● 確定拠出年金(日本版401k)の導入に際して発生する「前払い」
50-01.gif大手企業など先行企業では、退職給付制度(退職一時金・税制適格年金・厚生年金基金など)の改廃と、それに伴う確定拠出年金(日本版401k)の導入に際して、移行時点までの過去分が移行限度額を超える場合に超過分を一時金で支給したり、移行後の拠出金が非課税限度額を超過する場合に、超過分を毎月の給与に上乗せするなどのかたちでの「前払い」が一般的に行われています。









● 確定拠出年金(日本版401k)と前払い退職金の選択パターン
50-02.gifまた将来分を含め「全額前払い」を選択できる制度を併せて導入するケースも見られます。(図参照)
確定拠出年金は、原則として60歳にならなければ受給できないため、選択肢としての「前払い制度」を設けることで、社員の多様なニーズに応えようとするものと言えます。










● 厚生年金基金を脱退し、完全前払いに移行した事例
51-01.gif松井証券のように、適格年金を廃止し、業界の厚生年金基金も脱退して、「完全前払い制」に移行した事例もあります。'98年のインターネット取引進出後、中途採用が増え、移行時点での社員平均年齢が34歳と若く、また3分の2は入社3年以内だったという"有利さ"もあったかと思いますし、業界基金加入の大手会社が離脱(野村・日興・大和の何れもが確定拠出年金へ移行、山一は破綻)し、基金の財政が悪化したという"特殊事情"もあったようですが、一つ参考になるのではないかと思います。
過去分を全額一時金で支払うことについて、通常は"退職所得"扱いにはなりませんが、社員全員をいったん解雇し、翌日に再び全員を採用するという"奇策"(?)を講じることで、当局には"退職所得"として承認されています。
51-02.gifまた、制度改定時の在籍社員も改定後の中途入社者も、「個人型」の確定拠出年金に加入することが可能になっています。これは、社員の多様なニーズに応えようとすると同時に、中途採用の多い業界で、転職者を受け入れ易くする施策であると考えられますが、人材流動性の高い中小企業などにおいては検討に値する選択肢ではないかと思います。

● 3つの制度から社員が1つ選ぶ
今まで見てきたように、確定拠出年金(日本版401k)は、退職金前払い制度との併設が認められていますが、確定給付企業年金と合わせて実施することも可能です。(確定給付企業年金は、税制適格年金、厚生年金基金、企業型確定拠出年金、退職金前払い制度の何れとの併設可能です。ただし、適格年金は平成24年3月末を以って適格年金制度自体が無くなります。)
そうすると今後は、税制適格年金から、制度的に似ている確定給付企業年金への移行が多く見られるかと思いますが、その際に、①確定給付企業年金、②確定拠出年金(日本版401k)、③退職金前払い制度、の3つの制度から社員が1つを選ぶ制度も可能だということになります。

ただし、確定拠出年金(日本版401k)は、税制適格年金からの移行時には、原則として過去勤務債務(積立て不足)を解消することが求められますし(確定給付企業年金への移行は積立て不足があっても可能)、企業型の場合、投資教育のコストなども考慮する必要があります(「企業内個人型」の場合は、投資教育は義務付けられていません)。また、退職金が"手切れ金"のような役割を担っている面がある中小企業などにおいて、こうした中途退職しても原則として60歳にならなければ受給できない仕組みが馴染むかどうか、仮に別途に会社退職金(退職一時金)の制度が用意されていなければ、転職準備金が手元に無い状況となる問題もあります。

● 中小企業の場合、「中退共」という選択も
そうした理由から確定拠出年金(日本版401k)を敬遠する中小企業の選択肢としては、税制適格年金から「中小企業退職金共済制度」への移行ということも考えられます。
「中退共」へ加入できる要件を満たしていれば、適格年金からの移行は比較的容易であり、移行後は、企業は掛金を負担するだけでよく、予定利率を下回った場合でも追加拠出の必要がありません。「中退共」はある意味、"確定拠出"なのです。以前は、適格年金資産の移管額に上限がありましたが、平成17年4月からは上限が撤廃されています。

● 2つ制度から社員が1つ選ぶ
「中退共」への加入要件を満たさない、金融機関との関係を維持しなければならない、などの理由で「中退共」を選ばない(または選べない)場合は、前掲の"三択"を"二択"に絞り、①確定給付企業年金、②退職金前払い制度、の何れかを社員が選択できる制度というのも、現実性が高いと考えられます。ただし、確定給付企業年金の加入者となることを選択した場合、その資格を任意に喪失することは許されていないので、最初の選択においての注意が必要です。

● 「完全前払い」制に「企業内個人型確定拠出年金」を付加する
退職金前払い制度は、単独制度としても、新企業年金との組み合わせによる選択制度としても、その役割は大きいと考えます。また、企業年金を全廃して「完全前払い」制に移行した場合には、その受け皿としての「企業内個人型確定拠出年金」も、検討の価値があると思います。

● 早期退職優遇制度と希望退職の違い
「早期退職優遇制度」は、「希望退職制度」を含めてそう呼ぶ場合もありますが、本来は、後者が一時的措置("制度"と呼ぶこともやや不正確)であるのに対し、前者は恒常的な制度であるところに大きな違いがあります。以下、両者の違いをまとめてみました。

53-01.gif※「退職勧奨」は、「希望退職」と併せて実施されることが多いのですが、本来はローパフォーマーを対象として個別に行うものであって、会社業績が良くても実施される可能性のある性格のものです。

● 早期退職優遇制度の概念・類型と関連システム
53-02.gif一般に「選択定年制」や「セカンドライフ支援制度」と呼ばれている制度も、「早期退職優遇制度」の一種とみることができます。こうした制度の導入においては、図のような関連制度・システムの充実が望まれますが、その核となるのは、やはり割増退職金(特別加算金)です。












● 割増退職金(特別加算金)の算定定方法と支給水準例
割増退職金の算定方法は、主要なものとして次の4タイプがあります。
① 絶対額で決める
S社(早期退職優遇制度) 50歳~55歳 500万円、56歳~57歳 500万円、58歳~59歳 50万円
② 退職金の割増率で決める
JR東海(早期退職優遇制度) 50歳~55歳 12%~15%
G社(希望退職) 54歳~55歳 100%、56歳~57歳 90%、58歳~59歳 80%
③ 基本給の月数で決める
T社(希望退職) 45歳以上 最大30ヶ月
④ 年収ベースで決める
松下電器(希望退職) 最大年収の2.5倍
傾向としては①から④の順に支給額は大きくなりますが、支給水準は、早期退職優遇制度であるか希望退職であるかによっても異なりますし(一般に希望退職の方が高い)、企業規模によってかなりのバラツキがあります。中小企業においては、会社都合計算のみで別途加算は行わないケースもかなりあります。

● 年収ベースで加算額を決める場合の原則的な考え方

54-01.gifかつて割増退職金は、その言葉の通り、割増率で決めるのが主流でしたが、近年は年収ベースで決めるケースが見受けられます。年収ベースで加算額を決めるやり方の原則的な考え方には、図のように2タイプあります。月数で決めている場合でも、元の考え方は、同じ場合があります。
ただし現実には、両タイプとも加算額は多目になります。中小企業等においては、加算金額も重要ですが一定の限界がありますから、大手企業を参考にするならば、むしろアウトプレースメントサービス(再就職支援サービス)を付与するなどの施策に原資を配分した方が良いと考えます。(※希望退職の場合、割増退職金の加算額もアウトプレースメントサービス費用も、特別損失処理が可能です。)





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