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「ストレスチェック制度」と不調者の早期発見、職場運営、応用的対応の解説。

管理職のためのメンタルヘルス・マネジメント.jpg管理職のためのメンタルヘルス・マネジメント人事担当者のためのメンタルヘルス復職支援20.JPG人事担当者のためのメンタルヘルス復職支援~リスクを最小化するためのルールとステップ~(労政時報選書)

 産業医であり、企業におけるメンタルヘルスに関する分かり易い解説で定評のある著者による本。

 以前の同著者の著書『人事担当者のためのメンタルヘルス復職支援―リスクを最小化するためのルールとステップ』('12年/労政時報選書)では、メンタルヘルスの復職支援を中心に、人事労務担当者をナビゲーションするという意味で、ルールやステップの実務パッケージを「メンタルヘルス・ナビ」と呼び、その4つのステップとして、1.対応ルール策定、2.管理職研修、3.産業医の役割決め、4.不調者への対応ルールの適用・運用の順で解説をしていました。

 今回は、2014年の労働安全衛生法の改正により「ストレスチェック制度」が企業に義務付けられたことを受けて(実施は2015年12月から)、管理職向けに、第1章でその「ストレスチェック」の概要を解説するとともに、第2章で「不調者への対応と早期発見のコツ」について、第3章で「職場ストレスを最小化する職場運営」について、第4章で「生産性向上とリスク管理に役立つメンタルヘルス対応(応用編)」について解説しています。

 このように前著同様に全体を4つのステップに分け、尚且つ管理職向けということで、より分かり易くなっているだけでなく、単なるメンタルヘルスの解説本ではなく、冒頭の著者自身の定義にもあるように、「職場のストレスやメンタルヘルス不調を考えながら、マネジメントやリーダーシップを強化するための本である」となっています。

 とりわけ著者が主張しているのは、メンタルヘルス不調社員に対して「思考停止」してしまうのではなく、問題を要素(職場に発生している問題点、疾病性、会社責任、職務適性など)に切り分けて実務的に対応していくべきであるという方法論です。そして、事例ごとにリスクと損失を最小化するゴール・落としどころを設定していくことを求めています。そうした意味では、管理職に限らず、人事労務担当者や経営者が読んでも啓発される要素は多いかと思います。

 「ストレスチェック」においてどのような調査票を用いるかは事業者が自ら選択可能ですが、国では標準的な調査票として、本書でも第1章でその中身について解説されている「職業性ストレス簡易調査票(57項目) 」を推奨しています。この「ストレスチェック」については各章末にもコラムがありますが、巻末のコラムで著者が指摘しているように、企業に実施は義務づけられるものの、それを受けるかどうかは労働者の自由であり、また、対応する専門家の不足から、50人未満の事業場では当面は、その実施は努力義務に留まることとなっています。プライバシー等との関係で難しい問題はあるかと思われますが、受けるのは労働者の任意みたいな捉えれ方になってしまうと、この辺りでの実効性はどうなのかという懸念もあります。

 また、ストレスチェックの結果の通知を受けた労働者のうち、高ストレス者として面接指導が必要と評価された労働者から申出があったときは、医師による面接指導を行うことが事業者の義務になりますが、これなどは、先の労働安全衛生法の改正で定められた長時間労働者に対する「医師による面接指導」(第66条の8)が、1週 40時間超の労働時間が1カ月当たり100時間を超え、かつ、疲労の蓄積が認められる労働者に対しては、その要件に該当する労働者からの申出があったときは、面接指導を実施しなければならないとされているのとパラレルであって、何れも労働者からの申し出がない場合は義務とされていない(長時間労働者に対する「医師による面接指導の場合は"努力義務")というのが、ともすると"ザル法"となってしまう恐れもあるのではないかと、個人的には危惧するところです。

 何れにせよ、制度の施行を控えて管理職向けにこうした本が出ているくらいですから、人事労務担当者はそれ以前にその内容を把握し、まず自らを啓発すると共に、具体的な施策についての見通しをイメージしておくべきでしょう。

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トラブルは「個人対企業」の関係性で起きている。企業・人事の「正しい」役割とは何かを示す。

心の病が職場を潰す.jpg心の病が職場を潰す (新潮新書 588)岩波明氏.jpg 岩波 明 氏(医学博士・精神保健指定医)

 今や日本中の職場が、うつ病をはじめとする精神疾患によって、混乱させられ、疲弊させられている──。それはいつから、どのように広がったのか。この現状を私たちはどう捉えるべきなのか。基礎的な医学知識を紹介しながら、精神科医療の現場から見える、発病、休職、復職、解雇などの実態を豊富な症例を通して報告―。(版元サイトより)

 本書解説によれば、精神医学の専門家である著者が、勤労者の精神疾患がより身近な問題に浮上している現実を捉え、社会的に解決していくためにまずは正しい知識の理解が欠かせないとの考えのもとに本書を著したとことです。

 第1章「疲弊する職場」では、職場に置いて精神疾患(うつ病)の蔓延が進んでいる状況をデータで示すとともに、生保社員と銀行OLの症例を会社の対応と併せて紹介しており、何れも、こうした事例に対してどう判断しどう対処すればいいのか、会社としても扱いが難しいだろうなあと思われる事例であり、身につまされる思いをしました。

 第2章「その病をよく知るために」では、うつ病の多様性並びに躁うつ病・パニック障害・神経症・統合失調症などのその他の主な精神疾患について解説しています。神経症については更に「強迫神経症」「対人恐怖」「ヒステリー」「PTSD」に分けて解説しています。

 第3章「日本の職場の問題点」では、長時間労働と精神疾患の関係について解説していますが、個人的には、日本は労働者が長時間労働でありながら仕事の疲労度が低い国であるというデータが興味を引きました。つまり日本人は労働への耐性が高く、他国の勤労者より勤勉であるということで(欧米に比べると時間当たりの仕事密度が低いとの指摘もあるが)、著者は、長時間労働などの労働条件の厳しさは、日本の勤労者全体にとって必ずしもマイナスに作用はしていないものの、「耐性が低くパフォーマンスが十分でない人においては、うつ病や過労死のリスクファクターになっている」と言えそうだとしています。

 また、これは以前からの著者の立場ですが、「新型うつ」を"虚像"として捉え、こうした病気の"悪用"による社会的損失の大きさを訴えています。

 第4章「職場に戻れる場合、去る場合」では、精神疾患による休職者の復職の様々な形について述べる中で産業医について触れ、産業医がヒール(悪役)に成り得る―、つまり産業医が企業寄りであるため、主治医による患者本人の復職及びその際の主治医からの就業条件への配慮要請などを聞き入れず「復職不可」と判断するケースがあることなどを指摘しています。

 ここにあるように、リハビリ出勤や「リーワーク」の期間を休職扱いにし、その間に休職期間が経過してしまうというのも、休職者を退職に追い込むための、ある程度出来上がったシステムともとれるのかもしれません。大企業などで単独型の健保組合などは、健保で6割払ってさっさと縁を切りたいと思いがちなのか―と思わせるような事例が出てきます(同じ企業で貢献度によって手厚く保障されたケースも紹介されているが)。

 第4章では、職場におけるハラスメントなどによってうつ病を発症し、退職に追い込まれたケースなども紹介されていましたが、第5章「過労自殺という最悪のケース」では、更に重症となり自殺に至ったケースとして、あの有名な「電通事件」の経緯が詳細に記されています(事例の紹介は何れも丁寧で細かい。共に、労働基準監督署による業業務起因性"否認"が覆ったケース。電通事件の画期的な点は、それが即、民事賠償に繋がったことだろう)。
岩波 明 『心の病が職場を潰す』.jpg
 全体として、過労自殺や労災、休職・復職の判断・取り扱いなどの、企業側の対応、人事業務との接点に意識して触れ、トラブルが「個人対企業」の関係性で起きていることを示唆しているように思いました。

 ほぼこれまでの著者の本に書かれていたりすることではありましたが、企業側の本音により深く斬りこんだ面もありました。人事部門に期待される役割の重要性が増していることを実感する上で、また、その「正しい」役割とは何かを考える上で、人事パーソンは一読しておいてもいいのでは。

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現場で「現代型うつ」に向き合っている産業医による、人事労務担当者・管理職にお薦めの一冊。

「現代型うつ」はサボりなのか2.JPG「現代型うつ」はサボりなのか2.jpg
「現代型うつ」はサボりなのか (平凡社新書)

 近年、職場で増えている「現代型うつ」について、精神科医であり産業医でもある著者が、主に企業の管理職に向けて分かり易く解説した本です。

 中高年から見れば単なる甘えに見え、「未熟でダメな奴の単なる怠けだ」といって簡単に切り捨てられることが多い「現代型うつ」ですが、本書では「現代型うつ」について解説し、単に批判や排除をするだけでなく、この病理をどのように理解し、どのような社会的支援が必要なのかが具体的に述べられています。

 前半部分では、「現代型うつ」とは何かをさまざまな事例を交えながら解説していますが、「現代型うつ」は、著者の実感として、患者の家庭が比較的裕福な場合が多い、といった興味深い記述もあります。また、「現代型うつ」は職場への不適応が原因であり、何に対し不適応を起こしているのかと言えば、これまで中高年が普通だと思ってきた職場環境に、ということになるとのことです。

 社会的病理とも言われる「現代型うつ」について、若者の働くモチベーションの問題や管理職のプレイングマネージャー化、社会の高度情報化など、その背景となっている近年の職場環境、社会環境の変化に触れていますが、この部分は、読み易く、また、しっくりくるものでした。

 日本と同じように「現代型うつ」が話題にのぼる国に、韓国とイタリアがあり、この三国に共通しているのは、労働者保護の傾向が強い労働法制と(著者は法学博士でもある)、家という制度を非常に大切しているお国柄であるというのも興味深いです。縦社会で、家族のように従業員を大切にする会社のあり方が、実存の不安を抱える「現代型うつ」の背景にあるとしています。

 日本うつ病学会さえもその病理には否定的な見解を示している「現代型うつ」ですが、著者は、「現代型うつ」も「うつ病」であるとの立場をとっており、産業医としてのこの見方は、実際に対処しなければならない事案としてこの問題に真摯に向き合っている、人事労務担当者の見方に呼応するのではないかと思います。

 後半部分では、職場で「うつ」の若者とどう向き合い、職場の「うつ」をどう克服すればよいかが述べられていますが、著者は、上司の対応いかんで「現代型うつ」は回復に向かわせることができると訴えています。

 職場で「現代型うつ」の患者を支援することが最良の方法であり、そのアプローチの仕方として、
 ・本人への支援的アプローチ ... 本人のストレス処理能力の強化
 ・職場対応アプローチ ... 実存の不安を解消する褒め方・叱り方
 ・限界提示アプローチ ... 営利体としての企業における限界提示) 
の3つを示しています。

 その中で、著者が最近注目している「SOC」(Sense Of Coherence)という概念を紹介しています。SOCは日本語で「首尾一貫感覚」と訳され、
 ・つらいことにも意味を見いだせる「有意味感」
 ・困難な状況を秩序立てて受け止められる「把握可能感」
 ・つらいことに対してもやればできると思える「処理可能感」
の3つから成り、この三つを持てるかどうかが、こころの健康を保てるかどうかの分水嶺となり、「SOC=首尾一貫感覚」を高めることで、「現代型うつ」は乗り越えられるとしています。

