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「●光文社新書」の インデックッスへ

"目から鱗が..."というほどもものでもない。

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会社の電気はいちいち消すな (光文社新書)』 ['09年]

 「コスト削減」をテーマにした本で、肝は、サブタイトルの「コスト激減100の秘策」に呼応する、中盤・第3章の「節約術100連発」でしょうか。よくこれだけ網羅したものだなあと。但し、目を通し終えてみれば、それほど斬新なものは無かったような...。全くの素人ならともかく、例えば中堅企業の総務部長や庶務部長がこれを読んで、(チェックリストとして使えなくも無いが) "目から鱗が..."的な感想はまず抱かないのではないでしょうか。

 タイトルの「会社の電気はいちいち消すな」というのも、会議室などで「5分以上人がいないときは自然の消灯するセンサーをつける」ようにしなさいというテクニカルなことを言っているに過ぎず(これは「節約術100連発」には含まれていない)、「節約術100連発」の中では、パソコン、プリンターの電源は、「こまめにコンセントから抜くことが大切」と言っています。

 ホテルを舞台にした小説を素材にして、アウトソーシングや作業のカイゼン・効率化では利益はあがらず、決算書知識は役に立たないとして、薄利多売の意義を説いた第1章が最も興味深く読め、企業会計の勉強にもなりますが、事例の前提条件がやや粗っぽいか、或いは前提条件に対する説明が希薄だったりもし、そのことは「節約術100連発」にも言えるかと思います。
 さすがに、リース契約と買い取りではどちらがいいかを考察した3章の後半では、「前提なしでこれに答えることは難しい」と予め断っていますが。

 結局、財務的な観点から見れば、業務の実態等の状況に関わらずこれが絶対に良いと断言できるような施策は無い訳で、本全体としてはオーソドックスと言えばオーソドックスな内容、但し、個々についてそれが自社適合であるかどうかは自分で考えてください―といった感じでしょうか。

 コンサルタントとして現場で場数を踏んでいるのであれば、従業員をそうした節約キャンペーンにコミットさせていく動機付けのための手法などにもっとページを割いてもよかったのではないかと思いますが、著者の専門はどうやら「購買」であるようで、そうした仕事はあまりやっていないのかな。

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人生論と「一般向け」の経営財務の話をミックスしたような感じ。

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  岡本吏郎氏.jpg 岡本 吏郎 氏(税理士)
会社にお金が残らない本当の理由』['03年/フォレスト出版]
会社にお金が残らない本当の理由 (フォレスト2545新書)』['10年]

 主に中小企業の経営者向けに書かれた本だと思いますが、タイトルの妙もあって?ベストセラーに。人生論と経営財務の話をミックスしたような感じなのも、広い読者層を得た一因かもしれません。

 有名経営者などではなく、若手の税理士の人が書いているというのも興味を引きますが、その著者の姿勢が、生き方において節制的で堅実、経営指南においても、上っ面に惑わされず実をとるという感じなのが面白い。ポイントを絞ってわかりやすく書かれているため、財務部門以外にいる一般会社員にも気軽に読めて、これから起業しようとする人などにも参考になる部分はあるかと思います。

 むしろ、当の経営者や現場の経理担当者の多くは、本書に書かれていている、決算書の作為性、耐用年数の現実との不整合、社会保険料の重さなどは、日常的に肌身に感じているはずのことで、「よくぞ言ってくれた」みたいな感じはあるかも知れませんが、耐用年数問題でも、会計上と税務上で使い分ける手法などは、既に本書以上の知識は頭にあるのではないでしょうか。

 「合法的裏金」というような表現はいかがなものかと思いますが、役員の報酬や賞与については、中小企業(零細企業?)なりの考え方(=給与の中に貯蓄しておくという)を示していると思います。この本に関して言えば、著者が属する「成功法則」本を"量産"しているグループの人たちが書いたものの中では、相対的にはマトモな方だと思います。

【2010年新書化[フォレスト2545新書]】

《読書MEMO》
●税金を取るために「耐用年数」は長くなっている-果たして4年もパソコンを使う人がどこにいるか(117p)
●本当のかっぱらいは「社会保険」(123p)-半分を会社が負担してくれていると思っているが、その分確実に給料は安くなっている
●決算書に潜むゾンビ(127p)-代表は「固定資産」。建物の耐用年数20年は長すぎ(価値が無いのに償却が終わっていない資産がある)
●「役員報酬」は合法的裏金(185p)-給与所得控除を受けるメリット。

