきます。
 組織論の入門書としてよく紹介される本で、体系的に整理されているわけではありませんが、書かれていること1つ1つの内容はオーソドックスです(目新しさは少ないとも言えるかも)。
 マズローの欲求階層説について、自己実現欲求もさることながら、承認・尊厳欲求の充足が大切だということなども、かなり以前から一般に指摘されていることです。

image2.jpg むしろ、組織にいる人に働く組織心理の傾向の分析や説明には、誰もが思い当たるものが多くあるのではないかと思われます(まるで企業小説のように書かれていて、しかも現実味がある!)。
 
 組織腐敗のメカニズムをうまく解き明かし、一応はその診断と処方も提示しているので、自分が関わっている組織の問題に引きつけて読むことができれば、問題解決の方向性やヒントが見えてくるかもしれず、それだけ本書を読む価値は出てくるかと思います。

《読書MEMO》
●組織構造自体は何も解決しない(62p)ムチャクチャな組織に問題があるとしても、組織変革すれば全面的に問題が解決するわけではない(62p)
●(マズローの欲求段階説について)自己実現欲求の追求という方向が美しく、安上がりであるゆえに、多くの人がそこに目を奪われ、所属・愛情欲求や承認・尊厳欲求などを忘れてしまう(87p)
●エリートとノン・エリートの間に、当たり前のことを当たり前に黙々と処理してくれる信頼できる中間層がいないとエリート・システムもうまく機能しない(120p)
●全方位全面戦争型の戦略計画などは、何も考えていない、何も決めていない明確な徴候(132p)
●「厄介者の権力」...育ちの良い優等生の「大人」たちが組織内で多数になると、厄介者の言うことがかなり理不尽であっても、組織として通してしまう場合が出てくる(144p)
●「バランス感覚のある宦官」...(スキャンダルで)密告者が権力を握るのではない。根性のない優等生たちが恐怖にとらわれ、その恐怖心を気持ちよく解消する「美しい言い訳」を創り上げる宦官が権力を握る(171p)
●「キツネの権力」...公組織と業者という二つの世界をつなぐ唯一の橋であることを権力基盤とした、トラの威を借る「キツネの権力」が生み出される。天下った人が二つの組織の間をいろいろかき回す。(201p)

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