 労働者を対象とした研究で、年代によってSOCの高さに違いがあることが分かっていて、20代では低いものの、年代とともにその平均値は高くなり、50代の人が最もSOCが高かったというのが興味深いです。
 従って、SOCは鍛え、高めていくことが可能であり、会社こそがSOCを高める場であって、例えば「把握可能感」を高めるには「一貫性のある経験をさせる」「本人の力プラス少しの負荷をかける」といったことが大事であるとしています。

 これらは、前述の「職場対応アプローチ」に関わってくることであり、「褒め方・叱り方」に関して言えば、褒める時は間髪入れずに褒め、叱る時は具体的な理由を挙げて叱ること、ふだんから小さなことでもいいから叱っておくことが大事であるとしています(入社してからすっと小さな事には目をつぶってやってきて、社歴がいってからの大きな失敗に対していきなりガツンと叱ると、相手はハンパではなくへこんでしまう)。また、「褒めて、叱って、褒める」という"サンドイッチ型"の叱り方なども紹介されています。

 このように、部下コミュニケーションの在り方の具体例を通して、部下のSOCの鍛え方を示すなど、現場で「現代型うつ」に向き合っている精神科産業医によって書かれた本らしい、人事労務担当者や管理職にお薦めの一冊です。

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入門書(実務書・啓発書)としては分かりやすくオーソドックス。

職場のメンタルヘルス入門2.jpg    現場対応型 メンタルヘルス不調者 復職支援マニュアル.jpg
職場のメンタルヘルス入門 (日経文庫)』 難波克行/向井蘭 『現場対応型 メンタルヘルス不調者 復職支援マニュアル

 職場のメンタルヘルス問題に関心のある従業員、管理職、人事担当者を対象に、職場のメンタルヘルス不調の問題や対処・予防法について分かり易く解説した入門書です。

 全5章構成の第1章「職場のメンタルヘルス不調」では、さまざまなメンタルヘルス不調について、その症状や治療、職場での対応が簡単に解説されていて、うつ病やうつ状態だけでなく、不眠症、自律神経失調症、パニック障害、適応障害、双極性障害、アルコール依存症、さらには「いわゆる新型うつ病」や「発達障害」など、メンタルヘルス不調全般を幅広く取り上げています。

 第2章「メンタルヘルス不調を防ぐストレス対策」では、自分でできるストレスの緩和策として、ネガティブな「つぶやき」に気づいて対処する認知再構成の技法、漸進的筋弛緩法や呼吸法などのリラクゼーション技法、人間関係のストレスを見つめ直す対人関係療法的な技法や、自分の気持ちや考えを素直に表現するアサーティブネスの技法などを紹介しています。

 第3章「職場で取り組むメンタルヘルス対策」以下、第4章「メンタルヘルス不調者の早期発見・早期対応」、第5章「ンタルヘルス不調者への対応と復職支援」は、管理職や人事担当者にとっての読みどころになるかと思われます。

 第3章では、職場と組織を「元気にする」ことでメンタルヘルス不調を予防しようという「ポジティブなメンタルヘルス対策」について解説されています。特に、職場のメンタルヘルスを左右するのは上司の行動であり、職場のストレスを減らすためのマネジメント・コンピテンシーが管理職にも求められるとして、そうしたマネジメント行動を促すための「コーチング」「行動科学マネジメント」「コンフリクト・マネジメント」について紹介されています。さらに、いきいきとした職場作りに従業員全員で取り組むための「職場環境改善活動」や「組織活性化」の取り組みや、こうした「職場の活性化」「個人の活性化」対策を、どのように企業の経営課題に組み込むべきか、関連部門がどのように連携すべきか、その実施のためのヒントが示されています。

 第4章では、メンタルヘルス不調者の早期発見・早期対応のためには管理職はどういったことに留意すべきか、部下の不調に気づいたときにはどのように対処すればよいか、場面ごとに事例を挙げて解説しています。また、社内の健康管理窓口とどう連携していくか、従業員のプライバシーをどのように守ればよいかについても述べています。

 第5章ではさらに、メンタルヘルス不調で休業している社員への対応や、復職支援の進め方を、休業開始から復職判定、復職プランの準備、復職後のフォローアップまで、場面ごとに解説しています。

 実務書と啓発書を兼ねた入門書と言え、メンタルヘルス研修を行う際のチェックポイントを確認するうえでも比較的オーソドックスな参考書になるかと思いますが、新書版にして相当の内容を盛り込んでいるため、(項目主義に陥らないよう配慮はされているものの)例えば、復職支援などの解説についてはややもの足りないかもしれません。

 復職支援について書かれた最近の書籍では、同著者による『現場対応型 メンタルヘルス不調者 復職支援マニュアル』(2013年/レクシスネクシス・ジャパン、弁護士・向井蘭氏との共著)があります。また、亀田高志 著 『人事担当者のためのメンタルヘルス復職支援』(2012年/労政時報選書)などもあり、実務対応についての知識を深耕したい人事パーソンは、これらに読み進まれることをお勧めします。

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しっかりした概念整理、社会的弊害、社会病理学的観点など、バランスの取れた内容。

「新型うつ病」のデタラメ.jpg                それってホントに「うつ」?.jpg   林 公一 『それは、うつ病ではありません!』.jpg
「新型うつ病」のデタラメ (新潮新書)』['12年]/吉野 聡『それってホントに「うつ」?──間違いだらけの企業の「職場うつ」対策 (講談社+α新書)』['09年]/林 公一『それは、うつ病ではありません! (宝島社新書)』['09年]

 挑発的なタイトルであり、実際に内容的にも、精神科医である著者の「新型うつ病」の診断のいい加減さに対する憤りが感じられますが、ベースは非常に秩序立った解説と、著者の経験的症例に基づくかっちりしたものでした。

 冒頭に「新型うつ病」の症例と「従来型うつ病」の症例を掲げ、さらに「軽症」の「従来型うつ病」の症例を挙げて、「新型うつ病」と「軽症」のものも含めた「従来型うつ病」の違いをくっきり浮かび上がらせています。

 更に、「うつ」と「うつ病」の違いを、うつ病概念の歴史を辿りながら解説しており、うつ病概念がDSMなどの操作的診断基準と、所謂「新型うつ病」に属する新たな病型の提唱により拡大したとする一方、DSMにおいて、失恋やリストラなどによって起こる気分の落ち込みや不眠、空虚感が「症状」とされ、安易にうつ病と診断されること(うつ病概念の拡大)への異論も紹介しています。

 こうして多くの学説・主張等を紹介したうえで、「新型うつ病」とは、ずばり、「逃避的な傾向によって特徴づけられる抑うつ体験反応」であるとし、「逃避型抑うつ」(広瀬徹也)、「現代型うつ病」(松浪克文)、「ディスチミア親和型うつ病」(樽味伸)の殆どがこれに当たるとしています。

 その上で、抑うつ状態の全貌を表に纏めていますが、それを見ると、まず全体を病的なもの(「抑うつ症診断群」)と病気とは言えないもの(「単なる気分の落ち込み」)に分け、前者の抑うつ症診断群の中に、「総うつ病」「うつ病」「抑うつ体験反応」などがあり、「抑うつ体験反応」の中に、従来から「抑うつ神経症」「反応性うつ病」と呼ばれていたものと、「逃避型抑うつ」「現代型うつ病」「ディスチミア親和型うつ病」などと呼ばれる最近増加した逃避を特徴とする「新型うつ病」がある―という構図を示しています。

 「新型うつ病」が生まれた要因は、「精神病理学の衰退」と「精神力の低下」がその出現環境を外側と内側から準備し、「SSRI(抗うつ薬)の出現」がその引き金となったという著者の見方には説得力があり、とりわけ、DSMの普及と反比例するように精神病理学という学問自体が衰退し、これを専門に勉強する若い精神科医があまり出なくなった、というのには考えされられました(外見判断基準であるDSMの普及により、精神科医が「直観」を磨く訓練をしなくなった)。

 全3章構成のここまでが第1章で、第2章では、「新型うつ病」がもたらした社会的弊害について臨床経験を踏まえつつ考察していますが、休職するためだけに診断書を求める人達とそれに応える医師がいることや、そのことによって給料の6割に該当する傷病手当金が比較的簡単にもらえるため、病気を隠れ蓑にしたある種の利権のようになってしまっていること、障害年金についても「うつ病で障害年金 完全マニュアル」のようなものが出回っていて同じような状況になっていること、更には、労働紛争の場においても、専門医のバラバラな診断結果と裁判官の恣意的な解釈によって、専門家から見れば非常に疑問の余地があるケースにおいて原告に多額の「賠償金」が支払われていたりすることなどを、事例を挙げて紹介しています。

 最終第3章「精神科診療から見た現代社会」においては、「何でも人のせい」「何でも病気」「『知らない私』のせい(プチ解離)」といった最近の社会風潮に呼応するようなケースが紹介されています。

 症例がそれほど多く紹介されているわけではありませんが、1つ1つの事例紹介が解説としっくり符合していて、無駄が無いという印象です。

 DSMの基準に批判的で「現代型うつ病」乃至「ディスチミア親和型うつ病」を「うつ病」とは見做さない派―の精神科医が書いた本という意味では、その部分だけ見れば、ほぼDSMに沿って書かれている吉野聡 著 『それってホントに「うつ」?』('09年/講談社+α新書)よりも、林公一 著『それは、うつ病ではありません!』('09年/宝島社新書)に近いと思われますが、こちらの方が、概念整理がしっかりしており、事例も適切であったように思います。

 前二著を比較すると、個人的には『それってホントに「うつ」?』の方を圧倒的に支持するのですが、それは、企業側からすれば「現代型うつ病」も「従来型うつ病」と同じような"対応課題" になっているという観点から書かれているためであり、その背景には、本書にあるように、「逃避的な傾向によって特徴づけられる抑うつ体験反応」(乃至は、そのレベルにまでも至らない「単なる気分の落ち込み」)に対して「うつ病」という診断を下す(或いは、乞われて診断書に書く)精神科医がいるということがあるのでしょう。

 この本はこの本で、うつ病の基本概念と近年の傾向をよく整理し、「新型うつ病」の社会的弊害を現場感覚で捉えつつ、社会病理学的な観点も視野に入れた、バランスの取れた良書だと思います。

 Amazon.comのレビューの中に、うつ病に関する記述はこの種の一般書としては出色の出来であり、症例も臨床観に優れているが、タイトルが問題であり、内容と合っていないばかりか、「新型うつ」はでっち上げとの誤解を招き、ある種の人たちが主張する「新型うつは甘えなので、診断治療の必要はないし、疫病利得を得るなどもってのほか」という説とこの本の趣旨は大きく隔たっているにも関わらず同じと見られる恐れがある―といったものがありましたが(そのことを理由に星2つの評価になっている)、それは言えているなあと(吉野聡氏の『それってホントに「うつ」?』についても同じことが言え、こういうの編集部でタイトルを決めているのかな。共に良書であるだけに惜しい)。

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「新型うつ」の見分け方から企業としての対応の在り方や予防法までを分かりやすく解説。

「新型うつ」な人々.jpg「新型うつ」な人々 (日経プレミアシリーズ)

