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ストーリーがよく出来ていて、いいタイミングでドラッカーの言葉が出てくる。

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まんがでわかる ドラッカーのリーダーシップ論』『まんがと図解でわかるドラッカーのリーダーシップ論 (別冊宝島) (別冊宝島 1750 スタディー)

 東京での仕事で挫折し、失意のまま退職した赤井満は、いつのまにか生まれ故郷で村おこしのプロジェクトリーダー「特命村長」に任命されていた! 村役場から選ばれたメンバーを率い、彼らの強みを生かした成果が期待される満。彼女を支えたのは、経営学の父・ドラッカーが唱えたリーダーシップの真髄だった―。

 『まんがでわかる7つの習慣』('13年/宝島社)の第2弾ということですが、本書が刊行される以前に「別冊宝島」(ムック)として本書と同じ監修者による『まんがと図解でわかるドラッカーのリーダーシップ論』('11年)が刊行されており(その他に『まんがと図解でわかるドラッカー マネジメント、イノベーションなどが初心者でも簡単に理解できる!』('10年)や『まんがと図解でわかるドラッカー 使えるマネジメント論』('11年)などもある)、やや既知感のようなものもあってそれほど期待せずに読んだら、これが意外と"優れもの"でした。

まんがでわかる ドラッカーのリーダーシップ論21.JPG 『まんがと図解でわかるドラッカーのリーダーシップ論』も好評で文庫化されたりもしていますが、マンガは添え物で図解がメインといった感じでしょうか。テーマ項目ごとにきちんと纏まっていましたが、「項目主義」になってしまっていて、逆に本当の意味での理解に繋がらない面もあるのではないかという気もしました。

 その点本書は、マンガとしてのストーリーがよく出来ていて、いいタイミングでドラッカーの言葉が出てくるため、それがまた相互作用として活きているように思いました。ドラッカーの述べていることの中には時期によってニュアンスが少しずつ違っている部分もあり、その点、複数のドラッカーの著者から引用することで、ドラッカーがあたかも最初からそうしたことを提唱していたように捉えられてしまうのはどうかというのはムック版でもあり、本書でもありましたが、これくらいの入門レベルになると、そこまでこだわることもないでしょうか(むしろ、テンポが大事で、その点は合格点!)。

 こうした本は、普段本よりもマンガを読む人向けという捉えられ方をしがちですが、さらっと読めてドラッガーを身近に感じられるという点では、マンガへの親和度の高い低いに関わらずお薦めです。

《読書MEMO》
●コミュニケーションが成立するには経験の共有が不可欠だ...。組織においてコミュニケーションは手段ではない。組織のあり方である。―P.F.ドラッカー『マネジメント(中)』p157(本書23p)
●あまりに多くのリーダーが、自分のしていることとその理由は、誰にも明らかなはずだと思っている。そのようなことはない。多くのリーダーが自分の言ったことは誰もが理解したと思う。しかし誰も理解していない。―P.F.ドラッカー『非営利組織の経営』p 30(本書24p)
●重要なのはカリスマ性ではない。...リーダーが初めに行うべきは、自らの組織のミッションを考え抜き、定義することである。―P.F.ドラッカー『非営利組織の経営』p2(本書35p)
●人の配置は、あらゆる事業においてきわめて重要な事案である。...人が一人あるいは小さなチームとして、事細かな監督なしに自主的に働くとき、単に働きたいという意欲からより良い仕事をしたいという意欲に左右される。すなわち配置によって左右される。―P.F.ドラッカー『現代の経営(下)』p157(本書54p)
●専門職たる者は、自らの仕事が何であるべきか、優れた仕事とは何であるべきかを自ら決める。何を行うべきか、いかなる基準を適用すべきかについて、誰も彼に代わって決めることは出来ない。彼らは、誰からも監督されない。―P.F.ドラッカー『現代の経営(下)』p201(本書68p)
●専門職は一人で働こうとチームで働こうと、自らの貢献について責任をもつ。―P.F.ドラッカー『現代の経営(下)』p199-201(本書69p)
●上司は部下の仕事に責任をもつ。部下のキャリアを左右する。したがって、強みを生かす人事は、成果をあげるための必要条件であるだけでなく、倫理的な至上命令、権力と地位に伴う責任である。―P.F.ドラッカー『経営者の条件』p126(本書80p)
●人を問題や費用や脅威として見るのではなく、資源として、機会として見ることを学ばなければならない。管理(manage)で. はなくリード(lead)すること、支配(control)ではなく方向づけ. (direct)することを学ばなければならない。―P.F.ドラッカー『マネジメント(上)』p31(本書89p)
●成果をあげるための秘訣を1つだけあげるならば,それは集中である。成果をあげる人は最も重要なことから始め、しかも一度に一つのことしかしない。―P.F.ドラッカー『プロフェッショナルの条件』p138(本書111p)
●リーダーシップが発揮されるのは、真摯さによってである。範となるのも、真摯さによってである。真摯さは、取って付けるわけにはいかない。真摯さはごまかせない。―P.F.ドラッカー『マネジメント(中)』p109(本書127p)
●自らをマネジメントするということは、一つの革命である。...あたかも組織のトップであるかのように考え、行動することが要求される。―P.F.ドラッカー『明日を支配するもの』p231(本書166p)

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成果を上げることは"教科"ではなく自己鍛錬。リーダーにも新人にも有益な書。

The Effective Executive   .jpg経営者の条件.JPG経営者の条件 ドラッカー 旧版.jpg 経営者の条件 ドラッカー.jpg
ペーパーバック(1993)『経営者の条件 (1966年)』  『ドラッカー名著集1 経営者の条件

Video Review for The Effective Executive by Peter Drucker
 ピーター・ドラッカーが1966年に発表(同年に大幅改訂、改訂版原著は1967年刊)した本書『経営者の条件』(原題"The Effective Executive")を読むと、ドラッカーが「知識労働者(ナレッジワーカー)」という言葉を半世紀も前から使っていたことがわかります。本書は、序章と本体全7章と最終章から成ります。

 第1章「成果をあげる能力は修得できる」では、現代の組織社会において中心的な存在となりつつある知識労働者のうち、企業や組織の業績に影響を与える意思決定を下す人を、"地位を問わず"「エグゼクティブ」と位置づけています。ドラッカーはまず、肉体的労働者が基本的に能率性で評価されるならば、知識労働者は何をもって評価されるのが妥当であるか、と読者に問いかけ、知識労働者は、"仕事を正しくやり遂げる"というよりも、"何をすべきかを判断してそれをやり遂げる"ことで成果を生み出す必要があるといいます。そして、成果をあげる能力は"教科"として学ぶことはできないが、実践を通した自己鍛錬によって修得できるとしています。つまり、本書では、(1)エグゼクティブの仕事は成果をあげることである、(2)成果をあげる能力は修得できる-という2つの前提に立ち、以下、成果を上げるエグゼクティブの条件について、時間、貢献、強み、集中、意思決定の5つの観点から述べています。

 第2章「汝の時間を知れ」において、成果を上げるエグゼクティブは、「時間」を慈しみ大切に扱っているだろうとしています。人間が時間に対する意識をどれほどおろそかにしているか、自分がどのように時間を過ごしたかを記憶していないものであるかを、調査結果を挙げて示し、エグゼクティブの知識集約的な仕事は、定型化が難しい上に発生頻度もまちまちで、かつ他のエグゼクティブとの協業を必要とするものが非常に多いため、自分で積極的に時間をコントロールしない限り、偶発的な仕事と周囲のエグゼクティブに振り回されてしまうのであると。そこで彼は、時間の使い方について記録をとることを勧めています。そして、自分の時間の半分以上を他人の都合によって決定されているようならば、それを自分の管理下に戻さなくてはならないと。

 第3章「どのような貢献ができるか」では、成果を上げるエグゼクティブは「貢献」に焦点を合わせることが重要であるとし、「どのような貢献ができるか?」と自問することは、仕事においてまだ用いられていない可能性に目を向けることになり、また、貢献に焦点を合せれば、当然の結果としてコミュニケーションやチームワークが生まれ、自己改善や周囲の人々の成長にも繋がるとしています。

 第4章「人の強みを生かす」では、優れた人事とは人の「強み」を生かすことであり、弱みからは何も生まれない、結果を生むには利用できるかぎりの強み、すなわち同僚の強み、上司の強み、自らの強みを動員しなければならならず(人の強みを生かすとは、人すなわち自らと他人を敬うということである)、強みこそが機会であり、強みを生かすことは組織に特有の機能であるとしています。「弱みからスタートしてはならない」、つまり、ある仕事に就ける人材を決める際に、一部の欠点に着目して、減点主義で候補者を外していくような人材配置は行ってはならないと主張しているわけです。上司、同僚、部下の強みを活かさなければならないという点も非常に重要であり、エグゼクティブの仕事は個人単位では完結せず、必ず他者との協業を必要とするため、対人関係能力やコミュニケーション能力、チームビルディングの能力、動機づけの能力などといった、複合的なヒューマンスキルが必須となるとしています。

