1.賃金制度
1-1 社員格付け制度(役割等級制度)
〔01〕 「能力主義」-"ぬるま湯的"人事制度からの脱却が求められている
〔02〕 「成果主義」-「成果主義」導入の際に気をつけるべき落とし穴
〔03〕 「役割・成果主義」-「役割」をベースに成果主義の処遇制度を実現する
〔04〕 役割等級制度-「大括り(ブロードバンド)」を原則とする
〔05〕 役割等級の設定①-「自社適合イメージ」を持って等級区分・職群区分をする
〔06〕 役割等級の設定②-「役割等級基準」を作成する
1-2 役割基準の給与(役割給)
〔07〕 賃金制度改革の目的と検討項目-目的を明確に。職能給か、職務給か、役割給か
〔08〕 賃金制度設計のポイント①-中間監督職以上は「役割給」を中心とした賃金体系に
〔09〕 賃金制度設計のポイント②-諸手当を思い切って"リストラ"する
〔10〕 役割給「基本モデル」の設計①-役割等級へ仮格付けし、仮役割給を分析する
〔11〕 役割給「基本モデル」の設計②-その役割に対して支払う賃金の基準額を決める
〔12〕 役割給「賃金テーブル」の設計①-範囲給に社員へのメッセージを込める
〔13〕 役割給「賃金テーブル」の設計②-一般職のレンジ設定は習熟を反映させやすくする
〔14〕 役割給「賃金テーブル」の設計③-レンジの上限超過者の調整給は段階を経て無くす
〔15〕 役割給「改定(昇給)テーブル」の作成①-改定(昇給)方法は3種類×2=6パターン
〔16〕 役割給「改定(昇給)テーブル」の作成②-A.「定昇累積方式」と屈折点、ポイント式
〔17〕 役割給「改定(昇給)テーブル」の作成③-B.「パーセント方式」とゾーンマトリックス
〔18〕 役割給「改定(昇給)テーブル」の作成④-C.「洗い替え方式」と多段階洗い替え方式
1-3 変動型の給与(業績給)
〔19〕 「変動型給与」の検討-これからの賃金カーブと「変動型給与」への賃金体系見直し
〔20〕 「業績給」の検討-洗い替え方式の「業績給」を職能給・役割給と組み合わせて使う
〔21〕 「業績給」の適用対象と運用①-「役割給+業績給」が一般的。ポイント制での運用
〔22〕 「業績給」の適用対象と運用②-役割給・業績給・役割キャリア給の組み合わせ
〔23〕 成果主義賃金制度の定着のために-賃金制度の "自社適合" を図る

2.賞与制度・ボーナス制度・年俸制
2-1 業績・成果反映型賞与
〔24〕 日本の賞与と米国のボーナス- "生活保障+成果配分" vs. "ゼロベース"
〔25〕 業績・成果反映型賞与の設計①-一般的なタイプ(基本賞与・業績賞与・支給係数)
〔26〕 業績・成果反映型賞与の設計②-基礎額を基本給から絶縁した「等級別基礎額方式」
〔27〕 業績・成果反映型賞与の設計③-原資管理に主眼を置いた「ポイント方式」
2-2 ボーナス制度
〔28〕 プロフィット・シェア・ボーナス(利益還元賞与)-好業績時に利益の一部を社員に還元
〔29〕 インセンティブ・ボーナス(報奨金)-わかりやすく達成感のある仕組みにする
2-3 年俸制
〔30〕 年俸制とは何か-その定義と日本型年俸制の特徴、導入のメリット・デメリット
〔31〕 年俸制の導入に際して-導入のための条件、賃金制度上・法規上の課題と解決策
〔32〕 年俸制のタイプと年俸の決定時期①-運用しやすい賞与変動型A(賞与仮決定型)
〔33〕 年俸制のタイプと年俸の決定時期②-「半期年俸制」という考え方もある
〔34〕 賞与変動型A(賞与仮決定型)年俸制-月額賞与配分と賞与支給額決定のイメージ
〔35〕 「全社員年俸制」①-「全社員年俸制モデル」の「基準年俸」構成要素
〔36〕 「全社員年俸制」②-「全社員年俸制モデル」の「基準年俸」の月額・賞与配分方法
〔37〕 「全社員年俸制」③-「全社員」のメリット、一般職に適用拡大する理由と期待効果