 真面目な人が「うつ」になり易く、「うつ」になった場合は自分を責める傾向にある―という「従来型のうつ」に対し、軽く注意したら不調を訴え会社に来なくなった、本人からは上司に叱責されたために「うつ病」になったとの訴えがあり、配置換えを申し出てくる―そうした、いわゆる「新型うつ」ではないかと思われるケースが、最近若い社員を中心に増えていると言われますが、本書はその「新型うつ」と呼ばれるものについて、経験豊富な産業カウンセラーが分かりやすく解説した新書本です。

 前半部分では、「新型うつ」の特徴や「従来型うつ病」との違い、「新型うつ」になりやすいのはどんなタイプの人かなどが事例をあげて解説されており、後半は、「新型うつ」と思われる社員への対応から、社員を「新型うつ」にしないための対策やストレス・マネジメント法まで、対処法が提案されています。

 このように、「新型うつ」の見分け方から企業としての対応の在り方や予防法まで、全体によく網羅されていて、内容のバランスもとれていると思いますが、新書であるため、その分一つ一つの事柄がそれほど深く書かれているわけではありません。それでも個人的には、「新型うつ」は若者だけの問題ではなく、四十代、五十代でもなることがある、といった新たな知識を得ることができました。

 また、企業内で、メンタル不調者一人ひとりに対しどのようなアプローチが必要なのかを総合的にアセスメントできる人材、「メンタルヘルスのスペシャリスト」を育てることを提案している点は、まったく同感だと思いました。

うつ病をなおす.jpg この分野の知識を深めようとするならば、精神科医など専門家の書いた本も読むといいと思われ、最初に読む入門書としては、野村総一郎『うつ病をなおす』(2004/11 講談社現代新書)などがお薦めです。逆に、医師であっても専門医ではない人が書いた本には、特殊な見解や特定の療法に偏っていたりするものもあり、危うさを感じることがあります。一方で、専門医は専門医で、"病態区分"などに関して、それぞれの立場ごとに書かれていることが異なったりすることもあります。

 例えば、林公一『それは、うつ病ではありません!』(2009/02 宝島社新書)では、"「ディスチミア親和型うつ病」(「うつ病」と診断されるには至らない軽症のうつ状態が慢性的に長期間持続するもの―岩波 明『ビジネスマンの精神科』(2009/10 講談社現代新書))などをうつ病と呼ぶ派"などという言い方で、「新型うつ」と呼ばれるものは「擬態うつ」であってうつ病ではないとそれってホントに「うつ」?.jpgしています(岩波氏自身の考え方は後述)。一方で、吉野聡『それってホントに「うつ」?―間違いだらけの企業の「職場うつ」対策』(2009/03 講談社+α新書)では、「ディスチミア親和型うつ病」などを「現代型うつ病」とし、さらに、「職場うつ」と呼ぶべきものの中には、パーソナリティ障害や内因性精神障害(統合失調症や躁うつ病など)も含まれる場合があるとしています。

 本書『「新型うつ」な人々』の場合、精神科医による典拠を示し、さらに「私の解釈」と断ったうえで、「うつ病」の領域には「ディスチミア親和型」も含まれ、「新型うつ」を理解するためには、「適応障害」や「パーソナリティ障害」の理解も必要であるとしており、これは吉野氏の立場に比較的近く、また「新型うつ」に関するオーソドックスな解釈であると言えるのではないでしょうか。

うつ病.jpg 「ディスチミア親和型うつ病」は、かつては「軽症うつ」などという言われ方もし、従来型のうつ病に比べて軽度のものであると思われがちですが、岩波明『うつ病―まだ語られていない真実』(2007/11 ちくま新書)では、非常に重篤で大きな事故に繋がった「ディスチミア親和型うつ病」の症例が報告されています(但し、岩波氏の場合、岩波明『ビジネスマンの精神科』(2009/10 講談社現代新書)の中で、「新型うつ病」を「ジャンクうつ」と"断罪"し、「ディスチミア親和型うつ病」とは峻別している。これはつまり、林公一氏が言うところの"「ディスチミア親和型うつ病」などをうつ病と呼ぶ派"であることになるが、ディスチミア親和型うつ病はうつ病の一種であるというのが大方の見方で、林氏の見解の方がマイノリティであると思われる)。

気まぐれ「うつ」病.jpg また、貝谷久宣『気まぐれ「うつ」病―誤解される非定型うつ病』(2007/07 ちくま新書)では、かつて「神経症性うつ病」と呼ばれた「非定型うつ病」について解説されています。岡田尊司『パーソナリティ障害―いかに接し、どう克服するか』(2004/06 PHP新書)は、パーソナリティ障害の入門書としてお薦めです。

 メンタルヘルス対策の専従部門を設けることができるのは、限られた数の大企業だけでしょう。普通の会社だと、結局、人事労務部門にいる人たち自らが「メンタルヘルスのスペシャリスト」となるべく自助努力をしなければならないような気もしますが、新書レベルでも、一人の専門家に偏らず何冊かを読むようにすれば、一定の知識は得られるように思います。

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管理者(管理職)によるケア(ラインケア)について、分かり易く実践的に書かれている。

職場のメンタルヘルス実践ガイド.jpg 『職場のメンタルヘルス実践ガイド―不調のサインの見極め方診断書の読み方から職場復帰のステップまで』(2011/01 ダイヤモンド社)

 厚生労働省の「「労働者の心の健康の保持推進のための指針(メンタルヘルスケア指針)」(平成18年3月策定)」では、事業者は、メンタルヘルスケアに関する事業場の問題点を解決する具体的な実施事項等についての基本的な計画(「こころの健康づくり計画」)を策定する必要があるとし、この計画の実施に際しては、
 「セルフケア(自分自身で行う対策)」
 「ラインによるケア(上司や管理者が行う対策)」
 「事業場内産業保健スタッフによるケア(社内の保健関係スタッフによる対策)」
 「事業場外資源によるケア(社外の専門家に等に依頼して行う対策)」
の4つのメンタルヘルスケアが継続的且つ効果的に行われることが必要だとしています。
 
 この内、職場でのメンタルヘルス推進の基本は、ラインによるケア(上司や管理者が行う対策)にあると言われていますが、本書は、そうした管理職のためにラインケアの実践の在り方を説いたものです。

 第1章の「職場の心の健康を守る技術―ラインケア」では、ラインケアの実行項目のポイントやヒントについて書かれています。第2章では、メンタルヘルス診断書が職場に提出された後の対応について、第3章では、職場復帰を成功に導く方法について述べられています。第1章はいわば「予防」にあたり、第2章・第3章は、メンタル不全者が出てしまった場合の「事後の対応」にあたると言えるでしょう。

 メンタルヘルス関連の書籍は数多く刊行されていますが、本書の特徴は、第1章の「ラインケア」の部分に全体の3分の2ものページを割いていることで、職場で増加するメンタルヘルスの問題を未然に防ぐために、あるいは重篤化しないようにするために、現場のリーダーとして「すべきこと」「してはいけないこと」が丁寧且つ実践的に書かれています。

 具体的には、管理職がなすべきラインケアを「見る」「「話す」「聴く」「対処する」の4つに分け、全部で12のチェックポイントを示していますが、例えば「見る」については「サインを見る」「能力を見る」「人間関係を見る」という3つのポイントが掲げられていて、従来のラインケアの解説書よりも視野が広いように思われました。

 個人的には、結局これらは、管理職として自分が部下に対してやるべきことをやっているかということのチェック項目であると言い換えることが出来るようにも思われ、メンタルヘルスケアというのは、現場のリーダーにとってはマネジメントの延長線上にあり、マネジメントの一環であるとの思いを改めて抱きました。

 現場の管理職向けに分かりやすい言葉で書かれていて、カウンセリング手法をベースとした部下コミュニケーションの具体例などがポイントごとに織り込まれているため、現状で部下がメンタルヘルス不全になりかけているといった問題を抱えているリーダーには、参考になるのではないでしょうか、

 また、特に現状では自分の職場に関してはメンタル不全の問題は無く、と言って、本書に書かれていることを一時(いちどき)に実行するのは難しい(確かに...)、或いはそうした機会がすぐには訪れるとは思えないという管理職やリーダーもいるかもしれませんが、過去の自らの経験等を顧みつつ本書を読むことで、メンタルヘルス推進に対する認識のレベルを日頃から高めておくという自己啓発的な読み方でいいのではないでしょうか。よくポイントが整理されているため、再読もしやすいかと思います。

 第1章の終りで、職場でメンタルヘルスを推進するリーダー像とはいかなるものかについて、組織とリーダーシップという視点で「PM理論」をベースに解説されているのが興味深かったです。
 「PM理論」については既知の人事担当者も多いかと思いますが、メンタルヘルスにおけるラインケアという文脈の中で読み返してみるのもいいのではないかと思います。

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メンタルヘルス対策を経営戦略の一環として捉えた本、だったが...。

メンタルタフネス経営.bmpメンタルタフネス経営―打たれ強く成長する』(2009/09 日本経済新聞出版社)

 タイトルは「メンタルタフネス経営」となっていますが、中身は職場の「メンタルヘルス」施策を経営の観点から書いた本と見てよいでしょう。

 著者は、外資系IT企業の事業部長などを経て、企業を対象としたメンタルヘルスに関するコンサルティングを行う会社を'03年に立ち上げた人であり、転職の契機は、著者自身が会社員時代にハードワークのためうつ病に罹患し、そこから回復した経験にあり、本書で取り上げられているうつ病の事例の中には、自身の経験も含まれています。

 前書きに「職場のメンタルヘルスというのは単なる産業保健や福利厚生、医療の問題だけでなく、技術革新への投資、人材育成やコストコントロールなどと同様に、企業が戦略的に取り組むべき最も重要な経営課題のひとつ」とあるように、医師や心理療法士の書いた本と異なり、マネジメントの観点から書かれているのが、本書の特徴です。

 本書の「メンタルタフネス」という言葉には、個人のストレス耐性のことも含まれてはいますが、むしろ「メンタル問題に強い会社」という意味で、経営体質に係っている言葉であると言え、「メンタルヘルス」という言葉の企業側の受けがイマイチなのに対し、「メンタルタフネス」と言うと相手が身を乗り出してくるという状況がやはりあるのかなあと。
 但し、「従業員の健康を守ることが経営トップの使命であると」との主張には、全くその通りであると思いました。

 また、メンタルヘルスの改善と併せて、ワークライフバランスの実現を図ることで、従業員のモチベーションを高め、会社の生産性を向上させることを説いており、そうしたストレスマネジメントと組織活性化を包括したトータルな施策を、「メンタルリエンジニアリング」として提唱しています。

 著者の言う「メンタルリエンジニアリング」とは、「メガストレス時代を乗り切るために開発された認知療法の考えを活かした人材と組織の経営戦略」とのことで、「ABC理論による認知療法」というのが前面にきていますが、その認知療法と著者の提唱する社内研修などの施策の関係性が、本書においてはやや曖昧な気がしました。

 精神科医の中には、本書に多く取り上げれている「うつ病」の治療において、認知療法が効果的であるのはごく限られた患者であるとの見解もあります(岩波明著『ビジネスマンの精神科』('09年10月/講談社現代新書)。

 個々には賛同する部分、ナルホドと思わされる部分もありましたが、研修やトレーニングについては、もう少し詳しく具体的に書いて欲しかった気もします(企業秘密なの?)。

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メンタルヘルス関連の知識習得の初期段階で読む分には、手に取り易い本。