 第5章「最も重要なことに集中せよ」では、成果を上げるエグゼクティブは、まず最優先事項から取りかかり、一度に一つのことだけに「集中」して行うとし、そのためには、これまで期待通りの成果を生み出していない仕事を捨て去らなければならない、過去を捨て去ることが、前進のためには最も肝要である、エグゼクティブの仕事の本質は、資源を本来の可能性に充てる決断を下すことであるから、としています。また、意思決定の大部分は会議を通じて下されるため、「会議を運営する能力」と言い換えられるだろう。だが一口に会議を運営する能力と言っても、以下に示す通り、実に幅広い行動とマインドをエグゼクティブは習得しなければならない

 第6章「意思決定とは何か」では、成果を上げるエグゼクティブは、「意思決定」において問題を一度で解決するとしています。そもそも彼らは、問題を包括的に見て、目下の問題に関連している人たちだけではなく、誰にとってもシンプルなルールで問題を解決しようとするとし、その際には、何もしないという選択肢もあるという点も、決断はそれが実行に移されるまでは完結しないということも知っているとしています。

 第7章「成果をあげる意思決定とは」では、成果をあげるエグゼクティブは、「意思決定」は事実を探すことからスタートしないこと、人々の意見を聞くことからスタートすることを誰もが知っており、最初から事実を探すと、すでに決めている結論を裏づける事実を探すだけになり、好ましいことではないとしています。また、決定には判断と同じくらい勇気が必要であり、一般的に成果をあげる決定は苦いものであるが、エグゼクティブは好きなことをするために報酬を手にしているのではなく、すべきことをなすために、成果をあげる意思決定をするために報酬を手にしているのであるとしています。

 終章「成果をあげる能力を修得せよ」では、(1)エグゼクティブの仕事は成果をあげることである、(2)成果をあげる能力は修得できる、という二つの前提のもとこれまで述べてきたことを総括するとともに、エグゼクティブの成果をあげる能力が、現代社会を経済的に生産的なものとし社会的に発展しうるものとするとして締め括っています。

 時間、貢献、強み、集中、意思決定―これらが、実行可能で適切な観点から説明されており、仕事の姿勢に対する洞察に溢れた本であるとともに、人材の配置、育成、活用に関する示唆にも富んでいます。リーダーにとってもキャリアの起点にある人にとっても、仕事とはただ与えられたことをするのではなく、判断して成すべきことを成すことであるということを喚起させるに有益な本です。

 本書を最初に読んだのは、野田 一夫、川村 欣也訳('66年11月/ダイヤモンド社、原著の決定稿版が'67年2月刊行であり、原著より日本語版の方が先に刊行された)の第9版('67年9月)で、個人的にはこれが今も手元にあります。上田惇生訳の選書版('95年)、ドラッカー名著集('06年)と若干章立てが異なるほか、文脈も翻訳の表現も異なっているところが多いようですが、全体の流れや趣旨は同じではないでしょうか。
 今回初めて読んだ新訳の方は、冒頭に「八つの習慣」(下に列記)とあり、序文の中でそれぞれについて簡単に解説されていましたが、本文とも緩やかに対応している印象を受けました。
 1.なされるべきことを考える
 2.組織のことを考える
 3.アクションプランをつくる
 4.意思決定を行う
 5.コミュニケーションを行う
 6.機会に焦点を合わせる
 7.会議の生産性をあげる
 8.「私は」ではなく「われわれは」を考える

【2203】 ○ ジャック・コヴァート/トッド・サッターステン (庭田よう子:訳) 『アメリカCEOのベストビジネス書100』 (2009/11 講談社)