3.退職金制度
3-1 ポイント制退職金制度
〔38〕 退職金制度改革の方向性と「ポイント制退職金制度」の位置づけ-短期決済化
〔39〕 退職金の基本給絶縁方式とポイント制退職金制度の種類-併存型・併合型
〔40〕 ポイント制退職金制度の概要①-併存型の勤続ポイント・役割ポイント設定例、計算例
〔41〕 ポイント制退職金制度の概要②-ポイント制の特長と併合型の制度設計の流れ
〔42〕 評価反映型のポイント制退職金制度①-「評価ポイント」を導入した事例
〔43〕 評価反映型のポイント制退職金制度②-「評価反映型ポイント制」の設計方法
〔44〕 算定シミュレーションと全体調整①-シミュレーションにより趣旨の反映度をチェックする
〔45〕 算定シミュレーションと全体調整②-全体調整の考え方と制度設計のバリエーション
〔46〕 ポイント制への移行に際して-現行制度との調整方法、企業年金における注意点
3-2 退職金前払い(選択)制度
〔47〕 退職金前払い(選択)制度の概要-「後払い」から「その都度払い」へ
〔48〕 退職金前払い(選択)制度の設計①-制度設計上の基本的なポイント
〔49〕 退職金前払い(選択)制度の設計②-制度移行時および運用上の諸問題
〔50〕 従来制度からの移行事例①-確定拠出年金と前払い退職金の選択パターン
〔51〕 従来制度からの移行事例②-基金を脱退し、完全前払いに移行した事例
〔52〕 新企業年金と退職金前払い制度-3つまたは2つ制度から社員が1つ選ぶ
3-3 割増退職金制度
〔53〕 早期退職優遇制度と希望退職-両者の違いと割増退職金などの関連システム
〔54〕 割増退職金のポイント①-算定方法と支給水準、年収ベースで決める考え方
〔55〕 割増退職金のポイント②-早期退職優遇制度・希望退職・退職勧奨の考え方

〔参照書籍〕

● 「能力主義」の人事制度=「職能資格制度」の "制度疲労"
労働人口の高年齢化が昨今言われますが、これは今に始まった問題ではなく、昭和50年代ごろから企業にとっての問題となっていました。加えて定年延長という課題もあり、企業は年功的な賃金体系の是正に取り組むことを余儀なくされたわけです。そこで多くの企業が導入したのが、「能力主義」の人事・賃金制度、つまり職能資格制度、職能給制度であったのです。
しかし今、その職能資格制度、職能給制度に"制度疲労"が生じて、年功的賃金制度と変わらないものになってしまっているというのが、多くの企業で起きていることです。

従来の職能資格制度などに基づく「能力主義」人事制度の問題点は、年功的要素を含む"保有能力"を過大に評価してきた点にあります。その結果、「同じ釜の飯を食う」とういう長期雇用を前提にした「仲間主義」になってしまい、本当の意味での「評価」は避けられてきました。経営環境が大きく変化した今においても、そうした保有能力が本当に"発揮能力"に転ずるのか、その能力の価値は陳腐化してはいないかなどの充分な検証もないまま、毎年ごと年功的に基本給や職能給を引き上げていくということが、多くの企業で行われてきたわけです。

右肩上がりの高度成長期にはそうした考えでもまだ持ちこたえることができたのですが、バブル経済崩壊後の低成長の時代に入ると、こうしたシステムの弱点が顕著になりました。つまり、
①中高年齢層の人員肥大化による高コスト体質
②資格等級と担当する職務のレベルとの間のズレ
③資格等級と生み出す成果とのギャップ
などの問題を生じせしめたことです。
同様の問題が自社においても起きていないか、そのことが厳しい経営環境にも関わらず"ぬるま湯的"、悪い意味での"情緒的"な体質を醸成することにつながっていないか、一方で本当にやる気のある社員の意欲を削ぐことになっていないか、今一度チェックしてみることが必要です。

● 「能力主義」が年功的運用に陥っているならば見直し・脱却を
職能資格制度には、昇格と昇進を分離させることで能力開発への動機づけを促し、同時に柔軟な人材活用を図ることが可能であるというメリットがありました。ですから全面的に否定されるものではありません。育成期・成長期にある社員に対しては、能力の伸長を促すうえで一定の成果があると思われます。
しかし、20歳から60歳までの社員をすべて職能資格制度のみで格付けすることの意義は薄いと思われます。20代の社員の能力が1年間でどれだけ伸びたかを見ることは意味があるかもしれませんが、50代の社員については同様の見方は成り立ちにくいのではないでしょうか。
「能力主義」が年功的な運用に陥っている企業においては、むしろ発想を転換し、曖昧な「能力主義」による人事制度からの脱却を図ることが求められていると言えます。また、これから等級制度を導入しようという企業においても、誤った「能力主義」に陥らない注意が必要です。