人事担当者、管理職のためのメンタルヘルス入門.bmp 『人事担当者、管理職のためのメンタルヘルス入門―図でわかる、適切な対応ができる』(2009/03 東洋経済新報社)

 本書前書きにもありますが、バブル崩壊後、日本企業を取り巻く環境は厳しいものとなり、多くのビジネスマンが強いストレスを感じながら仕事を続け、その結果、メンタルヘルス不調に陥り、休職や退職に至るケースが増えているとのこと(本書データによれば、日本人のうつ病は過去20年で6倍に)、それに加えて、サブプライム問題に端を発した経済不況で、今後もメンタルヘルス不調者は増加することが懸念されています。

 本書の著者はベテランの産業医で、産業医を目指す人の育成にもあたったことがあり、現在は、企業のメンタルヘルス対策のコンサルタント会社を経営している人ですが、企業がメンタルヘルス不調の従業員を抱えることは、労働生産性の低下ばかりでなく、それが労災請求や民事訴訟、行政訴訟に発展すれば、多額の賠償金を支払わなければならなくなる危険性もあると指摘しています。

 そうした事態を招かないようにするために、「人事担当者や管理職が果たすべき役割」というを視点を軸として、メンタルヘルス対策の必要性、うつ病・新型うつ病・そう病・統合失調症・適応生涯・不安障害・人格障害などのメンタルヘルス不調の典型症状の概要、それらがどのように現われるのか、また、対策を進める仕組みづくりや不調者の「復帰支援」をどのように進めていくのか、予防・早期発見をどうするか、などを本書において解説しています。

 ほぼ、見開きの片側が図解になっているため、たいへん解り易いのが特長で、メンタルヘルス不調についての知識、メンタルヘルス対策の基本事項を押えるには良い本だと思います。

 メンタル不調で休業・休職していた従業員の「職場復帰支援」などは、厚生労働省の「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」に準拠して解説されていて、「リハビリ出勤」についてや、業績評価での「不調」を考慮すべきかどうかという問題にも触れられていて、全体に偏りが無く、バランス良い解説書となっているように思います。

 但し、紙数の制約のためか、事例的なものに割くスペースが殆ど無く(守秘義務を遵守している?)、ワンテーマごとの解説がスッキリしている分、やや物足りなさも。
 人事担当者が、知識習得の初期段階で読む分には、手に取り易い本であるとは思いました。

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入門書として読み易く、実務対応に絞って書かれている良書。

人事・管理職のためのメンタルヘルス・マネジメント入門.bmp          真野俊樹 世界一受けたい授業.bmp 真野 俊樹 氏(NTV系「世界一受けたい授業」)
人事・管理職のためのメンタルヘルス・マネジメント入門』(2009/03 ダイヤモンド社)

 本書の著者は、病院、企業、大学など9つの組織に勤務した経験を持つ産業医で、最近はテレビ番組(NTV系「世界一受けたい授業」など)のコメンテーターとしても活躍している現役の内科医ですが、本書は、そうしたマネジメント、企業社員、産業医としての経験と知識をもとに書かれた、人事部・管理者向けの「メンタルヘルスの対応書」です。

 「世界一受けたい授業」は個人的には殆ど見ない番組なのですが、たまに見た際に、同じ精神科医でもちょっと偏った考えの人も出演したりしていたのでどうかなと思ったけれども、本書に関してはマトモでした。

 前半は"基礎知識編""応用知識編"で、「うつ」という病気を事例により解説するとともに(併せて、適応障害や人格障害についても解説されている)、なぜ「できる人」がうつになるのかを解き明かし、社員がうつ病ににならないようにするために、人事あるいは管理職が知っておくべきことは何か、また、社内・社外の資源をどう使うかなどが示されてされています。

 後半は"個別対応編""予防策編"で、メンタルヘルス問題社員に何をすべきか、その具体例と対処法を示すとともに、うつが出にくい会社を作るにはどうすればよいのか、社員のメンタルを強くするモチベーション・マネジメントや、予防対応としてのメンタルマネジメントなどについてが書かれています。

 本書の第一の特長は、読み易さにあるのでは。課題ごとに項目を1ページぐらいずつに区切って、それぞれに大きな活字でポイントを要約した見出しがつけられていて、本文も平易な言葉で書かれているため、前提知識があまりない一般の読者でも、読むのにそれほど苦労はしないと思います。

 専門書によくある「現場から見ると無理な注文」がなく、現時点で「対応する側ができること」に絞ってあり(従って、本書での対応策は「適応障害」を主に対象としており、重篤なうつ病の場合は早期に専門家に委ねるよう指導されている)、また、必要に応じて項目ごとに、これは人事部の役割なのか管理職の役割なのかを記してあるのも親切です。

 入門書でありながらもやや驚かされたのは、産業医とのコミュニケーションが"死活を握る"と説く一方で、病院勤務に疲れたので「産業医でもするか」とか、「産業医しか」できない医師、いわゆる「でもしか」産業医がいるかもしれないという指摘で、そうした現状への対応として、産業医の選び方のポイントも書かれています。

 また、うつ病対策に効果的なのが「カウンセリング機能の充実」であるとしていますが、大企業ならともかく中小企業ではなかなかそこまでは難しいのではないかと思っていたのが、実は健保組合などが専門の医療機関と契約しているケースが多く、対面のみでなく電話でも、また、土日や夜も対応してくれるとのことで、こうしたことは、人事や総務の仕事をしている人にも知られていないケースが多いのではないかと思われます。

 うつが出にくい職場を作るにはどうすればよいのかということを、「プロフェッショナルタイプによい職場」と「安定を求めるタイプによい職場」に分けて解説しているのが興味深く、「目標達成した人は、報酬よりも言葉の評価を待っている」というモチベーション論にも頷かされました。

 本書は対策本としての実務書の要素が強いため、巻末に、知識を補うための参考書籍のリストを掲げているのも親切で、そのカバーしてるジャンルは広く、人事担当者ならばこのうちの何冊かは既に読んだことがあるとは思われますが、是非、この中から何冊かを選んで読み進んでみることをお勧めします。

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一般社会人が身につけておきたい精神医学の知識。"新型うつ病"を"ジャンクうつ"と断罪。

岩波 明 『ビジネスマンの精神科』.JPGビジネスマンの精神科.gif        うつ病.jpg 
ビジネスマンの精神科 (講談社現代新書)』 ['09年] 『うつ病―まだ語られていない真実 (ちくま新書 690)』 ['07年]

 タイトルからすると職場のメンタルヘルスケアに関する本のようにも思われ、「中規模以上の企業」に勤めるビジネスマンを読者層として想定したとあり、実際、全11章の内、「企業と精神医学」と題された最終章は職場のメンタルヘルスケアの問題を扱っていますが、それまでの各章においては、うつ病、躁うつ病、うつ状態、パニック障害、その他の神経症、統合失調症、パーソナリティ障害、発達障害などを解説していて、実質的には精神医学に関する入門書であり、タイトルの意味は、一般社会人として出来れば身に着けておきたい、精神医学に関する概括的な知識、ということではないかと受け止めました(勿論、こうした知識は、職場のメンタルヘルスケアに取り組む際の前提知識として重要であるには違いないが)。

 基本的にはオーソドックスな内容ですが、うつ病の治療において「薬物療法をおとしめ、認知療法など非薬物療法をさかんに推奨する人」を批判し、例えば「認知療法を施行することが望ましい患者は、実は非常に限定される」、「そもそも、認知療法を含む非薬物療法は急性期のうつ病の症状に有効性はほとんどない。かえって症状を悪化させることもある」といった記述もあります(前著『うつ病―まだ語られていない真実』('07年/ちくま新書)では、高田明和氏とかを名指しで批判していたが、今回は名指しは無し。名指ししてくれた方がわかりやすい?)。

 その他に特徴的な点を挙げるとすれば、「適応障害」は一般的な意味からは「病気」とは言えないとしているのは、DSMなどの診断基準で"便宜的"区分として扱われて売ることからも確かに"一般的"であるとしても、「適応障害よりもさらに"軽いうつ状態"を"うつ病"であると主張する人たちがいる。その多くは、マスコミ向けの実態のない議論である」とし、「"新型うつ病"という用語がジャーナリズムでもてはやされた時期があった」と過去形扱いし、「分析すること自体あまり意味があるように思えないが、簡単に述べるならば、"新型うつ病"は、未熟なパーソナリティの人に出現した軽症で短期間の"うつ状態"である。(中略)精神科の治療は必要ないし、投薬も不要である」、「こうした"ジャンクなうつ状態"の人は、自ら病気であると主張し、これを悪用することがある。彼らはうつ病を理由に、会社を休職し、傷病手当金を手にしたりする」(以上、98p-99p)と断罪気味に言っていることでしょうか。

 『うつ病―まだ語られていない真実』には、「気分変調症(ディスサイミア)」の症例として、被害妄想から自宅に放火し、自らの家族4人を死に至らしめた女性患者が報告されていて(これ読むと、かなり重い病気という印象)、うつ病や気分変調症と、適応障害やそれ以外の"軽いうつ状態"を厳格に峻別している傾向が見られ、個人的には著者の書いたものに概ね"信を置く"立場ですが、自分は重症うつ病の"現場"を見てきているという自負が、こうした厳しい姿勢に現われるのかなあとも。

 但し、個人における症状を固定的に捉えているわけではなく、適応障害から「気分変調症」に進展したと診断するのが適切な症例も挙げていて、この辺りの判断は、専門医でも難しいのではないかと思わされました。

 その他にも、「精神分析」を「マルクス主義」に擬えてコキ下ろしていて(何だか心理療法家そのものに不信感があるみたい)、フロイトの理論で医学的に証明されたものは1つもないとし、フーコーやラカンら"フロイトの精神的な弟子"にあたる哲学者にもそれは当て嵌まると(125p)。
 
田宮二郎.jpg 入門書でありながら、所々で著者の"持ち味"が出るのが面白かったですが、
一番興味深かったのは、「躁うつ病」の例で、自殺した田宮二郎(1935-1978/享年43)のことが詳しく書かれていた箇所(72p-77p)で、彼は30代前半の頃から躁うつ病を発症したらしく、テレビ版の「白い巨塔」撮影当初は躁状態で、自らロケ地を探したりもしていたそうですが、終盤に入ってうつ状態になり、リハーサル中に泣き出すこともあったりしたのを、周囲が励ましながら撮影を進めたそうで、彼が自殺したのは、テレビドラマの全収録が終わった日だったとのこと。
 躁状態の時に実現が困難な事業に多額の投資をし、借金に追われて、「俺はマフィアに命を狙われている」とかいう、あり得ない妄想を抱くようになっていたらしい。
 へえーっ、そうだったのかと。

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現代型うつ病(ディスチミア親和型うつ病など)への企業内での現実的対応法を示した良書。

それってホントに「うつ」?.jpgそれってホントに「うつ」?──間違いだらけの企業の「職場うつ」対策 (講談社+α新書)』['09年]

 精神科医であると同時に産業医でもある著者によるもので、若者を中心に増えつつあり、企業の人事担当者を惑わせる「職場うつ」に対する対応の在り方について書かれたものですが、それ以前に、「うつ」とは何かが簡潔に解説されているため、「うつ」の入門書としても読めます。