《読書MEMO》
第1章「成果をあげる能力は修得できる」
●今日では、知識を基盤とする組織が、社会の中心的な存在である。現代社会は、組織の社会である。それら大組織のすべてにおいて、中心的な存在は、筋力や熟練技能ではなく、頭脳を用いて仕事をする知識労働者である。筋力や熟練ではなく、知識や理論を使うよう、学校で教育を受けた人たちが、ますます多く組織の中で働くようになっている。
●われわれはすでに、最下層の経営管理者が、企業の社長や政府機関の長とまったく同じ種類の仕事、すなわち、企画、組織化、統合、調整、動機づけ、そして成果の測定を行うことを知っている。意思決定の範囲は、非常に限られた狭いものかもしれない。しかし、たとえ狭くとも、その範囲内においては、まぎれもないエグゼクティブである。(中略)そして、トップであろうと、新人であろうと、エグゼクティブであるかぎり、成果をあげなければならない。
●確かに人生には、成果をあげるエグゼクティブになることよりも高い目標がある。しかし目標があまり高くないからこそ、実現も期待しうるというものである。すなわち、現代社会とその組織が必要とする膨大な数の成果をあげるエグゼクティブを得る、という目標の実現である。(中略)大規模組織のニーズは、非凡な成果をあげることのできる普通の人によって満たされなければならない。これこそ、成果をあげるエグゼクティブが応ずべきニーズである。しかも目標は謙虚であって、だれでも努力さえすれば実現可能である。
第2章「汝の時間を知れ」
●アルフレッド・P・スローンは、人事についての意思決定はその場では決してしなかったそうである。一応の判断はするが、それにさえ、通常、数時間を使っている。しかも、その数日あるいは数週間後には、初めから考え直していた。二度も三度も同じ名前が出てきたときだけ、人事の最終決定を行った。スローンは、人事の秘訣を聞かれたとき、「秘訣などない。最初に思いつく名前は、概して間違いだということを知っているにすぎない。だから私は、何度も検討し直して、決定することにしている」と答えたという。
●自分の時間の半分以上をコントロールしており、自分の判断によって自由に使っているなどという者は、実際に自分がどのように時間を使っているかを知らないだけであると断言してよい。組織のトップにいる人たちには、重要なことや、貢献につながることや、報酬を払われている当の目的に使える自由な時間など、4分の1もない。これは、あらゆる組織についていえる。
第3章「どのような貢献ができるか」
●知識労働者が貢献に焦点を合わせることは必須である。貢献に焦点を合わせることなくして貢献する術はない。
●必要なことは、専門家自身に彼と彼の専門知識をもって成果をあげさせることである。言い換えれば、自らの産出物たる断片的なものを生産的な存在にするために、何を知り、何を理解し、誰に利用してもらうかを考えさせることである。
●対人関係の能力をもつことによってよい人間関係がもてるわけではない。自らの仕事や他との関係において、貢献に焦点を合わせることによってよい人間関係がもてる。そうして人間関係が生産的となる。生産的であることが、よい人間関係の唯一の定義である。
●われわれは貢献に焦点を合わせることによって、コミュニケーション、チームワーク、自己開発、人材育成という、成果をあげるうえで必要な四つの基本的な能力を身につけることができる。(中略)第一に、長い間マネジメント上の中心課題だったものがコミュニケーションである。(中略)第二に、果たすべき貢献を考えることによって、横へのコミュニケーションが可能となり、その結果チームワークが可能となる。(中略)第三に自己開発は、その成果の大部分が貢献に焦点を合わせるかどうかにかかっている。(中略)第四に、貢献に焦点を合わせるならば、部下、同僚、上司を問わず、他の人の自己開発を触発することにもなる。
第4章「人の強みを生かす」●優れた人事は人の強みを生かす。弱みからは何も生まれない。結果を生むには利用できるかぎりの強み、すなわち同僚の強み、上司の強み、自らの強みを動員しなければならない。強みこそが機会である。強みを生かすことは組織に特有の機能である。
●いかにして、人に合うように仕事を設計するという陥穽に陥ることなく強みに基づいた人事を行うか。(四つの原則)
(1)適切に設計されているか
(2)多くを要求する大きなものか
(3)その人間にできることか
(4)弱みを我慢できるか
●今日あらゆる分野のエグゼクティブが、胸に炎を抱いているべき若者たちの多くがあまりに早く燃えかすになるといって嘆く。しかし責められるべきは彼らエグゼクティブである。彼らが若者たちの仕事をあまりに小さなものにすることによって彼らの胸の炎を消している。
●強みを手にするには弱みを我慢しなければならない。(中略)実績によってある仕事に適任であることが明らかである者は、必ずその仕事に異動させ、昇進させることを絶対のルールとしなければならない。(中略)仕事には最適の者を充てなければならないだけではない。実績をもつ者には、機会を与えなければならない。問題ではなく機会を中心に人事を行うことこそ、成果をあげる組織を創造する道であり、献身と情熱を創造する道である。(中略)かくして知識労働の時代においては、強みをもとに人事を行うことは、知識労働者本人、人事を行った者、ひいては組織そのものにとってだけでなく、社会にとっても欠くべからざることになっている。
第5章「最も重要なことに集中せよ」
●成果をあげるための秘訣を一つだけ挙げるならば、それは集中である。成果をあげる人は最も重要なことから始め、しかも一度に一つのことしかしない。(中略)これこそ困難な仕事をいくつも行う人たちの秘訣である。彼らは一時に一つの仕事をする。その結果ほかの人よりも少ない時間しか必要としない。
成果をあげられない人の方が多くの時間働いている。(中略)成果をあげる人は、多くのことをなさなければならないこと、しかも成果をあげなければならないことを知っている。したがって、自らの時間とエネルギー、そして組織全体の時間とエネルギーを一つのことに集中する。最も重要なことを最初に行うべく集中する。
●集中のための第一の原則は、生産的でなくなった過去のものを捨てることである。そのためには自らの仕事と部下の仕事を定期的に見直し、「まだ行っていなかったとして、いまこれに手をつけるか」を問うことである。答が無条件のイエスでないかぎり、やめるか大幅に縮小すべきである。もはや生産的でなくなった過去のもののために資源を投じてはならない。第一級の資源、特に人の強みという希少な資源を昨日の活動から引き揚げ、明日の機会にあてなければならない。
第6章「意思決定とは何か」●ヴェイルとスローンの意思決定の特徴は次のようなものだった。
(1)問題の多くは原則の決定を通してのみ解決できることを認識していた。
(2)問題への答えが満たすべき必要条件を明確にした。
(3)決定を受け入れられやすくするための妥協を考慮する前に、正しい答えすなわち必要条件を満足させる答えを検討した。
(4)決定に基づく行動を決定そのものの中に組み込んでいた。
(5)決定の適切さを検証するためにフィードバックを行った。
これらが、成果をあげるうえで必要とされる意思決定の五つのステップである。
(1)問題の種類を知る
厳密にいえば、あらゆる問題が、二つではなく四つの種類に分類できる。第一に、基本的な問題の兆候にすぎない問題がある。(中略)第二に、当事者にとっては例外的だが実際には基本的、一般的な問題がある。(中略)第三に、真に例外的で特殊な問題がある。(中略)第四に、そのような何か新しい種類の基本的、一般的な問題の最初の表れとしての問題がある。
(2)必要条件を明確にする
決定が満たすべき必要条件を明確にしなければならない。意思決定においては、決定の目的は何か、達成すべき目標は何か、満足させるべき必要条件は何かを明らかにしなければならない。(中略)必要条件を簡潔かつ明確にするほど成果はあがり、達成しようとするものを達成する可能性が高まる。逆に、いかに優れた決定に見えようとも、必要条件の理解に不備があれば成果をあげられないことは確実である。(中略)もちろん誰もが間違った決定を行う危険はある。
事実、誰もが時に間違った決定を行う。だが最初から必要条件を満たさない決定は行ってはならない。2)必要条件を明確にする。(中略)決定が満たすべき必要条件を明確にしなければならない。意思決定においては、決定の目的は何か、達成すべき目標は何か、満足させるべき必要条件は何かを明らかにしなければならない。(中略)必要条件を簡潔かつ明確にするほど成果はあがり、達成しようとするものを達成する可能性が高まる。逆に、いかに優れた決定に見えようとも、必要条件の理解に不備があれば成果をあげられないことは確実である。(中略)もちろん誰もが間違った決定を行う危険はある。事実、誰もが時に間違った決定を行う。だが最初から必要条件を満たさない決定は行ってはならない。
(3)何が正しいかを知る
決定においては何が正しいかを考えなければならない。やがては妥協が必要になるからこそ、誰が正しいか、何が受け入れられやすいかと言う観点からスタートしてはならない。満たすべき必要条件を満足させるうえで何が正しいかを知らなければ、正しい妥協と間違った妥協を見分けることもできない。その結果間違った妥協をしてしまう。(中略)そもそも「何が受け入れられやすいか」
「何が反対を招くからいうべきでないか」を心配することは無益であって時間の無駄である。心配したことは起こらず、予想しなかった困難や反対が突然ほとんど対処しがたい障害となって現れる。換言するならば、「何が受け入れられやすいか」からスタートしても得るところはない。それどころか通常この問いに答える過程において大切なことを犠牲にし、正しい答えはもちろん成果に結びつく可能性のある答えを得る望みさえ失う。
(4)行動に変える
決定を行動に変えなければならない。決定においてもっとも困難な部分が必要条件を検討する段階であるのに対し、最も時間のかかる部分が、成果をあげるべく決定を行動に移す段階である。決定は最初の段階から行動への取り組みをその中に組み込んでおかなければ成果はあがらない。事実、決定の実行が具体的な手順として誰か特定の人の仕事と責任になるまでは、いかなる決定も行われていないに等しい。それまでは意図があるだけである。(中略)決定を行動に移すには、「誰がこの意思決定を知らなければならないか」「誰が行動をとるか」「いかなる行動が必要か」「その行動はいかなるものであるべきか」
を問う必要がある。特に最初と最後の問いが忘れられることが多い。そのためひどい結果を招くことがある。
(5)フィードバックを行う
最後に、決定の基礎となった仮定を現実に照らして継続的に検証していくために、決定そのものの中にフィードバックを講じておかなければならない。
決定を行うのは人である。人は間違いを犯す。最善を尽くしたとしても必ずしも最高の決定を行えるわけではない、最善の決定といえども間違っている可能性はある。そのうえ大きな成果をあげた決定はやがては陳腐化する。(中略)
自ら出かけ確かめることは、決定の前提となっていたものが有効か、それとも陳腐化しており決定そのものを再検討する必要があるかどうかを知るための、
唯一ではなくとも最善の方法である。われわれは意思決定の前提というものが、
遅かれ早かれ必ず陳腐化すること知らなければならない。現実には長い間変化しないでいられるものではない。
●会議を運営する能力
・会議の適切な目的、アジェンダを設定する。
 ・意思決定によって影響を受ける社内外の利害関係者を特定する。
 ・利害関係者をモレなく会議に出席させる。
 ・議論に必要な情報を前もって準備する。
 ・会議の出席者から、追加的な情報を引き出す。
 ・情報の意味や解釈をめぐって、出席者の見解を擦り合わせる。
 ・下準備した情報と、会議の場で出た情報に基づいて、選択肢を形成する。
 ・選択肢を取捨選択する際の基準を設定する。
 ・上記の基準に従って、それぞれの選択肢のメリット、デメリットを十分に検討する。
 ・リスクを伴う選択肢の場合は、リスクを低減する補完的な施策も検討する。
 ・最終的に選択肢を絞り込み、それを現場でのアクションに落とし込む。
 (誰が、何を、いつまでにするのか?そのタスクの成否は何によって判断するのか?)
 ・(会議全体を通じて、)出席者からモレなく公平に意見を引き出す。
 ・(会議全体を通じて、)各出席者の意見を尊重して最後まで聞く。反対意見を歓迎する。また、エグゼクティブ自身だけでなく、出席者全員にも同じマインドで会議に臨んでもらうよう要請する。
 ・(会議終了後、)会議で意見が採用されなかった出席者、他の出席者から批判を受けた出席者を心理的にフォローする。
 ・(会議終了後、)選択肢の実行によって、不利益や負担を被る利害関係者を事後フォローする。
第7章「成果をあげる意思決定とは
意思決定とは判断である。いくつかの選択肢からの選択である。しかし、決定が正しいものと間違ったものからの選択であることは稀である。せいぜいのところ、かなり正しいものとおそらく間違っているであろうものからの選択である。はるかに多いのが一方が他方よりたぶん正しいだろうとさえいえない二つの行動からの選択である。(中略)成果をあげるエグゼクティブは、意思決定は事実を探すことからスタートしないことを知っている。誰もが意見からスタートする。このことに不都合はまったくない。ひとつの分野に多くの経験をもつ者は当然自らの意見をもつべきである。ひとつの分野に長い間関わりながら自らの意見をもたないのでは、観察力と姿勢を疑われる。(中略)人は意見からスタートせざるをえない。最初から事実を探すことは好ましいことではない。すでに決めている結論を裏づける事実を探すだけになる。見つけたい事実を探せないものはいない。
●最後に、意思決定は本当に必要かを自問する必要がある。何も決定しないという代替案が常に存在する。意思決定は外科手術である。システムに対する干渉でありショックのリスクを伴う。よい外科医が不要な手術を行わないように、不要な決定を行ってはならない。優れた決定を行う人も優れた外科医と同じように多様である。ある人は大胆であり、ある人は保守的である。しかし不要な決定を行わないという点では一致している。何もしないと事態が悪化するのであれば行動しなければならない。同じことは機会についてもいえる。急いで何かをしないと機会が消滅するのであれば思い切って行動しなければならない。(中略)第一に、得るものが犠牲やリスクを大幅に上回るならば行動しなければならない。第二に、行動するかしないかいずれかにしなければならない。
二股をかけたり両者の間をとろうとしたりしてはならない。(中略)とうとうここで、決定には判断と同じくらい勇気が必要であることが明らかになる。
薬は苦いとは限らないが、一般的に良薬は苦い。決定が苦くなければならないという必然性はない。しかし一般的に成果をあげる決定は苦い。(中略)エグゼクティブは好きなことをするために報酬を手にしているのではない。なすべきことをなすために、成果をあげる意思決定をするために報酬を手にしている。
終章 「成果をあげる能力を修得せよ」
●本書は二つの前提に立っていた。
(1)エグゼクティブの仕事は成果をあげることである
(2)成果をあげる能力は修得できる
第一に、エグゼクティブは成果をあげることに対して報酬を受ける。彼らは自らの組織に対して成果をあげる責任をもつ。(中略)第二の前提は、成果をあげる能力は修得できるということだった。(中略)本書は教科書ではない。その理由の一つは、成果をあげることは学ぶことはできるが教わることはできないからである。つまるところ成果をあげることは教科ではなく修練である。(中略)すなわち成果をあげることは個人の自己開発のために、組織の発展のために、そして現代社会の維持発展のために死活的に重要な意味をもつということである。
●(1)成果をあげるための第一のステップは作業的な段階である。すなわち時間が何に使われているかを記録することである。これは機械的な仕事とはいわないまでも非常に機械的な段階である。
(2)第二のステップは、貢献に焦点を合わせることである。これは作業的はなく概念的であり、機械的ではなく分析的であり、効率ではなく成果への関心の段階である。
(3)強みを生かすということは行動することである。人すなわち自らと他人を敬うということである。それは、行動の価値体系である。強みを生かすということは、実行によって修得すべきことであり、実践によって自己開発すべきものである。そしてエグゼクティブたる者は、強みを生かすことによって個人の目的と組織のニーズを結びつけ、個人の能力と組織の業績を結びつけ、個人の自己実現と組織の機会を結びつける。(中略)上司を喜ばせる部下としての行動ではなくエグゼクティブとしての責任ある行動を要求する。そしてエグゼクティブは、自らと自らの視点の焦点を貢献に合わせることによって、手段ではなく目的を中心に考えるようになる。
(4)次の段階としての「最も重要なことに集中せよ」(第5章)は、「汝自身の時間を知れ」(第2章)に対置されるものである。この二つはエグゼクティブの成果を支える二本の柱である。ここでは時間という資源ではなく、エグゼクティブの成果と組織の成果という最終製品を扱う。記録し分析すべきものは、われわれに起こることではなく、われわれがわれわれの環境に対し起こすものである。
(5)第6章、第7章で論じた成果をあげるための意思決定とは、合理的な行動に関わるものである。たどりさえすれば自然に成果をあげられるような広くてはっきりした道は存在しない。しかしたどるべき方向や道筋を教えてくれる標識はある。(中略)しかし、成果をあげるエグゼクティブの自己開発とは真の人格形成でもある。それは機械的な手法から姿勢、価値、人格へ、そして作業から使命へと進むべきものである。ここで発展させるべきものは、情報ではなく、洞察、自立、勇気など人に関わるものである。換言するならば、それがリーダーシップである。聡明さや才能によるリーダーシップではなく、持続的なリーダーシップ、献身、決断、目的意識によるリーダーシップである。
●エグゼクティブの成果をあげる能力が、現代社会を経済的に生産的なものとし社会的に発展しうるものとする。(中略)エグゼクティブの成果をあげる力によってのみ、現代社会は二つのニーズ、すなわち個人からの貢献を得る組織のニーズと、自らの目的の達成のための道具として組織を使うという個人のニーズを調和させることができる。
したがってまさにエグゼクティブは成果をあげる能力を修得しなければならない。