● "制度の目的化"が「結果主義」や自主性の伸長阻害につながっている
「成果主義」は避けて通れない時代の趨勢だと言われています。しかし一方で、「成果主義」のさまざまな問題点の指摘がなされています。問題の源は、制度の策定・運用に際して本来の「成果主義」と異なる扱いをしたことにあると考えます。それは、
① 自己責任の原則なのに、会社が職務を一方的に決定している、
② 成果の特定が困難で評価者の認識も不十分なままスタートした、
③ 目標設定において中長期的テーマ・課題がないがしろにされている、
④ 人件費削減を主目的に成果主義を導入した、
などなどです。これでは、企業が目指すべき(本来の成果主義の目的である)「活力ある革新的な人材・組織の実現」には結びつきません。その結果、
★ 目標達成度を意識しすぎてプロセスを軽視しがちになる(単なる「結果主義」に陥る)、
★ 成果を生み出すために必要な社員の自主性・自立性の伸長を阻害する、
などの問題が生じているのです。企業としての本来の目的を見失い、制度を入れることが目的化してしまうことこそ、「成果主義」導入の際の落とし穴と言えるのではないかと思います。

● 自社にとっての「成果主義」の定義・目的を明確にしておく
成果主義一辺倒からの揺り戻し、というのが、先行して成果主義を導入した企業に昨今見られます。しかしこうしたニュースや情報に過度に左右されるのはどうかと思います。
「成果主義」というのは、"イデオロギー"の如く言われていますが、処遇制度の1つの方向性を指すにすぎないと考えます。で、実際に各企業で最近導入したという「成果主義」賃金制度の具体的内容を見てみると、導入企業ごとにかなり多様で程度差が大きいのです。どれも自社の従来の制度に比べ相対的に「成果主義」へシフトしたということであって、「成果主義」は定義こそあれ、「成果主義」の共通基準があってそこに到達した、と言い切れるものではないからです。

成果主義賃金制度は、簡潔に言えば「成果応分」ということであり、何も新しいことを言っているのではありません。賃金制度は社員に対するメッセージを込める手段であり、"容れ物"です。そこにどのようなメッセージを込めるのかという中身が必要です。制度の改定(成果主義の導入)が新たな弊害を生むのは、自社にとっての成果主義のあり方の事前検討が不充分だったためと考えられます。また、制度の作り方がまずいと、伝えたいメッセージもうまく伝わりません。「まずい」というのは、「精緻でない」ということではなく「自社適合でない」ということです。行き過ぎであったり、期待外れであったりすることになります。自社にとっての成果主義(賃金制度)のあり方は、その目指すところを明確にし、「自社適合」念頭において構築すべであると考えます。

● 人材の可能性・自立性を引き出す概念-「役割」
そうした中で、単なる「結果主義」に陥らず人材の可能性・自立性を引き出す概念として、これから成果主義へ移行しようという企業に注目されているのが、「役割」という概念です。

● 「役割」とは何か
「役割」というのは、職位・職務上の責任・権限である職責に、業務の拡大・革新等のチャレンジ度を付加したもの、つまり「職責+チャレンジ度」と考えてよいかと思います。
「役割」は企業・組織が職位等に応じて社員に求める基本的重要事項であり、時代の変化に対応し、企業・組織・社員のレベルアップのため、社員自らが高次の目標を設定し、拡大することが期待される重要事項です。今後は、自らの「役割」を主体的にとらえ創造性を発揮する自律型人材が企業競争力の決め手となると考えられます。

● 「職務」と「役割」の違い
よく「職務・役割主義の人事制度」とか「職務給賃金制度」とか言われますが、「職務」と「役割」はどこが違うのでしょうか。
両者とも「能力」のような「人」基準ではなく「仕事」基準であるという点では同じです。ただし次の点で異なります。
★ 「職務」...業務活動項目のまとまりを指し、細分化された定型業務のこと。
★ 「役割」...職務を簡素化し大括り(ブロードバンディング)したもので非定型業務を含む。
「職務」が"業務"の視点に立っているとするならば、「役割」は"機能"の視点に立っているとも言えます。(例えばお医者さんの「職務」が診断する、手術をする、投薬の指示をする、カウンセリングをするなどなどであるとすれば、お医者さんの「役割」は患者さんの病気を治すということになるかと思います。)
「職務」という用語が「職務グレード」、「ジョブバンド」、「日本型職務給」という言葉の中で使われる場合は、ここでいう「役割」と同じ意味で用いられている場合が多いようです。