それは、うつ病ではありません.jpg 同じ頃に刊行された林公一(きみかず)氏の『それは、うつ病ではありません!』('09年/宝島社新書)が、事例から入って、これは「うつ病」でありこれは「擬態うつ」だとして後付で解説しているのに比べると、最初に体系を示しているためより解り易かったです。
 そして何よりも、『それは、うつ病ではありません!』が「気分変調性障害」などを「擬態うつ」として排斥しているのに対し、本書は、「現代型うつ病」としているのが大きな違いで、DSM-Ⅳに対しては批判も多いものの、とりあえずは現行の診断基準になっているのだから、それに沿って解説するのが筋でしょう。そうした意味では本書の方がオーソドックス。

 その上で、巷に氾濫している「職場うつ」という概念を、①従来型うつ病(大うつ病障害)、②現代型うつ病(気分変調性障害)、③パーソナリティ障害、④内因性精神障害(統合失調症や躁うつ病など)に区分し、それぞれの特徴を述べるとともに、治療方法や周囲の接し方、職場復帰プログラムの在り方などをタイプ別に解説しています(③、④など「うつ病」の診断基準を満たさないものを「排除」するのではなく、それらも含めて、産業医の立場から人事担当者と共に現実対応を考えていこうという姿勢がいい)。

 とりわけ、著者が「現代型うつ病」と呼ぶところの気分変調性障害(ディスチミア親和型うつ病)に対する見分け方や対応方法が類書に比べて解り易く書かれていて、例えば、「現代型うつ病」であっても敢えて「従来型うつ病」と同じ職場復帰プログラムを用いればよいことをその理由と共に書いている部分には、ナルホドと共感しました。

 「職場うつ」への企業内での対応について、産業医としての現場での経験を踏まえた上で(もちろん著者は、主治医としても患者を診ている)、精神科医としての専門家の立場から、現実的な対応法、実践的な示唆やアドバイスが分かり易く書かれた良書だと思います。

 惜しむらくはタイトルで、林公一氏の『それは、うつ病ではありません!』と同じようなニュアンスになってしまっているため、これもまた「擬態うつ」を告発するような内容かと錯覚する読者もいるのではないでしょうか。
 更に、「職場うつ」という言葉が混乱を招いているとしながら、「企業の『職場うつ』対策」というサブタイトルを用いているのもどうかと(「職場うつ」には"非うつ"も含まれると断り、また、そのことを"悲劇"としてはいるが)。
 
 著者の最近のセミナーの1つに、「傲慢なのに打たれ弱い『現代型うつ病』への職場対応」という演題ものがありましたが、本書では、「現代型うつ病」に当たる気分変調性障害(ディスチミア親和型うつ病)だけでなく、非うつ病である「パーソナリティ障害」や「内因性精神障害」についても触れているので、このサブタイトルは止むを得ない(「職場うつ」という言葉を条件付きで使わざるを得ない)のかも知れませんが、メインタイトルの方はちょっと...。

 林公一氏の著書とのタイトルの類似を個人的に意識し過ぎたかも知れませんが、中身的には、こちらの方が圧倒的に良書です。

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1人の精神科医の1つの考え。入門書と言うより「意見書」として読んだ方がいい。

林 公一 『それは、うつ病ではありません!』.jpg 『それは、うつ病ではありません! (宝島社新書)』 ['09年] 擬態うつ病.jpg擬態うつ病 (宝島社新書)』 ['01年]

「Dr 林のこころと脳の相談室」(http://kokoro.squares.net)というサイトを運営し、人事担当者の間でも評判の高い精神科医である著者の『擬態うつ病』('01年/宝島社新書)に続く第2弾で、それぞれのタイトルからも解るように、うつ病と外見は似ているが本質は異なる「擬態うつ病」(=うつ病もどき)というものをテーマにしています。

 実際、著者が言うところの「擬態うつ病」というのは社会に、また企業の内に蔓延していて、人事担当者を大いに惑わせるものであり、『擬態うつ病』はタイムリーな刊行であったと思いますが、但し、当時それを読んでやや個人的には引っ掛かるものがあり、精神医学やうつ病の本を何冊か読んだ後に今回の続編を読んで、ああ、これも1人の精神科医の1つの見方に過ぎないなあという思いを強くしました。

 20のケースを挙げ、「これはうつ病でしょうか?」というQ&A形式で解説を進めていますが、最初の方は結構わかりやすい事例のように思え、但し、では「うつ病」でなければ何なのかということで、例えば境界性人格障害や統合失調症であるといった具合に言い切っていますが、果たしてこれだけでそうと言えるのか。著者が描いている事例のイメージの中ではそうかも知れませんが、一般の読者がこれだけを読んで、こうしたケースは境界性人格障害や統合失調症であると(それら自体の解説はあまりされていないのに)決め込んでしまう恐れがあるように思いました。

 また、「うつ病」の定義に著者独自の考えがかなり入っているように思え、実際、著者自身、後半の方では、医学界が「カオスの時代」にあり、「現代の診断基準では、うつ病ということになります」、「こうしたケースはうつ病と呼ぶべきではない、と私は思います」といった物言いになっていたりします。

 決定的なのは、"「ディスチミア親和型うつ病」などをうつ病と呼ぶ派"などという言い方で、社会に「擬態うつ病」が蔓延しているのは困ったものだという一般感情にかこつけて、現代のメジャーな診断基準および「うつ病(うつ病性障害)」の概念範囲を否定していることで、うつ病の入門書として本書を読んでしまった読者がいたら、その前後に読む真っ当な本に書かれている内容との齟齬のために相当混乱させられるのではないでしょうか。

 入門書と言うより、1つの「意見書」として読んだ方がいいと思います。

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企業のメンタルヘルス対策の底の浅さ、考課システムから抜け落ちるアナログ面を指摘。

職場はなぜ壊れるのか.jpg 『職場はなぜ壊れるのか―産業医が見た人間関係の病理 (ちくま新書)』 こんな上司が部下を追いつめる.jpg 『こんな上司が部下を追いつめる―産業医のファイルから (文春文庫)

 前著『こんな上司が部下を追いつめる-産業医のファイルから』('06年/文芸春秋、'08年/文春文庫)は、職場で業務に追われて過労死し、或いはそこまでいかなくとも、精神的余裕を失っている労働者の背後には、部下の仕事をマネジメントする意識が薄く、何らサポートせず何もかも部下に押しつけて部下を追い込み、人材潰しをしている上司がいることを、産業医の視点からリアルに指摘していましたが、働く側の共感を得るところが大きかったのか、よく売れたようです(それなりの数の上司たる人も読んだとは思うが)。

 但し、「こうした問題を組織体としてどうするかを考えるのがカイシャではないか」という意見も前著には寄せられたようで、個人的にも、サラッと読めて終わってしまった物足りなさのようなものがありましたが、本書はそれに応える形で、上司個人の問題からより踏み込んだ「職場の人間関係」に視野を拡げ、その背景にある人事システム、端的に言えば「成果主義」に対する、問題点の指摘と批判を行っています。

 前半部分は、事例を挙げて前著をリフレイン(現象面の表記)している感じでしたが、中盤から、成果主義がもたらした職場における人間関係の変容や、目標管理・人事考課制度の問題点などを指摘していて、ぐっと考察が深まる感じ。
 但し、成果主義に警鐘を鳴らしながらも、それに代わるシステムを提唱することは、(ここまで企業の人事制度等の内実に通暁していれば、出来ないこともないのだろうが)「専門外」であるとして敢えて行っておらず、そのことに対する批判もあるかも知れませんが、個人的にはむしろ、自らの専門領域に留まることで、メンタルヘルス対策に対する国や企業、医療関係者のあり方への痛烈な批判の書となっているように思えました。

 例えば、過労自殺を巡る裁判のあった会社の「結果を厳粛に受け止め、社員の健康管理について改善を進めたい」というコメントに対し、「労働衛生の3管理」と言われる「作業環境管理、作業管理、健康管理」は、この順番で優先されるべきであり、「健康管理」よりも先に「作業環境管理」や「作業管理」を行わなければならない(社員を守るのは「健康管理」ではない)と著者は述べていますが、この点をわかっている経営者はどれぐらいいるでしょうか。

 ひと月当たり100時間を超える時間外労働をした人が疲労を訴えた場合は、医師による面談を行うことが、安衛法の改正により義務づけられましたが、労働者が「ノルマが達成できない」と言えば「達成できるノルマに代えてもらったら?」と言い、「仕事が終わらない」と言えば「社員を増やしてもらったら」と医師が言うだけでは、労働者にとっては何ら解決にならず、却って落ち込むというのは、確かにその通りで、労基署の監督官などにも、これに近い対応が見られるのではないでしょうか。

 人事制度そのものには踏み込んでいないものの、目標管理と人事考課のデジタルな連動には大いに疑念を挟んでいて、個人的には成果主義そのものが悪であるとは思わないのですが(著者自身も、そうした仕組みを入れざるを得ない業態があることを認めている)、人事考課がゲーム感覚となり、人事のアナログの部分が抜け落ちてしまうことを著者が指摘している点は、大いに共感しました。

 アナログ面、例えば、職場のモラルとか...。上司が部下を立たせたまま長時間にわたり説教してたり、女子社員が机に伏して泣いているのに周りの社員は「またか」と言う感じで仕事を続けている、といった職場は、どれだけ業績を上げていても、やはり「壊れている」のだろうなあ。

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様々な「うつ」との闘いを取材。医療機関、行政、NPO、企業などの取り組みも。

うつを生きる2.gif 『うつを生きる』 (2007/06 朝日新聞社) やまない雨はない.jpg 倉嶋 厚 『やまない雨はない―妻の死、うつ病、それから...』 (2002/08 文藝春秋)

 '06年から'07年にかけて朝日新聞に断続的に連載された「うつ」関連の特集コラムを再編集したもので、複数の記者が「うつ」で悩む様々な人を取材し、彼らがそれをどう克服したか、また、医療機関や行政、NPO、企業などがどのような対応や対策を講じているかが記されています。

高島忠夫.jpg 冒頭に高島忠夫氏のことが事例として紹介されていますが(新聞なので、有名人でアイキャッチを狙った部分もあるかと思うが)、本書を読むと、26年間続いた料理番組の司会を代わった2年後に発病したとのことで、長く続けた仕事を辞めた時は、危ない時期なのだろうか。この人は、治ったと言うより、まだ闘病中でしょう。今でも毎日、抗うつ剤を服用しているとのこと。

倉嶋厚.jpg 元・気象キャスターの倉嶋厚氏も「うつ」に罹患経験者の1人として紹介されていますが、発症したのが妻が癌で亡くなった73歳の時で、この人のように伴侶の死が発症の契機となることも、やはり多いのかも(倉嶋氏のうつ病の発症と闘病の記録は、自著『やまない雨はない―妻の死、うつ病、それから...』('02年/文藝春秋)に詳しい)。

 ワイドショー「小川宏ショー」の司会を通算17年務めた小川宏氏もうつ病に罹患しているから、やはり長寿番組を終えた後の虚脱感は大きいのかなあ(妻が癌になった点では、本書の倉嶋厚氏と同じ)。

 高齢者のうつだけでなく、女性特有のうつ(中高年齢者は更年期障害と見分けにくく、また、それより下の年齢では"産後うつ"などといったものもある)や、エリート・サラリーマン、医師などがうつになった例なども取材していて、その治癒方法も、薬物療法だけでなく、認知療法や磁気療法など様々で、こうして見ると、どの療法がその人に合っているかということの見極めが難しいなあと思わざるを得ませんでした。