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ドラッカー経営哲学における「組織・マネジャー・イノベーション・自己実現」を解説。正統派の良書。

究極のドラッカー (角川oneテーマ21).jpg究極のドラッカー (角川oneテーマ21)國貞 克則.jpg 國貞 克則 氏(略歴下記)

 著者は企業(神戸製鋼所)に在籍しながら、30代半ばでドラッカー経営大学院に学んでMBAを取得し、その後コンサルタントとして独立した人で、本書はドラッカー著作の翻訳で知られる上田惇生氏による内容チェックを経ているとのこと、278ページと新書としては若干厚めですが、ドラッカー入門書としてはコンパクトによく纏まっているように思いました。

 先ず第1章でドラッカー経営学を理解するために知っておくべき5つのポイントについて説明し、第2章から第5章において、「組織」「マネジャー」「イノベーション」「自己実現」の4つの分野についてドラッカー経営学の基本を解説していますが、対象読者として、経営者・中間管理職・一般従業員など、組織に働くすべての人を念頭に置く一方で、ドラッカーが比較的大きな企業の経営トップを意識して書いている取締役会の運営、事業の多角化、多国籍企業などについては触れていないことを断っています。

 各章ごとのテーマに沿って、基本的には、第2章(組織と第3章(マネジャー)はドラッカーの著作『マネジメント―課題、責任、実践』を解説し、第4章(イノベーション)は『イノベーションと企業家精神』、第5章(自己実現)は『明日を支配するもの』の中から、それぞれテーマに関連する箇所を抽出して解説・整理していますが、原著と上田惇生氏の翻訳本の両方を参照しており、必要に応じて原著に遡ったり、上田氏以外の翻訳者による翻訳との比較をしたりするなど、ドラッカーが用いた表現や用語のうち特に重要なものについては、読者がその真意を正しく理解できるように踏み込んだ解説がされています。

 分かり易い言葉で書かれていながらも、ドラッカーの真意を曲げることなく読者に伝えるため、著者が訳を変えたり意訳した部分についても、原著に立ち戻ったりするなどの注意が払われており、自分の解釈や感想を述べている箇所は、「と思います」「と感じます」といった表現で締め括るか、或いは、コラム欄で纏めて述べるなど、"オリジナル"と"著者の解釈"の峻別がしっかりされています。

 結果としてドラッカー書籍からの引用が多くなり過ぎたかもしれないとしながらも、一方で、ドラッカー書籍にはない例示や解説も入れたために、自分の意見や感想が入り過ぎたかもしれないと述べているのは、実に謙虚。巷にドラッカーの言葉の断片を引き合いにして、著者の意見を滔々と述べている"ドラッカー入門書"が溢れていることを思うと、"稀有"と言っていいほどの誠実さと言うか、ドラッカーの経営哲学及びそれを学ぼうとする読者に対する真摯な姿勢を感じました。

 個人的には、ドラッカーが企業の目的を「顧客満足」とは言わず「顧客の創造」と言った意味がしっくり理解でき、その他にもドラッカーが用いた「Perception」(知覚)という言葉の意味など、新たに多くの示唆を得ることができた本であり、携帯にも便利な新書でありながらも、密度の濃いかっちりしたその内容は、タイトルを裏切ることなく、むしろそれに応えており、正統派の良書だと思いました。

 巻末には、ドラッカー著作の何から読み始めてどのように読み進んでいけばよいかということについても丁寧に紹介されていて、ドラッカー著作に至るための手引書としてもお薦めできる1冊です。

_________________________________________________
國貞 克則(有限会社 ボナ・ヴィータ コーポレーション代表取締役社長)
1983年 東北大学工学部機械工学科卒業
1996年 米国ピーター・ドラッカー経営大学院にてMBA取得
1983年 (株)神戸製鋼所入社
       プラント輸出、人事、企画、海外事業企画を経て、
2001年 ボナ・ヴィータ コーポレーション設立して独立。
       (事業内容:会計及びリーダーシップに関する研修ほか)

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ドラッカーによって書かれることの無かった"幻のリーダーシップ論"を一番弟子が再構築。

ドラッカー先生の.JPGドラッカー先生のリーダーシップ論 帯.jpg 『ドラッカー先生のリーダーシップ論』(2010/12 武田ランダムハウスジャパン)

 ドラッカーの教え子、友人、弟子として30年間に渡りその薫陶を受けた著者が、彼の著作、講義、対話をもとに、ドラッカーがもしリーダーシップ論を書いていれば、このような内容になったのではないかとの想定のもとに書いた本で、ピーター・ドラッカー財団(リーダー・トゥ・リーダー・インスティチュート)のお墨付きも得ている本。