● 「役割・成果主義」-「役割」をベースとした成果主義の処遇制度を
従来型の「職務等級制度」では、すべての課業を洗い出して個別に分析や点数化をし、組織改組や環境の変化に合わせてその都度メンテナンスをかけ......と大変な労力を注いだのに、制度が短期間のうちに硬直化し運用がままならなくなるといったことがよく起こります。
その点、「役割」(役割基準)をベースとした人事制度である「役割等級制度」は、こうした「手段の目的化」というジレンマに陥る危険性も小さく、社内での「役割」の重要度をベースにした「仕事」基準の処遇の効率的な実現を可能にします。
成果主義賃金制度の導入に際して、その「役割」のレベルに対して支払う報酬の基準を定め、また成果の反映度を調整すれば、"行き過ぎた成果主義"というものに陥る可能性も少ないと考えられますし、反対に処遇に一定の格差があったとしても、それはその「役割」のレベルにある社員が負うべきリスクでありリターンであるという合理的な説明が可能です。会社が社員に対して、「その役割において、社員自らが高次の目標を設定し、拡大すること期待する」というメッセージを、処遇と連動させて伝えることにより、「活力のある革新的な人材・組織の実現」という、成果主義の本来の目的に近づくことが可能になると考えます。

● 「役割等級制度」における「期待役割」の2種類の捉え方
「役割」とは、つまり「職責+チャレンジ度」だと述べましたが、「役割等級制度」として実際に運用する際には、ここで言う「チャレンジ度」、言わば「期待役割」の捉え方に2種類あります。
1つは、「その役割につく者すべてに期待される役割」という意味で、この場合、「人」基準ではなく「仕事」基準・属職主義の考え方であり、「役割等級制度」のスタンダードな考え方です。
もう1つは、「その役割についた特定のある個人に期待される役割」という考え方で、この場合は属人基準なので、その役割についた「人」次第で役割基準が変動することになります。
 一般的には、前者のスタンダードな捉え方で運用すべきと考えます。後者の場合、組織改組などが行われなくても、人事異動さえあれば、その都度、等級基準を見直さなければならなくなる可能性があり、「結局のところすべて人基準ではないか」ということにもなりかねないからです。
何れの捉え方をするにしても、現状で職務価値に顕著な差が見出せない場合は、無理に等級を細分化するのではなく、役割等級数を少なくし大括り(ブロードバンディング)するのが望ましいと考えられます。ただし、ブロードバンディングされた大きな等級の中で、キャリアや業績の違いによって区分を設ける方法も考えられます(後述の「多段階洗い替え役割給」などはそれに近い考え方です)ので、後者の捉え方が全面的に否定されるものではありません。

● 「役割等級制度」に付随する問題とその解決
① 誰にも納得がいく職務の序列付けが困難
② 異動が上位方向に限定され、柔軟な異動が困難
③ 上位に空きポストがないと給与が上げ止まり、モラール維持が困難
以上の3つが、「役割等級制度」に付随する"困難"として考えられますが、①については等級の細分化が要因であることが多く、その場合は、ブロードバンディングすることで解決します。
②についても同様ですが、それでもやはり、配置転換になったことで役割等級が下がる、という事態は起こりえます。賃金面では激変緩和措置を講じるにしても、人事異動は経営事項であり、低い職位への異動も起こり得る、という割り切りを社内に定着させることも必要だと思います。
③については、後述する「範囲給」のレンジ幅、等級ごとのレンジの重なり具合の調整で、下位等級者でも評価次第で上位等級者の賃金水準に達するように設計する、または賞与に業績反映度を大きくする、など方法により、一定のモチベーション維持は可能になると思います。

● 「役割等級」設定の考え方
役割等級の設定は、役割内容の重要度、仕事の範囲や職責の大きさ、職務難易度、期待される成果などから決定し、現実に課せられている組織的な役割・機能のレベルに対応します。従って現行の職位(役職)制度と切り分けがほぼ一致するケースも当然でてきます。
等級区分は、全職群共通で定義する方法と、マネジメント職群・プロフェッショナル職群(スペシャリスト職群)・エキスパート職群・スタッフ職群などの職群別に定義する方法があります。
何れも「大括り(ブロードバンド)」を原則とし、等級の階層数は一般に4~8程度になります。

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