 うつ病から回復して職場復帰を目指す人のために、相手を人事担当者に見立てた模擬面接訓練をやっている組織もあることを知り、それだけ、復職の壁は厚いということなのでしょうか(ただ、企業側が積極的に、職場復帰支援プログラムを策定している例も紹介されてはいるが)。

 この職場復帰支援組織の人がうつ病患者の家族に説いている、本人との接し方には「温かな無関心」 という姿勢が必要という話と、同じく職場復帰支援に力を入れている不知火病院(大牟田市)の院長が退院患者に渡したメモにある、「7割の力、3割の余力」 という言葉が印象的でした。

 本書によれば、'04年に、精神科医の島悟・京都文教大教授が全国ネットのメンタルヘルスコンサルティング機構を立ち上げ、主として、社員を復職させるかどうかなどに迷う上司や人事担当者への助言を行っているそうですが、これからは、企業側からも積極的にこうした外部機関との連携・活用を進めていく必要があるように思いました。

《読書MEMO》
「やまない雨はない」...2010年3月6日単発スペシャルのテレビドラマとしてテレビ朝日系列にて放映。
ドラマ やまない雨はない.jpgキャスト
倉嶋 厚:渡瀬恒彦(青年期:内田朝陽)
倉嶋泰子:黒木 瞳(青年期:星野真里)

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現代人の「心の悩み」の代表的パターンとその治癒過程をケーススタディで知る。

「心の悩み」の精神医学.jpg 『「心の悩み」の精神医学 (PHP新書)』 ['98年]

 著者は、毎日たくさんの患者を診ている精神科医(現在、日本うつ病学会理事長)ですが、著者によれば、精神科医というのは、患者が病気であるかどうかには関心が薄く、患者の「心の悩み」をどう解決するかが最大関心事であるとのこと。そうした考えに基づき、現代人に多く見られる、或いは近年増えている症例パターンとその治療過程を、精神科外来を訪れた8人の患者のケースで紹介しています。

 それぞれの章に著者が付けたタイトルは、
 ・ パニック・イン・中央線特別快速 (パニック障害、ノイローゼ)
 ・ うつ・ウツ・鬱 (うつ病)
 ・ 耐える母 (自律神経失調症、心身症、アダルト・チルドレン)
 ・ 災難の後遺症 (PTSD)
 ・ 過食の盛典 (過食症、摂食障害)
 ・ 偉大な父の息子 (気分変調症、エディプス・コンプレックス)
 ・ 境目にいる人達 (ボーダーライン)
 ・ 濡れ落ち葉を踏みしめて(仮性痴呆症、老年うつ病)
 となっていて(カッコ内は、同じ章でノートやコラム的に解説されているもので、タイトルの指す症状とは必ずしも意味的にはイコールではない)、学術的な精神疾患の分類系統によらず、現代社会に顕著にみられる病理を横断的に取り上げていることがわかります。

 200ページ足らずの新書でやや詰め込み過ぎかなという感じもあるものの、ケーススタディを中心に据え、「心の悩み」に起因する症状の発生から、それを認知し治癒に至るまでを具体的に書いているため、たいへん理解し易いものとなっています。

 90年代に書かれたものであり、「PTSD」の解釈を広くとっていることなどには当時の傾向を感じますが、全体としては、10年前に書かれたものにしては、比較的現在までを見通した"ラインアップ"になっているように思え、著者の眼の確かさを窺わせます。

 但し、それぞれについて典型例が紹介されているだけとも言え、関心がある分野については、分野ごとの入門書なり専門書を併読しないと、ふわっとした感じの理解だけで終わってしまうかも知れない本でもあります。

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用語の適用は変遷しているが、メンタルヘルス担当者が今読んでも、参考となる点は多い。

軽症うつ病―「ゆううつ」の精神病理.jpg 軽症うつ病.jpg            笠原 嘉2.gif  笠原 嘉 氏(名大名誉教授)
軽症うつ病―「ゆううつ」の精神病理 (講談社現代新書)』 ['96年]

退却神経症.jpg 著者は、日本で最初に「軽症うつ」という概念を提唱した人で(「うつ」と紛らわしい「退却神経症」というものを概念として提唱したのも著者)、本書では、人に気づかれにくい、また、自分でも気づきにくいタイプのうつ病である「軽症うつ」ついて、とりわけ、ひとりでに起こる「内因性うつ」について、患者サイドに立って、わかりやすく解説しています。

 但し、本書で取り上げられている「軽症うつ」は、最近では、「大うつ病」(狭義の「うつ病」)以外のうつ病として「気分変調症」と呼ばれているようで、それでは「軽症うつ」という言葉が使われていないかというと、ある時は、「大うつ病」と「気分変調症」以外の病的なうつ状態を指す言葉として、またある時は、「大うつ病」以外の病的なうつ状態(「気分変調症」含む)を指す言葉として使われているようで、ややこしい。
 更に、「内因性うつ」と「心因性うつ」を無理に区別しようとしないのも最近のトレンドのようです(本書でも、ある出来事が引き金となって「内因性うつ」が発症することがあることを事例で示している)。

 少し古い本だけに、こうした用語の適用の変遷には一応の注意を払わねばならないという面はありますが、「ゆううつ」の要素として、「ゆううつ感」のほかに「不安・いらいら」「おっくう感」をあげ、回復期において「おっくう感」が一番最後まで残り、仕事などに復帰しても何故かヤル気が出ないことがあるといった指摘は鋭いです。

 職場のメンタルヘルス対策として、復帰者の受け入れ体性をつくる際に、原則として今までの職場に復帰させ、ならし出勤からスタートするといった、最近、人事関係の専門誌によく書かれていることが、すでに本書では提唱されているなどはさすがであり、その他にも、うつ病が何事も几帳面にやり遂げないと気がすまない「執着性格」と相関が高いことや、回復期に「三寒四温」的な気分変調が見られることなど、職場のメンタルヘルス(保健推進)担当者などが今読んでも、参考になることが多いと思われます。

《読書MEMO》
●急性期治療の七原則(149p)
(1) 治療対象となる「不調」であって、単なる「気の緩み」や「怠け」でないことを告げる。
(2) できることなら、早い時期に心理的休息をとるほうが立ち直りやすいことを告げる。
(3) 予想される治癒の時点を告げる。
(4) 治療の間、自己破壊的な行動をしないと約束する。
(5) 治療中、症状に一進一退のあることを繰り返し告げる。
(6) 人生にかかわる大決断は治療終了まで延期するようアドバイスする。
(7) 服薬の重要性、服薬で生じるかもしれない副作用について告げる。

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うつ経験がビジネス人生のステップになるという、当事者としての強いメッセージ。

デキるヤツほどウツになる1.jpg 『デキるヤツほどウツになる―ビジネスマンのためのメンタルケア読本』 デキるヤツほどウツになる2.jpg.jpgデキるヤツほどウツになる―ビジネスマンのためのメンタルケア読本 (小学館文庫 Y う- 8-2)』 〔'07年〕

デキるヤツほどウツに.bmp 35歳のときにうつ病を発症したという人が書いたビジネスマン(ビジネスパーソン)のためのメンタルケアについての本で、自分がうつ病になっているだけに、うつにならないようにするにはどうすれば良いか、それ以上悪化させないようにするにはそうすればよいか、治った後に再発を防ぐにはどうすれば良いかが、ビジネスマンの視点に立って具体的に書かれています。

 単に個人の考えではなく、専門家の監修を交え、医学的見地からの解説もされていて、大手・先行企業のメンタルヘルスケア対応例が紹介されています。
 従って、書かれていることにそれほど偏りは無く、「デキるヤツほどウツになる」というタイトルも、完璧主義や几帳面な人ほどうつ病になりやすいという点では当たっているように思われます。

 著者が言うように、デキる人ほど自分は最近うつではないかと思いがちで、むしろ、デキないくせに自分はデキると思っている人ほど、「うつなんてデキないヤツがなるものだ」と思っているのかも。

 うつについて書かれた他の本にもありますが、本書にも「つらくなったらまず病院へいくこと」とあります。
 大体、うつの人は、自分でそのことを受け入れれば、わりとすんなり病院にいくことが多いのではないかと思われ、むしろ問題は、うつの予兆がじわじわと表れるため、本人も病気だとは思わず、周囲も気づかないことが多いということなのかもしれません。

 休職中に"気晴らしの旅行"をすることが逆効果になることがあるとか、うつであることを"カミングアウト"することで得られる効用など興味深い話もあり、うつ経験(ウツ・キャリア)が次のビジネス人生の良い方向へのステップになるという考えには、当事者としての強いメッセージが込められているように感じました。

 一方で、自分がうつになった経緯についてはほとんど書かれておらず、この著者の場合は、「今も治療中」であるということからも、仕事要因よりも気質的要因によるものなのではないかという疑念も少し抱きました。
 著者には『僕のうつうつ生活』('05年/知恵の森文庫)という本もあり、そちらの方を読めば、著者自身のことはわかるのかも。
 
 【2007年文庫化[小学館文庫]】

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「ストレスの認識→コントロール→より良いキャリア発達」というトータルな解説。

ストレスマネジメント入門.jpg 『ストレスマネジメント入門 (日経文庫)』 メンタルヘルス入門.jpg 『メンタルヘルス入門』('07/04 日経文庫)

2579464422.jpg 同著者の、同じ日経文庫の『メンタルヘルス入門』と同時刊行で、『メンタルヘルス入門』では、マネジャーや人事労務担当者による"組織で取り組むストレスマネジメント"を扱っていますが、本書では、勤労者に向けて、個人が"自らのストレスをマネジメントできるようにするにはどうすればよいか"という観点で書かれていて、産業カウンセラーとの共同執筆になっています。

 本書ではまずストレスとは何かを解説し、とりわけストレスとの関係が深いとされる「うつ病」について重点的に述べていて、うつ病の場合、睡眠など生活リズムの変調が徴候として表れることが多いわけですが、生活リズムを整えることでストレスマネジメントに取り組む基盤ができ、タイムマネジメント(時間使い上手)でストレスは減らせるとしています。

 さらに、物事の捉え方が変わればストレスも変わるという「認知的ストレス対処法」や、アサーション(上手な自己表現)、アンガーコントロール(怒りやイライラを処理する方法)などが紹介されていて、このあたりは、セルフカウンセリングの手法といった感じで、その他にも筋弛緩法や自立訓練法などのリラクセーションの手法が紹介されています。

 更には、キャリアカウンセリングの視点から、キャリアデザイン、キャリア・アンカーなどのキャリア理論の概念が解説されていて、最後に事例をあげてそれまで述べてきたことを応用した具体的な対処法を示しています。

 全体としては、ストレスの認識→ストレス・コントロール→より良いキャリア発達、という流れになっていて、チャレンジングといった概念も組み込まれていて、目先のストレスからの脱却のみを目的としていないトータルな観点から捉えた構成になっている点が共感できました。

 結局、うつ状態などから回復して仕事をしていたとしても、キャリア発達などの点で充足感が無いとまた同じ状態に戻るかも知れず、これは、別にうつ病で入院した人に限らず、うつ的気分に陥りがちなビジネスパーソン全般に言えることかも。

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企業施策としてのメンタルヘルスケアを、医学・実務・法律の各観点からバランスよく解説。