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臨場感満載の倒産ドキュメント。倒産を防ぐには銀行から借りないこと?
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潰れない会社にするための12講座』 中公新書ラクレ 〔'02年〕

 前半部分の「倒産ドキュメント」が、企業小説のような臨場感に溢れ、面白かったです。
 著者の創業会社が上場会社の懐に入り、その上場会社が銀行の強制回収で破綻、創業会社も破産の憂き目に遭いますが、その際の銀行の身勝手な回収手口や債権者会議の様子などが、生々しく再現されています。

 一方で、現実を直視しないトップがいて、その能天気ぶり、無責任ぶりは漫画チックでもあり、全体としては"悲喜劇"の様相さえ呈していています(もちろん、著者の言うように一番の被疑者は社員であり債権者であって、それらの人にとっては許せない話でしょうが)。

 著者の奮闘で会社は何とか再建したものの、ここまでの記述は、ダメ社長と銀行に対する怨念に満ちていて、後半の「12講座」に入ってもやや怨念引き摺り気味で、一種のリベンジ・ファクターのようなものが、著者の経営コンサルタントとしてのモチベーションや自負に繋がっているのかも、と。

 かつて自分が出た起業セミナーで、ある"倒産社長"が、「倒産しない秘訣は銀行からお金を借りないこと」とやや冗談めかして言ってましたが、著者の考え方も同じで、「手形支払いゼロ、銀行借入ゼロ」を目指し、銀行支配から脱却をせよと―。これは、経営基盤の弱い中小零細企業などでは特に言えることかも知れません。

 著者は、そのための経営改革として、売り上げよりを利益重視し、経費を削減せよと説いています。
 数字を示していますが、この辺りは業態や会社規模によって異なってくるでしょうが、方向性としては低成長期にほとんどの企業が考えたことで、著者の想定する短期間での荒療治が必要な状況であれば、最後は本書にもあるとおり、どうしても人件費の問題になってくるのでしょう。

 思い切ったリストラができるか、正しい人材選別が可能か、といったことは、結局、トップの決断力から評価制度まで幅広く関連してくる問題で、うまくいかない会社というのはますます悪循環に陥るのだなあと、本書前半の話に思いが戻りました。

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マネジメントの観点からの「活用方法」に力点を置いた入門参考書。

超図解ビジネス キャッシュフロー戦略入門.jpg 『カラーでわかるキャッシュフロー戦略入門』 (2000/02 エクスメディア)

 本書は、「キャッシュフロー入門」というより、まさにタイトル通り、キャッシュフローを絡めた「会計戦略入門」という内容の本で、書かれたのが金融ビックバンから会計ビッグバンにかけての時期なので、特にそれらのこととの関連で、大競争時代のトータル・キャッシュフロー・マネジメントはどうあるべきか、という方向へ論旨が帰結するように構成されています。

 キャッシュフローの入門書は数多くあり、経理・財務部門でキャッシュフロー算定などを実務として行う人はそちらの方をとりあえず参照した方が良いと思いますが、経理・財務部門以外の人などで(経理・財務部門の人でもいいのですが)、キャッシュフローの背景や構造、それが何を表すか、なぜ重要なのかを知りたい人にとっては、最初の1冊としてお薦めできる入門参考書ではないかと思います。

 「作成方法」よりも、マネジメントの観点からの「活用方法」が書かれているとでも言うべきでしょうか。最終章などはほとんど、例の〈スター〉〈問題児〉〈負け犬〉〈金のなる木〉の4つのセルから成る「PPM分析」との関係で述べられています。

 「キャッシュフロー入門」の本に比べ「キャッシュフロー戦略」の本は、いきなり難解になるものが多いような気がしますが、この「超図解」シリーズは、もともと、エクセルやワードのマニュアル本を出しているシリーズです。

 本書の体裁もそれらに沿ったものであり、ふんだんに図表を用い、かつオールカラーで見開きごとに1テーマであるため、読みやすいものとなっています。少なくとも、入り込みやすい。これは入門書として大事なことではないでしょうか。

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