 実際ドラッカーは、「リーダーシップはこの上なく大切であり、これに代わり得るものはない」「マネジメントはリーダーシップである」として、早くからリーダーシップに言及していたにも関わらず、彼の著作にはリーダーシップにテーマを絞って書かれた単独の著作はありません(『チェンジ・リーダーの条件』('00年/ダイヤモンド社)という本があるが、あれは上田惇生氏が、ドラッカーの過去の著作からマネジメントに対する彼の考えを抜き出して編訳したエッセンス版)。

 これは、ドラッカーが、先の言葉にもあるように、マネジメントとリーダーシップを近しいものであると永らく考えていたためで、リーダーシップをマネジメントと切り離して論じるべきであると考えるようになったのは晩年のことであるためであり、但し、リーダーシップに関する単著を著す前に亡くなってしまったということのようです。

ドラッカー カリスマ性.jpg 本書を読むと、その他にも、「リーダーシップは学んで身につけられる」との結論に至ったのも晩年のことで、それまで彼は"素質論"だったということが分かり、"カリスマ"に対してもかつては忌避していたのが(ヒットラーが政権を取った数日後に祖国を離れ渡英したことに符号する)、晩年になって、中立的な立場になるなど、いろいろリーダーシップに対する考えが変遷しているのが窺え、興味深く重いました(手近な入門書の多くは、最初からリーダーシップに関する彼の考えが定まっていたかのように書かれているものもあるなあ)。

 著者自身が自らの調査に基づき、また、ドラッカーの著作に立ちもどりながら編み出したリーダーシップの8項目の原則を掲げていますが、それらは、①どこまでも誠実さを貫く、②仕事の内容をよく知る、③期待することを言葉で表す、④並々ならぬ努力をもって仕事に打ち込んでいることを示す、⑤よい結果を期待する、⑥部下に十分配慮する、⑦私利よりもミッションを優先させる、⑧自らが先頭に立つ、となっており、ドラッカーに見せたところ、賛同の意を示したとのことです(とりわけ①の誠実さということに対して)。

 著者にはこれまでにも、ドラッカーのマネジメント論や、そのマネジメント論に基づくリーダーシップ論についての著作があり、本書は『ドラッカー先生の授業』('08年/武田ランダムハウスジャパン)の続編と言えるもので、内容は理論的に高度であるとは言え、比較的新しい事例なども織り込まれていて、読み易いものとなっています。

 著者自身がドラッカー研究を通じて纏めた、効果的なリーダーシップのドラッカー・モデルというべきものが冒頭にあり、これは、訳者あとがきで橋本碩也氏が再度、ドラッカーのリーダーシップ論の真髄として5点に纏めていますが、それらは次の通りです。
 ①リーダーはすべての基盤となる戦略を自分自身で策定すること
 ②リーダーには、誠実さと倫理が備わっていることが不可欠
 ③軍隊で教えるリーダーシップをモデルとすること
 ④モチベーションについての心理的な原則を理解し、応用すること
 ⑤マーケティングの考え方を自分自身のリーダーシップに採り入れること

 本書は、この5点を章ごとに纏めて解説する形をとっていますが、④に「軍隊で教えるリーダーシップをモデルとすること」とあるのは、実は著者は、ドラッカー一番弟子であるとともに、かつて空軍大将にまで上り詰めた人であり、ドラッカーとの会話を通じて、ドラッカーが軍隊で教えるリーダーシップを高く評価していたことを知ったことによるもので、⑤にの「マーケティングの考え方を自分自身のリーダーシップに採り入れること」とあるのと共に、興味深く思いました。

 その他にも、「リーダーシップの7つの大罪」「従業員はコストではなくボランティアとみなす」などといった興味深い記述があり、ケーススタディとしてドラッカーが大学での講義で教えた事例なども網羅されていて、通り一遍のドラッカー入門書とは一味違った、読み応えのある本でした。

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ドラッカーの考えが身近に感じられるとともに、経営学者というよりも啓蒙家であることを再認識させられた。

ドラッカーのリーダー思考.jpgドラッカーのリーダー思考 (青春新書インテリジェンス)』 ['10年]

 ドラッカーが亡くなる前年に刊行された『ドラッカーが語るリーダーの心得』('04年/青春出版社)を加筆修正し改題したもので、ドラッカーの言葉を50抜き出して解説をしていますが、上田惇生氏の翻訳による『経営の哲学』『仕事の哲学』、『変革の哲学』、『歴史の哲学』から成る「ドラッカー名言集」('03年/ダイヤモンド社)よりも、1つ1つの言葉の解説が丁寧で、昨今のドラッカー・ブームによる"復活"ですが、最近出ているものよりも以前に刊行されたものの方が分かり易かったりもするので、これはこれでいいことではないかと。

 著者は、ケネス・プランチャード&スペンサー・ジョンソンの『1分間マネジャー』('83年/ダイヤモンド社)の翻訳で知られる産業能率大学名誉教授・小林薫氏で、80年代は、この人が翻訳したプランチャードの『1分間リーダーシップ』やジョンソンの『1分間セールスマン』(共に'85年/ダイヤモンド社)、M・J・カリガンらの『ベイシック・マネジャー』('84年/ダイヤモンド社)などの150ページから200ページ程度のハードカバー本がよく読まれたのではないかと思います(個人的には、PHPからリーダー実践マニュアル」として刊行された、C・レイモルドの『最高の上司とは何か』とかG・ホーランドの『ビジネス会議の運営術』(共に'87年/PHP研究所)などにも手を伸ばしたけれど、こちらも150ページ前後のハードカバー本。この手の本、ハマる人はハマるんだろなあ)。

 ドラッカー学会会長の上田惇生氏(1938年生まれ)より年上で、1931年生まれということは超ベテラン・ドラッカリアンですが、ドラッカー来日時に通訳を務めたことからドラッカーとの親交が始まり、ドラッカー邸を年に何回か訪問したりもしていたということで、本書にあるドラッカーの50の言葉の中には、著作や論文から引いたものだけでなく、ドラッカーが来日した際のセミナーでの発言や、ドラッカーと著者の会話の中での言葉なども盛り込まれています。

 ドラッカーのリーダーシップ論の要諦は、とりわけ前の方に出てくる「リーダーのタイプは千差万別である―カリスマ・リーダーなどは滅多にいない」「有能さは習得できる」「"口動人"ではなくて真の"行動人"たれ」あたりに集約されているかと思われますが、本書では、マネジメント全般に渡って言及されており、また「発想法」ということなどにも触れられています。

 とにかく一般向けに分かり易く書かれていて、ドラッカーのものの考え方が身近に感じられるとともに、彼が経営学者というよりも啓蒙家であることを改めて認識させられる本でもありました。

 体系的に理解しようとして読む本ではなく、自らの内省に沿って読む本といった感じでしょうか(もともと、ドラッカーがリーダーシップをマネジメントと切り離して考えるようになったのは晩年のことであり、但し、リーダーシップに関しては、体系的な理論モデルを遺さなかった)。

 敢えて疑問点を述べるとすれば、ドラッカー自身のリーダーシップ論は、時期により微妙に変化しており、例えば、初期には「マネジメントはリーダーシップである」(1947年「ハーバード・マガジン」と言いながらも、「リーダーシップは教えられることも、学ぶこともできないものだ」と言っていた時期があり、代表作『マネジメント-務め、責任、実践』(1973年)でも「マネジメントはリーダーを創り出せない」と書いています(この『マネジメント』という著作においても、リーダーシップは独立したテーマとして扱われていない。「リーダーシップは学んで身につけれられるもの」との結論に至ったのは晩年とされている)。

 上田氏のドラッカーの要約本にもその傾向はありますが、あたかもドラッカーの考えが最初から確定して生涯を通じてブレが無かったかのような印象を与えるのは、ドラッカーがヒットラー体験を通じて嫌うようになったところの"カリスマ化"作用("カリスマ"に対する考え方も、晩年に変化しているのだが)ではないかと思ったりもしました。

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ドラッカーの経営思想の入門書、ドラッカーの著作への手引書としてお薦めできる1冊。

ドラッカーの実践経営哲学.jpg            ドラッカーの実践経営哲学 単行本.jpg
[新版]ドラッカーの実践経営哲学 (PHPビジネス新書)』['10年]/『ドラッカーの実践経営哲学―ビジネスの基本がすべてわかる!』['02年]

 '02年刊行の『ドラッカーの実践経営哲学』(PHP研究所)の新書復刻版で、著者は大日本印刷出身のビジネスマンで、ダイレック常務取締役などを歴任するなど、企業経営に関わりながら、自らの出身大学である慶応大学の同期生らと研究会を立ち上げてドラッカー研究を続けた人ですが、元本の刊行の翌年に亡くなっています。