メンタルヘルス入門.jpg 『メンタルヘルス入門』 (2007/04 日経文庫) 島悟さん.jpg 島 悟 氏 (東京経済大学教授・精神科医) NHK教育テレビ「福祉ネットワーク」 '05.06.14 放映 「ETVワイド-"うつに負けないで"」より

mental health.bmp '06年に安全衛生法が改正されて、過重労働者に対する面接指導が一部義務化されるなど、メンタルヘルスに関する施策が一段と強化されました。

 本書はそうしたことを踏まえ、職場のマネジャーや人事労務担当者を念頭に置いて書かれたもので、まず、昨今の職場においてメンタルヘルスがいかに厳しい状況にあるかを示し、その切り口として「ストレス」について解説するとともに、それによりどのような「心の病」が見られるか、さらに改正安全衛生法の「新メンタルヘルス指針」が企業に要請していることを解説し、マネジメント上乃至人事上、具体的に何をすればよいのかを示しています。

 「心の病」についてはうつ病、パニック障害(不安発作)、職場不適応の3種類が代表格で、その他の「心の病」も紹介されていますが、やはりこれらの中でもうつ病については、重点的に解説されています。

 本書を読むと、改正安衛法の新指針は、旧労働省の'00年の「事業場における労働者の心の健康づくりのための指針」を踏まえたものであることがわかり、旧指針において"重要なケア"とされているものは、①セルフケア、②ラインによるケア、③産業保健スタッフ等によるケア、④事業場外資源(医療機関・相談期間等)によるケアの4つとなっていますが、この中でも、ラインマネジャーが部下の適切な労務管理、メンタルヘルスケアを行う「ラインによるケア」が大切であり、その具体的アクションとして「傾聴」を説いています。

 著者は精神科医であり、勤労者のメンタルヘルスが専門で、本書は、精神医学・心理療法面、企業内実務面、法律・行政指針面のそれぞれについてバランスのとれた内容で、新書版の物足りなさもありますが、入門書としては偏りがなくて最適、「心の病」で休職していた人の復職の進め方などは、個人的に 大いに参考になりました。

《読書MEMO》
●「事業場における労働者の心の健康づくりのための指針」('00年・旧労働省)における"重要なケア"(117p)
 ①セルフケア
 ②ラインによるケア
 ③産業保健スタッフ等によるケア
 ④事業場外資源(医療機関・相談期間等)によるケア
●安全衛生法改正に伴う「労働者の心の健康の保持促進のための指針」('06年)のメンタルヘルス対策の7つのポイント(122p)
 ①法律に基づく指針となったこと
 ②1次予防から3次予防までを含む包括的指針となったこと
 ③衛星委員会等の調査審議事項として取り上げたこと(メンタルヘルス対策に、形式対応ではなく実効性がお求められる)
 ④家族との連携への言及
 ⑤事業場内メンタルヘルス推進担当者が新設されたこと
 ⑥個人情報保護法への配慮
 ⑦ラインによるケアの補強(管理監督者は部下である社員の状況を日常的に把握でき、部下のストレスを察知し状況改善できる立場にあるという考え)
●「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」('04年)における"職場復帰支援プログラムの5つのステップ"(139p)
 第1ステップ:病気休業開始及び休業中のケア(診断書に職場復帰の準備を計画的に行えるよう、療養期間の見込について明記してもらう、等)
 第2ステップ:主治医による職場復帰可能性の判断(職場復帰可能の判断が記された診断書に、就業上の配慮に関する主治医の具体的な意見を含めてもらう、等)
 第3ステップ:職場復帰の可否の判断及び職場復帰支援プランの作成
 第4ステップ:最終的な職場復帰の決定
 第5ステップ:職場復帰後のフォローアップ(通院状況や治療の自己中断等のチェック、現在の病状や今後の見通しについての主治医の意見を労働者から聞き、必要に応じて労働者の同意を得たうえで主治医と情報交換する)
 ※復職をめぐる主治医と産業医の判断が一致しない場合もある
  ・産業医の方が事業所の特性・職種・職位・業務内容を熟知、就業上の配慮についてより適切な判断が可能
  ・ただし、産業医はメンタルヘルスの専門医ではない場合、主治医の判断を追認しがち。
●現場のマネジャーが留意すべき点(145p)
 ①すべての業務上の配慮の根拠は医学的判断にある
 ②産業医・保健婦などの看護職、または主治医とコミュニケーションを十分にとる
 ③労務管理をきちんとする

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ビジネスパーソンの目線に立ってわかりやすく解説した啓蒙的入門書。

部下を「会社うつ」から守る本.jpg 『部下を「会社うつ」から守る本』 〔'07年〕 渡部卓さん.jpg 渡部 卓(たかし) 氏 (ライフバランスマネジメント社社長) NHK教育テレビ「福祉ネットワーク」 '05.06.14 放映 「ETVワイド-"うつに負けないで"」より

会社のストレスに負けない本.jpg そのわかりやすさで好評だった『会社のストレスに負けない本』('05年/大和書房)の著者が、今度は管理職の立場から見た、部下のメンタルヘルスケアの問題を扱って解説したもので、前半は「社内うつ」とその予防や対応について、後半は、メンタルヘルスケア全般についての個人および組織・企業ぐるみの対応について書かれていています。

会社のストレスに負けない本

 本書では、職場ストレスに起因する心因性のうつ状態、うつ病、適応障害などをひっくるめて「うつ病」(会社うつ)と表現し、現実のビジネス現場で部下がこうした状態に陥らないようにするには、上司がどのように考え、行動したらよいのかを具体的に解説しています。

 人と話すことで「うつ」というのはかなり防げるわけで、本書では「傾聴」というカウンセリングの概念を重視しており(同時にそれがコーチングの基本でもあるという捉え方は正統的であるという印象を受けた)、さらに、ワークライフ・バランスの向上、アサーションの効用といったことから、認知療法、森林療法などについても触れられていますが、著者は医者ではなく、産業カウンセラーであり、また多くの外資系企業で要職にいた経歴の持ち主でもあることから、医学的な観点よりも、ビジネスパーソンの目線に立ってそれぞれ実践的に書かれています。

 最近のビジネスのトレンドの中での職場環境というものを捉えて、セクハラ・パワハラ、ITストレス、EAP(Employee Assistance Program=従業員支援プログラム)といったことにも言及しているため、やや網羅的になって1つ1つのテーマの捉え方が浅くなっている傾向がありますが(入門書というより啓蒙書?)、特定分野ごとにもっと知識を深めたいという人向けに、適宜、参考図書を紹介しています。

 〈メンタルヘルス〉を〈メンタルタフネス〉と置き換えてみると経営者の興味・反応が大きく変わるというのが、何かよくわかる気がしますが、〈メンタルタフネス〉をつけるには、3つのR(Rest 休養、Recreation 気分転換、Relaxation くうろぎ)が大事だということで、そこのところ、上司または経営者は理解してくれるでしょうか(彼ら自身が、余裕がなくなっているケースも多いけれど)。

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「過労自殺」に注目が集まる契機となった本。教訓としての「電通事件」。

過労自殺.jpg 『過労自殺 (岩波新書)』 〔'98年〕

Bridge、templateId=blob.jpg 本書刊行は'98年で、その頃「過労死」という言葉はすでに定着していましたが、「過労自殺」という言葉はまだ一般には浸透しておらず、本書は「過労自殺」というものに注目が集まる契機となった本と言ってもいいのではないかと思います。

 冒頭に何例か過労自殺事件が紹介されていますが、その中でも有名なのが、著者自身も弁護士として関わった「電通事件」でしょう。
 自殺した社員(24歳のラジオ部員)の残業時間が月平均で147時間(8カ月の平均)あったというのも異常ですが、会社ぐるみの残業隠蔽や、当人に対し、靴の中にビールを注いで無理やり飲ませるような陰湿ないじめがあったことが記されています。

 事件そのものの発生は'91(平成2)年で、電通の対応に不満を持った遺族が'93(平成5)年に2億2千万円の損害賠償請求訴訟を起こし(電通がきちんと誠意ある対応をしていれば訴訟にはならなかったと著者は言っている)、'96(平成8)年3月、東京地裁は電通側に1億2千万円の支払を命じていて、それが'97(平成9)年9月の東京高裁判決では3割の過失相殺を認め、約9千万円の支払命令となっています。

 本書105ページを見ると、'95〜'97年度の過労自殺の労災申請は、それぞれ10件、11件、22件で、それに対し認定件数は各0件、1件、2件しかなく、電通事件も労災申請を認めなかった労基署の判断が退けられたという形をとっていますが、それがそのまま損害賠償命令に直結したのがある意味画期的でした(しかも金額が大きい。因みに'06年度の「過労自殺」の労災認定件数は66件にも及んでいる)。

 さらに、本書刊行後の話ですが、'00(平成12)年の最高裁小法廷判決では、2審判決の(本人の自己管理能力欠如による)過失相殺を誤りとし、電通に対し約1億7千万円の支払い命令を下しており、上場を目前に控えた電通は、やっと法廷闘争を断念して判決を受け入れ、遺族との和解交渉へと移ります。

 企業が労務上の危機管理や事件に対する適切な初期対応を怠ると、いかに膨大な時間的・金銭的・対社会的損失を被るかということの、典型的な例だと思います。

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実務に沿ってキッチリと書かれている。現実対応の難しさを改めて認識。

労災・安全衛生・メンタルヘルスQ&A.jpg  『労災・安全衛生・メンタルヘルス Q&A』 (2007/03 労務行政)

 本書の章立ては下記の通りで、章ごとに論点を整理したうえでQ&Aを用意していますが(全81問)、判例や通達を多角的にまじえ、かなり踏み込んだ解説がされています。

 「労災」はやはり適否問題が複雑で、教科書的な本だけ読んでもあまり参考にならず、と言って1つ1つ判例をあたるのもたいへんですが、これだけ整理してまとめられていれば、かなり実用に供するのではないかと思われます。

 「労災」から「安全衛生」、さらに「メンタルヘルス」へという流れでの編集も実用的ですが、「安全配慮義務」や「安全衛生」についても、ある産業分野でしか起きないような事案は極少に留め、裁量労働制、派遣や請負、長時間労働と過労死といった今日多くの企業で問題になる可能性がある事柄について詳説しています。

 「健康診断」については、それ以前の章でも述べられていることですが、時間外労働が月100時間超の過重労働者(かつ疲労の蓄積が認められること)に対する産業医等の面接指導が'06(平成18)年度から義務化されているのが1つポイントで、ただし、本書にもあるように、通達を読む限り、労働者が申し出ない限りは面接指導の義務がないということになります。
 これって労働者保護の立場からするとどうなのだろうという気もしますが、「コンプライアンス」とは法令に抵触しないことを目的とするものでなく、法令を通じて期待されている企業の社会的役割を果たすことにあるのだと考えるしか、こうした「法の隙間」問題に対処する道はないのでは。

 「メンタルヘルス」については、さらに微妙な問題が多くなり、例えば「うつ状態の社員の主治医に対し、本人の病状について情報開示を求めることはできるか」という問いに対し、訊くことは「問題ない」が、主治医に「回答する義務はなく、また、個人情報保護を理由に回答が得られないことが多い」となっています。

 1つ1つのQ&Aを読んで改めて諸問題への対応の難しさを感じますが、通達や判例の典拠もきちんと記載されていて、さすが「労務行政」刊行の本という感じ(執筆者は弁護士)で、値が少し張る(3,400円)のは仕方がないか。