 復刻の背景には昨今のドラッカー・ブームがあると思われますが、分かり易い内容でありながらも、オリジナルが単行本であることもあってかかっちりした構成で、ドラッカーの経営思想のサマリーとしては上質の部類に入ると思われます。

 畳み掛けるような事例を背景に持論を展開するドラッカーの手法を踏襲し、更に、それら事例の多くを、(本書執筆時点ではあるが)日本企業における直近のケースに置き換えて、自身の言葉で解説しているため、書かれていることがたいへん身近に感じられ、それが読み易さにも繋がっているのだと思います。

 自分自身、こんなによく出来たドラッカーの入門書があったとは知らず、今回初めて新書で読みましたが、著者が生きていたら、更に最新の企業事例を織り込んで本書を改訂していたのではないかと思われ、それが成らなかったことが残念です。

 ドラッカーの経営思想の入門書、その著作の翻訳書に至るための手引書としてお薦めできる1冊です。

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典拠を1冊に絞っているのがいい。すらすら読めることが本書の狙いの1つ。読後感も爽やか。

もし高校野球の女子マネージャーが2.bmp 『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』(2009/12 ダイヤモンド社)

 タイトル通りの設定で、進学校の弱小野球部の女子マネージャーになった主人公の女の子・みなみが、「野球部を甲子園に連れていく」という自らに課したミッションのもと、偶然出会ったドラッカーの経営書『マネジメント』を片手に野球部の強化に乗り出し、ドラッカーの教えを1つ1つ実践して、やがて―。

 面白かったです。ドラッカーの数ある著作の中から『マネジメント―基本と原則[エッセンシャル版]』('01年/ダイヤモンド社)1冊に絞って引用しているので典拠が分かり易く、また、それらを旨く物語に織り込んでいるように思われ、これだと、かなりの読者を、元本(もとほん)を読んでみようという気にさせるのではないでしょうか。

上田惇生、糸井重里 nhk.jpg 著者は、放送作家としてバラエティ番組の制作に参加したり、「AKB48」のプロデュース等にも携わった人とのことですが、NHKの「クローズアップ現代」で「よみがえる"経営の神様"ドラッカー」としてドラッカー・ブームをフィーチャーした際に('10年3月放映)、ドラッカー本の翻訳者である上田惇生氏と共にゲスト出演していたコピーライターの糸井重里氏もさることながら、その糸井氏よりも著者の方がより"ドラッカリアン"ではないでしょうか(但し、本書とこの糸井氏出演のテレビ番組でドラッカーブームに火がついたとされているようだ)。
NHKクローズアップ現代「よみがえる"経営の神様"ドラッカー」出演:上田惇生、糸井重里(2010年3月17日放送)

 本書を読んでこんな旨くコトが運ぶものかと思う人もいるかも知れませんが、ビジネス書(テキスト)として捉えれば、その枠組みとしての"お話"なので、そうした目くじら立てるのは野暮でしょう。ドラッカー自身が、オプティミストであったわけだし、バリバリの経営コンサルタントである三枝匡氏の 『Ⅴ字回復の経営』('01年/日本経済新聞社)だって、こんな感じと言えばこんな感じでした。

 主人公のみなみと親友の夕紀や後輩の文乃、野球部のメンバー達との噛ませ方は、ヤングアダルト・ノベルのストーリーテリングの常套に則っていますが、このYA調が意外とこの手の「テキスト」としてはマッチしていて、構想に4年かけたというだけのことはあります(著者自身、高校時代は軟式野球部のピッチャーだったと、朝日新聞に出ていた)。
 最初は主人公のみなみが"マネージャー"の意味を"マネジャー"と勘違いして、それが結果的にうまくいくというコメディにしようと思っていたそうですが、そうしなくて良かったし、そうする必要も無かった(でも、"マネジャー"って、日本語の発音上は"マネージャー"と言ってるなあ)。

 文章が稚拙との評もありましたが、飾り気の無い文体で、個人的にはすらすら読めたし、すらすら読めることが本書の大きな狙いの1つなのだと思います。読後感が爽やかなのも良かったです。

【2015年文庫化[新潮文庫]】

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分かり易いが、あくまでドラッカー中心。経営思想の入門書として"手頃"(専門書への"手引書")。

「超ドラッカー級」の巨人たち1.jpg 『「超ドラッカー級」の巨人たち - カリスマ経営思想家入門 (中公新書ラクレ)』['11年]

 「ドラッカーだけ読めば済むと思うな」との考えのもと、ドラッカー以下、C・K・プラハード、ヘンリー・ミンツバーグ、ジョン・コッター、マイケル・ポーター、フィリップ・コトラー、クレイトン・クリステンセンの7人のカリスマの人物・思想・理論を解説した入門書で、学者ではなく著述家による本ですが、そうしたこともあって大変分かり易く書かれています。

「超ドラッカー級」の巨人たち zu.jpg 特徴的な点は、まずドラッカーの経歴や逸話を紹介した上で、ドラッガーがマネジメント論で重要とした「ミッション・人・組織」という三角形を成す概念と「戦略・マーケティング・イノベーション」という同じく三角形を成す概念を組み合わせて「六茫星」を作り、以下紹介される6人の経営思想家たちが、その内のどの分野について特に深く言及しているかを、各章の冒頭で図に示していることであり、それによると、6人の経営思想家の重点的カバー領域は次のようになっています。

・C・K・プラハード ...... ミッション・組織・イノベーション
・ヘンリー・ミンツバーグ ...... 戦略・人・組織
・ジョン・コッター ...... 人・組織
・マイケル・ポーター ...... 戦略
・フィリップ・コトラー ...... マーケティング
・レイトン・クリステンセン ...... イノベーション

 ドラッカー以外にこの6人でいいのかというのもありますが、関連する経営思想家も解説文中で紹介されています。
そのうえで、各経営思想家が提言した、その考え方の中核となる概念を抜き出して分かり易く解説しており、経営思想の入門書としては"手頃"であるかもしれません。

 但し、新書1冊に7人なので、紙数の関係から、キーワードの羅列みたいになってしまっている部分もあり、その意味では"手頃"と言うより"手軽"と言った方がいいかも。むしろ、より専門書への手引書だろうなあ。

 各カリスマの経営思想の概略的な入門書としては悪くなく、それぞれの重点カバー領域を再確認するうえでもいいと思いますが、常にドラッカーをベースに解説しているムキもあり、こうなると、「超ドラッカー級」と言うより、皆ドラッカーの掌の上にいるような印象も...(実際は、そんなことことはないと思うのだが)。
 
 あくまでドラッカー中心であり、ドラッカーを軸として解説しているから分かり易いというのもあるのだろうなあ。

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CSR、バランスト・スコアカード、職務主義と役割主義の差異などの考え方もすでに。

現代の経営〈〔正篇〕〉.jpg 現代の経営〈続篇〉.jpg  ドラッカー名著集2.jpg ドラッカー名著集3.jpg  『ドラッカー名著集2 現代の経営[上]名著集3 現代の経営[下]
現代の経営〈〔正篇〕〉事業と経営者 (1956年)』『現代の経営〈続篇〉組織と人間 (1956年)

ドラッカー 現代の経営  上.jpg 1954年に発表されたP・F・ドラッカー44歳のときの著作で、"三大古典"と呼ばれるものの中でも最も有名な本。ただし、ドラッカーは存命中、何度も自著を改稿していて、今回「名著集」として出された本書も、その前の'96年版からさらに改訳されているとのこと。

 ドラッカーの著書は、アメリカ国内でも海外でも名言集のようなものが一番売れているそうですが、「成長可能な資源は人的資源だけである」(第2章)、「企業の目的は顧客の創造である」「企業には2つの基本的機能が存在する。すなわち、マーケティングとイノベーションである」(第5章)、「事業は何かを決めるのは、生産者ではなく顧客である」(第6章)、などとあるように、彼の著名な言葉の多くは本書に含まれていて、そうした言葉がどういった章で、どういった流れで使われているのか当たってみるのもいいかも。

『現代の経営』(1956/05 自由国民社)

 また、会社は誰のものかということが昨今問われていますが、この問いに対するドラッカーの答えは社会のものであるということであり、社会のための機関として富の増殖機能を伸ばしていくことがマネジメントの責任であるという前提に立っています。
 従って、「事業の目標」(第7章)には、マーケティング、イノベーション、生産性、資金と資源、利益、マネジメント能力、人的資源、社会的責任(今でいうCSR)の8つがあり(最後3つが含まれている点がポイント)、これらについてそれぞれに目標設定をすることの必要を説き、バランスト・スコアカードに相当するものの出現をすでに予言しています(第7章)。

 話を核心部分に持っていくプロセスが巧みで、ポイントとなるフェーズでは、最初に企業事例を持ってきたり、歴史的事実や故事を紹介したりし、例えば、「自己管理による目標管理」(第11章)では、マネジメントのセミナーでよく取り上げられる次のような話が紹介されています。
 それは、何をしているのかを聞かれた3人の石工のうち、1人は「これで食べている」と答え、1人は「国で一番の仕事をしている」と答え、1人は「教会を建てている」と答えたというもの。
 ドラッカーは、第3の男をあるべき姿、第1の男を報酬に見合った仕事をする者としつつ、第2の男、つまり職人気質の男をどう扱うかを問題視し、そこから経営管理者の役割や陥りやすい誤りを指摘し、さらに何を目標とすべきか、マネジメントと目標管理のあるべき関係、自己管理によるマネジメントの変革を説いています。

現代の経営 続編.jpg 本書では後半かなりの紙数を「人と組織のマネジメント」に割いていて、ここでは旧来の人事管理論を批判し、人間関係論(マグレガー)や科学的管理法(テーラー)の限界を指摘していて、具体的に人事部の在り方も批判していますが、こうした批判は皮肉にも今読んでも古さを感じさせん。
 彼はここで先行理論や手法を全否定しているのではなく、それ以前において、人の仕事を組織化すること(仕事を要素動作に分解するのではなく1つの全体に統合すること)が重要であるのだと説き、さらに、仕事にある程度の挑戦の要素を入れるようにすべきだと唱えていますが、このことは、人事マネジメントにおける職務主義と役割主義の考え方の差異にも当て嵌まる気がします。

 組織論に入る前に、1個人の仕事の組織化を説いているのは興味深いですが、さらに、人を組織するとはどういうことか、人員配置の重要性や動機付けの必要性を説き、仕事で責任を持たせるには、正しい配置を行うことのほかに、適正な目標水準設定、仕事情報の供与、マネジメント的視点を持たせることなどをポイントとして挙げています。

 書き出すとキリがありませんが、原題は"The Practice of Management"、実践しないと意味がないということでしょう。

 【1956年単行本[自由国民社(正篇『現代の経営-事業と経営者』、続篇『現代の経営-組織と人間』)]/1965年単行本[ダイヤモンド社・Executive books(上・下)]/1987年単行本[ダイヤモンド社(上・下)]/1996年単行本[ダイヤモンド社(『新訳 現代の経営(上・下)』-ドラッカー選書3・4)]/2005年単行本[ダイヤモンド社・ドラッカー名著集2・3]】

【2201】 ○ グローバルタスクフォース 『あらすじで読む 世界のビジネス名著』 (2004/07 総合法令)
【2202】 ○ ダイヤモンド社 『世界で最も重要なビジネス書 (世界標準の知識 ザ・ビジネス)』 (2005/03 ダイヤモンド社)

《読書MEMO》
●章立て
序論 マネジメントの本質
第1章・マネジメントの役割、第2章・マネジメントの仕事、第3章・マネジメントの挑戦
第1部 事業のマネジメント
第4章・シアーズ物語、第5章・事業とは何か、第6章・われわれの事業は何か、第7章・事業の目標、第8章・明日を予期するための手法、第9章・生産の原理
第2部 経営管理者のマネジメント
第10章・フォード物語、第11章・自己管理による目標管理、第12章・経営管理者は何をなすべきか、第13章・組織の文化、第14 章・CEOと取締役会、第15章・経営管理者の育成
第3部 マネジメントの組織構造
第16章・組織の構造を選ぶ、第17章・組織の構造をつくる、第18章・小企業、大企業、成長企業、
第4部 人と仕事のマネジメント
第19章・IBM物語、第20章・人を雇うということ、第21章・人事管理は破綻したか、第22章・最高の仕事のための人間組織、第23章・最高の仕事への動機づけ、第24章・経済的次元の問題、第25章・現場管理者、第26章・専門職
第5部 経営管理者であることの意味
27章・優れた経営管理者の要件、28章・意思決定を行うこと、29章・明日の経営管理者
結論 マネジメントの責任

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中小企業向けの助言が多い。同族経営やM&Aを成功させる秘訣に共鳴。

実践する経営者.jpg 『実践する経営者―成果をあげる知恵と行動』 (2004/04 ダイヤモンド社)

ピーター・F・ドラッカー.jpg '03年刊行の上田惇生氏編訳による「ドラッカー名言集」4部作に続く同氏の編訳によるもので(原題:Advice for Entrepreneurs)、30年にわたりウォールストリート・ジャーナルに寄稿した論文から、直接経営にかかわる助言のみを厳選したとのこと。
 経営戦略や経営者の在り方などについての自らの考えがテーマごとにまとめられていて、必要に応じて実際に社会・経済現象として起きていることを検証材料とし、具体的に解説されています。

 '80年代に書かれた論文が多く、的確に将来を見据えつつ書かれてはいますが、事例の中には時間的隔たりを感じるものもあり、しかし、それでもなお、人間の心理や行動の普遍性を見抜いたうえでの原理原則の提示には、いちいち頷かされます。
 個人的には、「同族会社が繁栄を続ける秘訣」とか「企業買収を成功させる5つの原則」などが、かなりリアリティを感じつつ読めましたが、その他にも参考となる箇所は多かったです(中小企業向けの助言がかなり含まれている)。

 本文で、すべての経営者は起業家たれ、と言いつつ、冒頭のインタビュー('85年)で、アップルの創業者たちが生き残れないという彼の予言が当たったのは、彼らに経営知識がなかったためとして、あまりに早く成功することは不幸だとしており、また、今日の経済学者は神学者と同じだと皮肉っています。
 また、未来に対しては楽観的であるという話の後に、自らが育ったオーストリアでの第一次世界大戦時代がいかに暗いものであったかを示唆していて、こうした発言に自らの個人史が反映されているのが窺えて興味深かったです。

《読書MEMO》
●中小企業が成長し続けるためのポイント (30p〜)
 1. 利益よりキャッシュフローを重視する
 2. 成長は資金需要と財務構造を変える
 3. 将来必要となる情報は何か予期しておく
 4. 技術、製品、市場を集中させる
 5. チームとしての経営陣を構築する
●ゼロ成長企業における経営の心得 (36p〜)
 1. 昇進以外の方法による動機づけを図る
 2. 昇進の見込みのない者の転職に手を貸す
 3. 成長できないのであるならば、事業の内容をよくする
 4. 安易な多角化は失敗する
 5. 大きな成長の機会は必ずある
●同族会社が繁栄を続ける秘訣 (47p〜)
 1. できの悪いものを働かせてはならない
 2. 経営に一族でない者を一人は起用せよ
 3. 専門的な地位には一族でない者の起用が必要
 4. 後継問題に関わる意思決定は、(利害関係のない)一族以外の者に委ねる
●パートナーシップに成功するには (66p〜)
 1. パートナーシップの目的を徹底的に検討する
 2. いかにマネジメントするかを決めておく
 3. 誰がマネジメントするかを決めておく
 4. 親会社における責任者を決めておく
 5. 最終決定を行う調停者を決めておく
●企業買収を成功させる5つの原則 (72p〜)
 1. 買収する側が買収される側に何を貢献できるか考える
 2. 市場、技術、経験・専門能力などの何れかの点での共通の核を持つ
 3. 買収する側の人間が買収される側の製品、市場、顧客に敬意を持つ
 4. 買収した側は買収された側に対して1年以内に経営陣を送り込む
 5. 最初の1年間は、双方の人間を(境界線を越えて)移動させ、昇進させる
●知識労働の生産性をあげる4つの方法 (117p〜)
 1. 知識労働者自身に責任を持たせる
 2. 知識労働者が自らの貢献を評価できるようにする
 3. (誰も注意を払っていないことだが)本来の仕事をさせる
 4. 配置に力を入れる(成果を生み出す人間がどこにいるかを知る)
●行動様式を変えるための4つの方法
 (191p〜)
 ※ 文化を変えてはならない。文化を変えずに行動様式の方を変える。
 1. いかなる成果が必要かを明確にする
 2. すでにそれを行っているところはどこかを問う
 3. 組織の文化に根ざし、かつ成果をあげる行動を奨励する
 4. 評価と報償を変える(ある行動が報償されれば、そのまま受け入れられる)
●リーダーシップとは何か (198p〜)
 1. リーダーシップとは仕事である(組織使命を考え、明確化し、目標を定める)
 2. リーダーシップとは責任である(真のリーダーは自らが責任を負うことを知る)
 3. リーダーシップとは信頼である(賢さでなく、真摯さに支えられるもの)

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ドラッカーの著作に触れた人の復習用、初めての人の元本に至る橋渡しとして。

経営の哲学― ドラッカー名言集.jpg 『経営の哲学― ドラッカー名言集』 (2003/07 ダイヤモンド社)