【2012年第2版】
 
《読書MEMO》
●章立て
第1章 業務災害・通勤災害(労災保険法の仕組み、業務上の災害ほか)
第2章 安全配慮義務(安全配慮義務の根拠とその義務の主体、安全配慮義務の内容とその主張・立証責任ほか)
第3章 安全衛生管理(安全衛生教育、適用単位と適用業種・規模ほか)
第4章 健康診断、職場の健康管理(健康診断、職場の健康管理・健康対策ほか)
第5章 メンタルヘルス(採用の自由とプライバシーの保護、調査の自由ほか)

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企業などでメンタルヘルスを担当されている方には参考になると思える。

退却神経症.jpg 退却神経症―無気力・無関心・無快楽の克服』 講談社現代新書〔'88年〕 笠原 嘉.gif 笠原 嘉(よみし) 氏(略歴下記)
退却神経症 無気力・無関心・無快楽の克服/笠原嘉1.jpg いるいる、こんな人、これぞまさに著者の言う「退却神経症」ではないかと思い当るフシがありました。
 休みがちなのに、出社したときの仕事ぶりはしっかりしていたりして...。でも結局しばらくするとまた休むようになってしまうのですね(ただし休職届け添付の医師の診断書は「自律神経失調症」とか「うつ病」となっていることが多いのですが)。 

 「退却神経症」とは著者の考えた言葉であり、'70年安保の大学紛争の頃に、学生運動もせずに密かに社会の前線から退却して沈潜する「大学生特有の無気力」現象が見られ、そうした現象が青年期をこえたサラリ-マンの間にも「出勤拒否症」などとして拡がっている事態を意識したのが始まりだということで、これは、最近の社会現象として言われている「ひきこもり」に通じるところがあるかと思えます。 

 著者が関心を持ったのは、例えば「欠勤多発症」の青年は、職場を離れていればまったく元気であったりすることが多いということで、「会社を休むくせに、休日の運動会や小旅行は目立ってハッスルすることがある」といった点などです。 

 こうした人たちは、アブセンティーズム(欠勤症)やアパシー(無気力)状態になる前は、真面目で物事にキッチリした性格だった人が多く、また現在は、自分でもよくわからない漠然とした不安を心の内に抱えていて、それでいて、不眠に陥るでなく(むしろ過眠症だったりする)、他人の助けも求めない(この辺りが、不眠を伴うことが多く、他者に助けを求めることも多い「うつ病」とは異なる)、それでいて突然の失踪や自殺という最悪の結果に至ることがあるということです。 

退却神経症 無気力・無関心・無快楽の克服/笠原嘉2.jpg 著者は、大学生の「スチューデン・アパシー」現象について書かれた海外の論文を見つけたことから、これらが大学紛争の際の一時的現象ではなく、その後も続いている現象であると考え、これを「退却神経症」という新しいタイプのノイローゼと位置づけて、うつ病やパーソナリティ障害との比較をしています。

 学生の「五月病」なども、この「退却神経症」の系譜として捉えると確かにわかりやすいです。 
 さらには、中・高校生の「登校拒否」にも同様のアパシー症候群が見られるとし、こうした症状の治療と予防について、教育制度の問題も含め提案しています。
  
 提言部分についてはそれほど頁を割けないまま終わっている感じがありますが、「ひきこもり」や「登校拒否」の問題に対し、いち早く慧眼を示した本であり、この1冊に偏りすぎるのはどうかと思いますが、企業などでメンタルヘルスを担当されている方には参考になるかと思います。
_________________________________________________
笠原 嘉(かさはら・よみし).名古屋大学名誉教授
1928年 神戸市に生れる。
1952年 京都大学医学部卒業。精神医学専攻。
1972年 名古屋大学教授就任
1992年 名古屋大学教授退官
名古屋大学医学部教授、同付属病院長などを経て、現在、藤田保健衛生大学医学部客員教授。社団法人被害者サポートセンターあいち元会長、現顧問。
中井久夫や木村敏と並んで著名な精神科医。スチューデント・アパシー student apathy や退却神経症などを提唱。

《読書MEMO》
●不安ノイローゼ・強迫ノイローゼ・ヒステリー型ノイローゼ+「退却神経症」(=新しいタイプのノイローゼ)
●うつ病の人は寮にいても苦しい、退却神経症の人は、会社を休むくせに、休日の運動会や小旅行は目立ってハッスルする(28p)
●休みがちなのに、出社したときの仕事ぶりはしっかりしている(28p)
●完全主義。プライドが高く、人に容易に心を開かない(48p)

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IT時代特有のストレスからくる「心の病」をわかりやすく解説。

ITエンジニアの「心の病.jpgITエンジニアの「心の病」技術者がとりつかれやすい30の疾患』('05年/毎日コミュニケーションズ)

070109.jpg ITエンジニアがとりつかれやすい30の疾患を解説し、症例と対応策を述べています。その中にはITエンてんかん、VDT症候群、ドライアイ、手根管症候群など特にITエンジニアが罹りやすい病気もありますが、頭痛、慢性疲労症候群、自律神経失調症、社会不安障害(対人恐怖症)、うつ病、適応障害、インターネット依存症、過敏性大腸症候群、ディスペプシア(胃のもたれ)、狭心症・心筋梗塞、脳梗塞など、ITエンジニアに限らず働く人のすべてが「心の病」が昂進して発症するおそれがあるものが多く含まれていることがわかります。

 冒頭に大手広告代理店社員の過労自殺事件を取り上げ、過労自殺は企業の責任であることを明言し、社員のストレスは企業のリスクであること、企業にメンタルヘルス対策が不可欠であることを強調しています。

 しかし実際には「心の病」を見抜くのはそれほど簡単ではありません(本書によると「腰痛」も30疾患の中に含まれていて、「心の問題」に起因することがあるらしい)。

 そこで後半部分では、過労自殺などに至るまでの見落としがちな危ない兆候を、「デフコン(警戒態勢)1〜4」までの危険度別に紹介し、予防法や効果的なストレス解消法を説いています。

 全体に平易な文章で、データもよく整理され用語解説も丁寧で、わかりやすい内容となっています。

 確かにIT時代特有のストレスというのは増えているのでしょう。
 携帯メールの普及などは、着信を常にチェックをしないと落ち着かないといった状況を生み、本人はその意識がないのかもしれませんが、著者からみれば一種の依存症であるとのこと。
 メールの返信に追われたり、相手からの返信がないとイライラしたりするのは、ストレスを増長させる原因になるのではないかと著者は言っています。

《読書MEMO》
●統合失調症(8p)
●スロー・フード運動(29p)
●うつ病と大うつ病(36p)
●A型人間(118p)
●昇進うつ病(142p)

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「社内うつ」とは本当のうつ病ではなく、職場ストレスが引き起こす「適応障害」だという考え。

仕事中だけ「うつ」になる人たち.jpg仕事中だけ「うつ」になる人たち―ストレス社会で生き残る働き方とは』 ('04年/日本経済新聞社)

 心理学者の小杉正太郎氏とワトソン・ワイアットの川上真史氏が、最近増えていると言われる「社内うつ」の問題について、その発生原因やそれを取り除く方法を対談形式で語っています。

070101.jpg 小杉氏は本書で、本当のうつ病(内因性うつ病)は人口の0.3%に過ぎず、今ビジネスの世界で起きているのは「心因性うつ状態」と「適応障害」であるとし、「心因性うつ状態」は死別体験や社会的立場の危機などで生じるが、「適応障害」は特定の人物や状況に遭遇した時だけ生じると言っています。
 そして、「職場ストレスが引き起こす適応障害」を「社内うつ」と呼んでいます。

 個人の体質からくる「うつ病」は完治が難しいが、「社内うつ」は、例えば人間関係のトラブルが原因の場合、その原因となっている相手とのコミュニケーションを改善するなどしてトラブル原因をとり除けば、解決されるであろうと...。

 ストレス問題の解決法として氏は「積極的コーピング」という考え方を示していますが、それは、感情に直接焦点を当てるのではなく、原因となっている問題に焦点を当て解決することに主眼をおいた対処方法のことです。
 むしろ外部の専門家より内部の管理職が意識すべきことかも知れません。
 そのためには、氏の指摘のように「ストレス耐性」などと言って耐えることが美徳とされている企業風土を変えていく必要も感じました。

 一方、川上氏は、企業側から見たマネジメント問題としての提案をしていますが、"ハイパフォーマーを守るための制度"的な考え方が窺えるのが少し気になりました。
 氏のコンピテンシー論も興味深かったのですが、もともと達成動機論(達成動機の高い社員を多くする)だったものを、自分が日本流に行動論にアレンジし、つまり、真似していると同じ気持ちになってくるという方法論として導入したということらしいです。
 興味深い話ですが、そうした「自分がやった」という氏の自負は一体どこから来るのだろうか、やや疑問を感じました。

小杉正太郎.jpg 小杉正太郎 氏 (心理学者/略歴下記)  kawakami.jpg 川上 真史 氏 (ワトソン・ワイアット)

《読書MEMO》
●最近の医学では、「DSM-Ⅳ」というマニュアルが多く採用され、症状の程度と持続期間によって「大うつ病」と「軽症のうつ病(気分変調障害)」に分けている(本書でも「軽症うつ病」という言葉を併せて使用)。

_________________________________________________
小杉正太郎 (早稲田大学文学部教授)
1939年生まれ。早稲田大学大学院博士課程修了。1966年から携わった海底居住の心理学的研究を契機として、環境・ストレス・行動などをキーワードとする心理学的研究に従事。多数の企業にカウンセリングルームを開設し、従業員を対象とした心理ストレス調査と職場適応の援助を実施している。心理ストレス研究の第一人者として執筆活動・講演活動も活発に行う。主な著書に『社内うつ』(講談社)、『ストレス心理学』(川島書店)、『仕事中だけ「うつ」になる人たち』(川上真史氏との共著、日本経済新聞社)などがある。

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「タイプA」行動などをイラスト入りでわかりやすく解説。

068.gifあなたならどうなる?100のサイン.jpg  
    
あなたならどうなる?100のサイン―人間観察が楽しくなるイラスト版チェック集

ディスカヴァー・トゥエンティワン
http://mujina.agz.jp/stress.html

 本書はストレスが高まったときに現われやすいサイン(危険信号)を100種類とりあげ、原因や放置するとどうなるかという簡潔な説明を、動物を擬人化したイラストとの見開きで示しています。

 冒頭の9つは、「タイプA」行動と言われるもので、Aは〈Aggressive(攻撃的な)〉の頭文字ですが、競争心が高く攻撃的で、何事にも過剰適応し、常にストレスが高いタイプです。

笑わなくなる.jpg 米国で、虚血性心疾患の患者に共通する行動様式として発見され、カウンセリングの本などにも出てくる言葉ですが、本書では擬人化された動物のイラスト入りでたいへん分かりやすく紹介されていて、思わず笑いそうになりながら、かつ参考になりました。

 要するに、「タイプA」行動と言われる行動特性を多く有する人は、心筋梗塞で突然ポックリ逝く恐れが平均より高い確率であるということですが、本書によれば、これは遺伝ではなくあくまでも行動様式の形態なので、自分で変えることができるとのことです。このほかに、欝(うつ)の兆候などを、イラストと簡潔なコメントでわかり易く示していて、楽しみながらも大いに参考になります。

「笑わなくなる」―欝(うつ)の兆候

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