 P・F・ドラッカー(1909‐2005)の著作から、その多くを翻訳してきた上田惇生氏が、「経営」についての言葉を選んで編集した名言集で、『仕事の哲学』、『変革の哲学』、『歴史の哲学』と合わせた4部シリーズのうちの1冊。
 米国などでも、ドラッカーの本で一番売れているのは、こうした「金言集」のようです。

 1ぺージに1つの抜粋で、少し贅沢ですが余白が多くて読みやすく、しかし一言一言は重いと思います。
 ドラッカーの著作に触れたことのある人の復習用としても使えますが、彼の著作を初めて読もうという人が、そのニュアンスや自分との相性を測るうえでも良いのではないのでしょうか。

 本書では、マネジメントの役割、事業の定義、戦略計画、コア・コンピタンス、顧客、マーケティング、イノベーション、生産性、利益、コスト、意思決定、目標管理、人のマネジメント、組織構造、社会的責任の15の章立てに沿って、200近い名言が紹介されていますが、やはり、総合経営書である『現代の経営(上・下)』('54年著作/'65年/ダイヤモンド社)『マネジメント-課題・責任・実践』('74年/ダイヤモンド社)からの抜粋で約半分を占めているようです。

 こうした年代を経た著作の言葉が生きているというのは、1つには物事の本質をついているということの表れであり、またもう1つには、経営学者の言葉と言うよりも、社会学者、心理学者、思想家の言葉のような普遍的性質を持っているからではないかと思います。

 とりあえず今は時間が無いという人にお薦めですが、ドラッカー初体験の人の場合は、元本(もとほん)の文脈の中で捉えないとわかりにくい要素もあるので、あくまでも元本に至る橋渡しの書として、予め位置づけておいた方が良いと思います。

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マネジメントの総合書であり教科書であると同時に、質の高い啓蒙書。

ドラッカーマネジメント.jpgマネジメント 基本と原則 エッセンシャル版.jpg 抄訳マネジメント.jpg ピーター・F・ドラッカー03.jpg Peter Drucker
マネジメント - 基本と原則 [エッセンシャル版]』 〔'01年〕 『抄訳マネジメント―課題・責任・実践』 〔'75年〕

 1974年、ピーター・F・ドラッカー(1909‐2005)は大著『マネジメント-課題・責任・実践』('74年/ダイヤモンド社)において独自の経営論を体系化し、ドラッカー経営学ともいうべき大著に仕上げましたが、その「抄本」は、米国の大学やMBAコース、セミナーなどでもテキストとして使われており(ちなみに、この"圧縮版"も、著者とは別の人がサマリーを作ったのではなく、ドラッカー自身が書いている)、日本でも『抄訳マネジメント』('75年/ダイヤモンド社)として親しまれてきました。本書はその「抄訳」の内容をほぼ移植したものです。 

Peter Ferdinand Drucker.bmp ドラッカーは'70年代に既に、「経済学のフリードマン」と並び称される「経営学の泰斗」としてその名を馳せており、経営に「マネジメント」という考え方を入れたのも、「目標管理」という概念を開発したのもこの人ですが、にも関わらず「経営学者」というより「思想家」に近いかも知れず、'80年に出版されたThe Best of Everything という本では「教祖のベスト」としてその名が挙げられていて、本書なども「啓蒙書」的な感じがします。

 ただし、本書を読んで実感するのは、産業界の事実をよく観察した上でロジックをあてはめ、それに社会学や心理学的な視点からの人間的要素を加味し(この点が読者の共感を呼ぶ要因の1つだと個人的には思っていますが)、トータルな理論体系を構築している点です。

 企業とは何かということから説き起こしているように、先ず巨視的にマネジメントの使命・目的・役割論から入って、マネジメント課題の次元とそれぞれの次元に求められているものを整理したうえで、組織や人の問題、トップの役割やマネジメント戦略について語っています。

 企業の機能は「マーケティングとイノベーション」であるとスッパリ定義してみせるなど、切り口も纏め方も明快で読みやすく、マネジメントの総合書であり教科書であると同時に、ビジネスパーソンにとって質の高い啓蒙書でもあると思います。
 
【2298】 ○ 水野 俊哉 『明日使える世界のビジネス書をあらすじで読む』 (2014/04 ティー・オーエンタテインメント)

《読書MEMO》
●企業=営利組織ではない。企業の目的は社会貢献であり、ただし、高い利益をあげて、初めてそれができる(14p)
●「企業の目的は、顧客の創造である。したがって、企業は二つの、そして二つだけの基本的な機能を持つ。それがマーケティングとイノベーションである。マーケティングとイノベーションだけが成果をもたらす」(16p)
●労働における5つの次元...生理的・心理的・社会的・経済的・政治的次元(59p)
●心理的支配...マクレガーの〈X理論とY理論〉に関し、産業心理学はY理論への忠誠を称するが、その前提たるやX理論そのものである(65p)
●働き甲斐を与えるのは「責任と保障」であり、責任の条件には
 1.生産的な仕事、
 2.フィードバック情報、
 3.継続学習
 の3つが不可欠(73p)
●「人こそ最大の資産である」必要なのは実際に行うことである(81p)
 1.仕事と職場に対して、成果と責任を組み込む
 2.共に働く人たちを生かすべきものとして捉える
 3.強みが成果に結びつくように人を配置する
●「目標管理の最大の利点は、自らの仕事ぶりをマネジメントできるようになることである」(140p)
●組織の条件(198p)...
 1.明快さ
 2.経済性
 3.方向づけの容易さ
 4.理解の容易さ  
 5.意思決定の容易さ
 6.安定性と適応性
 7.永続性と新陳代謝
●五つの組織構造(204p)...
 1.職能別組織
 2.チーム型組織
 3.連邦分権組織(事業部制?)
 4.擬似分権組織
 5.システム型組織(CFT?)

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マネジメントの今日的な問題を重点的にとりあげている読みやすい本。

明日を支配するもの.jpg  Management Challenges for the 21st Century.jpg 明日を支配するもの~Management Challenges for the 21st Sentury by ドラッカー.jpg  d_t.gif 
明日を支配するもの―21世紀のマネジメント革命』〔'99年〕「Management Challenges for the 21st Century」「Management Challenges for the 21St Century」[カセット]/ドラッカー(『明日を支配するもの』刊行の頃〔90歳〕)
Management Challenges for the 21st Century.jpg ピーター・F・ドラッカー(1909‐2005)の'99年の著作で(「原題は"Management Challenges for the 21st Century")、世界17カ国で同時出版されベストセラーとなったものですが、章立ては次の通りとなっています。

 第1章 マネジメントの常識が変わる-パラダイム転換
 第2章 経営戦略の前提が変わる-21世紀の現実
 第3章 明日を変えるのは誰か-チェンジ・リーダー
 第4章 情報が仕事を変える-新情報革命
 第5章 知識労働の生産性が社会を変える-先進国の条件
 第6章 自らをマネジメントする-明日の生き方

 こうして見るとマネジメント全般についての集大成的著書にも見え、実際過去の自著からの引用も多いのですが、本書の特徴は、マネジメントにおける21世紀的な問題、つまり今日的な問題(かつ既にその兆しが現れている問題)を重点的に取り上げて説いていることで、常に時代の先を見据える著者らしいものです。

 第1章のマネジメント論では、従来のマネジメントの常識が変わったことを指摘し、第2章の経営戦略論でまず論じているのは、「競争力戦略」のことと言うより「少子化」の問題や「コーポレートガバナンス」の問題です。
 第3章は「リーダーシップ論」と言うより、今後「チェンジ・リーダー」となりうる組織とはどういうものかという「経営組織論」です。
 また、そうした流れの中で、個人としてどう生きるかについて述べた第6章は、仕事・キャリア・人生設計についての示唆の富むもので、これもまた著者らしい内容です。

 最後に日本の読者向けに「日本の官僚制」について述べた文章が付いていますが、日本は官僚主導の社会であり、すべてを先延ばしする「官僚」の本質(そのために経済バブルとその崩壊を招いた)を指摘しながらも、それに代わる指導層が現れない限り官僚支配は続くとし、また、日本というのは、国民の関心もそうだが、「経済」よりも「社会」が優先する国だと言っているのが興味深いです。

 本文中にある多くの例証を見ても、89歳にしてよく社会動態を観察し分析している点に感心させられます。

 彼の「3大古典」などと言われる著作に比べ、取り上げられている事例に近年のものが多く、また、日本について触れられている部分が上記のほかにも多くあります。 
 先進国での人口激変を指摘する際にも、まず日本を取り上げ、日本の人口は21世紀末に5000万あるいは5500万人に減少すると指摘しています。 
 
 全体を通して文章自体がエッセイ風であることなどからも、比較的誰にでも親しみやすい1冊ではないかと思います。

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